以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る半導体加工用シート1の断面図が示される。本実施形態に係る半導体加工用シート1は、基材10と、当該基材10の片面側に積層された中間層20と、当該中間層20における基材10とは反対の面側に積層された粘着剤層30と、当該粘着剤層30における中間層20とは反対の面側に積層された剥離シート40とを備える。なお、本実施形態に係る半導体加工用シート1において、剥離シート40は省略されてもよい。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10の材料を、熱機械分析装置を用いて荷重0.2gの下、10℃/分の昇温温度で23℃から120℃まで加熱したときの膨張率(%)と、基材10の厚さ(μm)との積が、-20%・μm以上、120%・μm以下である。なお、上記膨張率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
また、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が、0.05MPa以上、200MPa以下である。なお、本明細書における貯蔵弾性率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10における上記膨張率と厚さとの積が上述した範囲となるとともに、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が上述した範囲であることにより、加工時における半導体加工用シート1の振動を抑制しながらも、半導体加工用シート1が優れた柔軟性を有するものとなる。当該振動が抑制されることにより、半導体加工用シート1を半導体部材のダイシングに使用する場合には、形成される半導体チップのチッピングを抑制することができる。また、優れた柔軟性を有することにより、半導体加工用シート1を良好にエキスパンドすることが可能となる。さらに、半導体加工用シート1は、上述した物性を有する基材10および中間層20を備えることにより、加熱時における変形が抑制され、優れた耐熱性を発揮するものとなる。
なお、当該加熱の条件としては、加熱温度が、例えば、80℃以上であることが好ましく、特に100℃以上であることが好ましい。また、加熱温度は、300℃以下であることが好ましく、特に270℃以下であることが好ましい。加熱時間としては、例えば、10分以上であることが好ましく、特に30分以上であることが好ましい。また、加熱時間は、25時間以下であることが好ましく、特に10時間以下であることが好ましい。
基材10における上記膨張率と厚さとの積が、上述した範囲とならない場合、チッピングの発生、柔軟性の低下および加熱時の変形の発生といった問題の少なくとも1つが生じることとなる。特に、上記積が-20%・μm未満であると、これらの問題のうち、柔軟性が低下し、良好なエキスパンドを行うことができなくなる。また、上記積が120%・μmを超える場合には、上述した問題のうち、特に加熱時の変形が生じ易いものとなる。これらの観点から、上記積は、0%・μm以上であることが好ましく、特に40%・μm以上であることが好ましい。また、上記積は、110%・μm以下であることが好ましく、特に100%・μm以下であることが好ましい。
また、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が0.05MPa未満であると、加工時における半導体加工用シート1の振動を十分抑制することができないものとなり、ダイシングの際にはチッピングが発生するものとなる。また、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が200MPaを超える場合には、半導体加工用シート1の柔軟性が低下し、良好なエキスパンドを行うことができなくなる。このような観点から、中間層20の23℃における貯蔵弾性率は、0.1MPa以上であることが好ましく、特に0.2MPa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、10MPa以下であることが好ましく、特に1MPa以下であることが好ましい。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、粘着剤層30が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されたものである。これにより、活性エネルギー線を照射することで、粘着剤層30を硬化させ、半導体加工用シート1の粘着力を低下させることができる。そのため、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、活性エネルギー線を照射することにより、加工完了後の半導体部材を容易に分離させることが可能となる。
また、本実施形態に係る半導体加工用シート1は、加熱前後での粘着力の変化率が以下に記載する範囲となるものとなる。すなわち、半導体加工用シート1をシリコンウエハに貼付してなる積層体について、当該半導体加工用シート1に対して活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を硬化した後における、当該半導体加工用シートの当該シリコンウエハに対する粘着力をF1とし、
半導体加工用シート1をシリコンウエハに貼付してなる積層体について、当該半導体加工用シート1に対して活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を硬化し、続いて当該積層体を120℃で1時間加熱した後における、当該半導体加工用シートの当該シリコンウエハに対する粘着力をF2としたときに、
下記式(1)
粘着力変化率=(F2/F1)×100 …(1)
から算出される粘着力変化率が、2%以上、200%以下である。なお、上述した粘着力F1および粘着力F2の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、上述した粘着力変化率が上記範囲であることにより、半導体加工用シート1を加熱工程に供する場合であっても、当該工程の前後で粘着力が変化し難いものとなる。それにより、半導体加工用シート1の半導体部材に対する粘着力が、加熱によって過度に上昇することが抑制され、これにより、加工後の半導体部材を半導体加工用シート1から容易に分離することが可能となる。この点からも、本実施形態に係る半導体加工用シート1は、優れた耐熱性を発揮することができる。
上述した粘着力変化率が200%を超える場合には、加熱によって半導体加工用シート1の粘着力が過度に上昇してしまい、加工後の半導体部材の半導体加工用シート1からの分離が困難となったり、分離の際に、半導体部材に過度な負荷がかかり、半導体部材の破損が生じてしまう。この観点から、上述した粘着力変化率は、150%以下であることが好ましく、特に120%以下であることが好ましい。また、上述した粘着力変化率が2%未満である場合には、加熱によって半導体加工用シート1の粘着力が過度に低下してしまい、被着体となる半導体部材を半導体加工用シート1上に適切に保持できないものとなってしまう。この観点から、上述した粘着力変化率は、50%以上であることが好ましく、特に75%以上であることが好ましい。
以上の通り、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、上述した物性を達成することができる基材10、中間層20および粘着剤層30を備えることにより、これらの層の機能および性質が相まって、ダイシング時におけるチッピングの発生を抑制するとともに、優れた柔軟性を発揮し、さらには優れた耐熱性を発揮することができる。
1.半導体加工用シートの構成
(1)基材
本実施形態における基材10は、膨張率および厚さに関する前述した物性を満たす限り、特に限定されない。基材10としては、半導体加工用シートの基材として通常求められる性能を達成できるものが好ましく、このような観点から、基材10は、樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成されることが好ましい。
上記樹脂フィルムの具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;軟質ポリブチレンテレフタレートフィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリスチレンフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。基材10はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。上記の中でも、優れた柔軟性を示すという観点から、ポリプロピレンフィルムまたは軟質ポリブチレンテレフタレートフィルムが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
基材10の一方の面には、中間層20との密着性を向上させる目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
基材10は、上記樹脂フィルム中に、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
また、活性エネルギー線の照射により粘着剤層30を効率的に硬化させる観点から、基材10は活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
本実施形態における基材10では、前述した膨張率、すなわち、基材10を構成する材料について、熱機械分析装置を用いて荷重0.2gの下、10℃/分の昇温温度で23℃から120℃まで加熱したときの膨張率が、-10%以上であることが好ましい。また、当該膨張率は、2%以下であることが好ましい。上記膨張率が上述した範囲であることで、当該膨張率と基材10の厚さとの積を前述した範囲に調整し易くなるとともに、加熱による基材10の膨張が生じ難いものとなり、加熱による半導体加工用シート1の変形が効果的に抑制され、加熱を伴う加工をより良好に行うことが可能となる。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10の23℃における引張弾性率が、100MPa以上であることが好ましい。また、当該引張弾性率は、1000MPa以下であることが好ましい。上記引張弾性率が100MPa以上であることで、加工の際に半導体加工用シート1が振動し難いものとなり、半導体加工用シート1を用いて半導体部材のダイシングを行う場合には、ダイシング時のチッピングを効果的に抑制することが可能となる。また、上記引張弾性率が1000MPa以下であることで、半導体加工用シート1がより良好な柔軟性を有するものとなり、半導体加工用シート1がエキスパンドし易いものとなる。なお、上記引張弾性率の測定方法は、後述する実施例の欄に記載する通りである。
基材10は、融点が130℃以上の材料からなることが好ましく、特に融点が150℃以上の材料からなることが好ましく、さらには融点が180℃以上の材料からなることが好ましい。基材10を構成する材料の融点が130℃以上であることで、半導体加工用シート1を加熱する工程において基材10が加熱されたとしても、溶融して加熱テーブル等に固着してしまうことが抑制される。なお、基材10を構成する材料の融点の上限について特に制限はないものの、通常、基材10は、融点が500℃以下の材料からなることが好ましく、特に融点が400℃以下の材料からなることが好ましく、さらには融点が300℃以下の材料からなることが好ましい。
基材10の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましく、さらには30μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。基材10の厚さが上記範囲であることで、当該膨張率と基材10の厚さとの積を前述した範囲に調整し易くなる。特に、上記厚さが10μm以上であることで、加工の際に半導体加工用シート1が振動し難いものとなり、半導体加工用シート1を用いて半導体部材のダイシングを行う場合には、ダイシング時のチッピングを効果的に抑制することが可能となる。また、上記厚さが200μm以下であることで、半導体加工用シート1の柔軟性がより優れたものとなり、エキスパンドし易いものとなる。
(2)中間層
本実施形態における中間層20は、23℃における貯蔵弾性率が前述した範囲となるものである限り、特に限定されない。例えば、中間層20は、基材10を構成する樹脂フィルムとして前述したものであってもよい。しかしながら、23℃における貯蔵弾性率を前述した範囲に調整し易いという観点から、中間層20は、粘着剤から構成されることが好ましい。
中間層20を構成する粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤(以下「活性エネルギー線非硬化性粘着剤」という場合がある。)であってもよく、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤(以下「活性エネルギー線硬化性粘着剤」という場合がある。)であってもよいものの、23℃における貯蔵弾性率を前述した範囲に調整し易いという観点から、中間層20は、活性エネルギー線非硬化性粘着剤から構成されることが好ましい。
また、中間層20が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される場合、当該粘着剤は、活性エネルギー線が照射されておらず硬化していないものであってもよいものの、当該粘着剤は、活性エネルギー線の照射によって硬化したものであることが好ましい。すなわち、中間層20は、半導体加工用シート1を製造時において、活性エネルギー線が照射されており、それにより、得られる半導体加工用シート1では、中間層20を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤が既に硬化していることが好ましい。これにより、半導体加工用シート1に対して活性エネルギー線を照射する前後において、中間層20の物性や性状が維持され易くなり、本実施形態に係る半導体加工用シート1が前述した効果を安定して発揮し易いものとなる。
上記活性エネルギー線非硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、中間層20の23℃における貯蔵弾性率を前述した範囲に調整し易いという観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
中間層20が上記アクリル系粘着剤からなる場合、中間層20は、アクリル系共重合体を含有する粘着剤組成物から形成されたものであることが好ましい。当該アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位と、官能基含有モノマーから導かれる構成単位とを含むことが好ましい。
アクリル系共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましく用いられる。
特に、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびメタクリル酸メチルの少なくとも一方を使用することが好ましい。
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上の割合で含有する。また、アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、好ましくは99質量%以下、特に好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下の割合で含有する。
アクリル系共重合体の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用することが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アクリル酸を使用することが好ましい。
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系共重合体は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上の割合で含有する。また、アクリル系共重合体は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下の割合で含有する。
アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよび官能基含有モノマー以外のその他のモノマーを含んでもよい。
当該その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系共重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、重合法に関しては特に限定されず、一般的な重合法により重合することができる。
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましく、特に15万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150以下であることが好ましく、特に120以下であることが好ましく、さらには100以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
中間層20を形成するための粘着剤組成物は、上述したアクリル系共重合体とともに、架橋剤を含有することが好ましい。粘着剤組成物が架橋剤を含有することにより、中間層20において、アクリル系共重合体が架橋し、良好な三次元網目構造を形成することが可能となる。これにより、中間層20の23℃における貯蔵弾性率を前述した範囲に調整し易いものとなる。
架橋剤の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
上記イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものであることが好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
上述した粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには3質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、18質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましく、さらには12質量部以下であることが好ましい。
上述した粘着剤組成物は、本実施形態に係る半導体加工用シート1による前述した効果を損なわない限り、所望の添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着剤組成物を構成する添加剤に含まれないものとする。
上述した粘着剤組成物は、アクリル系重合体を製造し、得られたアクリル系重合体と、所望により、架橋剤と、添加剤とを混合することで製造することができる。
アクリル系重合体は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。当該重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
アクリル系重合体が得られたら、アクリル系重合体の溶液に、所望により、架橋剤、その他の添加剤、および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、粘着剤組成物の塗布液を得ることができる。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着剤組成物の濃度が10質量%以上、60質量%以下となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着剤組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着剤組成物は、アクリル系重合体の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布液となる。
中間層20が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される場合、当該活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、粘着剤層30を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤として後述するものを使用することができる。
中間層20は、活性エネルギー線の照射により粘着剤層30を効率的に硬化させる観点から、活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
中間層20の厚さは、20μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に80μm以下であることが好ましい。中間層20の厚さが20μm以上であることで、半導体加工用シート1の柔軟性がより優れたものとなり、エキスパンドし易いものとなる。また、上記厚さが100μm以下であることで、加工の際に半導体加工用シート1が振動し難いものとなり、半導体加工用シート1を用いて半導体部材のダイシングを行う場合には、ダイシング時のチッピングを効果的に抑制することが可能となる。
(3)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層30は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されたものである。当該粘着剤層30は、前述した粘着力変化率に関する条件を達成することができるとともに、半導体加工用シート1上で半導体部材を加工するのに適した粘着力を発揮できるものである限り、特に限定されない。
本実施形態における粘着剤層30は、エネルギー線硬化性を有しないポリマーと、少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する粘着剤組成物から形成されたものであることが好ましい。
また、本実施形態における粘着剤層30は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有する粘着剤組成物から形成されたものであることも好ましい。なお、当該粘着剤組成物は、さらに、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー、ならびに活性エネルギー線硬化性を有しないポリマーの少なくとも一方を含有してもよい。
最初に、粘着剤層30が、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマーと、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する粘着剤組成物から形成される場合について、以下に説明する。
活性エネルギー線硬化性を有しないポリマーとしては、例えば、前述したアクリル系共重合体と同様の成分が使用できる。
少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
かかる活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記粘着剤組成物中における活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーの含有量は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、特に25質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に100質量部以下であることが好ましい。
上記粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。これにより、粘着剤層30において、良好な三次元網目構造が形成され、粘着剤層30が所望の凝集力を発揮し易いものとなる。この場合の架橋剤としては、中間層20を形成するための架橋剤として前述したものを使用することができる。
上述した粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー100質量部に対して、8質量部以下であることが好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、上記粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。これにより、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンを使用することが好ましい。上述した光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、特に6質量部以下であることが好ましい。
上述した粘着剤組成物には、本実施形態に係る半導体加工用シート1による前述した効果を損なわない限り、所望の添加剤を添加することができる。当該添加剤としては、中間層20を形成するための粘着剤組成物に添加する添加剤として前述したものを使用することができる。
また、粘着剤層30を形成するための粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー、所望により、架橋剤、光重合開始剤、およびその他の添加剤を混合することで得ることができるが、必要に応じて希釈溶剤中にてこれらの成分を混合することで、粘着剤組成物の塗布液としてもよい。当該希釈溶剤としては、中間層20を形成するための粘着剤組成物の塗布液を調製するための希釈溶剤として前述したものを使用することができる。
次に、粘着剤層30が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有する粘着剤組成物から形成される場合について、以下説明する。当該活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(以下「活性エネルギー線硬化型重合体」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化型重合体は、前述したアクリル系共重合体であって、重合体を構成するモノマーとして前述した官能基含有モノマー単位を含有するものと、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られるものであることが好ましい。
上記不飽和基含有化合物が有する官能基は、アクリル系共重合体が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
また上記不飽和基含有化合物には、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
上記不飽和基含有化合物は、上記アクリル系共重合体の官能基含有モノマーモル数に対して、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上の割合で用いられる。また、上記不飽和基含有化合物は、上記アクリル系共重合体の官能基含有モノマーモル数に対して、好ましくは95モル%以下、特に好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下の割合で用いられる。
アクリル系共重合体と不飽和基含有化合物との反応においては、アクリル系共重合体が有する官能基と不飽和基含有化合物が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化型重合体が得られる。
このようにして得られる活性エネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であるのが好ましく、特に15万以上であるのが好ましく、さらには20万以上であるのが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であるのが好ましく、特に100万以下であるのが好ましい。
活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有する粘着剤組成物に対しても、前述した光重合開始剤や架橋剤を適宜配合することができる。
本実施形態における粘着剤層30は、23℃における貯蔵弾性率が、中間層20の23℃における貯蔵弾性率よりも小さいことが好ましい。これにより、本実施形態に係る半導体加工用シート1が被着体となる半導体部材に対してより良好な粘着力を発揮しながらも、加工時における半導体加工用シート1の振動を効果的に抑制することができる。これらの効果が相まって、当該半導体加工用シート1によってダイシングを行う場合には、ダイシング時のチッピングの発生を効果的に抑制することが可能となる。なお、粘着剤層30における上述した貯蔵弾性率は、活性エネルギー線を照射する前の、粘着剤層30が硬化していない状態における貯蔵弾性率をいうものとする。粘着剤層30の23℃における貯蔵弾性率は、具体的には、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.03MPa以上であることが好ましく、さらには0.05MPa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、10MPa以下であることが好ましく、特に5MPa以下であることが好ましく、さらには1MPa以下であることが好ましい。
本実施形態における粘着剤層30の厚さは、中間層20の厚さよりも薄いことが好ましい。これにより、加工時における半導体加工用シート1の振動を効果的に抑制することができ、当該半導体加工用シート1によってダイシングを行う場合には、ダイシング時のチッピングの発生を効果的に抑制することが可能となる。具体的には、粘着剤層30の厚さは、5μm以上であることが好ましく、特に7μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、30μm以下であることが好ましく、特に20μm以下であることが好ましい。粘着剤層30の厚さが上述した範囲であることで、チッピングの発生を効果的に抑制しながらも、半導体加工用シート1が被着体となる半導体部材に対して所望の粘着力を発揮し易くなる。
(4)剥離シート
本実施形態に係る半導体加工用シート1は、粘着剤層30における中間層20とは反対側の面(以下「粘着面」という場合がある。)に剥離シート40を積層してもよい。これにより、当該粘着面を、半導体部材に貼付するまでの間、保護することができる。
剥離シート40の構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
剥離シート40の厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
(5)その他の部材
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、粘着剤層30における粘着面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係る半導体加工用シート1は、上述のように接着剤層を備えることで、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。このような半導体加工用シート1では、接着剤層における粘着剤層30とは反対側の面に半導体部材を貼付し、当該半導体部材とともに接着剤層をダイシングすることで、半導体部材が個片化されてなるチップを、個片化された接着剤層が積層された状態で得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
また、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、粘着剤層30における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係る半導体加工用シート1は、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。このような半導体加工用シート1では、保護膜形成層における粘着剤層30とは反対側の面に半導体部材を貼付し、当該半導体部材とともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該被切断物としては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
2.半導体加工用シートの物性
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、前述した粘着力変化率に関して定義される粘着力F1、すなわち、半導体加工用シート1をシリコンウエハに貼付してなる積層体について、当該半導体加工用シート1に対して活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を硬化した後における、当該半導体加工用シート1の当該シリコンウエハに対する粘着力F1が、20mN/25mm以上であることが好ましく、特に100mN/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力F1は、1000mN/25mm以下であることが好ましく、特に600mN/25mm以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、前述した粘着力変化率に関して定義される粘着力F2、すなわち、半導体加工用シート1をシリコンウエハに貼付してなる積層体について、当該半導体加工用シート1に対して活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を硬化し、続いて当該積層体を120℃で1時間加熱した後における、当該半導体加工用シート1の当該シリコンウエハに対する粘着力F2が、20mN/25mm以上であることが好ましく、特に100mN/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力F2は、1000mN/25mm以下であることが好ましく、特に600mN/25mm以下であることが好ましい。
上述した粘着力F1および粘着力F2がそれぞれ上記範囲であることにより、前述した粘着力変化率を前述した範囲に調整し易いものとなり、これにより、半導体加工用シート1がより優れた耐熱性を発揮するものとなる。また、粘着力F2が上述した範囲であることにより、半導体加工用シート1では、加熱後における粘着力が過度に高いものとなり難く、それにより、加工後の半導体部材を容易に剥離し易いものとなる。
なお、上述した粘着力F1および粘着力F2の定義における、積層体に照射される活性エネルギー線の照射量としては、粘着剤層30を十分に硬化できる量であればよく、例えば、照度が50mW/cm2以上であることが好ましい。また、照度の上限値については特に限定されず、例えば1000mW/cm2以下であればよい。光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、特に80mJ/cm2以上であることが好ましく、さらには100mJ/cm2以上であることが好ましい。また、光量の上限値については特に限定さないものの、例えば、2000mJ/cm2以下であることが好ましく、特に1000mJ/cm2以下であることが好ましく、さらには500mJ/cm2以下であることが好ましい。
3.半導体加工用シートの製造方法
本実施形態に係る半導体加工用シート1の製造方法としては、特に限定されない。例えば、基材10と中間層20とを備える積層体を作製した後、当該積層体における中間層20の面側に粘着剤層30を積層することで半導体加工用シート1を得ることができる。
中間層20が粘着剤から構成される場合における、基材10と中間層20とを備える積層体の製造方法の一例としては、前述した粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、前述した剥離シート40における剥離処理した面(以下「剥離面」という場合がある。)上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター、アプリケータ等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、中間層20と剥離シート40とからなる積層体を形成することができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、中間層20を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。上記積層体を得た後、その中間層20における剥離シート40側の面と反対側の面を、基材10に貼付することで、基材10と、中間層20と、剥離シート40とが積層された積層体を得ることができる。また、上記塗工液を、基材10の片面上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、基材10と中間層20とが積層された積層体を得てもよい。
中間層20が前述した樹脂フィルムから構成される場合における、基材10と中間層20とを備える積層体の製造方法の例としては、基材10の片面上に、中間層20を構成するための材料を押出ラミネートする方法、基材10を構成するための材料と中間層20を構成するための材料とを共押出成形する方法等が挙げられる。
粘着剤層30を形成する方法としては、例えば、前述した粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、前述した剥離シート40における剥離面上にその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層30と剥離シート40とからなる積層体を形成することができる。
そして、上述の通り作製した基材10と中間層20とを備える積層体の中間層20側の面(剥離シート40が積層されている場合には、当該剥離シート40を剥離して露出した中間層20の露出面)と、粘着剤層30と剥離シート40とからなる積層体の粘着剤層30側の面とを貼合することで、基材10と中間層20と粘着剤層30と剥離シート40とが積層されてなる半導体加工用シート1を得ることができる。
なお、中間層20を形成するための上述した塗工液および粘着剤層30を形成するための上述した塗工液の少なくとも一方が架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のポリマーと架橋剤との架橋反応を進行させ、中間層20や粘着剤層30内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、所望の段階で、上記の方法などによって、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
4.半導体加工用シートの使用方法
本実施形態に係る半導体加工用シート1は、半導体部材の加工のために使用することが好ましい。当該半導体部材の例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等が挙げられる。また、本実施形態に係る半導体加工用シート1による加工の対象は、半導体部材に限定されず、ガラス板等のガラス部材であってもよい。本実施形態に係る半導体加工用シート1を用いて行われる加工の例としては、バックグラインド、ダイシング、エキスパンドおよびピックアップの他、半導体部材またはその加工物に対する蒸着、スパッタリング、脱湿のためのベーキング等といった加熱を伴う処理が挙げられる。また、本実施形態に係る半導体加工用シート1上において、半導体部材またはその加工物に対する、高温環境下での信頼性を確認するための加熱試験を行うこともできる。
以下に、本実施形態に係る半導体加工用シート1を使用して、半導体ウエハを加工し、半導体装置を製造する方法を説明する。当該製造方法は、半導体加工用シート1における粘着面上に半導体ウエハを設けるウエハ準備工程、半導体ウエハを厚さ方向に切断することで、半導体ウエハが個片化されてなる複数の半導体チップを得るダイシング工程、半導体チップを半導体加工用シート1上で加熱する加熱工程、半導体加工用シート1を延伸して、複数の半導体チップを互いに離間させるエキスパンド工程、および離間した半導体チップを半導体加工用シート1から個々にピックアップするピックアップ工程を備える。
(1)ウエハ準備工程
最初に、ウエハ準備工程として、半導体加工用シート1における粘着面上に半導体ウエハを設ける。このとき、当該粘着面の周縁部に、さらにリングフレームを貼付してもよい。
(2)ダイシング工程
次に、ダイシング工程として、半導体加工用シート1上において半導体ウエハをダイシングし、半導体ウエハが個片化されてなる複数の半導体チップを得る。当該ダイシングの方法は特に限定されず、一般的な方法で行うことができる。例えば、ダイシングブレードを用いることで、またはレーザ光を照射することで、半導体ウエハを完全に分断し、複数の半導体チップに個片化することができる。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10における前述した膨張率と厚さとの積が前述した範囲となるとともに、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が前述した範囲であることにより、上記ダイシング時における半導体加工用シート1の振動を抑制することができる。これにより、形成される半導体チップ同士の衝突が抑制され、その結果、半導体チップにおけるチッピングの発生を抑制することができる。
(3)加熱工程
次に、加熱工程として、半導体加工用シート1上の半導体チップを加熱する。当該加熱の目的は特に限定されず、例えば、半導体チップへの蒸着やスパッタリング等に伴う副次的な加熱であってもよく、脱湿のために半導体チップをベーキングする際の加熱であってもよく、または、高温環境に対する耐久試験のための半導体チップの加熱であってもよい。
加熱する方法は特に限定されず、加熱の目的に応じて決定される。特に、高温環境に対する耐久試験を行う場合には、半導体加工用シート1における半導体チップが積層されている面とは反対の面を加熱テーブルに載置することで加熱することが好ましい。当該加熱テーブルを用いた加熱の具体的方法は、後述する試験例に示す通りである。
加熱の温度は、加熱の目的に応じて設定することができるが、例えば、80℃以上であることが好ましく、特に100℃以上であることが好ましい。また、当該温度は、300℃以下であることが好ましく、特に270℃以下であることが好ましい。加熱時間も、加熱の目的に応じて設定することができるものの、例えば、10分以上であることが好ましく、特に30分以上であることが好ましく。また、加熱時間は、25時間以下であることが好ましく、特に10時間以下であることが好ましい。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10における前述した膨張率と厚さとの積が前述した範囲となるとともに、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が前述した範囲であることにより、加熱時における変形が抑制される。また、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、前述した粘着力変化率が前述した範囲であることにより、上記加熱の前後で粘着力が変化し難いものとなる。これらにより、本実施形態に係る半導体加工用シート1によれば、半導体加工用シート1上における半導体チップの移動や、半導体加工用シート1からの半導体チップの意図しない分離や脱落を抑制し、加熱工程を適切に行うことができる。このように、本実施形態に係る半導体加工用シート1は、優れた耐熱性を有するものである。
(4)エキスパンド工程
次に、エキスパンド工程として、半導体加工用シート1を延伸して、複数の半導体チップを互いに離間させる。エキスパンドの方法は特に限定されず、一般的な方法により行うことができる。
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10における前述した膨張率と厚さとの積が前述した範囲となるとともに、中間層20の23℃における貯蔵弾性率が前述した範囲であることにより、半導体加工用シート1が優れた柔軟性を有するものとなる。その結果、半導体加工用シート1を良好にエキスパンドすることができ、半導体チップを十分に離間することが可能となる。
(5)ピックアップ工程
最後に、ピックアップ工程として、離間した半導体チップを半導体加工用シート1から個々にピックアップする。ピックアップの方法は特に限定されず、一般的な方法により行うことができる。
また、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、粘着剤層30が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されているため、ピックアップを行う前に、粘着剤層30に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、半導体加工用シート1の半導体チップに対する粘着力が低下し、半導体チップを半導体加工用シート1から良好に剥離させることが可能となる。
上記活性エネルギー線照射における活性エネルギー線としては、例えば、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを使用でき、具体的には、紫外線や電子線などを使用することができる。特に、取扱いが容易な紫外線が好ましい。紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、LED等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下であることが好ましい。また、光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、特に80mJ/cm2以上であることが好ましく、さらには100mJ/cm2以上であることが好ましい。また、光量は、2000mJ/cm2以下であることが好ましく、特に1000mJ/cm2以下であることが好ましく、さらには500mJ/cm2以下であることが好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10krad以上、1000krad以下が好ましい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、基材10における中間層20とは反対の面、基材10と中間層20との間、中間層20と粘着剤層30との間には、その他の層が設けられてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)中間層形成用の粘着剤組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを液重合法により共重合させることで、アクリル系共重合体を得た。なお、当該アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、60万であった。
得られたアクリル系共重合体35質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(TDI-TMP)(東ソー社製,製品名「コロネートL」)3.75質量部とを混合して、中間層形成用の粘着剤組成物(粘着剤組成物A1)の塗布液を得た。
(2)粘着剤層形成用の粘着性組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部と、メタクリル酸40質量部と、アクリル酸10質量部とを液重合法により共重合させることで、アクリル系共重合体を得た。なお、当該アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、60万であった。
得られたアクリル系共重合体35質量部と、活性エネルギー線硬化性のオリゴマーとしての多官能型紫外線硬化性樹脂(日本合成化学工業社製,製品名「紫光UV-5806」)17.1質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(TDI-TMP)(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.875質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「イルガキュア127」)0.01質量部とを混合して、粘着剤層形成用の粘着剤組成物(粘着剤組成物B1)の塗布液を得た。
(3)半導体加工用シートの作製
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の主面がシリコーン系剥離剤によって剥離処理されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離処理面上に、アプリケータを用いてギャップを調整しながら、上記工程(1)において調製した中間層形成用の粘着剤組成物の塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥させることで、厚さが60μmである中間層を形成し、剥離シートと中間層とからなる第1の積層体を得た。
次に、基材としての、ポリプロピレンフィルム(ダイヤプラスフィルム社製,製品名「PL109C」,厚さ:80μm)の一方の面上に、上記第1の積層体における中間層側の面を貼付した。これにより、基材と中間層と剥離シートとがこの順に積層されてなる第2の積層体を得た。
また、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の主面がシリコーン系剥離剤によって剥離処理されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離処理面上に、アプリケータを用いてギャップを調整しながら、上記工程(2)において調製した粘着剤層形成用の粘着剤組成物の塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥させることで、厚さが10μmである粘着剤層を形成し、剥離シートと粘着剤層とからなる第3の積層体を得た。
得られた第3の積層体における粘着剤層側の面と、上述のように得られた第2の積層体から剥離シートを剥離し、露出した中間層側の面とを、温度23℃でロールラミネータを用いて貼り合せることで、半導体加工用シートを得た。
ここで、上述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔実施例2~3,比較例1~2〕
表1に示す基材を使用する以外、実施例1と同様にして半導体加工用シートを製造した。
〔比較例3〕
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを液重合法により共重合させることで、アクリル系共重合体を得た。なお、当該アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を前述した方法で測定したところ、60万であった。
得られたアクリル系共重合体35質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(TDI-TMP)(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.075質量部とを混合して、中間層形成用の粘着剤組成物(粘着剤組成物A2)の塗布液を得た。
当該粘着剤組成物を使用して、中間層を形成する以外、実施例1と同様にして半導体加工用シートを製造した。
〔比較例4〕
アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部と、メタクリル酸40質量部と、アクリル酸10質量部とを液重合法により共重合させることで、アクリル系共重合体を得た。なお、当該アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、60万であった。
得られたアクリル系共重合体35質量部と、エネルギー線硬化性のオリゴマーとしての3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日精化工業社製,製品名「EXL810TL」)17.69質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(TDI-TMP)(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.875質量部とを混合して、粘着剤層形成用の粘着剤組成物(粘着剤組成物B2)の塗布液を得た。
当該粘着剤組成物を使用して粘着剤層を形成する以外、実施例1と同様にして半導体加工用シートを製造した。
〔比較例5〕
基材としての、ポリプロピレンフィルム(ダイヤプラスフィルム社製,製品名「PL109C」,厚さ:80μm)の一方の面上に、前述の通り作製した第3の積層体における粘着剤層側の面を貼付することにより、基材と粘着剤層と剥離シートとがこの順に積層されてなる半導体加工用シートを製造した。
〔比較例6~7〕
表1に示す基材を使用する以外、実施例1と同様にして半導体加工用シートを製造した。
〔試験例1〕(基材の引張弾性率の測定)
実施例および比較例で使用した基材を15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7161:2014に準拠して、温度23℃および相対湿度50%における引張弾性率を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンRTA-T-2M」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。なお、測定は、基材の成形時の押出方向(MD)およびこれに直角の方向(CD)の双方で行い、これらの測定結果の平均値を引張弾性率とした。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(基材の膨張率の測定)
実施例および比較例で使用した基材から、幅4.5mm、長さ15mmの試験片を切り出した。このとき、基材のMD方向が長さ方向となるように切り出したMD用試験片と、基材のCD方向が長さ方向となるように切り出したCD用試験片とを作製した。そしてこれらの試験片のそれぞれについて、熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer,TMA)(ブルカーエーエックスエス社製,製品名「TMA4000SA」)を用いて、長さ方向に0.2gの荷重を印加しながら、10℃/分の昇温温度で23℃から120℃まで加熱したときの、初期寸法L0(mm)および120℃到達時寸法L(mm)を測定し、下記式(2)
膨張率(%)={(L-L0)/L0}×100 …(2)
から膨張率を算出した。MD方向およびCD方向のそれぞれについて得られた膨張率のうち値の大きい方を、基材の膨張率(%)とした。結果を表1に示す。
また、上記の通り得られた基材の膨張率(%)と、基材の厚さ(μm)との積(%・μm)を算出した。その結果も表1に示す。
〔試験例3〕(中間層および粘着剤層の貯蔵弾性率)
実施例1~3ならびに比較例1~4および6~7で作製した、剥離シートと中間層とからなる第1の積層体を用いて、当該中間層を複数層積層し、厚さ3mmの中間層積層体を得た。この中間層積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これを中間層用サンプルとした。
上記中間層用サンプルについて、JIS K7244-6:1999に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,製品名「DYNAMIC ANALAYZER」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(MPa)を測定した。結果を表1に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
また、実施例および比較例で作製した、剥離シートと粘着剤層とからなる第3の積層体を用いて、当該粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの粘着剤層積層体を得た。この粘着剤層積層体から、直径8mmの円柱体(高さ1mm)を打ち抜き、これを粘着剤層用サンプルとした。当該粘着剤層用サンプルについても、上記と同様に貯蔵弾性率(MPa)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例4〕(チッピングの評価)
(1)半導体パッケージの作製
銅箔張り積層板(三菱ガス化学社製,製品名「CCL-HL830」,銅箔の厚さ:18μm)における銅箔に回路パターンを形成した後、当該パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ社製,製品名「PSR-4000 AUS303」)を積層してなる基板(ちの技研社製,製品名「LN001E-001 PCB(Au)AUS303」)を用意した。
上記基板に対して、チップを搭載することなく、封止装置(アピックヤマダ社製,製品名「MPC-06M TriAl Press」)を用いて、モールド樹脂(京セラケミカル社製,製品名「KE-1100AS3」)で、封止厚さ400μm、封止サイズ45mm×137mmとなるように矩形状に封止した。その後、モールド樹脂を、175℃で5時間加熱することで硬化させて、半導体パッケージを得た。
(2)ダイシング
実施例および比較例において作製した半導体加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面に対して、マルチウエハマウンター(リンテック社製,製品名「Adwill RAD-2700F/12」)を用いて、上記工程(1)で得た半導体パッケージ1枚を、半導体加工用シートの流れ方向と半導体パッケージの長辺方向とが平行となり且つ半導体パッケージが半導体加工用シートの中心に位置するように、温度23℃の環境下で貼り合わせた。
さらに、半導体加工用シートにおける粘着面の周縁部(半導体パッケージとは重ならない位置)に、ダイシング用リングフレーム(ディスコ社製,製品名「2-8-1」)を付着させた。
次いで、下記の条件で、半導体パッケージをダイシングした。
<ダイシング条件>
・ダイシング装置:DISCO社製,製品名「DFD-6362」
・ブレード:DISCO社製,製品名「NBC-ZH2050-27HECC」
・ブレード回転数:30000rpm
・切削速度:50mm/分
・切り込み深さ:半導体加工用シートに対する切り込み量:80μm
・ダイシングサイズ:3mm×3mm
(3)チッピングの評価
上記ダイシングにより得られた、半導体パッケージの切断片50個の裏面について、20μm以上のサイズの欠け(チッピング)の発生の有無を確認し、以下の基準に基づいて、チッピングを評価した。結果を表2に示す。
〇:チッピングが0個であった。
×:チッピングが1個以上であった。
〔試験例5〕(加熱時の変形の評価)
実施例および比較例において作製した半導体加工用シートについて、試験例4の工程(1)および(2)と同様にダイシングを行った。そして、予め120℃に加熱され且つバキュームがONとなっている状態のマルチウエハマウンター(リンテック社製,「Adwill RAD-2700F/12」)のマウントテーブルに対し、上記ダイシング後の半導体パッケージおよびリングフレームが貼付された状態の半導体加工用シートを、当該貼付された面とは反対の面がマウントテーブルに接するように、搬送アームを用いて静置した。そして、半導体加工用シートの様子を確認した後、半導体加工用シートをマウントテーブルから離した。この操作を、ダイシング後の半導体パッケージおよびリングフレームが貼付された状態の半導体加工用シート10セットについて行った。
マウントテーブルに静置したときの半導体加工用シートの状態について、以下の基準に基づいて、半導体加工用シートの加熱時の変形について評価した。結果を表2に示す。
○:10セット全てにおいてマウントテーブルに真空吸着され、マウントテーブル外周部の位置において、シワ等の変形が一切ないか、一部分で認められる程度であった。
△:マウントテーブルに完全に真空吸着されたセット数が、9セット以下、8セット以上であった。
×:マウントテーブルに完全に真空吸着されたセット数が、7セット以下であった。
〔試験例6〕(エキスパンド性の評価)
上記試験例5を行った後における、ダイシング後の半導体パッケージおよびリングフレームが貼付された状態の半導体加工用シートの1セットを、エキスパンド装置(JCM社製,製品名「SE-100」)に設置し、リングフレームを5mm/sの速さで、7mmおよび10mmの2種類の引き落とし量で、それぞれ引き落としを行った。そして、以下の基準に基づいて、半導体加工用シートのエキスパンド性を評価した。結果を表2に示す。
○:引き落とし量7mmおよび10mmの両方の場合において、良好に引き落としができた。
△:引き落とし量10mmの場合については、リングフレームから半導体加工用シートが剥がれたり、設定した速度で引き落としできないといった問題が生じたものの、引き落とし量7mmの場合については、良好に引き落としができた。
×:引き落とし量7mmおよび10mmの両方の場合において、リングフレームから半導体加工用シートが剥がれたり、設定した速度で引き落としできないといった問題が生じた。
〔試験例7〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造した半導体加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面と、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面とを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼り合わせ、20分静置した。その後、半導体加工用シートにおける粘着剤層に対し、基材を介して、以下の条件で紫外線照射を行った。これにより、粘着力測定用サンプルを得た。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度230mW/cm2,光量190mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
得られた粘着力測定用サンプルにおいて、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用シートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。この測定結果を、加熱前の粘着力として、表2に示す。
また、上記と同様に得られた粘着力測定用サンプルを、オーブンを用いて120℃で1時間加熱した。当該加熱後の粘着力測定用サンプルについて、上記と同様にシリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。この測定結果を、加熱後の粘着力として、表2に示す。
さらに、上記の通り得られた加熱前の粘着力(F1)および加熱後の粘着力(F2)について、下記式(1)
粘着力変化率=(F2/F1)×100 …(1)
から粘着力変化率(%)を算出した。結果を表2に示す。
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
PP-1:ポリプロピレンフィルム(ダイヤプラスフィルム社製,製品名「PL109C」,厚さ:80μm)
PBT:軟質ポリブチレンテレフタレートフィルム(オージーフィルム社製,製品名「BS-80」,厚さ:80μm)
PP-2:ポリプロピレンフィルム(ダイヤプラスフィルム社製,製品名「PL105」,厚さ:80μm)
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4100」,厚さ:100μm)
EMAA:エチレン-メタクリル酸共重合体フィルム(アキレス社製,製品名「EANU80―AL―ND」,厚さ:80μm)
PP-3:ポリプロピレンフィルム(ダイヤプラスフィルム社製,製品名「PL109C」,厚さ:140μm)
PP-4:ポリプロピレンフィルム(ダイヤプラスフィルム社製,製品名「PL105」,厚さ:140μm)
表2から分かるように、実施例で得られた半導体加工用シートでは、チッピングを良好に抑制することができた。また、実施例で得られた半導体加工用シートでは、エキスパンドを良好に行うことができ、柔軟性に優れていた。さらに、実施例で得られた半導体加工用シートでは、加熱テーブルに真空吸着させたときに変形が生じ難いとともに、加熱による粘着力の変化も小さいものであり、耐熱性に優れていた。