JP7014063B2 - モルタル・コンクリート用混和材、これを含むセメント組成物、モルタル組成物及びコンクリート組成物、並びに、モルタル硬化物及びコンクリート硬化物の製造方法 - Google Patents

モルタル・コンクリート用混和材、これを含むセメント組成物、モルタル組成物及びコンクリート組成物、並びに、モルタル硬化物及びコンクリート硬化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、モルタル・コンクリート用混和材、これを含むセメント組成物、モルタル組成物及びコンクリート組成物、並びに、モルタル硬化物及びコンクリート硬化物の製造方法に関する。
近年、建設業界における就業者不足又は高齢化等の問題から、コンクリート製品の活用の検討が進みつつあり、将来的な需要の増加が予想される。需要の増加に伴い、製品製造時の効率化への要求は高まると予想され、特に型枠回転率の向上により、生産性を向上させることは重要な課題と考えられる。型枠回転率向上のため、早期脱型を可能とする技術としては、混和材の利用に加え、高温条件での養生によって短時間で脱型強度を実現する技術(特許文献1)や、早期強度発現に優れるセメントを活用する技術(特許文献2)がある。
特開平10-101455号公報 特開2000-301531号公報
短時間で脱型強度を実現するため、高い養生温度(例えば、80℃程度)を設定した場合、特に冬期ではこの温度を維持し続けることが技術的に困難であり、意図した脱型強度が得られないケースがある。混和材の添加によって早期に強度を得ようとする場合、流動性の経時的な変化が大きいため、流動性を制御するために多量の減水剤を使用する必要があることや、練混ぜ直後において過度に流動する状態とすることが必要となることがある。あるいは、早期強度発現に優れるセメントを活用することによって、早期に強度を得ることも考えられるが、設備上の問題からこのようなセメントを保管できない工場も多いため、その適用が制限される場合がある。
本発明は、モルタル・コンクリート用混和材であって、特殊なセメントを適用しなくても、蒸気養生において一般に適用される温度(例えば、50~70℃程度)の養生条件で早期に十分な脱型強度を得ることができるとともに、モルタル組成物及びコンクリート組成物の流動性の経時的変化に及ぼす影響が十分に小さい混和材を提供することを目的とする。また、本発明は、この混和材を含むセメント組成物、モルタル組成物及びコンクリート組成物、並びに、モルタル硬化物及びコンクリート硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、特定の材料を所定の組合せで混合して得た混和材が上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係るモルタル・コンクリート用混和材は、(A)早強ポルトランドセメントと、(B)半水石膏及び無水石膏の少なくとも一方の石膏と、(C)珪酸ナトリウムと、(D)硫酸アルミニウムとを含み、当該混和材における上記(A)~(D)の四つの材料の合計質量20kgを基準として、早強ポルトランドセメントの含有量をAkg/20kg、上記石膏の含有量をBkg/20kg、珪酸ナトリウムの含有量をCkg/20kg、硫酸アルミニウムの含有量をDkg/20kgとしたとき、以下の(1)~(4)の不等式で表される全ての条件を満たす。
10≦0.00083×A+0.24212×B+0.87668×C+1.4978×D+0.03276×A×B+5.65…(1)
3≦B<16…(2)
0<C<2…(3)
0<D<2…(4)
早期強度発現性を向上すべきセメント(例えば、普通ポルトランドセメント)に対して適量の上記混和材を配合してモルタル組成物又はコンクリート組成物を調製することにより、蒸気養生において一般に適用される温度の養生条件で早期に十分な強度を有する硬化物を得ることができ、型枠回転率を向上することができる。
本発明に係るセメント組成物は、普通ポルトランドセメントと、上記混和材とを含み、普通ポルトランドセメント100質量部に対して上記混和材の含有量が4~8質量部である。本発明に係るモルタル組成物は、普通ポルトランドセメントと、上記混和材と、細骨材と、水とを含み、普通ポルトランドセメント100質量部に対して混和材の含有量が4~8質量部であり且つ細骨材の含有量が150~250質量部であり、水セメント比が40~55質量%である。本発明に係るコンクリート組成物は、普通ポルトランドセメントと、上記混和材と、細骨材と、粗骨材と、水とを含み、普通ポルトランドセメント100質量部に対して混和材の含有量が4~8質量部であり、細骨材の含有量が150~250質量部であり且つ粗骨材の含有量が200~350質量部であり、水セメント比が40~55質量%である。
本発明に係るセメント組成物等によれば、普通ポルトランドセメント100質量部に対して4~8質量部の上記混和材を添加することで、蒸気養生において一般に適用される温度の養生条件で早期に十分な強度を有する硬化物を得ることができ、型枠回転率を向上することができる。この混和材の添加量は、従来の混和材の添加量と同等レベルであり、実機プラントでの作業に適した量である。本発明に係るモルタル組成物及びコンクリート組成物は、混和材が添加しない組成物と比較して流動性の経時的変化が同等又は差があったとしても有意な差ではないため、この点でも実機プラントでの作業性に優れるという利点がある。
本発明に係るモルタル硬化物又はコンクリート硬化物の製造方法は、温度50~70℃、養生時間3~4時間の条件で上記モルタル組成物又は上記コンクリート組成物を蒸気養生する工程を含む。この製造方法によれば、3~4時間の養生で十分な強度を有する硬化物を得ることができ、型枠回転率を向上することができる。
本発明によれば、モルタル・コンクリート用混和材であって、特殊なセメントを適用しなくても、蒸気養生において一般に適用される温度の養生条件で早期に離型強度を得ることができるとともに、モルタル組成物及びコンクリート組成物の流動性の経時的変化に及ぼす影響が十分に小さい混和材が提供される。また、本発明によれば、この混和材を含むセメント組成物、モルタル組成物及びコンクリート組成物、並びに、モルタル硬化物及びコンクリート硬化物の製造方法が提供される。
図1はコンクリートのスランプとモルタルのフロー値との関係を示すグラフである。 図2は混和材を構成する各成分の三角図の一例(無水石膏の含有量が7kg/20kgの場合)である。 図3は優れた性能を有する混和材の組成を示す三角図の一例(無水石膏の含有量が3.0kg/20kgの場合)である。 図4は優れた性能を有する混和材の組成を示す三角図の一例(無水石膏の含有量が7.0kg/20kgの場合)である。 図5は優れた性能を有する混和材の組成を示す三角図の一例(無水石膏の含有量が15.0kg/20kgの場合)である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<モルタル・コンクリート用混和材>
本実施形態に係るモルタル・コンクリート用混和材は、実施例の欄において詳細に説明する評価試験に基づくものである。本実施形態に係るモルタル・コンクリート用混和材は、以下の(A)~(D)の材料を含み、これらの四つの材料の合計質量20kgを基準として、早強ポルトランドセメントの含有量をAkg/20kg、上記石膏の含有量をBkg/20kg、珪酸ナトリウムの含有量をCkg/20kg、硫酸アルミニウムの含有量をDkg/20kgとしたとき、(1)~(4)の不等式で表される全ての条件を満たす。
(A)早強ポルトランドセメント
(B)半水石膏及び無水石膏の少なくとも一方の石膏
(C)珪酸ナトリウム
(D)硫酸アルミニウム
10≦0.00083×A+0.24212×B+0.87668×C+1.4978×D+0.03276×A×B+5.65…(1)
3≦B<16…(2)
0<C<2…(3)
0<D<2…(4)
上記式(1)の右辺にA~Dの値を代入して算出される値は、所定の条件(温度及び時間)で蒸気養生した後のコンクリート組成物の硬化物の圧縮強度(脱型強度、単位:N/mm)の推定値である。つまり、式(1)は脱型強度10N/mm以上を達成できる混和材の組成に関する不等式である。なお、式(1)は、後述の実施例及び比較例に係る混和材を使用して調製したモルタル組成物(セメント:普通ポルトランドセメント、水セメント比:45質量%、高性能AE減水剤添加率:0.3質量%)を内容積196.25mLの型枠内に流し込み、これを20℃に設定された恒温室内で30分にわたって前置き養生を行った後、昇温過程を設けず、65℃の槽内で3時間にわたって蒸気養生した後に測定した圧縮強度(脱型強度)の結果に基づいて導出されたものである。
本実施形態に係る混和材は、上記脱型強度が10~15N/mm(より好ましくは11~13N/mm)であることが好ましい。換言すれば、混和材の組成は、上記式(1)の右辺の値が10~15(より好ましくは11~13)の範囲であることが好ましい。脱型時の硬化物の強度が10N/mm未満であると強度不足であり、他方、15N/mmを越えると初期強度が出すぎであり、長期強度の伸びが不十分となる傾向にある。
所定量の上記混和材を、例えば、普通ポルトランドセメントに配合することで早期強度発現性が著しく向上する。すなわち、上記混和材を使用して調製したモルタル組成物又はコンクリート組成物は、温度50~70℃程度の温度条件で、3~4時間程度の短時間の蒸気養生を行うことで、脱型に十分な強度(10N/mm以上)を得ることができる。以下、混和材を構成する各成分について説明する。
(早強ポルトランドセメント)
早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントと比較して、初期強度の発現性に優れるCSの含有率が比較的高く、ブレーン比表面積が大きいセメントである。早強ポルトランドセメントを混和材の一成分とすることで、少量使用であっても脱型強度向上への優れた効果が期待できるため、他の成分の使用量を低減できるとともに、モルタル又はセメントの流動性の経時的な変化への影響を十分に抑制できる。
早強ポルトランドセメントのボーグ式で算出される鉱物組成は、例えば、以下の範囲であればよい。すなわち、CS量は、54~69質量%であり、58~66質量%又は60~64質量%であってもよい。CS量は、7~19質量%であり、8~17質量%又は9~14質量%であってもよい。CA量は、7~12質量%であり、8~11質量%又は9~10質量%であってもよい。CAF量は、7.5~10質量%であり、7.7~9.0質量%又は8.0~8.5質量%であってもよい。早強ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、例えば、3300cm/g以上であり、好ましくは4000~5000cm/gであり、より好ましくは4400~4700cm/gである。なお、セメントのブレーン表面積はJIS R5201「セメントの物理試験方法」に記載の方法に準拠して測定することができる。
早強ポルトランドセメントの含有率は、混和材の全質量を基準で、好ましくは15質量%以上80質量%未満(3≦A<16)であり、より好ましくは25質量%以上65質量%未満(5≦A<13)である。早強ポルトランドセメントの含有率がこの範囲であることで、混和材をモルタル又はセメントに配合することによって得られる種々の効果(減水剤使用量の低減、スランプの経時的変化の抑制及び脱型強度)がバランスよく奏される。なお、括弧内に記載のAの範囲は上記(A)~(D)の四つの材料の合計質量20kgを基準としたものである。以下、括弧内のB,C,Dの範囲についても同様である。
(石膏)
石膏は、半水石膏及び無水石膏のいずれであってもよく、これらを併用してもよい。これらの石膏を混和材の成分とすることで、脱型強度を向上することができる。石膏(半水石膏及び無水石膏の合計量)の含有率は、混和材の全質量を基準で、好ましくは15質量%以上80質量%未満(3≦B<16)であり、より好ましくは20質量%以上65質量%未満(4≦B<13)であり、更に好ましくは30質量%以上55質量%未満(6≦B<11)である。石膏の含有率がこの範囲であることで、残存石膏による遅れ膨脹破壊のリスクを回避して脱型強度の向上を図ることができる。
半水石膏及び無水石膏のブレーン比表面積は、早期強度発現性の観点から、好ましくは3000cm/g以上であり、より好ましくは3500~10000cm/gであり、更に好ましくは4000~8000cm/gである。なお、石膏のブレーン表面積はJIS R5201に記載の方法に準拠して測定することができる。
(珪酸ナトリウム)
珪酸ナトリウム(「ケイ酸ソーダ」とも称される。)は、モルタル組成物等に急結作用を付与するため、その水溶液(水ガラス)が使用されることはあるが、モルタル又はコンクリート用の混和材としては通常使用されない。すなわち、モルタル又はコンクリートに珪酸ナトリウムを多量に配合すると、モルタル又はコンクリート中のアルカリ総量が著しく増加することから、アルカリシリカ反応発生の懸念が高まる。このため、モルタル・コンクリート用混和材の一成分として使用することは通常想定されていない。しかし、本発明者らの後述の評価試験によれば、添加量が少量であれば、脱型強度の改善に非常に効果的である。
珪酸ナトリウムの含有率は、混和材の全質量を基準で、好ましくは0質量%超10質量%未満(0<C<2)であり、より好ましくは1.0質量%以上7.5質量%以下(0.2≦C≦1.5)であり、更に好ましくは2.5質量%以上6.0質量%以下(0.5≦C≦1.2)である。珪酸ナトリウムの含有率がこの範囲であることで、アルカリ量を過度に増やすことなく、脱型強度の向上を図ることができる。
珪酸ナトリウムは、混和材の商品形態及び作業性の観点から、粉末であることが好ましく、その平均粒径は1~300μm程度であればよく、1~200μm又は1~100μmであってよい。珪酸ナトリウムの平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置によって測定することができる。珪酸ナトリウムを構成するSiOとNaOの比(SiO/NaO)は、早期強度発現性の観点から、1~3であることが好ましく、1.5~2.5又は2.0~2.5であってもよい。
(硫酸アルミニウム)
硫酸アルミニウムは、凝結促進効果があり、多量の使用によって練混ぜ後の流動性の保持が困難となる場合がある。流動性が著しく低下した状態で型枠への打込みを行った場合には、未充填部が生じる等によって、強度の低下や製品の美観性が損なわれる等の問題につながる場合がある。よって、硫酸アルミニウムは早期強度の付与に効果が得られる範囲内で添加量はなるべく少量とすることが好ましい。
硫酸アルミニウムの含有率は、混和材の全質量を基準で、好ましくは0質量%超10質量%未満(0<D<2)であり、より好ましくは1質量%超5質量%未満(0.2<D<1)であり、更に好ましくは1.5質量%超3質量%未満(0.3<D<0.6)である。珪酸ナトリウムの含有率がこの範囲であることで、添加したモルタル・コンクリートの流動性を極端に低下させることなく、脱型強度の向上を図ることができる。
硫酸アルミニウムは、混和材の商品形態及び作業性の観点から、粉末であることが好ましく、その平均粒径は30μm以下であることが好ましく、8~24μm又は12~16μmであってよい。硫酸アルミニウムの平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置によって測定することができる。硫酸アルミニウムの比表面積は、早期強度発現性の観点から、好ましくは10m/g以下であり、より好ましくは1~8m/gであり、更に好ましくは3~6m/gである。なお、硫酸アルミニウムの表面積はJIS R5201に記載の方法に準拠して測定することができる。
<セメント組成物>
実施形態に係るセメント組成物は、普通ポルトランドセメントと、上記混和材とを含み、普通ポルトランドセメント100質量部に対して上記混和材の含有量が4~8質量部である。このセメント組成物等によれば、普通ポルトランドセメント100質量部に対して4~8質量部の上記混和材を添加することで、蒸気養生において一般に適用される温度の養生条件で早期に離型強度を得ることができる。この混和材の添加量は、従来の混和材の添加量と同等レベルであり、実機プラントでの作業に適した量である。
普通ポルトランドセメントのボーグ式で算出される鉱物組成は、例えば、以下の範囲であればよい。すなわち、CS量は、42~62質量%であり、50~61質量%又は55~60質量%であってもよい。CS量は、14~37質量%であり、13~25質量%又は12~18質量%であってもよい。CA量は、7~11質量%であり、8~10.5質量%又は9~10質量%であってもよい。CAF量は、7~13質量%であり、8~11質量%又は8.5~10質量%であってもよい。普通ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、例えば、3000cm/g以上であり、好ましくは3100~3500cm/gであり、より好ましくは3200~3350cm/gである。
なお、本実施形態に係る混和材の適用対象は、普通ポルトランドセメントに限られず、例えば、高炉セメント、フライアッシュセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントに対して適用してもよい。
<モルタル組成物及びコンクリート組成物>
本実施形態に係るモルタル組成物は、上記セメント組成物に細骨材及び水を混合したものである。すなわち、本実施形態に係るモルタル組成物は、普通ポルトランドセメントと、上記混和材と、細骨材と、水とを含み、普通ポルトランドセメント100質量部に対して混和材の含有量が4~8質量部であり且つ細骨材の含有量が150~300質量部(より好ましくは180~250質量部)であり、水セメント比が40~65質量%(より好ましくは45~55質量%)である。
本実施形態に係るコンクリート組成物は、上記セメント組成物に細骨材、粗骨材及び水を混合したものである。すなわち、本実施形態に係るコンクリート組成物は、普通ポルトランドセメントと、上記混和材と、細骨材と、粗骨材と、水とを含み、普通ポルトランドセメント100質量部に対して混和材の含有量が4~8質量部であり、細骨材の含有量が150~300質量部(より好ましくは180~250質量部)であり且つ粗骨材の含有量が200~400質量部(より好ましくは250~350質量部)であり、水セメント比が40~65質量%(より好ましくは45~55質量%)である。
本実施形態に係るモルタル硬化物又はコンクリート硬化物の製造方法は、温度50~70℃、養生時間3~4時間の条件で上記モルタル組成物又は上記コンクリート組成物を蒸気養生する工程を含む。この製造方法によれば、3~4時間の養生で十分な強度を有する硬化物を得ることができ、型枠回転率を向上することができる。
実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料の準備]
評価試験に供するモルタル又はコンクリートを作製するため、表1及び表2に示す材料を準備した。
Figure 0007014063000001
Figure 0007014063000002
試験に用いたモルタルの配合を表3に示し、試験に用いたコンクリートの配合を表4に示す。なお、モルタル及びコンクリートは、20℃の恒温室内で30分前置き養生を行った後、昇温過程を設けず、65℃に温度設定された槽内で3時間にわたって蒸気養生を行った。
Figure 0007014063000003
Figure 0007014063000004
1.混合材配合材料候補を単独添加した場合の効果確認
表3に示したモルタル配合によって、表2に示した各候補材料を使用した場合の流動性と養生後の圧縮強度について評価を行った。目標とする0打フローと15打フローは、図1に示す関係を予め把握し、表4に示す目標スランプ(15.0cm)が得られる範囲として設定した。
表5に各候補材料の添加率一定とした場合の試験結果を示す。各候補材料の使用量を11kg/m、減水剤の添加率をセメントと混和材の合計質量100%に対して0.3%として試験を行い、無添加の場合との比較によって評価結果を判定した。評価の基準は以下のとおりとした。
A:流動性を満足し、脱型強度が無添加の1.3倍以上
B:流動性が小さいが、脱型強度が無添加の1.3倍以上
C:流動性が小さく、脱型強度が無添加の1.3倍未満
その結果、無水石膏(No.12,13)、半水石膏(No.14)、珪酸ナトリウム(No.21~23)及び硫酸アルミニウム(No.27)の四種類については脱型強度改善効果が得られる可能性があると判断した。なお、生石灰(No.10)は目標値を満足したが、保管時の吸湿によって発熱が認められたため、安全上の課題があるとの判断し(評価「C」とし)、検討から除外した。
珪酸ナトリウムのうち、No.21,22の珪酸ナトリウムは、流動性が目標値に至らなかったが、表6に示す珪酸ナトリウム(I号)の添加量を変えた実験によれば、目標とする流動性が得られる使用量でも脱型強度の改善効果が確認されたため、検討対象として選定した。表6に記載の評価の基準は、表5に記載の基準と同じとした。
Figure 0007014063000005
Figure 0007014063000006
2.選定した混和材配合材料を混合添加した場合の効果確認
混合材配合材料候補を単独使用した場合の効果確認試験の結果を参考として、無水石膏、珪酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムの三種類を選定し、これらを組合せた水準について検討を行った。なお、複数の混和材配合材料の総量は、モルタル・コンクリートに添加する際、実機プラント等での作業性を考慮し、紙袋1袋に収まるように20~25kgが好ましい。本検討では総量が20kgとなるように調整して検討した。
珪酸ナトリウムは、その添加量が少量であれば、脱型強度の改善に非常に効果的である。具体的には、単位セメント量380kg程度を想定した場合には、珪酸ナトリウムの単位量は2.0kg/m以下(混和材における珪酸ナトリウムの含有量:2.0kg/20kg以下)であることが好ましい。なお、混和材は、粉体製品として紙袋で供給されることから、珪酸ナトリウムを混和材の一成分として使用する場合には、粉体の珪酸ナトリウムを使用することが好ましい。
硫酸アルミニウムは早期強度の付与に効果が得られる範囲内で添加量はなるべく少量とすることが好ましい。具体的には、単位セメント量380kg程度を想定した場合には、硫酸アルミニウムの単位量は2.0kg以下(混和材における硫酸アルミニウムの含有量:2.0kg/20kg以下)であることが好ましい。また、他の材料と混合してモルタル・コンクリートに添加する場合、粉体製品として紙袋で供給されるため、無水物の硫酸アルミニウムを使用することが好ましい。
珪酸ナトリウムや硫酸アルミニウムの使用量を制限した場合、無水石膏の使用量は最大で16kg程度となる。無水石膏を多量に添加した場合、モルタル・コンクリート中に未反応で石膏が残存した場合には、遅れ膨脹破壊が生じる懸念がある。このため、コンクリート中の全SO量を17kg以下とするのがよい。具体的には、単位セメント量380kg程度を想定した場合、無水石膏の使用量は16kg以下であることが望ましい。
このため、無水石膏の一部を他材料で置換することを検討し、早強ポルトランドセメントを候補とした。表3のモルタル配合において使用セメントを早強ポルトランドセメントに変更した場合、脱型強度は23.4N/mmとなり、これは普通ポルトランドセメント使用時の約5倍に相当する。よって、少量使用であっても脱型強度向上への効果が期待できること、表2に示す混和材配合材料候補よりも混和剤添加量や流動性の経時的な変化への影響が小さく費用対効果に優れること等から、無水石膏の代替品として検討を行った。
選定した混和材配合材料(早強ポルトランドセメント、無水石膏、珪酸ナトリウム及び硫酸アルミニウム)を混合添加した場合の効果確認結果を表7に示す。試験は表3に示すモルタル配合とし、総量20kgとなる各種組合せの混和材をこれに添加し、15打フローと脱型強度を確認した。なお、高性能AE減水剤は、無添加の場合と15打フローが同等となるように添加量を調整した。
実験の結果、高性能AE減水剤の添加量が過度に増加せず(混和材無添加の場合の1.2倍以下)、脱型強度が10N/mm以上となる水準を得た(No.31~33、No.35~37及びNo.42~45)。ただし、No.31~33では、無水石膏が16kg以上となることから、No.35~37及びNo.42~45が好ましい。全体の質量が20kg(一袋分)の混和材において、珪酸ナトリウムの使用量は1.0kg程度が好ましく、また硫酸アルミニウムの使用量は1.0~0.5kg程度が好ましい。
上記モルタルでの評価試験結果を活用し、統計解析ソフトJMP(登録商標、SAS Institute Japan製)を用いて回帰分析を行った。これにより、表7に示す混和材を構成する四つの材料(早強ポルトランドセメント、無水石膏、珪酸ナトリウム及び硫酸アルミニウム)の合計質量20kgを基準として、早強ポルトランドセメントの含有量をAkg/20kg、無水石膏の含有量をBkg/20kg、珪酸ナトリウムの含有量をCkg/20kg、硫酸アルミニウムの含有量をDkg/20kgとし、目標とする脱型強度が得られる材料の組合せを、おおよそ予測するための以下の式(1)を得た。式(1)を活用すれば、例えば、図2に示すような三角図を得ることが可能となる。三角図中の数値(9~14)は脱型強度(N/mm)の推定値である。なお、A+B+C+Dの値は上述のとおり20(kg)である。
10≦0.00083×A+0.24212×B+0.87668×C+1.4978×D+0.03276×A×B+5.65…(1)
上記四つの材料のうち、無水石膏、珪酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムの三つの各材料は、実機プラント等での投入作業や物性への影響から、式(2)~(4)の不等式でそれぞれ表される条件を満たすべきである。
3≦B<16…(2)
0<C<2…(3)
0<D<2…(4)
表7に式(1)の右辺の値,並びに、実施例及び比較例の区別を記載した。
Figure 0007014063000007

※混和材が無添加の試験(No.0)において、セメントと混和材の合計質量100%に対する減水剤の添加量0.3%を基準とした比率
3.石膏種類の影響確認
No.36の水準によって、石膏を無水と半水とした場合の比較を行った結果を表8に示す。減水剤の添加率は、練混ぜ後の0打フロー、15打フローが一定となるように調整し、脱型強度の比較を行った。無水石膏については、特に銘柄の影響が認められず、流動性と脱型強度はほぼ同等であった。また、半水石膏はブレーン比表面積が9000cm/gを超えるが、本検討の使用範囲では流動性に大きな影響は認められなかった。石膏種類の比較の結果によれば、その影響は大きくないと判断される。なお、石膏のブレーン比表面積は、小さすぎると未水和粒子が残存して遅れ膨脹が生じる可能性があるため、3000cm/g以上が好ましいと判断される。
Figure 0007014063000008

※混和材が無添加の試験(No.0)において、セメントと混和材の合計質量100%に対する減水剤の添加量0.3%を基準とした比率
4.珪酸ナトリウムの銘柄比較
珪酸ナトリウムについても、No.36の水準によって、銘柄が異なった場合の比較を行った。減水剤の添加率は、練混ぜ後の0打フロー、15打フローが一定となるように調整し、脱型強度の比較を行った。評価結果を表9に示す。珪酸ナトリウムI号及びII号については、特に銘柄の影響は認められなかった。ただし、珪酸ナトリウムIV号を使用した場合には、脱型強度がやや低くなる傾向が認められた。これは、珪酸ナトリウムのSiO/NaOが影響していると考えられる。10N/mm程度の強度を得るためには、SiO/NaOが2.0~2.5の珪酸ナトリウム(珪酸ナトリウムI号及びII号)を使用することが好ましいと判断される。
Figure 0007014063000009

※混和材が無添加の試験(No.0)において、セメントと混和材の合計質量100%に対する減水剤の添加量0.3%を基準とした比率
5.コンクリート試験による混和材配合材料を混合添加した場合の効果確認
混和材配合材料を混合添加した場合のモルタル試験によって高性能AE減水剤の使用量が過度に大きくならず、脱型強度が10N/mm以上となる水準が得られた。ただし、モルタル試験では、流動性の経時的な変化に問題がない組合せを判断できないため、コンクリート試験による評価を行った。評価には表4に示すコンクリート配合を用いた。
上記式(1)~(5)を活用して脱型強度が10N/mm以上となり、高性能AE減水剤の使用量が過度に増加せず(混和材無添加の場合の1.2倍以下)、スランプの経時的な変化が小さい範囲を限定できる混和材の組合せ範囲の限定を行った。
コンクリートでの試験水準と評価結果を表10に示す。また、無水石膏が3.0kg、7.0kg及び15.0kgの場合の減水剤使用量、スランプの経時的変化及び脱型強度のバランスが取れた範囲を図3~5に示す。
全体の質量が20kg(一袋分)の混和材において、無水石膏の量が3.0kgであるNo.51~54の試験例のうち、実施例に分類されるNo.53は早強ポルトランドセメントの配合量が15kgであるとともに、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムとを併用し且つこれらの合計量が2kgである。No.53に係る混和材を含むコンクリート組成物は蒸気養生の一般な養生条件(65℃・3時間)で十分な強度に達するとともに、減水剤の添加量を過剰に多くする必要がなく且つコンクリート組成物の流動性の経時的変化を十分に小さくすることができた。
全体の質量が20kg(一袋分)の混和材において、無水石膏の量が7.0kgであるNo.55~60の試験例のうち、実施例に分類されるNo.56,57,59は早強ポルトランドセメントの配合量が11~12kgであるとともに、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムとを併用し且つこれらの合計量が1~2kgである。No.56,57,59に係る混和材をそれぞれ含むコンクリート組成物は蒸気養生の一般な養生条件(65℃・3時間)で十分な強度に達するとともに、減水剤の添加量を過剰に多くする必要がなく且つコンクリート組成物の流動性の経時的変化を十分に小さくすることができた。
全体の質量が20kg(一袋分)の混和材において、無水石膏の量が10.0kgであるNo.61は早強ポルトランドセメントの配合量が8.5kgであるとともに、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムとを併用し且つこれらの合計量が1.5kgである。No.61に係る混和材を含むコンクリート組成物は蒸気養生の一般な養生条件(65℃・3時間)で十分な強度に達するとともに、減水剤の添加量を過剰に多くする必要がなく且つコンクリート組成物の流動性の経時的変化を十分に小さくすることができた。
全体の質量が20kg(一袋分)の混和材において、無水石膏の量が15.0kgであるNo.62~64の試験例のうち、実施例に分類されるNo.63は早強ポルトランドセメントの配合量が3.0kgであるとともに、珪酸ナトリウムと硫酸アルミニウムとを併用し且つこれらの合計量が2kgである。No.63に係る混和材を含むコンクリート組成物は蒸気養生の一般な養生条件(65℃・3時間)で十分な強度に達するとともに、減水剤の添加量を過剰に多くする必要がなく且つコンクリート組成物の流動性の経時的変化を十分に小さくすることができた。
Figure 0007014063000010

※混和材が無添加の試験(No.50)において、セメントと混和材の合計質量100%に対する減水剤の添加量0.3%を基準とした比率
以上より、混和材の総量を20kgとした場合、各材料の組合せとしては、石膏(半水石膏及び/又は無水石膏の合計量)が3~15kg(15~75質量部)、珪酸ナトリウムが0~2kg(0~10質量部)、硫酸アルミニウムが0~2kg(0~10質量部)、早強ポルトランドセメントが3~16kg(15~80質量部)の範囲にある。また、各材料の最適な組合せは式(1)~(5)によって決定できる。
また、汎用的な二次製品に適用されるモルタルやコンクリートの配合としては、水セメント比が40~65質量%程度が多く、単位セメント量としては300~450kg程度が多いため、セメント100質量部に対しての添加量は4~8質量部程度となる。

Claims (9)

  1. モルタル・コンクリート用混和材であって、
    (A)早強ポルトランドセメントと、
    (B)半水石膏及び無水石膏の少なくとも一方の石膏と、
    (C)珪酸ナトリウムと、
    (D)硫酸アルミニウムと、
    を含み、
    当該混和材における上記(A)~(D)の四つの材料の合計質量20kgを基準として、
    早強ポルトランドセメントの含有量をAkg/20kg、
    前記石膏の含有量をBkg/20kg、
    珪酸ナトリウムの含有量をCkg/20kg、
    硫酸アルミニウムの含有量をDkg/20kgとしたとき、
    以下の(1)~(4)の不等式で表される全ての条件を満たす、混和材。
    10≦0.00083×A+0.24212×B+0.87668×C+1.4978×D+0.03276×A×B+5.65…(1)
    3≦B<16…(2)
    0<C<2…(3)
    0<D<2…(4)
  2. 珪酸ナトリウムが粉末状であるとともに、SiO/NaOが1~3である、請求項1に記載の混和材。
  3. 硫酸アルミニウムが粉末状であるとともに、平均粒径が30μm以下であり且つ比表面積が3~6m/gである、請求項1又は2に記載の混和材。
  4. 前記石膏のブレーン比表面積が3000cm/g以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の混和材。
  5. 普通ポルトランドセメントと、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の混和材と、
    を含み、
    普通ポルトランドセメント100質量部に対し、前記混和材の含有量が4~8質量部であるセメント組成物。
  6. 普通ポルトランドセメントと、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の混和材と、
    細骨材と、
    水と、
    を含み、
    普通ポルトランドセメント100質量部に対し、前記混和材の含有量が4~8質量部であり、細骨材の含有量が150~300質量部であり、
    水セメント比が40~65質量%である、モルタル組成物。
  7. 普通ポルトランドセメントと、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の混和材と、
    細骨材と、
    粗骨材と、
    水と、
    を含み、
    普通ポルトランドセメント100質量部に対し、前記混和材の含有量が4~8質量部であり、細骨材の含有量が150~300質量部であり、粗骨材の含有量が200~400質量部であり、
    水セメント比が40~65質量%である、コンクリート組成物。
  8. 温度50~70℃、養生時間3~4時間の条件で請求項6に記載のモルタル組成物を蒸気養生する工程を含む、モルタル硬化物の製造方法。
  9. 温度50~70℃、養生時間3~4時間の条件で請求項7に記載のコンクリート組成物を蒸気養生する工程を含む、コンクリート硬化物の製造方法。
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