本開示に係る空調システムの一実施形態に係る実施例1の空調システム10を、図1から図5を用いて説明する。空調システム10は、建物等の内部の空調を行うために用いるものであり、実施例1では建物1に設けられている。
建物1は、図1に示すように、断熱基礎として構築された基礎底盤コンクリート2と、その側縁から立ち上がる基礎側壁コンクリート3と、その上から立ち上がる外壁部4と、その外壁部4に囲まれた上端を塞ぐ天井部5と、を備える。建物1では、外壁部4と天井部5とに囲まれる空間に床部6が設けられ、上方の床上空間7と下方の床下空間8とに区切られている。床上空間7は、屋内に設けられる空間として機能する箇所で、居室や非居室等が設けられる。床下空間8は、基礎側壁コンクリート3の内側にグラスウール等の断熱材9が取り付けられ、内部の熱が屋外に極力漏れない断熱構造とされている。
空調システム10は、床下空間8内に設けられた屋内機となるヒートポンプ式の空調装置11に、熱媒循環管路12を介して屋外機13が接続されて構成されている。空調装置11は、温度が調整された暖気または冷気の空調空気を吹き出すことが可能とされている。空調装置11は、除湿機能を有し、接続されたドレイン14を通して床下空間8から屋外へと排水することができる。
空調装置11は、2つの床上用吹出部15と床下用吹出部16と吸込部17とを有する。空調装置11は、空気を様々な強さで吹き出させることが可能なファンが設けられており、そのファンからの空気が両床上用吹出部15や床下用吹出部16に適宜送られる。この各床上用吹出部15および床下用吹出部16には、電動ダンパ等からなる開閉弁15a、16aがそれぞれ設けられており、開閉および開度が適宜制御される。
この空調装置11からの空調空気を床上空間7に送るために、床部6に2つの送風給気口21と、接続給気口22と、排気口23と、が設けられている。各送風給気口21、接続給気口22および排気口23は、それぞれグリルが設けられ、ゴミ等が入り込むことが抑えられている。各送風給気口21は、吸気ダクト24を介して空調装置11の各床上用吹出部15に接続されており、空調装置11から吹き出される空調空気を直接床上空間7に送ることを可能とする。この送風給気口21は、床上空間7に設けられた部屋毎に個別に設けられており、後述する床上空調を部屋毎に行うことが可能とされている。
接続給気口22は、床上空間7と床下空間8とを接続するもので、床下空間8内の空気(空調空気)が床上空間7に流れ込むことを可能とする。排気口23は、排気ダクト25を介して空調装置11の吸込部17に接続されており、床上空間7の空気を空調装置11が吸い込むことを可能とする。この接続給気口22や排気口23は、床上空間7に設けられた部屋毎に個別に設けてもよく、各部屋の共通のものとして1つまたは複数を設けてもよい。なお、空調装置11は、床上空間7および床下空間8のそれぞれに空調空気を吹き出すことができるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
空調システム10は、リモートコントローラ26と屋内温度測定部27と床下温度測定部28と人感センサ29とを備える。リモートコントローラ26は、空調装置11の動作や後述する各運転モードの時間や温度等の設定や実行等の操作を行う操作部であり、実施例1では床上空間7に設けられている。リモートコントローラ26は、無線の通信路を介して後述する制御部31に接続され、行われた操作の情報を制御部31に送信する。このリモートコントローラ26は、床上空間7に設けられた部屋毎に個別に設けられており、後述する各モードの設定を部屋毎に行うことが可能とされている。なお、操作部は、上記した操作を行うことができるものであれば、制御部31に有線で接続されたタッチパネルや押ボタンでもよく、IOT(Internet of Things)で接続された機器が有するリモコンアプリでもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
屋内温度測定部27は、床上空間7の屋内温度Tiを測定するもので、実施例1では床上空間7に設けられたリモートコントローラ26に内蔵されている。屋内温度測定部27は、後述する制御部31と有線または無線の通信路を介して接続され、測定した屋内温度Ti(そのデータ)を制御部31に送信する。なお、屋内温度測定部27は、床上空間7の屋内温度Tiを測定するものであれば、リモートコントローラ26とは別に設けられていてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
床下温度測定部28は、床下空間8の床下温度Tuを測定するもので、実施例1では床下空間8に設けられた空調装置11(その筐体)の上に設けられている。床下温度測定部28は、後述する制御部31と有線または無線の通信路を介して接続され、測定した床下温度Tu(そのデータ)を制御部31に送信する。なお、床下温度測定部28は、床下空間8の床下温度Tuを測定するものであれば、空調装置11とは別に設けられていてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
人感センサ29は、床上空間7の人が存在するか否かを感知するもので、実施例1では床上空間7に設けられている。人感センサ29は、後述する制御部31と有線または無線の通信路を介して接続され、床上空間7に人が存在するとその旨を示す信号を制御部31に送信する。この人感センサ29や屋内温度測定部27は、床上空間7に設けられた部屋毎に個別に設けられており、後述する床上空調や各モードの部屋毎の実行を可能とする。
空調システム10は、図1および図2に示すように、空調装置11に内蔵されて制御部31と記憶部32とが設けられている。空調システム10では、商用電源から制御部31に電力が供給され、制御部31が空調装置11に電力を供給する。制御部31は、接続された記憶部32または内蔵する内部メモリに記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、適宜リモートコントローラ26に対する操作に応じて、空調装置11の動作を統括的に制御する。記憶部32は、後述する各モードを実行するための制御パターン等を記憶している。
制御部31は、屋内温度測定部27が測定した屋内温度Tiと、床下温度測定部28が測定した床下温度Tuと、を用いて、床部6の表面の床面温度Tfを求める。制御部31は、床部6が床上空間7と床下空間8とを区切るものとされていることから、床面温度Tfが屋内温度Tiと床下温度Tuとで決まるものとして、係数の和が1となるように屋内温度Tiと床下温度Tuとの各々の影響の度合いを設定することで床面温度Tfを求める。実施例1では、制御部31は、次式(1)を用いて床面温度Tfを求める。
Tf=(A/(2A+t))×Tu+(1-A/(2A+t))×Ti ・・・(1)
ここで、tは、床部6の厚さ(m)とし、Aは、任意の係数とする。この係数Aは、実施例1では実験等に基づいて1以上2以下としている。このため、実施例1では、制御部31が床下温度測定部28および屋内温度測定部27と協働して、床部6の表面の床面温度Tfを取得する床面温度測定部(床面温度取得部)として機能する。なお、床面温度測定部は、床部6の表面の床面温度Tfを測定するものであれば、床部6の表面や内部に設置した温度センサでもよく、床部6の表面とは離れた位置に設けたサーモパイル、放射温度計または赤外線カメラ等でもよく、実施例1の構成に限定されない。
制御部31は、空調装置11の床上用吹出部15から空調空気を吹き出させることで、送風給気口21から床上空間7に空調空気を吹き出させて床上空調を行うことができる。また、制御部31は、空調装置11の床下用吹出部16から空調空気を吹き出させることで、床下空間8に空調空気を吹き出させて床下空調を行うことができる。ここで、床下空間8に吹き出された空調空気の一部は、接続給気口22から床上空間7に吹き出されるので、制御部31は、このことも勘案して床上空調および床下空調を行う。この床下空調は、床下空間8を暖めることで、床部6(その表面)を暖めることができ、空調システム10による床面暖房となる。
制御部31は、屋内温度測定部27からの屋内温度Tiと床下温度測定部28からの床下温度Tuと基づいて、屋内温度Tiおよび床面温度Tfが制御目標とする温度となるように、床上用吹出部15や床下用吹出部16から吹き出す空調空気の温度や風量を制御する。制御部31は、実施例1ではPID(Proportional-Integral-Differential)制御を行うことで、屋内温度Tiおよび床面温度Tfを制御目標の温度とする。
空調システム10では、秋から冬を経て春に至るまでの暖房時期において、屋内温度Tiと床面温度Tfとを制御する複数の運転モードが設定されており、実施例1では通常運転モードMnと経済優先モードMeと快適優先モードMcと就寝準備モードMsとが設定されている。この各モードでは、屋内温度Tiおよび床面温度Tfの目標温度がそれぞれ設定されており、各目標温度を屋内温度Tiよりも床面温度Tfを少し高く設定している。これにより、各モードでは、頭部側のみが暖かくなり足元が冷えることを防止することができ、心臓への負担を低減することができる。なお、以下では、各モードにおける屋内温度Tiおよび床面温度Tfの目標温度の一例を記載するが、各目標温度はリモートコントローラ26を用いて適宜設定することができる。
通常運転モードMnは、暖房時期において、床上空間7を快適な温度としつつ経済性も確保できる観点から設定され、実施例1では屋内温度Tiの目標とする屋内通常温度Tinを21℃とし、床面温度Tfの目標とする床面通常温度Tfnを22℃としている。通常運転モードMnは、住人が存在するときに、住人が快適に過ごすために用いられる。
経済優先モードMeは、暖房時期において、経済性を確保しつつ床上空間7を冷やす過ぎないものとする観点から設定され、実施例1では屋内温度Tiの目標とする屋内経済温度Tieを16℃とし、床面温度Tfの目標とする床面経済温度Tfeを17℃としている。経済優先モードMeは、住人が存在しないときであっても、戻ってきた住人がヒートショックを起こすのを予防するために用いられる。
快適優先モードMcは、暖房時期において、床上空間7を快適な温度とする観点から設定され、実施例1では屋内温度Tiの目標とする屋内快適温度Ticを22℃とし、床面温度Tfの目標とする床面快適温度Tfcを23℃としている。快適優先モードMcは、住人が存在するときに、住人がより快適に過ごすために用いられる。
就寝準備モードMsは、暖房時期において、健康や睡眠導入の面で好適な環境をつくることのできる観点から設定され、設定された就寝時刻tsよりも就寝準備時間帯tziだけ前の就寝準備時刻tpにおける屋内温度Tiおよび床面温度Tfを、屋内準備温度Tipおよび床面準備温度Tfpとする。この屋内準備温度Tipおよび床面準備温度Tfpは、眠気を誘うことを狙うために設定されるもので、通常運転モードMnの屋内通常温度Tinおよび床面通常温度Tfnよりもそれぞれ高い温度とする。就寝準備モードMsは、就寝時刻tsの前に住人が存在する部屋において、住人が健康的に過ごしつつ、眠気を誘って睡眠導入を良好とするために用いられる。
実施例1では、屋内準備温度Tipを22℃から26℃としている。これは、26℃を超えると不快感を覚える虞があり、22℃以上であれば眠気を誘う効果が得られることによる。また、床面準備温度Tfpを基本的に屋内準備温度Tipよりも2℃から4℃高くするものとし、実施例1では24℃から30℃としている。これは、30℃を超えると低温火傷を引き起こす虞があり、24℃以上であれば眠気を誘う効果が得られることによる。
就寝時刻tsは、住人が就寝する予定の時刻に設定されるもので、就寝準備モードMs等の実行の基準となり、実施例1では遅く帰宅する住人を考慮して18時から3時の範囲で設定可能としている。就寝準備時間帯tziは、健康的で眠気を誘う効果を得るために屋内準備温度Tipおよび床面準備温度Tfpの環境とする時間帯である。就寝準備時間帯tziは、就寝時刻tsの前の数時間に設定され、実施例1では就寝時刻tsの前の2時間から5時間の間で設定可能としている。これは、眠気を誘う効果を得るためには最低2時間は必要であることと、5時間あれば十分に眠気を誘う効果を期待できることと、による。なお、就寝準備時間帯tziは、2時間以上であれば10時間までの間で設定可能としてもよい。就寝準備時刻tpは、就寝時刻tsから就寝準備時間帯tziだけ前の時刻であり、就寝時刻tsに合わせて就寝準備モードMsを開始する時刻となる。
制御部31は、実施例1では、就寝準備モードMsを実行することで、就寝準備時刻tpから就寝時刻tsまでの就寝準備時間帯tziで上記したように屋内準備温度Tipおよび床面準備温度Tfpとし、就寝時刻tsとなると経済優先モードMeに切り替える。これは、就寝時刻tsとなると住人が寝室へと移動することで不在となる部屋を無駄に暖めることを防止できることによる。また、就寝準備モードMsを実行したのが寝室である場合には、住人が寝た後では上記した屋内経済温度Tieおよび床面経済温度Tfeとすることで睡眠状態を良好なものにできることによる。
制御部31は、基本的に予め設定されたタイムスケジュールに沿って、通常運転モードMnと経済優先モードMeと快適優先モードMcと就寝準備モードMsとを適宜切り換えるものとされている。この各モードの設定は、リモートコントローラ26等の上述した操作部を用いることで、床上空間7に設けられた部屋毎に個別に設定可能としている。なお、制御部31は、操作部への操作に応じて各モードを切り換える、すなわち操作により選択されたモードを直ちに実行するものとしてもよい。
制御部31は、床上空間7の各部屋に設けられた人感センサ29を有効な状態(ON状態)とすることで、部屋に人が存在するか否かに応じて就寝準備モードMsの開始および終了の時刻を変更する。すなわち、制御部31は、人感センサ29が人の存在を感知しない場合には、就寝準備時刻tpとなっても就寝準備モードMsとはせずにその時点で行っているモードを継続する。そして、制御部31は、就寝準備時刻tp以降では、人感センサ29が人の存在を感知すると直ちに就寝準備モードMsとを実行する。実施例1の制御部31は、就寝準備モードMsを実行した後に人感センサ29が不在であることを感知しても、就寝準備時間帯tziの終了時刻すなわち就寝時刻tsまでは就寝準備モードMsを終了しない。
加えて、制御部31は、就寝時刻tsとなっても、人感センサ29が人の存在を感知していると、就寝準備時間帯tziを延長して就寝準備モードMsを継続する。この後、制御部31は、就寝準備時間帯tziを延長している場合も含めて就寝時刻ts以降に人感センサ29が不在であることを感知すると、就寝準備モードMsを終了して経済優先モードMeに切り替える。なお、制御部31は、就寝準備モードMsを実行した後であって、人感センサ29が不在を感知している時間が所定の時間(例えば30分)を超えた場合には、就寝準備モードMsを終了するものとしてもよい。この場合、所定の時間は、操作部を用いて任意の値に設定可能としてもよい。
加えて、実施例1の空調システム10は、人感センサ29が有効な状態とされていても、人感センサ29の感知結果に拘わらず設定されたタイムスケジュールで就寝準備モードMsを実行する設定制御優先時間帯tzpの設定が可能とされている。ここで、例えば、人感センサ29を有効な状態で、就寝準備時間帯tziを5時間に設定しつつ就寝時刻tsの2時間前から就寝時刻tsまでを設定制御優先時間帯tzpに設定したものとする。すると、空調システム10は、就寝準備時刻tpからその3時間後までの間は、住人が存在するまでは就寝準備モードMsを実行することはないが、就寝準備時刻tpから3時間が経過すると住人の存在の有無に拘わらず就寝準備モードMsを実行することとなる。
次に、図3のタイムチャートを用いて、設定されたタイムスケジュールの一例を説明する。図3では、横軸で時刻を示し、その上方に時刻により変化されるモードを示している。この図3の例では、建物1の住人が在宅時に主に過ごすリビングルームに設定されたものとしており、人感センサ29が無効な状態とされている。そして、就寝時刻tsが23時に設定され、就寝準備時間帯tziが4時間に設定されて、就寝準備時刻tpが19時とされている。
図3の例では、起床時刻をおよび外出時刻を考慮して、4時から9時までを通常運転モードMnとし、不在となることを考慮して9時から12時までを経済優先モードMeとしている。また、帰宅時刻および外出時刻を考慮して12時から14時までを通常運転モードMnとし、不在となることを考慮して14時から16時までを経済優先モードMeとしている。さらに、帰宅時刻を考慮して16時から通常運転モードMnとし、就寝準備時刻tpの19時となると就寝準備モードMsとする。そして、就寝時刻tsの23時となると経済優先モードMeとし、再び4時となると通常運転モードMnとする。
これにより、空調システム10は、建物1の住人が外出や帰宅や就寝や起床等の度に操作しなくても、床上空間7のリビングルームを住人の状況に適した環境とすることができ、快適でかつ健康的に過ごしつつ就寝時刻tsには眠気を誘う効果を得ることができる。
なお、図3に示す例では、人感センサ29を有効な状態としていても、就寝準備モードMsの実行予定の19時から23時までの間を設定制御優先時間帯tzpに設定することで、同様の動作が実行される。また、図3に示す例では、快適優先モードMcが設定されていないが、快適優先モードMcを適宜設定してもよい。
次に、図4のタイムチャートを用いて、人感センサ29を有効な状態とした際の動作の一例を説明する。図4では、時間軸の下に、対象となるリビングルームに住人が存在したか否かを示している。図4の例では、図3の例と同様に各モードが設定されている。なお、図4の例では、設定制御優先時間帯tzpを設定していないものとする。
図4の例では、図3と同様に、タイムスケジュールとして19時から23時の間が就寝準備モードMsに設定されている。このため、人感センサ29での感知に応じて就寝準備モードMsを終了した時刻以降であって翌日の19時までの間は、住人が存在するか否かに拘わらず、図3と同様のタイムスケジュールに沿って各モードが実行される。図4の例では、住人が20時に帰宅し、1時に就寝したものとする。このため、就寝準備時刻tpの19時になると就寝準備モードMsとする設定とされているが、住人が未だ帰宅しておらず、人感センサ29が不在であることを感知しているので、就寝準備モードMsとはせずに16時から実行されている通常運転モードMnを継続する。
そして、20時に住人が帰宅すると、人感センサ29が人の存在を感知したので、設定された就寝準備モードMsを開始する。そして、就寝時刻tsの23時となっても住人がリビングルームに居ることにより、人感センサ29が人の存在とを感知しているので、就寝準備時間帯tziを延長して就寝準備モードMsを継続する。その後、1時となると、住人がリビングルームを出ることにより人感センサ29が不在となったことを感知したので、経済優先モードMeとする。その後は、図3と同様に4時となると通常運転モードMnとする。
このように、空調システム10は、就寝準備モードMsが設定されたリビングルームにおいて、住人が不在である場合には就寝準備時刻tpとなっても就寝準備モードMsとはせず、住人が存在したときから就寝準備モードMsを開始する。このため、空調システム10は、住人が不在であるにも拘わらず屋内通常温度Tinおよび床面通常温度Tfnよりも高い屋内準備温度Tipおよび床面準備温度Tfpとすることを防止できる。また、空調システム10は、就寝準備モードMsを開始した以降では、住人が不在となっても就寝時刻tsまでは就寝準備モードMsを終了しないので、住人がトイレ等に行くことで少しの間不在とした場合であっても就寝準備モードMsを継続できる。
さらに、空調システム10は、就寝時刻tsとなっても、住人が存在していると就寝準備時間帯tziを延長して就寝準備モードMsを継続するので、設定した就寝時刻tsを過ぎてリビングルームに存在する住人の状況に適した環境とすることができる。加えて、空調システム10は、就寝準備時間帯tziを延長すなわち就寝時刻tsを過ぎて就寝準備モードMsを継続している際に住人が不在となると、就寝準備モードMsを終了して経済優先モードMeとするので、不在であるリビングルームを屋内準備温度Tipおよび床面準備温度Tfpとし続けることを防止できる。
これらのことから、空調システム10は、不在時に就寝準備モードMsを開始することを防止でき、無駄なコストの増加を防止できる。また、空調システム10は、設定された就寝時刻tsを過ぎて住人が活動していた場合でも住人が実際に睡眠するときに合わせて就寝準備モードMsを継続することができ、快適でかつ健康的に過ごしつつ眠気を誘う効果を確実に得ることができる。
次に、空調システム10が就寝準備モードMsを実行することにより、健康的で眠気を誘う効果が得られることの検証のために、図5に示す4つの例(検証例1、検証例2、比較例1、比較例2)を行った。この4つの例では、住人の、起床時刻tgを6時に、外出時刻toを8時に、帰宅時刻tbを20時に、就寝時刻tsを23時に、統一している。
検証例1は、空調システム10を用いた部屋において、設定したタイムスケジュールで各モードに切り替えたものである。検証例2は、空調システム10を用いた部屋において、検証例1と略同様のタイムスケジュールで各モードに切り替えるものとしつつ、人感センサ29を有効な状態としたものである。比較例1は、空調システム10を用いた部屋において、検証例1と同様のタイムスケジュールで各モードに切り替えるものとしつつ就寝準備モードMsの設定をなくしたものである。比較例2は、市販のエアコンを用いた部屋において、そのエアコンで部屋を暖めたものである。
検証例1のタイムスケジュールは、就寝時刻tsが23時に設定され、就寝準備時間帯tziが4時間に設定されて、就寝準備時刻tpが19時とされている。そして、検証例1のタイムスケジュールは、住人の起床に備えて起床前の5時になると通常運転モードMnとし、外出するまで確実に暖めるように9時まで通常運転モードMnを継続し、9時からは不在であることから経済優先モードMeとする。また、検証例1のタイムスケジュールは、住人の帰宅に備えて16時になると通常運転モードMnとし、就寝準備時刻tpの19時になると就寝準備モードMsとし、就寝時刻tsの23時になると経済優先モードMeとする。
検証例2のタイムスケジュールは、検証例1と略同様であるが、5時から9時までを検証例1での通常運転モードMnに替えて快適優先モードMcとしている。なお、これらの検証では、後述するように、健康的で眠気を誘う効果が得られたか否かを、22時30分に行う状況診断により判断しているので、検証例2が検証例1と比較して快適優先モードMcに替えたことによる直接的な影響は略無いものと考えられる。そして、検証例2では、就寝準備時刻tpが19時とされているが20時に住人が帰宅したので、20時から就寝準備モードMsを開始している。また、検証例2では、設定された就寝時刻tsの23時になると部屋を出て就寝したため、タイムスケジュール通りに就寝時刻tsに就寝準備モードMsから経済優先モードMeに切り替えている。
比較例1のタイムスケジュールは、就寝準備モードMsの設定がないので、検証例1での就寝準備モードMsの時間帯となる19時から23時の間は通常運転モードMnとしている。比較例2では、帰宅時刻tbに備えた16時から外出時刻toを考慮した翌日の9時までの間を暖めるようにタイマー設定している。比較例2では、タイマー設定において、屋内温度Ti(室温)が上記した通常運転モードMnと同じ条件となるように21℃に設定している。このとき、床面温度Tfを測定すると19℃となっていた。
そして、この検証では、各例において、就寝時刻(23時)の30分前である22時30分に状況診断を行っている。この状況診断は、各例の設定とした部屋で過ごした住人の収縮期血圧(最高血圧)を測定するとともに、その住人の眠気に関する主観評価を取得している。その主観評価は、ヴィジュアルアナログスケールを用いてどの位眠気を感じているのかを住人が自ら評価したものである。
各状況診断の結果は次のようになった。検証例1では、収縮期血圧の中央値が129mmHgであり、主観評価では54%である。また、検証例2では、収縮期血圧の中央値が128mmHgであり、主観評価では50%である。
これに対して、比較例1では、収縮期血圧の中央値が131mmHgであり、主観評価では-8%である。このため、比較例1では、両検証例と比較して、収縮期血圧にはあまり変化はないが、主観評価では眠気が失われているものとなった。また、比較例2では、収縮期血圧の中央値が140mmHgであり、主観評価では-34%である。このため、比較例2では、両検証例と比較して、収縮期血圧が上昇しており健康面で劣っているとともに、主観評価では眠気が大幅に失われているものとなった。ここで、比較例1では、比較例2を勘案すると、収縮期血圧が各検証例と殆ど変わりないものとなっているが、就寝準備モードMs以外の通常運転モードMnや経済優先モードMeにおいても床面温度Tfを屋内温度Tiよりも少し高く設定していることによるものと考えられる。
これらのことから、空調システム10では、就寝準備時刻tpとなると就寝準備モードMsを行い、屋内通常温度Tinよりも高い屋内準備温度Tipとするとともに床面通常温度Tfnよりも高い床面準備温度Tfpとするので、眠気を誘うことができる。また、空調システム10では、就寝準備モードMsを含む各モードにおいて床面温度Tfを屋内温度Tiよりも少し高く設定しているので、収縮期血圧の上昇を抑制することができ、体への負担を減らして健康に良い環境をつくり出すことができる。
本開示に係る空調システムの一実施例の空調システム10は、以下の各作用効果を得ることができる。
空調システム10は、空調装置11による空調制御の際、床上空間7の屋内温度Tiを屋内温度測定部27で測定しつつ、床部6の表面の床面温度Tfを床面温度測定部で測定する。そして、空調システム10は、屋内温度Tiを屋内通常温度Tinとするとともに床面温度Tfを床面通常温度Tfnとする通常運転モードMnと、設定された就寝時刻tsより前の就寝準備時刻tpから就寝時刻tsまでの間、屋内通常温度Tinよりも高い屋内準備温度Tipとするとともに屋内準備温度Tipおよび床面通常温度Tfnよりも高い床面準備温度Tfpとする就寝準備モードMsと、を実行可能である。このため、空調システム10は、通常運転モードMnとすることで住人を快適に過ごさせることができ、住人の就寝時刻tsに合わせて就寝準備モードMsとすることで健康的で睡眠導入が良好な状態とすることができる。
また、空調システム10は、屋内温度測定部27で測定した屋内温度Tiと、床下温度測定部28で測定した床下温度Tuと、床部6の厚さtと、を用いて、上記した式(1)により床面温度Tfを求めている。このため、空調システム10は、床面温度Tfを求めるためだけの装置を設ける必要がないので、簡易な構成で床面温度Tfを求めることができ、その床面温度Tfを調整できる。
さらに、空調システム10は、床面温度Tfを屋内温度Tiよりも高くしているので、何れのモードとしていても住人を健康的な状態とすることができる。加えて、空調システム10は、屋内温度Tiと床面温度Tfとの双方を調整しているので、床暖房のみを用いる場合と比べて床面温度Tfを低くしつつ快適で健康的な状態とすることができる。これは、床暖房のみを用いる場合、床面温度Tfを高くすることで屋内温度Tiの温度を高くすることができるが、そうすると屋内温度Tiを暖かくするには床面温度Tfが例えば30℃を超えるものとなり不快感を招いたり低温火傷を引き起こしたりする虞があることによる。
空調システム10は、就寝時刻tsとなると、床面通常温度Tfnよりも低い床面経済温度Tfeとするとともに屋内通常温度Tinよりも低い屋内経済温度Tieとする経済優先モードMeを実行する。このため、空調システム10は、住人が寝室へと移動して不在となる部屋を無駄に暖めることを防止でき、寝室の場合には睡眠状態を良好なものにできる。
空調システム10は、床上空間7に人が存在するか否かを感知する人感センサ29を設け、就寝準備時刻tpとなった場合、人感センサ29が人を感知しないと就寝準備モードMsを実行せず、人感センサ29が人を感知すると就寝準備モードMsを実行する。このため、空調システム10は、住人が不在の場合には無駄に暖めることを防止できるとともに、住人が存在する場合には健康的で睡眠導入が良好な状態とすることができる。特に、実施例1では、空調システム10は、就寝準備時刻tpとなって一度就寝準備モードMsを実行すると、人感センサ29が不在であることを感知しても、就寝時刻tsまでは就寝準備モードMsを終了しない。このため、空調システム10は、就寝準備時刻tp以降で、例えば住人が部屋からちょっとの間だけ出て行って部屋に戻ってきた場合に中断することなく就寝準備モードMsを継続することができ、確実に健康的で睡眠導入が良好な状態とすることができる。
空調システム10は、人感センサ29の感知結果に拘わらず就寝準備時刻tpとなると就寝準備モードMsを実行する設定制御優先時間帯tzpの設定が可能とされている。このため、空調システム10は、設定された設定制御優先時間帯tzpでは、予め設定されたタイムスケジュールに沿って就寝準備モードMsを実行するので、住人が予め設定した通りに就寝準備モードMsを行うことができる。
空調システム10は、就寝準備モードMsの実行の操作のための操作部(実施例1ではリモートコントローラ26)を備え、操作部の操作に応じて就寝準備モードMsを実行する。このため、空調システム10は、住人の要望に応じて就寝準備モードMsを開始したり終了したりすることができる。
空調システム10は、屋内準備温度Tipを22℃から26℃までの間で設定可能とし、床面準備温度Tfpを屋内準備温度Tipに2℃から4℃までの数値を加算した値で設定可能としている。このため、空調システム10は、不快感を与えたり低温火傷を引き起こしたりすることなく、眠気を誘う効果を得ることができる。
空調システム10は、就寝準備時刻tpを、就寝時刻tsの2時間前から5時間前までの間で設定可能としている。このため、空調システム10は、確実に眠気を誘う効果を得ることを可能としつつ住人の要望に応じて就寝準備モードMsを行うことができる。
空調システム10は、就寝準備時刻tpすなわち就寝準備時間帯tziを、建物1の部屋毎に個別に設定可能である。このため、空調システム10は、住人の部屋毎の用途や要望に応じて就寝準備モードMsを行うことができる。
空調システム10は、就寝時刻tsを、建物1の部屋毎に個別に設定可能である。このため、空調システム10は、住人の部屋毎の要望に応じて就寝準備モードMsを行うことができる。
建物1は、空調システム10を備えている。このため、建物1は、住人が過ごす部屋を、健康的で睡眠導入が良好な状態とすることができる。
したがって、本開示に係る空調システムとしての実施例1の空調システム10では、体への負担を抑制しつつ、快適な睡眠を促すことができる。
以上、本開示の空調システム10を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1では、建物1を単純な構造として説明しているが、より複雑な構造としても同様に空調システム10を用いることができ、実施例1の構成に限定されない。
また、実施例1では、空調装置11が床下空調を行うことで床面暖房を行うものとしている。しかしながら、空調システムは、床上空調に加えて床部6(その表面)を暖める床面暖房を行うことができるものであれば、例えば、床部6の内方に温水パイプや電気ヒータを設けるものでもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
さらに、実施例1では、空調装置11を床下空間8に設けていたが、床上空間7への空調空気を吹き出す床上空調と、床下空間8へ空調空気を吹き出す床下空調と、を行うことができるものであれば、空調装置11を設ける箇所は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。