JP2020084167A - 脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、吸油性が高い化粧品や塗料用途に好適な脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法は、融解エンタルピーが、5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を脂肪族ジカルボニル化合物(B)に溶解し、得られた均質な溶液に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を接触させ、または、溶液の温度を低下させることで、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を析出させて得ることができる。【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリ乳酸を始めとする脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法に関し、更に詳しくは、吸油性と親水性に優れ、化粧品ファンデーションや塗料増粘剤などに好適な孔質を有する脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法に関するものである。
脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、ポリグリコール酸やポリ乳酸などの例で知られているように、非石油原料由来の化合物から作りやすいポリエステルであり、また比較的生分解性の高いポリマーであることから、環境負荷が低い素材として、その利用が期待されている。
脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得る方法としては、種々知られているが、一般的には凍結粉砕などに代表される機械的粉砕法(特許文献1、2)、高温下の溶媒に溶解し冷却して析出させたり、また溶媒に溶解した後に貧溶媒を加えることにより析出させる溶媒溶解析出法(特許文献3、4)、ポリ乳酸に代表されるように2軸押出機等の混合機内で脂肪族ポリエステル樹脂と非相溶の樹脂とを混合し、脂肪族ポリエステル樹脂を分散相に、脂肪族ポリエステル樹脂と非相溶の樹脂を連続相として持つ樹脂組成物を形成させた後、非相溶の樹脂を除去することにより脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得る溶融混練法(特許文献5、6)などにより製造できることが知られている。
近年、脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、生分解性を有するポリ乳酸樹脂を使った、吸油性能に特徴を持つ微粒子化技術が開発されている(特許文献7、8)。また、安全性の高いケトエステル化合物を溶媒として用いたポリ乳酸樹脂の製造方法(特許文献9)が開示されている。
しかしながら、特許文献7、8に記載の方法で得られた微粒子を化粧品などに用いる場合、残留する溶媒が肌に触れることによる安全性の課題がある。
特許文献9に記載の方法は、安全性の高い溶媒を用いる方法ではあるが、製造時に粒子化する脂肪族ポリエステル樹脂とは異なるポリマーを使用するため、微粒子中にポリマーが不純物として混入する恐れがある。また、用いた溶媒にポリマーが残存するため、溶媒のリサイクルが困難であるなどの課題もある。
本発明の目的は、吸油性と親水性に優れ、化粧品ファンデーションや塗料増粘剤などに好適な孔質を有し、安全性に優れる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法を提供することにあり、さらに好ましい態様においては、粒度分布が狭く、粉体状の取扱性に優れた脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、下記の発明に到達した。
(1)融解エンタルピーが5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解し均質な溶液とし、前記均質な溶液に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(2)融解エンタルピーが5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解し均質な溶液とし、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(3)顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液に貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる(1)記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(4)顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる(2)記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(5)前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、加熱溶解して均質な溶液とする(1)〜(4)いずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(6)脂肪族ジカルボニル化合物(B)が、β−ケトエステル化合物、β−ジケトン化合物およびβ−ジエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である(1)〜(5)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(7)脂肪族ジカルボニル化合物(B)が、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸デシル、アセチルアセトン、プロピオニルアセトン、マロン酸ジメチルおよびマロン酸ジエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である(1)〜(6)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(8)脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)が、エタノール、メタノールおよび水の中から選ばれた少なくとも1種である請求項(1)(3)(5)〜(7)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(9)顔料(D)が有機顔料である(3)(4)(5)〜(8)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(10)顔料(D)がアゾ系顔料である(3)(4)(5)〜(9)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(1)融解エンタルピーが5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解し均質な溶液とし、前記均質な溶液に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(2)融解エンタルピーが5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解し均質な溶液とし、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(3)顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液に貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる(1)記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(4)顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる(2)記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(5)前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、加熱溶解して均質な溶液とする(1)〜(4)いずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(6)脂肪族ジカルボニル化合物(B)が、β−ケトエステル化合物、β−ジケトン化合物およびβ−ジエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である(1)〜(5)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(7)脂肪族ジカルボニル化合物(B)が、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸デシル、アセチルアセトン、プロピオニルアセトン、マロン酸ジメチルおよびマロン酸ジエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である(1)〜(6)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(8)脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)が、エタノール、メタノールおよび水の中から選ばれた少なくとも1種である請求項(1)(3)(5)〜(7)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(9)顔料(D)が有機顔料である(3)(4)(5)〜(8)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
(10)顔料(D)がアゾ系顔料である(3)(4)(5)〜(9)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
本発明の製造方法で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、多孔質形状を有し比表面積が高いことから、吸油性に優れる。また、本発明の製造方法では、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子以外のポリマーを用いる必要がないため、不純物の少ない脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。さらに、溶媒として用いる脂肪族ジカルボニル化合物(B)のリサイクルが容易であるとともに、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の精製におけるろ過性などの操作性に優れている。これらの特徴から、本発明の製造方法によれば、化粧品や塗料の添加剤などの用途に好適な脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
本発明の製造方法で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、吸油性が著しく高く、好ましい形態においては粒子径分布が狭く、流動性、取扱性に優れる。さらに、これらの点から、ファンデーション、口紅、男性化粧品用スクラブ剤などの化粧品用材料、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤などの塗料添加剤、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、表面高硬度向上剤、靭性向上材等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材、化粧品ファンデーション用基材・添加剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬などの医療用材料、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、および電子写真現像用トナーなどに用いることができる。
次に、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法について、詳細に説明する。
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂(A)とは、芳香族ではない炭化水素基がエステル性結合で連結したものである。エステル性結合とは、ヒドロキシル基とカルボキシル基が縮合結合したものであり、エステル結合やカーボネート結合のことを指す。
上記の脂肪族ポリエステル樹脂(A)の具体例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(L−(S)−乳酸および/またはD−(R)−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(α−ヒドロキシブタン酸)(同様に、R体および/またはS体主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンコハク酸)、ポリ(1,4−ブチレンコハク酸)、ポリ(エチレンセバシン酸)、ポリ(1,4−ブチレンセバシン酸)、ポリ(エチレンカーボネート)およびポリ(プロピレンカーボネート)などが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、それぞれのモノマー以外にも、他の共重合成分を含有させることができる。このような他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトンおよびδ−バレロラクトンなどのラクトン類などから生成する単位が挙げられる。
このような共重合単位は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)中、30重量%以下の含有量とするのが好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が最も好ましい。また、本発明の効果を奏する範囲で、共重合単位として芳香族基を含む共重合成分を含んでいてもよい。芳香族基を含む共重合単位は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)中10重量%以下とするのが好ましい。
本発明で使用する脂肪族ポリエステル樹脂(A)のうち、そのモノマーユニットが光学異性体である場合においては、耐熱性の点から、光学純度が高いモノマーを使った脂肪族ポリエステル樹脂(A)を用いることが好ましい。すなわち、脂肪族ポリエステル樹脂(A)のモノマーの内、R体が80%以上含まれるかまたはS体が80%以上含まれることが好ましく、R体が90%以上含まれるかまたはS体が90%以上含まれることがさらに好ましく、R体が95%以上含まれるかまたはS体が95%以上含まれることが特に好ましく、R体が98%以上含まれるかまたはS体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、R体またはS体の含有量の上限は、通常100%である。
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂(A)のうち、そのモノマーユニットが光学異性体である場合においては、耐熱性と成形性の点でポリ乳酸に代表されるようなステレオコンプレックスを用いることができる。
ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、ポリ乳酸を例に説明するとL体が90%以上、耐熱性の点で、好ましくは95%、より好ましくは98%以上のポリ−L−乳酸と、D体が90%以上、耐熱性の点で、好ましくは95%、より好ましくは98%以上のポリ−D−乳酸を溶融して混合または溶液として混合などの手法を用いて混合する方法を挙げることができる。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸セグメントおよびポリ−D−乳酸セグメントからなるブロック共重合体とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸セグメントおよびポリ−D−乳酸セグメントからなるブロック共重合体とする方法が好ましい。また、本発明においては、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを単独で用いてもよく、ポリ乳酸ステレオコンプレックスとポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を併用して用いることもできる。
これらの脂肪族ポリエステル樹脂(A)の中でも、入手容易性の点から、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(L−(S)−乳酸および/またはD−(R)−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(α−ヒドロキシブタン酸)(同様に、R体および/またはS体主たる構成成分とするポリマーを指す)、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)およびポリカプロラクトンが好ましく、特に好ましくは、ポリ乳酸(L−(S)−乳酸および/またはD−(R)−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを指す)が挙げられる。
本発明の製造方法で用いる脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、融解エンタルピーが5J/g以上である。このような脂肪族ポリエステル樹脂(A)は結晶性が高く、後述する溶媒との組み合わせによる脂肪族ポリエステル樹脂(A)の均質な溶液から微粒子を得やすくなる。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の結晶性が高いため、多孔質形状の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。脂肪族ポリエステル樹脂(A)の結晶性がより高くなると、より多孔質な形状の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子が得られるようになり、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の吸油性や吸湿性など、多孔質構造を利用した性能が向上する。従って、表面が多孔質形状の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を製造するためには、融解エンタルピーの下限値として、好ましくは5J/g以上であり、さらに好ましくは10J/g以上であり、特に好ましくは20J/g以上であり、著しく好ましくは30J/g以上であり、最も好ましくは40J/g以上である。また、その上限値は、特に制限はないが、100J/g以下であることが好ましい。
一方、融解エンタルピーが5J/g未満である場合、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の結晶性が低いため、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の結晶化が起こりにくくなり、均質な溶液から微粒子を得ることができなくなる。
なお、融解エンタルピーとは、示差走査熱量測定(DSC)にて、昇温速度20℃毎分の条件で200℃まで昇温した際、160℃付近の融解熱容量を示すピーク面積から算出したものを指す。
融解エンタルピーを調整する方法として、ポリ乳酸樹脂を例とした場合、ポリ乳酸樹脂を構成するL−乳酸およびD−乳酸の共重合比率(L/D)を調整する方法、ポリ乳酸樹脂に結晶化を促進する添加剤を加える方法、ステレオブロック構造を形成する方法など、公知の方法を用いることができる。中でも、ポリ乳酸系樹脂(A)の融解エンタルピーの調整しやすさから、L/Dの共重合比率を調整する方法が好ましい。L/Dが95/5以上の場合、融解エンタルピーが5J/g以上となり、結晶性のポリ乳酸系樹脂となる。L−乳酸の共重合比率が高いほど、結晶化しやすくなるため好ましく、L/Dが97/3以上がより好ましく、最も好ましくは、98/2以上である。L/Dの上限は、100/0未満である。また、L/Dが95/5未満の場合、融解エンタルピーが5J/g未満となり、非晶質のポリ乳酸系樹脂となる。なお、D,Lなどの光学活性体は、その分子構造が鏡像関係にある物質であり、物理的特性は全く変わらないことから、上記L/DをD/Lと置き換えても融解エンタルピーは同じであり、本発明では、L/DをD/Lに置き換えた範囲についても包含される。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、脂肪族ヒドロキシカルボン酸や脂肪族ヒドロキシエステルなどの縮合反応、脂肪族ラクトンの開環重合反応、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジエステルとの縮合重合反応などから製造することができる。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分子量や分子量分布は、実質的に溶解可能であれば、特に限定されるものではないが、粒子構造を維持しやすく、耐加水分解性が向上するという点で、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上であり、より好ましくは2万以上であり、さらに好ましくは3万以上であり、特に好ましくは5万以上であり、著しく好ましくは7万以上であり、最も好ましくは10万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、特定するのであれば100万以下であり、より好ましくは80万以下であり、さらに好ましくは60万以下であり、特に好ましくは40万以下であり、著しく好ましくは30万以下であり、最も好ましくは20万以下であることが望ましい。
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の融点については、通常の使用環境を勘案すれば、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。
本発明の製造方法では、溶媒として、脂肪族ジカルボニル化合物(B)を用いることが重要である。溶媒として、脂肪族ジカルボニル化合物(B)を選択し、結晶性の高い脂肪族ポリエステル樹脂(A)を溶解し溶液としたときに、均質な溶液となるような組み合わせを選ぶことが重要である。このときに、溶液が相分離をするような第三成分を含まないことが好ましい。ここで、脂肪族ジカルボニル化合物(B)とは、脂肪族カルボニル化合物の分子内にさらにカルボニル基を有する化合物のことを指し、β−ケトエステル化合物、β−ジケトン化合物およびβ−ジエステル化合物などのことを指す。
具体的に、β−ケトエステル化合物としては、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸デシル、メチル−2−ペンタノンアセテート、エチル−2−オクタノンアセテート、エチル−2−デカノンアセテート、オクチル−2−ブタノンアセテート、エチル−1−メチル−2−ブタノンアセテート、メチル−1−ブチル−2−ブタノンアセテート、ブチル−1−ペンチル−2−オクタノンアセテートなどが好ましいものとして挙げられる。
また、β−ジケトン化合物としては、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2−アセチルシクロヘキサノン、1,3−シクロペンタンジオン、2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、5−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、5、5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1−ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1,3−プロパンおよび4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオンなどが好ましいものとして挙げられる。
また、β−ジエステル化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジヘキシル、マロン酸ジオクチル、マロン酸ジウンデシル、マロン酸ジヘキサデシル、マロン酸ジ−9−オクタデシル、マロン酸ジ−9,12−オクタデカジエニル、マロン酸ジ−9,11,13−オクタデカトリエニルなどが好ましいものとして挙げられる。
これらの中でも、後述する粒子の製造過程での使用しやすさの点から、常温において液体のものが好ましく用いられる。さらに安価であるなど工業的に入手が容易な点から、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸デシル、アセチルアセトン、プロピオニルアセトン、マロン酸ジメチルおよびマロン酸ジエチル等が特に好ましく使用できる。上記した脂肪族ジカルボニル化合物(B)は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造法は、融解エンタルピーが、5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を脂肪族ジカルボニル化合物(B)に溶解し、得られた均質な溶液に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を接触させ、または、溶液の温度を低下させることで、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を析出させることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法である。
均質な溶液とは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)が脂肪族ジカルボニル化合物(B)に溶解している状態であり、エマルション等の相分離構造を有しないことを意味し、濁度(JIS K0101(1998))等を用いて分析可能である。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)が脂肪族ジカルボニル化合物(B)に溶解した溶液に、後述する顔料(D)が分散している状態は、均質な溶液に含まれる。
微粒子化を行うには、通常の反応槽で微粒子の析出工程を実施することができる。
本発明において均質な溶液に接触させる脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対する貧溶媒(C)とは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を溶解させない溶媒のことをいう。溶解させない溶媒とは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)に対する溶解度が1質量%以下のものであり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法において、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を用いるが、かかる貧溶媒(C)としては脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)であり、かつ、脂肪族ジカルボニル化合物(B)と均質に混合することが好ましい。これにより、脂肪族ポリエステル樹脂(A)で構成される脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を効率よく析出させることができる。
本発明で用いられる貧溶媒(C)は、用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)の種類によって変わる。貧溶媒(C)を具体的に例示するならば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール−2−プロパノール等のアルコール系溶媒および水の中から少なくとも1種類から選ばれる溶媒などが挙げられる。
貧溶媒(C)としては、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を効率的に粒子化させる観点から、好ましくは芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、および水であり、さらに好ましいのは、アルコール系溶媒と水であり、特に好ましくは、エタノール、メタノールおよび水である。
本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を溶解する脂肪族ジカルボニル化合物(B)、および脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を適切に選択して組み合わせることにより、効率的に脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させて脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
均質な溶液の状態が得られ、かつ工業的に実施可能な濃度として、脂肪族ジカルボニル化合物(B)に対する脂肪族ポリエステル樹脂(A)の濃度は、脂肪族ジカルボニル化合物(B)に溶解する可能な限りの範囲内であることが前提であるが、全質量に対して、好ましくはそれぞれ1質量%超〜50質量%、より好ましくはそれぞれ1質量%超〜30質量%、さらに好ましくはそれぞれ2質量%〜20質量%である。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を製造する最も好ましい方法は、工業的な実現性の観点から微粒子化工程を実施する温度は、0℃以上であり、上限としては脂肪族ポリエステル樹脂(A)が溶解し、均質な溶液となる温度であって、所望の微粒子が得られるならば特に制限はないが、その下限は通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは20℃以上である。また、その上限は、好ましくは300℃以下であり、さらに好ましくは、200℃以下であり、より好ましくは、160℃以下であり、特に好ましくは、140℃以下の範囲であり、著しく好ましくは100℃以下である。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を製造する最も好ましい方法を実施するにふさわしい圧力は、工業的な実現性の観点から、常圧状態から10気圧の範囲である。好ましい下限としては、1気圧である。好ましい上限としては、5気圧であり、さらに好ましくは、3気圧であり、より好ましくは、2気圧である。
また、反応槽は不活性ガスを使用することが好ましい。具体的には、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素であり、好ましくは、窒素、アルゴンである。
このような条件下で得られた均質な溶液を混合しながら、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)と接触させることにより、効率的に脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させて脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
均質な溶液を混合するためには、従前公知の方法による攪拌を用いれば十分であり、攪拌羽による液相攪拌法、連続2軸混合機による攪拌法、ホモジナイザーによる混合法、および超音波照射等通常公知の方法で混合することができる。
特に、攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の形状にもよるが、攪拌速度は、好ましくは50rpm〜1,200rpmであり、より好ましくは100rpm〜1,000rpmであり、さらに好ましくは200rpm〜800rpmであり、特に好ましくは300〜600rpmである。
攪拌羽としては、具体的には、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、ダブルコーン型、シングルコーン型、シングルリボン型、ダブルリボン型、スクリュー型およびヘリカルリボン型などが挙げられるが、系に対して十分に剪断力をかけられるものであれば、これらに限定されるものではない。さらに、効率的な攪拌を行うために、槽内に邪魔板等を設置することができる。
また、混合するためには、必ずしも、攪拌機だけでなく、乳化機や分散機など広く一般に知られている装置を用いることができる。具体的に例示するならば、ホモジナイザー(IKA社製)、“ポリトロン”(登録商標)(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業社製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機社製)、超音波ホモジナイザー、スタティックミキサーなどが挙げられる。
貧溶媒(C)と均質な溶液の接触方法は、貧溶媒(C)に均質な溶液を入れる方法でも良いし、均質な溶液に貧溶媒(C)を入れる方法でも良いが、均質な溶液に貧溶媒(C)を入れる方法が好ましく用いられる。
この際、貧溶媒(C)を投入する方法としては、本発明で製造する脂肪族ポリエステル樹脂微粒子が得られる限り特に制限はなく、連続添加法および一括添加法のいずれでも良いが、貧溶媒(C)添加時にエマルションが凝集・融着・合一し、粒子径分布が大きくなったり、1000μmを超える塊状物が生成しやすくならないようにするために、連続添加法を用いることが好ましい。
上記における連続添加法とは、投入する貧溶媒(C)を所定の時間内に複数回または連続的に添加する方法を指す。また、一括添加法とは、貧溶媒(C)を短時間で一度に添加する方法を指す。ここでいう短時間とは、1分未満である。
貧溶媒(C)を加える時間としては1分以上であり、好ましくは5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは20分以上であり、特に好ましくは30分以上であり、著しく好ましくは1時間以上である。その上限としては特に制限はないが、50時間以内であり、好ましくは20時間以内であり、より好ましくは10時間以内であり、特に好ましくは5時間以内である。
この範囲よりも短い時間で実施すると、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の凝集・融着・合一に伴い、粒子径分布が大きくなったり、塊状物が生成したりする場合がある。また、これ以上長い時間で実施する場合は、工業的な実施を考えた場合、非現実的である。
この時間の範囲内で行うことにより、均質な溶液から脂肪族ポリエステル樹脂微粒子に転換する際に、粒子間の凝集を抑制することができ、粒子径分布の小さい脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
加える貧溶媒(C)の量は、均質な溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂(A)の濃度にもよるが、微粒子が析出するのに十分な量であればよく、均質な溶液の総質量1質量部に対して、下限としては0.1質量部以上であり、好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは0.3質量部以上であり、特に好ましくは0.5質量部以上である。上限としては特に制限はないが、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下であり、特に好ましくは2質量部以下であり、著しく好ましくは1質量部以下である。
貧溶媒(C)と均質な溶液との接触時間は、微粒子が析出するのに十分な時間であればよいが、十分な析出を引き起こし、かつ、効率的な生産性を得るためには、好ましくは貧溶媒(C)添加終了後1分以上であり、より好ましくは5分以上であり、さらに好ましくは10分以上であり、特に好ましくは20分以上であり、著しく好ましくは30分以上である。上限としては特に制限はないが、好ましくは50時間以下であり、より好ましくは10時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下であり、特に好ましくは4時間以下であり、著しく好ましくは3時間以下である。
本発明の製造方法では、貧溶媒(C)の接触を行うことなく、上記で得られた均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を析出させることも可能である。この場合、脂肪族ポリエステル樹脂が均質な溶液となる温度から、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子が析出するのに必要な温度まで徐々に温度を低下させるのが好ましい。
析出するのに必要な温度まで低下させる時間は、微粒子が析出するのに十分な時間であればよいが、十分な析出を引き起こし、かつ、効率的な生産性を得るためには、好ましくは1分以上であり、より好ましくは5分以上であり、さらに好ましくは10分以上であり、特に好ましくは20分以上であり、著しく好ましくは30分以上である。上限としては特に制限はないが、好ましくは50時間以下であり、より好ましくは10時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下であり、特に好ましくは3時間以下であり、著しく好ましくは2時間以下である。
このようにして作られた脂肪族ポリエステル樹脂微粒子が分散した液は、ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離、遠心ろ過、およびスプレードライ等の通常公知の方法で固液分離することにより、微粒子粉体を得ることができる。
固液分離した脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、必要に応じて溶媒等で洗浄を行うことにより、付着または含有している不純物等の除去を行い、精製することができる。
本発明の製造方法においては、微粒子粉体を得る際に行った固液分離工程で分離された脂肪族ジカルボニル化合物(B)を再度活用するリサイクル化を行うことが可能である。
固液分離で得た脂肪族ジカルボニル化合物(B)から、貧溶媒(C)を除去することにより、均質な溶液を得るための溶媒として再利用することができる。
貧溶媒(C)を除去する方法としては、通常公知の方法で行われ、具体的には、単蒸留、減圧蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、抽出および膜分離などが挙げられるが、好ましくは単蒸留、減圧蒸留および精密蒸留が好ましく用いられる。
単蒸留および減圧蒸留等の蒸留操作を行う際は、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子製造時と同様に、系に熱がかかり、脂肪族ジカルボニル化合物(B)の熱分解を促進する可能性があることから、極力酸素のない状態で行うことが好ましく、より好ましくは不活性雰囲気下で行われる。具体的には、窒素、ヘリウム、アルゴンおよび二酸化炭素条件下で実施することが特に好ましい。また、酸化防止剤としてフェノール系化合物を再添加することもできる。
使用した脂肪族ジカルボニル化合物(B)をリサイクルする際、貧溶媒(C)は極力除くことが好ましい。具体的には、貧溶媒(C)の残存量が、リサイクルする脂肪族ジカルボニル化合物(B)の1質量部に対して10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲よりも超える場合には、微粒子の粒子径分布が大きくなったり、粒子が凝集したりする。
リサイクルで使用する脂肪族ジカルボニル化合物(B)中の貧溶媒(C)の量は、通常公知の方法で測定することができ、ガスクロマトグラフィー法やカールフィッシャー法などで測定することができる。
貧溶媒(C)を除去する操作において、現実的にはロスすることもあるので、適宜、初期の組成比に調整し直すことが好ましい。
本発明の製造方法では、顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液に貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させることができる。
また、顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させることができる。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)が脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解した均質な溶液に顔料(D)を混合するのは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の溶解前および溶解後のいずれでもよい。いずれの場合も、顔料(D)は後述するとおり水または溶剤に不溶であるので、脂肪族ポリエステル樹脂(A)および脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる均質な溶液に、顔料(D)が分散した状態となる。顔料(D)の分散性の点より、脂肪族ポリエステル樹脂(A)と脂肪族ジカルボニル化合物(B)の溶解前に混合することが好ましい。
顔料(D)の混合量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の質量の、1.5質量%を越え80質量%以下とするのが好ましい。より好ましい顔料(D)の混合量上限としては、60質量%以下である。
また、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子中の所望する顔料含有量の1倍以上から2倍以下の顔料(D)を反応系に混合することが好ましい。
より具体的に例示すれば、顔料(D)を脂肪族ポリエステル樹脂微粒子中に5質量%含有させたい場合、混合時に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の5質量%から10質量%の顔料(D)を添加するのが好ましい。
顔料(D)の添加量下限は、微粒子中の所望する顔料含有量の1.01倍以上がより好ましく、さらに好ましくは微粒子中の所望する顔料含有量の1.05倍以上であり、特に好ましくは微粒子中の所望する顔料含有量の1.1倍以上である。また、顔料(D)の添加量上限は微粒子中の所望する顔料含有量の1.9倍以下がより好ましく、さらに好ましくは微粒子中の所望する顔料含有量の1.8倍以下であり、特に好ましくは微粒子中の所望する顔料含有量の1.6倍以下であり、著しく好ましくは微粒子中の所望する顔料含有量の1.5倍未満である。
顔料(D)とは、水または溶剤に不溶な白色ないしは有色の色材であり、有機化合物である有機顔料および無機化合物である無機顔料に大別される。顔料(D)は、例えばファンデーション、フェイスパウダー、口紅やネイルエナメルなどの化粧品に、色の明度、彩度、色相などの色合いを作り出すために用いられる。
本発明における無機顔料とは、体質顔料、着色顔料および白色顔料を含む。無機顔料の例としては、雲母状酸化鉄、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、紺青、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、ストロンチウムクロメート、チタニウム・イエロー、ジンクロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポン、エメラルド・グリーン、カドミウム黄、カドミウム赤、コバルト青およびカーボンブラックなどが挙げられる。
本発明における有機顔料とは、水や有機溶媒に対して溶解性が低い着色料である。水や有機溶媒に可溶な染料と比較して劣化しにくい特徴があり、塗料、インク、織物、化粧品、食品などの着色に広く用いられている。有機顔料としては、公知の有機顔料のものを用いることができる。中でも透明性が高く、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れたものが好ましい。
代表的な有機顔料の具体的な例をカラ−インデックス(以下、CI)ナンバ−で示すと、次のようなものが好ましく使用されるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
赤色顔料は例としては、ピグメントレッド(以下、PR)9、PR48、PR97、PR122、PR123、PR144、PR149、PR166、PR168、PR177、PR179、PR180、PR192、PR209、PR215、PR216、PR217、PR220、PR223、PR224、PR226、PR227、PR228、PR240、PR254などがあげられ、このうち有機物から構成されるものが本発明の対象とする具体例である。数値は前記のとおりいずれもCIナンバーである。
また、緑色顔料の例としては、ピグメントグリ−ン(以下、PG)7、PG10、PG36、PG58などが使用される。また、黄色顔料の例としては、ピグメントイエロ−(以下、PY)12、PY13、PY17、PY20、PY24、PY83、PY86、PY93、PY95、PY109、PY110、PY117、PY125、PY129、PY137、PY138、PY139、PY147、PY148、PY150、PY153、PY154、PY166、PY168、PY185などがあげられ、このうち有機物から構成されるものが本発明の対象とする具体例である。数値は前記のとおりいずれもCIナンバーである。
また、青色顔料の例としては、ピグメントブルー(以下、PB)15:3、PB15:4、PB15:6、PB21、PB22、PB60、PB64などが使用される。また、バイオレット顔料としてはピグメントバイオレット(以下、PV)19、PV23、PV29、PV30、PV37、PV40、PV50などがあげられ、このうち有機物から構成されるものが本発明の対象とする具体例である。数値は前記のとおりいずれもCIナンバーである。
これらの有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性処理、塩基性処理などの表面処理がされていてもかまわず、耐光性や耐溶剤性を損なわない程度に染料を含むことができる。
本発明において、吸油性、親水性、流動性、取扱性、および色味である発色性の観点から、有機顔料であることが好ましい。
本発明における有機顔料のうち、特にアゾ系顔料であることが好ましい。アゾ系顔料とは分子内にアゾ基(−N=N−)を持つ顔料である。
アゾ顔料として代表的なものは、PY165、PR2,PR9,PR112,PBr25、PY12,PY13,PY14,PY17,PY55,PY83,PY87、PY124,ピグメントオレンジ(以下、PO)16,PY81,PY152、PO13,PR38などが挙げられる。
アゾ顔料が好ましい理由については、現時点で明確ではないが、分子内のアゾ基と脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分子骨格の親和性が高いためであると推測される。
本発明の製造方法によって得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径は、通常1000μm以下、好ましい態様によれば100μm以下であり、より好ましい態様によれば90μm以下であり、さらに好ましい態様によれば50μm以下であり、特に好ましい態様によれば30μm以下であり、著しく好ましい態様によれば20μm以下であり、最も好ましい態様によれば15μm以下である。数平均粒子径の下限は、通常50nm以上であり、好ましい態様によれば100nm以上であり、より好ましい態様によれば500nm以上であり、さらに好ましい態様によれば1μm以上であり、特に好ましい態様によれば2μm以上であり、著しく好ましい態様によれば3μm以上であり、最も好ましい態様によれば5μm以上のものを製造することが可能である。
また、粒子径分布は、粒子径分布指数として3以下であり、好ましい態様によれば2.5以下であり、より好ましい態様によれば2以下であり、さらに好ましい態様によれば1.8以下であり、特に好ましい態様によれば1.5以下であり、最も好ましい態様によれば1.2以下であるものを製造することが可能である。また、粒子径分布の好ましい下限は1である。
本発明で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、形状が多孔状である。そのため、顕微鏡写真で観察される粒子の形態を元に算出する数平均粒子径よりも精度良く計測できるレーザー回折・光散乱方式の粒度分布計(日機装株式会社製 Microtrac MT3300EXII)を用いて測定される数平均粒子径を、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径とする。
より具体的には、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径は、湿式レーザー回折・散乱法(日機装株式会社製、型式:Microtrac MT3300EXII)により、計測用の分散媒を水とし、物質の屈折率を1.60、分散媒の屈折率を1.333と設定し、イオン交換水中で脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を予備分散した脂肪族ポリエステル樹脂微粒子分散液で計測した数平均粒子径のことを示す。また、粒子径分布を表す粒子径分布指数は、上記の粒度分布計で測定された体積平均粒子径を数平均粒子径で除して得られる値である。
本発明で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子のさらに好ましい形態として、多孔性である点が挙げられる。後述する製造法で得られる脂肪族ポリエステル粒子は、高分子結晶状の組織が集まった状態が形成されるため、従来知られている脂肪族ポリエステル粒子よりも比表面積が大きくなる。場合によっては鱗片状の高分子結晶の組織が見られることがある。この結果、親油性を表す指標である吸油量が高くなり、化粧品や塗料の分野での実用性が高い材料が創出される。吸油量としては、日本工業規格で定められている顔料試験方法である亜麻仁油吸油量(精製あまに油法 JIS K5101(2004))を指標とする。
本発明で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の亜麻仁油吸油量は、その下限が90ml/100g以上であり、好ましくは100ml/100g以上であり、より好ましくは120ml/100g以上であり、さらに好ましくは150ml/100g以上であり、特に好ましくは200ml/100g以上であり、著しく好ましくは300ml/100g以上であり、最も好ましくは500ml/100g以上である。
また、亜麻仁油吸油量は高ければ高いほど好ましいものであり、その上限については、特に定めるものではないが、現実的には1000ml/100g以下である。
亜麻仁油の吸油量がこの範囲であれば、亜麻仁油吸油量が高い粒子として化粧品や塗料の添加剤として好適に使用することができる。鱗片状の組織が形成される詳細な機構については十分解明できていないが、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の代表例であるポリ乳酸微粒子の粉末X線構造解析を行った結果、回折角2θとして、代表的に、16.62°、18.92°、22.20°にピークを有する結晶構造を持っており、β型の結晶構造を有することが分かった。このことが、鱗片状組織を作りやすくし、吸油性向上につながったものと考えられる。
このように、本発明の方法で作成された脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、多孔質形状を有し比表面積が高いことから、吸油性に優れる。また、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子以外のポリマーを用いていないため、不純物の少ない脂肪族ポリエステル樹脂微粒子であり、かつ、粒子径分布の小さい粒子が得られることから、従来の方法で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子に比べて、質感と触感が大幅に向上し、また塗料などの添加をした際、良好な流動性を持つ。
これらのことから、本発明で得られる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、産業上、各種用途で極めて有用かつ実用的に利用することが可能である。
用途について具体的な使用例としては、次のものが挙げられる。
具体的には、洗顔料、サンスクリーン剤、クレンジング剤、化粧水、乳液、美容液、クリーム、コールドクリーム、アフターシェービングローション、シェービングソープ、あぶらとり紙、マティフィアント剤などのスキンケア製品添加剤、ファンデーション、おしろい、水おしろい、マスカラ、フェイスパウダー、どうらん、眉墨、マスカラ、アイライン、アイシャドー、アイシャドーベース、ノーズシャドー、口紅、グロス、ほうべに、おはぐろ、マニキュア、トップコートなどの化粧品またはその改質剤、シャンプー、ドライシャンプー、コンディショナー、リンス、リンスインシャンプー、トリートメント、ヘアトニック、整髪料、髪油、ポマード、ヘアカラーリング剤などのヘアケア製品の添加剤。香水、オーデコロン、デオドラント、ベビーパウダー、歯磨き粉、洗口液、リップクリーム、石けんなどのアメニティ製品の添加剤、トナー用添加剤、塗料などのレオロジー改質剤、医療用診断検査剤、自動車材料、建築材料などの成形品への機械特性改良剤、フィルム、繊維などの機械特性改良材、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリングなどの樹脂成形体用原料、フラッシュ成形用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面高硬度向上剤、靭性向上材等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材、化粧品ファンデーション用基材・添加剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬などの医療用材料、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、および電子写真現像用トナーなどに用いることができる。
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子は、非石化原料由来の原料を使用することができ、環境低負荷な材料としての特性を有することから、従来使用されていたポリマー微粒子を代替する可能性がある。
上記の樹脂成形体、フィルムおよび繊維などの具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品として、カメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、およびバスタブ用材料などにも適用することができ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
次に、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法について実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)数平均粒子径および粒子径分布測定方法:
本発明でいう脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径と粒子径分布指数は、水に分散させた脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を、レーザー回折・光散乱方式の粒度分布計 日機装株式会社製Microtrac MT3300EXIIを用いて測定したものである。また、粒子径分布指数とは、測定した体積平均粒子径を数平均粒子径で除して得られる数値とした。測定条件は、下記のとおりである。
・使用装置:日機装株式会社製、Microtrac MT3300EXII
同社解析ソフトDMS Ver.11.0.0−246K
・測定分散媒:イオン交換水(電気伝導度が0.05〜1μS/cm)
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :10秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.60
・透過性 :透過
・形状 :非球形。
本発明でいう脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の数平均粒子径と粒子径分布指数は、水に分散させた脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を、レーザー回折・光散乱方式の粒度分布計 日機装株式会社製Microtrac MT3300EXIIを用いて測定したものである。また、粒子径分布指数とは、測定した体積平均粒子径を数平均粒子径で除して得られる数値とした。測定条件は、下記のとおりである。
・使用装置:日機装株式会社製、Microtrac MT3300EXII
同社解析ソフトDMS Ver.11.0.0−246K
・測定分散媒:イオン交換水(電気伝導度が0.05〜1μS/cm)
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :10秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.60
・透過性 :透過
・形状 :非球形。
(2)示差走査熱量測定:
示差走査熱量計(TAインスツルメント社製Q20)を用い、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定した。
示差走査熱量計(TAインスツルメント社製Q20)を用い、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定した。
(3)重量平均分子量:
(i)脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分子量測定
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリメタクリル酸メチルによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。
・装置:ウォーターズ社製 LCシステム
・カラム:昭和電工株式会社製 HFIP−806M×2本
・移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム10mmol/L ヘキサフルオロイソプロパノール溶液
・流速:1.0ml/min
・検出:示差屈折率計
・カラム温度:30℃。
(i)脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分子量測定
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリメタクリル酸メチルによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。
・装置:ウォーターズ社製 LCシステム
・カラム:昭和電工株式会社製 HFIP−806M×2本
・移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム10mmol/L ヘキサフルオロイソプロパノール溶液
・流速:1.0ml/min
・検出:示差屈折率計
・カラム温度:30℃。
(4)亜麻仁油吸油量の測定:
脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の多孔度の指標である、吸油性の評価にあたっては、日本工業規格(JIS規格)JIS K5101(2004)“顔料試験方法 精製あまに油法”を用いた。脂肪族ポリエステル樹脂微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製亜麻仁油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ。試料の塊ができるまで滴下−練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とした。滴下に使用した亜麻仁油の量から吸油量(ml/100g)を算出した。
脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の多孔度の指標である、吸油性の評価にあたっては、日本工業規格(JIS規格)JIS K5101(2004)“顔料試験方法 精製あまに油法”を用いた。脂肪族ポリエステル樹脂微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製亜麻仁油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ。試料の塊ができるまで滴下−練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とした。滴下に使用した亜麻仁油の量から吸油量(ml/100g)を算出した。
(5)有機顔料含有量評価方法
有機顔料含有脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子サンプルをN−メチルピロリドン(NMP)に溶解し、その溶液のUV−VIS吸光度と別途用意した有機顔料の標準サンプルから算出される検量線を用い、定量した。
使用機器:日本分光株式会社製 紫外可視赤外分光光度計V−560
測定波長:449nm(Lithol Rubine BCAの定量の場合)。
検量線サンプル:Lithol Rubine BCAのそれぞれ0.001質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.01質量%のNMP溶液を調整し、検量線に使用した。
有機顔料含有脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子サンプルをN−メチルピロリドン(NMP)に溶解し、その溶液のUV−VIS吸光度と別途用意した有機顔料の標準サンプルから算出される検量線を用い、定量した。
使用機器:日本分光株式会社製 紫外可視赤外分光光度計V−560
測定波長:449nm(Lithol Rubine BCAの定量の場合)。
検量線サンプル:Lithol Rubine BCAのそれぞれ0.001質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.01質量%のNMP溶液を調整し、検量線に使用した。
測定サンプル:測定サンプルは吸光度が1を超えない範囲に濃度調整を行った。例えば、実施例6であれば、NMP4gに対し、10mgの顔料含有脂肪族ポリエステル樹脂微粒子を溶解し、その溶液から有機顔料含有量を定量した。
(実施例1)<融解エンタルピー5J/g以上のポリ乳酸微粒子の製造方法1>
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を39.4g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が8.8μmで、粒子径分布指数が1.23のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は473ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図1に示す。
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を39.4g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が8.8μmで、粒子径分布指数が1.23のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は473ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図1に示す。
(実施例2)<融解エンタルピー5J/g以上のポリ乳酸微粒子の製造方法2>
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体4%、重量平均分子量(PMMA換算)15万、融解エンタルピー33.45J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を41.6g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が11.5μmで、粒子径分布指数が1.43のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は409ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図2に示す。
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体4%、重量平均分子量(PMMA換算)15万、融解エンタルピー33.45J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を41.6g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が11.5μmで、粒子径分布指数が1.43のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は409ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図2に示す。
(実施例3)<融解エンタルピー5J/g以上のポリ乳酸微粒子の製造方法3>
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、常温まで30分かけて降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を38.7g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が13.1μmで、粒子径分布指数が1.45のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は422ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図3に示す。
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、常温まで30分かけて降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を38.7g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が13.1μmで、粒子径分布指数が1.45のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は422ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図3に示す。
(実施例4)<融解エンタルピー5J/g以上のPHBH微粒子の製造方法>
200mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]3.5g(PHBH、アオニレックスX131A カネカ(株)製 融解エンタルピー26.70J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル46.5gを加え、内温が120℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を70℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)として50質量%エタノール水溶液50gを0.42g/分の速度で連続滴下した。全量の50質量%エタノール水溶液を入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール50gで洗浄し濾別した。得られたケークを水50gにて洗浄し、濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を2.84g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が11.7μmで、粒子径分布指数が1.35のPHBH微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は270ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノール水溶液に対するPHBHの溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図4に示す。
200mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ[3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート]3.5g(PHBH、アオニレックスX131A カネカ(株)製 融解エンタルピー26.70J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル46.5gを加え、内温が120℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を70℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)として50質量%エタノール水溶液50gを0.42g/分の速度で連続滴下した。全量の50質量%エタノール水溶液を入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール50gで洗浄し濾別した。得られたケークを水50gにて洗浄し、濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を2.84g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が11.7μmで、粒子径分布指数が1.35のPHBH微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は270ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノール水溶液に対するPHBHの溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図4に示す。
(実施例5)<融解エンタルピー5J/g以上のポリ乳酸微粒子の製造方法4>
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸32.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、マロン酸ジメチル368.0gを加え、内温が100℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を26.9g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が12.5μmで、粒子径分布指数が1.31のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は371ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図5に示す。
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸32.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、マロン酸ジメチル368.0gを加え、内温が100℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を26.9g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が12.5μmで、粒子径分布指数が1.31のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は371ml/100gであった。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図5に示す。
(実施例6)<有機顔料を含有した融解エンタルピー5J/g以上のポリ乳酸微粒子の製造方法>
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、有機顔料としてLithol Rubine BCA(赤色202号、ジアゾ基を分子内に含有したもの)8.8gを入れ、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。実施例6における脂肪族ポリエステル樹脂微粒子中の所望する顔料含有量を18.7質量%としたので、上記顔料重量8.8gは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の20質量%に相当し、したがって、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子中の所望する顔料含有量の1.07倍混合したことになる。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の赤色固体を39.0g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が11.7μmで、粒子径分布指数が2.03のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は324ml/100gであった。有機顔料の含有率をUV−VISで評価した結果、18.7質量%の有機顔料が含有されていた。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図6に示す。
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融解エンタルピー46.34J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、有機顔料としてLithol Rubine BCA(赤色202号、ジアゾ基を分子内に含有したもの)8.8gを入れ、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。実施例6における脂肪族ポリエステル樹脂微粒子中の所望する顔料含有量を18.7質量%としたので、上記顔料重量8.8gは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の20質量%に相当し、したがって、脂肪族ポリエステル樹脂微粒子中の所望する顔料含有量の1.07倍混合したことになる。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を60℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、常温まで降温し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール500gで洗浄し濾別した。得られたケークを50℃の温度で10時間真空乾燥を行い、粉体状の赤色固体を39.0g得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径が11.7μmで、粒子径分布指数が2.03のポリ乳酸微粒子であった。亜麻仁油の吸油量は324ml/100gであった。有機顔料の含有率をUV−VISで評価した結果、18.7質量%の有機顔料が含有されていた。本実施例で用いた貧溶媒(C)であるエタノールに対するポリ乳酸の溶解度(常温)は、0.1質量%以下であった。得られた微粒子の走査型電子顕微鏡写真を、図6に示す。
(比較例1)<融解エンタルピー5J/g未満のポリ乳酸微粒子の製造方法>
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体12%、重量平均分子量(PMMA換算)15万、融解エンタルピー0J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を40℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌したところ、ポリ乳酸が系内で1000μm以上の塊状物となり、微粒子化することはできなかった。
1000mlの4口フラスコの中に、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸44.0g(D体12%、重量平均分子量(PMMA換算)15万、融解エンタルピー0J/g)、脂肪族ジカルボニル化合物(B)として、アセト酢酸エチル356.0gを加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を40℃に下げた。この際、系内は均質な溶液が形成されていた。引き続き、貧溶媒(C)としてエタノール400gを3.33g/分の速度で連続滴下した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌したところ、ポリ乳酸が系内で1000μm以上の塊状物となり、微粒子化することはできなかった。
Claims (10)
- 融解エンタルピーが5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解し均質な溶液とし、前記均質な溶液に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 融解エンタルピーが5J/g以上である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、脂肪族ジカルボニル化合物(B)からなる溶媒に溶解し均質な溶液とし、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液に貧溶媒(C)を接触させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる請求項1記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 顔料(D)の存在下で、前記均質な溶液の温度を低下させることで脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させる請求項2記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)を、加熱溶解して均質な溶液とする請求項1〜4いずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 脂肪族ジカルボニル化合物(B)が、β−ケトエステル化合物、β−ジケトン化合物およびβ−ジエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 脂肪族ジカルボニル化合物(B)が、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸デシル、アセチルアセトン、プロピオニルアセトン、マロン酸ジメチルおよびマロン酸ジエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 脂肪族ポリエステル樹脂(A)の貧溶媒(C)が、エタノール、メタノールおよび水の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1、3、5〜7のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 顔料(D)が有機顔料である請求項3、4、5〜8のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
- 顔料(D)がアゾ系顔料である請求項3、4、5〜9のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂微粒子の製造方法。
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