JP7026550B2 - 熱供給システムの検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱媒体を加熱する熱源機と、熱媒体が流れる熱媒体循環路とを備え、熱を消費する熱消費端末に対して、熱媒体循環路を介して熱媒体を供給できるように構成されている熱供給システムの検査方法に関する。
特許文献1(特開2001-248847号公報)には、熱動弁の故障を自己診断可能な温水暖房装置が記載されている。この温水暖房装置では、温水暖房装置を制御する制御部が、温水暖房装置が運転しているかを判別し、温水暖房装置が運転していない場合には、熱交換器に流入する湯水の温度を検出する温度検出手段で検出される通水温度と予め定めた所定温度とを比較して、通水温度が所定温度を超える場合には弁装置が開故障であると判定する。これは、温水暖房装置が運転していないと判断された場合は、熱動弁は閉弁状態にあるはずなので、温水熱源機から熱交換器に対して温水は供給されていないということを前提としている。つまり、この場合、熱動弁が正常に閉じていれば熱交換器には湯水は供給されないので、温度センサで検出される通水温度は常温程度(未加熱の温度)になるはずである。しかしその一方で、この時、熱動弁が開故障していれば、温水熱源機からの温水が熱交換器に供給されるため、上記温度センサで検出される通水温度は温水熱源機の出力する温水温度に近い値となる。
特開2001-248847号公報
特許文献1に記載の装置では、他の装置が動作しており、温水熱源機からその装置に対して温水が供給されていることが前提になっている。そのため、他の装置が動作していない場合には機能しない構成になっているという問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱動弁の故障を適切に検出可能な熱供給システムの検査方法を提供する点にある。
上記目的を達成するための本発明に係る熱供給システムの検査方法の特徴構成は、熱媒体を加熱する熱源機と、
熱媒体が流れる熱媒体循環路とを備え、
熱を消費する熱消費端末に対して、前記熱媒体循環路を介して熱媒体を供給できるように構成されている熱供給システムの検査方法であって、
前記熱供給システムにおいて、前記熱媒体循環路は、前記熱消費端末を経由させずに熱媒体を循環させることができる共通流路部分と、当該共通流路部分から前記熱消費端末に向けて分岐し、途中に熱動弁が設けられる熱供給流路部分とを有し、
前記熱動弁を閉じ且つ前記熱源機を加熱動作させない状態で前記共通流路部分を所定期間だけ循環した熱媒体の温度である加熱前温度を測定する加熱前温度測定工程と、
前記熱動弁が正常に閉じられていた場合に前記熱媒体循環路を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量の熱媒体を、前記熱源機を基準出力で加熱動作させることで加熱したと仮定した場合に、循環中の熱媒体が前記熱源機へ帰還する部位での熱媒体の温度が前記加熱前温度から所定の目標温度へ上昇するのに要すると推定される推定所要時間を算出する推定所要時間算出工程と、
前記熱動弁を閉じ且つ前記熱源機を基準出力で加熱動作させた状態で前記共通流路部分に熱媒体を循環させて、循環中の熱媒体が前記熱源機に帰還する部位での熱媒体の温度が前記加熱前温度から前記目標温度に達するまでの実所要時間を測定する実所要時間測定工程と、
前記推定所要時間と前記実所要時間との対比結果に基づいて、前記熱動弁が正常に閉じているか否かを判定する弁動作検証工程とを有する点にある。
上記特徴構成によれば、実所要時間測定工程において、熱動弁を閉じ且つ熱源機を基準出力で加熱動作させた状態で共通流路部分に熱媒体を循環させて、循環中の熱媒体が熱源機に帰還する部位での熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間を測定する。つまり、熱動弁に故障が発生しておらず、正常に閉じられていれば、実所要時間測定工程の実行中に循環している熱媒体の量は理論熱媒体量と同等であるので、熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間は、推定所要時間算出工程で算出した推定所要時間とほぼ同じになるはずである。但し、仮に熱動弁が故障して開いていれば、熱媒体は熱消費端末及び熱供給流路部分を通って循環するため、熱媒循環路全体で見ると熱媒体量は理論熱媒体量よりも多くなると考えられる。そして、理論熱媒体量よりも多くの量の熱媒体を熱源機で加熱しなければならないため、測定する熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間は、推定所要時間算出工程で算出した推定所要時間よりも長くなるはずである。よって、弁動作検証工程において、推定所要時間と実所要時間との対比することで、熱動弁が正常に閉じているか否かを判定できる。
従って、熱動弁の故障を適切に検出可能な熱供給システムの検査方法を提供できる。
本発明に係る熱供給システムの検査方法の別の特徴構成は、前記推定所要時間算出工程において、前記理論熱媒体量と前記目標温度及び前記加熱前温度の温度差との積を、前記熱源機の前記基準出力で除算した値を、前記推定所要時間として算出する点にある。
上記特徴構成によれば、理論熱媒体量と目標温度及び加熱前温度の温度差との積を、熱源機の基準出力で除算した値を、推定所要時間として算出できる。
本発明に係る熱供給システムの検査方法の更に別の特徴構成は、前記熱供給システムにおいて、前記熱媒体循環路は、複数の前記熱消費端末を経由させずに熱媒体を循環させることができる前記共通流路部分と、当該共通流路部分から複数の前記熱消費端末のそれぞれに向けて分岐し、前記熱動弁がそれぞれ設けられる複数の熱供給流路部分とを有し、
前記加熱前温度及び前記目標温度及び前記基準出力及び前記実所要時間に基づいて、前記実所要時間測定工程を行ったときに循環していたと推定される推定熱媒体量を算出する推定熱媒体量算出工程と、
複数の前記熱動弁のそれぞれの開閉状態の組み合わせと当該開閉状態の組み合わせ毎での前記熱媒体循環路を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量との関係に基づいて、前記推定熱媒体量の熱媒が前記熱媒体循環路を循環している場合での複数の前記熱動弁のそれぞれの開閉状態を特定する開閉状態特定工程とを有する点にある。
上記特徴構成によれば、推定熱媒体量算出工程において、実所要時間測定工程を行ったときに循環していたと推定される推定熱媒体量を算出できる。また、複数の熱動弁のそれぞれの開閉状態の組み合わせとその開閉状態の組み合わせ毎での熱媒体循環路を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量との関係とを記憶しておけば、導出した推定熱媒体量と記憶している理論熱媒体量とを比較することで、推定熱媒体量と最も近い理論熱媒体量に対応する熱動弁の開閉状態を特定できる。つまり、どの熱動弁が意図せずに開いているのかを推定できる。
熱供給システムの構成を示す図である。 熱媒体の循環状態を例示する図である。 熱媒体の循環状態を例示する図である。 熱媒体の循環状態を例示する図である。 弁動作検証処理を説明するフローチャートである。
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る熱供給システムの検査方法について説明する。
図1は、熱供給システムの構成を示す図である。図示するように、熱供給システムは、熱媒体を加熱する熱源機1と、熱媒体が流れる熱媒体循環路10とを備え、熱を消費する熱消費端末Hに対して、熱媒体循環路10を介して熱媒体を供給できるように構成されている。本実施形態の熱供給システムには、熱消費端末Hとして、高温熱消費端末H1と低温熱消費端末H2とが設けられ、熱動弁Vとして、高温側熱動弁V1と低温側熱動弁V2とがそれぞれの熱消費端末Hに対応して設けられる。つまり、本実施形態で説明する熱媒体循環路10は、複数の熱消費端末Hを経由させずに熱媒体を循環させることができる共通流路部分11と、当該共通流路部分11から複数の熱消費端末Hのそれぞれに向けて分岐し、熱動弁Vがそれぞれ設けられる複数の熱供給流路部分15とを有している。
熱源機1は、燃焼室2の内部に燃焼器3を備える。燃焼器3には、燃料ガスがガス供給路4を通って供給され、空気がブロア5によって供給される。燃焼器3への燃料ガス及び空気の供給量は制御装置Cが制御する。燃焼室2では、燃焼器3で発生した燃焼熱が、熱媒体循環路10を流れる熱媒体に伝達される。
熱供給システムにおいて、熱媒体循環路10は、熱消費端末Hを経由させずに熱媒体を循環させることができる共通流路部分11と、当該共通流路部分11から熱消費端末Hに向けて分岐し、途中に熱動弁Vが設けられる熱供給流路部分15とを有する。熱媒体循環路10での熱媒体の流動は、制御装置Cによって動作が制御されるポンプ7によって行われる。
共通流路部分11は、熱媒体循環路10のうち、ポンプ7で付勢された熱媒体が、共通流路部分11の途中の分岐部8と熱源機1と分岐部9と合流部17と暖房タンク6とを順に通って再びポンプ7に帰還する経路である。暖房タンク6は熱媒体循環路10を循環する熱媒体が一時的に貯えられる部分であり、例えば、温度変化に伴う熱媒体の体積変化を吸収するために設置されている。図示は省略するが、暖房タンク6には熱媒体を補充するための補充流路が接続されており、この熱供給システムの稼働開始時や熱媒体の減少時などのタイミングで、熱媒体の供給や補充が行われる。
熱供給流路部分15は、共通流路部分11から高温熱消費端末H1に向けて分岐する高温側熱供給流路部分12と、共通流路部分11から低温熱消費端末H2に向けて分岐する低温側熱供給流路部分13とを有する。また、高温熱消費端末H1及び低温熱消費端末H2で熱が消費された後の熱媒体は、帰還流路部分14を通って共通流路部分11の合流部17へと帰還する。
高温側熱供給流路部分12は、ポンプ7から見て、熱源機1よりも下流側の共通流路部分11の分岐部9から分岐して高温熱消費端末H1に至る。高温側熱供給流路部分12には高温側熱動弁V1が設けられる。高温側熱動弁V1の開閉動作は制御装置Cが制御する。このような構成を採用することで、高温側熱動弁V1が開いている場合には、熱媒体が共通流路部分11から高温側熱供給流路部分12へと分岐して流れ、高温熱消費端末H1で熱が消費された後の熱媒体が、帰還流路部分14を通って共通流路部分11の合流部17へと帰還する。尚、高温側熱動弁V1が閉じている場合には、高温側熱供給流路部分12に熱媒体は流れない。本実施形態では、高温側熱動弁V1の開閉動作は制御装置Cが制御する。
低温側熱供給流路部分13は、ポンプ7から見て、熱源機1よりも上流側の共通流路部分11の分岐部8から分岐して低温熱消費端末H2に至る。低温側熱供給流路部分13には低温側熱動弁V2が設けられる。低温側熱動弁V2の開閉動作は制御装置Cが制御する。このような構成を採用することで、低温側熱動弁V2が開いている場合には、熱媒体が共通流路部分11から低温側熱供給流路部分13へと分岐して流れ、低温熱消費端末H2で熱が消費された後の熱媒体が、合流部16及び帰還流路部分14を通って共通流路部分11の合流部17へと帰還する。尚、低温側熱動弁V2が閉じている場合には、低温側熱供給流路部分13に熱媒体は流れない。本実施形態では、低温側熱動弁V2の開閉動作は制御装置Cが制御する。
次に、図2~図4を参照して熱媒体の循環状態を説明する。図2~図4では、熱媒体が流動する部分を太線で描いている。
図2は、高温側熱動弁V1が閉じており且つ低温側熱動弁V2が閉じている場合での熱媒体の循環状態を示す図である。この場合、高温側熱動弁V1が閉じているため、高温側熱供給流路部分12及び高温熱消費端末H1には熱媒体は流れない。同様に、低温側熱動弁V2が閉じているため、低温側熱供給流路部分13及び低温熱消費端末H2には熱媒体は流れない。
図3は、高温側熱動弁V1が開いており且つ低温側熱動弁V2が閉じている場合での熱媒体の循環状態を示す図である。この場合、低温側熱動弁V2が閉じているため、低温側熱供給流路部分13及び低温熱消費端末H2には熱媒体は流れない。それに対して、高温側熱動弁V1が開いているため、高温側熱供給流路部分12及び高温熱消費端末H1には熱媒体が流れる。具体的には、熱媒体は、共通流路部分11を循環するのに加えて、共通流路部分11の分岐部9から分岐して高温側熱供給流路部分12を流れ、高温熱消費端末H1及び帰還流路部分14を経由して、共通流路部分11の合流部17へと帰還する。
図3に示す熱媒体の循環状態は、高温熱消費端末H1が使用されている場合での循環状態である。この場合、制御装置Cは、熱源機1で加熱された後の熱媒体の温度(温度センサT2で測定される温度)が例えば80℃になるように熱源機1を動作させる。その結果、高温熱消費端末H1には80℃の熱媒体が供給されて、その熱が消費される。
図4は、高温側熱動弁V1が閉じており且つ低温側熱動弁V2が開いている場合での熱媒体の循環状態を示す図である。この場合、高温側熱動弁V1が閉じているため、高温側熱供給流路部分12及び高温熱消費端末H1には熱媒体は流れない。それに対して、低温側熱動弁V2が開いているため、低温側熱供給流路部分13及び低温熱消費端末H2には熱媒体が流れる。具体的には、熱媒体は、共通流路部分11を循環するのに加えて、共通流路部分11の分岐部8から分岐して低温側熱供給流路部分13を流れ、低温熱消費端末H2及び帰還流路部分14を経由して、共通流路部分11の合流部17へと帰還する。
図4に示す熱媒体の循環状態は、低温熱消費端末H2が使用されている場合での循環状態である。この場合、低温側熱供給流路部分13は熱源機1よりも上流側で共通流路部分11から分岐しているため、低温熱消費端末H2には熱源機1で加熱された熱媒体が直接供給されることはなく、熱源機1で加熱された熱媒体と低温熱消費端末H2から帰還した熱媒体とが合流部17で合流され、その合流後の熱媒体が低温熱消費端末H2に供給される。よって、制御装置Cは、温度センサT1で温度が測定される、合流部17で合流された後の熱媒体(即ち、低温熱消費端末H2に供給される熱媒体)の温度が例えば60℃になるように熱源機1を動作させる。その結果、低温熱消費端末H2には60℃の熱媒体が供給されて、その熱が消費される。
尚、図示は省略するが、高温熱消費端末H1及び低温熱消費端末H2の両方が使用されている場合には、高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2の両方が開いており、高温側熱供給流路部分12及び高温熱消費端末H1には熱媒体が流れ、低温側熱供給流路部分13及び低温熱消費端末H2にも熱媒体が流れる。そして、高温熱消費端末H1及び低温熱消費端末H2から熱媒体が合流部17へと帰還する。
次に、熱動弁Vが正常であるか否かを検証するための弁動作検証処理について説明する。
図5は弁動作検証処理を説明するフローチャートである。本実施形態の熱供給システムの検査方法は、図5に示す加熱前温度測定工程と推定所要時間算出工程と実所要時間測定工程と弁動作検証工程とを有する。
工程#10において制御装置Cは、熱動弁Vを閉じ且つ熱源機1を加熱動作させない状態で共通流路部分11を所定期間だけ循環した熱媒体の温度である加熱前温度を測定する(加熱前温度測定工程)。具体的には、制御装置Cは、高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2の両方を閉じ、且つ、熱源機1を加熱動作させない状態で、ポンプ7を動作させる。それにより、図2に太線で示した部分を熱媒体が循環する。加えて、このような熱媒体の循環を所定期間行うことで、共通流路部分11を循環する熱媒体の温度が均一化される。また、熱媒体の温度は、温度センサT1を用いて測定され、その測定結果が制御装置Cに伝達される。つまり、工程#10で測定する熱媒体の温度は、共通流路部分11を循環する熱媒体の温度が均一化された後の温度である。
次に、工程#11において制御装置Cは、熱動弁Vが正常に閉じられていた場合に熱媒体循環路10を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量の熱媒体を、熱源機1を基準出力で加熱動作させることで加熱したと仮定した場合に、循環中の熱媒体が熱源機1へ帰還する部位での熱媒体の温度が加熱前温度から所定の目標温度へ上昇するのに要すると推定される推定所要時間を算出する(推定所要時間算出工程)。
具体的には、記憶装置Mには、熱動弁Vが正常に閉じられていた場合に熱媒体循環路10を循環する熱媒体の量を理論熱媒体量として記憶している。本実施形態では、複数の熱動弁V(高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2)が設けられているため、記憶装置Mには、以下の表1に示すように、複数の熱動弁Vのそれぞれの開閉状態の組み合わせと当該開閉状態の組み合わせ毎での熱媒体循環路10を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量との関係を記憶している。
Figure 0007026550000001
理論熱媒体量は熱媒体循環路10の容積に相当するため、この熱供給システムの施工を行った後に施工図面などから理論熱媒体量を導出し、その導出結果を記憶装置Mに記憶させることができる。或いは、熱供給システムの試運転時などの熱媒体循環路10に熱媒体を注入する段階で、各熱動弁Vの開閉状態を変えながらどれだけの熱媒体を熱媒体循環路10に入れることができるかを測定して、その測定結果を理論熱媒体量として記憶装置Mに記憶させることができる。
高温側熱動弁V1を閉じ且つ低温側熱動弁V2を閉じている場合の理論熱媒体量はL0である。また、熱源機1を基準出力:Wで加熱動作させた場合に、工程#10の加熱前温度測定工程で測定された熱媒体の加熱前温度:T0が目標温度:Trへ上昇するのに要すると推定される推定所要時間:X0は以下の〔式1〕で表される。つまり、推定所要時間算出工程では、理論熱媒体量と目標温度及び加熱前温度の温度差との積を、熱源機1の基準出力で除算した値を、推定所要時間として算出する。
X0=L0×(Tr-T0)/W ・・・・・〔式1〕
次に、工程#12において制御装置Cは、熱動弁Vを閉じ且つ熱源機1を基準出力で加熱動作させた状態で共通流路部分11に熱媒体を循環させて、循環中の熱媒体が熱源機1に帰還する部位での熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間を測定する(実所要時間測定工程)。具体的には、制御装置Cは、高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2の両方を閉じた状態で、ポンプ7を一定出力で動作させ、燃焼器3に供給する空気量及び燃料ガス量を一定量に調整して熱源機1を基準出力で加熱動作させながら、温度センサT1が測定する熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間を測定する。
その後、工程#13において制御装置Cは、推定所要時間と実所要時間との対比結果に基づいて、熱動弁Vが正常に閉じているか否かを判定する(弁動作検証工程)。
高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2に故障が発生しておらず、その両方が正常に閉じられていれば、熱媒体は図2に示す経路を循環し、その循環する熱媒体量は表1に示したL0と同じはずである。そして、温度センサT1が測定する熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間X1は、推定所要時間算出工程で算出した推定所要時間X0とほぼ同じになるはずである。但し、仮に何れかの熱動弁Vが故障して開いていれば、熱媒体は図3や図4などに示した経路を循環し、その循環する熱媒体量はL0よりも多くなると考えられる。そのため、L0よりも多くの量の熱媒体を熱源機1で加熱しなければならないため、温度センサT1が測定する熱媒体の温度が加熱前温度から目標温度に達するまでの実所要時間X1は、推定所要時間算出工程で算出した推定所要時間X0よりも長くなるはずである。
従って、制御装置Cは、実所要時間X1が、許容範囲を超えて推定所要時間X0よりも長ければ、熱動弁V(高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2)が正常に閉じられていないと判定する。このように、制御装置Cは、熱動弁Vを閉じ且つ熱源機1を基準出力で加熱動作させた状態で熱媒体循環路10を循環する熱媒体の温度上昇特性を温度センサT1を用いて測定し、当該温度上昇特性に基づいて熱動弁Vの動作が正常であるか否かを判定する。そして、制御装置Cは、熱動弁Vが正常に閉じられていないと判定した場合には、例えばエラーなどを発報する。
加えて、工程#14において制御装置Cは、加熱前温度及び目標温度及び基準出力及び実所要時間に基づいて、実所要時間測定工程を行ったときに循環していたと推定される推定熱媒体量を算出する(推定熱媒体量算出工程)。具体的には、熱源機1を基準出力:Wで加熱動作させて、熱媒体を加熱前温度:T0から目標温度:Trまで上昇させるのに要した実所要時間がX1の場合、実所要時間測定工程を行ったときに循環していたと推定される推定熱媒体量:Lsは以下の〔式2〕で表される。
Ls=W×X1/(Tr-T0) ・・・・・〔式2〕
また、記憶装置Mには、表1に示したように、複数の熱動弁Vのそれぞれの開閉状態の組み合わせと当該開閉状態の組み合わせ毎での熱媒体循環路10を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量との関係が記憶されている。つまり、何れかの熱動弁Vが正常に閉じられていないということは、熱動弁Vが開いているということであるので、推定熱媒体量:Lsは表1の理論熱媒体量の何れかと同等の値になるはずである。
そこで、工程#15において制御装置Cは、複数の熱動弁Vのそれぞれの開閉状態の組み合わせと当該開閉状態の組み合わせ毎での熱媒体循環路10を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量との関係に基づいて、推定熱媒体量の熱媒が熱媒体循環路10を循環している場合での複数の熱動弁Vのそれぞれの開閉状態を特定する(開閉状態特定工程)。具体的には、制御装置Cは、表1の関係を参照して、推定熱媒体量:Lsと最も近い理論熱媒体量を特定し、その理論熱媒体量に対応する熱動弁Vの開閉状態を特定する。例えば、制御装置Cは、推定熱媒体量:Lsと最も近い理論熱媒体量がL1である場合、「高温側熱動弁V1が開いている」という判定結果を決定する。そして、制御装置Cは、「高温側熱動弁V1が開故障」といったエラーを発報する。
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の熱供給システムの検査方法について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、熱供給システムから高温熱消費端末H1及び低温熱消費端末H2という2つの熱消費端末Hに熱媒体を供給する例を説明したが、3つ以上の熱消費端末Hに対して熱媒体を供給するような熱供給システムであっても構わない。
また、熱媒体循環路10の構成や熱媒体循環路10の途中に設けられる機器の種類や数なども、上記実施形態で説明したものから適宜変更可能である。
<2>
上記実施形態では、高温側熱動弁V1及び低温側熱動弁V2の両方を閉じた状態で、それらの熱動弁が正常に動作しているか否かを判定する方法について説明したが、何れかの熱動弁を開いた状態で、閉じた方の熱動弁が正常に動作しているか否かを判定してもよい。例えば、高温側熱動弁V1を開いた状態及び低温側熱動弁V2を閉じた状態にして、その低温側熱動弁V2が正常に閉じられているか否かを判定してもよい。つまり、少なくとも一つの熱動弁を閉じた状態にして、その熱動弁が正常に閉じられているか否かを判定してもよい。
<3>
上記実施形態では、弁動作検証工程において、推定所要時間と実所要時間とを対比する例を説明したが、それとは別の対比結果に基づいて熱動弁Vが正常に閉じているか否かを判定してもよい。
例えば、制御装置Cは、熱供給システムの検査方法として、熱動弁Vを閉じ且つ熱源機1を加熱動作させない状態で共通流路部分11を所定期間だけ循環した熱媒体の温度である加熱前温度を温度センサT1を用いて測定する加熱前温度測定工程と、熱動弁Vを閉じ且つ熱源機1を基準出力で加熱動作させた状態で共通流路部分11に熱媒体を循環させて、循環中の熱媒体が熱源機1に帰還する部位で温度センサT1によって測定される熱媒体の温度が目標温度に達するまでの実所要時間を測定する実所要時間測定工程と、加熱前温度及び目標温度及び基準出力及び実所要時間に基づいて、実所要時間測定工程を行ったときに循環していたと推定される推定熱媒体量を算出する推定熱媒体量算出工程と、熱動弁Vが正常に閉じられる場合に実所要時間測定工程で循環する理論熱媒体量と、上記推定熱媒体量との対比結果に基づいて、熱動弁Vが正常に閉じているか否かを判定する弁動作検証工程とを有していてもよい。例えば、弁動作検証工程では、推定熱媒体量算出工程で算出した推定熱媒体量と最も値の近い理論熱媒体量を例えば表1から選択し、その選択した理論熱媒体量に対応する複数の熱動弁Vのそれぞれの開閉状態の組み合わせを決定する。その結果、どの熱動弁が正常に閉じられているか否かを判定できる。
<4>
上記実施形態(別実施形態を含む)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、熱動弁の故障を適切に検出可能な熱供給システムの検査方法に利用できる。
1 熱源機
2 燃焼室
3 燃焼器
4 ガス供給路
5 ブロア
6 暖房タンク
7 ポンプ
8 分岐部
9 分岐部
10 熱媒体循環路
11 共通流路部分
12 高温側熱供給流路部分(熱供給流路部分 15)
13 低温側熱供給流路部分(熱供給流路部分 15)
14 帰還流路部分(熱供給流路部分 15)
16 合流部
17 合流部
C 制御装置
M 記憶装置
H1 高温熱消費端末(熱消費端末 H)
H2 低温熱消費端末(熱消費端末 H)
V1 高温側熱動弁(熱動弁 V)
V2 低温側熱動弁(熱動弁 V)

Claims (3)

  1. 熱媒体を加熱する熱源機と、
    熱媒体が流れる熱媒体循環路とを備え、
    熱を消費する熱消費端末に対して、前記熱媒体循環路を介して熱媒体を供給できるように構成されている熱供給システムの検査方法であって、
    前記熱供給システムにおいて、前記熱媒体循環路は、前記熱消費端末を経由させずに熱媒体を循環させることができる共通流路部分と、当該共通流路部分から前記熱消費端末に向けて分岐し、途中に熱動弁が設けられる熱供給流路部分とを有し、
    前記熱動弁を閉じ且つ前記熱源機を加熱動作させない状態で前記共通流路部分を所定期間だけ循環した熱媒体の温度である加熱前温度を測定する加熱前温度測定工程と、
    前記熱動弁が正常に閉じられていた場合に前記熱媒体循環路を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量の熱媒体を、前記熱源機を基準出力で加熱動作させることで加熱したと仮定した場合に、循環中の熱媒体が前記熱源機へ帰還する部位での熱媒体の温度が前記加熱前温度から所定の目標温度へ上昇するのに要すると推定される推定所要時間を算出する推定所要時間算出工程と、
    前記熱動弁を閉じ且つ前記熱源機を基準出力で加熱動作させた状態で前記共通流路部分に熱媒体を循環させて、循環中の熱媒体が前記熱源機に帰還する部位での熱媒体の温度が前記加熱前温度から前記目標温度に達するまでの実所要時間を測定する実所要時間測定工程と、
    前記推定所要時間と前記実所要時間との対比結果に基づいて、前記熱動弁が正常に閉じているか否かを判定する弁動作検証工程とを有する熱供給システムの検査方法。
  2. 前記推定所要時間算出工程において、前記理論熱媒体量と前記目標温度及び前記加熱前温度の温度差との積を、前記熱源機の前記基準出力で除算した値を、前記推定所要時間として算出する請求項1に記載の熱供給システムの検査方法。
  3. 前記熱供給システムにおいて、前記熱媒体循環路は、複数の前記熱消費端末を経由させずに熱媒体を循環させることができる前記共通流路部分と、当該共通流路部分から複数の前記熱消費端末のそれぞれに向けて分岐し、前記熱動弁がそれぞれ設けられる複数の熱供給流路部分とを有し、
    前記加熱前温度及び前記目標温度及び前記基準出力及び前記実所要時間に基づいて、前記実所要時間測定工程を行ったときに循環していたと推定される推定熱媒体量を算出する推定熱媒体量算出工程と、
    複数の前記熱動弁のそれぞれの開閉状態の組み合わせと当該開閉状態の組み合わせ毎での前記熱媒体循環路を循環する熱媒体の量である理論熱媒体量との関係に基づいて、前記推定熱媒体量の熱媒が前記熱媒体循環路を循環している場合での複数の前記熱動弁のそれぞれの開閉状態を特定する開閉状態特定工程とを有する請求項1又は2に記載の熱供給システムの検査方法。
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