JP7014528B2 - 生分解性樹脂粒子 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] 走査透過電子顕微鏡による断面写真において粒子内部に1つ以上の単孔が観察され、粒子長径と粒子短径の合計をD1とし、単孔長径と単孔短径の合計をD2とした時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔の数が粒子1つあたり5個以上であることを特徴とする生分解性樹脂粒子。
[2] 体積平均粒子径が1.0~30μmである前記[1]に記載の生分解性樹脂粒子。
[3] 前記単孔の長径と短径の合計D2の算術平均値が、0.1~4.5μmである前記[1]又は[2]に記載の生分解性樹脂粒子。
[4] 前記生分解性樹脂が、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体、または脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合体である前記[1]~[3]のいずれかに記載の生分解性樹脂粒子。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の生分解性樹脂粒子を含む化粧品用添加剤。
なお本発明の好ましい効果として、光散乱性が向上することも挙げられる。さらには薬剤の保持性が高くなることも好ましい効果として挙げられる。
1-1.成分
本発明で粒子とする生分解性樹脂としては、公知の種々の生分解性樹脂が使用でき、中でも脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体、または脂肪族ヒドロキシカルボン酸の脱水縮合体などの生分解性ポリエステル樹脂が好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数が2~10程度、好ましくは3~8程度のジカルボン酸(特にα,ω-アルカンジカルボン酸)が挙げられ、コハク酸が最も好ましい。これら脂肪族ジカルボン酸は、1種でもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸などが挙げられ、ヒドキシカルボン酸は、環状多量化したものであってもよく、例えば、グリコリド(1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)、ジラクチド(3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)などであってもよい。好ましいヒドロキシカルボン酸は、乳酸、ジラクチドなどであり、より好ましくは乳酸である。
本発明の生分解性樹脂粒子は、粒子内に適度な大きさの単孔を有している。この単孔は、走査透過電子顕微鏡写真の白色部であり、外縁を特定可能な独立孔(不連続孔)として表示される。そして本発明では、前記単孔(独立孔)が適度な大きさに制御され、かつ適度な数が存在するため、生分解性改善、光散乱性の向上、薬剤の内包効率向上などに効果的である。具体的には、粒子サイズをその長径(L)と短径(S)の合計値D1(=L+S)で表し、単孔(独立孔)サイズをその長径(l)と短径(s)の合計値D2(=l+s)で表した時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔(独立孔)(以下、R0.05-0.20と表すことがある。添字の左側はD2/D1の下限値を、添字の右側はD2/D1の上限値を示す)が適度な大きさの単孔(独立孔)とされ、以下、本明細書では良孔という場合がある。良孔の数は、生分解性樹脂粒子断面1つあたり平均で、5個以上、好ましくは7個以上、より好ましくは9個以上である。良孔が多くなるほど、生分解性改善、光散乱性の向上、薬剤の内包効率向上などに効果的である。良孔の数の上限は、生分解性樹脂粒子の粒径に応じて論理的に設定される上限値と同等であってもよいが、例えば、20以下、好ましくは18以下であってもよい。
所定の大きさの単孔(良孔)を所定の個数有する生分解性樹脂粒子は、例えば、工程1~4を行うことによって製造できる。
工程1:生分解性樹脂を水非混和性有機溶媒に可溶な水溶性高分子(以下、両可溶性高分子という)と共に水非混和性有機溶媒に溶解させる(生分解性樹脂液)。
工程2:分散剤(界面活性剤、水非混和性有機溶媒に難溶な水溶性高分子など)を含有する水と前記生分解性樹脂液とを撹拌し、懸濁液を調製する。
工程3:懸濁液から前記水非混和性有機溶媒を蒸発留去し、水相中に生分解性樹脂粒子を浮遊させる。
工程4:水相と生分解性樹脂粒子とを分離し、生分解性樹脂粒子を必要に応じて洗浄した後、乾燥する。
生分解性樹脂の種類に応じて、両可溶性高分子や分散剤の割合、懸濁強度などを適宜調整することによって、良孔を制御できる。
水非混和性有機溶媒の量は、生分解性樹脂1質量部に対して、例えば、0.5~100質量部程度、好ましくは1~60質量部程度、より好ましくは3~30質量部程度である。
K値は分子量と相関する粘性特性値であり、毛細管粘度計により測定される相対粘度値(25℃)を下記のFikentscherの式に適用して計算される。
K=(1.5logηrel-1)/(0.15+0.003c)+(300clogηrel+(c+1.5clogηrel)2)1/2/(0.15c+0.003c2)
[式中、ηrelは、両可溶性高分子水溶液の水に対する相対粘度を示し、cは両可溶性高分子水溶液中の両可溶性高分子濃度(%)を示す]
なおK値は、実測せず、メーカー測定値を採用することもできる。
また水非混和性有機溶媒に難溶な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
例えばT.K.ホモミクサー(プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業)製)等の高速剪断タービン型分散機;ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等の高圧ジェットホモジナイザー;超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等の超音波式乳化分散機;アトライター(三井鉱山社製)等の媒体撹拌型分散機;コロイドミル(日本精機製作所製)等の強制間隙通過型分散機等を用いることができる。連続生産の際は、エバラマイルダー(荏原製作所製)を用いることができる。なお、上記の強制撹拌の前に、通常のパドル翼等で予備撹拌しておいてもよい。
以上の様にして製造可能な本発明の生分解性樹脂粒子は、単孔を有し、かつその大きさと数が適度に制御されているため、生分解性が良好である。そのため環境に対するやさしさが特に望まれる用途、例えば、化粧品用添加剤などに有用である。
また前記単孔は、可視光の光散乱性を改善するのに好適なサイズになっており、よって本発明の生分解性樹脂粒子は光拡散剤としても有効である。光拡散剤としての使用を考えた場合、本発明の生分解性樹脂粒子は、該粒子をマトリックス材中に分散させることで得られる各種用途(光拡散性物品)、例えば、蛍光照明機器や白色照明機器のカバー材;バックライト式の半透明看板や半透明ディスプレイ;電飾機器や内装材で使用される半透明パーティション;液晶ディスプレイ、液晶テレビジョンの光拡散シートや光拡散板;プロジェクターやプロジェクションテレビのスクリーン;光反射乃至散乱効果をもたせたファンデーションなどの化粧品等に利用でき、好ましくは本発明の生分解性樹脂粒子を化粧品用添加剤として用いた化粧品等である。
さらに前記単孔は、有効成分を内部に保持するのにも適切なサイズになっており、有効成分の徐放性にも効果がある。加えて粒子自体に分解性があるために、有効成分の放出挙動を時間的に変化させることができる。従って本発明の生分解性粒子は、薬剤担体、特に徐放薬担体としても有効である。
各種物性の測定は以下の方法で行った。
<良孔(R0.05-0.20)の数>
生分解性樹脂粒子の断面を倍率10,000倍~30,000倍、加速電圧20kVの条件で走査透過電子顕微鏡により撮影した。撮影して得られた画像は、装置付属のノギス径算出ツールを使用し、粒子断面の長径(L)と短径(S)とそれらの合計D1(D1=L+S)(粒子サイズ)、及び粒子断面の単孔の長径(l)と短径(s)とそれらの合計値D2(単孔サイズ)を算出し、D2/D1が0.05以上、0.20となる良孔(R0.05-0.20)の数を求めた。1種類の生分解性ポリエステル粒子につき、20個の粒子について良孔(R0.05-0.20)を求め、その算術平均値を該生分解性樹脂粒子での良孔(R0.05-0.20)の数とした。
D2/D1の範囲を0.05以上、0.15以下とする以外は、前記良孔(R0.05-0.15)の数と同様にして、粒子断面内の第2の良孔(R0.05-0.15)の数を決定した。
前記<良孔(R0.05-0.20)>の数と同様にして、粒子サイズD1と単孔サイズD2を求め、良孔(R0.05-0.20)を特定し、粒子長径の中央を中心とする直径0.8×(L+S)の円(80%円)内に重心を有する良孔(R0.05-0.20)の数を求めた。1種類の生分解性ポリエステル粒子につき、20個の粒子についてR0.05-0.20を求め、その算術平均値を該生分解性樹脂粒子での80%円内での良孔の数とした。
<50%円内の良孔(R0.05-0.20)の数>
粒子長径の中央を中心とする直径0.5×(L+S)の円(50%円)内に重心を有する良孔(R0.05-0.20)を数える以外は、前記<80%円内の良孔(R0.05-0.20)の数>と同様にして決定した。
前記<良孔(R0.05-0.20)の数>で測定した20個の粒子に含まれる全単孔で測定したD2を対象として統計処理をしてその算術平均値を求め、単孔サイズとした。
樹脂粒子0.1質量部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N-08」)の1%水溶液20質量部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料として、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径(μm)を測定し、体積平均粒子径を求めた。また体積基準での粒子径の標準偏差も求め、下記式に従って粒子径の変動係数(CV値)を算出した。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)
300mLの撹拌装置付きのガラス製反応器に無水コハク酸0.5モル、エチレングリコール0.52モルを仕込み、撹拌下に140℃で生成水を留去し縮合反応を行った。反応開始から3時間後に反応触媒としてチタンテトラブトキシド0.02gを投入し、さらに反応温度は反応開始から5時間後に160℃、8時間後に180℃、9時間後に200℃に変更し、12時間後に反応を終了し、ポリエチレンサクシネートを製造した。反応開始から5時間後に真空ポンプを接続し、以後は減圧下とした。クロロホルム溶液のGPC測定(条件は下記の通り)によりポリスチレン換算の分子量を求めたところ、数平均分子量Mnは2.9万、重量平均分子量Mwは6.3万であった。
測定システム:東ソー社製「GPCシステムHLC-8220」
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業社製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製「PS-オリゴマーキット」)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製「TSK guardcolumn SuperHZ-L」)、分離カラム(東ソー社製「TSK Gel Super HZM-M」)、2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製「TSK Gel Super H-RC」)
製造例1で得られたポリエチレンサクシネート5.0gとポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名「ポリビニルピロリドンK-30」)0.63gを45.0gの塩化メチレンに加え、撹拌しながら溶解した。この溶液を過剰の1質量%ポリビニルアルコール水溶液200gに撹拌しながら加えることで、一次懸濁液を調製した。一次懸濁液をT.K.ホモジナイザー(プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業株式会社)製)により8000rpmで7分間撹拌して、二次懸濁液を調製した。二次懸濁液をフラスコに移し、ロータリーエバポレーターを駆動して、温度40℃、圧力30torrの減圧条件下にてフラスコを100rpmの速度で回転させることで塩化メチレンを除去した。分散液を減圧ろ過し、メタノールにて洗浄した。ろ過物を真空乾燥し、生分解性樹脂粒子を得た。
ポリエチレンサクシネート5.0gをポリ乳酸(三井化学社製、商品名「レイシアH440」)5.0gに変更する以外は実施例1と同様にした。
比較例1
ポリビニルピロリドン0.63gを使用しない以外は、実施例1と同様にした。
Claims (3)
- 走査透過電子顕微鏡による断面写真において粒子内部に1つ以上の単孔が観察され、粒子長径と粒子短径の合計をD1とし、単孔長径と単孔短径の合計をD2とした時、D2/D1が0.05以上、0.20以下となる単孔の数が粒子1つあたり9個以上18個以下である生分解性樹脂粒子であって、
該生分解性樹脂粒子の体積平均粒子径が1.0~10μmであり、
前記生分解性樹脂が、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの脱水縮合体であることを特徴とする生分解性樹脂粒子。 - 前記単孔の長径と短径の合計D2の算術平均値が、0.1~4.5μmである請求項1に記載の生分解性樹脂粒子。
- 請求項1又は2に記載の生分解性樹脂粒子を含む化粧品用添加剤。
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