JP7026585B2 - 走行作業機 - Google Patents

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Description

本発明は、圃場を走行する走行機体と、圃場に対する作業を行う作業装置と、走行機体が作業装置による作業を行いつつ走行する作業走行のための目標走行経路を設定する経路設定部と、が備えられた走行作業機に関する。
例えば、特許文献1に、走行機体(文献では「走行車体」)と、圃場に対する作業を行う作業装置(文献では「苗植付装置」)と 走行機体が作業走行を走行すべき目標走行経路を設定する経路設定部と、が備えられた作業車が開示されている。経路設定部は、ティーチング走行によって自動操向すべき目標経路に対応するティーチング経路を圃場の一端側に設定すると共に、ティーチング経路と平行な複数の目標走行経路を設定するように構成されている。
特開2017-123804号公報
走行機体は、圃場においてティーチング経路の位置する側から順に、目標走行経路に沿った作業走行と、畦際において後工程の前記目標走行経路に向けて旋回する旋回走行と、を交互に繰り返す。この作業走行および旋回走行は、圃場におけるティーチング経路の位置する側とは反対側の箇所で終了する。しかし、特許文献1の構成では、圃場の形状や大きさが予め把握されていなければ、経路設定部は目標走行経路の設定を終了するべき地点の判定が不能である。この場合、経路設定部は圃場の範囲外の領域に対しても目標走行経路を設定する虞があり、目標走行経路に基づく作業走行の終了判定に人為的な判断が必要となる。このような不都合を解決するために、走行機体の機体横側部に障害物の検出手段を設ける構成も考えられるが、センサ機器が増設されることによって走行作業機の生産コストが増大する虞もある。このため、生産コストが増大することなく、目標走行経路に基づく作業走行の終了判定を改善する余地があった。
上述した実情に鑑みて、本発明の目的は、圃場の形状や大きさが予め把握されていなくても、目標走行経路に基づく作業走行の終了判定が可能な走行作業機を提供することにある。
本発明の走行作業機は、圃場を走行する走行機体と、圃場に対する作業を行う作業装置と、前記走行機体が作業走行すべき目標走行経路を設定する経路設定部と、が備えられ、前記経路設定部は、人為操作によって前記走行機体が走行するティーチング走行に基づくティーチング経路を圃場の一端側に設定した後に、前記ティーチング経路と平行な前記目標走行経路を圃場の他端側に設定し、かつ、前記走行機体が前記目標走行経路に沿った作業走行と次の前記目標走行経路に向けて旋回する旋回走行とを交互に繰り返して走行する場合に、前記走行機体が前記目標走行経路の終点位置に接近すると、前記目標走行経路に沿った前記走行機体の走行中に取得された既走行位置に基づいて、前記走行機体が前記目標走行経路を走行した後に作業走行するための後工程用目標を前記ティーチング経路の位置する側に設定することを特徴とする。
また、本発明の走行作業機は、圃場を走行する走行機体と、各条クラッチを有し、圃場に対する田植え作業を行う苗植付装置と、前記走行機体が作業走行すべき目標走行経路を設定する経路設定部と、が備えられ、前記経路設定部は、人為操作によって前記走行機体が走行するティーチング走行に基づくティーチング経路を圃場の一端側に設定した後に、前記ティーチング経路と平行な前記目標走行経路を圃場の他端側に設定し、かつ、前記走行機体が前記目標走行経路に沿った作業走行と次の前記目標走行経路に向けて旋回する旋回走行とを交互に繰り返して走行する場合に、前記目標走行経路に沿った前記走行機体の走行中に取得された既走行位置に基づいて、前記走行機体が前記目標走行経路を走行した後に作業走行するための後工程用目標を前記ティーチング経路の位置する側に設定し、前記後工程用目標において前記苗植付装置が前記田植え作業を可能な第一作業幅と、前記走行機体が前記圃場の畦際に沿って周回走行する際に前記苗植付装置が前記田植え作業を可能な第二作業幅と、が重複すると、前記第一作業幅のうち、前記第二作業幅と重複する部分に位置する前記各条クラッチが切り操作されるように構成されていることを特徴とする。
本発明によると、圃場の一端側にティーチング経路が設定され、圃場の他端側に最初の目標走行経路が設定され、目標走行経路に沿った作業走行の終了後に、ティーチング経路の位置する側に後工程目標が設定される。このことから、後工程目標はティーチング経路と目標走行経路との間に設定され、走行機体が作業走行と旋回走行とを繰り返す度に、走行機体はティーチング経路に接近する。このため、経路設定部は、人為的な判断が無くても、ティーチング経路の接近度合に基づいて、後工程目標の設定を終了判定できる。つまり、本発明によって、経路設定部は、走行機体にセンサ機器を増設したりしなくても、圃場の内側のみに後工程目標を設定できる。これにより、圃場の形状や大きさが予め把握されていなくても、目標走行経路に基づく作業走行の終了判定が可能な走行作業機が実現される。
本発明において、前記後工程用目標は、前記走行機体が前記作業走行するための後工程用目標走行経路であると好適である。
本構成によると、後工程用の目標移動経路が、既に作業走行が行われた作業走行軌跡に基づいて設定される。これにより、後工程の目標移動経路に沿って作業走行が行われる際に、既作業領域の既植苗が踏み荒らされたり、畦際旋回前後の作業走行軌跡の間に不作業領域が発生したりする虞が回避される。
本発明において、前記経路設定部は、前記旋回走行において前記走行機体を前記後工程用目標に案内するための旋回走行経路を設定すると好適である。
本構成であれば、旋回走行経路が経路設定部によって設定されるため、走行機体が後工程用目標の始点位置に移動する際に、人為操作が無くても、旋回走行経路に基づいて自動的に移動可能になる。
本発明において、前記後工程用目標と前記ティーチング経路との離間距離が予め設定された設定離間距離よりも小さくなると、前記経路設定部は前記後工程用目標を設定しないと好適である。
本構成であれば、経路設定部が後工程用目標を設定しないことによって、目標走行経路に基づく作業走行の終了が可能となる。このため、例えばティーチング経路に既植苗が存在する場合、ティーチング経路の位置する箇所で、更に旋回走行と作業走行とが行われることがなく、ティーチング経路における既植苗が踏み荒らされる虞がない。
本発明において、前記後工程用目標と前記ティーチング経路との離間距離が予め設定された設定離間距離よりも小さくなると、前記経路設定部は、前記ティーチング経路との重複を許容して前記後工程用目標を最後に設定すると好適である。
本構成であれば、経路設定部はティーチング経路との重複箇所に後工程用目標を最後に設定することによって、目標走行経路に基づく作業走行の終了が可能となる。このため、例えばティーチング経路に既植苗が存在しない場合、ティーチング経路の位置する箇所を走行機体が最後に作業走行できる。
本発明において、前記走行機体と前記ティーチング経路との離間距離が前記設定離間距離に接近すると、前記設定離間距離の接近を報知する報知部が備えられていると好適である。
本構成によって、経路設定部による後工程目標の設定の終了判定が搭乗者や圃場作業者にも報知可能となり、この報知部が備えられない構成と比較して、搭乗者や圃場作業者が次の作業の段取りを迅速にできる。
本発明において、前記経路設定部は、前記ティーチング経路に隣接する最後の後工程用目標の作業幅と、前記作業装置の作業幅と、が一致または略一致するように、前記既走行位置との離間距離を調整して前記後工程用目標を設定する好適である。
本構成であれば、最後に設定される後工程用目標に沿った作業走行において、圃場に対して作業装置の作業幅で隙間なく作業走行が可能となる。これにより、圃場の作業軌跡等に不自然な隙間等が生じることなく、圃場に対する作業が好適なものとなる。
田植機の全体側面図である。 田植機の全体平面図である。 田植機の正面図である。 制御構成を示すブロック図である。 自動操向制御の動作を示す田面全体での平面視の説明図である。 慣性計測ユニットを用いた自動操向制御を示す説明図である。 後工程用目標走行経路の設定を示す説明図である。 表示部を示す説明図である。 後工程用目標走行経路の設定の別実施形態を示す説明図である。 後工程用目標走行経路の設定の別実施形態を示す説明図である。
〔走行作業機の基本構成〕
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、本発明の走行作業機の一例として乗用型田植機を例に挙げて説明する。なお、図2に示されているように、本実施形態では、矢印「F」が走行機体Cの機体前方向、矢印「B」が走行機体Cの機体後方向、矢印「L」が走行機体Cの機体左方向、矢印「R」が走行機体Cの機体右方向である。
図1乃至図3に示されているように、乗用型田植機には、左右一対の操舵車輪10と、左右一対の後車輪11とを有する走行機体Cと、圃場に対する苗の植え付けが可能な作業装置としての苗植付装置Wと、が備えられている。左右一対の操舵車輪10は、走行機体Cの機体前側に設けられて走行機体Cの向きを変更操作自在なように構成され、左右一対の後車輪11は、走行機体Cの機体後側に設けられている。苗植付装置Wは、昇降用油圧シリンダ20の伸縮作動により昇降作動するリンク機構21を介して、走行機体Cの後端に昇降自在に連結されている。
走行機体Cの前部には、開閉式のボンネット12が備えられている。ボンネット12の先端位置には、マーカ装置33によって圃場に描かれる指標ライン(不図示)に沿って走行するための目安となる棒状のセンターマスコット14が備えられている。走行機体Cには、前後方向に沿って延びる機体フレーム15が備えられ、機体フレーム15の前部には支持支柱フレーム16が立設されている。
ボンネット12内には、エンジン13が備えられている。詳述はしないが、エンジン13の動力が、機体に備えられた不図示のHST(静油圧式無段変速装置)を介して操舵車輪10及び後車輪11に伝達され、変速後の動力が電動モータ駆動式の植付クラッチ(不図示)を介して苗植付装置Wに伝達される。
図1及び図2に示されているように、苗植付装置Wに、四個の伝動ケース22と、八個の回転ケース23と、整地フロート25と、苗載せ台26と、マーカ装置33と、が備えられている。回転ケース23は、各伝動ケース22の後部の左側部及び右側部に、夫々回転自在に支持されている。夫々の回転ケース23の両端部に、一対のロータリ式の植付アーム24が備えられている。整地フロート25は、圃場の田面を整地するものであり、苗植付装置Wに複数備えられている。苗載せ台26に、植え付け用のマット状苗が載置される。マーカ装置33は、苗植付装置Wの左右側部に備えられ、圃場の田面に指標ライン(不図示)を形成する。
苗植付装置Wは、苗載せ台26を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース22から伝達される動力により各回転ケース23を回転駆動して、苗載せ台26の下部から各植付アーム24により交互に苗を取り出して圃場の田面に植え付けるようになっている。苗植付装置Wは、八個の回転ケース23に備えられた植付アーム24により苗を植え付ける八条植え型式に構成されている。なお、苗植付装置Wは、四条植え型式であったり、六条植え型式であったり、七条植え型式であったり、十条植え型式であったりしても良い。
詳述はしないが、マーカ装置33は、作用姿勢と格納姿勢とに切換え可能なように構成されている。作用姿勢の状態で、マーカ装置33は、走行機体Cの走行に伴って圃場の田面に接地して次回の作業行程に対応する田面に指標ライン(不図示)を形成する。格納姿勢の状態で、マーカ装置33は圃場の田面から上方に離れる。マーカ装置33の姿勢切換えは電動モータ(不図示)により行われる。
図1乃至図3に示されているように、走行機体Cにおけるボンネット12の左右側部には、複数(例えば四つ)の通常予備苗台28と、予備苗台29と、が備えられている。通常予備苗台28は、苗植付装置Wに補給するための予備苗を載置可能なように構成されている。予備苗台29は、苗植付装置Wに補給するための予備苗を載置可能なレール式に構成されている。走行機体Cにおけるボンネット12の左右側部には、各通常予備苗台28と予備苗台29とを支持する背高のフレーム部材としての左右一対の予備苗フレーム30が備えられ、左右の予備苗フレーム30の上部同士が連結フレーム31にて連結されている。
図1乃至図3に示されているように、走行機体Cの中央部には、各種の運転操作が行われる搭乗部40が備えられている。搭乗部40には、運転座席41と、操向ハンドル43と、主変速レバー44と、操作レバー45と、が備えられている。運転座席41は、走行機体Cの中央部に備えられ、搭乗者が着席可能なように構成されている。操向ハンドル43は、人為操作によって操舵車輪10の操向操作を可能なように構成されている。主変速レバー44は、前後進の切換え操作や走行速度の変更操作が可能なように構成されている。苗植付装置Wの昇降操作と、左右のマーカ装置33の切換えと、が操作レバー45によって行われる。操向ハンドル43、主変速レバー44、操作レバー45等は、運転座席41の機体前部側に位置する操縦塔42の上部に備えられている。搭乗部40の足元部位には、搭乗ステップ46が設けられている。搭乗ステップ46はボンネット12の左右両側にも延びている。
主変速レバー44を操作すると、HST(不図示)における斜板の角度が変更され、エンジン13の動力が無段階に変速される。図示しないが、HSTの斜板角度は、サーボ油圧制御機器を搭載した油圧ユニットによって制御される。サーボ油圧制御機器に、公知の油圧ポンプや油圧モータ等が用いられる。
操作レバー45を上昇位置に操作すると、植付クラッチ(不図示)が切り操作されて苗植付装置Wに対する伝動が遮断され、昇降用油圧シリンダ20を作動して苗植付装置Wが上昇し、左右のマーカ装置33(図1参照)が格納姿勢に操作される。操作レバー45を下降位置に操作すると、苗植付装置Wが下降して田面に接地して停止した状態となる。この下降状態で操作レバー45を右マーカ位置に操作すると、右のマーカ装置33が格納姿勢から作用姿勢になる。操作レバー45を左マーカ位置に操作すると、左のマーカ装置33が格納姿勢から作用姿勢になる。
搭乗者は、田植え作業を開始するときは、操作レバー45を操作して苗植付装置Wを下降させると共に、苗植付装置Wに対する伝動を開始させて田植え作業を開始する。そして、田植え作業を停止するときは、操作レバー45を操作して苗植付装置Wを上昇させると共に、苗植付装置Wに対する伝動を遮断する。
搭乗部40の操縦塔42の上部の操作パネル47に、液晶表示器を用いて種々の情報を表示可能な表示部48が備えられている。表示部48は、タッチパネル式の液晶表示器であっても良い。また、表示部48の右側には、押し操作式の始点終点設定スイッチ49Aが備えられ、表示部48の左側には、押し操作式の目標設定スイッチ49Bが備えられている。なお、表示部48の左側に始点終点設定スイッチ49Aが備えられ、表示部48の右側に目標設定スイッチ49Bが備えられる構成であっても良い。始点終点設定スイッチ49A及び目標設定スイッチ49Bの機能については後述する。
主変速レバー44の握り部には、押し操作式の自動操向スイッチ50が備えられている。自動操向スイッチ50は、自動復帰型に設けられ、押し操作する毎に自動操向制御の入り切りの切換えを指令する。自動操向スイッチ50は、主変速レバー44の握り部を手で握った状態で、例えば、親指で押すことができる位置に配置されている。
操向操舵ユニットUの自動操向を行う場合には、操向モータ58(図4参照)を駆動して、操向モータ58の駆動力によりステアリング操作軸(不図示)を回動操作し、操舵車輪10の操向角度を変更するようになっている。自動操向を行わない場合には、操向操舵ユニットUは、操向ハンドル43の人為操作により回動操作することができる。
〔自動操向制御の構成〕
次に、自動操向制御を行うための構成について説明する。
走行機体Cに、衛星からの電波を受信して機体の位置を検出する衛星測位用システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例として、周知の技術であるGPS(Global Positioning System)を利用して、機体の位置を求める衛星測位ユニット70が備えられている。本実施形態では、衛星測位ユニット70は、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)を利用したものであるが、RTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)を用いることも可能である。
具体的には、衛星測位ユニット70が測位を行う対象(走行機体C)に備えられている。衛星測位ユニット70は、地球の上空を周回する複数の航法衛星から発信される電波を受信するアンテナ71付きの受信装置72を有する。航法衛星から受信する電波の情報に基づいて、受信装置72すなわち衛星測位ユニット70の位置が測位される。
図1乃至図3に示されているように、衛星測位ユニット70は、走行機体Cの前部に位置する状態で、板状の支持プレート73を介して連結フレーム31に取り付けられている。図1及び図3に示されているように、受信装置72が、連結フレーム31と予備苗フレーム30とによって、高い箇所に支持されるものとなる。これにより、受信装置72に受信障害が生じるおそれが少なく、受信装置72における電波の受信感度を高めることができる。
衛星測位ユニット70の他に、走行機体Cの方位を検出する方位検出手段として、例えばIMU74A(Inertial Measurement Unit)を有する慣性計測ユニット74が、走行機体Cに備えられている。慣性計測ユニット74は、IMU74Aに代えてジャイロセンサや加速度センサを有する構成であっても良い。図示はしないが、慣性計測ユニット74は、例えば、運転座席41の後側下方位置であって走行機体Cの横幅方向中央の低い位置に設けられている。慣性計測ユニット74は、走行機体Cの旋回角度の角速度を検出可能であり、角速度を積分することで機体の方位変化角ΔNA(図6参照)を求めることができる。従って、慣性計測ユニット74により計測される計測情報には走行機体Cの方位情報が含まれている。詳述はしないが、慣性計測ユニット74は、走行機体Cの旋回角度の角速度の他、走行機体Cの左右傾斜角度、走行機体Cの前後傾斜角度の角速度等も計測可能である。
図4に示されているように、走行機体Cに制御装置75が備えられている。制御装置75は、自動操向制御が実行される自動操向モードと、自動操向制御が実行されない手動操向モードと、に切換え可能なように構成されている。
制御装置75は、経路設定部76と、方位ずれ算定部77と、自動走行制御部78と、操向制御部79と、を有する。経路設定部76は、走行機体Cが走行すべき目標走行経路LM(図5参照)を設定する。方位ずれ算定部77の詳細は後述する。自動走行制御部78は、衛星測位ユニット70にて計測される走行機体Cの位置情報と、慣性計測ユニット74にて計測される走行機体Cの方位情報と、に基づいて、走行機体Cが目標走行経路LMに沿って走行するように、操作量を算定して出力する。操向制御部79は、操作量に基づいて操向モータ58を制御する。具体的には、制御装置75は、マイクロコンピュータを備えており、経路設定部76と方位ずれ算定部77と自動走行制御部78と操向制御部79とが制御プログラムにて構成されている。
自動操向制御に用いる目標走行経路LMをティーチング処理によって設定するための始点終点設定スイッチ49Aが備えられている。始点位置Tsの設定と、終点位置Tfの設定と、は始点終点設定スイッチ49Aの操作によって行われる。なお、始点終点設定スイッチ49Aは、一つのスイッチで構成されていなくても良く、始点位置Tsの設定用のスイッチと、終点位置Tfの設定用のスイッチと、が夫々並んだ状態で備えられる構成であっても良い。上述したように、始点終点設定スイッチ49Aは、表示部48の右側に備えられているが、これに限定されず、表示部48の左側に備えられていても良い。
制御装置75に、衛星測位ユニット70、慣性計測ユニット74、自動操向スイッチ50、始点終点設定スイッチ49A、目標設定スイッチ49B、操向角センサ60、トルクセンサ61、車速センサ62、障害物検知部63等の情報が入力される。車速センサ62は、例えば、後車輪11に対する伝動機構中の伝動軸の回転速度により車速を検出するように構成されている。なお、車速は、車速センサ62だけでなく、衛星測位ユニット70の測位データを考慮する構成であっても良い。障害物検知部63は、走行機体Cの前部及び左右両側部に備えられ、例えば、光波測距式の距離センサであったり、画像センサであったりして、圃場の畦際や圃場内の鉄塔等を検知可能なように構成されている。障害物検知部63によって障害物が検知されると、例えばブザーや音声案内である警報部64によって搭乗者に警報が報知される。また、制御装置75は報知部59と接続され、報知部59は、例えば車速やエンジン回転数等の状態を報知するように構成されている。報知部59は、表示部48に表示される構成であったりしても良いし、センターマスコット14に備えられたLED照明の点滅パターンが変わる構成であったりしても良い。また、警報部64は、報知部59を介して表示部48に警報を表示するように構成されていても良い。この場合、例えば畦際検知の警報が表示部48に表示される。また、警報部64は、報知部59の一部として構成されていても良い。
始点終点設定スイッチ49Aの操作に基づくティーチング処理によって、自動操向すべき目標経路に対応するティーチング経路LTが、経路設定部76によって設定される。
方位ずれ算定部77は、慣性計測ユニット74にて検出される走行機体Cの検出方位(自機方位NA)と、目標走行経路LMにおける目標方位LAと、の角度偏差、即ち方位ずれを算定する。そして、制御装置75が自動操向モードに設定されているとき、自動走行制御部78は、角度偏差が小さくなるように、操向モータ58を制御するための操作量を算出して出力する。
操向制御部79は、走行機体Cの自動操向制御中に、自動走行制御部78によって出力された操作量に基づいて、自動操向制御を実行する。即ち、衛星測位ユニット70及び慣性計測ユニット74によって検出される走行機体Cの検出位置(自機位置NM)が、目標走行経路LM上の位置になるように、操向モータ58が操作される。
なお、本実施形態における制御信号は、自動走行制御部78が出力する操作量であっても良いし、操向制御部79が操向モータ58を操作するための電圧値や電流値であっても良い。
〔目標走行経路〕
水田において田植機は、直線状の条植付けの経路に沿って田植え作業を伴う作業走行と、畦際付近で次の条植付けの経路に移動するための畦際旋回走行と、を交互に繰り返し、最後に圃場の畦際に沿って圃場を周回しながら田植え作業を行う。図5に、ティーチング経路LTと、ティーチング経路LTに沿って並列する複数の目標走行経路LMと、が示されている。なお、田植機が最後に圃場を周回する田植え作業を行うことを考慮して、これらのティーチング経路LTおよび目標走行経路LMは、圃場における畦際周囲に沿って苗植付装置Wの作業幅が確保された状態で設けられる。本実施形態では、夫々の目標走行経路LM(1)~LM(6)は、経路設定部76によって、以下の手順で設定される。
まず、搭乗者は、走行機体Cを圃場内の畦際の始点位置Tsに位置させ、始点終点設定スイッチ49Aを操作する。このとき、制御装置75は手動操向モードに設定されている。そして、搭乗者が手動操縦しながら、始点位置Tsから側部側の畦際の直線形状に沿って走行機体Cを走行させ、反対側の畦際近くの終点位置Tfまで走行機体Cを移動させる。本実施形態では、始点位置Tsから終点位置Tfまで搭乗者が走行機体Cを手動で走行させることを、ティーチング走行という。走行機体Cが終点位置Tfまで移動すると、搭乗者は始点終点設定スイッチ49Aを再度操作する。これにより、ティーチング処理が実行される。つまり、始点位置Tsにおいて衛星測位ユニット70により取得された測位データに基づく位置座標と、終点位置Tfにおいて衛星測位ユニット70により取得された測位データに基づく位置座標と、から始点位置Tsと終点位置Tfとを結ぶティーチング経路LTが圃場の一端側に設定される。このティーチング経路LTに沿う方向が基準となる目標方位LAとして設定される。なお、終点位置Tfにおける位置座標は、衛星測位ユニット70による測位データのみならず、車速センサ62に基づく始点位置Tsからの距離と、慣性計測ユニット74に基づく走行機体Cの方位情報と、に基づいて算出される構成であっても良い。また、始点位置Tsと終点位置Tfとに亘る走行機体Cの走行は、田植え作業を伴う作業走行であっても良いし、非作業状態の走行であっても良い。
ティーチング経路LTの設定完了後、走行機体Cは90度だけ旋回して、圃場の畦際に沿って畦際走行しながら、圃場においてティーチング経路LTの位置する側と反対側に位置する始点位置Ls(1)に移動する。ティーチング経路LTが圃場の一端側に設定されているのに対し、始点位置Ls(1)は圃場の他端側に位置する。そして、走行機体Cが始点位置Ls(1)に接近すると、走行機体Cが更に90度だけ旋回して、走行機体Cは始点位置Ls(1)に到達する。走行機体Cの畦際走行は、搭乗者が手動で操向ハンドル43を操作することによって行われるものであっても良いし、自動制御によって行われるものであっても良い。このとき、自動走行制御部78は、自機方位NAが反転することにより、走行機体Cが始点位置Ls(1)に到達したことを判別できる。また、始点位置Ls(1)の到達は、衛星測位ユニット70や慣性計測ユニット74によっても検知可能である。
始点位置Ls(1)の到達は、自機方位NAの反転以外に、各種機器の動作によって判別されるものであっても良い。各種機器の動作として、例えば、苗植付装置W、整地ロータ(不図示)、整地フロート25等の上昇動作であったり、サイドクラッチ(不図示)が切られることであったり、苗植付装置Wに対する伝動の遮断であったりしても良い。また、走行機体Cの始点位置Ls(1)への到達が、衛星測位ユニット70によって判別されるものであっても良い。
走行機体Cが始点位置Ls(1)に到達すると、任意のタイミングで目標走行経路LM(1)が経路設定部76によって設定される。目標走行経路LM(1)は、目標方位LAの方位に沿って圃場の他端側、即ちティーチング経路LTの位置する圃場の一端側と反対側に設定され、ティーチング処理後に走行機体Cが最初に作業走行を行う目標走行経路LMである。目標走行経路LM(1)は、走行機体Cの旋回中に設定されても良いし、走行機体Cの旋回後に設定されても良い。上述したタイミングで、目標走行経路LM(1)は、搭乗者が目標設定スイッチ49Bを操作することによって設定される。なお、目標設定スイッチ49Bに限定されず、例えば、自動操向スイッチ50等を搭乗者が操作することによって目標走行経路LM(1)が設定される構成であっても良い。更に、目標走行経路LM(1)が、搭乗者の操作を伴わずに自動的に設定される構成であっても良い。
経路設定部76によって目標走行経路LM(1)が設定されると、制御装置75が手動操向モードから自動操向モードに切換えられる。そして、目標走行経路LM(1)に沿う自動操向制御が開始されるとともに、苗植付装置Wが下降して田植え作業が開始される。
自動操向制御は、目標走行経路LM(1)の始点位置Ls(1)の位置する側の反対側にある終点位置Lf(1)の付近で、障害物検知部63による畦際の検知が判定されるまで継続する。
走行機体Cが目標走行経路LM(1)の終点位置Lf(1)に接近すると、旋回走行経路RM(1)と、目標走行経路LM(2)と、が任意のタイミングで自動的に設定される。旋回走行経路RM(1)は、目標走行経路LM(1)の終点位置Lf(1)と、目標走行経路LM(2)の始点位置Ls(2)と、を結ぶ畦際の曲線状の走行経路である。つまり、旋回走行経路RM(1)は畦際旋回走行において走行機体Cを次の目標走行経路LM(2)に案内するための走行経路である。目標走行経路LM(1)における作業走行の完了後、苗植付装置Wに対する伝動が遮断されて苗植付装置Wが上昇する。そして、自動走行制御部78は、走行機体Cを旋回走行経路RM(1)に沿わるように、自動旋回制御を実行する。旋回走行経路RM(1)に沿った畦際旋回走行によって、始点位置Ls(2)における走行機体Cの自機方位NAは、終点位置Lf(1)における走行機体Cの自機方位NAから180度反転する。
目標走行経路LM(2)は、目標走行経路LM(1)のティーチング経路LT側、即ち未作業領域側に隣接して設定される。そして、目標走行経路LM(2)に沿って自動操向制御が開始されて走行機体Cが作業走行するとともに、苗植付装置Wが下降して田植え作業が開始される。
走行機体Cが目標走行経路LM(2)の終点位置Lf(2)に接近すると、旋回走行経路RM(2)と目標走行経路LM(3)とが設定され、旋回走行経路RM(2)に沿って自動的に畦際旋回走行が行われる。そして、目標走行経路LM(3)、旋回走行経路RM(3)、目標走行経路LM(4)、旋回走行経路RM(4)、目標走行経路LM(5)、旋回走行経路RM(5)、目標走行経路LM(6)の順番で、旋回走行経路RMおよび目標走行経路LMの設定と、畦際旋回走行と、作業走行と、が繰り返される。つまり、夫々の目標走行経路LMは、一つずつ設定される。
本実施形態では、目標走行経路LM(6)はティーチング経路LTに隣接した走行経路である。このため、ティーチング経路LTに既植苗が存在する場合、目標走行経路LM(6)は走行機体Cが最後に自動操向制御を行う走行経路である。目標走行経路LM(6)に沿った最後の自動操向制御が完了すると、走行機体Cが圃場の畦際に沿って作業走行し、圃場を周回する田植え作業が行われる。そして、圃場を周回する田植え作業が完了すると、当該圃場における全ての田植え作業が完了する。なお、ティーチング経路LTに既植苗が存在しない場合、ティーチング経路LTは走行機体Cが最後に自動操向制御を行う走行経路であってもよい。
自動操向制御の間、衛星測位ユニット70によって自機位置NMの情報が経時的に取得される。また、車速センサ62による車速が算出されると共に、図6に示されているように、慣性計測ユニット74による相対的な方位変化角ΔNAが経時的に計測される。方位ずれ算定部77は、方位変化角ΔNAの積分によって、自動操向制御が開始された地点からの自機方位NAを経時的に算出する。そして、方位ずれ算定部77は、自機方位NAと目標方位LAとの方位ずれを算定する。自動走行制御部78は、自機方位NAが目標方位LAと合致するように操作量を出力し、操向制御部79は、操作量に基づいて操向モータ58を操作する。これにより、走行機体Cが、目標走行経路LMに沿って精度良く走行する。
自動旋回制御において自動走行制御部78は、衛星測位ユニット70にて測位される自機位置NMに基づいて、例えばルックアップテーブルのデータ変換を経て、操向制御部79に操向操作を指示するように構成されている。また、衛星測位ユニット70に限らず、例えば、車速センサ62によって計測される車速と、慣性計測ユニット74によって計測される方位変化角ΔNAと、の夫々が積分されて自機位置NMが算出される構成であっても良い。自動走行制御部78は、障害物検知部63による畦際の検知の判定を自動旋回の開始の条件とし、任意のタイミングで自動旋回制御を開始するように構成されている。自動旋回制御の目標位置は、次の作業走行の始点位置Lsであり、始点位置Lsにおいて、走行機体Cの自機方位NAと、目標方位LAと、が一致するように旋回制御される。
〔目標走行経路の設定〕
図7に、目標走行経路LMに隣接する状態で、後工程用目標である後工程用目標走行経路LM2が示されている。後工程用目標走行経路LM2は、走行機体Cが目標走行経路LMの次に作業走行を行う目標走行経路として設定される。このことから、図7の目標走行経路LMが図5の目標走行経路LM(1)に相当する場合、図7の後工程用目標走行経路LM2は、図5の目標走行経路LM(2)に相当する。また、図7の目標走行経路LMが図5の目標走行経路LM(2)に相当する場合、図7の後工程用目標走行経路LM2は、図5の目標走行経路LM(3)に相当する。
なお、図7の目標走行経路LMは、上述したティーチング経路LTであっても良い。この場合、図7の後工程用目標走行経路LM2は、図5の目標走行経路LM(1)に相当する。
基本的に、後工程用目標走行経路LM2は、衛星測位ユニット70の測位データに基づいて、目標走行経路LMから予め設定された設定距離Pだけ離して設定される。ここで、設定距離Pは、苗植付装置Wが田植え作業を行う作業幅に相当する距離である。
本実施形態では、目標走行経路LMに沿って自動操向制御が行われた走行機体Cの実際の位置ずれに基づいて、後工程用目標走行経路LM2の目標走行経路LMに対する離間距離が算定される。後工程用目標走行経路LM2の設定時に、畦際旋回の直前で測位される測位データに基づいて、自機位置NM(既走行位置)から相対的な距離だけ離間した位置に後工程用目標走行経路LM2を設定するように、経路設定部76は構成されている。つまり、後工程用目標走行経路LM2は、衛星測位ユニット70の測位データに基づいて算出される自機位置NMから、設定距離Pだけ離間した位置に設定される。
目標走行経路LMに沿う自動操向制御において、走行機体Cが、目標走行経路LMに対して未作業領域側に位置ずれ偏差dだけ位置ずれした状態で作業走行する場合、走行機体Cの実際の作業走行軌跡は、図7で示される一点鎖線Laの走行軌跡となる。なお、一点鎖線Laの走行軌跡は、衛星測位ユニット70の測位データに基づいて算出される。また、衛星測位ユニット70によって測位される測位データの絶対的な誤差も、位置ずれ偏差dに含まれる。
本来であれば、後工程用目標走行経路LM2は、目標走行経路LMに対して設定距離Pだけ離間した位置、即ち、図7で示される破線lmの位置に設定される。これに対して本実施形態では、走行機体Cの位置ずれ偏差dに対応して、後工程用目標走行経路LM2が破線lmから位置ずれ偏差dだけ未作業領域側に平行移動した状態で設定される。
また、走行機体Cの実際の作業走行軌跡が、目標走行経路LMに対して既作業領域側に位置ずれ偏差dだけ位置ずれする場合が考えられる。この場合、後工程用目標走行経路LM2は、目標走行経路LMに対する設定距離Pから、既作業領域側に位置ずれ偏差dの分だけ平行移動した状態で設定される。
これにより、衛星測位ユニット70によって測位される測位データに誤差が含まれる場合であっても、自機位置NMから設定距離Pだけ離間した位置に設定することができる。苗植付装置Wの作業幅の分だけ離れた位置に、後工程用目標走行経路LM2が設定される構成によって、既作業領域の既植苗が踏み荒らされたり、畦際旋回前後の作業走行軌跡の間に不作業領域が発生したりする虞が防止される。
後工程用目標走行経路LM2は、目標走行経路LMに対して未作業領域側、即ちティーチング経路LTの位置する側に設定される。このため、目標走行経路LMに沿った走行機体Cの作業走行が繰り返されると、畦際旋回走行の都度、走行機体Cはティーチング経路LTに接近する。このため、走行機体Cとティーチング経路LTとの離間距離が予め設定された設定離間距離P1(図5参照)以下に走行機体Cが接近すると、経路設定部76は後工程用目標走行経路LM2を設定しないように構成されている。設定離間距離P1は、ティーチング経路LTから圃場の他端側に苗植付装置Wの作業幅と同一または略同一の幅だけ離間した距離に設定され、設定離間距離P1は人為操作による変更も可能である。つまり、ティーチング経路LTの接近が判定されて後工程用目標走行経路LM2が設定されない構成によって、後工程用目標走行経路LM2の設定が最初の目標走行経路LM(1)とティーチング経路LTとの間の範囲に制限され、自動操向制御の終了地点の判定が可能となる。
〔表示部〕
図8に示されているように、機体の状態が報知部59を介して表示部48の画面に表示される。表示部48は、作業情報領域100、位置ずれ情報領域101、車速情報領域102等の複数の表示領域に区分けされている。作業情報領域100は、表示部48の上側の左端に作業日時や作業実績などを表示する。位置ずれ情報領域101は、上側の中央に目標走行経路LMに対する走行機体C(自機位置NM)の位置ずれ量を表示する。車速情報領域102は、上側の右端に車速を表示する。表示部48の上側以外の大きな領域は位置情報領域104となっており、位置情報領域104は圃場における走行機体Cの位置を示す。位置情報領域104の左端の小さな領域は操舵状態情報領域103となっており、操舵状態情報領域103は制御装置75の自動操向モード又は手動操向モードの状態を表示する。位置情報領域104の右端には、タッチパネル操作式のソフトウエアボタン群120が配置されている。表示部48の更に右側には、物理ボタン群121が配置されている。
位置情報領域104には、走行機体C周辺の圃場の作業状態及び、目標走行経路LMと、自機位置NMを示す機体シンボルSYが表示されている。なお、目標走行経路LMのうち、作業走行中の目標走行経路LMは、分かりやすくするために太い実線で描画されている。更に、既に田植えが完了した領域は各植付苗を点描化して表示される。これにより、既作業領域と未作業領域とが視覚的に明確に区別されている。なお、この植付苗跡の表示は、点描以外に線状の植付条を示す線であっても良い。
図8では明示されていないが、走行機体Cの実際に走行した経路、つまり走行軌跡を、表示部48に表示することもできる。この走行軌跡と目標走行経路LMとを比べることで、自動操向制御の精度をチェックすることができる。走行軌跡は、衛星測位ユニット70による測位データに基づいて表示部48に表示される。また、機体シンボルSYは矢印状で示されており、尖鋭方向が進行方向、即ち自機方位NAを示している。自機方位NAと目標方位LAとの方位ずれをより視覚的に分かりやすくするため、機体シンボルSYの中心から進行方向に延びた指針110と、その向きの角度範囲を示す向き目盛111と、が上書き表示されている。また方位ずれの許容範囲を示す境界線112も表示されている。方位ずれのデジタル値も表示可能である。搭乗者は、表示部48を通じて、目標走行経路LMに対する走行機体Cの位置ずれ及び方位ずれを視認できる。
目標走行経路LMにおける作業走行に基づいて後工程用目標走行経路LM2が設定されると、図8に示されているように、位置ずれ情報領域101に、後工程用目標走行経路LM2に対する走行機体Cの位置ずれ量が表示される。位置ずれ量が表示されるタイミングは、目標走行経路LMから後工程用目標走行経路LM2に畦際旋回走行する際中であっても良いし、当該畦際旋回走行の完了後であっても良い。
自動旋回制御が行われている間、表示部48に表示される画面のうち、位置ずれ情報領域101及び位置情報領域104に、走行機体Cの位置や位置ずれ量が表示されないように構成されている。つまり、自動旋回中における表示部48の表示に自動旋回中であることが表示され、搭乗者に分かり易い表示とすることができる。また、搭乗者の意思によって、自動旋回中における走行機体Cの位置や位置ずれ量が表示されるように、切換自在な構成であっても良い。表示又は非表示の切換は、ソフトウエアボタン群120や物理ボタン群121の操作によるものであっても良い。また、位置ずれ量の報知は、報知部59による音声通知やスイッチの点灯表示又は点滅表示であっても良い。
また、走行機体Cとティーチング経路LTとの離間距離が設定離間距離P1に接近すると、設定離間距離P1の接近が報知部59を介して表示部48に表示される構成であっても良いし、設定離間距離P1の接近が報知部59を介して音声案内やスイッチの点灯表示又は点滅表示によって放置される構成であっても良い。なお、報知部59が報知する時間は、任意に設定調整可能なように構成されて良い。
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
〔1〕上述した実施形態において、走行機体Cの作業走行および畦際旋回走行は自動的に行われる構成となっているが、この実施形態に限定されない。例えば、畦際旋回走行は人為操作によって行われ、作業走行は自動的に行われる構成であっても良い。例えば、図5において夫々の目標走行経路LMが設定され、走行機体Cの旋回完了が判別された後、制御装置75の手動操向モードは継続し、人為操作による直進走行が継続される構成であっても良い。この間、制御装置75は、方位ずれ算定部77によって算定される自機方位NAの方位ずれや、操舵車輪10の向き、操向ハンドル43の操舵角等の判別条件を確認し、自動操向モードに切換え可能な状態であるかどうかを判定する。そして、制御装置75は、自動操向モードに切換え可能な状態であれば、自動操向スイッチ50の操作を許可する。このとき、制御装置75が自動操向モードに切換え可能な状態であるかどうかは、報知部59によって報知される。そして、搭乗者が自動操向スイッチ50を操作することによって、制御装置75が手動操向モードから自動操向モードに切換えられて、目標走行経路LMに沿った自動操向制御が実行される構成であっても良い。
また、制御装置75が自動操向モードに切換え不可能な状態である場合、報知部59は、その理由についても報知するように構成されも良い。この構成であれば、例えば自動操向制御にとっての悪条件を、搭乗者に報知することができるため、搭乗者が自動操向制御を開始するための条件を整え易くなる。報知部59による報知は、ブザー等の音声であっても良いし、センターマスコット14に備えられたLED照明の点灯や点滅であっても良いし、表示部48に表示されるものであっても良い。また、報知部59による報知は、一時的に報知される構成あっても良いし、常時報知される構成であっても良い。
自動操向制御中において、走行機体Cと畦際との距離が、予め設定された範囲内であることが、障害物検知部63によって判定されると、警報部64の警報によって搭乗者に報知される構成であっても良い。このとき、警報部64による警報は、ブザー等の音声であっても良いし、センターマスコット14に備えられたLED照明の点灯や点滅であっても良いし、表示部48に表示されるものであっても良い。そして、障害物検知部63が、予め設定された時間に亘って畦際を検出し続けることによって、畦際の検知が判定され、制御装置75が手動操向モードに切換えられて自動操向制御は解除される構成であっても良い。
〔2〕上述した実施形態において、後工程用目標として後工程用目標走行経路LM2が設定される構成となっているが、後工程用目標は後工程用目標走行経路LM2に限定されない。例えば、後工程用目標走行経路LM2のうち、始点位置Lsと反対側に位置する終点位置Lfが、後工程用目標として設定される構成であっても良い。そして、自動走行制御部78が、終点位置Lfを目標位置に自動操向制御を実行する構成であっても良い。要するに、走行機体Cが目標走行経路LMを走行した後に作業走行するための後工程用目標が、ティーチング経路LTの位置する側に設定されれば良い。
〔3〕上述した実施形態において、走行機体Cとティーチング経路LTとの離間距離が予め設定された設定離間距離P1以下に走行機体Cが接近すると、経路設定部76は後工程用目標走行経路LM2を設定しないように構成されているが、この実施形態に限定されない。例えば、ティーチング経路LTに既植苗が存在しない場合、経路設定部76は、ティーチング経路LTとの重複を許容して後工程用目標走行経路LM2を最後に設定する構成であっても良い。もちろん、ティーチング経路LTと重複する後工程用目標走行経路LM2に案内するための旋回走行経路RMが設定されても良い。
また、ティーチング経路LTと重複する後工程用目標走行経路LM2に沿って作業走行が行われた後に、走行機体Cが圃場の畦際に沿って作業走行し、圃場を周回する田植え作業が行われる。これに際し、圃場における畦際周囲に沿って苗植付装置Wの作業幅が確保される必要がある。このため、後工程用目標走行経路LM2に沿って作業走行が行われる際の苗植付装置Wの作業幅のうち、畦際周囲に沿って確保されるべき作業幅と重複する部分については、苗植付装置Wの各条クラッチ(不図示)を切り操作して、畦際周囲に沿って確保されるべき作業幅と重複しない領域のみに対して田植え作業が行われても良い。なお、後工程用目標走行経路LM2に沿って作業走行が行われる際の苗植付装置Wの作業幅は、後工程用目標走行経路LM2(後工程用目標)において苗植付装置Wが田植え作業を可能な第一作業幅である。また、畦際周囲に沿って確保されるべき作業幅は、走行機体Cが圃場の畦際に沿って周回走行する際に苗植付装置Wが田植え作業を可能な第二作業幅である。
〔4〕上述した実施形態において、経路設定部76は、既走行位置から設定距離Pだけ離間した位置に、後工程用目標走行経路LM2を設定するように構成されているが、この実施形態に限定されない。ティーチング経路LTに隣接する後工程用目標走行経路LM2における苗の植え付け可能な植付可能幅Wa(後工程用目標の作業幅)は、図9に示されるように、苗植付装置Wの植付作業幅Wb(作業装置の作業幅)よりも小さい場合があり得る。植付可能幅Waと植付作業幅Wbとが略同一であると、この後工程用目標走行経路LM2に沿って苗植付装置Wの作業幅で隙間なく田植え作業が行われる。このため、植付可能幅Waと植付作業幅Wbとが出来るだけ一致することが望ましい。図10に示されるように、経路設定部76は、既走行位置との離間距離を調整して後工程用目標走行経路LM2を設定する構成であっても良い。例えば、後工程用目標走行経路LM2(1)は、目標走行経路LMに対して設定距離PよりもΔpだけ接近した位置に設定される。Δpは、既作業領域における既植苗を踏み荒らさない程度に設定され、後工程用目標走行経路LM2(1)にて植え付けられる苗が既作業領域側寄りに植え付けられる。このように、後工程用目標走行経路LM2の設定ごとに、既走行位置との離間距離が調整される構成によって、ティーチング経路LTに隣接する後工程用目標走行経路LM2における苗の植え付け可能な幅の調整が可能となる。その結果、ティーチング経路LTに隣接する最後の後工程用目標走行経路LM2の植付可能幅Waと、作業装置としての苗植付装置Wの植付作業幅Wbと、が一致または略一致する。
また、ティーチング経路LTに隣接する後工程用目標走行経路LM2における植付可能幅Waが植付作業幅Wbよりも大きい場合には、後工程用目標走行経路LM2(1)は、目標走行経路LMに対して設定距離PよりもΔpだけ更に離間した位置に設定される構成であっても良い。
〔5〕上述した実施形態において、ティーチング経路LTの設定完了後、走行機体Cが始点位置Ls(1)に移動して、目標走行経路LM(1)に沿って自動操向制御が行われるが、この実施形態に限定されない。例えば図5の場合、ティーチング経路LTの設定完了直後に、ティーチング経路LTに隣接する目標走行経路LM(6)に沿って自動操向制御が行われる構成であっても良い。そして、目標走行経路LM(5)、目標走行経路LM(4)、目標走行経路LM(3)、目標走行経路LM(2)、目標走行経路LM(1)の順番で、作業走行と畦際旋回走行とが交互に繰り返して行われ、目標走行経路LM(1)における作業走行の完了後に、経路設定部76による後工程用目標走行経路LM2の設定が、人為操作によって終了する構成であっても良い。
〔6〕上述した田植機のみならず、本発明は、直播機等を含むその他の直播系作業機に適用可能である。また、直播系作業機以外に、トラクタやコンバイン等の農作業機にも、本発明は適用可能である。
本発明は、圃場の目標走行経路に沿って作業走行が行われる走行作業機に適用可能である。
59 :報知部
76 :経路設定部
C :走行機体
W :苗植付装置(作業装置)
Wa :植付可能幅(後工程用目標の作業幅)
Wb :植付作業幅(作業装置の作業幅)
LM :目標走行経路
LM2 :後工程用目標走行経路(後工程用目標)
LT :ティーチング経路
P1 :設定離間距離

Claims (8)

  1. 圃場を走行する走行機体と、
    圃場に対する作業を行う作業装置と、
    前記走行機体が作業走行すべき目標走行経路を設定する経路設定部と、が備えられ、
    前記経路設定部は、人為操作によって前記走行機体が走行するティーチング走行に基づくティーチング経路を圃場の一端側に設定した後に、前記ティーチング経路と平行な前記目標走行経路を圃場の他端側に設定し、かつ、前記走行機体が前記目標走行経路に沿った作業走行と次の前記目標走行経路に向けて旋回する旋回走行とを交互に繰り返して走行する場合に、前記走行機体が前記目標走行経路の終点位置に接近すると、前記目標走行経路に沿った前記走行機体の走行中に取得された既走行位置に基づいて、前記走行機体が前記目標走行経路を走行した後に作業走行するための後工程用目標を前記ティーチング経路の位置する側に設定する走行作業機。
  2. 前記経路設定部は、前記ティーチング経路に隣接する最後の後工程用目標の作業幅と、前記作業装置の作業幅と、が一致または略一致するように、前記既走行位置との離間距離を調整して前記後工程用目標を設定する請求項1に記載の走行作業機。
  3. 圃場を走行する走行機体と、
    各条クラッチを有し、圃場に対する田植え作業を行う苗植付装置と、
    前記走行機体が作業走行すべき目標走行経路を設定する経路設定部と、が備えられ、
    前記経路設定部は、人為操作によって前記走行機体が走行するティーチング走行に基づくティーチング経路を圃場の一端側に設定した後に、前記ティーチング経路と平行な前記目標走行経路を圃場の他端側に設定し、かつ、前記走行機体が前記目標走行経路に沿った作業走行と次の前記目標走行経路に向けて旋回する旋回走行とを交互に繰り返して走行する場合に、前記目標走行経路に沿った前記走行機体の走行中に取得された既走行位置に基づいて、前記走行機体が前記目標走行経路を走行した後に作業走行するための後工程用目標を前記ティーチング経路の位置する側に設定し、
    前記後工程用目標において前記苗植付装置が前記田植え作業を可能な第一作業幅と、前記走行機体が前記圃場の畦際に沿って周回走行する際に前記苗植付装置が前記田植え作業を可能な第二作業幅と、が重複すると、前記第一作業幅のうち、前記第二作業幅と重複する部分に位置する前記各条クラッチが切り操作されるように構成されている走行作業機。
  4. 前記後工程用目標は、前記走行機体が前記作業走行するための後工程用目標走行経路である請求項1から3の何れか一項に記載の走行作業機。
  5. 前記経路設定部は、前記旋回走行において前記走行機体を前記後工程用目標に案内するための旋回走行経路を設定する請求項1から4の何れか一項に記載の走行作業機。
  6. 前記後工程用目標と前記ティーチング経路との離間距離が予め設定された設定離間距離よりも小さくなると、前記経路設定部は前記後工程用目標を設定しない請求項1からの何れか一項に記載の走行作業機。
  7. 前記後工程用目標と前記ティーチング経路との離間距離が予め設定された設定離間距離よりも小さくなると、前記経路設定部は、前記ティーチング経路との重複を許容して前記後工程用目標を最後に設定する請求項1からの何れか一項に記載の走行作業機。
  8. 前記走行機体と前記ティーチング経路との離間距離が前記設定離間距離に接近すると、前記設定離間距離の接近を報知する報知部が備えられている請求項に記載の走行作業機。
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