次に、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子および製造方法について、詳細に説明する。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、数平均粒子径が1〜90μmであり、ケトエステル化合物を含んでなる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子である。
本発明で用いられるケトエステル化合物とは、エステル化合物の分子内にさらにカルボニル基を有する化合物のことを指し、α−ケトエステル、β−ケトエステル、γ−ケトエステルやα−ジエステルおよびβ−ジエステルなどのことを指す。
一般的にケトエステル化合物は、香気成分になることが知られており、特に香料として使われることが知られている。
具体的に、ケトエステル化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸tertブチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸(2−メトキシエチル)、2−メチルアセト酢酸エチル、2−エチルアセト酢酸エチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、ブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸メチル、4,4−ジメトキシ−3−オキソバレン酸メチル、4−オキソピメリン酸ジエチル、2−ヘキシルアセト酢酸エチル、ベンジルアセト酢酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸ブチル、レブリン酸イソアミル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、3−メチル−2−オキソブタン酸エチル、4−アセチルブタン酸エチル、4−アセトキシ−2−ブタノン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキルエステル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル等のコハク酸ジアルキルエステル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジアルキルエステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジアルキルエステル類、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル等のイタコン酸ジアルキルエステル類、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルおよびシクロヘキサンジカルボン酸ジエチル等のシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル類などが挙げられる。
また、ケトエステル化合物は、後述する粒子の製造過程での使用しやすさの点から、常温において液体のものが好ましく用いられる。この観点から、ケトエステル化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−ヘキシルアセト酢酸エチル、ベンジルアセト酢酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸ブチル、レブリン酸イソアミル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ジヒドロジャスモン酸メチルおよびマロン酸ジメチルおよびマロン酸ジエチルなどが好ましく、さらに好ましくは、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチルおよび2−ヘキシルアセト酢酸エチルなどが用いられる。
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂とは、芳香族ではない炭化水素基がエステル性結合で連結したものである。エステル性結合とは、ヒドロキシル基とカルボキシル基が縮合結合したものであり、エステル結合やカーボネート結合のことを指す。
上記の脂肪族ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(L−(S)−乳酸および/またはD−(R)−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(α−ヒドロキシブタン酸)(同様に、R体および/またはS体主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンコハク酸)、ポリ(1,4−ブチレンコハク酸)、ポリ(エチレンセバシン酸)、ポリ(1,4−ブチレンセバシン酸)、ポリ(エチレンカーボネート)およびポリ(プロピレンカーボネート)などが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエステル樹脂は、それぞれのモノマー以外にも、他の共重合成分を含有させることができる。このような他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトンおよびδ−バレロラクトンなどのラクトン類などから生成する単位が挙げられる。
このような共重合単位は、脂肪族ポリエステル樹脂中、30重量%以下の含有量とするのが好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が最も好ましい。本発明の効果を有するのであれば、若干の芳香族基の炭化水素基を含有させることができる。
本発明で使用する脂肪族ポリエステル樹脂のうち、そのモノマーユニットが光学異性体である場合においては、耐熱性の点から、光学純度が高いモノマーを使った脂肪族ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。すなわち、脂肪族ポリエステル樹脂のモノマーの内、R体が80%以上含まれるかまたはS体が80%以上含まれることが好ましく、R体が90%以上含まれるかまたはS体が90%以上含まれることがさらに好ましく、R体が95%以上含まれるかまたはS体が95%以上含まれることが特に好ましく、R体が98%以上含まれるかまたはS体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、R体またはS体の含有量の上限は、通常100%である。
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂のうち、そのモノマーユニットが光学異性体である場合においては、耐熱性と成形性の点でポリ乳酸に代表されるような、ステレオコンプレックスを用いることができる。
ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、ポリ乳酸を例に説明するとL体が90%以上、耐熱性の点で、好ましくは95%、より好ましくは98%以上のポリ−L−乳酸と、D体が90%以上、耐熱性の点で、好ましくは95%、より好ましくは98%以上のポリ−D−乳酸を溶融して混合または溶液として混合などの手法を用いて混合する方法を挙げることができる。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸セグメントおよびポリ−D−乳酸セグメントからなるブロック共重合体とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸セグメントおよびポリ−D−乳酸セグメントからなるブロック共重合体とする方法が好ましい。また、本発明においては、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを単独で用いてもよく、ポリ乳酸ステレオコンプレックスとポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を併用して用いることもできる。
これらの脂肪族ポリエステルの中でも、入手容易性の点から、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(L−(S)−乳酸および/またはD−(R)−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(α−ヒドロキシブタン酸)(同様に、R体および/またはS体主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)およびポリカプロラクトンが好ましく、特に好ましくは、ポリ乳酸(L−(S)−乳酸および/またはD−(R)−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを指す)が挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、脂肪族ヒドロキシカルボン酸や脂肪族ヒドロキシエステルなどの縮合反応、脂肪族ラクトンの開環重合反応、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジエステルとの縮合重合反応などから製造することができる。
脂肪族ポリエステル樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に溶解可能であれば、特に限定されるものではないが、粒子構造を維持しやすく、耐加水分解性が向上するという点で、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上であり、より好ましくは2万以上であり、さらに好ましくは3万以上であり、特に好ましくは5万以上であり、著しく好ましくは7万以上であり、最も好ましくは10万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、特定するのであれば100万以下であり、より好ましくは80万以下であり、さらに好ましくは60万以下であり、特に好ましくは40万以下であり、著しく好ましくは30万以下であり、最も好ましくは20万以下であることが望ましい。
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂の融点については、通常の使用環境を勘案すれば、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂粒子の数平均粒子径は、通常1000μm以下、好ましい態様によれば100μm以下であり、より好ましい態様によれば90μm以下であり、さらに好ましい態様によれば50μm以下であり、特に好ましい態様によれば30μm以下であり、著しく好ましい態様によれば20μm以下であり、最も好ましい態様によれば15μm以下である。数平均粒子径の下限は、通常50nm以上であり、好ましい態様によれば100nm以上であり、より好ましい態様によれば500nm以上であり、さらに好ましい態様によれば1μm以上であり、特に好ましい態様によれば2μm以上であり、著しく好ましい態様によれば3μm以上であり、最も好ましい態様によれば5μm以上のものを製造することが可能である。
また、粒子径分布は、粒子径分布指数として3以下であり、好ましい態様によれば2.5以下であり、より好ましい態様によれば2以下であり、さらに好ましい態様によれば1.8以下であり、特に好ましい態様によれば1.5以下であり、最も好ましい態様によれば1.2以下であるものを製造することが可能である。また、粒子径分布の好ましい下限は1である。
本発明でいう脂肪族ポリエステル樹脂粒子は、形状が多孔状である。そのため、顕微鏡写真で観察される粒子の形態を元に算出する数平均粒子径よりも精度良く計測できる、レーザー回折・光散乱方式の粒度分布計(日機装株式会社製 Microtrac MT3300EXII)を用いて測定される数平均粒子径を、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂粒子の数平均粒子径とする。
より具体的には、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径は、湿式レーザー回折・散乱法(日機装株式会社製、型式:Microtrac MT3300EXII)により、計測用の分散媒を水とし、物質の屈折率を1.60、分散媒の屈折率を1.333と設定し、イオン交換水中で脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を予備分散した脂肪族ポリエステル樹脂微粒子分散液で計測した数平均粒子径のことを示す。また、粒子径分布を表す粒子径分布指数は、上記の粒度分布計で測定された体積平均粒子径を数平均粒子径で除して得られる値である。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂粒子は、前記のケトエステル化合物を含むことを特徴とする。ケトエステル化合物は、前記のとおり、香料などの機能性を持った化学物質であり、これまでケトエステル化合物を含有した脂肪族ポリエステル樹脂粒子は知られていなかった。本発明の脂肪族ポリエステル樹脂粒子は、香気を持つという機能が付与された高機能化されたポリマー微粒子として、従来の脂肪族ポリエステル樹脂粒子に比べて有用である。
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂粒子の中に含まれるケトエステルの含量は、香気成分として機能する量であることが好ましく、脂肪族ポリエステル樹脂粒子が使用される環境にもよるが、脂肪族ポリエステル樹脂粒子の質量に対して1ppb以上であり、好ましくは10ppb以上であり、より好ましくは100ppb以上であり、さらに好ましくは1ppm以上であり、特に好ましくは100ppm以上である。
その上限については特に制限されないが、一般的には10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下であり、著しく好ましくは1質量%以下(10000ppm以下)である。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子中のケトエステル化合物の含有量はガスクロマトグラフィー法を使用して確認することができる。
本発明のケトエステル化合物を含んでなる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子とは、公知のマイクロカプセル型の樹脂粒子、即ち液体状の物質を高分子で被覆した形態を持つものとは異なり、ケトエステル化合物は、脂肪族ポリエステル樹脂粒子の非晶相に固溶したものと考えられる。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子のさらに好ましい形態として、多孔性である点が挙げられる。後述する製造法で得られる脂肪族ポリエステル粒子は、高分子結晶状の組織が集まった状態が形成されるため、従来知られている脂肪族ポリエステル粒子よりも比表面積が大きくなる。場合によっては鱗片状の高分子結晶の組織が見られることがある。この結果、親油性を表す指標である亜麻仁油吸油量が高くなり、化粧品や塗料の分野での実用性が高い材料が創出される。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の吸油量は、その下限が90ml/100gであり、好ましくは100ml/100gであり、より好ましくは200ml/100gであり、さらに好ましくは300ml/100gであり、特に好ましくは400ml/100g以上であり、著しく好ましくは500ml/100gである。また、吸油量は高ければ高いほど好ましいものであり、その上限については、特に定めるものではないが、現実的には1000ml/100gであり、900ml/100gである。
亜麻仁油の吸油量がこの範囲であれば、吸油量が高い粒子、かつ香気成分となるケトエステル化合物の放出特性が向上した粒子となり、化粧品や塗料の添加剤として好適に使用することができる。鱗片状の組織が形成される詳細な機構については十分解明できていないが、本発明の脂肪族ポリエステル粒子の代表例であるポリ乳酸微粒子の粉末X線構造解析を行った結果、回折角2θとして、代表的に、16.62°、18.92°、22.20°にピークを有する結晶構造を持っており、β型の結晶構造を有することが分かった。このことが、鱗片状組織を作りやすくし、吸油性向上につながったものと考えられる。
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の形状としては、真球に近いことが好ましい。
本発明で用いられる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の真球度は、60以上であることが好ましく、70以上がより好ましく、さらに好ましくは80以上であり、特に好ましくは90以上である。
真球度が前記の範囲であると、すべり性等の質感が向上したり、塗料等へ添加した場合の粘度コントロールがしやすくなる。
真球度は、走査型電子顕微鏡で粒子を観察し、短径と長径を測定し、任意粒子30個の平均より、次の数式(1)に従い算出するものである。
ここで、nは測定数30とする。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を製造する方法として、本発明者らは、「(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーと、(C)有機溶媒と、(D)ケトエステル化合物とを溶解混合し、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主成分とする溶液相と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、エマルションを形成させた後、脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒を接触させることにより、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を析出させる製造方法」を開示する。
(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられるが、本発明で用いられる(A)脂肪族ポリエステル樹脂を溶解する有機溶媒および(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒に溶解するものが好ましく、なかでも、上記の有機溶媒に溶解し、アルコール系溶媒または水に溶解するものが工業上取り扱い性に優れる点でより好ましく、さらには有機溶媒に溶解し、メタノール、エタノールまたは水に溶解するものが特に好ましく用いられる。
(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを具体的に例示するならば、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってもよい)、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体であってもよい)、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレン脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレンラウリン脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、ポリ(オキシアルキルエーテル)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジニウムクロライド、ポリ(スチレン−マレイン酸)共重合体、アミノポリ(アクリルアミド)、ポリ(パラビニルフェノール)、ポリアリルアミン、ポリビニルエーテル、ポリビニルホルマール、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(オキシエチレンアミン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリアミノスルホン、ポリエチレンイミン等の合成樹脂、マルトース、セルビオース、ラクトース、スクロースなどの二糖類、セルロース、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、アミロースおよびその誘導体、デンプンおよびその誘導体、デキストリン、シクロデキストリン、アルギン酸ナトリウムおよびその誘導体等の多糖類またはその誘導体、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アルブミン、フィブロイン、ケラチン、フィブリン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、アラビアゴム、寒天およびたんぱく質等が挙げられる。
好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってもよい)、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体であってよい)、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、ポリ(オキシアルキルエーテル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンであり。より好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってよい)、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、およびポリビニルピロリドン等が挙げられる。
特に好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってよい)、ポリ(エチレングリコール)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース等のセルロース誘導体およびポリビニルピロリドン等が挙げられる。
(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの分子量は、重量平均分子量として1,000以上が好ましく、より好ましくは2,000以上であり、さらに好ましくは3,000以上であり、特に好ましくは5,000以上であり、著しく好ましくは7,000以上であり、最も好ましくは10,000以上である。上限は特に制限されないが、重量平均分子量として10,000,000以下が好ましく、より好ましくは5,000,000以下であり、さらに好ましくは3,000,000以下であり、特に好ましくは2,000,000以下であり、著しく好ましくは1,500,000以下であり、最も好ましくは1,000,000以下である。
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒として水を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレングリコールで換算した重量平均分子量を指す。
水で測定できない場合においては、ジメチルホルムアミドを用い、それでも測定できない場合においては、テトラヒドロフランを用い、さらに測定できない場合においては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いることができる。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂粒子の製造法は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーと(C)ケトエステル化合物を含む有機溶媒(以下単に「(C)有機溶媒」ということがある。)とを溶解混合し、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主成分とする溶液相(以下、脂肪族ポリエステル樹脂溶液相と称することもある。)と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを主成分とする溶液相(以下、ポリマーB溶液相と称することもある。)の2相に相分離する系においてエマルジョンを形成させた後、(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒をエマルションに接触させることにより、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を析出させることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法である。
上記において、「(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーと(C)ケトエステル化合物を含む有機溶媒とを溶解混合させ、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主成分とする溶液相と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを主成分とする溶液相の2相に相分離する系」とは、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーと(C)有機溶媒とを混合したときに、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主として含む溶液相と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂を主として含む溶液相の2相に分かれる系のことをいう。
上記において、「(A)脂肪族ポリエステル樹脂」あるいは、「(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー」が溶解するか否かについては、本発明を実施する温度、即ち(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを2相分離させる際の温度において、(C)ケトエステル化合物を含む有機溶媒に対し1質量%超溶解するかどうかで判別する。
このような相分離をする系を用いることにより、相分離する条件下で混合して、乳化させ、エマルションを形成させることができる。
この際、(C)有機溶媒は、使用する有機溶媒、温度および配合量によるが、脂肪族ポリエステル樹脂溶液相およびポリマーB溶液相の両方に分配することが一般的である。
そのため、(C)有機溶媒において、ケトエステル化合物が90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。このような(C)有機溶媒であれば、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主として含む溶液相と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂を主として含む溶液相の2相に分かれた際のケトエステル化合物の分配比の調整をする必要が無くなるため、簡便である。
このエマルションは、脂肪族ポリエステル樹脂溶液相が分散相に、脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー溶液相が連続相になり、そしてこのエマルションに対し、脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒を接触させることにより、エマルション中の脂肪族ポリエステル樹脂溶液相から脂肪族ポリエステル樹脂が析出し、脂肪族ポリエステル樹脂とケトエステルで構成されるポリマー微粒子を得ることができる。
本発明において、多孔質脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得るためには、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを溶解させる(C)有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、多孔質粒子が得られやすいと言う点から、極性溶媒、エーテル系溶媒、β−ジケトン化合物およびケトエステル化合物などであることが好ましい。
(A)脂肪族ポリエステル樹脂がポリ乳酸系樹脂の場合については、特許文献7にその技術が開示されているが、近年、より高い多孔度の粒子が求められている。より高い多孔度の粒子を得るためには、粒子析出過程とポリマーの結晶化過程のバランスをとる必要があるため、溶媒の選択が重要である。溶解度が高すぎる溶媒を用いた場合には、微粒子を析出した後に微粒子内部に溶剤が残留し、ろ過などの固液分離をする際に粒子間で融着が起こりやすくなるため、粒度分布が大きくなる傾向にある。しかしながら、極性溶媒、エーテル系溶媒やβ−ジケトン化合物あるいはケトエステル化合物を用いる場合には、融着が生じにくく、粒子径分布の狭い、取り扱いやすい粒子が得られるため極めて有利である。
具体的には、(C)有機溶媒において、ケトエステル化合物以外の極性溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、トリメチルリン酸、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびスルホランなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、脂肪族鎖状エーテルである、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジイソアミルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、1−メトキシエタン(モノグライム)、1−エトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジブチルエーテルおよびトリエチレングリコールジメチルエーテルが例示される。
また、脂肪族環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2,2,5,5−テトラメチルヒドロフラン、2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフラン、テトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−n−ブチル−1,3―ジオキソラン、2,2−ジ−n−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−2−メチル−1,3―ジオキソラン、2,2−ジ−n−プロピル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジイソプロピル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−n−ブチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−n−プロピル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−メチル−2−イソブチル−4−メチル−1,3‐ジオキソラン、2−n−ブチル−4−エチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジ−n−プロピル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、2−n−ブチル−4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−n−プロピル−1,3−ジオキセパンおよび1,3,5−トリオキサンが例示される。
芳香族エーテルとしては、アニソール、フェネトール(エチルフェノール)、ジフェニルエーテル、3−フェノキシトルエン、p−トリルエーテル、1,3−ジフェノキシベンゼンおよび1,2−ジフェノキシエタン等が挙げられる。
中でも、工業的な利用しやすさの観点、経済性の観点および多孔質粒子が得られやすいという観点から勘案し、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1−エトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、アニソールが好ましく、より好ましくは、1−エトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンであり、さらに好ましくは、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソランおよび1,4−ジオキサンであり、特に好ましくは、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよび1,3−ジオキソランが挙げられる。
(C)有機溶媒に含まれるケトエステル化合物は、前述したものである。ケトエステル化合物は、粒子化を行う温度において液体であるものが好ましく、特に25℃の温度において液体のケトエステル化合物が好ましく用いられる。このようなケトエステル化合物としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、4−アセチルブタン酸エチル、4−アセトキシ−2−ブタノン、レブリン酸メチル、レブリン酸エチルおよびマレイン酸ジメチル及びマレイン酸ジエチルなどが挙げられる。
また、β−ジケトン化合物としては、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2−アセチルシクロヘキサノン、1,3−シクロペンタンジオン、2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、5、5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1−ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1,3−プロパンおよび4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。
ケトエステル化合物は、前述した化合物である。ケトエステル化合物は、粒子化を行う温度において液体であるものが好ましく、特に25℃の温度においても液体のものである。このようにすることにより、ケトエステル化合物そのものを(C)有機溶媒として使用することができる。
ケトエステル化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、4−アセチルブタン酸エチル、4−アセトキシ−2−ブタノン、レブリン酸メチル、レブリン酸エチルおよびマレイン酸ジメチル及びマレイン酸ジエチルなどが挙げられる。
ケトエステル化合物およびケトエステル化合物以外の有機溶媒は、それぞれ複数の種類のものを含有することができる。また、ケトエステル化合物のみで(C)有機溶媒を構成することができる。
(C)有機溶媒中のケトエステル化合物の含有量は、好ましい含有量としては0.0001質量%以上であり、より好ましくは、0.001質量%以上であり、さらに好ましくは、0.01質量%以上である。香気の長期徐放性という観点から、特に好ましくは、0.1質量%以上であり、著しく好ましくは1質量%以上である。また、含有量としての上限は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとの混合前に、前もってケトエステルと他の有機溶媒とを混合し、(C)有機溶媒を調製することができる。また(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは混合することができる。
粒子径が比較的小さく、かつ、粒子径分布の小さい粒子が得られる点という観点から、(C)有機溶媒において、ケトエステルのみからなること、または他の有機溶媒が1種類であることが好ましい。また、内容物の種類が少なくなることにより、使用済みの溶媒のリサイクル時の分離の工程が簡便になるという特徴もある。(A)脂肪族ポリエステル樹脂、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの両方を溶解する有機溶媒であることが好ましい。
本発明においてエマルションに接触させる(A)脂肪族ポリエステル樹脂に対する貧溶媒とは、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を溶解させない溶媒のことをいう。溶媒を溶解させないとは、(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒に対する溶解度が1質量%以下のものであり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法において、(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒を用いるが、かかる貧溶媒としては(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒であり、かつ(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを溶解する溶媒であることが好ましい。これにより、(A)脂肪族ポリエステル樹脂で構成されるポリマー微粒子を効率よく析出させることができる。また、(A)脂肪族ポリエステル樹脂および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを溶解させる溶媒と(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒とは均一に混合する溶媒であることが好ましい。
本発明で用いられる貧溶媒は、用いられる(A)脂肪族ポリエステル樹脂の種類、さらに用いられる(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー両方の種類によって変わる。貧溶媒を具体的に例示するならば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール−2−プロパノール等のアルコール系溶媒および水の中から少なくとも1種類から選ばれる溶媒などが挙げられる。
貧溶媒としては、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を効率的に粒子化させる観点から、好ましくは芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、および水であり、さらに好ましいのは、アルコール系溶媒と水であり、特に好ましくは、エタノール、メタノールおよび水である。
本発明において、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー、これらを溶解する(C)有機溶媒、および(A)脂肪族ポリエステル樹脂の貧溶媒を適切に選択して組み合わせることにより、効率的に(A)脂肪族ポリエステル樹脂を析出させてポリマー微粒子を得ることができる。
(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー、およびこれらを溶解する有機溶媒を混合溶解させた液は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主成分とする溶液相と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを主成分とする溶液相の2相に相分離することが必要である。
2相分離の状態を生成する条件は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの種類、(A)脂肪族ポリエステル樹脂や(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの分子量、有機溶媒の種類、(A)脂肪族ポリエステル樹脂、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの濃度、発明を実施しようとする温度、および圧力によって異なってくる。
相分離状態になりやすい条件を得るためには、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの溶解度パラメーター(以下、SP値と称することもある。)の差が離れていた方が好ましい。
この際、SP値の差としては、1(J/cm3)1/2以上であり、より好ましくは2(J/cm3)1/2以上であり、さらに好ましくは3(J/cm3)1/2以上であり、特に好ましくは5(J/cm3)1/2以上であり、著しく好ましくは8(J/cm3)1/2以上である。SP値がこの範囲であれば、容易に相分離しやすくなる。
(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの両者が有機溶媒に溶けるのであれば、SP値の差の上限は好ましくは20(J/cm3)1/2であり、より好ましくは、15(J/cm3)1/2であり、さらに好ましくは10(J/cm3)1/2である。
ここでいう、SP値とは、Fedorの推算法に基づき計算されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算されるもの(以下、計算法と称することもある。)である(「SP値 基礎・応用と計算方法」山本秀樹著、株式会社情報機構、平成17年3月31日発行)。
本方法により計算できない場合においては、溶解度パラメーターが既知の溶媒に対し溶解するか否かの判定による、実験法によりSP値を算出し(以下、実験法と称することもある。)、それを代用する(「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行)による。
相分離状態になる条件を選択するためには、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー、およびこれらを溶解する有機溶媒の3成分の比率を変化させた状態の観察による簡単な予備実験で作成できる3成分相図で判別ができる。
相図の作成は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーおよび溶媒をある割合で混合溶解させ、静置を行った際に、界面が生じるか否かの判定を少なくとも3種以上、好ましくは5種以上、より好ましくは10種以上の点で実施し、2相に分離する領域および1相になる領域を峻別することにより、相分離状態になる条件を見極めることができる。
この際、相分離状態であるかどうかを判定するためには、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを、本発明を実施しようとする温度と圧力で、任意の(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーおよび溶媒の比に調整した後に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを、完全に溶解させ、溶解させた後に、十分な攪拌を行い、たとえば3日放置し、巨視的に相分離をするかどうかを確認する。しかしながら、相分離はしているが十分に安定なエマルションになっているときは、3日放置しても巨視的な相分離をしない場合がある。その場合は、光学顕微鏡・位相差顕微鏡などを用いて、微視的に相分離しているかどうかにより相分離を判別する。
相分離は、有機溶媒中で(A)脂肪族ポリエステル樹脂を主とする(A)脂肪族ポリエステル樹脂溶液相と、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを主とするポリマーB溶液相に分離することによって形成される。この際、(A)脂肪族ポリエステル樹脂溶液相は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂が主として分配された相であり、脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー溶液相は(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーが主として分配された相である。この際、(A)脂肪族ポリエステル樹脂溶液相と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの溶液相は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの種類と使用量に応じた体積比を有するようである。
相分離の状態が得られ、かつ工業的に実施可能な濃度として、有機溶媒に対する(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーのそれぞれの濃度は、有機溶媒に溶解する可能な限りの範囲内であることが前提であるが、全質量に対して、好ましくはそれぞれ1質量%超〜50質量%、より好ましくはそれぞれ1質量%超〜30質量%、さらに好ましくはそれぞれ2質量%〜20質量%である。
本発明における(A)脂肪族ポリエステル樹脂溶液相とポリマーB溶液相の2相間の界面張力は、両相とも有機溶媒であることから、その界面張力が小さく、その性質により、生成するエマルションが安定に維持できることから、粒子径分布が小さくなるようである。
本発明における2相間の界面張力は、界面張力が小さすぎることから、通常用いられる溶液に異種の溶液を加えて測定する懸滴法などでは直接測定することはできないが、各相の空気との表面張力から推算することにより、界面張力を見積もることができる。各相の空気との表面張力をr1、r2とした際、その界面張力r1/2は、r1/2=r1−r2の絶対値で推算することができる。
この際、このr1/2の好ましい範囲は、その上限は10mN/mであり、より好ましくは5mN/mであり、さらに好ましくは3mN/mであり、特に好ましくは2mN/mである。また、その下限は0mN/m超である。
本発明における2相間の粘度は、数平均粒子径および粒子径分布に影響を与え、粘度比が小さい方が、粒子径分布が小さくなる傾向にある。
本発明における2相間の粘度比の好ましい範囲としては、その下限は0.1が好ましく、より好ましくは0.2であり、さらに好ましくは0.3であり、特に好ましくは0.5であり、著しく好ましいのは0.8である。
また、その上限は10が好ましく、より好ましくは5であり、さらに好ましくは3であり、特に好ましくは1.5であり、著しく好ましくは1.2である。ただし、ここでいう2相間の粘度比は、本発明を実施しようとする温度条件下での、(A)脂肪族ポリエステル樹脂溶液相/(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー溶液相と定義することとする。
このようにして得られた相分離する系を用い、相分離した液相を混合し、エマルション化させたのち、エマルションに(A)脂肪族ポリエステル樹脂に対する貧溶媒を接触させ、ポリマー微粒子を製造する。
微粒子化を行うには、通常の反応槽でエマルション形成および微粒子の析出工程が実施することができる。
本発明は、工業的な実現性の観点からエマルション形成および微粒子の析出工程を実施する温度は、0℃以上であり、(A)脂肪族ポリエステル樹脂と(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーが溶解し、相分離する温度であって、その下限は通常0℃であり、好ましくは10℃であり、より好ましくは20℃であり、さらに好ましくは30℃であり、特に好ましくは40℃であり、著しく好ましくは50℃であり、最も好ましくは60℃である。また、その上限は、好ましくは300℃であり、より好ましくは200℃であり、さらに好ましくは160℃であり、特に好ましくは140℃であり、著しく好ましくは120℃であり、最も好ましくは100℃である。
本発明を実施するにふさわしい圧力は、工業的な実現性の観点から、常圧状態から10気圧の範囲である。好ましい下限は、1気圧である。圧力の好ましい上限は5気圧であり、より好ましくは3気圧であり、さらに好ましくは2気圧である。
また、反応槽は不活性ガスを使用することが好ましい。具体的には、窒素、ヘリウム、アルゴンおよび二酸化炭素であり、より好ましくは、窒素とアルゴンである。
このような条件下で、相分離状態を混合することにより、エマルションを形成させる。すなわち、上記で得られた相分離溶液に、剪断力を加えることによりエマルションを生成させる。
エマルションの形成に際しては、脂肪族ポリエステル樹脂溶液相が粒子状の液滴になるようにエマルションを形成させるが、一般に相分離させた際、ポリマーB溶液相の体積が脂肪族ポリエステル樹脂溶液相の体積より大きい場合に、このような形態のエマルションを形成させやすい傾向にある。特に脂肪族ポリエステル樹脂溶液相の体積比が両相の合計体積1に対して0.4以下であることが好ましく、0.4〜0.1の間にあることがより好ましい態様である。
上記の相図を作成する際に、各成分の濃度における体積比を同時に測定しておくことにより、適切な範囲を設定することが可能である。
本発明の製造方法で得られる微粒子は、粒子径分布の小さい微粒子になるが、これは、エマルション形成の段階において、非常に均一なエマルションが得られるからである。
このため、エマルションを形成させるに十分な剪断力を得るためには、従前公知の方法による攪拌を用いれば十分であり、攪拌羽による液相攪拌法、連続2軸混合機による攪拌法、ホモジナイザーによる混合法、および超音波照射等通常公知の方法で混合することができる。
特に、攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の形状にもよるが、攪拌速度は、好ましくは50rpm〜1,200rpmであり、より好ましくは100rpm〜1,000rpmであり、さらに好ましくは200rpm〜800rpmであり、特に好ましくは300〜600rpmである。
攪拌羽としては、具体的には、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、ダブルコーン型、シングルコーン型、シングルリボン型、ダブルリボン型、スクリュー型およびヘリカルリボン型などが挙げられるが、系に対して十分に剪断力をかけられるものであれば、これらに限定されるものではない。また、効率的な攪拌を行うために、槽内に邪魔板等を設置することができる。
また、エマルションを発生させるためには、必ずしも、攪拌機だけでなく、乳化機や分散機など広く一般に知られている装置を用いることができる。具体的に例示するならば、ホモジナイザー(IKA社製)、“ポリトロン”(登録商標)(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業社製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機社製)、超音波ホモジナイザー、スタティックミキサーなどが挙げられる。
このようにして得られたエマルションは、引き続き微粒子を析出させる工程に供される。
(A)脂肪族ポリエステル樹脂の微粒子を得るためには、(A)脂肪族ポリエステル樹脂に対する貧溶媒を、前記の工程で製造されたエマルションに接触させることによりエマルション径に応じた大きさで、微粒子を析出させる。
貧溶媒とエマルションの接触方法は、貧溶媒にエマルションを入れる方法でも良いし、エマルションに貧溶媒を入れる方法でも良いが、エマルションに貧溶媒を入れる方法が好ましく用いられる。
この際、貧溶媒を投入する方法としては、本発明で製造するポリマー微粒子が得られる限り特に制限はなく、連続添加法および一括添加法のいずれでも良いが、貧溶媒添加時にエマルションが凝集・融着・合一し、粒子径分布が大きくなったり、1000μmを超える塊状物が生成しやすくならないようにするために、連続添加法を用いることが好ましい。
本発明における連続添加法とは、投入する貧溶媒を所定の時間内に複数回または連続的に添加する方法を指す。また、一括添加法とは、貧溶媒を短時間で一度に添加する方法を指す。ここでいう短時間とは、1分未満である。
貧溶媒を加える時間としては1分以上であり、好ましくは5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは20分以上であり、特に好ましくは30分以上であり、著しく好ましくは1時間以上である。その上限としては特に制限はないが、50時間以内であり、好ましくは20時間以内であり、より好ましくは10時間以内であり、特に好ましくは5時間以内である。
この範囲よりも短い時間で実施すると、エマルションの凝集・融着・合一に伴い、粒子径分布が大きくなったり、塊状物が生成したりする場合がある。また、これ以上長い時間で実施する場合は、工業的な実施を考えた場合、非現実的である。
この時間の範囲内で行うことにより、エマルションからポリマー微粒子に転換する際に、粒子間の凝集を抑制することができ、粒子径分布の小さいポリマー微粒子を得ることができる。
加える貧溶媒の量は、エマルションの状態にもよるが、微粒子が析出するのに十分な量であればよく、エマルション総質量1質量部に対して、下限としては0.1質量部以上であり、好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは0.3質量部以上であり、特に好ましくは0.5質量部以上である。上限としては特に制限はないが、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下であり、特に好ましくは2質量部以下であり、著しく好ましくは1質量部以下である。
貧溶媒とエマルションとの接触時間は、微粒子が析出するのに十分な時間であればよいが、十分な析出を引き起こし、かつ、効率的な生産性を得るためには、好ましくは貧溶媒添加終了後1分以上であり、より好ましくは5分以上であり、さらに好ましくは10分以上であり、特に好ましくは20分以上であり、著しく好ましくは30分以上である。上限としては特に制限はないが、好ましくは50時間以下であり、より好ましくは10時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下であり、特に好ましくは4時間以下であり、著しく好ましくは3時間以下である。
このようにして作られたポリマー微粒子が分散した液は、ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離、遠心ろ過、およびスプレードライ等の通常公知の方法で固液分離することにより、微粒子粉体を得ることができる。
固液分離したポリマー微粒子は、必要に応じて溶媒等で洗浄を行うことにより、付着または含有している不純物等の除去を行い、精製を行う。
本発明の製造方法においては、微粒子粉体を得る際に行った固液分離工程で分離された有機溶媒および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを再度活用するリサイクル化を行うことが可能である。
固液分離で得た溶媒は、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー、有機溶媒および貧溶媒の混合物である。この溶媒から、貧溶媒を除去することにより、エマルション形成用の溶媒として再利用することができる。
貧溶媒を除去する方法としては、通常公知の方法で行われ、具体的には、単蒸留、減圧蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、抽出および膜分離などが挙げられるが、好ましくは単蒸留、減圧蒸留および精密蒸留が好ましく用いられる。
単蒸留および減圧蒸留等の蒸留操作を行う際は、ポリマー微粒子製造時と同様に、系に熱がかかり、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーや有機溶媒の熱分解を促進する可能性があることから、極力酸素のない状態で行うことが好ましく、より好ましくは不活性雰囲気下で行われる。具体的には、窒素、ヘリウム、アルゴンおよび二酸化炭素条件下で実施することが特に好ましい。また、酸化防止剤としてフェノール系化合物を再添加することもできる。
使用したケトエステル化合物および有機溶媒をリサイクルする際、貧溶媒は極力除くことが好ましい。具体的には、貧溶媒の残存量が、リサイクルする有機溶媒および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの合計量に対して10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲よりも超える場合には、微粒子の粒子径分布が大きくなったり、粒子が凝集したりする。
リサイクルで使用する溶媒中の貧溶媒の量は、通常公知の方法で測定することができ、ガスクロマトグラフィー法やカールフィッシャー法などで測定することができる。
貧溶媒を除去する操作において、現実的には、(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマー、ケトエステル化合物およびケトエステル化合物以外の有機溶媒などをロスすることもあるので、適宜、初期の組成比に調整し直すことが好ましい。
このように、本発明の方法で作成された脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、粒子径分布の小さい粒子が得られることから、従来の方法で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子に比べて、質感と触感が大幅に向上し、また塗料などの添加をした際、良好な流動性を持つ。
これらのことから、本発明で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、産業上、各種用途で極めて有用かつ実用的に利用することが可能である。
用途について具体的な使用例としては、次のものが挙げられる。
具体的に、洗顔料、サンスクリーン剤、クレンジング剤、化粧水、乳液、美容液、クリーム、コールドクリーム、アフターシェービングローション、シェービングソープ、あぶらとり紙、マティフィアント剤などのスキンケア製品添加剤、ファンデーション、おしろい、水おしろい、マスカラ、フェイスパウダー、どうらん、眉墨、マスカラ、アイライン、アイシャドー、アイシャドーベース、ノーズシャドー、口紅、グロス、ほうべに、おはぐろ、マニキュア、トップコートなどの化粧品またはその改質剤、シャンプー、ドライシャンプー、コンディショナー、リンス、リンスインシャンプー、トリートメント、ヘアトニック、整髪料、髪油、ポマード、ヘアカラーリング剤などのヘアケア製品の添加剤。香水、オーデコロン、デオドラント、ベビーパウダー、歯磨き粉、洗口液、リップクリーム、石けんなどのアメニティ製品の添加剤、トナー用添加剤、塗料などのレオロジー改質剤、医療用診断検査剤、自動車材料、建築材料などの成形品への機械特性改良剤、フィルム、繊維などの機械特性改良材、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリングなどの樹脂成形体用原料、フラッシュ成形用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面高硬度向上剤、靭性向上材等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材、化粧品ファンデーション用基材・添加剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬などの医療用材料、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、および電子写真現像用トナーなどに用いることができる。
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、非石化原料由来の原料を使用することができ、環境低負荷な材料としての特性を有することから、従来使用されていたポリマー微粒子を代替する可能性がある。
上記の樹脂成形体、フィルムおよび繊維などの具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品として、カメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、およびバスタブ用材料などにも適用することができ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
次に、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子とその製造方法について実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)数平均粒子径および粒子径分布測定方法:
本発明でいう脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径と粒子径分布指数は、水に分散させた脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を、レーザー回折・光散乱方式の粒度分布計 日機装株式会社製Microtrac MT3300EXIIを用いて測定したものである。また、粒子径分布指数とは、測定した体積平均粒子径を数平均粒子径で除して得られる数値とした。測定条件は、下記のとおりである。
・使用装置:日機装株式会社製、Microtrac MT3300EXII
同社解析ソフトDMS Ver.11.0.0−246K
・測定分散媒:イオン交換水(電気伝導度が0.05μS/cm)
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :10秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.60
・透過性 :透過
・形状 :非球形。
(2)界面張力の測定法:
協和界面科学株式会社の自動接触角計DM−501を装置として用い、ホットプレート上で、ポリマーA溶液相とポリマーB溶液相について、各相と空気との表面張力との関係から、各相の表面張力の結果をr1、r2とし、その差である(r1−r2)の絶対値から界面張力を算出した。
(3)示差走査熱量測定:
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定した。
(4)重量平均分子量:
(i)脂肪族ポリエステル樹脂の分子量測定
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリメタクリル酸メチルによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。
・装置:ウォーターズ社製 LCシステム
・カラム:昭和電工株式会社製 HFIP−806M×2本
・移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム10mmol/L ヘキサフルオロイソプロパノール溶液
・流速:1.0ml/min
・検出:示差屈折率計
・カラム温度:30℃。
(ii)(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーの分子量測定
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。
・装置:株式会社島津製作所製 LC−10Aシリーズ
・カラム:昭和電工株式会社製 GF−7MHQ ×2本
・移動相:10mmol/L 臭化リチウム水溶液
・流速:1.0ml/min
・検出:示差屈折率計
・カラム温度:40℃。
(5)亜麻仁油吸油量の測定:
脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の多孔度の指標である、吸油性の評価にあたっては、日本工業規格(JIS規格)JIS K5101“顔料試験方法 精製あまに油法”を用いた。脂肪族ポリエステル樹脂微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製アマニ油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ。試料の塊ができるまで滴下−練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とした。滴下に使用した精製アマニ油の量から吸油量(ml/100g)を算出した。
(6)脂肪族ポリエステル微粒子中のケトエステル化合物含量の評価:
脂肪族ポリエステル微粒子中のケトエステル化合物含量の評価には、ガスクロマトグラフィーによる絶対検量線法を用いた。
・装置:アジレントテクノロジー社製 GC7890B
・カラム:DB−WAX
・キャリアガス:He
・検出:FID方式。
(実施例1)<アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法1>
200mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂として、ポリ乳酸3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒の構成材料として、ケトエステル化合物であるアセト酢酸エチル44.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、100℃の温度に加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒として、イオン交換水とエタノールの1:1混合液50gのイオン交換水を、2時間かけて滴下した。全量の混合液を入れ終わった後に、さらに30分間攪拌し、常温 まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、イオン交換水50gで洗浄し濾別した。得られたケークを80℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を7.1g得た。
得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が9.4μmで、粒子径分布指数が1.09のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は604ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.6質量%含んでいた。本実施例で用いられたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸、ヒドロキシプロピルセルロースとを別途溶解させ、静置観察したところ2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は、2mN/m以下であった。貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図1と図2に示す。
(実施例2)<アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法2>
1000mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸28.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒を構成するものとして、ケトエステル化合物でもあるアセト酢酸エチル352.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース20.0g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒としてイオン交換水とエタノールの1:1混合液400gを2時間かけて滴下した。全量の混合液を入れ終わった後に、さらに30分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、イオン交換水350gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を25.3g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径は9.3μmで、粒子径分布指数は1.09のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は513ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.5質量%含んでいた。本実施例で用いられたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸、ヒドロキシプロピルセルロースとを別途溶解させ、静置観察したところ2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は、2mN/m以下であった。貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図3と図4に示す。
(実施例3)<マロン酸ジメチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法>
200mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸2.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒としてケトエステル化合物でもあるアセト酢酸エチル44.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース3.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、100℃の温度に加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は、エマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒としてイオン交換水とエタノールの1:1混合液50gを2時間かけて滴下した。全量の混合液を入れ終わった後に、さらに30分間攪拌し、得られた懸濁液をろ過し、イオン交換水50gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を2.3g得た。
得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、平均粒子径は19.3μmで、粒子径分布指数は2.9のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は412ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.3質量%含んでいた。本実施例で用いられたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、マロン酸ジメチルにポリ乳酸とヒドロキシプロピルセルロースとを別途溶解させ、静置観察したところ2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は2mN/m以下であった。貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図5と図6に示す。
(実施例4) <アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法3>
1000mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸20.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒を構成するものとして、ケトエステル化合物でもあるアセト酢酸エチル360.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてポリビニルピロリドン20.0g(日本触媒株式会社製、重量平均分子量1,100,000 、SP値25.6(J/cm3)1/2)を加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒として、イオン交換水とエタノールの1:1混合液400gを2時間かけて滴下した。全量の混合液を入れ終わった後に、さらに30分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール350gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を26.5g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が9.7μmで、粒子径分布指数が2.02のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は525ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.6質量%含んでいた。本実施例で用いたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸とポリビニルピロリドンとを別途溶解させ、静置観察したところ、2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は2mN/m以下であった。また、貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図7と図8に示す。
(実施例5) <アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法4>
200mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒を構成するものとして、ケトエステル化合物でもあるアセト酢酸エチル44.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒として、エタノール25gを一括添加した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、続いてイオン交換水25gを一括添加した。全量のイオン交換水を入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、イオン交換水50gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を3.1g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が6.7μmで、粒子径分布指数が1.56のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は391ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.3質量%含んでいた。本実施例で用いたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸とヒドロキシプロピルセルロースとを別途溶解させ、静置観察したところ、2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は2mN/m以下であった。貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図9と図10に示す。
(実施例6) <アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法5>
200mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒を構成するものとして、ケトエステル化合物でもあるアセト酢酸エチル43.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてポリビニルピロリドン3.5g(日本触媒株式会社製、重量平均分子量1,100,000 、SP値25.6(J/cm3)1/2)を加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を40℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒としてエタノール25gを一括添加した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに1分間攪拌し、続いてエタノール25gを一括添加した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール50gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を3.2g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が7.4μmで、粒子径分布指数が1.92のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は422ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.4質量%含んでいた。本実施例で用いたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸とポリビニルピロリドンとを別途溶解させ、静置観察したところ2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は、2mN/m以下であった。また、貧溶媒であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図11と図12に示す。
(実施例7) <アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法6>
200mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒の構成材料として、ケトエステル化合物であるアセト酢酸エチル44.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、100℃の温度に加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒として60℃の温度に加温したイオン交換水25gを一括添加した。全量のイオン交換水を入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、再度60℃の温度に加温したエタノール25gを一括添加した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに30分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール50gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を2.9g得た。
得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が13.92μmで、粒子径分布指数が2.60のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は725ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.4質量%含んでいた。本実施例で用いたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸とヒドロキシプロピルセルロースとを別途溶解させ、静置観察したところ2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は2mN/m以下であった。また、貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図13と図14に示す。
(実施例8) <アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法7>
10Lのオートクレーブの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸280g(D体1.2%、重量平均分子量Mw(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒を構成するものとして、ケトエステル化合物でもあるアセト酢酸エチル3520g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース200g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒として、イオン交換水とエタノールの1:1混合液4000gを2時間かけて滴下した。全量の水混合液を入れ終わった後に、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール5600gで洗浄後、イオン交換水16800gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を250g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が7.6μmで、粒子径分布指数が1.30のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は510ml/100gであり、アセト酢酸エチルを0.5質量%含んでいた。本実施例で用いたポリ乳酸のSP値は、計算法により求め、23.14(J/cm3)1/2)であった。また、アセト酢酸エチルにポリ乳酸とヒドロキシプロピルセルロースとを別途溶解させ、静置観察したところ2相分離することが分かり、本系の界面張力の推算値は2mN/m以下であった。また、貧溶媒であるイオン交換水とエタノールの1:1混合液水に対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図15と図16に示す。
(比較例1) <アセト酢酸エチル溶媒によるポリ乳酸微粒子の製造方法8>
200mlの4口フラスコの中に、(A)脂肪族ポリエステル樹脂としてポリ乳酸3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、(C)有機溶媒の構成材料として、ケトエステル化合物であるアセト酢酸エチル44.0g、および(B)脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーとしてヒドロキシプロピルセルロース2.5g(東京化成工業株式会社製、重量平均分子量118,000、SP値29.0(J/cm3)1/2)を加え、100℃の温度に加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒としてイオン交換水とエタノールの1:1混合液50gのイオン交換水を5秒以内に一括添加した。全量の混合液を入れ終わった後に、さらに10分間攪拌したところ、ポリ乳酸が系内で1000μm以上の塊状物となり、微粒子化することはできなかった。