JP2012201756A - ガスケット用材料、ガスケット及びハードディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマー及び(B)下記一般式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーを含有するガスケット用材料であって、前記(A)成分と(B)成分との配合比[(A):(B)]が、質量比で、97:3〜30:70であり、前記(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、シリカを3〜20質量部含有することを特徴とするものである。
(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基を表す。Wは、エチレン基又はプロピレン基を表す。また、nは、0〜2の整数を表す。)
【選択図】なし
Description
近年、かかるHDDの小型化に伴い、又は設備投資や加工費削減などを図るために、従来のインジェクションによる成形から、光硬化性組成物をディスペンサーによって被着体に塗布し、成形した後、活性エネルギー線により硬化させることにより製造したガスケットが提案されている(例えば、下記特許文献1,2)。
また、HDD用ガスケットにおいては、HDDの製造工程上、ガスケットをHDD用ケースに接着する操作と、該ケースから剥離する操作とを繰り返す場合があることから、室温以上の条件下において粘着性が低いことが望まれている。
しかしながら、このようなガスケットは、一般的に、室温を境界に粘着特性が大きく異なるため、粘着力とヒートショック試験に対する耐性とを両立するガスケットを開発することは困難である。具体的には、室温以上の条件下で粘着性が低いガスケットは、室温以下(例えば−20℃)の条件下において粘着力がほぼゼロとなるため、ヒートショック試験に対する耐性が低下する。反対に、室温以下の条件下における粘着性が高いガスケットは、ヒートショック試験に対する耐性が高いが、室温以上の条件下において表面粘着性が高くなり過ぎる傾向がある。したがって、HDD用ガスケットにおいては、二律背反を満たす材料設計を行う必要がある。
前記特許文献1,2に記載のガスケット用材料からなるガスケットは、該ヒートショック試験に十分耐えうるものであり、また、室温条件下において適度な表面粘着性を有するものであるが、更なる性能の向上、特に低温(約−30〜−10℃)条件下における粘着性の向上が望まれている。
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであり、低温条件下において適度な表面粘着性を有し、耐ヒートショック性に優れると共に、室温以上の条件下において適切な粘着力を有し、耐リーク性能にも優れ、ガスケットを高温条件下(例えば80〜90℃)においた後であっても、表面粘着性の増大が抑制されるガスケット用材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケット、及び該ガスケットを用いたハードディスク装置を提供することを目的とする。
本発明者は、この低温側のピークについて更に検討を重ねた結果、シリカを配合することによってオリゴマー相とモノマー相との部分的な相分離が誘起され該低温側のピークが生じること、及び相分離によって材料中に生じた低Tg(ガラス転移点)ブロック部分が、低温領域における表面粘着性の発現に寄与していることを知見した。
また、相分離によって疎水性モノマーに由来する側鎖部分が凝集し、及び当該側鎖部分が材料の表面に露出することによって、室温条件下におけるガスケットの表面粘着性の増大が抑制されていることを知見した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであって、以下の[1]〜[7]に関する。
[2]前記(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、光重合開始剤を0.1〜10質量部、並びに無機充填材及び/又は有機系チクソ性付与剤を0.1〜30質量部含有する、[1]に記載のガスケット用材料。
[3]昇温速度2℃/分、歪み1%、振動周波数1Hz、−50〜100℃の条件で行った動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)においてピークが2つ以上存在する、[1]又は[2]に記載のガスケット用材料。
[4]前記動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)において、50℃以下の範囲に存在する第1のピークと、第1のピークよりも低温側で、かつ0℃以下の範囲に存在する第2のピークとの2つのピークが存在する、[3]に記載のガスケット用材料。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケット。
[6]ハードディスクドライブ(HDD)用である、[5]に記載のガスケット。
[7][6]に記載のガスケットを用いたハードディスク装置。
本発明のガスケット用材料は、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマーからなる(A)成分と、前記一般式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分とを含有し、さらに、シリカを含有するものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
本発明のガスケット用材料においては、(A)成分として、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマーが用いられる。このエネルギー線硬化型液状オリゴマーとしては、得られるガスケットの性能及び加工性などの観点から、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを、好適に用いることができる。1分子中の(メタ)アクリロイル基の個数は、通常2〜6個程度、好ましくは2〜4個、特に好ましくは2個である。
なお、上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を指す。
ここで、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カーボネートジオールなどとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
また、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、液状スチレン−ブタジエン共重合体をアクリル変性して得られるSBRジアクリレート、ポリイソプレンをアクリル変性して得られるポリイソプレンジアクリレートなどが挙げられる。水素添加共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば両末端に水酸基を有する、水素添加ポリブタジエン又は水素添加ポリイソプレンの前記水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを指し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を指す。
前記2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内にヒドロキシ基2個を有する、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カーボネートジオールなどと、ポリイソシアナートとの反応により、得ることができる。
前記のヒドロキシ基2個を有するポリエステルポリオールは、アルコール成分と酸成分とを反応させて得ることができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビスフェノールA等にエチレンオキシド又はプロピレンオキシド等が付加した化合物、あるいは、ε−カプロラクトンが付加した化合物等をアルコール成分とし、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の二塩基酸及びその無水物を酸成分として使用することができる。上記のアルコール成分、酸成分及びε−カプロラクトンの三者を同時に反応させることによって得られる化合物も、ポリエステルポリオールとして使用することができる。
このようにして得られるカーボネートジオールは、分子中にカーボネート構造を二つ以上有するポリカーボネートジオールである。
本発明においては、当該2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ハンドリング性などの観点から、数平均分子量2,000〜20,000程度のオリゴマーが好適である。なお、この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値である。
本発明のガスケット用材料においては、(B)成分として、下記一般式(1)で表される特定の(メタ)アクリレートモノマーが用いられる。ガスケット用材料に該(B)成分を配合することにより、室温(約15〜30℃)での表面粘着性が適度であり耐リーク性能に優れていながら、ガスケットを高温条件下においた後の表面粘着性の増大を抑制することができ、HDD用のガスケットを対象としたヒートショック試験に充分に耐えられるガスケットを製造することができる。
R1としては、入手容易性の観点から、水素原子が好ましい。
R2が表す炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基としては、合計の炭素数が4〜18の範囲の鎖式飽和脂肪族炭化水素基であれば特に制限はないが、例えばn−ブチル基(C4)、イソブチル基(C4)、s−ブチル基(C4)、n−ヘキシル基(C6)、エチルヘキシル基(C8)、n−オクチル基(C8)、イソオクチル基(C8)、各種デシル基(C10)(「各種」とは、直鎖及びあらゆる分岐鎖を含むことを示す。以下、同様である。)、各種ドデシル基(C12)、各種トリデシル基(C13)、各種ヘキサデシル基(C16)、各種オクタデシル基(C18)等が挙げられる。これらの中でも、ガスケットを高温条件下においたのちの表面粘着性増大の抑制の観点から、炭素数7〜18の分岐状の鎖式飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、エチルヘキシル基、イソオクチル基(6−メチルヘプチル基)、n−ドデシル基(ラウリル基)、イソミリスチル基、イソステアリル基がより好ましい。
該R2の炭素数が3以下若しくは19以上であるか、又はR2が脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基であると、HDD用のガスケットを対象としたヒートショック試験に充分に耐えられるガスケットは得られない。
また、Wとしては、入手容易性の観点から、エチレン基が好ましい。
nは、0〜2の整数であれば、特に本発明のガスケットの高温条件下における粘着性増大の抑制効果には影響を及ぼさない。
(B)成分の(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いることができるシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、及びケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中では湿式シリカ、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300など]などが挙げられる。
本発明においては、前記シリカを、前記(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して3〜20質量部配合する。シリカの含有量が3質量部未満であると、前記(A)成分と(B)成分との相分離を誘起させることができず、シリカの含有量が20質量部を超えると、ガスケット材料の粘度が高くなりガスケットの成形性が低下する。このような観点から、前記シリカの含有量は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して3〜15質量部がより好ましく、3〜10質量部が更に好ましい。
本発明においては、50℃以下の範囲に存在する第1のピークと、第1のピークよりも低温側で、かつ0℃以下の範囲に存在する第2のピークとの2つのピークが存在することが好ましい。この第1のピークは、シリカを配合しない場合に観測されるメインピークと同じ温度範囲に観測されるものであり、本発明においては、このピークよりも低温側にピークが観測されることが好ましい。このようなピークが存在する場合には、(A)成分と(B)成分との相分離が効果的に生じ、さらに、疎水性を備える(B)成分由来の側鎖が材料中で凝集していると推察される。この場合、主鎖を構成する親水性ブロックと側鎖を構成する疎水性ブロックとが構造的に反転しにくくなり、材料表面に親水性部分が露出しにくくなるため、結果として、ガスケット表面の粘着性の上昇が抑制されていると考えられる。
このような観点から、前記第1のピークは、0〜50℃の範囲に存在することがより好ましく、0〜40℃の範囲に存在することが更に好ましい。また、第2のピークは、−40〜0℃の範囲に存在することが好ましく、−40〜−10℃の範囲に存在することがより好ましい。
なお、本発明における動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)のピークとは、−50〜100℃が含まれる温度範囲において、例えば、低温から高温へ昇温しながら動的粘弾性測定を行ったときに観察されるピークを意味する。具体的には、一度カーブが上昇し、次いで、下降するときの極大値として観測される。ピークがあるかどうかについては、その温度において動的貯蔵弾性率に変曲点が生じているかどうかを参考に判定することもできる。
本発明のガスケット用材料は、活性エネルギー線硬化型であり、活性エネルギー線としては、紫外線;電子線;α線、β線、γ線などの電離性放射線を用いることができるが、操作性、生産性及び経済性などの観点から、紫外線を用いることが好ましい。紫外線を用いる場合には、当該ガスケット用材料は、後述する光重合開始剤を含むことが好ましい。なお、電子線やγ線のような電離性放射線を用いる場合には、光重合開始剤を含有させなくても、速やかに硬化を進めることができる。
成分である光重合開始剤としては、公知のものを広く用いることができ、特に制限されるものではない。
例えば分子内開裂型の光重合開始剤が挙げられ、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4’−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−ドデシル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、プロピオフェノン系光重合開始剤が好ましく、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンがより好ましい。
また、その他水素引き抜き型の光重合開始剤としてベンゾフェノン/アミン系光重合開始剤、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン/アミン系光重合開始剤等を挙げることができる。
また、未反応光重合開始剤のマイグレーションを避けるために、非抽出型光重合開始剤を用いることができる。例えばアセトフェノン系開始剤を高分子化したもの、ベンゾフェノンにアクリル基の二重結合を付加したものがある。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のガスケット用材料に光重合開始剤を配合する場合、その配合量は、該ガスケット用材料に含まれる(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜10質量部程度、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。また、上記光重合開始剤と共に、公知の光増感剤を併用することもできる。
本発明のガスケット用材料においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、任意成分として、例えば、前記(B)成分以外の(メタ)アクリルモノマーや、無機充填材、有機系チクソ性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤(老化防止剤)、光安定剤、カルボジイミド類などや、その他にも、ステアリン酸などの脂肪酸;ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アミド;脂肪酸エステル;ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの内部離型剤;プロセスオイルなどの軟化剤;着色剤;レベリング剤などを含有させることができる。本発明のガスケット用材料は、基本的には無溶媒であるが、必要に応じて各種溶媒を配合してもよい。
特に、無機充填剤や有機系チクソ性付与剤を、本発明のガスケット用材料に配合することにより、該材料に増粘性及び揺変性(チクソトロピー)が付与され、ガスケット用材料の成形性を向上させることができる。
以下、これらの任意成分について説明する。
本発明は、(B)成分以外の(メタ)アクリルモノマーの配合を否定するものではない。(B)成分以外の(メタ)アクリルモノマーとしては、分子量1,000未満の(メタ)アクリルモノマーが好ましく、例えばシクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
本発明のガスケット用材料に(B)成分以外の(メタ)アクリルモノマーを配合する場合、その配合量は、本発明の効果を著しく損なわない程度であればよく、例えば、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
無機充填剤としては、アルミナ、チタニア及び粘度鉱物などが挙げられる。無機充填剤の平均粒径は、増粘性、チクソトロピーの付与の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
本発明のガスケット用材料に無機充填剤を配合する場合、その配合量は、該ガスケット用材料に含まれる(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜30質量部程度、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。
有機系チクソ性付与剤としては、水添ひまし油、アマイドワックス又はこれらの混合物が好ましい。具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、ズードケミー触媒(株)製、商品名:ADVITROL100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305など]及びアンモニアの水素をアシル基で置換した化合物である高級アマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500など]などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また前記無機充填剤と併用してもよい。
本発明のガスケット用材料に有機系チクソ性付与剤を配合する場合、その配合量は、該ガスケット用材料に含まれる(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜30質量部程度、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。なお、有機系チクソ性付与剤と無機充填剤を併用する場合は、その合計量が、前記範囲であることが好ましい。
カップリング剤は、ガスケット付き部材を作製する場合、ガスケットと基材との密着性を向上させるために、本発明のガスケット用材料に、必要に応じて適宜量用いてもよい。このカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがあるが、中でもシラン系カップリング剤が好適である。
上記シラン系カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの不飽和基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシラン系カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のガスケット用材料にカップリング剤を配合する場合、その配合量は、該ガスケット用材料に含まれる(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜20質量部程度、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは3〜15質量部である。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール,ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−プチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール),2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3'−ビス−(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、α−トコフェロール等が挙げられる。
またリン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
本発明のガスケット用材料に酸化防止剤を配合する場合、その配合量は、その種類に応じて適宜選定されるが、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系又はトリアジン系の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられるが、これらの中でも、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル,N,N',N",N"'−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5.1.11.2〕ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5.1.11.2〕ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5.1.11.2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステルプロパンジオイックアシッド、〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等が挙げられる。
本発明のガスケット用材料に光安定剤を配合する場合、その配合量は、その種類に応じて適宜選定されるが、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
カルボジイミド類としては、例えば「Elastostab H01」(日清紡績株式会社製)などの市販品を使用することができる。
本発明のガスケット用材料にカルボジイミド類を配合する場合、その配合量は、その種類に応じて適宜選定されるが、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
本発明のガスケット用材料において、所望により用いられる接着性向上剤としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のガスケット用材料の調製方法に特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の(A)成分、(B)成分、シリカ及び所望により用いられる光重合開始剤や前記任意成分を、温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサーなどを用いて混練することにより、調製することができる。
このようにして得られた本発明のガスケット用材料は、温度50℃、剪断速度1.0/秒における粘度が1〜10,000Pa・sの範囲にあることが好ましい。粘度が前記範囲にあれば、当該ガスケット用材料は、適度の流動性を有し、ハンドリング性が良好であると共に、ガスケット形状を保持することができる。該粘度は、より好ましくは10〜2,000Pa・s、さらに好ましくは30〜1,000Pa・sである。
なお、上記粘度は、下記の方法で測定された値である。
レオメーター「RS−600」(HAAKE社製)を用いて測定した。ガスケット用材料を40℃に調整し、ギャップ0.2mmで、剪断速度を1〜10s-1の範囲で変えながら、剪断応力を測定し、剪断速度と応力の1/2乗をプロットしたキャソンプロットから最小二乗法による近似線を引き、1s-1における粘度を算出した。
本発明のガスケットは、前述した本発明のガスケット用材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケットである。エネルギー線としては、前述したように操作性や生産性及び経済性などの観点から、紫外線を用いることが好ましい。紫外線を用いる場合には、上記ガスケット用材料は、光重合開始剤を含むものを用いることが好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。また、照射時間は、通常、好ましくは10秒〜60分であり、積算光量は、通常、好ましくは1,000〜20,000mJ/cm2である。
次に、当該ガスケットを、コンピュータのHDD(ハードディスク装置)用ガスケットのようなガスケット付き部材を作製する場合の例を挙げ、その製造方法の好ましい態様について説明する。
本発明のガスケット用材料を被着体に塗布し、エネルギー線、好ましくは紫外線照射により硬化させることにより、ガスケット付き部材を製造することができる。被着体としては、例えば、硬質樹脂からなるものも使用することができるが、加工性等から金属製のものが好ましい。金属としては特に制限はなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板などの中から、適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。耐食性の点から、ニッケルめっき処理を施した金属が好適である。
また、ガスケット付き部材としては、HDD用等のガスケット、インクタンク用シール、液晶装置用シールなどが挙げられる。ガスケットの厚さは、用途により適宜選定することができるが、通常、0.1〜2mm程度である。
本発明のガスケットは、HDD用などのガスケットとして好適に用いられるほか、インクタンク用シール材、各種表示装置のシール材、土木、建築などの構造物用シール材、Oリングなどのパッキン、防振部材などの用途に用いることができる。
本発明はまた、前記本発明のガスケットを用いたハードディスク装置をも提供する。
各成分を表1に示すとおりに配合、混合してガスケット用材料を調製し、下記の方法により加工した後、下記の各評価を行った。なお、本実施例及び比較例においては、(B)成分として、前記一般式(1)で示される化合物であって、R1が水素であり、R2及びnが表1に示される化合物を用いた。
なお、本実施例及び比較例では、(A)成分を構成するウレタンアクリレートとして数平均分子量が約9,000、分散が約2.0のものを用いた。
また、シリカとして、平均粒径が約12nmのものを用いた。
(粘弾性評価)
表1に示す配合に従って、各実施例及び比較例のガスケット用材料を調製し、これらのガスケット用材料を用いて塗膜を形成した後、紫外線(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)「ライトハンマー6」使用)を、照度700mW/cm2、積算光量10,000mJ/cm2の条件で照射し、該塗膜を硬化させることによりシートを成形した(厚さ約2mm)。この試料について、(ティー・エー・インスツルメンツ・ジャパン(株)社製「レオメトリクス」)を用い、昇温速度2℃/分、歪み1%、周波数1Hz、測定温度−50〜100℃の測定条件にて、動的粘弾性測定を行って損失正接(tanδ)を求めた。結果を表1に示す。なお、ピークが2つ観測された場合には、低温側のピークと高温側のピークとをそれぞれ示した。
前記粘弾性評価における方法と同様にして塗膜を硬化させ、厚さ1mmのシートを作製した。
次に、このシートをニッケルメッキしたアルミプレートで40%圧縮し、80℃にて24時間放置した。その後、室温(25℃)に戻して30分後に圧縮を開放し、前記シートとアルミプレートとを引き剥がす力を測定した。結果を表1に示す。なお、測定条件は以下のとおりである。
−引き剥がす力を測定する際の条件−
測定温度:室温(25℃)
引き上げスピード:50mm/分
実施例1〜7及び比較例1〜5で調製したガスケット用材料を、ニッケルメッキしたアルミプレート上に一段目の塗膜を形成し、次いでその上に、同じガスケット用材料を用いて二段目の塗膜を、全体の厚さが1.1mmになるように形成した。その後、紫外線(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)「ライトハンマー6」使用)を、照度700mW/cm2、積算光量10,000mJ/cm2の条件で照射し、該塗膜を硬化させてガスケット付き部材を作製した。エポキシ樹脂で電着塗装したアルミプレートにより、ガスケットを圧縮率が約50%になるよう圧縮して−20℃で30分間放置した後、引き剥がす力を測定した。引き剥がす力が0(N)より高い場合を[○]、引き剥がす力が0(N)である場合を[×]として評価した。結果を表1に示す。
−引き剥がす力を測定する際の条件−
測定温度:室温(25℃)
引き上げスピード:50mm/分
前記低温条件における表面粘着性の評価と同様の方法でガスケット材料を硬化させてガスケットを作成し、低温条件下(−20℃)におけるガスケットの表面粘着力を利用して、このガスケットとニッケルメッキしたアルミプレートとを接着してガスケット付き部材とした。このガスケット付き部材のガスケットを、エポキシ樹脂で電着塗装したアルミプレートによりガスケットの圧縮率が約50%になるように圧縮し、この状態で−40℃にて30分間処理した後、85℃にて30分間処理する工程を1サイクルとし、下記基準に従って評価した。
○:3000サイクル後にも破壊が確認されなかった。
△:200サイクルでは破壊が確認されなかったが、
3000サイクル後には破壊が確認された。
×:200サイクル後に破壊が確認された。
一方、比較例より、(A)成分、(B)成分及びシリカを特定量含有しないガスケット材料よりなるガスケットにおいては、低温条件下において、適度な粘着性が発現していないことがわかる。したがって、HDD用ガスケット用としては適していないことがわかる。
なお、図1より明らかな通り、実施例3のガスケット用材料では、通常観測されるピークよりも低温側にピークが観測されている。このように、低温側にピークが観測されるガスケット用材料は、より一層優れたヒートショック耐性を示すと共に、低温条件下及び室温条件下の両方において適度な表面粘着性を示す。
Claims (7)
- 前記(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、光重合開始剤を0.1〜10質量部、並びに無機充填材及び/又は有機系チクソ性付与剤を0.1〜30質量部含有する、請求項1に記載のガスケット用材料。
- 昇温速度2℃/分、歪み1%、振動周波数1Hz、−50〜100℃の条件で行った動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)においてピークが2つ以上存在する、請求項1又は2に記載のガスケット用材料。
- 前記動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)において、50℃以下の範囲に存在する第1のピークと、第1のピークよりも低温側で、かつ0℃以下の範囲に存在する第2のピークとの2つのピークが存在する、請求項3に記載のガスケット用材料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケット。
- ハードディスクドライブ(HDD)用である、請求項5に記載のガスケット。
- 請求項6に記載のガスケットを用いたハードディスク装置。
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