JP7014584B2 - 冷凍サイクルシステム用の吸音要素、それを備えた減圧部、および冷凍サイクルシステム - Google Patents
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Description
特に、膨張弁(減圧部)に関しては、例えばスラグ流のような大きな気泡の塊を含んだ冷媒の流れが膨張弁に流入した際に、膨張弁の絞り部における気泡の膨張、収縮、消滅に伴う急激な圧力変動によって顕著に騒音が発生する。膨張弁には、気液二相の冷媒が流れるため、気泡に起因した騒音が発生し易い。
その他、膨張弁の後流で周期性を持った渦が発生することを抑制するため、膨張弁の前における管路内に、筒状の乱れ発生部材を設けることも提案されている(特許文献2)。乱れ発生部材は、ギザギザで内周側に窄まった突起を後端部に有しており、内側を通過する冷媒の流れに乱れを発生させる。冷媒の乱流状態によって渦の発生を抑制し、それによって膨張弁のニードルの自励振動を抑制している。
一方、特許文献2に記載の乱れ発生部材は、多孔質材と比べれば圧力損失は小さいとしても、冷媒の流れに乱れを発生させることができるのは管路の内壁の近傍に留まる。そのため、冷媒中に大きな気泡が残り、気泡の破壊時の圧力変動が大きいものと考えられる。
以下で説明する各実施形態は、冷凍サイクルシステム1(図1(a))の冷媒が流れる箇所に備えられて吸音を図る吸音要素を開示する。かかる吸音要素は、一例として、冷凍サイクルの構成要素である減圧部としての膨張弁4に備わる。なお、同じく減圧部として機能するキャピラリーチューブにも各実施形態の吸音要素を適用可能である。
冷凍サイクルシステム1は、図1(a)に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷媒および大気(熱源)の間で熱交換させる第1熱交換器3と、冷媒の圧力を減少させる膨張弁4と、冷媒および熱負荷の間で熱交換させる第2熱交換器5とを備えている。圧縮機2、第1熱交換器3、膨張弁4、および第2熱交換器5は、冷媒配管により接続されている。
なお、膨張弁4の上流部および下流部は、本実施形態のように管の形態には限らず、ハウジング40に形成された孔であってもよい。
以下、吸音要素6の構成および作用効果について説明する。
第1実施形態に係る吸音要素6は、図2および図3(a)、(b)に示すように、上流管44および下流管45にそれぞれ備えられている。上流管44および下流管45はいずれも円筒状に形成されている。
流路壁10は、上流管44または下流管45の長さ方向における所定の範囲を含んで構成されている。
但し、膨張弁4の上流および下流における静粛性の要求度合等の観点から、上流管44および下流管45のうちいずれか一方にのみ吸音要素6が備えられていてもよい。
この吸音要素6は、空隙101と、空隙101に通じる開口21の内部の空気塊とに関してヘルムホルツ共鳴が成立することで、吸音する。
なお、膨張弁4の上流部および下流部がハウジング40に孔あけされている場合は、その孔の内壁が流路壁10に相当する。
この吸音壁20は、空隙101をそれぞれ内包した複数のポケット22を備えており、ポケット22が連なった三角波の形態に構成されている。各ポケット22は、流路壁10よりも内方(流路100の径方向内側)に退いている。ポケット22は、図3(a)に示すように流路壁10の全周に亘り並んでいる。
吸音壁20は、複数のポケット22により、流路100の周方向の異なる位置にそれぞれ空隙101を形成している。吸音壁20により、吸音壁20よりも外側の各空隙101と、吸音壁20の内側(内方空間103)とが隔てられている。
そのため、圧力変動を抑えるために、冷媒を通過させて細分化する多孔質の部材を使用する必要がない。そのため、冷媒の流れに大きな抵抗を与える多孔質部材の使用を避けることができる。
さらに、吸音壁20が流路壁10の近傍に配置されることにより、吸音壁20よりも内側には広い内方空間103が残されており、その内方空間103には、冷媒に接触する部材が配置されていない。
したがって、吸音要素6によれば、冷媒の圧力損失を抑えつつ冷媒の圧力変動を抑えることができる。
吸音壁20においては、流路壁10に向けて外方(径方向外側)に突出した山20Aと、山20Aから内方に窪んだ谷20Bとが周方向D2において交互に位置している。山20Aから、谷20Bを経て、隣の山20Aまでが、1つのポケット22に相当する。
図4(a)は、吸音壁20の1つのポケット22と、そのポケット22に対応する流路壁10とを模式的に示している。
つまり、スラグ流等の気液二相流が膨張弁4に流入し、気泡9の破壊により所定の周波数の圧力変動が発生したとしても、その圧力変動を抑え、膨張弁4を音源とする音の周囲への伝搬も抑えることができる。
ヘルムホルツ共鳴は、例えば下記の式(1)により表すことができる。
(f0:共鳴周波数、C:音速、P:開口率、l:板厚、d:孔径、L:背後空気層厚み)
開口21の孔径dは、等価直径である。つまり、開口21が円形以外、例えば矩形等の形状である場合は、開口21と面積が等しい円形の直径を適用する。
ヘルムホルツ共鳴による吸音は、開口21の内部の体積であるdlが、空隙101の体積Vと比べると無視できる程に非常に小さいことを前提とする。圧力変動を低減させたい周波数f0にもよるが、開口21の孔径dは、例えば、約0.15mm程度であり、板厚lは、例えば、約1.5mm程度である。
本実施形態のポケット22の第1領域221と第2領域222とは平行でないため、図4(a)にLで示す空隙101の厚みは一定ではない。この場合でも、所定の周波数f0に合わせて、空隙101の厚みLの代表値を定めることで、所定の周波数f0を含む周波数帯域の圧力変動を低減することができる。
C:音速 200m/s
P:開口率 0.05
l:板厚 1mm
d:孔径 1mm
L:背後空気層厚さ 2mm
本実施形態のように、吸音要素6の全周に亘りポケット22が配置されていることで、全周に亘り吸音を図ることができる。但し、断面環状の吸音壁20の周方向D2の一部においてポケット22が欠損している場合も、ポケット22の存在する範囲に亘り吸音作用を得ることができるため、許容される。
本実施形態では、吸音壁20が周方向D2に屏風状に曲げられており、周方向D2に交互に位置する第1領域221および第2領域222のうちの第1領域221のみに開口21が形成されている。
この構成によれば、ポケットのない単純な断面円環状で多数の孔が一様に分布した多孔筒29(一部を図3(a)に二点鎖線で示す)を用いる場合と同等あるいはそれ以上に、周方向D2の全体として開口21を形成可能な領域を大きく確保しつつ、開口21の背後の空隙101も確保しながら、吸音効果をより十分に得ることができる。開口21を形成可能な領域を大きく確保するためには、吸音壁20の折り曲げ角度θ(図4(a))を60°以下に設定するとよい。
つまり、本実施形態は、冷凍サイクルシステム1を流れながら状態が変化する冷媒の状態を問わず、圧力変動の抑制が必要な箇所に吸音要素6を設置して、吸音を図ることができる。
ここで、吸音要素6が適用される冷媒の流路100は、断面円形状に限らず、圧縮機2のシャフトの周りに形成されるマフラの出口流路のように、断面環状であってもよい。その場合も、シャフトの外周部とマフラの内周部との間の環状の流路100に、ポケット22に開口群210が形成された吸音壁20を配置することにより、マフラの出口部と吸音壁20とからなる吸音要素6を構成することができる。
次に、本発明の第2実施形態(図5)について説明する。第2実施形態以降では、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。
流路壁10および吸音壁24を備えた第2実施形態の吸音要素6も、図2に示す上流管44および下流管45のうち少なくともいずれか一方に備えられている。
ポケット32は、図5(b)に示すように、互いに略平行に配置される第1領域321および第2領域322と、第1、第2領域321,322のそれぞれの内端を連結する第3領域323とを備えている。隣り合うポケット32,32の間には、連結部324が介在している。連結部324は、流路壁10に配置されている。
第1領域321の開口21の背後には、第2領域322と、第3領域323と、流路壁10とにより閉じられた空隙101が形成されている。
周方向D2に隣り合うポケット32,32のうち、一方のポケット32の第1領域321と、他方のポケット32の第2領域322とが、連結部324を介して接続されている。
本発明の吸音要素6の吸音壁としては、第1実施形態の吸音壁20および第2実施形態の吸音壁24の他にも、例えば図6(a)~(d)に示すような種々の形態を採用することができる。
図6(a)~(d)にそれぞれ示す吸音壁も、金属材料からなる板材に曲げ加工を施すことで、複数のポケットが周方向D2に連なる形態に構成されている。また、いずれの吸音壁も、ポケットを含めた全体として、流路100を冷媒が流れる向き(軸線方向D1)に沿って配置されている。
ポケット42は、台形の斜辺にそれぞれ相当する第1領域421および第2領域422と、第1、第2領域421,422の各々の内端を連結する第3領域423とを備えており、第1領域421のみに開口群210が存在している。周方向D2に隣り合うポケット42,42の一方の第1領域421と、他方の第2領域422とは、連結部424を介して接続されている。
ポケット52は、周方向D2の一方側に位置する第1領域521と、他方側に位置する第2領域522とを備えており、第1領域521のみに開口群210が存在している。周方向D2に隣り合うポケット52,52の一方の第1領域521と、他方の第2領域522とが接続されている。
ポケット62は、周方向D2の一方側に位置する第1領域621と、他方側に位置する第2領域622とを備えており、第1領域621のみに開口群210が存在している。周方向D2に隣り合うポケット62,62の一方の第1領域621と、他方の第2領域622とは、連結部623を介して接続されている。なお、連結部623を介在することなく、隣り合うポケット62の一方の第1領域621と他方の第2領域622とが直接接続される形態に吸音壁27が構成されていてもよい。
ポケット72は、開口群210が形成された第1領域721と、開口群210が形成されていない第2領域722とを備えている。
次に、本発明の第3実施形態(図7)について説明する。
第3実施形態に係る吸音要素7は、図7(a)に示すように、流路壁10と、吸音壁20とに加えて、吸音壁20の内側に配置される壁体30とを備えている。
なお、吸音要素7は、吸音壁20に代えて、第2実施形態の吸音壁24や、変形例の吸音壁25~~28を備えていてもよい。
壁体30が吸音壁20の内端に沿って配置されることで、周方向D2に隣り合うポケット22の間において、壁体30と吸音壁20との間に第2の空隙102が形成されている。
壁体30は、溶接、ろう付け、ねじ固定、その他の適宜な方法により吸音壁20および流路壁10に組み付けることができる。例えば、流路壁10と壁体30との間に吸音壁20を径方向に圧縮された状態に挿入することで、流路壁10、吸音壁20、および壁体30を組み付けることができる。
その開口群310の背後には、第2の空隙102が存在している。開口31の孔径d、壁体30の板厚l、壁体30における開口31の面積開口率P、および第2の空隙102の厚みは、上述の式(1)に基づいて、冷媒の圧力変動の所定の周波数f0に適合するように調整することができる。
吸音壁20と壁体34は、図8(b)に示すように、周方向D2に位相を所定の角度だけ(ここでは180°)シフトさせて配置されている。吸音壁20と壁体34との間には、断面四角形状の空隙102が形成されている。壁体34には、空隙102に通じる開口群310が形成されている。開口31の背後の空隙102の厚みLは一定である。
吸音作用を十分に得るため、開口31の孔軸と開口21の孔軸とが平行であるよりも、それらが直交している方が好ましい。
なお、吸音壁20と壁体34とが必ずしも同様の形態である必要はなく、壁体34に代えて、例えば、正弦波や台形波状の横断面を呈する壁体を組み合わせることもできる。
その他、適宜な形態の吸音壁と、適宜な壁体とを組み合わせ、流路壁10と流路壁との間の第1の空隙101と、吸音壁と壁体との間の第2の空隙102とを用いて、吸音を図ることが可能である。
図9に示す構成によれば、吸音壁23が単純な円環状であっても、流路壁13の形状を利用して、周方向D2の異なる位置に複数の空隙101を形成し、吸音壁23の開口内部の気柱と空隙101とに関して成立するヘルムホルツ共鳴により吸音を図ることができる。
2 圧縮機
3 第1熱交換器
4 膨張弁(減圧部)
5 第2熱交換器
6,7 吸音要素
9 気泡
10 流路壁
13 流路壁
14 ポケット
20 吸音壁
20A 山
20B 谷
21 開口
21A 空気塊
22,32,42,52,62,72 ポケット
23 吸音壁
24~28 吸音壁
29 多孔筒
30,34 壁体
31 開口
40 ハウジング
41 減圧作用部
41A オリフィス
41B ニードル
43 モータ
44 上流管(上流部)
45 下流管(下流部)
100 流路
101 空隙
102 第2の空隙
103 内方空間
210 開口群
221 第1領域
222 第2領域
310 開口群
321 第1領域
322 第2領域
323 第3領域
324 連結部
421 第1領域
422 第2領域
423 第3領域
424 連結部
521 第1領域
522 第2領域
621 第1領域
622 第2領域
623 連結部
721 第1領域
722 第2領域
D1 軸線方向
D2 周方向
L 空隙厚さ
θ 角度
Claims (7)
- 冷媒が循環する冷凍サイクルシステムに備えられて、冷媒が流れる吸音要素であって、
冷媒が流れる流路を区画する流路壁と、
前記流路壁の内側に冷媒の流れの方向に沿って配置され、前記流路壁との間に、前記流路の周方向の異なる位置にそれぞれ空隙を形成する吸音壁と、を備え、
前記吸音壁には、
前記吸音壁の内側から前記空隙に通じる複数の開口が形成され、
前記吸音壁は、前記空隙をそれぞれ内包した複数のポケットを備え、
前記ポケットは、前記流路壁よりも内方に退いており、複数の前記開口が形成され、
前記ポケットは、複数の前記開口からなる開口群が存在する第1領域と、前記開口群が存在していない第2領域と、を有する、
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム用の吸音要素。 - 前記吸音壁は、断面環状に形成されて前記流路壁の内側に挿入されており、
前記流路壁の全周に亘り前記ポケットが並んでいる、
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム用の吸音要素。 - 前記ポケットは、断面略V字状をなす前記第1領域および前記第2領域からなり、
前記流路壁の周方向に隣り合う複数の前記ポケットの一方の前記第1領域と他方の前記第2領域とが接続されている、
請求項1または2に記載の冷凍サイクルシステム用の吸音要素。 - 前記吸音壁の内側に冷媒の流れの方向に沿って配置される壁体をさらに備え、
前記流路の周方向に隣り合う前記ポケットの間において、前記吸音壁と前記壁体との間に第2の空隙が形成され、
前記壁体には、前記壁体よりも内方の空間から前記第2の空隙に通じる開口が形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の冷凍サイクルシステム用の吸音要素。 - 前記空隙と、前記開口の内部の空気塊とに関してヘルムホルツ共鳴が成立することで、吸音する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍サイクルシステム用の吸音要素。 - 冷媒の圧力を減少させる減圧作用部と、
前記減圧作用部へ流入する冷媒が流れる上流部と、
前記減圧作用部から流出した冷媒が流れる下流部と、を備え、
前記上流部および前記下流部の少なくともいずれか一方に、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸音要素を有する、
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム用の減圧部。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載の吸音要素あるいは請求項6に記載の減圧部を備えることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
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