JP7025853B2 - 窒化物半導体デバイスおよび窒化物半導体パッケージ - Google Patents

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Description

本発明は、HEMT(High Electron Mobility Transistor)構造を有する窒化物半導体デバイスおよびそのパッケージに関する。
たとえば、ノーマリオフ型のトランジスタとして、特許文献1は、サファイア基板と、サファイア基板上のAlNバッファ層と、AlNバッファ層上のアンドープGaN層と、アンドープGaN層上のアンドープAlGaN層と、アンドープAlGaN層の一部の上に設けられたp型GaN層と、p型GaN層上の高濃度p型GaN層と、高濃度p型GaN層上のゲート電極とを備える電界効果トランジスタを開示している。
特許第4705412号公報
Journal of Applied Physics, Vol87, No.8 ‘Scattering mechanisms limiting two-dimensional electron gas mobility in Al0.25Ga0.75N modulation-doped field-effect transistors’
特許文献1のトランジスタでは、ゲート電圧に正の電圧を印加すると、ある立ち上がり電圧でゲート電流が流れ始め、p型AlGaN層よりチャネルに正孔が注入される。続いて、注入された正電荷を打ち消すために電子がチャネルに誘起されることで、オン状態となる。このように、特許文献1のトランジスタはノーマリオフ型であるものの、ゲート電極の下方の層がp型不純物を含むので、オン時にp型GaNゲート層から正孔が注入される一方、オフ時には、注入された正孔が電子と再結合し消滅する必要があるために、キャリア寿命の分だけ時間を要するため、ターンオフ時間が長くなり、高速スイッチング動作には不向きである。
本発明の目的は、高速スイッチングを達成できるノーマリオフ型の窒化物半導体デバイスおよびそのパッケージを提供することである。
また、従来構造では、ソース-ゲート間およびゲート-ドレイン間のシートキャリア密度を上げるためにAlGaN層(電子供給層)を厚くすると、ゲート閾値電圧が低下し、ノーマリオンとなる場合があった。つまり、ゲート電極直下のゲート領域外のシートキャリア密度とゲート閾値電圧とは、トレードオフの関係にあった。
本発明の目的は、高いシートキャリア密度と高いゲート閾値電圧とを両立することができる窒化物半導体デバイスおよびそのパッケージを提供することである。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスは、電子走行層と、電子走行層に接し、前記電子走行層とは異なる窒化物半導体組成からなる電子供給層と、前記電子供給層上に選択的に形成され、アクセプタ型不純物を実効的に含まない窒化物半導体組成からなるゲート層と、前記ゲート層上に形成されたゲート電極とを含み、下記式(1)を満たす。
Figure 0007025853000001
式(1)中の各記号の定義は次の通りである。
:前記ゲート層の厚さ(cm)
:前記電子供給層の厚さ(cm)
P:前記電子供給層の分極(C/cm
q:電気素量(C)
Φ:前記ゲート電極の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV)
DA+N-NDD-N:前記電子走行層の実効アクセプタ濃度
ε:前記電子走行層の比誘電率
ε:前記電子供給層の比誘電率
ε:真空の誘電率
:前記電子走行層のフェルミ準位と伝導帯(E)の下端とのエネルギ差(eV)
この構成によれば、ゲート層がアクセプタ型不純物を実効的に含まないため、デバイスがオンしても、ゲート層から電子供給層に正孔が注入されない。これにより、ターンオフ時間を短縮できるので、高速スイッチングを実現することができる。また、上記式(1)を満たすため、ノーマリオフ動作が可能である。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層および前記ゲート層は、GaNを含み、前記電子供給層は、AlGaNを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層の実効アクセプタ濃度NDA+N-NDD-Nが5×1016cm-3以上であり、前記ゲート層の厚さdが80nm以上であり、前記電子供給層のAl組成が25%以下であり、前記電子供給層の厚さdが20nm以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層は、前記電子供給層との界面から150nm以内の領域にMgを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層は、深いアクセプタとしてMgを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層は、深いアクセプタとしてCを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記ゲート層がアクセプタ型不純物を実効的に含まないとは、前記ゲート層における前記アクセプタ型不純物の濃度が1×1017cm-3未満であることを意味していてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記ゲート層における前記アクセプタ型不純物の濃度が1×1016cm-3未満であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスは、窒化物半導体からなる電子走行層と、前記電子走行層上のAlGa1-xN(x≦1)からなる電子供給層と、前記電子供給層上に選択的に形成された窒化物半導体からなるゲート層と、前記ゲート層上に形成されたゲート電極とを含み、前記電子供給層のAl組成がx≧0.3である。
この構成によれば、AlGa1-xN(x≦1)からなる電子供給層のAl組成がx≧0.3であるため、高いシートキャリア密度と高いゲート閾値電圧とを両立することができる。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層の厚さが10nm以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層のAl組成がx=1であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスは、前記電子供給層上のAlx´Ga1-x´N(x´≦1)からなるエッチングストップ層をさらに含み、前記電子供給層と前記エッチングストップ層との間にx<x´の関係が成立していてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層は、AlN電子供給層を含み、前記エッチングストップ層のAl組成が0.1≦x´≦0.2であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層は、2nm以下の厚さを有するAlN電子供給層を含み、前記エッチングストップ層は、10nm以下の厚さを有し、前記エッチングストップ層のAl組成がx´=0.1であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスは、前記ゲート電極を挟んで配置されたソース電極およびドレイン電極を含み、前記電子供給層および前記エッチングストップ層の一部または全部が、前記ソース電極および前記ドレイン電極の形成領域において選択的に除去されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子供給層は、Inをさらに含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層は、不純物としてMgを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層のMgの濃度が、1×1016cm-3以上であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記電子走行層のMgの濃度が、1×1017cm-3以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスでは、前記ゲート電極は、Ni、Pt、Mo、WまたはTiNを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体パッケージは、前記窒化物半導体デバイスと、前記窒化物半導体デバイスが搭載された端子フレームと、前記窒化物半導体デバイスおよび前記端子フレームを封止する樹脂パッケージとを含む。
図1は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体デバイスを備える半導体パッケージの外観図である。 図2は、図1の窒化物半導体デバイスの模式的な断面図である。 図3は、電子走行層および電子供給層の内部の分極状態を説明するための図である。 図4は、電子供給層(AlGaN)のAl組成と分極電荷との関係を示すグラフである。 図5は、前記窒化物半導体デバイスのエネルギーバンド図である。 図6は、前記窒化物半導体デバイスの電界強度分布を示す図である。 図7は、前記電子供給層の膜厚とシートキャリア密度との関係を示す図である。 図8は、前記電子供給層の膜厚とPd/εεとの関係を示す図である。 図9は、前記電子供給層の物性とd√(NDA+N-NDD-N)との関係を示す図である。 図10A~図10Cは、電流が流れ出すまでの電子の動きを経時的に示すエネルギーバンド図である。 図11は、窒化物半導体デバイスのエネルギーバンド図である。 図12は、本発明の参考形態に係る窒化物半導体デバイスのエネルギーバンド図(シミュレーション結果)である。 図13は、本発明の参考形態に係る窒化物半導体デバイスの電子供給層のAl組成とd√(NDA+N-NDD-N)との関係を示す図(シミュレーション結果)である。 図14は、本発明の参考形態に係る窒化物半導体デバイスのゲート電圧と電流密度との関係を示す図(シミュレーション結果)である。 図15は、本発明の実施形態に係る窒化物半導体デバイスのエネルギーバンド図(シミュレーション結果)である。 図16は、本発明の実施形態に係る窒化物半導体デバイスの電子供給層のAl組成とd√(NDA+N-NDD-N)との関係を示す図(シミュレーション結果)である。 図17は、本発明の実施形態に係る窒化物半導体デバイスのゲート電圧と電流密度との関係を示す図(シミュレーション結果)である。 図18は、シートキャリア密度ごとに前記電子供給層のAl組成とゲート閾値電圧との関係を示す図である。 図19は、シートキャリア密度ごとに前記電子供給層のAl組成と前記電子供給層の膜厚との関係を示す図である。 図20は、前記窒化物半導体デバイスの模式的な断面図である。 図21Aは、図20の窒化物半導体デバイスの製造工程の一部を示す図である。 図21Bは、図21Aの次の工程を示す図である。 図21Cは、図21Bの次の工程を示す図である。 図21Dは、図21Cの次の工程を示す図である。 図21Eは、図21Dの次の工程を示す図である。 図21Fは、図21Eの次の工程を示す図である。 図22は、ゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。 図23は、ゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。 図24は、ゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。 図25は、ゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。 図26は、電子走行層のアクセプタ濃度ごとにゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。 図27は、第2発明の一実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。 図28Aは、図27の窒化物半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。 図28Bは、図28Aの次の工程を示す断面図である。 図28Cは、図28Bの次の工程を示す断面図である。 図28Dは、図28Cの次の工程を示す断面図である。 図28Eは、図28Dの次の工程を示す断面図である。 図28Fは、図28Eの次の工程を示す断面図である。 図28Gは、図28Fの次の工程を示す断面図である。 図29は、比較例に係る窒化物半導体装置の構成を示す断面図である。 図30は、比較例のエネルギ-分布を示すエネルギーバンド図である。 図31は、比較例の電界強度分布を示す電界強度分布図である。 図32は、本実施形態のエネルギ-分布を示すエネルギ-バンド図である。 図33は、本実施形態の電界強度分布を示す電界強度分布図である。 図34は、ゲート絶縁膜がSiOからなる場合のエネルギ-布を示すエネルギ-バンド図である。 図35は、ゲート絶縁膜がSiOからなる場合の電界強度分布を示す電界強度分布図である。
以下では、第1発明および第2発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[1]第1発明について
[1-1]第1発明の第1実施形態
以下、図1~図17を参照して、第1発明の第1実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る窒化物半導体デバイス3を備える半導体パッケージ1の外観図である。
半導体パッケージ1は、端子フレーム2と、窒化物半導体デバイス3(チップ)と、樹脂パッケージ4とを含む。
端子フレーム2は、金属製の板状である。端子フレーム2は、窒化物半導体デバイス3を支持するベース部5(アイランド)と、ドレイン端子6と、ソース端子7と、ゲート端子8とを含む。ドレイン端子6は、ベース部5と一体的に形成されている。ドレイン端子6、ソース端子7およびゲート端子8は、それぞれ、ボンディングワイヤ9~11によって、窒化物半導体デバイス3のドレイン、ソースおよびゲートに電気的に接続されている。ソース端子7およびゲート端子8は、中央のドレイン端子6を挟むように配置されている。
樹脂パッケージ4は、たとえば、エポキシ樹脂など公知のモールド樹脂からなり、窒化物半導体デバイス3を封止している。樹脂パッケージ4は、窒化物半導体デバイス3と共に端子フレーム2のベース部5およびボンディングワイヤ9~11を覆っている。3本の端子6~8の一部は、樹脂パッケージ4から露出している。
図2は、窒化物半導体デバイス3の模式的な断面図である。なお、図2は、図1の特定の位置での切断面を示しているものではなく、本実施形態の説明に必要と考えられる要素の集合体を一つの断面を示している。
窒化物半導体デバイス3は、基板12と、基板12上の電子走行層13と、電子走行層13上の電子供給層14とを含む。電子走行層13および電子供給層14は、たとえばエピタキシャル成長法によって、基板12上に形成されている。また、基板12と電子走行層13との間には、必要に応じて、AlNやAlGaN等からなるバッファ層が介在していてもよい。
さらに、窒化物半導体デバイス3は、電子供給層14上に選択的に形成されたゲート層15と、当該ゲート層15上に形成されたゲート電極16とを含む。ゲート電極16は、ゲート層15を介して電子供給層14に対向している。
また、電子供給層14上には、ゲート電極16を覆うように表面絶縁膜17が形成されている。表面絶縁膜17には、電子供給層14の一部を選択的に露出させるコンタクト孔18a,19aが形成されており、これらのコンタクト孔18a,19aを介して、ソース電極18およびドレイン電極19が電子供給層14にオーミック接触している。ソース電極18およびドレイン電極19は、間隔を開けて配置されており、それらの間に、ゲート電極16が配置されている。また、ソース電極18は、表面絶縁膜17を介してゲート電極16を覆うパターンで形成されている。
基板12は、たとえば、導電性のシリコン基板であってもよい。導電性シリコン基板は、たとえば、1×1017cm-3~1×1020cm-3(より具体的には1×1018cm-3程度)の不純物濃度を有していてもよい。
ゲート層15は、たとえば、アンドープGaN層であってもよい。ここで、アンドープGaNは、アクセプタ型の不純物を実効的に含んでいないGaNを意味しており、具体的には、ゲート層15を形成する際に意図的に不純物が導入されていないGaNであり、より具体的には、たとえば1×1017cm-3未満、より好ましくは、1×1016cm-3未満の濃度である。これは、ゲート層15に含まれる不純物濃度がこの程度であれば、アクセプタとして機能することが無いためである。なお、これらの不純物濃度は、ゲート層15に対してSIMS(二次イオン質量分析装置)分析をすることにより、求めることができる。
電子走行層13は、GaN層からなっており、電子供給層14は、AlGa1-xN層(0<x<1)からなっている。このように、電子走行層13と電子供給層14とは、互いに組成が異なる窒化物半導体からなっていて、ヘテロ接合を形成している。そのため、図3に示すように、これらの層13,14に結晶構造内部における各原子の配置による自発分極Psp(GaN)およびPsp(AlGaN)が生じることに加え、電子供給層14には両者の格子不整合に起因するピエゾ分極Ppz(AlGaN)が生じている。この分極によって、電子供給層14における電子走行層13との界面(GaN/AlGaNヘテロ界面)付近には、図3に示す正の分極電荷20が発生する。この分極電荷20の大きさ(P)は、上記自発分極およびピエゾ分極を用いて、次式(2)で表され、図4に示すように、電子供給層14(AlGaN)のAl組成に比例して略直線状に増加する。
P=Psp(AlGaN)+Ppz(AlGaN)-Psp(GaN)…(2)
そして、分極電荷20のために、電子走行層13における電子供給層14との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には大きな内部電界が発生し、図2に示すように、二次元電子ガス21が広がっている。
ソース電極18およびドレイン電極19は、たとえば、TiおよびAlを含むオーミック電極であり、電子供給層14を介して二次元電子ガス21に電気的に接続されている。
ドレイン電極19、ソース電極18およびゲート電極16に、それぞれ、図1で示したボンディングワイヤ9~11が接続されている。基板12の裏面には、裏面電極22が形成されており、この裏面電極22を介して、基板12がベース部5に接続されている。したがって、本実施形態では、基板12は、ボンディングワイヤ9を介してドレイン電極19と電気的に接続されてドレイン電位となる。
図5は、窒化物半導体デバイス3のエネルギーバンド図である。図6は、窒化物半導体デバイス3の電界強度分布を示す図である。
前述のように、窒化物半導体デバイス3においては、電子供給層14における電子走行層13との界面(GaN/AlGaNヘテロ界面)付近に正の分極電荷20(図3参照)が発生する。電子供給層14と電子走行層13との接合(AlGaN/GaN接合)の系全体において正の空間電荷が負の空間電荷で打ち消され、空間電荷の合計がゼロになるため、電子供給層14内の正の分極電荷20に対応して、電子供給層14(AlGaN)よりも小さなバンドギャップを有する電子走行層13(GaN)には、負の空間電荷からなる二次元電子ガス21が発生する。二次元電子ガス21は、ソース-ドレイン間の電子の通路(チャネル)となるものである。そのため、二次元電子ガス21がソース-ドレイン間に途切れることなく一様に存在していると、ゲート電極16に電圧を印加しなくても、ソース-ドレイン間の電位差によってソース-ドレイン間に電流が流れる、いわゆるノーマリオン型となる。
そこで、本実施形態においては、ノーマリオフ型のデバイスを達成すべく、電子供給層14とゲート電極16との間に、電子供給層14(AlGaN)よりも小さなバンドギャップを有するGaNからなり、アクセプタ型不純物を実効的に含まないゲート層15を介在させている。
本発明におけるノーマリオフ化が達成されるメカニズムは以下の通りである。すなわち、ゲート層15内に生じる自発分極Psp(GaN-Gate)によって正の分極電荷20が打ち消され、結果として、ゲート電極16が配置されたゲート領域Gaにおいて選択的に二次元電子ガス21が消失するという原理である。つまり、上記式(2)にゲート層15の自発分極(-Psp(GaN-Gate))が加えられ、分極電荷20の大きさPが次式(3)に示すようになればよい。
P=Psp(AlGaN)+Ppz(AlGaN)-Psp(GaN)-Psp(GaN-Gate)=0…(3)
一方で、分極電荷20の大きさは、図4に示したように電子供給層14(AlGaN)のAl組成に依存する。そこで、ゲート領域Gaにおける分極電荷20を確実に抑えるべく、電子供給層14の物性に合わせて、ゲート層15および電子走行層13の条件を定める必要がある。
具体的には、図5において、電子走行層13および電子供給層14の接合界面(GaN/AlGaN界面)に生じたポテンシャル井戸23とゲート電極16との間の伝導帯Eのポテンシャルの増減成分(P1)、(P2)および(P3)について、(P2)+(P3)-(P1)>0を満たすような条件とする。これにより、ポテンシャル井戸23の伝導帯Eのポテンシャルをフェルミ準位(図5において0.0eVの位置)よりも低い位置にしてドレイン電流を流すために、ゲート電極16に正電圧の印加が必要となるからである。
図5は、ゲート電極16に1.0Vの閾値電圧Vthを印加したときのエネルギーバンドを示しており、ゲート電圧=1.0V(ゲートオン)にすることによって、ポテンシャル井戸23の伝導帯Eのポテンシャルがフェルミ準位と同等になってポテンシャル井戸23に電子が落ち込み(ゲート領域Gaに二次元電子ガス21が発生し始め)、ドレイン電流が流れ始める。つまり、ゲート電極16に電圧が印加されていない状態(ゲートオフ)では、図5に一点鎖線で示すように、ポテンシャル井戸23´の伝導帯Eのポテンシャルがフェルミ準位よりも高い位置にあり、ドレイン電流が流れない状態となっている。なお、図5の縦軸は、電子に対するポテンシャルを示すものである。
また、図5の条件を、電界強度分布で表すと、図6のようになる。黒実線は、ゲート電極16に1.0Vの閾値電圧Vthを印加したときの各層の電界強度である。ここで、AlGaN電子供給層14の電界強度積分値A(図6のハッチング部分)と、GaNゲート層15の電界強度積分値B(図6のクロスハッチング部分)とが、B>Aを満たすことで、ノーマリオフが実現される。これにより、電子供給層14の内部電界がゲート層15の内部電界によって打ち消されるので、二次元電子ガス21の発生が抑えられる。
再び図5を参照して、上記の(P2)+(P3)-(P1)>0を具体的な値で表すと、次式(1)となる。
Figure 0007025853000002
式(1)において、左から1つ目の項、2つ目の項および3つ目の項が、それぞれ、伝導帯Eのポテンシャルの減少成分(P2)、減少成分(P3)および増加成分(P1)に対応している。また、式(1)中の各記号の定義は次の通りである。
:ゲート層15の厚さ(cm)
:電子供給層14の厚さ(cm)
P:電子供給層14の分極(C/cm
q:電気素量(C)
Φ:ゲート電極16の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV)
DA+N-NDD-N:電子走行層13の実効アクセプタ濃度
ε:電子走行層13の比誘電率
ε:電子供給層14の比誘電率
ε:真空の誘電率
:電子走行層13のフェルミ準位と伝導帯(E)の下端とのエネルギ差(eV)
上記式(1)を満たすには、伝導帯Eのポテンシャルの増加成分(P1)に対応するdP/εεができる限り小さいことが好ましい。したがって、dP/εεの変数であるdおよびPを小さくすることを考える。
まず、電子供給層14の厚さdについて、図7を参照すると、AlGaNのAl組成(x=0.1~0.9)に関わらず、厚さdを大きくしても、二次元電子ガス21のシートキャリア密度がd=20nm程度で飽和する。そのため、シートキャリア密度に関して言えば、厚さdは最大で20nmあれば十分である。逆に、図8に示すように、伝導帯Eのポテンシャルの増加成分(P1)であるdP/εεが電子供給層14の厚さdの増加に伴って比例的に増加するため、dP/εεに関して言えば、厚さdはできる限り小さい方が好ましい。したがって、厚さdが20nmを超えると、良好なシートキャリア密度を達成できる一方で、伝導帯Eのポテンシャルの増加成分(P1)が大きくなるため、電子供給層14の厚さdは、20nm以下、大きくとも30nm以下であることが好ましい。
一方、二次元電子ガス21の移動度(2DEG mobility)は高くても背反がないため高いほど好ましいところ、二次元電子ガス21の移動度が最も高くなる条件の一例としては、非特許文献1に示すように、シートキャリア密度が8.0×1012(cm-2)付近である。耐圧の観点から判断しても、シートキャリア密度は8.0×1012(cm-2)付近かそれ以下であることが好ましい。したがって、図7において厚さd=20nmのときに、Al組成が0.25程度であればシートキャリア密度が8.0×1012(cm-2)程度となるので、Al組成としては0.25以下(25%以下)であることが好ましい。この点、図7によれば、Al組成が大きくても(たとえば0.9であっても)、AlGaN電子供給層14の膜厚dが小さければシートキャリア密度を8.0×1012(cm-2)にすることができる。この場合、膜厚が小さいので、図8におけるdP/εεの増加も少なく、高いシートキャリア密度と高いゲート閾値電圧との両立を図ることができる。一方、AlGaN電子供給層14のAl組成が大きく、かつAlGaN電子供給層14が薄いと、たとえば、AlGaN電子供給層14上のGaNゲート層15をClとOとの混合ガスプラズマを用いてエッチングする際に、AlGaN自身が酸化され易くなる。
以上をまとめると、AlGaNからなる電子供給層14の物性として好ましい範囲は、厚さdが30nm以下(より好ましくは20nm以下、3nm以上)であり、Al組成が25%以下である。電子供給層14の厚さdが3nm以上であれば、電子供給層14が薄すぎることによるダイレクトトンネリングの発生を防止し、ゲートリーク電流を低減することができる。なお、電子供給層14は、アンドープAlGaN層であってよい。ここで、アンドープAlGaNは、アクセプタ型の不純物を実効的に含んでいないAlGaNを意味しており、具体的には、電子供給層14を形成する際に意図的に不純物が導入されていないAlGaNである。
電子供給層14の物性条件を上記のように定め、当該物性条件に基づき、GaN電子走行層13およびGaNゲート層15についての好ましい条件を検討する。
まず、図9は、電子供給層14の物性と、伝導帯Eのポテンシャルの減少成分(P2)の一部であるd√(NDA+N-NDD-N)との関係を示す図であり、複数の厚さdおよびAl組成の組み合わせに対するd√(NDA+N-NDD-N)の好ましい範囲を示している。なお、√(NDA+N-NDD-N)は、(NDA+N-NDD-N1/2を意味している。
図9を参照して、4つの各グラフ(直線)に対して上側がノーマリオフを実現できる範囲であり、下側がノーマリオンとなってしまう範囲である。したがって、電子供給層14の各厚さdおよびAl組成に対しては、図9から、グラフよりも上の範囲に含まれるようにd√(NDA+N-NDD-N)の値を適宜設定すればよい。
ここで、(NDA+N-NDD-N)の求め方を説明する。
まず、電子走行層13には、そのエネルギーバンド構造に関して、浅いドナー準位E、深いドナー準位EDD、浅いアクセプタ準位E、深いアクセプタ準位EDAが形成されている。
浅いドナー準位Eは、たとえば、電子走行層13の伝導帯の下端(底)のエネルギ準位Eから0.025eV以下の離れた位置でのエネルギ準位であり、深いドナー準位EDDと区別できるのであれば、単に「ドナー準位E」と呼んでもよい。通常、この位置にドーピングされたドナーの電子は、室温(熱エネルギkT=0.025eV程度)でも伝導帯に励起されて自由電子となっている。浅いドナー準位Eを形成する不純物としては、たとえば、Si、Oからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらは、電子走行層13のエピタキシャル成長中に膜中に取り込まれてもよいし、意図的にドーピングしてもよい。たとえば、酸素(O)は、原料ガスやキャリヤガスから取り込まれてもよい。
一方、深いドナー準位EDDは、たとえば、電子走行層13の伝導帯の下端(底)のエネルギ準位Eから0.025eV以上の離れた位置でのエネルギ準位である。つまり、深いドナー準位EDDは、励起に必要なイオン化エネルギが室温の熱エネルギよりも大きいドナーのドーピングによって形成されるものである。したがって、通常、この位置にドーピングされたドナーの電子は、室温において伝導帯に励起されず、ドナーに捉えられた状態となっている。深いドナー準位EDDは、たとえば、電子走行層13のエピタキシャル成長中にGaNに自然に生じる結晶欠陥に起因するものであってもよい。
浅いアクセプタ準位Eは、たとえば、電子走行層13の価電子の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.025eV以下の離れた位置でのエネルギ準位であり、深いアクセプタ準位EDAと区別できるのであれば、単に「アクセプタ準位E」と呼んでもよい。通常、この位置にドーピングされたアクセプタの正孔は、室温(熱エネルギkT=0.025eV程度)でも価電子帯に励起されて自由正孔となっている。
一方、深いアクセプタ準位EDAは、たとえば、電子走行層13の価電子の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.025eV以上の離れた位置でのエネルギ準位である。つまり、深いアクセプタ準位EDAは、励起に必要なイオン化エネルギが室温の熱エネルギよりも大きいアクセプタのドーピングによって形成されるものである。したがって、通常、この位置にドーピングされたアクセプタの正孔は、室温において価電子帯に励起されず、アクセプタに捉えられた状態となっている。
深いアクセプタ準位EDAを形成するためにGaNからなる電子走行層13にドーピングする不純物としては、たとえば、C、Be、Cd、Ca、Cu、Ag、Au、Sr、B
a、Li、Na、K、Sc、Zr、Fe、Co、Ni、Mg、ArおよびHeからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらのうち、主にCおよびMgが挙げられるが、炭素(C)はGaN中の窒素サイトに取り込まれると深いアクセプタとして機能し、Gaサイトに取り込まれると浅いドナーとして機能するため、(NDA+N-NDD-N)を確実に上げるには、Mgを使用することが好ましく、Mgは、電子走行層13において、電子供給層14との界面から150nm以内の領域に含まれていることが好ましい。たとえば、図5や図11(後述)において、GaN電子走行層13のエネルギーバンドが曲がっている領域は、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から150nm程度である。つまり、当該界面から150nm以内の領域が閾値電圧に寄与することになり、この領域の不純物の濃度や種類が重要になるためである。
しかし、深いアクセプタとしてCを用いることもできる。深いアクセプタ準位としてCを用いた場合、たとえば電子走行層13の価電子帯の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.9eVの準位を形成することが知られている。一方、Mgを使用した場合は、Eから0.1~0.2eVの準位を形成することが知られている。これは、上述した、電子走行層13の価電子帯の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.025eV以上の離れた位置であるため、Mgは深いアクセプタと言えるが、フェルミ準位がこのMgの準位に固定されると、室温でのEにおける正孔の存在確率が0.003~0.02となってしまう。つまり、室温において100~1000分の1程度の割合でEに正孔を発生させこととなる。これにより、電子走行層13内で自由に動ける正孔が存在すると、電子走行層14においてp-n接合ができるため寄生容量ができてしまうという不都合が生じる。さらに生じた正孔がキャリアとして働くことによってリーク電流が増えてしまう。以上より、深いアクセプタ準位は、Eから0.2eVよりも離れた位置、たとえば0.3eV以上となる不純物が好ましく、Cはこの条件を満たす。
なお、深いアクセプタとしてCを使用した場合、上記(1)におけるEは、GaNのバンドギャップが3.6eVであることから、E=2.5eVであり、Mgを使用した場合、E=3.2eVとなる。
そして、上記説明した浅いドナー準位E、深いドナー準位EDD、浅いアクセプタ準位Eおよび深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物(ドーパント)の濃度を、それぞれ、浅いドナー濃度N、深いドナー濃度NDD、浅いアクセプタ濃度N、深いアクセプタ濃度NDAと呼ぶことにする。たとえば、深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物として、C(カーボン)のみが0.5×1016cm-3の濃度で電子走行層13にドーピングされている場合、このカーボン濃度が深いアクセプタ濃度NDAと定義される。これらの濃度N、NDD、NおよびNDAは、たとえば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)で測定することができる。
より具体的な測定方法は、図10A~図10Cを参照して説明できる。まず、図10Aに示すように、両電極間に電圧が印加されていないとき(無バイアス時)には、アクセプタおよび深いアクセプタが、ドナーおよび深いドナーが放出する電子を捕獲する。このとき、電子を放出したドナーおよび深いドナーによる正電荷と、電子を捕獲したアクセプタおよび深いアクセプタによる負電荷の数が等しいため、GaN層全体としては電気的に中性となる。
次に、図10Bに示すように電圧を印加していくと、正バイアス側で価電子帯(E)から深いアクセプタへ電子捕獲が起こり、負に帯電する。電圧の印加によって発生した電束は、この負帯電領域によって打ち消されるため、電子走行層の伝導帯Eへの電子注入は起こらず、流れる電流は極めて微小である。
そして、図10Cに示すように、ある一定以上の電圧Vthを印加すると全ての領域の深いアクセプタで電子捕獲が起きる。これ以上の電圧が印加されても電子捕獲が起こらず、電束を打ち消しきれないため、ソース電極から伝導帯Eへ電子が注入されて電流が流れ出す。このときの電圧Vthを含む式が、ポアソン方程式からN+NDA-N-NDD=2Vthεε/qW(Wは、GaN電子走行層の厚さ)と導かれ、結果として、Vth=q(N+NDA-N-NDD)・W/2εεが得られる。つまり、この式に基づいて、(N+NDA-N-NDD)を求めることができる。
電子供給層14の各厚さdおよびAl組成に対するd√(NDA+N-NDD-N)の好ましい範囲は図9の通りであるが、d√(NDA+N-NDD-N)を構成するdおよび(NDA+N-NDD-N)のそれぞれについての好ましい範囲の一例は、次の通りである。なお、以下の好ましい範囲は、電子供給層14の各厚さdおよびAl組成によって変わるものなので、電子供給層14の各厚さdBおよびAl組成に応じて適宜設定してもよい。
まず、ゲート層15の厚さdGは、たとえば、50nm~100nmが好ましい。一方、(NDA+N-NDD-N)は、5×1016cm-3以上である。この(NDA+N-NDD-N)の好ましい範囲は、図11を参照して説明できる。
図11は、電子供給層14のAl組成20%、厚さdBが15nm、ゲート層15の厚さdが80nm、Φ=1.2eV、(NDA+N-NDD-N)を5×1016cm-3としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。このとき閾値電圧は0.3eVで、かろうじてノーマリオフ動作となっている。このことから、ノーマリオフ動作には少なくとも5×1016cm-3程度以上の(NDA+N-NDD-N)が必要であることが分かる。
また、上記式(1)のΦ(ゲート電極16の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV))の好ましい範囲は、0.7eV~1.4eVである。この範囲は、たとえば、ゲート電極16として、Ni(Φ=4.8eV)、Pt(Φ=5.0eV)、Mo(Φ=4.3eV)、W(Φ=4.6eV)またはTiN(Φ=4.6eV)を使用することで実現できる。一方、ゲート電極16としてAl(Φ=4.0eV)も使用できるが、Alは仕事関数が上記のMo等に比べて低く半導体や絶縁膜と反応しやすいため、ある程度仕事関数が大きいMoやTiNを使用することが好ましい。
次に、本発明の効果を、シミュレーションにより検証した。結果を図12~図17に示す。
<シミュレーション条件>
(1)参考形態(図12~図14)
・GaN(電子走行層13):NDA+N-NDD-N=2.0×1016cm-3
・AlGaN(電子供給層14):Al組成25%、膜厚15nm
・GaN(ゲート層15):ノンドープ、膜厚60nm
・ゲート電極:仕事関数Φ=4.6eV
(2)実施形態(図15~図17)
・GaN(電子走行層13):NDA+N-NDD-N=1.0×1017cm-3
・AlGaN(電子供給層14):Al組成25%、膜厚15nm
・GaN(ゲート層15):ノンドープ、膜厚100nm
・ゲート電極:仕事関数Φ=4.6eV
図12に示すように、参考形態では、ゲート電極16に負電圧を印加することでポテンシャル井戸23の伝導帯Eのポテンシャルがフェルミ準位よりも高い位置となり、デバイスのオフ状態が保持されている。つまり、ゲート電極16に電圧が印加されていない状態ではソース-ドレイン間に電流が流れるノーマリオン型である。この参考形態について、前述の図9と同様のグラフにd√(NDA+N-NDD-N)の値をプロットすると、図13に「○」で示した位置になる。また、図14の結果から、ゲート電圧Vg=0Vのときに約3.0×10-2(A/mm)の電流が流れることが確認された。
一方、図15に示すように、本実施形態では、ゲート電極16に正電圧を印加すること
でポテンシャル井戸23の伝導帯Eのポテンシャルがフェルミ準位よりも低い位置となり、デバイスのオン状態へ移行する。つまり、ゲート電極16に電圧が印加されていない状態ではソース-ドレイン間に電流が流れないノーマリオフ型である。この実施形態について、前述の図9と同様のグラフにd√(NDA+N-NDD-N)の値をプロットすると、図16に「○」で示した位置になる。また、図17の結果から、ゲート電圧Vg=0Vのときには電流が流れないことが確認された。
以上、第1発明の第1実施形態について説明したが、第1発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の第1実施形態では、電子走行層13がGaNからなり、電子供給層14がAlGaNからなる例について説明したが、電子走行層13と電子供給層14とはAl組成が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。電子供給層/電子走行層の組み合わせは、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/AlGaN層(ただしAl組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層のうちのいずれかであってもよい。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含む。電子走行層は、組成中にGaおよびNを含み、Al組成が電子供給層とは異なる。電子供給層と電子走行層とでAl組成が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因するキャリアが二次元電子ガスの形成に寄与する。
また、前述の第1実施形態では、基板12の材料例としてシリコンを例示したが、ほかにも、サファイア基板やGaN基板などの任意の基板材料を適用できる。
[1-2]第1発明の第2実施形態および第3実施形態
以下、図1~図8、図10、図18~図24を参照して、第1発明の第2実施形態および第3実施形態について詳細に説明する。
第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3を備える半導体パッケージ1の外観図は、図1を用いて説明した第1発明の第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3を備える半導体パッケージ1の外観図と同様である。
図1を参照して、第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3を備える半導体パッケージ1は、端子フレーム2と、窒化物半導体デバイス3(チップ)と、樹脂パッケージ4とを含む。
端子フレーム2は、金属製の板状である。端子フレーム2は、窒化物半導体デバイス3を支持するベース部5(アイランド)と、ドレイン端子6と、ソース端子7と、ゲート端子8とを含む。ドレイン端子6は、ベース部5と一体的に形成されている。ドレイン端子6、ソース端子7およびゲート端子8は、それぞれ、ボンディングワイヤ9~11によって、窒化物半導体デバイス3のドレイン、ソースおよびゲートに電気的に接続されている。ソース端子7およびゲート端子8は、中央のドレイン端子6を挟むように配置されている。
樹脂パッケージ4は、たとえば、エポキシ樹脂など公知のモールド樹脂からなり、窒化物半導体デバイス3を封止している。樹脂パッケージ4は、窒化物半導体デバイス3と共に端子フレーム2のベース部5およびボンディングワイヤ9~11を覆っている。3本の端子6~8の一部は、樹脂パッケージ4から露出している。
第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3の模式的な断面図は、図2を用いて説明した第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3の模式的な断面図と同様である。
図2を参照して、第2実施形態に係る窒化物半導体デバイス3は、基板12と、基板12上の電子走行層13と、電子走行層13上の電子供給層14とを含む。電子走行層13および電子供給層14は、たとえばエピタキシャル成長法によって、基板12上に形成されている。また、基板12と電子走行層13との間には、必要に応じて、AlNやAlGaN等からなるバッファ層が介在していてもよい。
さらに、窒化物半導体デバイス3は、電子供給層14上に選択的に形成されたゲート層15と、当該ゲート層15上に形成されたゲート電極16とを含む。ゲート電極16は、ゲート層15を介して電子供給層14に対向している。
また、電子供給層14上には、ゲート電極16を覆うように表面絶縁膜17が形成されている。
図2において、表面絶縁膜17には、電子供給層14の一部を選択的に露出させるコンタクト孔18a,19aが形成されており、これらのコンタクト孔18a,19aを介して、ソース電極18およびドレイン電極19が電子供給層14にオーミック接触している。
ソース電極18およびドレイン電極19は、間隔を開けて配置されており、それらの間に、ゲート電極16が配置されている。また、ソース電極18は、表面絶縁膜17を介してゲート電極16を覆うパターンで形成されている。
基板12は、たとえば、導電性のシリコン基板であってもよい。導電性シリコン基板は、たとえば、1×1017cm-3~1×1020cm-3(より具体的には1×1018cm-3程度)の不純物濃度を有していてもよい。
ゲート層15は、たとえば、アンドープGaN層であってもよいし、アクセプタ型の準位を含むGaN層であってもよい。ここで、アンドープGaNは、アクセプタ型の不純物を実効的に含んでいないGaNを意味している。具体的には、ゲート層15を形成する際に意図的に不純物が導入されていないGaNであり、より具体的には、たとえば1×1017cm-3未満、より好ましくは、1×1016cm-3未満の濃度である。これは、ゲート層15に含まれる不純物濃度がこの程度であれば、アクセプタとして機能することが無いためである。なお、これらの不純物濃度は、ゲート層15に対してSIMS(二次イオン質量分析装置)分析をすることにより、求めることができる。また、アクセプタ型の準位を含むGaN層は、たとえば、アクセプタとしてMgやCを含んでいてもよいし、空孔欠陥が形成されていてもよい。
電子走行層13は、GaN層からなっており、電子供給層14は、AlGa1-xN(x≦1)からなっており、必要によりInを含んでいてもよい。このように、電子走行層13と電子供給層14とは、互いに組成が異なる窒化物半導体からなっていて、ヘテロ接合を形成している。そのため、図3に示すように、これらの層13,14に結晶構造内部における各原子の配置による自発分極Psp(GaN)およびPsp(AlGaN)が生じることに加え、電子供給層14には両者の格子不整合に起因するピエゾ分極Ppz(AlGaN)が生じている。この分極によって、電子供給層14における電子走行層13との界面(GaN/AlGaNヘテロ界面)付近には、図3に示す正の分極電荷20が発生する。この分極電荷20の大きさ(P)は、上記自発分極およびピエゾ分極を用いて、次式(2)で表され、図4に示すように、電子供給層14(AlGaN)のAl組成に比例して略直線状に増加する。
P=Psp(AlGaN)+Ppz(AlGaN)-Psp(GaN)…(2)
そして、分極電荷20のために、電子走行層13における電子供給層14との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には大きな内部電界が発生し、図2に示すように、二次元電子ガス21が広がっている。
ソース電極18およびドレイン電極19は、たとえば、TiおよびAlを含むオーミック電極であり、二次元電子ガス21に電気的に接続されている。
ドレイン電極19、ソース電極18およびゲート電極16に、それぞれ、図1で示したボンディングワイヤ9~11が接続されている。基板12の裏面には、裏面電極22が形成されており、この裏面電極22を介して、基板12がベース部5に接続されている。したがって、本実施形態では、基板12は、ボンディングワイヤ9を介してドレイン電極19と電気的に接続されてドレイン電位となる。
図5は、窒化物半導体デバイス3のエネルギーバンド図である。図6は、窒化物半導体
デバイス3の電界強度分布を示す図である。
前述のように、窒化物半導体デバイス3においては、電子供給層14における電子走行層13との界面(GaN/AlGaNヘテロ界面)付近に正の分極電荷20(図3参照)が発生する。電子供給層14と電子走行層13との接合(AlGaN/GaN接合)の系全体において正の空間電荷が負の空間電荷で打ち消され、空間電荷の合計がゼロになるため、電子供給層14内の正の分極電荷20に対応して、電子供給層14(AlGaN)よりも小さなバンドギャップを有する電子走行層13(GaN)には、負の空間電荷からなる二次元電子ガス21が発生する。二次元電子ガス21は、ソース-ドレイン間の電子の通路(チャネル)となるものである。そのため、二次元電子ガス21がソース-ドレイン間に途切れることなく一様に存在していると、ゲート電極16に電圧を印加しなくても、ソース-ドレイン間の電位差によってソース-ドレイン間に電流が流れる、いわゆるノーマリオン型となる。
そこで、本実施形態においては、ノーマリオフ型のデバイスを達成すべく、電子供給層14とゲート電極16との間に、電子供給層14(AlGaN)よりも小さなバンドギャップを有するGaNからなり、アクセプタ型不純物を実効的に含まないゲート層15を介在させている。
本発明におけるノーマリオフ化が達成されるメカニズムは以下の通りである。すなわち、ゲート層15内に生じる自発分極Psp(GaN-Gate)によって正の分極電荷20が打ち消され、結果として、ゲート電極16が配置されたゲート領域Gaにおいて選択的に二次元電子ガス21が消失するという原理である。つまり、上記式(2)にゲート層15の自発分極(-Psp(GaN-Gate))が加えられ、分極電荷20の大きさPが次式(3)に示すようになればよい。
P=Psp(AlGaN)+Ppz(AlGaN)-Psp(GaN)-Psp(GaN-Gate)=0…(3)
一方で、分極電荷20の大きさは、図4に示したように電子供給層14(AlGaN)のAl組成に依存する。
本実施形態では、ゲート領域Gaにおける分極電荷20を確実に抑えるべく、電子供給層14の物性に合わせて、ゲート層15および電子走行層13の条件を定める必要がある。具体的には、図5において、電子走行層13および電子供給層14の接合界面(GaN/AlGaN界面)に生じたポテンシャル井戸23とゲート電極16との間の伝導帯Eのポテンシャルの増減成分(P1)、(P2)および(P3)について、(P2)+(P3)-(P1)>0を満たすような条件とする。これにより、ポテンシャル井戸23の伝導帯Eのポテンシャルをフェルミ準位(図5において0.0eVの位置)よりも低い位置にしてドレイン電流を流すために、ゲート電極16に正電圧の印加が必要となるからである。
図5は、ゲート電極16に1.0Vの閾値電圧Vthを印加したときのエネルギーバンドを示しており、ゲート電圧=1.0V(ゲートオン)にすることによって、ポテンシャル井戸23の伝導帯Eのポテンシャルがフェルミ準位と同等になってポテンシャル井戸23に電子が落ち込み(ゲート領域Gaに二次元電子ガス21が発生し始め)、ドレイン電流が流れ始める。つまり、ゲート電極16に電圧が印加されていない状態(ゲートオフ)では、図5に一点鎖線で示すように、ポテンシャル井戸23´の伝導帯Eのポテンシャルがフェルミ準位よりも高い位置にあり、ドレイン電流が流れない状態となっている。なお、図5の縦軸は、電子に対するポテンシャルを示すものである。
また、図5の条件を、電界強度分布で表すと、図6のようになる。黒実線は、ゲート電極16に1.0Vの閾値電圧Vthを印加したときの各層の電界強度である。ここで、AlGaN電子供給層14の電界強度積分値A(図6のハッチング部分)と、GaNゲート層15の電界強度積分値B(図6のクロスハッチング部分)とが、B>Aを満たすことで、ノーマリオフが実現される。これにより、電子供給層14の内部電界がゲート層15の内部電界によって打ち消されるので、二次元電子ガス21の発生が抑えられる。
再び図5を参照して、上記の(P2)+(P3)-(P1)>0を具体的な値で表すと、次式(1)となる。
Figure 0007025853000003
式(1)において、左から1つ目の項、2つ目の項および3つ目の項が、それぞれ、伝導帯Eのポテンシャルの減少成分(P2)、減少成分(P3)および増加成分(P1)に対応している。また、式(1)中の各記号の定義は次の通りである。
:ゲート層15の厚さ(cm)
:電子供給層14の厚さ(cm)
P:電子供給層14の分極(C/cm
q:電気素量(C)
Φ:ゲート電極16の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV)
DA+N-NDD-N:電子走行層13の実効アクセプタ濃度
ε:電子走行層13の比誘電率
ε:電子供給層14の比誘電率
ε:真空の誘電率
:電子走行層13のフェルミ準位と伝導帯(E)の下端とのエネルギ差(eV)
上記式(1)の伝導帯Eのポテンシャルの減少成分(P2)の一部であるd√(NDA+N-NDD-N)の(NDA+N-NDD-N)は、以下のように求めることができる。
まず、電子走行層13には、そのエネルギーバンド構造に関して、浅いドナー準位E、深いドナー準位EDD、浅いアクセプタ準位E、深いアクセプタ準位EDAが形成されている。
浅いドナー準位Eは、たとえば、電子走行層13の伝導帯の下端(底)のエネルギ準位Eから0.025eV以下の離れた位置でのエネルギ準位であり、深いドナー準位EDDと区別できるのであれば、単に「ドナー準位E」と呼んでもよい。通常、この位置にドーピングされたドナーの電子は、室温(熱エネルギkT=0.025eV程度)でも伝導帯に励起されて自由電子となっている。浅いドナー準位Eを形成する不純物としては、たとえば、Si、Oからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらは、電子走行層13のエピタキシャル成長中に膜中に取り込まれてもよいし、意図的にドーピングしてもよい。たとえば、酸素(O)は、原料ガスやキャリヤガスから取り込まれてもよい。
一方、深いドナー準位EDDは、たとえば、電子走行層13の伝導帯の下端(底)のエネルギ準位Eから0.025eV以上の離れた位置でのエネルギ準位である。つまり、深いドナー準位EDDは、励起に必要なイオン化エネルギが室温の熱エネルギよりも大きいドナーのドーピングによって形成されるものである。したがって、通常、この位置にドーピングされたドナーの電子は、室温において伝導帯に励起されず、ドナーに捉えられた状態となっている。深いドナー準位EDDは、たとえば、電子走行層13のエピタキシャル成長中にGaNに自然に生じる結晶欠陥に起因するものであってもよい。
浅いアクセプタ準位Eは、たとえば、電子走行層13の価電子の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.025eV以下の離れた位置でのエネルギ準位であり、深いアクセプタ準位EDAと区別できるのであれば、単に「アクセプタ準位E」と呼んでもよい。通常、この位置にドーピングされたアクセプタの正孔は、室温(熱エネルギkT=0.025eV程度)でも価電子帯に励起されて自由正孔となっている。
一方、深いアクセプタ準位EDAは、たとえば、電子走行層13の価電子の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.025eV以上の離れた位置でのエネルギ準位である。つまり、深いアクセプタ準位EDAは、励起に必要なイオン化エネルギが室温の熱エネルギよりも大きいアクセプタのドーピングによって形成されるものである。したがって、通常、この位置にドーピングされたアクセプタの正孔は、室温において価電子帯に励起されず、アクセプタに捉えられた状態となっている。
深いアクセプタ準位EDAを形成するためにGaNからなる電子走行層13にドーピングする不純物としては、たとえば、C、Be、Cd、Ca、Cu、Ag、Au、Sr、Ba、Li、Na、K、Sc、Zr、Fe、Co、Ni、Mg、ArおよびHeからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらのうち、主にCおよびMgが挙げられるが、炭素(C)はGaN中の窒素サイトに取り込まれると深いアクセプタとして機能し、Gaサイトに取り込まれると浅いドナーとして機能するため、(NDA+N-NDD-N)を確実に上げるには、Mgを使用することが好ましい。また、電子走行層13においてエネルギーバンドが曲がっている領域は、不純物の種類(フェルミ準位)と(NDA+N-NDD-N)に依存する。また、電子走行層13においてMgが含まれている領域は、Mg濃度に依存する。たとえば、不純物がMg、(NDA+N-NDD-N)が1×1017cm-3である図25(後述)では、GaN電子走行層13のエネルギーバンドが曲がっている領域は、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から150nm程度である。一方、不純物がMg、(NDA+N-NDD-N)が4×1016cm-3である図23(後述)では、当該エネルギーバンドが曲がっている領域は、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から250nm程度である。つまり、AlGaN電子供給層14/GaN電子走行層13の界面から上記上限以内の領域が閾値電圧に寄与することになり、この領域の不純物の濃度や種類が重要になるためである。
しかし、深いアクセプタとしてCを用いることもできる。深いアクセプタ準位としてCを用いた場合、たとえば電子走行層13の価電子帯の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.9eVの準位を形成することが知られている。一方、Mgを使用した場合は、Eから0.1~0.2eVの準位を形成することが知られている。これは、上述した、電子走行層13の価電子帯の上端(頂上)のエネルギ準位Eから0.025eV以上の離れた位置であるため、Mgは深いアクセプタと言えるが、フェルミ準位がこのMgの準位に固定されると、室温でのEにおける正孔の存在確率が0.003~0.02となってしまう。つまり、室温において100~1000分の1程度の割合でEに正孔を発生させこととなる。これにより、電子走行層13内で自由に動ける正孔が存在すると、電子走行層14においてp-n接合ができるため寄生容量ができてしまうという不都合が生じる。さらに生じた正孔がキャリアとして働くことによってリーク電流が増えてしまう。以上より、深いアクセプタ準位は、Eから0.2eVよりも離れた位置、たとえば0.3eV以上となる不純物が好ましく、Cはこの条件を満たす。
なお、深いアクセプタとしてCを使用した場合、上記(1)におけるEは、GaNのバンドギャップが3.6eVであることから、E=2.5eVであり、Mgを使用した場合、E=3.2eVとなる。
そして、上記説明した浅いドナー準位E、深いドナー準位EDD、浅いアクセプタ準位Eおよび深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物(ドーパント)の濃度を、それぞれ、浅いドナー濃度N、深いドナー濃度Ndd、浅いアクセプタ濃度N、深いアクセプタ濃度Ndaと呼ぶことにする。たとえば、深いアクセプタ準位EDAを形成する不純物として、C(カーボン)のみが0.5×1016cm-3の濃度で電子走行層13にドーピングされている場合、このカーボン濃度が深いアクセプタ濃度NDAと定義される。これらの濃度N、NDD、NおよびNDAは、たとえば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)で測定することができる。
より具体的な測定方法は、図10A~図10Cを参照して説明できる。まず、図10Aに示すように、両電極間に電圧が印加されていないとき(無バイアス時)には、アクセプタおよび深いアクセプタが、ドナーおよび深いドナーが放出する電子を捕獲する。このとき、電子を放出したドナーおよび深いドナーによる正電荷と、電子を捕獲したアクセプタおよび深いアクセプタによる負電荷の数が等しいため、GaN層全体としては電気的に中性となる。
次に、図10Bに示すように電圧を印加していくと、正バイアス側で価電子帯(E)から深いアクセプタへ電子捕獲が起こり、負に帯電する。電圧の印加によって発生した電束は、この負帯電領域によって打ち消されるため、電子走行層の伝導帯Eへの電子注入は起こらず、流れる電流は極めて微小である。
そして、図10Cに示すように、ある一定以上の電圧Vthを印加すると全ての領域の深いアクセプタで電子捕獲が起きる。これ以上の電圧が印加されても電子捕獲が起こらず、電束を打ち消しきれないため、ソース電極から伝導帯Eへ電子が注入されて電流が流れ出す。このときの電圧Vthを含む式が、ポアソン方程式からNDA+N-NDD-N=2Vthεε/qW(Wは、GaN電子走行層の厚さ)と導かれ、結果として、Vth=q(NDA+N-NDD-N)・W/2εεが得られる。つまり、この式に基づいて、(NDA+N-NDD-N)を求めることができる。
√(NDA+N-NDD-N)を構成するdおよび(NDA+N-NDD-N)のそれぞれについての好ましい範囲の一例は、次の通りである。なお、以下の好ましい範囲は、電子供給層14の各厚さdおよびAl組成によって変わるものなので、電子供給層14の各厚さdおよびAl組成に応じて適宜設定してもよい。
まず、ゲート層15の厚さdは、たとえば、50nm~200nmが好ましい。一方、電子走行層13の(NDA+N-NDD-N)は、たとえば、1×1016cm-3~5×1017cm-3であり、好ましくは、Mg濃度が1×1016cm-3以上であり、さらに好ましくは、Mg濃度が1×1017cm-3以下である。
また、上記式(1)のΦ(ゲート電極16の仕事関数(eV)-GaNの電子親和力(3.6eV))の好ましい範囲は、0.7eV~1.4eVである。この範囲は、たとえば、ゲート電極16として、Ni(Φ=4.8eV)、Pt(Φ=5.0eV)、Mo(Φ=4.3eV)、W(Φ=4.6eV)またはTiN(Φ=4.6eV)を使用することで実現できる。一方、ゲート電極16としてAl(Φ=4.0eV)も使用できるが、Alは仕事関数が上記のMo等に比べて低く半導体や絶縁膜と反応しやすいため、ある程度仕事関数が大きいMoやTiNを使用することが好ましい。
また、上記式(1)を満たすには、伝導帯Eのポテンシャルの増加成分(P1)に対応するdP/εεができる限り小さいことが好ましい。したがって、dP/εεの変数であるdおよびPを小さくすることを考える。
まず、電子供給層14の厚さdについて、図7を参照すると、AlGaNのAl組成(X=0.1~0.9)に関わらず、厚さdを大きくしても、二次元電子ガス21のシートキャリア密度がd=10nm程度でほぼ最大値に収束する。そのため、シートキャリア密度に関して言えば、厚さdは最大で10nmあれば十分である。逆に、図8に示すように、伝導帯Eのポテンシャルの増加成分(P1)であるdP/εεが電子供給層14の厚さdの増加に伴って比例的に増加するため、dP/εεを小さくすることを優先的に考えると、厚さdはできる限り小さい方が好ましい。したがって、電子供給層14の厚さdは、10nm以下の範囲で、できる限り小さい方が好ましい。
一方、図7に示すように、電子供給層14の厚さdを小さくすると、シートキャリア密度が低下する。特に、d<5nmの領域での低下が顕著である。シートキャリア密度は、低すぎるとチャネル移動度が低下するため、たとえば、6.0×1012cm-2以上であることが好ましい。そのため、図7において、横軸10nm以下、縦軸6.0×1012cm-2以上の領域で電子供給層14のAl組成を定めればよい。
しかしながら、当該Al組成は、図4に示すように、伝導帯Eのポテンシャルの増加成分(P1)に対応するdP/εεの変数Pと比例関係にあり、場合によってはゲート閾値電圧に影響する。したがって、電子供給層14のAl組成とゲート閾値電圧との関係を検証した。
図18は、シートキャリア密度ごとに電子供給層14のAl組成とゲート閾値電圧との関係を示す図である。図19は、シートキャリア密度ごとに電子供給層14のAl組成と電子供給層14の膜厚との関係を示す図である。図18および図19では、ゲート層15の深いアクセプタ濃度を2×1017cm-3とし、電子走行層13の深いアクセプタ濃度を4×1016cm-3として計算した。
図18に示すように、ノーマリオフ型を実現するためには、シートキャリア密度Nにもよるが、電子供給層14のAl組成が0.3以上であることが好ましい。つまり、AlGa1-xN(x≦1)からなる電子供給層14において、Al組成がx≧0.3であることが好ましく、x=1であることがさらに好ましい。また、図18から、シートキャリア密度が同じであれば、電子供給層14のAl組成が高い方が、ゲート閾値電圧が高くなることが分かる。
そして、電子供給層14について、好ましいAl組成および厚さdの組み合わせを設定するには、たとえば、図18のグラフから、ゲート閾値電圧が0Vを超えるときの電子供給層14のAl組成およびシートキャリア密度Nを決め、その読取値を図19のグラフに当てはめて厚さd(膜厚)を読み取ればよい。たとえば、図19において一点鎖線で囲まれた領域25内の組み合わせであれば、高いシートキャリア密度(N≧6.0×1012cm-2)と、高いゲート閾値電圧(Vth>0、電子供給層14のx≧0.3)とを両立することができる。
一方、Al組成が高いAlGaN電子供給層14であれば、合金散乱によってチャネル移動度が低下するおそれがある。したがって、当該合金散乱を抑え、ゲート閾値電圧を高くするために、AlN電子供給層14を使用することが好ましい。しかしながら、電子供給層14がAlN層であると、たとえばゲート層15をCl/Oでエッチングして形成するときに(後述する図21C参照)、AlN層自体が全て酸化される不具合を生じる。
そこで、電子供給層14をAlN層とする場合は、図20に示すように、Alx´Ga1-x´N(x´≦1)からなるエッチングストップ層24を電子供給層14上に配置することが好ましい。これにより、ゲート層15のエッチングの際にAlN電子供給層14がエッチングストップ層24で覆われるので、AlN電子供給層14の酸化を抑制することができる。
また、エッチングストップ層24が形成される場合、電子供給層14の厚さは2nm以下であることが好ましい。また、エッチングストップ層24の厚さは10nm以下である
ことが好ましい。さらに、エッチングストップ層24のAl組成は、0.1≦x´≦0.2であることが好ましく、x´=0.1であることがさらに好ましい。エッチングストップ層24のAl組成を0.1以上とすることによりエッチングストップ機能を十分保持しながら、0.2以下とすることによりゲート閾値電圧Vthに与える影響が少なくて済む。
なお、上記のような電子供給層14の酸化を抑制する効果は、AlN層でなくとも、AlGa1-xN(x≦1)からなる電子供給層14上に、Alx´Ga1-x´N(x´≦1)からなるエッチングストップ層24が形成され、さらに、Al組成についてx<x´の関係が成立する場合に達成することができる。
また、図20の構成では、コンタクト孔18a,19aに連続するように、さらにエッチングストップ層24および電子供給層14が選択的に除去されており、ソース電極18およびドレイン電極19は、コンタクト孔18a,19aを介して電子走行層13にオーミック接触している。
図21A~図21Fは、図20の窒化物半導体デバイス3(第3実施形態)の製造工程の一部を工程順に示す図である。
図20の窒化物半導体デバイス3を製造するには、たとえば、図21Aに示すように、たとえばエピタキシャル成長法によって、基板12上に、電子走行層13、電子供給層14、エッチングストップ層24およびゲート層15が形成される。
次に、図21Bに示すように、ゲート層15上に、ゲート電極16の電極材料26が形成される。
次に、図21Cに示すように、電極材料26が選択的にエッチングされてゲート電極16が形成される。続いて、たとえばCl/Oプラズマを用いてゲート層15が選択的にエッチングされる。このエッチングは、AlGaNエッチングストップ層24で停止する。
次に、図21Dに示すように、エッチングストップ層24、ゲート層15およびゲート電極16を覆うように、たとえばSiNからなる表面絶縁膜17が形成される。
次に、図21Eに示すように、表面絶縁膜17、エッチングストップ層24および電子供給層14が連続して選択的にエッチングされることによって、コンタクト孔18a,19aが形成される。この際、電子供給層14もエッチングして電子走行層13を露出させることによって、ソース電極18およびドレイン電極19の接触抵抗を低減することができる。
次に、図21Fに示すように、ソース電極18およびドレイン電極19が形成される。この後、裏面電極22等が形成されることによって、窒化物半導体デバイス3が得られる。
図22~図26は、ゲート閾値電圧のGaNフェルミ準位依存性を示す図である。
より具体的には、図22は、電子供給層14のAl組成40%、厚さdが6nm、ゲート層15の厚さdが60nm、Φ=1.2eV(ゲート電極16の材料:TiN)、電子走行層13のNDA+N-NDD-N(深いアクセプタはC)=4×1016cm-3としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。
図23は、電子供給層14のAl組成40%、厚さdが6nm、ゲート層15の厚さdが60nm、Φ=1.2eV(ゲート電極16の材料:TiN)、電子走行層13のNDA+N-NDD-N(深いアクセプタはMg)=4×1016cm-3としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。
図24は、電子走行層13のNDA+N-NDD-NDd=1×1017cm-3としたこと以外は、図22と同一条件としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。
図25は、電子走行層13のNDA+N-NDD-N=1×1017cm-3としたこと以外は、図23と同一条件としたときのターンオン時のエネルギーバンド図である。
図22と図23との比較、および図24と図25との比較から、電子走行層13のフェルミ準位と伝導帯(E)の下端とのエネルギ差Eが高いほど、ゲート閾値電圧が高くなることが分かる。
また、図22と図24との比較、および図23と図25との比較から、同一の深いアクセプタを使用した場合、電子走行層13のNDA+N-NDD-Nが高いほど、ゲート閾値電圧が高くなることが分かる。
そして、図26から総合的に判断すると、電子走行層13に含まれる深いアクセプタがMg(E=3.2eV)であれば、比較的ゲート閾値電圧を高くできることから好ましく、そのNDA+N-NDD-Nについては、1×1016cm-3以上、1×1018cm-3以下であることが好ましいことが分かる。
以上、第1発明の第2および第3実施形態について説明したが、第1発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の第2および第3実施形態では、電子走行層13がGaNからなり、電子供給層14がAlGaNまたはAlNからなる例について説明したが、電子走行層13と電子供給層14とはAl組成が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。電子供給層/電子走行層の組み合わせは、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/AlGaN層(ただしAl組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層のうちのいずれかであってもよい。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含む。電子走行層は、組成中にGaおよびNを含み、Al組成が電子供給層とは異なる。電子供給層と電子走行層とでAl組成が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因するキャリアが二次元電子ガスの形成に寄与する。
また、前述の第2および第3実施形態では、主に、電子供給層14がAlGa1-xN(x≦1)である場合を説明したが、電子供給層14がInを含む場合、つまり、AlInGa1-x-yNでは、x≧0.3、および0.02≧y≧0、および1≧x+yであってもよい。
また、前述の第2および第3実施形態では、基板12の材料例としてシリコンを例示したが、ほかにも、サファイア基板やGaN基板などの任意の基板材料を適用できる。
[2]第2発明について
第2発明は、III族窒化物半導体(以下単に「窒化物半導体」という場合がある。)からなる窒化物半導体装置に関する。
III族窒化物半導体とは、III-V族半導体においてV族元素として窒素を用いた半導体である。窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)が代表例である。一般には、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができる。
このような窒化物半導体を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)が提案されている。このようなHEMTは、たとえば、GaNからなる電子走行層と、この電子走行層上にエピタキシャル成長されたAlGaNからなる電子供給層とを含む。電子供給層に接するように一対のソース電極およびドレイン電極が形成され、それらの間にゲート電極が配置される。GaNとAlGaNとの格子不整合に起因する分極のために、電子走行層内において、電子走行層と電子供給層との界面から数Åだけ内方の位置に、二次元電子ガスが形成される。この二次元電子ガスをチャネルとして、ソース・ドレイン間が接続される。ゲート電極に制御電圧を印加することで、二次元電子ガスを遮断すると、ソース・ドレイン間が遮断される。ゲート電極に制御電圧を印加していない状態では、ソース・ドレイン間が導通するので、ノーマリーオン型のデバイスとなる。
窒化物半導体を用いたデバイスは、高耐圧、高温動作、大電流密度、高速スイッチングおよび低オン抵抗といった特徴を有するため、パワーデバイスへの応用が検討されている。
しかし、パワーデバイスとして用いるためには、ゼロバイアス時に電流を遮断するノーマリーオフ型のデバイスである必要があるため、前述のようなHEMTは、パワーデバイスには適用できない。
ノーマリーオフ型の窒化物半導体HEMTを実現するための構造は、たとえば、特開2006-339561号公報において提案されている。特開2006-339561号公報は、AlGaN電子供給層にp型GaNゲート層(窒化物半導体ゲート層)を積層し、その上にゲート電極を配置し、前記p型GaNゲート層から広がる空乏層によってチャネルを消失させることで、ノーマリーオフを達成する構成を開示している。特開2006-339561号公報では、ゲート電極としてはp型GaNゲート層とオーミック接合するPd(パラジウム)からなるゲート電極が用いられている。
ゲート電極として、p型GaNゲート層とショットキー接合するTiN(窒化チタン)等の金属からなるゲート電極を用いることが考えられる。このような構成の窒化物半導体装置を比較対象装置という場合がある。比較対象装置では、窒化物半導体ゲート層とゲート電極とがショットキー接合されるため、ゲートリーク電流が大きくなり、窒化物半導体ゲート層が劣化しやすいという問題がある。
第2発明の目的は、比較対象装置に比べてゲートリーク電流を低減できる窒化物半導体装置を提供することにある。
第2発明は、次のような特徴を有している。
A1.電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、前記第2窒化物半導体層上に配置されたゲート部とを含み、前記ゲート部は、前記第2窒化物半導体層上に配置されかつアクセプタ型不純物を含む窒化物半導体ゲート層と、前記窒化物半導体ゲート層上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含む、窒化物半導体装置。
この構成では、窒化物半導体ゲート層とゲート電極との間にゲート絶縁膜が介在しているので、比較対象装置に比べてゲートリーク電流を低減できる。
A2.前記ゲート絶縁膜が、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiONおよびAlONのうちから選択された1つから構成されている、「A1.」に記載の窒化物半導体装置。
A3.前記ゲート絶縁膜は、前記窒化物半導体ゲート層とin-situで成膜される、in-situ SINからなる、「A1.」に記載の窒化物半導体装置。
A4.ゲートリーク電流は、1nA/mm以下である、「A1.」~「A3.」のいずれかに記載の窒化物半導体装置。
A5.前記窒化物半導体ゲート層の膜厚は100nm以下であり、前記ゲート絶縁膜の膜厚は3nm以上である、「A1.」~「A3.」のいずれかに記載の窒化物半導体装置。
A6.前記第1窒化物半導体層における前記第2窒化物半導体層とは反対側に配置され、バッファ層を構成する第3窒化物半導体層をさらに有する、「A1.」~「A5.」のいずれかに記載の窒化物半導体装置。
A7.前記窒化物半導体ゲート層と前記ゲート絶縁膜との界面の炭素濃度は、1×1013cm-2以下である、「A1.」に記載の窒化物半導体装置。
A8.前記第1窒化物半導体層はGaN層からなり、前記第2窒化物半導体層はAlGaN層からなり、前記窒化物半導体ゲート層はp型GaN層からなる、「A1.」~「A7.」のいずれかに記載の窒化物半導体装置。
A9.前記第1窒化物半導体層はGaN層からなり、前記第2窒化物半導体層はAlGaN層からなり、前記窒化物半導体ゲート層はp型GaN層からなり、第3窒化物半導体層がAlGaN層からなる、「A6.」に記載の窒化物半導体装置。
A10.前記アクセプタ型不純物は、マグネシウムまたは鉄である、「A8.」または「A9.」に記載の窒化物半導体装置。
第2発明の実施の形態を、図27~図35を参照して詳細に説明する。図27~図295の符号は、前述の第1発明の説明に使用した図1~図26の符号とは無関係である。
図27は、第2発明の一実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
窒化物半導体装置1は、基板2と、基板2の表面に形成されたバッファ層3と、バッファ層3上にエピタキシャル成長された第1窒化物半導体層4と、第1窒化物半導体層4上にエピタキシャル成長された第2窒化物半導体層5とを含む。さらに、この窒化物半導体装置1は、第2窒化物半導体層5上に形成されたゲート部20とを含む。
さらに、この窒化物半導体装置1は、第2窒化物半導体層5およびゲート部20を覆うパッシベーション膜9と、パッシベーション膜9上に積層されたバリアメタル膜10とを含む。さらに、この窒化物半導体装置1は、パッシベーション膜9とバリアメタル膜10との積層膜に形成されたソース電極用コンタクト孔11およびドレイン電極用コンタクト孔12を貫通して第2窒化物半導体層5にオーミック接触しているソース電極13およびドレイン電極14とを含む。ソース電極13およびドレイン電極14は、間隔を開けて配置されている。ソース電極13は、ゲート部20を覆うように形成されている。さらに、この窒化物半導体装置1は、ソース電極13およびドレイン電極14を覆う層間絶縁膜15を含む。
基板2は、たとえば、低抵抗のシリコン基板であってもよい。低抵抗のシリコン基板は、たとえば、1×1017cm-3~1×1020cm-3(より具体的には1×1018cm-3程度)の不純物濃度を有していてもよい。また、基板2は、低抵抗のシリコン基板の他、低抵抗のGaN基板、低抵抗のSiC基板等であってもよい。基板2の厚さは650μm程度である。
バッファ層3は、この実施形態では、複数の窒化物半導体膜を積層した多層バッファ層から構成されている。この実施形態では、バッファ層3は、基板2の表面に接するAlN膜からなる第1バッファ層3Aと、この第1バッファ層3Aの表面(基板2とは反対側の表面)に積層されたAlGaN膜からなる第2バッファ層3Bとから構成されている。第1バッファ層3Aの膜厚は、100nm~300nm程度である。第2バッファ層3Bの膜厚は、100nm~5μm程度である。
第1窒化物半導体層4は、電子走行層を構成している。この実施形態では、第1窒化物半導体層4は、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層からなり、その厚さは100nm~5μm程度である。アクセプタ型不純物の濃度は、4×1016cm-3以上であることが好ましい。この実施形態では、アクセプタ型不純物は、C(炭素)である。
第2窒化物半導体層5は、電子供給層を構成している。第2窒化物半導体層5は、第1窒化物半導体層4よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体からなっている。具体的には、第2窒化物半導体層5は、第1窒化物半導体層4よりもAl組成の高い窒化物半導体からなっている。窒化物半導体においては、Al組成が高いほどバッドギャップは大きくなる。この実施形態では、第2窒化物半導体層5は、Alx1Ga1-x1N層(0<x1<1)からなり、その厚さは10nm~30nm程度である。
このように第1窒化物半導体層4(電子走行層)と第2窒化物半導体層5(電子供給層)とは、バンドギャップ(Al組成)の異なる窒化物半導体からなっており、それらの間には格子不整合が生じている。そして、第1窒化物半導体層4および第2窒化物半導体層5の自発分極ならびにそれらの間の格子不整合に起因するピエゾ分極によって、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面における第1窒化物半導体層4の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離)には、二次元電子ガス(2DEG)16が広がっている。
ゲート部20は、第2窒化物半導体層5上にエピタキシャル成長された窒化物半導体ゲート層6と、窒化物半導体ゲート層6上に形成されたゲート絶縁膜7と、ゲート絶縁膜7上に形成されたゲート電極8とを含む。窒化物半導体ゲート層6は、アクセプタ型不純物がドーピングされた窒化物半導体からなる。この実施形態では、窒化物半導体ゲート層6は、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)からなっており、その厚さは10nm~100nm程度である。窒化物半導体ゲート層6の膜厚は、100nm以下であることが好ましい。この理由については後述する。この実施形態では、窒化物半導体ゲート層6の膜厚は、60nmである。
窒化物半導体ゲート層6に注入されるアクセプタ型不純物の濃度は、3×1017cm-3以上であることが好ましい。この実施形態では、アクセプタ型不純物は、Mg(マグネシウム)である。アクセプタ型不純物は、Fe等のMg以外のアクセプタ型不純物であってもよい。窒化物半導体ゲート層6は、ゲート部20の直下の領域において、第1窒化物半導体層4(電子走行層)と第2窒化物半導体層5(電子供給層)との界面に生じる二次元電子ガス16を相殺するために設けられている。窒化物半導体ゲート層6の表面(上面)はGaN結晶のc面であり、窒化物半導体ゲート層6の側面はGaN結晶のm面である。
ゲート絶縁膜7は、窒化物半導体ゲート層6の表面(c面)に接するように形成されている。ゲート絶縁膜7は、この実施形態では、窒化物半導体ゲート層6とin-situ(その場)で成膜されるin-situ SiNからなる。ゲート絶縁膜7の厚さは、3nm~30nm程度である。ゲート絶縁膜7の膜厚は、3nm以上であることが好ましい。この実施形態では、ゲート絶縁膜7の膜厚は、30nmである。ゲート絶縁膜7は、in-situ SiNの他、SiN(in-situ SiNを除く)、SiO、SiON、Al、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiON、AlON等から構成されてもよい。
この実施形態では、窒化物半導体ゲート層6と前記ゲート絶縁膜7との界面の炭素濃度は、1×1013cm-2以下である。
ゲート電極8は、ゲート絶縁膜7の表面に接するように形成されている。ゲート電極8は、この実施形態では、TiN層から構成されており、その厚さは50nm~200nm程度である。ゲート電極8は、ソース電極用コンタクト孔11寄りに偏って配置されている。
パッシベーション膜9は、第2窒化物半導体層5の表面(コンタクト孔11,12が臨んでいる領域を除く)およびゲート部20の側面および表面を覆っている。この実施形態では、パッシベーション膜9はSiN膜からなり、その厚さ50nm~200nm程度である。この実施形態では、パッシベーション膜9の厚さは、50nmである。
パッシベーション膜9上には、バリアメタル膜10が積層されている。この実施形態では、バリアメタル膜10はTiN膜からなり、その厚さは10nm~50nm程度である。この実施形態では、バリアメタル膜10の厚さは、25nmである。
ソース電極13およびドレイン電極14は、この実施形態では、第2窒化物半導体層5に接する下層(オーミックメタル層)13A,14Aと、下層13A,14Aに積層された中間層(主電極メタル層)13B,14Bと、中間層13B,14Bに積層された上層(バリアメタル層)13C,14Cとからなる。下層13A,14Aは、例えば、厚さが10nm~20nm程度のTi層である。中間層13B,14Bは、厚さが100nm~300nm程度のAl層である。上層13C,14Cは、例えば、厚さが10nm~50nm程度のTiNである。
層間絶縁膜15は、例えば、Si0からなる。層間絶縁膜15の厚さは、1μm程度である。
この窒化物半導体装置1では、第1窒化物半導体層4(電子走行層)上にバンドギャップ(Al組成)の異なる第2窒化物半導体層5(電子供給層)が形成されてヘテロ接合が形成されている。これにより、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面付近の第1窒化物半導体層4内に二次元電子ガス16が形成され、この二次元電子ガス16をチャネルとして利用したHEMTが形成されている。ゲート電極8は、ゲート絶縁膜7およびp型GaN層からなる窒化物半導体ゲート層6を挟んで第2窒化物半導体層5に対向している。
ゲート電極8の下方においては、p型GaN層からなる窒化物半導体ゲート層6に含まれるイオン化アクセプタによって、第1窒化物半導体層4および第2窒化物半導体層5のエネルギーレベルが引き上げられるため、ヘテロ接合界面における伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ順位よりも大きくなる。したがって、ゲート電極8(ゲート部20)の直下では、第1窒化物半導体層4および第2窒化物半導体層5の自発分極ならびにそれらの格子不整合によるピエゾ分極に起因する二次元電子ガス16が形成されない。よって、ゲート電極8にバイアスを印加していないとき(ゼロバイアス時)には、二次元電子ガス16によるチャネルはゲート電極8の直下で遮断されている。こうして、ノーマリーオフ型のHEMTが実現されている。ゲート電極8に適切なオン電圧(たとえば3V)を印加すると、ゲート電極8の直下の第1窒化物半導体層4内にチャネルが誘起され、ゲート電極8の両側の二次元電子ガス16が接続される。これにより、ソース-ドレイン間が導通する。
使用に際しては、たとえば、ソース電極13とドレイン電極14との間に、ドレイン電極14側が正となる所定の電圧(たとえば200V~300V)が印加される。その状態で、ゲート電極8に対して、ソース電極13を基準電位(0V)として、オフ電圧(0V)またはオン電圧(3V)が印加される。
図28A~図28Gは、前述の窒化物半導体装置1の製造工程の一例を説明するための断面図であり、製造工程における複数の段階における断面構造が示されている。
まず、図28Aに示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)
法によって、基板2上に、バッファ層3および第1窒化物半導体層(電子走行層)4が順にエピタキシャル成長される。さらに、MOCVD法によって、第1窒化物半導体層4上に第2窒化物半導体層(電子供給層)5がエピタキシャル成長される。
次に、図28Bに示すように、MOCVD法によって、第2窒化物半導体層5上に、窒化物半導体ゲート層6の材料膜であるゲート層材料膜31が形成される。次に、ゲート層材料膜31上にゲート絶縁膜7の材料膜である絶縁材料膜32が形成される。前述の実施形態のように、ゲート絶縁膜7がSiNからなる場合には、ゲート層材料膜31の成膜に引き続いて、同じMOCVD装置によって、絶縁材料膜32を成膜することができる。この場合には、絶縁材料膜32は、ゲート層材料膜31とin-situ(その場)で成膜されるin-situ SiNとなる。
なお、ゲート絶縁膜7がSiNである場合、プラズマCVD法によって、ゲート層材料膜31上に絶縁材料膜32を成膜することもできる。また、ゲート絶縁膜7がSiO等のSiN以外の絶縁材料から構成される場合には、プラズマCVD法、LPCVD(Low Pressure CVD)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等によって、ゲート層材料膜31上に絶縁材料膜32を成膜することができる。
この後、スパッタ法または蒸着法によって、絶縁材料膜32上にゲート電極8の材料膜であるゲート電極膜33が形成される。ゲート電極膜33は、たとえば、TiNの金属膜からなる。
次に、図28Cに示すように、ゲート電極膜33表面におけるゲート電極作成予定領域を覆うレジスト膜34が形成される。そして、レジスト膜34をマスクとして、ゲート電極膜33、絶縁材料膜32およびゲート層材料膜31が選択的にエッチングされる。
これにより、ゲート電極膜33がパターニングされてゲート電極8が得られる。また、絶縁材料膜32およびゲート層材料膜31が、ゲート電極8と同じパターンにパターニングされる。このようにして、第2窒化物半導体層5上に、窒化物半導体ゲート層6、ゲート絶縁膜7およびゲート電極8からなるゲート部20が形成される。
次に、レジスト膜34が除去される。この後、図28Dに示すように、プラズマCVD法またはLPCVD法によって、露出した表面全域を覆うように、パッシベーション膜9が形成される。そして、スパッタ法によって、パッシベーション膜9の表面に、バリアメタル膜10が形成される。パッシベーション膜9は、たとえばSiN層からなる。バリアメタル膜10は、たとえばTiN層からなる。
次に、図28Eに示すように、パッシベーション膜9とバリアメタル膜10との積層膜に、ソース電極用コンタクト孔11およびドレイン電極用コンタクト孔12が形成される。
次に、図28Fに示すように、露出した表面全域を覆うようにソース・ドレイン電極膜35が形成される。ソース・ドレイン電極膜35は、下層としてのTi層35A、中間層としてのAl層35Bおよび上層としてのTiN層35Cを積層した積層金属膜からなり、各層を順に蒸着することによって形成される。
次に、図28Gに示すように、ソース・ドレイン電極膜35およびバリアメタル膜10がエッチングによってパターニングされ、さらにアニール処理が施されることによって、第2窒化物半導体層5にオーミック接触するソース電極13およびドレイン電極14が形成される。この際、ソース電極13は、Ti層35Aからなる下層13Aと、Al層35Bからなる中間層13Bと、TiN層35Cからなる上層13Cとから構成される。また、ドレイン電極14は、Ti層35Aからなる下層14Aと、Al層35Bからなる中間層14Bと、TiN層35Cからなる上層14Cとから構成される。
この後、ソース電極13、ドレイン電極14およびバリアメタル膜10を覆うように、層間絶縁膜15が形成されることにより、図27に示すような構造の窒化物半導体装置1が得られる。
以下において、図27の窒化物半導体装置1に対して、ゲート絶縁膜7が設けられていない構成の窒化物半導体装置を比較例ということにする。図29は、比較例に係る窒化物半導体装置101の構成を示す断面図である。比較例に係る窒化物半導体装置101では、ゲート部20は、第2窒化物半導体層5上に形成された窒化物半導体ゲート層6と、窒化物半導体ゲート層6上に形成されたゲート電極8とからなる。比較例では、p型GaNからなる窒化物半導体ゲート層6にTiNからなるゲート電極8がショットキー接合されている。比較例の窒化物半導体ゲート層6の膜厚は80nmである。なお、前述の窒化物半導体装置1の窒化物半導体ゲート層6の膜厚は60nmであり、ゲート絶縁膜7の膜厚は30nmである。
比較例に係る窒化物半導体装置101では、ゲート電極8が窒化物半導体ゲート層6にショットキー接合されているため、ゲートリーク電流が大きい。このため、窒化物半導体ゲート層6が劣化しやすい。
前述の実施形態に係る窒化物半導体装置1(以下、本実施形態という)では、窒化物半導体ゲート層6上にゲート絶縁膜7が形成され、そのゲート絶縁膜7上にゲート電極8が形成されている。つまり、本実施形態では、窒化物半導体ゲート層6とゲート電極8との間にゲート絶縁膜7が介在しているので、比較例に比べて、ゲートリーク電流を小さくすることができる。これにより、窒化物半導体ゲート層6が劣化しにくくなる。本実施形態では、ゲートリーク電流は、1nA/mm以下である。
また、後述するように、本実施形態では、比較例に比べて閾値電圧Vthを高くすることができる。また、本実施形態では、比較例に比べて、窒化物半導体ゲート層6を薄くすることが可能となるため、窒化物半導体ゲート層6の電解強度を低減でき、窒化物半導体ゲート層6の経時絶縁破壊(TDDB:Time Dependent Dielectric Breakdown)が起こりにくくなる。さらに、本実施形態では、比較例に比べて、閾値電圧Vthを安定させることができる。
本実施形態では、比較例に比べて閾値電圧Vthを高くできる理由および比較例に比べて窒化物半導体ゲート層6を薄くできる理由について説明する。
図30は、比較例のエネルギー分布を示すエネルギーバンド図である。図31は、比較例の電界強度分布を示す電界強度分布図である。図30および図31において、GaNは第1窒化物半導体層4を示し、AlGaNは第2窒化物半導体層5を示し、P-GaNは窒化物半導体ゲート層6を示し、Metalは、ゲート電極8を示している。図30において、Eは伝導帯のエネルギーレベルであり、Eは価電子帯のエネルギーレベルであり、Eはフェルミ準位である。
比較例では、ゲート電極8は、窒化物半導体ゲート層6とショットキー接合される。ゲート電極8と窒化物半導体ゲート層6との界面の電位障壁(ショットキー障壁)Φは、閾値電圧Vthに影響を及ぼす。
図30の例では、閾値電圧Vthは2[V]となる。窒化物半導体装置の閾値電圧Vthは、Si半導体装置の閾値電圧Vthに比べて小さいので、閾値電圧Vthを大きくすることが重要である。比較例において閾値電圧Vthを上げるためには、窒化物半導体ゲート層6の膜厚を大きくする必要がある。p-GaNのアクセプタであるMg,Feはメモリ効果を有するため、図31からわかるように、窒化物半導体ゲート層6の膜厚を大きくすると、窒化物半導体ゲート層6内部の電界強度は、ゲート電極8との境界部に近づくにつれて高くなる。また、窒化物半導体は、絶縁膜に比べて、許容できる電界強度が小さい。そのため、窒化物半導体ゲート層6の膜厚をあげることができず、閾値電圧Vthを高くすることは困難である。窒化物半導体ゲート層6の膜厚は、通常、100nm以下にされる。
図32は、本実施形態のエネルギー分布を示すエネルギーバンド図である。図33は、本実施形態の電界強度分布を示す電界強度分布図である。図32および図33において、GaNは第1窒化物半導体層4を示し、AlGaNは第2窒化物半導体層5を示し、P-GaNは窒化物半導体ゲート層6を示し、SiNはゲート絶縁膜7を示し、Metalはゲート電極8を示している。図32において、Eは伝導帯のエネルギーレベルであり、Eは価電子帯のエネルギーレベルであり、Eはフェルミ準位である。
本実施形態では、窒化物半導体ゲート層6上にゲート絶縁膜7が形成されている。ゲート絶縁膜7内部の電界強度分布は一様で、ゲート絶縁膜7を厚くしても電界強度が増えることはない。そのため、本実施形態では、窒化物半導体ゲート層6の膜厚を比較例の窒化物半導体ゲート層6の膜厚に比べて薄くしながら(従ってゲート絶縁膜7におけるゲート電極8との境界での電界強度が小さいことを維持しながら)、閾値電圧Vthを高く(図32では3[V])とすることができる。
本実施形態では、窒化物半導体ゲート層6上にゲート絶縁膜7を形成することによって、閾値電圧Vthを高くできるため、閾値電圧Vthを高くするために窒化物半導体ゲート層6の膜厚を厚くする必要がない。そこで、本実施形態では、窒化物半導体ゲート層6の膜厚を比較例に比べて薄くしている。これにより、図33に示すように、本実施形態の窒化物半導体ゲート層6におけるゲート絶縁膜7との境界部での電解強度は、比較例の窒化物半導体ゲート層6におけるゲート電極8との境界部での電解強度を小さくなるから、本実施形態では、比較例に比べて窒化物半導体ゲート層6の経時絶縁破壊(TDDB)が起こりにくくなる。
なお、本実施形態において、ゲート絶縁膜7におけるゲート電極8との境界部での電解強度は、窒化物半導体ゲート層6におけるゲート絶縁膜7との境界部での電解強度よりも高くなるが、ゲート絶縁膜7の絶縁破壊電圧は、窒化物半導体ゲート層6の絶縁破壊電圧よりも大きいので問題はない。
次に、本実施形態では、比較例に比べて閾値電圧Vthを安定させることができる理由について説明する。
p型GaNからなる窒化物半導体ゲート層6は、分極性材料であるため、その表面(c面)には分極電荷が現れる。窒化物半導体装置の製造過程において、窒化物半導体ゲート層6の表面が大気に晒されると、その表面の分極電荷を打ち消すように、大気中の極性有機分子(カルボン酸、シロキ酸等)がその表面に付着する。
比較例では、CVD装置によって窒化物半導体ゲート層6の材料膜(ゲート層材料膜)を形成した後、スパッタ装置によってゲート層材料膜上にゲート電極の材料膜(ゲート電極膜)が形成される。このため、窒化物半導体ゲート層6の表面が大気に晒されるので、その表面に大気中の有機分子が付着する。これにより、ショットキー障壁Φの大きさが変動し、閾値電圧Vthが不安定になる。
これに対して、本実施形態では、MOCVD装置によって窒化物半導体ゲート層6の材料膜(ゲート層材料膜31)を形成した後、引き続いて同じMOCVD装置によってゲート層材料膜31上にin-situ SiNからなるゲート絶縁膜7の材料膜(絶縁材料膜32)が形成される。このため、窒化物半導体装置1の製造過程において、窒化物半導体ゲート層6の表面(c面)は、大気に晒されない。このため、本実施形態では、比較例に比べて、窒化物半導体ゲート層6の表面(c面)に有機分子が付着されにくい。これにより、本実施形態では、比較例に比べて、ゲート電極8とゲート絶縁膜7との界面の電位障壁Φが安定し、閾値電圧Vthが安定する。
なお、絶縁材料膜32がin-situ SiN以外の材料、例えばSiOからなる場合には、MOCVD法によって窒化物半導体ゲート層6の材料膜(ゲート層材料膜31)を形成した後、その表面が大気に晒されることになる。この場合には、プラズマCVD装置、LPCVD装置、ALD装置等の絶縁膜成膜装置内において、ゲート層材料膜31を400℃以上に加熱することにより、ゲート層材料膜31の表面に付着した有機分子を除去した後に、絶縁材料膜32を形成すればよい。
ゲート絶縁膜7がSiOからなる場合のエネルギー分布および電界強度分布を図34および図35に示す。図34および図35の例では、ゲート絶縁膜(SiO)7の膜厚は30nmであり、窒化物半導体ゲート層(p-GaN)6の膜厚は50nmである。
以上、第2発明の実施形態について説明したが、第2発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、第1窒化物半導体層(電子走行層)4がGaN層からなり、第2窒化物半導体層(電子供給層)5がAlGaN層からなる例について説明したが、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5とはバンドギャップ(例えばAl組成)が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。たとえば、第1窒化物半導体層4/第2窒化物半導体層5の組み合わせとしては、GaN/AlN、AlGaN/AlNなどを例示できる。
また、前述の実施形態では、基板2の材料例としてシリコンを例示したが、ほかにも、サファイア基板やGaN基板などの任意の基板材料を適用できる。
また、前述の実施形態では、ゲート電極7を窒化物半導体ゲート層6に接合させたとすると、それらがショットキー接合するような材料からゲート電極7が構成されている場合について説明した。しかし、ゲート電極7を窒化物半導体ゲート層6に接合させたとすると、それらがオーミック接合するような材料からゲート電極7が構成されている場合にも、第2発明を適用することができる。
1 窒化物半導体パッケージ
2 端子フレーム
3 窒化物半導体デバイス
4 樹脂パッケージ
13 電子走行層
14 電子供給層
15 ゲート層
16 ゲート電極
18 ソース電極
19 ドレイン電極
24 エッチングストップ層

Claims (7)

  1. 窒化物半導体からなる電子走行層と、
    前記電子走行層上に形成された電子供給層と、
    前記電子供給層上に形成されたエッチングストップ層と、
    前記エッチングストップ層上に選択的に形成された窒化物半導体からなるゲート層と、
    前記ゲート層上に形成されたゲート電極と
    前記ゲート電極を挟んで配置されたソース電極およびドレイン電極とを含み、
    前記電子供給層がAlNからなり、
    前記エッチングストップ層がAlx´Ga1-x´Nからなり、
    前記エッチングストップ層の厚さが10nm以下であり、
    前記エッチングストップ層のAl組成が0.1≦x´≦0.2であり、
    前記ソース電極は、前記ゲート電極の側面および上面を覆う部分を有している、窒化物半導体デバイス。
  2. 前記電子供給層の厚さが2nm以下である、請求項1に記載の窒化物半導体デバイス。
  3. 前記エッチングストップ層のAl組成がx´=0.1である、請求項1または2に記載の窒化物半導体デバイス。
  4. 前記電子供給層および前記エッチングストップ層の一部または全部が、前記ソース電極および前記ドレイン電極の形成領域において選択的に除去されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
  5. 前記電子走行層は、不純物としてMgを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
  6. 前記ゲート電極は、Ni、Pt、Mo、WまたはTiNを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイスと、
    前記窒化物半導体デバイスが搭載された端子フレームと、
    前記窒化物半導体デバイスおよび前記端子フレームを封止する樹脂パッケージとを含む、窒化物半導体パッケージ。
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