以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1~図12は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る部品処理システム1の説明図である。本部品処理システム1は、例えばサーミスタ素子について、出力の温度依存性を評価するために用いられる。部品処理システム1は、カバーとなる筐体30を備える。部品処理システム1は、略円盤状のターレット型回転搬送装置10を備え、ターレット型回転搬送装置10は、ターレットテーブル回転軸15を中心にして、ターレットテーブル駆動装置20によって回転駆動される。ターレット型回転搬送装置10は、自身のターレットテーブル12の周縁において、等間隔に固定配置される複数の部品保持機構45を有する。ターレット型回転搬送装置10とは独立して設けられる架台35には、昇降付勢機構40が複数設けられる。後述する部品供給領域51や、処理領域52等において、部品保持機構45は、昇降付勢機構40と協働して、部品の回収(保持)、及び/又は、解放をおこなう。
制御装置25は、CPU、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶装置などから構成され、ターレット型回転搬送装置10による部品の搬送制御、部品保持機構45による部品の解放・回収制御、部品の処理(出力測定)制御など各種制御を実行する。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
図2は、部品処理システム1を上面から見た説明図である。部品処理システム1は、ターレット型回転搬送装置10の周囲に配置される合計12個の部品保持機構45によって部品を保持し、環状の搬送経路に沿って複数の部品を同時搬送する。搬送経路上には、部品を部品保持機構45に供給する部品供給領域51と、部品供給領域51の下流側に配置されて、部品に対して所定の処理を施す処理領域52と、処理領域52のさらに下流側に配置されて、部品を搬出する部品搬出領域53が構成される。
搬送経路上には、処理領域52として、第一処理領域52Aと、第二処理領域52Bと、第三処理領域52Cが形成されている。更に、第一処理領域52Aの上流側には、第一姿勢調整領域70Aが形成され、第二処理領域52Bと第三処理領域52Cの間には、第二姿勢調整領域70Bが形成される。また、搬送経路上には、部品搬出領域53として、第一部品搬出領域53Aと第二部品搬出領域53Bが形成されている。この第一部品搬出領域53Aと第二部品搬出領域53Bの間には、第三姿勢調整領域70Cが形成される。第一乃至第三姿勢調整領域70A~70Cは、「部品の姿勢を整える」という処理を実行するという観点では、本発明における部品処理領域の概念に含めることも可能である。その場合は、本部品処理システム1は、第一乃至第三姿勢調整領域70A~70Cと、第一乃至第三処理領域52A~52Cの合計6か所の処理領域を有することになる。なお、各領域には、ターレット型回転搬送装置10の部品保持機構45が、まとめて同時に停止可能な位置に形成される。
なお図2では、架台35に固定された昇降付勢機構40についての記載を省略している。
部品供給領域51では、自動部品供給装置65(例えばパーツフィーダ)によって部品が供給される。ターレット型回転搬送装置10は、矢印R向きに回転駆動され、部品供給領域51で部品保持機構45に保持された部品は、反時計回りに各領域を経て、部品搬出領域53で搬出される。途中の処理領域52では、例えば部品の電気抵抗値の温度特性を測定する処理が行われる。第一乃至第三位置調整領域70A~70Cには、それぞれ、位置調整装置71が配置されており、部本保持機構45によって保持される部品の向き(保持軸に対する周方向の角度)が高精度に調整されると同時に、更に、部品の中心位置が所定の位置(保持軸と一致する位置)となるように位置決めされる。予め部品の姿勢を移御することで、下流側の各領域に対して、高精度に部品を解放できる。
第一位置調整領域70Aで中心位置と周方向の向きを調整された部品は、まず、第一処理領域52Aに搬送される。第一処理領域52Aには、低温用処理装置75が配設される。この低温用処理装置75は、例えば、部品が25℃となる場合の電気抵抗値の出力特性が測定される。25℃は、大気温度に近いことから、予熱工程を省略できる。部品は、低温用処理装置75内で25℃に安定化された後に測定される。測定後、部品は部品保持機構45によって回収されて、次の第二処理領域52Bに搬送される。
第二処理領域52Bには、予熱処理装置80が設置されており、部品が加熱されて所定の温度に制御される。具体的に、予熱処理装置80の下流側の第三処理領域52Cで、部品を安定化させる温度が例えば80℃だとすれば、予熱処理装置80では、部品が例えば50℃になるように予熱制御される。
予熱処理が完了した後、予熱装置80から部品保持機構45によって回収された部品は、下流側の第二位置調整領域70Bで、中心位置と周方向の向きを調整された後、次の第三処理領域52Cに搬送される。
第三処理領域52Cには、高温用処理装置85が配設される。この高温用処理装置85は、部品が80℃になるように制御されてから、電気抵抗値の出力特性が測定される。なお、第一及び第三処理領域52A、52Cでは、部品に対する行為として、加熱又は冷却を含めた温度制御処理と、部品の出力を測定する測定処理の双方が実行される。また第二処理領域52Cでは、部品に対する行為として、加熱又は冷却を含めた温度制御処理のみが実行される。
高温用処理装置85による測定終了後、部品は部品保持機構45によって回収されて、部品保持機構45により部品第一搬出領域53Aに搬送され、一部の部品(ここでは、計測結果で不良と判定された部品)が収納ボックス90に搬出される。また残りの正規部品は、第一搬出領域53Aを通過して、下流側の位置調整装置70Cで、周方向の向きと水平方向位置を調整された後、部品保持機構45で第二部品搬出領域53Bに運ばれて、供給リール5に巻かれている梱包用の樹脂テープに搬出され、部品がパッケージングされる。
なお、第一処理領域52A及び第三処理領域52Cでは、プローブを用いて部品の測定を行う必要性から、部品に高い位置決め精度が要求される。従って、上流側に第一及び第二位置調整領域70A、70Bが確保されている。同様に、第二部品搬出領域53では、正規部品をパッケージンする為に、部品に高い位置決め精度が要求される。従って、上流側に第三位置調整領域70Cが確保されている。
図3(A)~図3(C)を参照して、ターレット型回転搬送装置10の全体動作を説明する。図3(A)~図3(C)において、ターレット型回転搬送装置10は、12個の部品保持機構H1~H12を備える。架台35には、各領域に対応させて、合計9つの昇降付勢機構40A~40Iが固定設置される。第一昇降付勢機構40Aは部品供給領域51上に固定され、第二昇降付勢装置40Bは第一姿勢調整領域70A上に固定され、第三昇降付勢装置40Cは第一処理領域52A上に固定され、第四昇降付勢装置40Dは第二処理領域52B上に固定され、第五昇降付勢装置40Eは第二姿勢調整領域70B上に固定され、第六昇降付勢装置40Fは第三処理領域52C上に固定され、第七昇降付勢装置40Gは第一部品搬出領域53A上に固定され、第八昇降付勢装置40Hは第三姿勢調整領域70C上に固定され、第九昇降付勢装置40Iは第二部品搬出領域53B上に固定される。
図3(A)は、ターレット型回転搬送装置10が一時停止した状態を示しており、第六部品保持機構H6が部品供給領域51上に停止され、第八部品保持機構H8が第一姿勢調整領域70A上に停止され、第九部品保持機構H9が第一処理領域52A上に停止され、第十部品保持機構H10が第二処理領域52B上に停止され、第十一部品保持機構H11が第二姿勢調整領域70B上に停止され、第十二部品保持機構H12が第三処理領域52C上に停止され、第一部品保持機構H1が第一部品搬出領域53A上に停止され、第二部品保持機構H2が第三姿勢調整領域70C上に停止され、第四部品保持機構H4が第二部品搬出領域53B上に停止される。これらの各領域で、昇降付勢機構40A~40Iが稼働することで、部品を上下動させながら、その目的に応じた各種動作が同時並行で実行される。
図3(A)の状態において、各領域での動作(処理)が完了したら、ターレット型回転搬送装置10が30度回転しながら部品を搬送し、図3(B)に示す状態で停止する。この回転角度は、隣接する部品保持機構H1~H12の配置角度(30度)と一致する。その結果、第五部品保持機構H5が部品供給領域51上に停止され、第七部品保持機構H7が第一姿勢調整領域70A上に停止され、第八部品保持機構H8が第一処理領域52A上に停止され、第九部品保持機構H9が第二処理領域52B上に停止され、第十部品保持機構H10が第二姿勢調整領域70B上に停止され、第十一部品保持機構H11が第三処理領域52C上に停止され、第十二部品保持機構H12が第一部品搬出領域53A上に停止され、第一部品保持機構H1が第三姿勢調整領域70C上に停止され、第三部品保持機構H3が第二部品搬出領域53B上に停止される。これらの各領域で、昇降付勢機構40A~40Iが稼働することで、部品を上下動させながら、その目的に応じた各種動作が同時並行で実行される。
図3(B)の状態において、各領域での動作(処理)が完了したら、ターレット型回転搬送装置10が更に30度回転しながら部品を搬送し、図3(C)に示す状態で停止する。
上記図3(A)~図3(C)の動作が繰り返されることで、部品供給領域51から部品が順次供給され、全ての部品は、各領域を順番に移動しながら所望の処理が施されて、第一部品搬出領域53A又は第二部品搬出領域53Bから搬出される。
次に図4及び図5を参照して、処理領域52に配置される低温用処理装置75、予熱処理装置80、高温用処理装置85について説明する。なお、これらの処理装置は内部構造が互いに類似する為、ここでは、低温用処理装置75の構造について詳細に説明し、他の処理装置80、85の説明の一部を書略する。
図4(A)に示すように、低温用処理装置75は、温度安定化装置125を備える。この温度安定化装置125は、部品を移動させる移動機構と、部品の温度を制御する温度安定化機構を兼ねている。つまり、温度安定化装置125は、本発明における移動機構と、部品に対して加熱・冷却を行う熱移送とを兼ねる。温度安定化装置125は載置プレート50を備える。この載置プレート50は、後述する熱移送部材130と一体となって、載置プレート回転軸55を中心として、部品を載置した状態で回転移動する。
載置プレート50は、被測定物である部品がそれぞれ個別に載置される凹部である複数の載置部100有する。ここでは、載置プレート50の周方向に沿って、均等間隔で、合計32個の載置部100が形成されている。載置プレート50が回転することによって、載置部100が移動する環状の軌跡が、いわゆる部品の移動経路となる。
なお、低温用処理装置75における載置部100(凹部)の内寸は、部品の外寸と略一致することが好ましい。このようにすると、載置部100内での部品の位置ずれが抑制されるので、測定部95まで移動する間に、部品の位置がずれることを抑制できる。また、載置部100に対して部品を搭載する時に、部品に高い位置精度が要求される。従って、図3に示すように、低温用処理装置75(第一処理領域52A)や高温用処理装置85(第三処理領域52C)の上流側には、部品の保持精度を高めるために、第一姿勢調整領域70A及び第二姿勢調整領域70Bが用意される。
一方、第二処理領域52Bに配置される予熱処理装置80では、部品の温度制御のみを実行すれば良く、測定部による測定行為を省略できるので、載置プレート50上の部品に高い位置精度が要求されない。従って、載置プレート50の載置部100(凹部)の内寸は、部品の外寸よりも比較的大きく設定することが好ましい。このようにすると、載置部100に対して部品を搭載する時に、部品に高い位置精度が要求されないので、上流側の姿勢調整領域も省略することが出来る。
載置プレート50の上面に形成される移動経路上には、固定領域として、測定部95が配置される測定領域54と、測定部95の上流側に位置して部品保持機構45から部品が解放される受入領域97と、測定部95の下流側に位置して、測定部95で測定された後の部品の回収をする回収領域99が形成される。また、受入領域97と回収領域99は互いに異なった位置に配置される。
測定部95は、本発明における部品に所定の行為(ここでは出力測定行為)を行う行為部である。図4(B)に示されるように、部品115の電極120に電気的な接触を行う測定プローブ110を有する。測定プローブ110は、載置プレート50の面に対して垂直方向に昇降する。被測定対象の部品115が、測定領域54において、測定部95における測定プローブ110の直下まで来ると、載置プレート50の回転が止まり、測定プローブ110が降下して電極120と接触する。そして測定装置105で特性を測定した後、測定プローブ110が上昇し、載置プレート50が再び回転して、次の部品115が測定プローブ110の直下に移動する。
受入領域97において、載置プレート50の載置部100に載置された部品は、温度安定化装置125で回転移動している間に、所定の温度(ここでは25℃)まで制御され、測定部95において、その所定の温度における出力を測定した後、回収領域99に移動され、部品保持具により回収される。
図4(A)に戻って、部品保持機構45は、部品を保持する為の2つの部品保持具145、150を備える。この一対の部品保持具145、150同士の間隔と、受入領域97と回収領域99に収納される部品115の中心同士間隔は一致しているため、一方の部品保持具が受入領域97で部品を解放しているときに、略同時に他方の保持具が回収領域99で部品を回収することができる。なお、ここでは、部品保持具145、150の間隔P(つまり受入領域97と回収領域99に収納される部品115の中心同士間隔)と、隣接する一対の載置部100の間隔Qが、略一致する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、受入領域97と回収領域99の間隔Pは、移動経路上で任意に選択される一対の電子部品(載置部100)の間隔と略一致していればよい。より具体的に、受入領域97と回収領域99の移動軌跡に沿った間隔は、隣接する部品115、115同士の間隔Qの整数倍に設定されていれば良い。 また、部品保持機構45内における一対の部品保持具145、150同士の間隔Pは、ターレット型回転搬送装置10の搬送経路に沿って隣り合う一対の部品保持機構45、45同士の間隔Sよりも大幅に狭い。この意味は、部品保持機構45内の一対の部品保持具145、150は、同時に部品115を保持して同時搬送するためのものではなく、搬送経路に沿って、部品保持具145、150を選択的に切り替えながら、どちらかの部品保持具によって部品を搬送するものだからである。なお、この低温用処理装置75では、部品保持機構45の第一部品保持具145が部品を解放し、第二部品保持具150が部品を吸引保持する。
温度安定化装置125は、部品が受入領域97に解放された後、行為部である測定部95(測定領域54)に部品が到達するまでに必要な移動時間よりも、部品の温度が所定の温度に安定するまでの時間である温度制御時間が短い。即ち、部品が測定領域54に到達する前に、部品の温度は目標値で安定している。
図5(A)は、温度安定化装置125に備えられる載置プレート50の上面図である。図5(A)の場合には、載置プレート50は載置プレート回転軸55を中心として、上面から見て時計回りに回転する。
図5(B)は、温度安定化装置125の断面図である。温度安定化装置125は、複数の部品を同時に回転移動させる移動機構であり、部品がそれぞれ個別に載置される凹部である載置部100を複数有する略円盤状の載置プレート50と、載置プレート50に対して背面側に隣接して配置され、載置プレート50に熱を移送する熱移送部材130を備える。熱移送部材130の形状は、載置プレート50と略同型(略円盤状)であることが望ましいが、複数に分散配置されていても良い。熱移送部材130と載置プレート50は一体となって、載置プレート回転軸55を中心として、載置プレート駆動装置60により回転駆動される。なお、熱伝達効率を向上させるため、載置プレート50と熱移送部材130は、平面同士で接触していることが好ましく、間に熱伝導性シートなどを介在させても良い。
熱移送部材130において、載置プレート50が隣接する側と逆側平面には、熱交換部135が設けられる。熱移送部材130は、ペルチェ素子であることが望ましい。したがって、例えば載置プレート50の温度を降下させて、常温よりも低い温度に部品を制御したい場合には、熱移送部材130の載置プレート50側が低温となり、熱交換部135側が高温になる。その場合は、熱交換部135から熱が放熱されやすいように、熱交換部135をファンで空冷したり、外部に設けられた熱交換器であるチラーから冷水を供給して水冷したりすることが望ましい。逆に載置プレート50の温度を上昇させて、部品を常温よりも高い温度に制御したい場合には、熱移送部材130の載置プレート50側が高温に、熱交換部135側が低温になる。この場合には、熱交換部135に熱水を接触させて温めることも考えられる。これらの温度制御は、温度制御装置137によって、例えばPID制御によっておこなわれるが、一般的な周知技術なので詳細説明は省略する。
図6(A)は、載置プレート50の複数の載置部100について、温度バラツキがあることを説明する説明図である。処理装置52において処理される部品について温度特性の評価を行う場合、熱移送部材130の熱(温熱・冷熱)が、載置プレート50を介して載置部100に載置された部品に伝達される。載置プレート50自体も、肉厚等の要因で全体の温度が均一となる訳ではない。また、載置プレート50と熱移送部材130の間における熱接触も完全に均一とは限らない。ペルチェ素子となる熱移送部材130自体の全体の温度が均一となる訳ではない。したがって、部品を所定の温度にするべく温度制御装置137(図5参照)によって制御しようとしても、載置プレート50上の複数の載置部100の間で、実際に得られる温度は互いにばらつく。例えば、第一載置部215と、第七載置部220と、第十六載置部225では、載置プレート50を仮に80℃に制御しようとしても、すべての位置で正確に80℃にはならない。ただし、制御目標とする部品の設定温度は、例えば、80℃プラスマイナス0.5℃のように、所望の許容範囲を有していることから、複数の載置部100の間で温度がばらついたとしても、このバラツキ全体が、設定温度の許容範囲(許容帯域)内に収まっていれば良い。ただし、部品の出力特性を正確に測定するためには、ばらついた状態の実際の温度を、実測値として把握しなければならない。しかし、全ての載置部100に、リアルタイムに温度を計測するための温度計を個別に内蔵することは現実的ではない。
図6(B)は、各載置部について、目標温度と実測値の間の差を示す対応表である。この対応表は、本部品処理システム1が実稼働する前に、載置プレート50の温度を全体的に安定させてから、各載置部の温度のバラツキを実測することで得られる特性データとなる。つまり、温度安定化装置125の固有データとなる。例えば載置部No.1に相当する第一載置部215は、温度制御装置137の制御目標となる温度(目標温度)が0℃で安定化したとき、目標温度との差は+0.1℃(つまり実測値が0.1℃)となる。同様に、目標温度が25℃で安定化したとき、目標温度との差は+0.2℃(つまり実測値が25.2℃)であり、目標温度が80℃で安定化したとき、目標温度との差は-0.1℃(つまり実測値が79.9℃)となる。同様に全ての載置部について、それぞれ目標温度と実測値との差が対応表(データテーブル)として生成される。例えば載置部No.16に相当する第十六載置部225において、温度制御装置137の目標温度が80℃で安定化したとき、目標温度との差は+0.1℃、すなわち実測値は80.1℃である。このような対応表に関するデータテーブルを、制御装置25、温度制御装置137又は測定部95等、部品処理システム1のどこかに配置される計算機が記憶している。
このデータテーブルを適宜利用することで、本番稼働中の部品処理システム1において、全ての載置部100のそれぞれの部品の温度を高精度に推測できるので、部品115の電気的性質の温度特性評価を正確に行うことができる。例えば、実際に検査を行う部品がサーミスタ素子であって、温度制御装置137によって載置プレート50の温度を80℃に安定化制御した場合、データテーブルを参照すれば、第十六載置部225の実際の部品の温度は80.1℃になると推測できる。結果、測定領域54の測定部95で測定された抵抗値(電気的出力値)が、80.1℃相当を示せばこのサーミスタ素子は良品であると判定でき、抵抗値が80.1℃からずれた場合は、そのズレ量が、このサーミスタ素子の固有誤差となる。もちろん、この出力値から、例えば線形補間により80℃(評価基準温度)における測定値を逆算して、温度特性評価を行うことができる。
すなわち部品処理システム1は、熱移送部材130と載置プレート50と一緒に移動させる代わりとして、載置部の位置に応じて、載置プレート50全体の目標とする温度と、各載置部の実際の温度のズレ(即ち、これを総称すると、複数の載置部同士の温度のバラツキ)に関するデータテーブルを計算機が予め記憶することを特徴としている。
なお温度制御装置137は、CPU、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶装置などから構成され、温度安定化装置125における温度制御等をおこなう。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。温度制御装置137は温度安定化装置125ごとに設けられても良く、制御装置25(図1参照)と一体であっても良い。
なお、従来の部品処理システムでは、ターレット型回転搬送装置によって搬送中の部品を一時停止し、その状態まま、各部品に直接的に処理(所定行為)をおこなっていた。そのため、ターレット型回転搬送装置10による搬送速度が、各処理領域の処理速度(所定行為の速度)に律速されていた。一方、本部品処理システム1によれば、ターレット型回転搬送装置10の部品保持機構45から受け取った部品を、処理装置52が更に独立して移送して、所定の行為(出力特性の測定)を行う。結果、処理装置52における処理時間と、ターレット型回転搬送装置10の搬送速度を独立して設定できる。具体的には、載置部100に置かれた部品について温度特性の評価を行う場合、部品の熱容量のために所定の温度で安定するまで時間がかかるが、処理装置52内の受入領域97から測定領域(行為部)54までの移動経路を十分に確保することで、十分な時間によって各部品の温度の安定を図ることができる。それにも拘わらず、部品処理システム1全体の搬送速度の低下は招かないで済む。
また本実施形態に係る部品処理システム1によれば、搬送される部品が解放される受入領域97と、処理が完了した部品を回収する回収領域99が、異なった位置に配置されるので、部品の処理装置52への解放と、部品の処理装置52からの回収が独立に並行しておこなえるため、処理速度を向上させ得るという優れた効果を奏する。
本部品処理システム1によれば、ターレット型回転搬送装置10に配置される部品保持機構45が備える複数の部品保持具の間隔と、受入領域97と回収領域99の間隔が一致しているので、一方の部品保持具と、他方の部品保持具が、受入領域97と回収領域99に同時に位置決めできるので、円滑に部品の受け渡しができ得る。
また、処理装置52において処理される部品について温度特性の評価を行う場合、部品を所定の温度にするために載置プレート50と載置された部品との間で熱交換をおこなう。このとき載置プレート50と、熱移送部材130の間が熱移送について不均一である可能性が高く、また載置プレート50と熱移送部材130の間における熱接触も完全に均一ではないことが多いと考えられる。したがって、部品を所定の温度にするべく温度制御装置137によって制御しようとしても、載置プレート50上の複数の載置部100それぞれについて、実際に得られる温度は、安定させたい所定の温度からずれてしまう。本発明の第一実施形態に係る部品処理システム1によれば、温度制御装置137が各々の載置部100に応じて、目標とする所定の温度と、実際に得られる温度のズレ量に関するデータを予め記憶しているので、例えば部品の温度特性を評価する場合に、部品の正確な温度を推測することができる。
更に部品処理システム1によれば、処理装置52において部品が受入領域97から測定領域(行為部)54まで移動する間に、部品の温度が所定の温度に達して安定するので、所定の温度における部品の特性評価が可能になり、結果として部品についての正確な温度特性評価が可能になる。
次に図7以降を参照して、部品処理システム1に備えられる、昇降付勢機構40と、部品保持機構45の動作につて詳細に説明する。図7に示すように、部品保持機構45は、例えば二つの部品保持具145、150を備える。ターレット型回転搬送装置10から独立して搬送経路上に固定配置される昇降付勢機構40は、部品保持機構45と係合して、部品保持具145、150を昇降させる。この際、部品保持具145、150の一つが部品を受入領域97に解放し、部品保持具145、150の他方が回収領域99から回収する。
すなわち昇降付勢機構40と部品保持機構45は、第一処理領域52Aと、第二処理領域52Bと、第三処理領域52Cのそれぞれにおいて、互いに連携して部品の解放と回収をおこない、複数の低温用処理装置75、予熱処理装置80、高温用処理装置85の間での部品の授受を同時に実現する。具体的には、第一乃至第三処理領域52A、52B、52Cの三者間で同時に動作すると同時に、各処理領域において、部品の解放と回収も同時に動作する。
昇降付勢機構40は、ターレット型回転搬送装置10から独立して架台35に固定され、搬送経路上の各処理領域52に対応して固定配置される。部品保持機構45はターレットテーブル12に固定され、ターレットテーブル12の回転運動に伴って、その位置を変える。昇降付勢機構40は、各処理領域52で一時停止する部品保持機構45と係合するのに適切な位置に設置される。
具体的には昇降付勢機構40は、回転運動を行うモーター180と、モーター180の回転軸に係合して回転運動を直線往復運動に変換する斜板カム構造175と、斜板カム構造175において直線往復運動を伝達する軸部177と、軸部177に固定される回収用係合部155及び解放用係合部165を備える。従って、回収用係合部155及び解放用係合部165は、モーター180の回転動力によって、鉛直方向に往復運動自在となる。回収用係合部155及び解放用係合部165は、部品保持機構45の第一部品保持具145と第二部品保持具150を昇降させる。なお、軸部177は、鉛直方向上向きに弾性体(図示省略)で支持されており、斜板カム構造175の回転に従って鉛直方向に往復運動自在となる。勿論、エアシリンダや油圧シリンダ、電磁ソレノイド等の直動動力源によって、直接、軸部177を上下方向に駆動しても良い。
図8に拡大して示すように、部品保持機構45は、第一部品保持具145と第二部品保持具150を有する。第一及び第二部品保持具145、150の一方は部品を載置部から回収し、他方は部品を載置部へ解放する。第一部品保持具145は、下端に部品を保持する第一保持端146を有する。第二部品保持具150は、下端に部品を保持する第二保持端151を有する。
第一保持端145と第二保持端150は、それぞれ部品を解放、吸着するノズルの先端面となる。具体的には、第一部品保持具145と第二部品保持具150は中空のチューブ状(円筒状)であり、それぞれがダイヤフラムポンプ(図示省略)に接続されている。ダイヤフラムポンプは制御装置25によって制御され、部品を吸着する場合には第一部品保持具145及び/又は第二部品保持具150内部空間を減圧し、部品を解放する場合には第一部品保持具145及び/又は第二部品保持具150の内部空間を大気圧に戻す。
部品保持機構45は、ターレットテーブル12に固定されるハウジング179と、ハウジング179に設けられて、第一部品保持具145を鉛直方向に移動自在に案内する第一案内部147と、第二部品保持具150を鉛直方向に移動自在に案内する第二案内部152と、第一部品保持具145を上方向に付勢する第一弾性部148と、第二部品保持具150を上方向に付勢する第二弾性部153を有する。なお、第一案内部147は、第一部品保持具145と並行に一体化される第一摺動軸145Aを摺動自在に案内する。第二案内部152は、第二部品保持具150と並行に一体化される第二摺動軸150Aを摺動自在に案内する。
これにより、第一及び第二部品保持具145、150は、鉛直方向に互いに独立して往復移動可能であり、かつ、外力が作用しない状態では、上昇側に付勢された状態で位置決めされる。以上の構成により、部品保持機構45は、第一部品保持具145と第二部品保持具150を互いに独立して鉛直方向に案内する案内機構を有することになる。なお、第一及び第二弾性部148、153は、例えば金属製のバネである。
部品保持機構45は、第一保持端146(第一部品保持具145)と鉛直方向に連動する第一受け部160と、第二保持端151(第二部品保持具150)と鉛直方向に連動する第二受け部170を備える。第一受け部160及び第二受け部170は、鉛直方向の上方側に突出しており、昇降付勢機構40の回収用係合部155又は解放用係合部165と上下方向に係合する。
従って、昇降付勢機構40の回収用係合部155又は解放用係合部165により、第一受け部160又は第二受け部170が下方に押し下げられると、第一及び第二弾性部148、156の付勢力に抗して、第一及び第二部品保持具145、150が下降する。
なお、図8(A)では、ノズル上昇時の静止状態として、第二受け部170が回収用係合部155と距離を空けて対向し、第一受け部160が解放用係合部165と距離を空けて対向する状態を例示している。このとき、部品保持機構45では、第一受け部160と第二受け部170の状態の高さは等しく設定される。
昇降付勢機構40では、回収用係合部155の下端(付勢面)と解放用係合部165の下端(付勢面)は、鉛直方向に異なる位置に設定されている。具体的に、回収用係合部155が、解放用係合部165と比較して鉛直方向の下方側に設定される。この高低差Dの分だけ、回収用係合部155の方が、解放用係合部165と比較して第一及び第二部品保持具145、150を下降させる移動ストローク(下方押し込み量)が大きくなる。
昇降付勢機構40は、より詳細に、軸部177に対して一体的に保持されたベース部178を備えており、このベース部178に対して、回収用係合部155と解放用係合部165が鉛直方向に調整自在に設置されている。なお、ここでは、ベース部178の雌ねじ孔に対して、雄ねじ体となる回収用係合部155と解放用係合部165が螺合しており、回収用係合部155と解放用係合部165を回動させることで、下端(付勢面)の位置を調整自在となっている。結果、昇降付勢機構40では、解放側や回収側の相違や、部品の厚みが変更された場合のように、その目的や役割に応じて、昇降付勢機構40の係合部の高さを変更できる。
図8(B)に示すように、昇降付勢機構40の軸部177が鉛直下向きに移動することで、解放用係合部165が対向する第一受け部160を下向きに押し、回収用係合部155が対向する第二受け部170を下向きに押す。この動きに伴い、第一受け部160及び第二受け部170にそれぞれ連接する第一保持端146及び第二保持端151が鉛直下向きに移動される。ノズル下降後の静止状態では、第一保持端146と第二保持端151に、上記高低差Dと同じ分だけの高低差Eが生じる。つまり、第一保持端146が、第二保持端151と比較して鉛直方向の上方側に位置決めされる。
すなわち、昇降付勢機構40は、第一保持端146及び第二保持端151の下降後の高さ制御も同時に実現可能となっている。
このとき第一及び第二弾性部148、153は弾性変形によって収縮している。このため昇降付勢機構40の軸部177が鉛直上向きに移動する(図8(A)の状態に復帰する)場合には、第一保持端146及び第二保持端151も上昇して復帰する。なお、図8では、第二受け部170が回収用係合部155と対向し、第一受け部160が解放用係合部165と対向する状態を例示したが、図7(B)に示すように、昇降付勢機構40において、回収用係合部155と解放用係合部165を反対にすれば、第二受け部170が解放用係合部165と対向し、第一受け部160が回収用係合部155と対向できる。また、特に図示しないが、昇降付勢機構40において、回収用係合部155と解放用係合部165の一方を省略すれば、第一及び第二部品保持具145、150の一方のみに限定して、回収目的又は解放目的で昇降させることができる(図11(B)(F)参照)。
なお上記実施形態では、鉛直方向に直線往復運動を伝達する共通の軸部177によって、回収用係合部155及び解放用係合部165を一体的に上下動させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回収用係合部155及び解放用係合部165を独立させておき、回収用係合部155及び解放用係合部165の各々に対して、独立した直動機構を設けても良い。このようにすると、部品保持機構45の第一部品保持具145と第二部品保持具150を、回収用係合部155及び解放用係合部165によって、独立して昇降させることができる。また、その第一部品保持具145と第二部品保持具150の移動ストロークも、互いに独立した直動機構で個別に制御することができる。
次に図9を参照して部品保持機構45による部品の回収動作及び部品の解放動作を説明する。ここでは、第一処理領域52Aにおいて、部品の回収及び解放を行う場合を例示する。
図9(A)は、部品保持機構45の第一部品保持具145が上流側工程(部品供給領域51)で部品172を吸着保持しており、ターレット型回転搬送装置10の回転によって、受入領域97の上方にその部品172を位置決めした状態となる。この際、載置プレート50の回転も停止し、受入領域97に位置決めされる載置部100が空孔となる。また、隣接する回収領域99に位置決めされる載置部100には、測定終了後の部品174が載置されている。勿論、残りの載置部100にも部品が載置されている。
図9(B)は、部品保持機構45が、部品の回収及び部品の解放をおこなう直前の状態となる。第二部品保持具150は、載置プレート50の載置部100に接近し、部品174を吸着保持して回収姿勢となっている。一方、第一部品保持具145は、空孔となる載置部100の上で、少し上方に離れた状態で部品172を保持しており、解放準備状態となっている。この際、第二保持端151は、載置部100に接近することで、部品174の上面と当接する。一方、第一保持端146は、第二保持端151よりも載置部100から上方に離反した場所に位置決めされる。部品174を吸着して回収したい場合には、部品174と第二保持端151がなるべく近接(接触)している方が回収しやすい。一方、第一保持端146が部品172を解放する場合は、第一保持端146と部品172の間に静電気を発生させないことが重要であり、第一保持端146によって部品172を載置部100に押し付けないことが、静電気の抑制に効果的である。
図9(B)の状態で、第一部品保持具145が、吸着用の負圧をカットすることで、部品172を載置部100内に落下させてから、第一及び第二部品保持具145、150を上昇させることで、図9(C)の状態となる。つまり、部品保持機構45は、載置プレート50上への部品の解放と、載置プレート50上からの部品の回収を略同時に行う。図9(C)では、昇降付勢機構40が軸部177を鉛直上向きに移動させる。回収された部品174は、第二部品保持具150に吸着された状態で鉛直方向上向きに移動される。勿論、第一部品保持具145から解放された部品172は、載置部100に載置されている。この後、第二部品保持具150が部品174を保持した状態で、ターレット型回転搬送装置10の回転によって、次の下流側の第二処理装置52Bへ移動すると、上流側の新たな部品保持機構45が、第一処理領域52Aの上方に移動してくる(図3(A)~図3(C)参照)。これと同時に、載置プレート50が矢印W方向に回転することで、部品172の回収によって空孔となった載置部100が受入領域97に位置決めされ、処理済となる次の部品174が、回収領域99に位置決めされる。この結果、図9(A)の状態に戻る。
次に、図10を参照して、共通の部品保持機構45が、複数の処理領域52間を移動しながら、順番に部品を取り扱う動作について説明する。
図10(A)には、第一処理領域52Aにおいて、第三昇降付勢機構40Cと部品保持機構45が係合して、第一部品保持具145が第一処理領域52Aの解放領域97に部品172を解放し、第二部品保持具150が回収領域99の部品174を回収する。
その後、第三昇降付勢機構40Cと部品保持機構45が共に鉛直上向きに移動することで、第三昇降付勢機構40Cと部品保持機構45が離反して、図10(B)の状態となる。その後、ターレット型回転搬送装置10が回転することで、部品保持機構45に回収された部品174は、第二処理領域52Bへ搬送されて、図10(C)の状態となる。ちなみに、図10(B)の状態において、第一処理領域52Aの載置プレート50は、矢印の通り図中の右方向に移動することで、回収領域99で空となっている載置部100を、受け入れ領域97に移動させる。
図10(C)では、第四昇降付勢機構40Dの直下に部品保持機構45が配置されることで、部品保持機構45の受け部と第四昇降付勢機構40Dの係合部が対向している。この状態で軸部177が鉛直下向きに移動すると、第四昇降付勢機構40Dの回収用係合部155と解放用係合部165が、部品保持機構45の受け部160、170を押圧することになり、その押圧力により、部品174を保持している第二部品保持具150と、部品を保持していない第一部品保持具145が、鉛直下向きに移動する。ここで、第四昇降付勢機構40Dの回収用係合部155と解放用係合部165の位置は、図10(A)の第三昇降付勢機構40Cの同一と相対的に逆になっている。すなわち、第二部品保持具150が解放用係合部165と対向し、第一部品保持具145が回収用係合部155と対向する。このような配置にすることで、第二処理領域52Bでは、第二部品保持具150が部品174を解放する作業を行い、第一部品保持具145が部品176を回収する作業を行う。なお、第二処理領域52Bの受け入れ領域97と回収領域99の位置も、第一処理領域52Aと相対的に逆になっている。
その後、図10(D)に示すように、部品保持機構45と第四昇降付勢機構40Dが係合して第二部品保持具150が保持していた部品174を、受け入れ領域97の載置部100に解放すると略同時に、第一部品保持具145が、回収領域99の載置部100から部品176を回収する。具体的には、第二部品保持具150が保持する部品174を載置部100の上方で少し浮かせた状態で、負圧を大気開放することで部品174を解放し、第一部品保持具145の吸着面を載置部100内の部品176に当接させた状態で、真空引き行うことで、部品176を吸着保持する。
その後、図10(E)に示すように、部品保持機構45に係合している第四昇降付勢機構の軸部177が鉛直上向きに移動することで、第一部品保持具145と第二部品保持具150が上昇して第四昇降付勢機構40Dと部品保持機構45が離反する。その後、ターレット型回転搬送装置10が回転することで、部品保持機構45が、部品176と共に次の第三処理領域52Cに移動して、図10(F)の状態となる。ちなみに、図10(E)の状態において、第二処理領域52Bの載置プレート50は、矢印の通り図中の左方向に移動することで、回収領域99で空となっている載置部100を、受け入れ領域97に移動させる。つまり、載置プレート50による部品の移動方向も、第一処理領域52Aとは相対的に逆となっている。
図10(F)の第三処理領域52Cでは、第六昇降付勢機構40Fの直下に部品保持機構45が配置されることで、部品保持機構45の受け部と第六昇降付勢機構40Fの係合部が対向している。第三処理領域52Cでの動作は、第一処理領域52Aの動作と同一又は類似するので、説明を省略する。
このように、共通の部品保持機構45を第一乃至第三処理領域52A、52B、52Cの間で移動させつつ、第一乃至第三処理領域52A、52B、52Cの上方に別々の第三昇降付勢機構40Cと第四昇降付勢機構40Dと第六昇降補正機構40Fを配置することで、部品保持機構45を複雑な構造にすることなく、第一部品保持具145と第二部品保持具150の役割(吸着・解放)を容易に切り替えることができる。すなわち第一部品保持具145と第二部品保持具150移動ストロークの変更が、昇降付勢機構によって簡単に実現できる。
ちなみに、部品を搬送するターレット型回転搬送装置10の重量的負荷は少ないほうが処理速度も上げやすく、また消費電力も少なくすむ。本部品処理システム1において、固定配置される昇降付勢機構40と、ターレット型回転搬送装置10が分割されているので、ターレット型回転搬送装置10の回転重量に、昇降付勢機構40が含まれない。結果、全体として処理速度も上げやすく、また消費電力も少なくすむという優れた効果を奏する。
また、部品処理システム1によれば、部品保持機構45における第一及び第二部品保持具145、150が、受入領域97と回収領域99に近接された際に、部品の解放と回収を略同時におこなう。また、部品を載置部100に解放する場合の第一及び第二部品保持具145、150と載置部100の底面までの距離と、部品を載置部100から回収する場合の第一及び第二部品保持具145、150と載置部100の底面までの距離とを変更することができるので、載置部100への部品の解放と、載置部からの部品の回収を適切に行うことができる。
また、部品処理システム1によれば、部品の回収する時における第一及び第二部品保持具145、150と載置部100の底面までの距離が、部品の解放する時における第一及び第二部品保持具145、150と載置部100の底面までの距離より小さい。結果、載置部100にある部品を回収しやすく、載置部100に部品を解放し易い状態を実現できる。なお、部品の解放する時において、第一及び第二部品保持具145、150と載置部100の底面までの距離を大きくすることにより、載置部100の底面から部品を少し浮いた状態で、自然落下させるように解放できるので、第一及び第二部品保持具145、150と部品の間の摩擦等による静電気が抑制され、解放精度が高くなる。なお、図中では、部品の底面と、載置部100の底面の距離(浮上距離)が、比較的大きく見えるように誇張表示しているが、実際は、浮上距離は部品の高さよりも小さく設定されることが好ましく、より望ましくは、部品高さの半分以下に設定する。例えば、近年の部品は微細化が進展し、例えば、1mm角以下(部品高さ1mm以下)のサイズとなる場合も多い。このような部品の浮上距離は、1mm以下であることが好ましく、より望ましくは0.5mm以下とする。
このように、本部品処理システム1によれば、第一及び第二部品保持具145、150の回収距離(回収時の移動ストローク)と解放距離(解放時の移動ストローク)を、昇降付勢機構の係合部のセッティング状態によって互いに異ならせたり、変更したり、微調整したりできる。つまり、共通の第一及び第二部品保持具145、150について、移動経路上の複数個所に配置される昇降付勢機構のセッティングによって、第一及び第二部品保持具145、150の一方が部品を回収して他方が部品を解放する状態と、第一及び第二部品保持具145、150の他方が部品を回収して一方が部品を解放する状態との機能の切り替えが簡単に可能となる。
次に、図11を参照して、部品供給領域51、第一処理領域52A、第二処理領域52B、第三処理領域52C、第二部品搬出領域53Bにおいて、同時並行で処理が進む状態を説明する。ここでは、図11(A)に示すように、部品供給領域51に第一部品保持機構45Aが停止し、第一処理領域52Aに第四部品保持機構45Dが停止し、第二処理領域52Bに第五部品保持機構45Eが停止し、第三処理領域52Cに第七部品保持機構45Gが停止し、第二部品搬出領域53Bに第十一部品保持機構45Lが停止して、全てが同時に処理される状態を説明する。
図11(B)に示す部品供給領域51では、第一部品保持機構45Aが、パーツフィーダ等によって供給される部品172を吸着保持する。ここでは、第一部品保持機構45Aの第一部品保持具145を利用して部品172を吸着しており、第二部品保持具150は使用しない。従って、上方に固定される第一昇降付勢機構40Aは、第一部品保持具145に対応した回収用係合部155を備えており、解放用係合部は省略されている。従って、第一昇降付勢機構40Aでは、第一部品保持具145のみを回収用移動ストロークで昇降させる。
図11(C)に示す第一処理領域52Aでは、第四部品保持機構45Dが部品の回収と解放を行う。具体的に第四部品保持機構45Dでは、第一部品保持具145が部品供給領域51で吸着した部品172を解放し、第二部品保持具150が、第一処理領域52Aで所望の処理が完了した部品174を吸着回収する。
図11(D)に示す第二処理領域52Bでは、第五部品保持機構42Eが部品の回収と解放を行う。具体的に第五部品保持機構42Eでは、第二部品保持具150が第一処理領域52Aで吸着した部品174を解放し、第一部品保持具145が、第二処理領域52Bで所望の処理が完了した部品176を吸着回収する。
図11(E)に示す第三処理領域52Cでは、第七部品保持機構42Gが部品の回収と解放を行う。具体的に第七部品保持機構42Gでは、第一部品保持具145が第二処理領域52Bで吸着した部品176を解放し、第二部品保持具150が、第三処理領域52Cで所望の処理が完了した部品178を吸着回収する。
図11(F)に示す第二部品搬出領域53Bでは、第十一部品保持機構45Lが、第三処理領域52Cで吸着した部品178を解放する。ここでは、第十一部品保持機構45Lの第二部品保持具150を利用して部品178を解放しており、第一部品保持具145は使用しない。従って、上方に固定される第九昇降付勢機構40Iは、第二部品保持具150に対応した解放用係合部165を備えており、回収用係合部は省略されている。従って、この第九昇降付勢機構40Iでは、第二部品保持具150のみを解放用移動ストロークで昇降させる。第二部品搬出領域53Bで搬出される部品178は、例えば、テーピング機械等によってパッケージングされる。
図12(A)には、ターレット型回転搬送装置10の搬送軌跡に沿って配置される第一乃至第三処理領域52A~53Cの低温用処理装置75、予熱処理装置80と、高温用処理装置85について、内部の移動機構による部品移動方向の相対関係を示す。図10や図11で説明したように、隣り合う処理領域の間においては、部品保持機構の第一部品保持具と第二部品保持具の役割(解放と回収)が逆転する。従って、低温用処理装置75、予熱処理装置80と、高温用処理装置85において、各々の載置プレート50が回転する方向が上流から下流に向かって順番に逆転する。
具体的に、低温用処理装置75の載置プレート50は時計回りに回転し、予熱処理装置80の載置プレート50は反時計回りに回転し、高温用処理装置85の載置プレート50は時計回りに回転する。このようにすることで、第一乃至第三領域52A~53Cにおいて、回収領域99と受入領域97を、上流から下流に向かって逆転させることができる。
なお、本発明では、隣接する処理領域における載置プレート50の回転方向が逆転する場合に限定されない。例えば、図12(B)に示すように、予熱処理装置80の載置プレート50が、ターレット型回転搬送装置10の環状の搬送経路の径方向内側に配設される場合は、予熱処理装置80の載置プレート50も、時計回りに回転させることになる。
即ち、本発明では、第一乃至第三領域52A~53Cにおいて、回収領域99と受入領域97の相対位置関係を、上流から下流に向かって交互に逆転させることができれば、各第一乃至第三領域52A~53Cにおける部品の移動方法は特に限定されない。つまり、各第一乃至第三領域52A~53Cでは、各受入領域97で受け入れた部品を、ターレット型回転搬送装置10の搬送経路から離反させるように移送して時間を確保しつつ、その移送経路中で所望の処理(熱処理や計測、外観検査など)を実行し、その後、ターレット型回転搬送装置10の搬送経路に戻るように移送して部品を回収領域99に到達させればよい。なお、図12では、各処理装置75、80、85が、部品を平面方向に環状に移動させる場合を例示したが、鉛直方向やその他の方向に移動させても良い。また、部品の移動経路が正円に限られず、四角や多角形等、様々な移動経路(移動軌跡)を採用できる。
このようにすると、複数の処理領域52(第一乃至第三領域52A~53C)がある場合に、上流側に配置された処理領域52において回収保持された部品を、下流側に配置された処理領域52で解放する際に、部品保持機構45内において第一及び第二部品保持具145、150の相対位置を変える必要が無い。そのため部品保持機構45を耐久性のある単純な構造にすることができ、コスト的にも安価にすることができるという優れた効果を奏する。
尚、本発明の部品処理システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。