JP7025853B2 - 窒化物半導体デバイスおよび窒化物半導体パッケージ - Google Patents
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Description
また、従来構造では、ソース-ゲート間およびゲート-ドレイン間のシートキャリア密度を上げるためにAlGaN層(電子供給層)を厚くすると、ゲート閾値電圧が低下し、ノーマリオンとなる場合があった。つまり、ゲート電極直下のゲート領域外のシートキャリア密度とゲート閾値電圧とは、トレードオフの関係にあった。
dG:前記ゲート層の厚さ(cm)
dB:前記電子供給層の厚さ(cm)
P:前記電子供給層の分極(C/cm2)
q:電気素量(C)
ΦB:前記ゲート電極の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV)
NDA+NA-NDD-ND:前記電子走行層の実効アクセプタ濃度
εC:前記電子走行層の比誘電率
εB:前記電子供給層の比誘電率
ε0:真空の誘電率
EF:前記電子走行層のフェルミ準位と伝導帯(EC)の下端とのエネルギ差(eV)
この構成によれば、ゲート層がアクセプタ型不純物を実効的に含まないため、デバイスがオンしても、ゲート層から電子供給層に正孔が注入されない。これにより、ターンオフ時間を短縮できるので、高速スイッチングを実現することができる。また、上記式(1)を満たすため、ノーマリオフ動作が可能である。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層の実効アクセプタ濃度NDA+NA-NDD-NDが5×1016cm-3以上であり、前記ゲート層の厚さdGが80nm以上であり、前記電子供給層のAl組成が25%以下であり、前記電子供給層の厚さdBが20nm以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層は、深いアクセプタとしてMgを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層は、深いアクセプタとしてCを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記ゲート層における前記アクセプタ型不純物の濃度が1×1016cm-3未満であってもよい。
この構成によれば、AlxGa1-xN(x≦1)からなる電子供給層のAl組成がx≧0.3であるため、高いシートキャリア密度と高いゲート閾値電圧とを両立することができる。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層のAl組成がx=1であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスは、前記電子供給層上のAlx´Ga1-x´N(x´≦1)からなるエッチングストップ層をさらに含み、前記電子供給層と前記エッチングストップ層との間にx<x´の関係が成立していてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層は、2nm以下の厚さを有するAlN電子供給層を含み、前記エッチングストップ層は、10nm以下の厚さを有し、前記エッチングストップ層のAl組成がx´=0.1であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層は、Inをさらに含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層のMgの濃度が、1×1016cm-3以上であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層のMgの濃度が、1×1017cm-3以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体パッケージは、前記窒化物半導体デバイスと、前記窒化物半導体デバイスが搭載された端子フレームと、前記窒化物半導体デバイスおよび前記端子フレームを封止する樹脂パッケージとを含む。
[1]第1発明について
[1-1]第1発明の第1実施形態
以下、図1~図17を参照して、第1発明の第1実施形態について詳細に説明する。
半導体パッケージ1は、端子フレーム2と、窒化物半導体デバイス3(チップ)と、樹脂パッケージ4とを含む。
端子フレーム2は、金属製の板状である。端子フレーム2は、窒化物半導体デバイス3を支持するベース部5(アイランド)と、ドレイン端子6と、ソース端子7と、ゲート端子8とを含む。ドレイン端子6は、ベース部5と一体的に形成されている。ドレイン端子6、ソース端子7およびゲート端子8は、それぞれ、ボンディングワイヤ9~11によって、窒化物半導体デバイス3のドレイン、ソースおよびゲートに電気的に接続されている。ソース端子7およびゲート端子8は、中央のドレイン端子6を挟むように配置されている。
図2は、窒化物半導体デバイス3の模式的な断面図である。なお、図2は、図1の特定の位置での切断面を示しているものではなく、本実施形態の説明に必要と考えられる要素の集合体を一つの断面を示している。
また、電子供給層14上には、ゲート電極16を覆うように表面絶縁膜17が形成されている。表面絶縁膜17には、電子供給層14の一部を選択的に露出させるコンタクト孔18a,19aが形成されており、これらのコンタクト孔18a,19aを介して、ソース電極18およびドレイン電極19が電子供給層14にオーミック接触している。ソース電極18およびドレイン電極19は、間隔を開けて配置されており、それらの間に、ゲート電極16が配置されている。また、ソース電極18は、表面絶縁膜17を介してゲート電極16を覆うパターンで形成されている。
ゲート層15は、たとえば、アンドープGaN層であってもよい。ここで、アンドープGaNは、アクセプタ型の不純物を実効的に含んでいないGaNを意味しており、具体的には、ゲート層15を形成する際に意図的に不純物が導入されていないGaNであり、より具体的には、たとえば1×1017cm-3未満、より好ましくは、1×1016cm-3未満の濃度である。これは、ゲート層15に含まれる不純物濃度がこの程度であれば、アクセプタとして機能することが無いためである。なお、これらの不純物濃度は、ゲート層15に対してSIMS(二次イオン質量分析装置)分析をすることにより、求めることができる。
そして、分極電荷20のために、電子走行層13における電子供給層14との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には大きな内部電界が発生し、図2に示すように、二次元電子ガス21が広がっている。
ソース電極18およびドレイン電極19は、たとえば、TiおよびAlを含むオーミック電極であり、電子供給層14を介して二次元電子ガス21に電気的に接続されている。
前述のように、窒化物半導体デバイス3においては、電子供給層14における電子走行層13との界面(GaN/AlGaNヘテロ界面)付近に正の分極電荷20(図3参照)が発生する。電子供給層14と電子走行層13との接合(AlGaN/GaN接合)の系全体において正の空間電荷が負の空間電荷で打ち消され、空間電荷の合計がゼロになるため、電子供給層14内の正の分極電荷20に対応して、電子供給層14(AlGaN)よりも小さなバンドギャップを有する電子走行層13(GaN)には、負の空間電荷からなる二次元電子ガス21が発生する。二次元電子ガス21は、ソース-ドレイン間の電子の通路(チャネル)となるものである。そのため、二次元電子ガス21がソース-ドレイン間に途切れることなく一様に存在していると、ゲート電極16に電圧を印加しなくても、ソース-ドレイン間の電位差によってソース-ドレイン間に電流が流れる、いわゆるノーマリオン型となる。
本発明におけるノーマリオフ化が達成されるメカニズムは以下の通りである。すなわち、ゲート層15内に生じる自発分極Psp(GaN-Gate)によって正の分極電荷20が打ち消され、結果として、ゲート電極16が配置されたゲート領域Gaにおいて選択的に二次元電子ガス21が消失するという原理である。つまり、上記式(2)にゲート層15の自発分極(-Psp(GaN-Gate))が加えられ、分極電荷20の大きさPが次式(3)に示すようになればよい。
一方で、分極電荷20の大きさは、図4に示したように電子供給層14(AlGaN)のAl組成に依存する。そこで、ゲート領域Gaにおける分極電荷20を確実に抑えるべく、電子供給層14の物性に合わせて、ゲート層15および電子走行層13の条件を定める必要がある。
dG:ゲート層15の厚さ(cm)
dB:電子供給層14の厚さ(cm)
P:電子供給層14の分極(C/cm2)
q:電気素量(C)
ΦB:ゲート電極16の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV)
NDA+NA-NDD-ND:電子走行層13の実効アクセプタ濃度
εC:電子走行層13の比誘電率
εB:電子供給層14の比誘電率
ε0:真空の誘電率
EF:電子走行層13のフェルミ準位と伝導帯(EC)の下端とのエネルギ差(eV)
上記式(1)を満たすには、伝導帯ECのポテンシャルの増加成分(P1)に対応するdBP/ε0εBができる限り小さいことが好ましい。したがって、dBP/ε0εBの変数であるdBおよびPを小さくすることを考える。
まず、図9は、電子供給層14の物性と、伝導帯ECのポテンシャルの減少成分(P2)の一部であるdG√(NDA+NA-NDD-ND)との関係を示す図であり、複数の厚さdBおよびAl組成の組み合わせに対するdG√(NDA+NA-NDD-ND)の好ましい範囲を示している。なお、√(NDA+NA-NDD-ND)は、(NDA+NA-NDD-ND)1/2を意味している。
ここで、(NDA+NA-NDD-ND)の求め方を説明する。
浅いドナー準位EDは、たとえば、電子走行層13の伝導帯の下端(底)のエネルギ準位ECから0.025eV以下の離れた位置でのエネルギ準位であり、深いドナー準位EDDと区別できるのであれば、単に「ドナー準位ED」と呼んでもよい。通常、この位置にドーピングされたドナーの電子は、室温(熱エネルギkT=0.025eV程度)でも伝導帯に励起されて自由電子となっている。浅いドナー準位EDを形成する不純物としては、たとえば、Si、Oからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらは、電子走行層13のエピタキシャル成長中に膜中に取り込まれてもよいし、意図的にドーピングしてもよい。たとえば、酸素(O)は、原料ガスやキャリヤガスから取り込まれてもよい。
a、Li、Na、K、Sc、Zr、Fe、Co、Ni、Mg、ArおよびHeからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらのうち、主にCおよびMgが挙げられるが、炭素(C)はGaN中の窒素サイトに取り込まれると深いアクセプタとして機能し、Gaサイトに取り込まれると浅いドナーとして機能するため、(NDA+NA-NDD-ND)を確実に上げるには、Mgを使用することが好ましく、Mgは、電子走行層13において、電子供給層14との界面から150nm以内の領域に含まれていることが好ましい。たとえば、図5や図11(後述)において、GaN電子走行層13のエネルギーバンドが曲がっている領域は、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から150nm程度である。つまり、当該界面から150nm以内の領域が閾値電圧に寄与することになり、この領域の不純物の濃度や種類が重要になるためである。
そして、上記説明した浅いドナー準位ED、深いドナー準位EDD、浅いアクセプタ準位EAおよび深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物(ドーパント)の濃度を、それぞれ、浅いドナー濃度ND、深いドナー濃度NDD、浅いアクセプタ濃度NA、深いアクセプタ濃度NDAと呼ぶことにする。たとえば、深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物として、C(カーボン)のみが0.5×1016cm-3の濃度で電子走行層13にドーピングされている場合、このカーボン濃度が深いアクセプタ濃度NDAと定義される。これらの濃度ND、NDD、NAおよびNDAは、たとえば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)で測定することができる。
そして、図10Cに示すように、ある一定以上の電圧Vthを印加すると全ての領域の深いアクセプタで電子捕獲が起きる。これ以上の電圧が印加されても電子捕獲が起こらず、電束を打ち消しきれないため、ソース電極から伝導帯ECへ電子が注入されて電流が流れ出す。このときの電圧Vthを含む式が、ポアソン方程式からNA+NDA-ND-NDD=2Vthε0εC/qW2(Wは、GaN電子走行層の厚さ)と導かれ、結果として、Vth=q(NA+NDA-ND-NDD)・W2/2ε0εCが得られる。つまり、この式に基づいて、(NA+NDA-ND-NDD)を求めることができる。
図11は、電子供給層14のAl組成20%、厚さdBが15nm、ゲート層15の厚さdGが80nm、ΦB=1.2eV、(NDA+NA-NDD-ND)を5×1016cm-3としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。このとき閾値電圧は0.3eVで、かろうじてノーマリオフ動作となっている。このことから、ノーマリオフ動作には少なくとも5×1016cm-3程度以上の(NDA+NA-NDD-ND)が必要であることが分かる。
<シミュレーション条件>
(1)参考形態(図12~図14)
・GaN(電子走行層13):NDA+NA-NDD-ND=2.0×1016cm-3
・AlGaN(電子供給層14):Al組成25%、膜厚15nm
・GaN(ゲート層15):ノンドープ、膜厚60nm
・ゲート電極:仕事関数ΦM=4.6eV
(2)実施形態(図15~図17)
・GaN(電子走行層13):NDA+NA-NDD-ND=1.0×1017cm-3
・AlGaN(電子供給層14):Al組成25%、膜厚15nm
・GaN(ゲート層15):ノンドープ、膜厚100nm
・ゲート電極:仕事関数ΦM=4.6eV
図12に示すように、参考形態では、ゲート電極16に負電圧を印加することでポテンシャル井戸23の伝導帯ECのポテンシャルがフェルミ準位よりも高い位置となり、デバイスのオフ状態が保持されている。つまり、ゲート電極16に電圧が印加されていない状態ではソース-ドレイン間に電流が流れるノーマリオン型である。この参考形態について、前述の図9と同様のグラフにdG√(NDA+NA-NDD-ND)の値をプロットすると、図13に「○」で示した位置になる。また、図14の結果から、ゲート電圧Vg=0Vのときに約3.0×10-2(A/mm)の電流が流れることが確認された。
でポテンシャル井戸23の伝導帯ECのポテンシャルがフェルミ準位よりも低い位置となり、デバイスのオン状態へ移行する。つまり、ゲート電極16に電圧が印加されていない状態ではソース-ドレイン間に電流が流れないノーマリオフ型である。この実施形態について、前述の図9と同様のグラフにdG√(NDA+NA-NDD-ND)の値をプロットすると、図16に「○」で示した位置になる。また、図17の結果から、ゲート電圧Vg=0Vのときには電流が流れないことが確認された。
たとえば、前述の第1実施形態では、電子走行層13がGaNからなり、電子供給層14がAlGaNからなる例について説明したが、電子走行層13と電子供給層14とはAl組成が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。電子供給層/電子走行層の組み合わせは、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/AlGaN層(ただしAl組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層のうちのいずれかであってもよい。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含む。電子走行層は、組成中にGaおよびNを含み、Al組成が電子供給層とは異なる。電子供給層と電子走行層とでAl組成が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因するキャリアが二次元電子ガスの形成に寄与する。
[1-2]第1発明の第2実施形態および第3実施形態
以下、図1~図8、図10、図18~図24を参照して、第1発明の第2実施形態および第3実施形態について詳細に説明する。
図1を参照して、第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3を備える半導体パッケージ1は、端子フレーム2と、窒化物半導体デバイス3(チップ)と、樹脂パッケージ4とを含む。
第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3の模式的な断面図は、図2を用いて説明した第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3の模式的な断面図と同様である。
また、電子供給層14上には、ゲート電極16を覆うように表面絶縁膜17が形成されている。
ソース電極18およびドレイン電極19は、間隔を開けて配置されており、それらの間に、ゲート電極16が配置されている。また、ソース電極18は、表面絶縁膜17を介してゲート電極16を覆うパターンで形成されている。
ゲート層15は、たとえば、アンドープGaN層であってもよいし、アクセプタ型の準位を含むGaN層であってもよい。ここで、アンドープGaNは、アクセプタ型の不純物を実効的に含んでいないGaNを意味している。具体的には、ゲート層15を形成する際に意図的に不純物が導入されていないGaNであり、より具体的には、たとえば1×1017cm-3未満、より好ましくは、1×1016cm-3未満の濃度である。これは、ゲート層15に含まれる不純物濃度がこの程度であれば、アクセプタとして機能することが無いためである。なお、これらの不純物濃度は、ゲート層15に対してSIMS(二次イオン質量分析装置)分析をすることにより、求めることができる。また、アクセプタ型の準位を含むGaN層は、たとえば、アクセプタとしてMgやCを含んでいてもよいし、空孔欠陥が形成されていてもよい。
そして、分極電荷20のために、電子走行層13における電子供給層14との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には大きな内部電界が発生し、図2に示すように、二次元電子ガス21が広がっている。
ソース電極18およびドレイン電極19は、たとえば、TiおよびAlを含むオーミック電極であり、二次元電子ガス21に電気的に接続されている。
デバイス3の電界強度分布を示す図である。
前述のように、窒化物半導体デバイス3においては、電子供給層14における電子走行層13との界面(GaN/AlGaNヘテロ界面)付近に正の分極電荷20(図3参照)が発生する。電子供給層14と電子走行層13との接合(AlGaN/GaN接合)の系全体において正の空間電荷が負の空間電荷で打ち消され、空間電荷の合計がゼロになるため、電子供給層14内の正の分極電荷20に対応して、電子供給層14(AlGaN)よりも小さなバンドギャップを有する電子走行層13(GaN)には、負の空間電荷からなる二次元電子ガス21が発生する。二次元電子ガス21は、ソース-ドレイン間の電子の通路(チャネル)となるものである。そのため、二次元電子ガス21がソース-ドレイン間に途切れることなく一様に存在していると、ゲート電極16に電圧を印加しなくても、ソース-ドレイン間の電位差によってソース-ドレイン間に電流が流れる、いわゆるノーマリオン型となる。
本発明におけるノーマリオフ化が達成されるメカニズムは以下の通りである。すなわち、ゲート層15内に生じる自発分極Psp(GaN-Gate)によって正の分極電荷20が打ち消され、結果として、ゲート電極16が配置されたゲート領域Gaにおいて選択的に二次元電子ガス21が消失するという原理である。つまり、上記式(2)にゲート層15の自発分極(-Psp(GaN-Gate))が加えられ、分極電荷20の大きさPが次式(3)に示すようになればよい。
一方で、分極電荷20の大きさは、図4に示したように電子供給層14(AlGaN)のAl組成に依存する。
本実施形態では、ゲート領域Gaにおける分極電荷20を確実に抑えるべく、電子供給層14の物性に合わせて、ゲート層15および電子走行層13の条件を定める必要がある。具体的には、図5において、電子走行層13および電子供給層14の接合界面(GaN/AlGaN界面)に生じたポテンシャル井戸23とゲート電極16との間の伝導帯ECのポテンシャルの増減成分(P1)、(P2)および(P3)について、(P2)+(P3)-(P1)>0を満たすような条件とする。これにより、ポテンシャル井戸23の伝導帯ECのポテンシャルをフェルミ準位(図5において0.0eVの位置)よりも低い位置にしてドレイン電流を流すために、ゲート電極16に正電圧の印加が必要となるからである。
dG:ゲート層15の厚さ(cm)
dB:電子供給層14の厚さ(cm)
P:電子供給層14の分極(C/cm2)
q:電気素量(C)
ΦB:ゲート電極16の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV)
NDA+NA-NDD-ND:電子走行層13の実効アクセプタ濃度
εC:電子走行層13の比誘電率
εB:電子供給層14の比誘電率
ε0:真空の誘電率
EF:電子走行層13のフェルミ準位と伝導帯(EC)の下端とのエネルギ差(eV)
上記式(1)の伝導帯ECのポテンシャルの減少成分(P2)の一部であるdG√(NDA+NA-NDD-ND)の(NDA+NA-NDD-ND)は、以下のように求めることができる。
浅いドナー準位EDは、たとえば、電子走行層13の伝導帯の下端(底)のエネルギ準位ECから0.025eV以下の離れた位置でのエネルギ準位であり、深いドナー準位EDDと区別できるのであれば、単に「ドナー準位ED」と呼んでもよい。通常、この位置にドーピングされたドナーの電子は、室温(熱エネルギkT=0.025eV程度)でも伝導帯に励起されて自由電子となっている。浅いドナー準位EDを形成する不純物としては、たとえば、Si、Oからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらは、電子走行層13のエピタキシャル成長中に膜中に取り込まれてもよいし、意図的にドーピングしてもよい。たとえば、酸素(O)は、原料ガスやキャリヤガスから取り込まれてもよい。
これらのうち、主にCおよびMgが挙げられるが、炭素(C)はGaN中の窒素サイトに取り込まれると深いアクセプタとして機能し、Gaサイトに取り込まれると浅いドナーとして機能するため、(NDA+NA-NDD-ND)を確実に上げるには、Mgを使用することが好ましい。また、電子走行層13においてエネルギーバンドが曲がっている領域は、不純物の種類(フェルミ準位)と(NDA+NA-NDD-ND)に依存する。また、電子走行層13においてMgが含まれている領域は、Mg濃度に依存する。たとえば、不純物がMg、(NDA+NA-NDD-ND)が1×1017cm-3である図25(後述)では、GaN電子走行層13のエネルギーバンドが曲がっている領域は、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から150nm程度である。一方、不純物がMg、(NDA+NA-NDD-ND)が4×1016cm-3である図23(後述)では、当該エネルギーバンドが曲がっている領域は、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から250nm程度である。つまり、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から上記上限以内の領域が閾値電圧に寄与することになり、この領域の不純物の濃度や種類が重要になるためである。
そして、上記説明した浅いドナー準位ED、深いドナー準位EDD、浅いアクセプタ準位EAおよび深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物(ドーパント)の濃度を、それぞれ、浅いドナー濃度Nd、深いドナー濃度Ndd、浅いアクセプタ濃度Na、深いアクセプタ濃度Ndaと呼ぶことにする。たとえば、深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物として、C(カーボン)のみが0.5×1016cm-3の濃度で電子走行層13にドーピングされている場合、このカーボン濃度が深いアクセプタ濃度NDAと定義される。これらの濃度ND、NDD、NAおよびNDAは、たとえば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)で測定することができる。
そして、図10Cに示すように、ある一定以上の電圧Vthを印加すると全ての領域の深いアクセプタで電子捕獲が起きる。これ以上の電圧が印加されても電子捕獲が起こらず、電束を打ち消しきれないため、ソース電極から伝導帯ECへ電子が注入されて電流が流れ出す。このときの電圧Vthを含む式が、ポアソン方程式からNDA+NA-NDD-ND=2Vthε0εC/qW2(Wは、GaN電子走行層の厚さ)と導かれ、結果として、Vth=q(NDA+NA-NDD-ND)・W2/2ε0εCが得られる。つまり、この式に基づいて、(NDA+NA-NDD-ND)を求めることができる。
まず、ゲート層15の厚さdGは、たとえば、50nm~200nmが好ましい。一方、電子走行層13の(NDA+NA-NDD-ND)は、たとえば、1×1016cm-3~5×1017cm-3であり、好ましくは、Mg濃度が1×1016cm-3以上であり、さらに好ましくは、Mg濃度が1×1017cm-3以下である。
まず、電子供給層14の厚さdBについて、図7を参照すると、AlGaNのAl組成(X=0.1~0.9)に関わらず、厚さdBを大きくしても、二次元電子ガス21のシートキャリア密度がdB=10nm程度でほぼ最大値に収束する。そのため、シートキャリア密度に関して言えば、厚さdBは最大で10nmあれば十分である。逆に、図8に示すように、伝導帯ECのポテンシャルの増加成分(P1)であるdBP/ε0εBが電子供給層14の厚さdBの増加に伴って比例的に増加するため、dBP/ε0εBを小さくすることを優先的に考えると、厚さdBはできる限り小さい方が好ましい。したがって、電子供給層14の厚さdBは、10nm以下の範囲で、できる限り小さい方が好ましい。
図18は、シートキャリア密度ごとに電子供給層14のAl組成とゲート閾値電圧との関係を示す図である。図19は、シートキャリア密度ごとに電子供給層14のAl組成と電子供給層14の膜厚との関係を示す図である。図18および図19では、ゲート層15の深いアクセプタ濃度を2×1017cm-3とし、電子走行層13の深いアクセプタ濃度を4×1016cm-3として計算した。
ことが好ましい。さらに、エッチングストップ層24のAl組成は、0.1≦x´≦0.2であることが好ましく、x´=0.1であることがさらに好ましい。エッチングストップ層24のAl組成を0.1以上とすることによりエッチングストップ機能を十分保持しながら、0.2以下とすることによりゲート閾値電圧Vthに与える影響が少なくて済む。
また、図20の構成では、コンタクト孔18a,19aに連続するように、さらにエッチングストップ層24および電子供給層14が選択的に除去されており、ソース電極18およびドレイン電極19は、コンタクト孔18a,19aを介して電子走行層13にオーミック接触している。
図20の窒化物半導体デバイス3を製造するには、たとえば、図21Aに示すように、たとえばエピタキシャル成長法によって、基板12上に、電子走行層13、電子供給層14、エッチングストップ層24およびゲート層15が形成される。
次に、図21Cに示すように、電極材料26が選択的にエッチングされてゲート電極16が形成される。続いて、たとえばCl2/O2プラズマを用いてゲート層15が選択的にエッチングされる。このエッチングは、AlGaNエッチングストップ層24で停止する。
次に、図21Eに示すように、表面絶縁膜17、エッチングストップ層24および電子供給層14が連続して選択的にエッチングされることによって、コンタクト孔18a,19aが形成される。この際、電子供給層14もエッチングして電子走行層13を露出させることによって、ソース電極18およびドレイン電極19の接触抵抗を低減することができる。
図22~図26は、ゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。
より具体的には、図22は、電子供給層14のAl組成40%、厚さdBが6nm、ゲート層15の厚さdGが60nm、ΦB=1.2eV(ゲート電極16の材料:TiN)、電子走行層13のNDA+NA-NDD-ND(深いアクセプタはC)=4×1016cm-3としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。
図24は、電子走行層13のNDA+NA-NDD-NDd=1×1017cm-3としたこと以外は、図22と同一条件としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。
図22と図23との比較、および図24と図25との比較から、電子走行層13のフェルミ準位と伝導帯(EC)の下端とのエネルギ差EFが高いほど、ゲート閾値電圧が高くなることが分かる。
そして、図26から総合的に判断すると、電子走行層13に含まれる深いアクセプタがMg(EF=3.2eV)であれば、比較的ゲート閾値電圧を高くできることから好ましく、そのNDA+NA-NDD-NDについては、1×1016cm-3以上、1×1018cm-3以下であることが好ましいことが分かる。
たとえば、前述の第2および第3実施形態では、電子走行層13がGaNからなり、電子供給層14がAlGaNまたはAlNからなる例について説明したが、電子走行層13と電子供給層14とはAl組成が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。電子供給層/電子走行層の組み合わせは、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/AlGaN層(ただしAl組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層のうちのいずれかであってもよい。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含む。電子走行層は、組成中にGaおよびNを含み、Al組成が電子供給層とは異なる。電子供給層と電子走行層とでAl組成が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因するキャリアが二次元電子ガスの形成に寄与する。
また、前述の第2および第3実施形態では、基板12の材料例としてシリコンを例示したが、ほかにも、サファイア基板やGaN基板などの任意の基板材料を適用できる。
[2]第2発明について
第2発明は、III族窒化物半導体(以下単に「窒化物半導体」という場合がある。)からなる窒化物半導体装置に関する。
このような窒化物半導体を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)が提案されている。このようなHEMTは、たとえば、GaNからなる電子走行層と、この電子走行層上にエピタキシャル成長されたAlGaNからなる電子供給層とを含む。電子供給層に接するように一対のソース電極およびドレイン電極が形成され、それらの間にゲート電極が配置される。GaNとAlGaNとの格子不整合に起因する分極のために、電子走行層内において、電子走行層と電子供給層との界面から数Åだけ内方の位置に、二次元電子ガスが形成される。この二次元電子ガスをチャネルとして、ソース・ドレイン間が接続される。ゲート電極に制御電圧を印加することで、二次元電子ガスを遮断すると、ソース・ドレイン間が遮断される。ゲート電極に制御電圧を印加していない状態では、ソース・ドレイン間が導通するので、ノーマリーオン型のデバイスとなる。
しかし、パワーデバイスとして用いるためには、ゼロバイアス時に電流を遮断するノーマリーオフ型のデバイスである必要があるため、前述のようなHEMTは、パワーデバイスには適用できない。
第2発明は、次のような特徴を有している。
A1.電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、前記第2窒化物半導体層上に配置されたゲート部とを含み、前記ゲート部は、前記第2窒化物半導体層上に配置されかつアクセプタ型不純物を含む窒化物半導体ゲート層と、前記窒化物半導体ゲート層上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含む、窒化物半導体装置。
A2.前記ゲート絶縁膜が、SiN、SiO2、SiON、Al2O3、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiONおよびAlONのうちから選択された1つから構成されている、「A1.」に記載の窒化物半導体装置。
A4.ゲートリーク電流は、1nA/mm以下である、「A1.」~「A3.」のいずれかに記載の窒化物半導体装置。
A5.前記窒化物半導体ゲート層の膜厚は100nm以下であり、前記ゲート絶縁膜の膜厚は3nm以上である、「A1.」~「A3.」のいずれかに記載の窒化物半導体装置。
A7.前記窒化物半導体ゲート層と前記ゲート絶縁膜との界面の炭素濃度は、1×1013cm-2以下である、「A1.」に記載の窒化物半導体装置。
A9.前記第1窒化物半導体層はGaN層からなり、前記第2窒化物半導体層はAlGaN層からなり、前記窒化物半導体ゲート層はp型GaN層からなり、第3窒化物半導体層がAlGaN層からなる、「A6.」に記載の窒化物半導体装置。
第2発明の実施の形態を、図27~図35を参照して詳細に説明する。図27~図295の符号は、前述の第1発明の説明に使用した図1~図26の符号とは無関係である。
図27は、第2発明の一実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
さらに、この窒化物半導体装置1は、第2窒化物半導体層5およびゲート部20を覆うパッシベーション膜9と、パッシベーション膜9上に積層されたバリアメタル膜10とを含む。さらに、この窒化物半導体装置1は、パッシベーション膜9とバリアメタル膜10との積層膜に形成されたソース電極用コンタクト孔11およびドレイン電極用コンタクト孔12を貫通して第2窒化物半導体層5にオーミック接触しているソース電極13およびドレイン電極14とを含む。ソース電極13およびドレイン電極14は、間隔を開けて配置されている。ソース電極13は、ゲート部20を覆うように形成されている。さらに、この窒化物半導体装置1は、ソース電極13およびドレイン電極14を覆う層間絶縁膜15を含む。
第2窒化物半導体層5は、電子供給層を構成している。第2窒化物半導体層5は、第1窒化物半導体層4よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体からなっている。具体的には、第2窒化物半導体層5は、第1窒化物半導体層4よりもAl組成の高い窒化物半導体からなっている。窒化物半導体においては、Al組成が高いほどバッドギャップは大きくなる。この実施形態では、第2窒化物半導体層5は、Alx1Ga1-x1N層(0<x1<1)からなり、その厚さは10nm~30nm程度である。
ゲート電極8は、ゲート絶縁膜7の表面に接するように形成されている。ゲート電極8は、この実施形態では、TiN層から構成されており、その厚さは50nm~200nm程度である。ゲート電極8は、ソース電極用コンタクト孔11寄りに偏って配置されている。
パッシベーション膜9上には、バリアメタル膜10が積層されている。この実施形態では、バリアメタル膜10はTiN膜からなり、その厚さは10nm~50nm程度である。この実施形態では、バリアメタル膜10の厚さは、25nmである。
この窒化物半導体装置1では、第1窒化物半導体層4(電子走行層)上にバンドギャップ(Al組成)の異なる第2窒化物半導体層5(電子供給層)が形成されてヘテロ接合が形成されている。これにより、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面付近の第1窒化物半導体層4内に二次元電子ガス16が形成され、この二次元電子ガス16をチャネルとして利用したHEMTが形成されている。ゲート電極8は、ゲート絶縁膜7およびp型GaN層からなる窒化物半導体ゲート層6を挟んで第2窒化物半導体層5に対向している。
図28A~図28Gは、前述の窒化物半導体装置1の製造工程の一例を説明するための断面図であり、製造工程における複数の段階における断面構造が示されている。
法によって、基板2上に、バッファ層3および第1窒化物半導体層(電子走行層)4が順にエピタキシャル成長される。さらに、MOCVD法によって、第1窒化物半導体層4上に第2窒化物半導体層(電子供給層)5がエピタキシャル成長される。
次に、図28Cに示すように、ゲート電極膜33表面におけるゲート電極作成予定領域を覆うレジスト膜34が形成される。そして、レジスト膜34をマスクとして、ゲート電極膜33、絶縁材料膜32およびゲート層材料膜31が選択的にエッチングされる。
次に、レジスト膜34が除去される。この後、図28Dに示すように、プラズマCVD法またはLPCVD法によって、露出した表面全域を覆うように、パッシベーション膜9が形成される。そして、スパッタ法によって、パッシベーション膜9の表面に、バリアメタル膜10が形成される。パッシベーション膜9は、たとえばSiN層からなる。バリアメタル膜10は、たとえばTiN層からなる。
次に、図28Fに示すように、露出した表面全域を覆うようにソース・ドレイン電極膜35が形成される。ソース・ドレイン電極膜35は、下層としてのTi層35A、中間層としてのAl層35Bおよび上層としてのTiN層35Cを積層した積層金属膜からなり、各層を順に蒸着することによって形成される。
以下において、図27の窒化物半導体装置1に対して、ゲート絶縁膜7が設けられていない構成の窒化物半導体装置を比較例ということにする。図29は、比較例に係る窒化物半導体装置101の構成を示す断面図である。比較例に係る窒化物半導体装置101では、ゲート部20は、第2窒化物半導体層5上に形成された窒化物半導体ゲート層6と、窒化物半導体ゲート層6上に形成されたゲート電極8とからなる。比較例では、p型GaNからなる窒化物半導体ゲート層6にTiNからなるゲート電極8がショットキー接合されている。比較例の窒化物半導体ゲート層6の膜厚は80nmである。なお、前述の窒化物半導体装置1の窒化物半導体ゲート層6の膜厚は60nmであり、ゲート絶縁膜7の膜厚は30nmである。
前述の実施形態に係る窒化物半導体装置1(以下、本実施形態という)では、窒化物半導体ゲート層6上にゲート絶縁膜7が形成され、そのゲート絶縁膜7上にゲート電極8が形成されている。つまり、本実施形態では、窒化物半導体ゲート層6とゲート電極8との間にゲート絶縁膜7が介在しているので、比較例に比べて、ゲートリーク電流を小さくすることができる。これにより、窒化物半導体ゲート層6が劣化しにくくなる。本実施形態では、ゲートリーク電流は、1nA/mm以下である。
図30は、比較例のエネルギー分布を示すエネルギーバンド図である。図31は、比較例の電界強度分布を示す電界強度分布図である。図30および図31において、GaNは第1窒化物半導体層4を示し、AlGaNは第2窒化物半導体層5を示し、P-GaNは窒化物半導体ゲート層6を示し、Metalは、ゲート電極8を示している。図30において、ECは伝導帯のエネルギーレベルであり、EVは価電子帯のエネルギーレベルであり、EFはフェルミ準位である。
図30の例では、閾値電圧Vthは2[V]となる。窒化物半導体装置の閾値電圧Vthは、Si半導体装置の閾値電圧Vthに比べて小さいので、閾値電圧Vthを大きくすることが重要である。比較例において閾値電圧Vthを上げるためには、窒化物半導体ゲート層6の膜厚を大きくする必要がある。p-GaNのアクセプタであるMg,Feはメモリ効果を有するため、図31からわかるように、窒化物半導体ゲート層6の膜厚を大きくすると、窒化物半導体ゲート層6内部の電界強度は、ゲート電極8との境界部に近づくにつれて高くなる。また、窒化物半導体は、絶縁膜に比べて、許容できる電界強度が小さい。そのため、窒化物半導体ゲート層6の膜厚をあげることができず、閾値電圧Vthを高くすることは困難である。窒化物半導体ゲート層6の膜厚は、通常、100nm以下にされる。
次に、本実施形態では、比較例に比べて閾値電圧Vthを安定させることができる理由について説明する。
比較例では、CVD装置によって窒化物半導体ゲート層6の材料膜(ゲート層材料膜)を形成した後、スパッタ装置によってゲート層材料膜上にゲート電極の材料膜(ゲート電極膜)が形成される。このため、窒化物半導体ゲート層6の表面が大気に晒されるので、その表面に大気中の有機分子が付着する。これにより、ショットキー障壁ΦBの大きさが変動し、閾値電圧Vthが不安定になる。
以上、第2発明の実施形態について説明したが、第2発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、第1窒化物半導体層(電子走行層)4がGaN層からなり、第2窒化物半導体層(電子供給層)5がAlGaN層からなる例について説明したが、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5とはバンドギャップ(例えばAl組成)が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。たとえば、第1窒化物半導体層4/第2窒化物半導体層5の組み合わせとしては、GaN/AlN、AlGaN/AlNなどを例示できる。
また、前述の実施形態では、ゲート電極7を窒化物半導体ゲート層6に接合させたとすると、それらがショットキー接合するような材料からゲート電極7が構成されている場合について説明した。しかし、ゲート電極7を窒化物半導体ゲート層6に接合させたとすると、それらがオーミック接合するような材料からゲート電極7が構成されている場合にも、第2発明を適用することができる。
2 端子フレーム
3 窒化物半導体デバイス
4 樹脂パッケージ
13 電子走行層
14 電子供給層
15 ゲート層
16 ゲート電極
18 ソース電極
19 ドレイン電極
24 エッチングストップ層
Claims (7)
- 窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に形成された電子供給層と、
前記電子供給層上に形成されたエッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層上に選択的に形成された窒化物半導体からなるゲート層と、
前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を挟んで配置されたソース電極およびドレイン電極とを含み、
前記電子供給層がAlNからなり、
前記エッチングストップ層がAlx´Ga1-x´Nからなり、
前記エッチングストップ層の厚さが10nm以下であり、
前記エッチングストップ層のAl組成が0.1≦x´≦0.2であり、
前記ソース電極は、前記ゲート電極の側面および上面を覆う部分を有している、窒化物半導体デバイス。 - 前記電子供給層の厚さが2nm以下である、請求項1に記載の窒化物半導体デバイス。
- 前記エッチングストップ層のAl組成がx´=0.1である、請求項1または2に記載の窒化物半導体デバイス。
- 前記電子供給層および前記エッチングストップ層の一部または全部が、前記ソース電極および前記ドレイン電極の形成領域において選択的に除去されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
- 前記電子走行層は、不純物としてMgを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
- 前記ゲート電極は、Ni、Pt、Mo、WまたはTiNを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイスと、
前記窒化物半導体デバイスが搭載された端子フレームと、
前記窒化物半導体デバイスおよび前記端子フレームを封止する樹脂パッケージとを含む、窒化物半導体パッケージ。
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