JP7020307B2 - 圧延設備 - Google Patents
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Description
[1-1.圧延設備の構成]
まず、図1~図5に基づいて、本発明の一実施形態に係る圧延設備20の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る圧延設備20を示す概略説明図であり、3台の圧延機が設置された場合を示す。図2は、本実施形態に係る圧延設備20を示す概略説明図であり、2台の圧延機が設置された場合を示す。図3は、本実施形態に係る圧延設備20に配置される圧延機のうち、周方向に周期的に変化する外周面形状を有する作業ロール(以下、「波付きロール」とも称する。)を備える圧延機について、波付きロールの一例を示す概略斜視図である。図4は、図3の波付きロールを4段圧延機の上作業ロール及び下作業ロールに適用した状態を示す説明図である。図5は、波付きロールの他の例を示す説明図である。
図6~図8に、本実施形態に係る圧延設備20の設置例を示す。図6は、図1に示した圧延設備20を連続鋳造機10の鋳造方向下流側に設置した例を示す概略説明図である。図7は、図2に示した圧延設備20を連続鋳造機10の鋳造方向下流側に設置した例を示す概略説明図である。図8は、図2に示した圧延設備20をスケール除去装置40に対して鋼片5の搬送方向下流側に設置した例を示す概略説明図である。
本実施形態に係る圧延設備20は、例えば図6及び図7に示すように、横断面形状が略矩形の鋼片5を鋳造する連続鋳造機10の鋳造方向下流側に設置し、連続鋳造機10により製造された鋼片5を圧延する設備として利用可能である。なお、連続鋳造機10によって製造される鋼片5の種類及びサイズは、特に限定されない。鋼片5は、例えばスラブ、ビレット及びブルームのいずれであってもよい。以下では、鋼片5の一例として、スラブを想定して説明する。
また、本実施形態に係る圧延設備20は、例えば図8に示すように、加熱炉30によって加熱された横断面形状が略矩形の鋼片5を圧延する設備として利用可能である。例えば連続鋳造機10等によって製造された鋼片5が冷却された後に圧延する場合には、図8に示すように、ロール18に載置され搬送される鋼片5は、加熱炉30により再加熱された後、加熱により生じた鋼片5の表面のスケールがスケール除去装置40により除去される。本実施形態に係る圧延設備20は、スケール除去後の鋼片5を圧延するように、スケール除去装置40に対して鋼片5の搬送方向下流側に設置される。スケール除去が不要な鋼片については、加熱炉30に対して鋼片5の搬送方向下流側に本実施形態に係る圧延設備20を配置してもよい。あるいは、加熱炉30との間に強制空冷やミスト冷却、強制水冷を含む冷却装置を介在させ、表面温度を所望に冷却した鋼片5を圧延するように、当該冷却装置に対して鋼片5の搬送方向下流側に本実施形態に係る圧延設備20を配置してもよい。
本実施形態に係る圧延設備20では、図1及び図2に示したように、鋼片5の搬送方向最下流に配置された圧延機を除いた少なくとも1台以上の圧延機において、鋼片5と当接する一対の作業ロールのうち少なくともいずれか一方に、周期的に変化する外周面形状を有する波付きロールを圧延ロールとして用いている。波付きロールを用いることで、同一の鋼片圧下量条件で、圧延中の材料内部の応力やひずみ等の変形状態を有意かつ意図的に変化させることができ、鋼片厚を変更することなく鋼片品質を向上させることを可能とする。すなわち、厚さ中央での静水圧応力の増大はポロシティー圧着に有効であり、塑性ひずみの増大は偏析の改善や結晶粒の微細化に繋がる。以下、図3及び図5に示したような波付きロールを作業ロールに用いることにより生じる作用と、具体的な波付きロールの外周面形状の条件について、詳細に説明する。
まず、図9~図12に基づいて、本実施形態に係る圧延設備20において波付きロールを用いて圧延を行う理由を説明する。図9は、波付きロールを用いて鋼片5を圧延したときの作業ロールとの接触領域下(以下、「ロールバイト」と称する。)とその近傍における鋼片内部の塑性変形の状態(応力、塑性ひずみ及びメタルフロー)を示す概念図である。図10は、波付きロールとフラットロールとについて、鋼片の板厚中央に生じる静水圧応力の大きさとロールバイト及びその近傍での分布、及び静水圧応力(圧縮側を正)の最大値についてフラットロールを用いた場合に対する波付きロールを用いた場合の増分値(以下、「静水圧増分値」と称する。)を示す説明図である。図11は、図9に示した波付きロールまたは上下フラットロールにより圧延した1パス目と、1パス目圧延後の鋼片を搬送方向最下流に設けられる上下フラットロールにより圧延した2パス目とについて、各パス圧延後の鋼片の厚さ中央位置及び表層から1/4厚さ位置における塑性ひずみ(各パスで生じたひずみ量)の長さ方向分布を示す説明図である。図12は、図11に示す1パス目と2パス目との塑性ひずみを合計した合算ひずみ値とその長さ方向平均値、及び、合算ひずみ値の長さ方向平均値について1パス目にフラットロールを用いた場合に対する波付きロールを用いた場合の増分値(以下、「合算ひずみ増分値」と称する。)を示す説明図である。なお、図9では、鋼片5を圧延する一対の作業ロールの双方を波付きロールにした場合(すなわち、鋼片が上下対称に変形する場合)を考える。
上述のように波付きロールを用いることによる鋼片5の塑性ひずみの増大を実現するためには、外周面の周期的な変化を適切に設ける必要がある。本願発明者はこの条件を検討した結果、波付きロールの外周面を、周期が波付きロールの外周面に外接する外接円の外接円周長の1/1000倍以上1/10倍以下、かつ、振幅が外接円の外接円半径の1/500倍以上1/20倍以下で変化する形状とすることで、同一の鋼片圧下量条件下で鋼片内部の塑性ひずみを厚さ方向全域にわたって有意に大きくすることができ、鋼片の厚さ方向中央近傍のポロシティーの圧着効果や中心偏析の改善のみならず、鋼片の表層近傍での柱状晶の形成によるミクロ偏析も改善されるとの知見を得た。
まず、波付きロールの外周面に形成される波形状の周期は、外接円Coの外接円周長Loの1/1000倍以上(図14では横軸範囲の0.001以上に相当する。)1/10倍以下(図14では横軸範囲の0.1以下に相当する。)とする。図14に示すように、波形状の周期と塑性ひずみ増分との関係は、図11に示した鋼片5の厚さ方向の中央位置及び1/4厚さ位置についてのピークひずみ増分量dεpeak 1/2、dεpeak 1/4及び図12に示した合算ひずみ増分量Σdε1/2、Σdε1/4について、いずれも凸形状の曲線を有する。ここで、通常の圧延における圧下ひずみが0.1のオーダーであることを考慮すると、フラットロールを用いて圧延したときの塑性ひずみからのひずみ増分量が0.01(すなわち1%)以上であればその効果は実質的に有意であると考えられる。図14より、鋼片5の厚さ方向の中央位置及び1/4厚さ位置についてのピークひずみ増分量dεpeak 1/2、dεpeak 1/4及び合算ひずみ増分量Σdε1/2、Σdε1/4の塑性ひずみ増分が0.01を超える範囲は、外接円周長Loと波付きロールの波形状の周期との比が0.001以上0.1以下の範囲、すなわち、波付きロールの波形状の周期が外接円周長Loの1/1000倍以上1/10倍以下の範囲となる。
次に、波付きロールの外周面に形成される波形状の振幅は、外接円の外接円半径Roの1/500倍以上1/20倍以下とする。図16に示すように、波形状の振幅と塑性ひずみ増分との関係は、図12に示した鋼片5の厚さ方向の中央位置及び1/4厚さ位置における合算ひずみ増分量Σdε1/2、Σdε1/4について、いずれも振幅が大きくなるほど塑性ひずみ増分は大きくなっている。ここで、フラットロールを用いて圧延したときの塑性ひずみを基準として、塑性ひずみの増分が0.01(すなわち1%)以上であれば、前述のようにその効果は実質的に有意と考えられる。図16より、鋼片5の厚さ方向の中央位置及び1/4厚さ位置についての合算ひずみ増分量Σdε1/2、Σdε1/4が0.01を超える範囲は、外接円の外接円半径と波付きロールの波形状の振幅との比が0.002以上、すなわち、波付きロールの波形状の振幅が外接円半径Roの1/500倍以上の範囲となる。
本実施形態に係る圧延設備20においては、少なくとも、鋼片5の搬送方向最下流に配置された圧延機を除いた少なくとも1台以上の圧延機に設けられる波付きロールの形状を、波付きロールの外周面に周期が波付きロールに外接する外接円の外接円周長の1/1000倍以上1/10倍以下、かつ、振幅が外接円の外接円半径の1/500倍以上1/20倍以下で変化する形状とすればよい。しかし、製造する鋼片5の特性に応じて、より適切な外周面形状を検討するのが望ましい。以下では、圧延設備20による被圧延材である鋼片5の特性に応じた波付きロールの外周面形状の設定について説明する。
例えば、表面の延性に乏しい被圧延材を波付きロールによって圧延する場合には、被圧延材の表面に過度の引張応力が生じ、表面割れの発生が懸念される。図18及び図19に基づき、そのメカニズムを説明する。なお、図18は、波付きロールの外周面形状の定義とその勾配角度を説明する説明図である。図19は、波付きロールの外周面形状の上り勾配角度の限定条件を説明する説明図である。
また、例えば図6及び図7に示したように圧延設備20を連続鋳造機10の鋳造方向下流側に配置した場合、連続鋳造後の鋼片表面にはオシレーションマークと呼ばれる長手方向に周期的な形状変動が生じていることが多く、この除去が不十分な場合には圧延設備20に進入する被圧延材の表面の凹凸が大きくなる。このような被圧延材を圧延する場合には、表面しわ疵の発生が懸念される。図20に基づき、そのメカニズムを説明する。図20は、波付きロールの外周面形状の下り勾配角度の限定条件を説明する説明図である。
5 鋼片
5a 凝固シェル
5b 未凝固部
5c 変形増大部分
10 連続鋳造機
11 タンディッシュ
12 浸漬ノズル
13 鋳型
14 二次冷却装置
14a 支持ロール
21、22、23、24、25 圧延機
21a、22a、23a、24a、25a 上作業ロール
21b、22b、23b、24b、25b 下作業ロール
26 作業ロール(波付きロール)
26a 凸部
100、200 波付きロール
26b、110、210 外周面
111、111a、111b、111c フラット部
113、113a、113b、212 波状部
Claims (11)
- 横断面形状が略矩形の鋼片を圧延する圧延機を複数備える圧延設備であって、
前記鋼片の搬送方向最下流に位置する前記圧延機を除く、少なくとも1台以上の前記圧延機において、前記鋼片と当接する一対の作業ロールのうち少なくともいずれか一方は、周期が前記作業ロールの外周面に外接する外接円の外接円周長の1/1000倍以上1/10以下、かつ、振幅が前記外接円の外接円半径の1/500倍以上1/20倍以下で、周方向に周期的に変化する外周面形状を有する、圧延設備。 - 前記作業ロールの前記外周面形状は、当該作業ロールの回転中心から外周面までの距離である外周面半径と全周における前記外周面半径の平均値である全周平均半径との差の周方向分布が正弦波状となるように形成されている、請求項1に記載の圧延設備。
- 前記作業ロールの前記外周面形状は、当該作業ロールの回転中心から外周面までの距離である外周面半径と全周における前記外周面半径の平均値である全周平均半径との差の周方向分布が、直線、及び、少なくとも円弧または高次関数曲線のいずれかを含む複数の線分で構成される連続的かつ周期的形状となるように形成されている、請求項1に記載の圧延設備。
- 前記作業ロールの前記外周面形状は、前記作業ロールの回転方向において、当該作業ロールの回転中心から外周面までの距離である外周面半径が増大する部分の傾斜角度を表す上り勾配角度の最大値が摩擦角以下であり、連続的かつ周期的な形状となるように形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧延設備。
- 前記作業ロールの前記外周面形状は、前記作業ロールの回転方向において、当該作業ロールの回転中心から外周面までの距離である外周面半径が減少する部分の傾斜角度を表す下り勾配角度の最小値の絶対値がロールバイトの噛み込み角度以下であり、連続的かつ周期的な形状となるように形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧延設備。
- 前記作業ロールの前記外周面形状は、当該作業ロールの回転中心から外周面までの距離である外周面半径と全周における前記外周面半径の平均値である全周平均半径との差の周方向分布が連続的かつ周期的であり、かつ、前記作業ロールの胴長方向にその位相を変化させながら連なる形状となるように形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧延設備。
- 前記作業ロールの前記外周面形状は、当該作業ロールの回転中心から外周面までの距離である外周面半径と全周における前記外周面半径の平均値である全周平均半径との差の周方向分布が連続的かつ周期的であり、かつ、前記作業ロールの胴長方向にその振幅及び前記全周平均半径を変化させながら連なる形状となるように形成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧延設備。
- 周期的に変化する前記外周面形状を有する前記作業ロールが設けられた前記圧延機は、2段圧延機である、請求項1~7のいずれか1項に記載の圧延設備。
- 周期的に変化する前記外周面形状を有する前記作業ロールが設けられた前記圧延機は、4段圧延機である、請求項6または7に記載の圧延設備。
- 前記圧延設備は、前記鋼片を鋳造する連続鋳造機に対して鋳造方向下流側に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の圧延設備。
- 前記圧延設備は、加熱炉により加熱された前記鋼片のスケールを除去するスケール除去装置に対して前記鋼片の搬送方向下流側に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の圧延設備。
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