以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本実施形態の熱交換器1は、例えば、車室内の空気調和を行う冷凍サイクルの一部を構成する蒸発器として使用されるものである。蒸発器は、冷凍サイクルを循環する第1流体としての冷媒と、熱交換器1を通過する第2流体としての空気との熱交換を行い、空気から冷媒に吸熱させることによりその空気を冷却する。要するに、蒸発器は、冷媒の蒸発潜熱により空気を冷却する冷却器である。図1の矢印DRgは、熱交換器1の上下方向DRgを示している。
図1および図2に示すように、熱交換器1は、複数のコルゲートフィン10、複数本のチューブ20、第1~第4ヘッダタンク21~24、外枠部材25、および配管接続部材26などを備えている。これらの部材は、例えばアルミニウム合金で構成され、各部材同士がロウ付けにより接合されている。なお、コルゲートフィン10の表面10a(図5参照)には、後述するように複数の溝102が形成されているが、その溝102はコルゲートフィン10の大きさに比して極めて微細であるので、図2には図示されていない。このことは、その溝102を拡大図示した図を除き、コルゲートフィン10を表した後述の図でも同様である。
複数本のチューブ20は、チューブ配列方向DRstに所定の間隔をあけて並ぶように配列されている。そして、熱交換器1を通過する空気は、複数本のチューブ20の相互間に流れる。そのチューブ20の相互間では、その空気は、空気通過方向AFの一方側を上流側とし空気通過方向AFの他方側を下流側として流れる。その空気通過方向AFは、別言すれば、第2流体である空気の流通方向である。
また、熱交換器1を通過する空気は、チューブ20の相互間を流れつつ、冷媒によって冷却され凝縮水Wcを発生させる。つまり、その熱交換器1を通過する空気は、冷媒との熱交換により凝縮水Wcを発生させる気体である。
具体的に、チューブ20は、チューブ配列方向DRstを短手方向とし且つ空気通過方向AFを長手方向とした扁平断面形状を有する扁平管である。また、複数本のチューブ20は、空気通過方向AFの一方側と他方側の2列に配列されている。複数本のチューブ20はいずれも、一端から他端に亘りチューブ延伸方向DRtに直線状に延びており、そのチューブ20の内部には冷媒が流れる。そのチューブ延伸方向DRtは上下方向DRgに必ずしも一致する必要はないが、本実施形態では、その上下方向DRgに一致している。要するに、本実施形態のチューブ20はいずれも、上下方向DRgすなわち鉛直方向DRgに延びている。なお、空気通過方向AFとチューブ配列方向DRstとチューブ延伸方向DRtは互いに交差する方向であり、厳密には、互いに直交する方向である。
複数本のチューブ20は、上側の端部にて第1ヘッダタンク21または第2ヘッダタンク22に挿入され、下側の端部にて第3ヘッダタンク23または第4ヘッダタンク24に挿入されている。第1~第4ヘッダタンク21~24は、複数本のチューブ20に冷媒を分配し、また、複数本のチューブ20から流入する冷媒を集合させるものである。
複数本のチューブ20の相互間には空気が流れるので、そのチューブ20の相互間に形成される隙間は、空気が流れる空気通路となっている。そして、コルゲートフィン10は、その空気通路に設けられている。言い換えれば、コルゲートフィン10は、チューブ20の相互間に設けられている。従って、本実施形態のコルゲートフィン10は、チューブ20の外側に設けられるアウターフィンである。
コルゲートフィン10は、チューブ20の内側を流れる冷媒と、チューブ20の相互間に流れる空気との熱交換を促進するものである。詳しく言えば、コルゲートフィン10は、チューブ20の内側を流れる冷媒と、チューブ20の外側を流れる空気との伝熱面積を増大させることにより、その冷媒と空気との熱交換効率を高めるものである。
チューブ配列方向DRstにおいて、複数本のチューブ20と複数のコルゲートフィン10とが交互に並んだ部分の更に外側には、一対の外枠部材25が設けられている。その一対の外枠部材25のうちの一方には、配管接続部材26が固定されている。
その配管接続部材26には、冷媒が供給される冷媒入口27と、冷媒を排出するための冷媒出口28とが設けられている。冷媒入口27から第1ヘッダタンク21に流入した冷媒は、第1~第4ヘッダタンク21~24と複数本のチューブ20とを所定の経路で流れ、冷媒出口28から流出する。その際、第1~第4ヘッダタンク21~24と複数本のチューブ20とを流れる冷媒の蒸発潜熱により、コルゲートフィン10が設けられた空気通路を流れる空気が冷却される。
図2および図3に示すように、コルゲートフィン10は、板状のプレート部材が曲げ成形などを施されることで形成されている。具体的には、コルゲートフィン10は、チューブ延伸方向DRtへ連続する波形状を成すように曲がって形成されている。
コルゲートフィン10は、複数の接合部12と、複数のフィン本体部13とを有している。その複数の接合部12はそれぞれ、コルゲートフィン10の波形状の頂部を構成し、チューブ配列方向DRstを向いたチューブ20の側面であるチューブ壁面201に接合されている。すなわち、接合部12の板厚方向両側の表面のうちチューブ20に接合された側とは反対側の表面は、チューブ20の相互間に形成された空気通路に露出している。その接合部12とチューブ20との接合は、具体的にはロウ付け接合である。なお、接合部12は、コルゲートフィン10の波形状の頂部を構成するので、フィンTOP部とも称される。
フィン本体部13は、コルゲートフィン10の波形状に沿って隣り合う接合部12同士の間に配置され、その接合部12同士をつなぐようにその接合部12のそれぞれに連結している。ここで、上記「波形状に沿って隣り合う接合部12同士」とは、言い換えれば、その波形状に沿った仮想の波形曲線を想定した場合にその仮想の波形曲線上において互いに隣り合う接合部12同士ということである。
また、フィン本体部13は、チューブ配列方向DRstにおけるフィン本体部13の両端部分においてR曲げされている。すなわち、フィン本体部13は、チューブ配列方向DRstにおけるフィン本体部13の両端部分にそれぞれ設けられた一対の湾曲連結部131と、その一対の湾曲連結部131の間に設けられた本体中間部132と有している。その一対の湾曲連結部131はそれぞれ、フィン本体部13の両隣りの接合部12に対し湾曲しつつ連結している。
なお、図2の実線L1、L2、L3、L4は、接合部12と湾曲連結部131と本体中間部132とルーバ14とのそれぞれの間の境界を示した仮想的な線であり、例えば溝などの具体的な形状を示すものではない。
フィン本体部13は、フィン本体部13の一部が切り起こされた形状を成す複数のルーバ14を有している。この複数のルーバ14は空気通過方向AFに並んで配置されている。
この複数のルーバ14は、フィン本体部13のうち本体中間部132に含まれる。ルーバ14は、チューブ配列方向DRstにおけるルーバ14の中央部分を含むルーバ本体部141と、ルーバ一端部142と、ルーバ他端部143とを有している。
ルーバ本体部141は、空気通過方向AFに対して傾斜した平板状を成し、ルーバ本体部141に沿うように空気を案内する。すなわち、空気通過方向AFに隣接するルーバ14のルーバ本体部141同士の間には、空気が通過する隙間が形成されている。
ルーバ一端部142は、ルーバ本体部141からチューブ配列方向DRstの一方側へ延設された板状を成し、ルーバ14のうちチューブ配列方向DRstの一方側の端に設けられている。そして、ルーバ一端部142は、そのルーバ一端部142の板厚方向がルーバ本体部141の板厚方向に交差する方向となるように形成されている。
また、ルーバ一端部142は、チューブ配列方向DRstにおけるルーバ本体部141側とは反対側にて、フィン本体部13のうちルーバ14周りの部位を構成する湾曲連結部131へ連結している。そのルーバ一端部142が連結する湾曲連結部131は、本体中間部132を挟んで並ぶ一対の湾曲連結部131のうちチューブ配列方向DRstの一方側のものである。
ルーバ他端部143は、ルーバ本体部141からチューブ配列方向DRstの他方側へ延設された板状を成し、ルーバ14のうちチューブ配列方向DRstの他方側の端に設けられている。そして、ルーバ他端部143は、そのルーバ他端部143の板厚方向がルーバ本体部141の板厚方向に交差する方向となるように形成されている。
また、ルーバ他端部143は、チューブ配列方向DRstにおけるルーバ本体部141側とは反対側にて、フィン本体部13のうちルーバ14周りの部位を構成する湾曲連結部131へ連結している。そのルーバ他端部143が連結する湾曲連結部131は、本体中間部132を挟んで並ぶ一対の湾曲連結部131のうちチューブ配列方向DRstの他方側のものである。
また、図2に示すように、1つのフィン本体部13が有する全部のルーバ14は、4つのルーバ群に分かれる。そして、各ルーバ群は、ルーバ本体部141が所定の間隔を空けて互いに平行に設けられた複数のルーバ14から構成されている。
そして、その4つのルーバ群を構成する複数のルーバ14は全体として、熱交換器1を通過する空気を図2の矢印FLfのように蛇行させるように案内する。言い換えれば、その矢印FLfのように流れる空気は、ルーバ14の相互間を通り抜けつつ、フィン本体部13を挟んでチューブ延伸方向DRtに振れながら蛇行する。このように空気が蛇行して流れることで、冷媒と空気との間における熱交換の性能向上が図られている。
フィン本体部13の本体中間部132は、上述の複数のルーバ14を含むが、そのルーバ14以外の部位は平板状に形成されている。具体的には、本体中間部132は、空気通過方向AFに沿うように形成された複数の平坦面15を有している。その複数の平坦面15は、ルーバ14に対し空気通過方向AFに並んで配置されている。すなわち、複数の平坦面15は、本体中間部132のうち空気通過方向AFの一方側の端に設けられた一方側平坦面151、空気通過方向AFの他方側の端に設けられた他方側平坦面152、および、中間平坦面153を含んでいる。その中間平坦面153は、本体中間部132が有する複数のルーバ14の間に設けられている。
図4~図6に示すように、コルゲートフィン10は、そのコルゲートフィン10の表面10a(すなわち、フィン表面10a)の親水性を高めるように形成された凹凸形状である親水性凹凸形状101を、フィン表面10aに有している。
なお、上記の親水性凹凸形状101がフィン表面10aの親水性を高めるように形成されることとは、詳しく言えば、そのフィン表面10aが凹凸の無い平滑面である場合と比較して、その親水性凹凸形状101がフィン表面10aの親水性を高めるように形成されることである。
例えば、このフィン表面10aの親水性凹凸形状101は、フィン表面10aに設けられた複数の溝102によって形成されている。従って、親水性凹凸形状101を形成する複数の溝102は、その親水性凹凸形状101に含まれる凹形状となっている。なお、図4では、溝102を判りやすく示すために、点ハッチングが溝102に付されている。このことは、図4に相当する後述の図でも同様である。
具体的に、その複数の溝102は、所定の溝ピッチPg(図5参照)で相互間隔を空けて並ぶように配置されている。そして、複数の溝102はそれぞれ、フィン表面10aに沿った一方向に延びており、並列配置となっている。また、複数の溝102はそれぞれ、フィン表面10aに対し所定の溝深さHg(図5参照)で窪むように形成されている。
なお、本実施形態では、複数の溝102の相互ピッチである溝ピッチPgはフィン表面10aの全体にわたって一様であるが、後述するように、溝深さHgは、フィン表面10aのうちの部位に応じて異なる大きさとなっている。また、図4および図5のように溝102を図示する各図面では、説明のため、フィン表面10aに設けられる複数の溝102は模式的に敢えて実際の大きさよりも大きく表されている。また、複数の溝102がそれぞれ延びる方向、すなわち、フィン表面10aに沿った上記一方向には、特に限定はない。
また、図5にはコルゲートフィン10の板厚方向DRfが示されているが、コルゲートフィン10のうちの各部位について見れば、その板厚方向DRfは、その各部位それぞれにおける板厚方向である。すなわち、コルゲートフィン10の板厚方向DRfとは、フィン本体部13ではそのフィン本体部13の板厚方向であり、接合部12ではその接合部12の板厚方向であり、ルーバ14ではそのルーバ14の板厚方向である。
図6および図7に示すように、コルゲートフィン10のうちの各部位について見れば、各部位はそれぞれフィン表面10aの一部を構成する表面を有している。例えばフィン本体部13について見れば、図6および図7に示すように、フィン本体部13は、フィン表面10aの一部を構成する一方側表面13aと他方側表面13bとを有している。
その一方側表面13aは、フィン本体部13の板厚方向の一方側に設けられた表面であって、下側を向いた面である。この下側を向いた面は、真下を向いた面であってもよいし、斜め下向きの面であってもよい。
また、他方側表面13bは、フィン本体部13の板厚方向の他方側に設けられた表面であって、上側を向いた面である。この上側を向いた面は、真上を向いた面であってもよいし、斜め上向きの面であってもよい。要するに、他方側表面13bは、一方側表面13aの反対面である。
また、フィン本体部13には複数のルーバ14が含まれるので、複数のルーバ14はそれぞれ、一方側表面13aのうちルーバ14の表面を成す一方側ルーバ表面14aと、他方側表面13bのうちルーバ14の表面を成す他方側ルーバ表面14bとを有している。この一方側ルーバ表面14aは下側を向いた面であって一方側表面13aに含まれ、他方側ルーバ表面14bは上側を向いた面であって他方側表面13bに含まれる。
また、フィン本体部13には、ルーバ14が設けられていない平坦面15も含まれるので、一方側表面13aには、その平坦面15のうち下側を向いた下向き平坦面15aも含まれる。これと同様に、他方側表面13bには、その平坦面15のうち上側を向いた上向き平坦面15bも含まれる。
図3に示すように、コルゲートフィン10は、コルゲートフィン10の波形状の一部を成す複数のルーバ間構成部133を有している。そのルーバ間構成部133は、複数のフィン本体部13のうちチューブ延伸方向DRtに隣り合う2つのフィン本体部13e、13fの一方13eが有するルーバ14と他方13fが有するルーバ14とのそれぞれと、チューブ20との間Dxに設けられている。
このルーバ間構成部133は、上記2つのフィン本体部13e、13fの一方13eと他方13fとの間に設けられた接合部12と、その接合部12に連結する湾曲連結部131とを含んでいる。そして、ルーバ間構成部133は、そのルーバ間構成部133が接合されたチューブ20側とは反対側の表面を成す凹状面133aを有している。その凹状面133aは凹状に曲がった曲面で構成されており、その凹状面133aの凹形状は、チューブ配列方向DRstにおいて、チューブ20の相互間に形成された空気通路の内側へ開いた向きとなっている。その凹状面133aが及ぶ範囲は、図8において二点鎖線Wxの長さで示されている。
上述した親水性凹凸形状101はフィン表面10aに設けられているが、本実施形態では、親水性凹凸形状101は、コルゲートフィン10の板厚方向DRf両側のフィン表面10a全体にわたって形成されている。従って、コルゲートフィン10のうちの各部位に着目すれば、例えば、図6~図8に示すように、その親水性凹凸形状101は、フィン本体部13の一方側表面13aにも他方側表面13bにも形成されている。また、親水性凹凸形状101は、ルーバ間構成部133の凹状面133aにも、その反対側の表面にも形成されている。
図5および図6に示すように、親水性凹凸形状101を形成する溝102は、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において、溝深さHgが大きくなるように形成されている。ここで、その溝深さHgとは、言い換えれば親水性凹凸形状101に含まれる凹形状の深さHgのことであるので、溝深さHgが大きくなることとは、その凹形状の深さHg(すなわち、凹形状深さHg)が大きくなることである。
従って、親水性凹凸形状101は、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において、親水性凹凸形状101の凹形状深さHgが大きくなるように形成されているとも言える。これにより、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなっている。なぜなら、親水性凹凸形状101においてその溝深さHgが大きくなるほど、その親水性凹凸形状101が設けられたフィン表面10aの親水性は高くなるからである。
このようなことから、要するに、親水性凹凸形状101は、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなるようにフィン表面10aに形成されている。
また、上記した溝深さHgの大小傾向は、フィン表面10aのうちルーバ14の表面14a、14bに着目しても同様である。すなわち、各ルーバ14において、他方側ルーバ表面14b(図7参照)に形成された溝102の溝深さHgよりも、一方側ルーバ表面14aに形成された溝102の溝深さHgの方が大きくなっている。
なお、図6の(a)は、図4相当の図であって、フィン本体部13の他方側表面13bのうちの一部分を表している。具体的には、図6の(a)は、図6のうち図3と同じ図示方向の視図に表されたFNa部分におけるフィン表面10aを表している。図6の(b)は、図5相当の図であって、図6の(a)におけるVIb-VIb断面を表している。
また、図6の(c)は、図4相当の図であって、フィン本体部13の一方側表面13aのうちの一部分を表している。具体的には、図6の(c)は、図6のうち図3と同じ図示方向の視図に表されたFNb部分におけるフィン表面10aを表している。図6の(d)は、図5相当の図であって、図6の(c)におけるVId-VId断面を表している。
また、フィン表面10aの複数の溝102は、例えば、コルゲートフィン10が波形状に成形される前に形成される。そのため、フィン表面10aの複数の溝102には、コルゲートフィン10を構成する複数の部位12、131、132、141、142、143、15にわたって連続して延びている溝が含まれている。
また、図5に示すように、上記の親水性凹凸形状101に含まれる凹形状の深さHg、すなわち溝102の溝深さHgは、フィン表面10aのうちの何れの箇所でも、例えば10μm以上である。
これにより、フィン表面10aの親水性を十分に高くすることが可能である。フィン表面10aの親水性が高くなると、その分、コルゲートフィン10の排水性が向上し、フィン表面10aに凝縮水Wcが滞留することを抑制できる。
次に、冷媒によって冷却された空気から生じる凝縮水Wcの流れについて説明する。図3に示すように、各チューブ20が上下方向DRgに沿って配置されているので、凝縮水Wcは、矢印F1、F2のように上側から下側へ、コルゲートフィン10の接合部12およびチューブ壁面201に沿って流れて熱交換器1の下部から熱交換器1外へ排水される。
このとき、フィン本体部13がチューブ20の相互間の空気通路を横断しているので、矢印F1のように流れる凝縮水Wcは、ルーバ一端部142の表面を通ると共に、ルーバ14の相互間に形成された隙間を通り抜ける。これと同様に、矢印F2のように流れる凝縮水Wcは、ルーバ他端部143の表面を通ると共に、ルーバ14の相互間に形成された隙間を通り抜ける。例えば、図3のA1部分では、矢印F1のように流れる凝縮水Wcは、ルーバ一端部142の表面を通ってそのルーバ一端部142を越える。また、A2部分では、矢印F2のように流れる凝縮水Wcは、ルーバ他端部143の表面を通ってそのルーバ他端部143を越える。
また、ルーバ14では冷媒と空気との熱交換が促進されるので、凝縮水Wcはルーバ14で主に発生する。例えば、そのルーバ14のうちルーバ本体部141に付着した凝縮水Wcは、矢印Fa、Fbのようにルーバ本体部141の表面で濡れ広がる。
このようにルーバ本体部141で生じた凝縮水Wcは、矢印Fcのように上側から流れる凝縮水Wcとルーバ一端部142で合流し、チューブ壁面201または接合部12へと流れる。また、そのルーバ本体部141で生じた凝縮水Wcは、矢印Fdのように上側から流れる凝縮水Wcとルーバ他端部143で合流し、チューブ壁面201または接合部12へと流れる。
次に、本実施形態の熱交換器1の効果を説明するために、本実施形態と比較される比較例について説明する。その比較例の熱交換器でも、コルゲートフィン92(図9参照)は、フィン表面の親水性を高める凹凸形状を有している。この比較例のコルゲートフィン92の表面に形成された凹凸形状は、親水性を高めるという点では本実施形態の親水性凹凸形状101と同じである。しかし、比較例の凹凸形状は、コルゲートフィン92の表面全体にわたって一様に形成されており、この点において本実施形態の親水性凹凸形状101とは異なる。この凹凸形状の分布を除き、比較例のコルゲートフィン92は本実施形態のコルゲートフィン10と同じである。また、比較例の熱交換器が有するコルゲートフィン92以外の各部品(例えばチューブ20等)は、本実施形態の熱交換器1のものと同じである。
このようなコルゲートフィン92を備えた比較例の熱交換器では、凹凸形状によりフィン表面の親水性が向上するので、その凹凸形状の無い熱交換器との比較では排水性の向上を期待できる。しかしながら、一方側表面13aと他方側表面13bとの何れにおいても、毛細管力で凝縮水Wcを例えば図9の矢印Fkのように同程度に引っ張るので、排水させたい方向(具体的には、鉛直方向DRgの下側)への凝縮水流れは促進されない。
そのため、比較例の熱交換器では、排水させたい方向には重力以上の力が働かないので、凝縮水Wcの排水し易さは十分には改善されない。すなわち、比較例の熱交換器ではコルゲートフィン92の表面に凝縮水Wcは滞留しやすく、凝縮水Wcによるルーバ14の相互間の閉塞を十分に防止することはできないと考えられる。
これに対し、本実施形態の熱交換器1は、図9を用いて説明した比較例の熱交換器で発生しうる凝縮水Wcの滞留(言い換えれば、排水の滞り)を防止するように構成されている。
例えば本実施形態によれば、図6に示すように、親水性凹凸形状101は、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなるようにフィン表面10aに形成されている。具体的には、その親水性凹凸形状101を形成する溝102が、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において、溝深さHgが大きくなるように形成されている。
これにより、フィン表面10aに凝縮水Wcが付着する場合、その凝縮水Wcは親水性の低い側から高い側へと引っ張られるので、その凝縮水Wcは、フィン本体部13の他方側表面13bから一方側表面13a(すなわち、下側を向く面)へと移動しやすくなる。そのため、凝縮水Wcが流下しやすくなり、凝縮水Wcの排水性を十分に得ることができる。
別言すると、図8の矢印Fm、Fnで示すように、一方側表面13a(図6および図7参照)における溝102の毛細管力の方が他方側表面13bにおける溝102の毛細管力よりも大きくなる。その結果、その毛細管力差により凝縮水Wcは図8の矢印Foのように下側へと引っ張られる。従って、親水性凹凸形状101が凝縮水Wcを引っ張る力を利用して、他方側表面13bから一方側表面13aへの凝縮水流れを促進することができる。そして、図3の矢印F1、F2のようにルーバ一端部142またはルーバ他端部143を超えて上側から下側へ向かう凝縮水流れを促進することができる。
また、本実施形態によれば、図3に示すように、コルゲートフィン10は、コルゲートフィン10の波形状の一部を成す複数のルーバ間構成部133を有している。そのルーバ間構成部133は、複数のフィン本体部13のうちチューブ延伸方向DRtに隣り合う2つのフィン本体部13e、13fの一方13eが有するルーバ14と他方13fが有するルーバ14とのそれぞれと、チューブ20との間Dxに設けられている。また、ルーバ間構成部133は、そのルーバ間構成部133が接合されたチューブ20側とは反対側の表面を成し凹状に曲がった凹状面133aを有している。そして、親水性凹凸形状101は、その凹状面133aにも形成されている。従って、その凹状面133aの親水性向上により、その凹状面133aを有するルーバ間構成部133の上側に連なるルーバ14上から凹状面133a上へ凝縮水Wcが濡れ拡がりやすくなるので、そのルーバ14からの排水を促進することが可能である。
また、本実施形態によれば、図6に示すように、親水性凹凸形状101は、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において、親水性凹凸形状101の凹形状深さHg(すなわち、溝深さHg)が大きくなるように形成されている。これにより、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなっている。従って、親水性凹凸形状101の形状変化に対応させてフィン表面10aの親水性を加減することが可能である。なお、親水性凹凸形状101の凹形状深さHgを親水性凹凸形状101の高低差と呼んでも差し支えない。
また、本実施形態によれば、図1に示すように、熱交換器1は、空気からチューブ20内の冷媒に吸熱させることにより空気を冷却する蒸発器である。そして、そのような蒸発器では、凝縮水Wcの排水性が冷却能力に密接に関連する。従って、凝縮水Wcの排水性向上というメリットを十分に享受することが可能である。
また、本実施形態によれば、図1および図3に示すように、複数本のチューブ20は鉛直方向DRgに延びている。従って、重力により、図3の矢印F1、F2のようにチューブ壁面201を伝わる凝縮水Wcの排水性を向上することが可能である。
また、本実施形態によれば、図5に示す溝深さHgは、例えば10μm以上である。このようにすれば、親水性凹凸形状101によって生じる親水性が確保され、その親水性凹凸形状101を有するフィン表面10aに付着する凝縮水Wcを、排水に適するように薄膜化することが可能である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
図10に示すように、本実施形態では、複数の溝102の溝深さHg(図5参照)はフィン表面10aの全体にわたって一様であるが、溝ピッチPgは、フィン表面10aのうちの部位に応じて異なる大きさとなっている。この点において、本実施形態は第1実施形態と異なっている。
具体的に、親水性凹凸形状101を形成する溝102は、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において溝ピッチPgが小さくなるように形成されている。これにより、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなっている。なぜなら、親水性凹凸形状101においてその溝ピッチPgが小さくなるほど、その親水性凹凸形状101が設けられたフィン表面10aの親水性は高くなるからである。
このようなことから、本実施形態でも第1実施形態と同様に、親水性凹凸形状101は、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなるようにフィン表面10aに形成されている。
また、上記した溝ピッチPgの大小傾向は、フィン表面10aのうちルーバ14の表面14a、14bに着目しても同様である。すなわち、各ルーバ14において、他方側ルーバ表面14b(図7参照)に形成された溝102の溝ピッチPgよりも、一方側ルーバ表面14aに形成された溝102の溝ピッチPgの方が小さくなっている。
なお、図10の(a)は図4相当の図であって、図10のFNa部分におけるフィン表面10aを表している。要するに、図10の(a)は、フィン表面10aのうち図6の(a)と同じ部位を表している。
また、図10の(b)は図4相当の図であって、図10のFNb部分におけるフィン表面10aを表している。要するに、図10の(b)は、フィン表面10aのうち図6の(c)と同じ部位を表している。
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態によれば、図10に示すように、親水性凹凸形状101は、フィン表面10aに設けられた複数の溝102によって形成されている。そして、その複数の溝102は、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において溝ピッチPgが小さくなるように形成され、これにより、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高くなっている。従って、親水性凹凸形状101の形状変化に対応させてフィン表面10aの親水性を加減することが可能である。
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態では、例えば図6に示すように、親水性凹凸形状101は、コルゲートフィン10のフィン表面10a全体にわたって形成されているが、これは一例である。例えばフィン本体部13の一方側表面13aにおいても親水性凹凸形状101がその一方側表面13aの全域わたって設けられている必要はない。コルゲートフィン10全体として他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方が高い傾向になれば、親水性凹凸形状101が部分的に無い箇所があってもよい。
更に例示すれば、親水性凹凸形状101は、フィン表面10a全体のうち一方側ルーバ表面14aを除いた部位には形成されていないことも想定できる。つまり、その親水性凹凸形状101は、フィン表面10a全体のうち少なくとも一方側ルーバ表面14aに設けられていればよい。親水性凹凸形状101が少なくとも一方側ルーバ表面14aに設けられていれば、他方側表面13bの親水性よりも一方側表面13aの親水性の方を高くすることが可能だからである。
(2)上述の第1実施形態では、例えば図4に示すように、フィン表面10aに設けられる複数の溝102は並列配置となっているが、これは一例である。例えば、複数の溝102は、溝102同士が互いに交差する格子状に配置されていても差し支えない。また、その溝102は湾曲して延びていても差し支えない。このことは、第2実施形態でも同様である。
(3)上述の第2実施形態では、親水性凹凸形状101を形成する複数の溝102の溝深さHg(図5参照)はフィン表面10aの全体にわたって一様であるが、これは一例である。例えば第2実施形態では、他方側表面13bよりも一方側表面13aの方において溝ピッチPgが小さくなっていることに加え更に、溝深さHgが第1実施形態と同様に変化していても差し支えない。
(4)上述の各実施形態では図1に示すように、チューブ延伸方向DRtは上下方向DRgに一致しているが、チューブ延伸方向DRtが上下方向DRgに一致しておらず、各チューブ20が斜め上下方向に延びていても差し支えない。この場合にも、各チューブ20が、上下方向DRgに延びているということに変わりはない。
(5)上述の第1実施形態では、図4および図5に示すように、フィン表面10aの親水性凹凸形状101は、フィン表面10aに設けられた複数の溝102によって形成されているが、溝102以外のもので形成されていても差し支えない。このことは、第2実施形態でも同様である。
(6)上述の各実施形態では、図5に示すように、親水性凹凸形状101を形成する複数の溝102は矩形断面の溝形状であるが、その溝102の溝形状は、それに限らず例えば、図11に示すように、V字状断面であっても差し支えない。その図11の溝形状では、溝102の断面におけるV字状の開き角度Agが小さくなるほど、その溝102が設けられたフィン表面10aの親水性は高くなる。
(7)上述の各実施形態では図5に示すように、コルゲートフィン10のフィン表面10aに形成された複数の溝102の溝深さHgは、例えば10μm以上であり、それが好ましい。しかしながら、その溝深さHgが10μm以上であることが必須というわけではない。
(8)上述の各実施形態では、熱交換器1は、蒸発器として使用されるものとして説明されているが、これに限らない。各実施形態の熱交換器1は、水の排出が必要なものであれば、蒸発器以外の熱交換器であっても差し支えない。
(9)上述の各実施形態において、チューブ20内を流れる第1流体は冷媒であるが、その第1流体が冷媒以外の流体であることも想定される。また、チューブ20の相互間に流れる第2流体は空気であるが、その第2流体が空気以外の流体であることも想定される。
(10)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、フィン本体部は、そのフィン本体部の板厚方向の一方側に設けられた表面であり下側を向く一方側表面と、板厚方向の他方側に設けられた表面である他方側表面とを有する。コルゲートフィンは、そのコルゲートフィンの表面の親水性を高めるように形成された凹凸形状を、一方側表面に有する。そして、凹凸形状は、他方側表面の親水性よりも一方側表面の親水性の方が高くなるようにコルゲートフィンの表面に形成されている。
また、第2の観点によれば、複数本のチューブは、チューブ配列方向に交差するチューブ延伸方向に延びるように形成される。コルゲートフィンは、複数のフィン本体部のうちチューブ延伸方向に隣り合う2つのフィン本体部の一方が有するルーバとその2つのフィン本体部の他方が有するルーバとのそれぞれとチューブとの間に設けられ且つ波形状の一部を成すルーバ間構成部を有する。そのルーバ間構成部は、2つのフィン本体部の一方と他方との間に設けられた接合部を含み、且つ、そのルーバ間構成部が接合されたチューブ側とは反対側の表面を成し凹状に曲がった凹状面を有する。そして、凹凸形状は、その凹状面にも形成されている。従って、凹状面の親水性向上により、その凹状面を有するルーバ間構成部の上側に連なるルーバ上から凹状面上へ凝縮水が濡れ拡がりやすくなるので、そのルーバからの排水を促進することが可能である。
また、第3の観点によれば、凹凸形状は、一方側表面だけでなく他方側表面にも設けられている。また、凹凸形状は、他方側表面よりも一方側表面の方において、凹凸形状に含まれる凹形状の深さが大きくなるように形成され、これにより、他方側表面の親水性よりも一方側表面の親水性の方が高くなっている。従って、その凹凸形状の形状変化に対応させてコルゲートフィンの表面の親水性を加減することが可能である。
また、第4の観点によれば、凹凸形状は、コルゲートフィンの表面に設けられた複数の溝によって形成され、一方側表面だけでなく他方側表面にも設けられている。また、複数の溝は、他方側表面よりも一方側表面の方において複数の溝の相互ピッチが小さくなるように形成され、これにより、他方側表面の親水性よりも一方側表面の親水性の方が高くなっている。このようにしても、上記第3の観点と同様に、凹凸形状の形状変化に対応させてコルゲートフィンの表面の親水性を加減することが可能である。
また、第5の観点によれば、ルーバは、一方側表面のうちルーバの表面を成す一方側ルーバ表面を有する。そして、凹凸形状は、一方側表面のうち少なくとも一方側ルーバ表面には設けられている。このようにしても、他方側表面の親水性よりも一方側表面の親水性の方を高くすることが可能である。
また、第6の観点によれば、熱交換器は、第2流体としての空気から第1流体としての冷媒に吸熱させることにより空気を冷却する蒸発器である。従って、凝縮水の排水性が冷却能力に密接に関連する蒸発器において、凝縮水の排水性向上というメリットを十分に享受することが可能である。
また、第7の観点によれば、凹凸形状に含まれる凹形状の深さは10μm以上である。これによれば、上記凹凸形状によって生じる親水性が十分に確保され、その凹凸形状を有する表面に付着する凝縮水を、排水に適するように薄膜化することが可能である。