JP7006694B2 - ガスバリアー性フィルム、水蒸気バリアー性評価試験片及びガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法 - Google Patents

ガスバリアー性フィルム、水蒸気バリアー性評価試験片及びガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガスバリアー性フィルム、水蒸気バリアー性評価試験片及びガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法に関する。本発明は、特に、長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することを可能とするガスバリアー性フィルム、水蒸気バリアー性評価試験片、及びそれらを用いたガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法に関する。
現在、水蒸気や酸素等の各種ガスを遮断するガスバリアー性フィルムは、食品や医薬品等の包装材、太陽電池や薄型テレビ等の電子デバイス等の様々な用途に用いられている。
近年、これらガスバリアー性フィルムの要求性能はさらに高くなっている。例えば、電子ペーパーや有機EL等のディスプレイは、大気や外部から侵入する微量の水分で画質の悪化や動作不良が生じるため、従来、水分を通さないガラス基材が使用されてきた。しかしながら、デバイスのフレキシブル化及び軽量化の強い要請から、ガラス基材を高分子基材に置き換える開発が進められており、高分子基材において要求される水蒸気透過度は、1.0×10-3g/(m・24hr)以下、さらには1.0×10-5g/(m・24hr)以下といった非常に高いものである。
ここで、近年、広く検討されているガスバリアー性フィルムのバリアー性向上技術として、ガスバリアー層を多層積層構造とする技術を挙げることができる。これをロールtoロール方式で製造する場合、当該多層積層構造は、一般的に、製造ラインを複数回搬送して、無機層、中間層、保護層等を積層していくことにより形成される。各構成層の形成方法としては、真空中で気相成膜により形成する方法や、大気中で溶液塗布により形成する方法等、多岐にわたる。
多層積層構造のガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムに懸念される欠陥の一つとして、搬送方向の長手スジ状の傷を挙げることができる。この長手スジ状の傷は、成膜方法等が異なる方式で複数層積層されることにより多様な形態を取り、かつ積層されることにより埋設されてしまうため、光学的な手法では検出できない場合がある。また、多層積層構造の一部を、大気中で溶液塗布により形成した場合には、溶液塗布由来の故障、例えば、搬送時の種々の影響による、複数の周期が重畳された横段故障(長手方向において周期的に形成される、幅手方向に延びる膜厚ムラ)が発生する懸念がある。
例えば、ロールtoロール方式で製造されたガスバリアー性フィルムロールの幅手中央部に、10mm角のCa蒸着層を設けた検査部位を、4m間隔で有するガスバリアー性フィルムロールが開示されている(特許文献1参照。)。これにより、ガスバリアー性フィルムロールの品質評価として長手方向のガスバリアー性変化の情報を得ることができるものの、ロールtoロール方式の懸念点である長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を検出することはできない。
さらに、近年、電子ペーパーや有機EL等のディスプレイは大型化する傾向にあり、ガスバリアー性フィルムも1m以上の幅が必要とされている。したがって、このような広幅のガスバリアー性フィルムの長手方向及び幅手方向のガスバリアー性変化を、漏れなく正確に評価する方法が求められている。
特開2016-190439号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することを可能とするガスバリアー性フィルム、水蒸気バリアー性評価試験片、及びそれらを用いたガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法を提供することである。
本発明に係る上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、ガスバリアー層上に、第1及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を備え、第1水蒸気バリアー性試験領域部は、第1水分反応性金属層と、第1水分反応性金属層を封止する第1水蒸気不透過性層とを有し、第2水蒸気バリアー性試験領域部は、第2水分反応性金属層と、第2水分反応性金属層を封止する第2水蒸気不透過性層とを有し、第1水分反応性金属層と第2水分反応性金属層とが、樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されている構成をなすことで、長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することができることを見いだした。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段により解決される。
1.長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、
前記ガスバリアー層上に、第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を備え、
前記第1水蒸気バリアー性試験領域部は、前記ガスバリアー層上に、第1水分反応性金属層と、前記第1水分反応性金属層を封止する第1水蒸気不透過性層とをこの順に有し、
前記第2水蒸気バリアー性試験領域部は、前記ガスバリアー層上に、第2水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層を封止する第2水蒸気不透過性層とをこの順に有し、
前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されている構成をなすことを特徴とするガスバリアー性フィルム。
2.前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記幅手方向から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されていることを特徴とする第1項に記載のガスバリアー性フィルム。
3.前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されていることを特徴とする第1項に記載のガスバリアー性フィルム。
4.前記第1水蒸気不透過性層及び前記第2水蒸気不透過性層の少なくとも一方が、蒸着層であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
5.前記第1水蒸気バリアー性試験領域部は、前記第1水蒸気不透過性層を前記ガスバリアー層に対して固定する第1接着層をさらに有し、
前記第1水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
6.前記第2水蒸気バリアー性試験領域部は、前記第2水蒸気不透過性層を前記ガスバリアー層に対して固定する第2接着層をさらに有し、
前記第2水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていることを特徴とする第1項から第3項まで、第5項のいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
7.前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、1.0mm以上であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
8.前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置され、
前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さよりも長いことを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
9.前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、3.0mm以上であることを特徴とする第8項に記載のガスバリアー性フィルム。
10.長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムから切り出された切片の水蒸気バリアー性を評価する水蒸気バリアー性評価試験片であって、
前記ガスバリアー層上に設けられる水分反応性金属層と、
前記水分反応性金属層を封止する水蒸気不透過性層と、を備え、
前記ガスバリアー性フィルムの長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方における座標を示すマーカーが形成されていることを特徴とする水蒸気バリアー性評価試験片。
11.第1項から第9項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム、又は第10項に記載の水蒸気バリアー性評価試験片を用いることを特徴とするガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法。
本発明によれば、長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することを可能とするガスバリアー性フィルム、水蒸気バリアー性評価試験片、及びそれらを用いたガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、以下のように推察している。
本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、第1水分反応性金属層と、第2水分反応性金属層とが、樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されているので、長手方向及び幅手方向のいずれか他方において隙間なく水蒸気バリアー性評価を行うことができる。これにより、幅手方向から見たときに互いに一部重なる部分が存在する場合には、長手スジ状の微細な傷を高精度に検出することができ、長手方向から見たときに互いに一部重なる部分が存在する場合には、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することができる。
本発明のガスバリアー性フィルムの一例を示す概略平面図 図1のII-II線に沿った面の矢視断面図 第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の一例を示す概略平面図 第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の他の例を示す概略平面図 本発明のガスバリアー性フィルムの別の例を示す概略平面図 本発明のガスバリアー性フィルムの別の例を示す概略平面図 ガスバリアー層の形成に用いられる成膜装置の一例を示す概略構成図 実施例1の評価結果を示す説明図 ガスバリアー層の形成に用いられる塗布装置の一例を示す概略構成図 実施例2の評価結果を示す説明図
本発明のガスバリアー性フィルムは、長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、前記ガスバリアー層上に、第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を備え、前記第1水蒸気バリアー性試験領域部は、前記ガスバリアー層上に、第1水分反応性金属層と、前記第1水分反応性金属層を封止する第1水蒸気不透過性層とをこの順に有し、前記第2水蒸気バリアー性試験領域部は、前記ガスバリアー層上に、第2水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層を封止する第2水蒸気不透過性層とをこの順に有し、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されている構成をなすことを特徴とする。この特徴は、各実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明においては、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記幅手方向から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されていることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されていることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1水蒸気不透過性層及び前記第2水蒸気不透過性層の少なくとも一方が、蒸着層であることが好ましい。これにより、接着層を設けることなく、第1又は第2水蒸気不透過性層を、第1又は第2水分反応性金属層上に直接的に配置させることができ、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水分量を低減することができる。
また、本発明においては、前記第1水蒸気バリアー性試験領域部は、前記第1水蒸気不透過性層を前記ガスバリアー層に対して固定する第1接着層をさらに有し、前記第1水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていることが好ましい。
また、本発明においては、前記第2水蒸気バリアー性試験領域部は、前記第2水蒸気不透過性層を前記ガスバリアー層に対して固定する第2接着層をさらに有し、前記第2水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、1.0mm以上であることが好ましい。これにより、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1又は第2水分反応性金属層が周囲から腐食して、それらが重なる部分が消失するまでの時間がより長くなり、当該重なる部分におけるガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性について、より詳細な評価が行えるようになる。また、第1及び第2水蒸気バリアー性試験領域部によってガスバリアー性フィルムの長手方向又は幅手方向をより確実に隙間なくカバーすることができる。
また、本発明においては、前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置され、前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さよりも長いことが好ましい。これにより、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1又は第2水分反応性金属層が周囲から腐食して、それらが重なる部分が消失するまでの時間がより長くなることに寄与し、当該重なる部分におけるガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性について、より詳細な評価が行えるようになる。
また、本発明においては、前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、3.0mm以上であることが好ましい。これにより、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1又は第2水分反応性金属層が周囲から腐食して、それらが重なる部分が消失するまでの時間がより長くなることに寄与し、当該重なる部分におけるガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性について、より詳細な評価が行えるようになる。
また、本発明の水蒸気バリアー性評価試験片は、長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムから切り出された切片の水蒸気バリアー性を評価する水蒸気バリアー性評価試験片であって、前記ガスバリアー層上に設けられる水分反応性金属層と、前記水分反応性金属層を封止する水蒸気不透過性層と、を備え、前記ガスバリアー性フィルムの長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方における座標を示すマーカーが形成されていることを特徴とする。これにより、ガスバリアー性フィルムの長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することができる。
また、本発明のガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法は、上記ガスバリアー性フィルム、又は上記水蒸気バリアー性評価試験片を用いることを特徴とする。これにより、ガスバリアー性フィルムの長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《ガスバリアー性フィルム》
本発明のガスバリアー性フィルムは、長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、ガスバリアー層上に、第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を備え、第1水蒸気バリアー性試験領域部は、ガスバリアー層上に、第1水分反応性金属層と、第1水分反応性金属層を封止する第1水蒸気不透過性層とをこの順に有し、第2水蒸気バリアー性試験領域部は、ガスバリアー層上に、第2水分反応性金属層と、第2水分反応性金属層を封止する第2水蒸気不透過性層とをこの順に有し、第1水分反応性金属層と、第2水分反応性金属層とが、樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されている構成をなすことを特徴とする。
本発明のガスバリアー性フィルムは、樹脂基材上にガスバリアー層がロールtoロールで形成されたものであることが好ましく、通常はマスターロールとして巻取られて保管される。この場合、ロールtoロール方式の搬送方向が、ガスバリアー性フィルムの長手方向MDとなる。
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、例えばJIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度や、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定された酸素透過率で示される。一般的には水蒸気透過度が1g/(m・24hr)以下又は酸素透過率が1mL/(m・24hr・atm)以下であればガスバリアー性を有するといわれる。さらに、水蒸気透過度が1×10-2g/(m・24hr)以下であれば高ガスバリアー性を有するといわれ、有機ELや電子ペーパー、太陽電池、LCD等の電子デバイスに用いることができる。
図1~図3を参照して、本発明のガスバリアー性フィルムについて説明する。
図1は、長尺状のガスバリアー性フィルム1を厚さ方向から見た概略平面図である。図2は、図1におけるII-II線に沿った面の矢視断面図である。図3は、ガスバリアー性フィルム1の一部を厚さ方向から見た概略平面図である。
図1に示すように、ガスバリアー性フィルム1は、長尺状の樹脂基材4の一方の面上に設けられたガスバリアー層5上に、第1水蒸気バリアー性試験領域部10及び第2水蒸気バリアー性試験領域部20が、幅手方向TDに沿って複数設けられて構成されている。第1水蒸気バリアー性試験領域部10及び第2水蒸気バリアー性試験領域部20は、幅手方向TDにおいてガスバリアー性フィルム1の製品として有効な幅(製品有効幅)全域にわたって互い違いに設けられている。これにより、長手方向MDから見たときに、第1水蒸気バリアー性試験領域部10と第2水蒸気バリアー性試験領域部20とが互いに一部重なる。
図2に示すように、第1水蒸気バリアー性試験領域部10は、ガスバリアー層5上に、第1水分反応性金属層12と、当該第1水分反応性金属層12を封止する第1水蒸気不透過性層11とをこの順に有し、第1水蒸気不透過性層11をガスバリアー層5に対して固定する第1接着層13をさらに有する。第2水蒸気バリアー性試験領域部20も同様に構成され、ガスバリアー層5上に、第1水分反応性金属層22と、当該第2水分反応性金属層22を封止する第2水蒸気不透過性層21とをこの順に有し、第1水蒸気不透過性層をガスバリアー層5に対して固定する第2接着層(図示略)をさらに有する。
なお、図1に示す例では、第1水蒸気バリアー性試験領域部10及び第2水蒸気バリアー性試験領域部20をそれぞれ四つずつ計八つ備えるものとしたが、これに限られるものではない。それぞれを一つ~三つ備えるものとしても良いし、五つ以上備えるものとしても良い。また、ガスバリアー層5上の、第1水蒸気バリアー性試験領域部10及び第2水蒸気バリアー性試験領域部20の数量は互いに異なっていても良い。
また、図2に示す例では、第1水分反応性金属層12が第1水蒸気不透過性層11上に形成され、当該第1水分反応性金属層12をガスバリアー層5に対向させるようにして第1水蒸気不透過性層11が配置され、これが接着層13により固定されているが、これに限られるものではない。すなわち、第1水分反応性金属層12がガスバリアー層5上に形成され、これに対して第1水蒸気不透過性層11が接着層13によりガスバリアー層5に固定されているものとしても良い。ただし、後述するように、第1水蒸気不透過性層11が板状部材である場合、ある程度の剛性を有し、平坦性を有するため、当該第1水蒸気不透過性層11上に第1水分反応性金属層12を蒸着法により大面積で形成することができ、膜厚ムラを低減できるため、図2に示す態様の方が好ましい。
また、図2に示す例では、ガスバリアー性フィルム1が、樹脂基材4、ガスバリアー層5、並びに第1及び第2水蒸気バリアー性試験領域部10、20を備えて構成されているものとしたが、これに限られるものではない。ガスバリアー性フィルム1は、例えば、ハードコート層、ブリードアウト防止層、平滑層等の各種機能層をさらに備えていることが好ましい。これらの各種機能層は、従来公知の構成を採用することができる。
以下、本発明のガスバリアー性フィルムの主要構成について、詳細に説明する。
《第1水蒸気バリアー性試験領域部》
第1水蒸気バリアー性試験領域部は、ガスバリアー層上に、第1水分反応性金属層と、当該第1水分反応性金属層を封止する第1水蒸気不透過性層とをこの順に有する。第1水蒸気不透過性層が板状部材である場合には、第1水蒸気バリアー性試験領域部は、第1水蒸気不透過性層をガスバリアー層に対して固定する第1接着層をさらに有する。
ガスバリアー層と第1接着層と第1水蒸気不透過性層とが層厚方向に全て重なっている領域、つまりは封止されている領域の周縁部から、第1水分反応性金属層の周縁部までの最短距離は、例えば、1.0mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることがさらに好ましい。当該最短距離を1.0mm以上とすると、後述する第1水分反応性金属層と第2水分反応性金属層とが互いに一部重なる部分の水蒸気バリアー性評価が完了する前に、第1水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1水分反応性金属が周囲から腐食して当該重なる部分が消失することを、より確実に抑制することができる。
また、図1に示すように、ガスバリアー層上に第1水蒸気バリアー性試験領域部が複数設けられている場合には、第1水蒸気バリアー性試験領域部を構成する各層の構成(材料、層厚、形成方法等)は、第1水蒸気バリアー性試験領域部ごとに互いに異なっていても良いが、ガスバリアー性フィルムの面内において一様な水蒸気バリアー性評価を行う観点から、これらは同一であることが好ましい。
[第1水分反応性金属層]
本発明に係る第1水分反応性金属層は、水分との反応性を有する金属を含有する層であり、水分との反応により光学特性が変化する金属層であることが好ましい。
第1水分反応性金属層に用いられる金属材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はその合金が挙げられ、リチウム、カリウム等のアルカリ金属、又はカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属が好ましい。中でも、安価で比較的蒸着膜を形成しやすいカルシウムであることがより好ましい。
カルシウムは、水分と結合することで、水酸化カルシウムを生成し、銀色から透明に変色する。例えば、カルシウムの光反射率、光透過率又は輝度値の変化を測定することで、腐食の程度を解析することができ、水蒸気透過度を測定することができる。
第1水分反応性金属層の形成方法は、特に限定されるものではなく、蒸着法であっても良いし塗布法であっても良い。作業性、及び層厚の制御の観点から蒸着法であることが好ましい。例えば、金属蒸着源を有する真空蒸着装置を用い、金属材料を、蒸着させたい部分以外をマスクした下地部材の表面に蒸着させる。真空蒸着装置を用いることにより、第1水分反応性金属層の蒸着後、試料を大気に触れさせることなく封止できる。下地部材としては、ガスバリアー層であっても良いし、第1水蒸気不透過性層であっても良い。下地部材がガスバリアー層である場合には、樹脂基材及びガスバリアー層をガラス板等のサポート基板に固定し、平坦性を持たせることが好ましい。樹脂基材及びガスバリアー層に平坦性を持たせることで、大面積の蒸着においても、膜厚ムラを低減することができ、高精度な水蒸気バリアー性評価を可能とする水蒸気バリアー性試験領域部を形成することができる。
第1水分反応性金属層の層厚は、例えば、10~500nmの範囲内であることが好ましい。10nm以上であると、第1水分反応性金属層が下地部材の表面に均一に形成される。500nm以下であると、第1水蒸気不透過性層で封止する際に、第1水分反応性金属層が形成されている部分と形成されていない部分の境界部の段差を小さくすることができ、当該境界部での剥離や封止欠陥ができにくくなる。
第1水分反応性金属層は、ガスバリアー層上に配置されるが、精度良く水蒸気バリアー性評価を行う観点から、ガスバリアー層の周縁部から所定距離だけ離れた位置に形成されていることが好ましい。
[第1水蒸気不透過性層]
第1水蒸気不透過性層は、水分を透過せず、第1水分反応性金属層の表面(ガスバリアー層又は第1接着層に接する面を除く。)を被覆するように設けられることで第1水分反応性金属層を封止する層である。すなわち、第1水蒸気不透過性層は、その層厚方向から見たときに、第1水分反応性金属層の面積よりも大きく形成されていれば良い。なお、図1~図3に示例では、第1水蒸気不透過性層は、各第1水分反応性金属層ごとに個別に設けられて、これらをそれぞれ封止するように構成されているものとしたが、ガスバリアー層の表面全体を覆うことで全ての第1水分反応性金属層を一括して封止するよう構成されているものとしても良い。
また、第1水蒸気不透過性層は、透明(光透過性)であっても、不透明であっても良い。ここで、本発明において、透明とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、不透明とは、当該平均光線透過率が50%未満であることをいう。第1水蒸気不透過性層が透明である場合には、透過光を用いて、樹脂基材及びガスバリアー層側から第1水分反応性金属層の水蒸気との反応による腐食状態を観察し、公知の方法により、水蒸気バリアー性を評価することができる。また、第1水蒸気不透過性層が不透明である場合は、反射光を用いて、樹脂基材及びガスバリアー層側から第1水分反応性金属層の水蒸気との反応による腐食状態を観察し、公知の方法により、水蒸気バリアー性を評価することができる。透過光を用いた評価の方が、微細な傷等の影響による腐食を高感度で検出できるため、第1水蒸気不透過性層は透明であることが好ましい。
また、第1水蒸気不透過性層の周縁部から第1水分反応性金属層の周縁部までの最短距離は、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。当該最短距離を0.5mm以上とすると、後述する第1水分反応性金属層と第2水分反応性金属層とが互いに一部重なる部分の水蒸気バリアー性評価が完了する前に、第1水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1水分反応性金属層が周囲から腐食して当該重なる部分が消失することを、より確実に抑制することができる。
ここで、第1水蒸気不透過性層は、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていても良いし、蒸着層であっても良い。第1水蒸気不透過性層が蒸着層であると、第1接着層を設けることなく、第1水蒸気不透過性層を第1水分反応性金属層上に直接的に配置することができ、第1水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水分量をさらに低減することができる。
(第1水蒸気不透過性層が板状部材である場合)
第1水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されている場合、第1水蒸気不透過性層は、例えば、ガラス基材であることが好ましい。ガラス基材の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、ケイ酸塩ガラス等が挙げられ、ケイ酸塩ガラスであることが好ましく、シリカガラス又はホウケイ酸ガラスであることがより好ましい。ガラス基材の厚さとしては、例えば、0.1~2mmの範囲内である。
(第1水蒸気不透過性層が蒸着層である場合)
第1水蒸気不透過性層が蒸着層である場合には、第1水蒸気バリアー性試験領域部は、第1接着層を有していなくても良く、蒸着層である第1水蒸気不透過性層が、ガスバリアー層及び第1水分反応性金属層に接するようにして設けられている。また、この場合には、ガスバリアー層上に第1水分反応性金属層が形成された後に、当該第1水分反応性金属層を覆うように、蒸着層である第1水蒸気不透過性層が形成されることが好ましい。
また、第1水蒸気不透過性層は、一般にガスバリアー層として用いられる公知の無機化合物を好ましく用いることができる。
また、蒸着法としても、一般にガスバリアー層を形成する公知の方法を用いることができる。蒸着法で第1水蒸気不透過性層を形成する際、樹脂基材及びガスバリアー層をガラス板等のサポート基板に固定し、平坦性を持たせておくことが好ましい。樹脂基材及びガスバリアー層に平坦性を持たせることで、大面積の蒸着においても、膜厚ムラを低減することができ、高精度な水蒸気バリアー性評価を可能とする水蒸気バリアー性試験領域部を形成することができる。
また、第1水蒸気不透過性層は、樹脂基材とガスバリアー層との組み合わせの水蒸気バリアー性よりも、高い水蒸気バリアー性を有していることが好ましい。したがって、第1水蒸気不透過性層としては、例えば、PECVDによる窒化ケイ素層、酸化窒化ケイ素層、酸化ケイ素層、酸化炭化ケイ素層等、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。また、第1水蒸気不透過性層が複数層からなる積層構成である場合、公知の有機層やプラズマ重合層を中間層として有していても良い。
第1水蒸気不透過性層の層厚は、特に限定されるものではなく、所望の水蒸気バリアー性を発揮することができればいずれであっても良い。
[第1接着層]
第1接着層に用いられる接着剤は、特に限定されず、通常接着剤、粘着剤として用いられるもの、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、アクリル酸系オリゴマー又はメタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化性又は熱硬化性接着剤、エポキシ系等の熱硬化性又は化学硬化性(二液混合)接着剤、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等を好ましく用いることができる。これらのうち水蒸気バリアー性を有するものが好ましい。
第1接着層としては、シート状に加工された接着剤を用いることが好ましい。
シート状の接着剤としては、常温(25℃程度)では非流動性を示し、かつ加熱すると50~120℃の範囲内で流動性を発現するようなものが好ましい。
第1接着層の層厚としては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選定されるが、例えば、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。50μm以下とすることで、第1接着層の端部からの水蒸気侵入を抑制することができる。第1接着層の層厚の下限は、必要とされる接着性が得られれば特に規定されないが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
層厚50μmの第1接着層における水蒸気透過度は、40℃、90%RHの雰囲気下で、例えば、好ましくは25g/(m・24hr)以下、より好ましくは10g/(m・24hr)以下、さらに好ましくは8g/(m・24hr)以下である。25g/(m・24hr)以下であると、端部からの水浸入をより確実に防止することができる。
第1接着層の光透過率は、例えば、全光線透過率で80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が80%以上であると、入射した光のロスが小さくなり、透過観察により適する第1水蒸気バリアー性試験領域部を構成することができる。全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定することができる。
[第1水蒸気バリアー性試験領域部の形成方法]
第1水蒸気バリアー性試験領域部の形成方法としては、上記構成を有していれば、特に限定されるものではない。例えば、第1水蒸気不透過性層が板状部材である場合を例にとって説明すると、まず、第1水蒸気不透過性層の片面に、層厚方向から見たときに第1水蒸気不透過性層よりも小さい面積で、第1水分反応性金属層を形成する。第1水分反応性金属層は、第1水蒸気不透過性層の周縁部近傍に未形成領域が存在するように形成されることが好ましい。次いで、ガスバリアー層上に、第1接着層を形成する。第1接着層としては、シート状の接着剤を、ガスバリアー層に貼合して形成することが好ましい。次いで、第1水蒸気不透過性層を、第1水分反応性金属層が第1接着層に対向するようにして、ガスバリアー層に対して貼合する。この貼合には、例えば、真空ラミネート装置を用いることができる。次いで、必要があれば、第1接着層の硬化処理を行う。硬化処理としては、例えば、加熱、UV照射、両者の組合せ等が用いられる。
《第2水蒸気バリアー性試験領域部》
第2水蒸気バリアー性試験領域部は、上記第1水蒸気バリアー性試験領域部と同様、第2水分反応性金属層と、第2水蒸気不透過性層とを有し、第2水蒸気不透過性層が板状部材である場合には第2接着層をさらに有する。これら第2水分反応性金属層、第2水蒸気不透過性層及び第2接着層は、それぞれ、上記第1水分反応性金属層、第1水蒸気不透過性層及び第1接着層と略同様に構成される。
なお、第1水蒸気バリアー性試験領域部を構成する各層と、第2水蒸気バリアー性試験領域部を構成する各層は、その構成(材料、層厚、形成方法等)が互いに異なっていても良いが、ガスバリアー性フィルムの面内において一様な水蒸気バリアー性評価を行う観点からこれらは同一であることが好ましい。
また、図1に示すように、ガスバリアー層上に第2水蒸気バリアー性試験領域部が複数設けられている場合には、第2水蒸気バリアー性試験領域部を構成する各層の構成(材料、層厚、形成方法等)は、第2水蒸気バリアー性試験領域部ごとに互いに異なっていても良いが、ガスバリアー性フィルムの面内において一様な水蒸気バリアー性評価を行う観点から、これらは同一であることが好ましい。
《第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の位置関係》
本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、第1水分反応性金属層と、第2水分反応性金属層とが、樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されている。
例えば、図3に示すように、第1水分反応性金属層12と第2水分反応性金属層22とは、長手方向MDから見たときに、互いに一部重なる部分L1が存在するように配置されている。重なる部分L1が存在することで、第1水分反応性金属層12及び第2水分反応性金属層22によりガスバリアー性フィルムの幅手方向TDを隙間なくカバーすることができる。また、第1水分反応性金属層12と第2水分反応性金属層22とが長手方向MDから見たときに、互いに全てが重なっているものではないため、第1水分反応性金属層12及び第2水分反応性金属層22により、幅手方向TDにおいてガスバリアー性フィルムのより広い範囲を低コストでカバーすることができる。したがって、例えば、ガスバリアー性フィルムの長手方向MDに沿って延在し、光学的に検出することができないような微細なスジ状故障傷等が存在した場合に、これをより確実に検出することができる。
また、上記重なる部分L1の幅手方向TDの長さとしては、例えば、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。1.0mm以上とすると、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1又は第2水分反応性金属層が周囲から腐食して、重なる部分L1が消失するまでの時間がより長くなり、重なる部分L1におけるガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性について、より詳細な評価が行えるようになる。また、1.0mm以上とすると、より確実にガスバリアー性フィルムの幅手方向TDを隙間なくカバーすることができる。
また、第1水分反応性金属層12及び第2水分反応性金属層22の幅手方向TDの長さは、ガスバリアー性フィルムのより広い範囲を低コストでカバーする観点から、上記重なる部分L1の幅手方向TDの長さの2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。
また、第1水分反応性金属層12と第2水分反応性金属層22のそれぞれの重なる部分L1の面積の合計は、例えば、第1水分反応性金属層12全体と第2水分反応性金属層22全体の合計の面積に対して、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましい。1%以上であると、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1又は第2水分反応性金属層が周囲から腐食して、重なる部分L1が消失するまでの時間がより長くなり、重なる部分L1におけるガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性について、より詳細な評価が行えるようになる。
ここで、例えば、一つの水蒸気バリアー性試験領域部を、幅手方向TDにおいてガスバリアー性フィルムの製品有効幅の全域にわたって形成する構成も考えられる。しかしながら、近年、ガスバリアー性フィルムの幅が1m以上に広幅化しており、これに対応するためには1m以上の長さの水蒸気バリアー性試験領域部を形成する必要がある。そしてそのためには、大型の水蒸気バリアー性試験領域部を形成する専用の装置が必要となり、非常にコストアップとなる。また、大サイズの水分反応性金属層や水蒸気不透過性層を形成したり、大サイズの水蒸気不透過性層をガスバリアー層上へ貼合したりする必要があることで、水蒸気バリアー性試験領域部を精度良く形成することができず、測定精度が低下するおそれもある。したがって、一つの水蒸気バリアー性試験領域部で全域をカバーするよりも、本発明のように複数の水蒸気バリアー性試験領域部で全域をカバーする方が、コスト的にも測定精度的にも有利である。
また、図3に示すように、第1水蒸気不透過性層11と第2水蒸気不透過性層21とは、長手方向MDから見たときに、互いに一部重なる部分L2が存在するように配置されていることが好ましい。また、重なる部分L2の幅手方向TDの長さは、上記重なる部分L1の幅手方向TDの長さよりも長いことが好ましく、より好ましくは3.0mm以上である。これにより、第1又は第2水蒸気バリアー性試験領域部の端部から侵入する水蒸気の影響で、第1又は第2水分反応性金属層が周囲から腐食して、重なる部分L1が消失するまでの時間がより長くなることに寄与し、重なる部分L1におけるガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性について、より詳細な評価が行えるようになる。また、非常に高いバリアー性を有するガスバリアー性フィルムにおいては、相対的に水蒸気バリアー性が劣化している部位を検出することが可能になる。
《第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の他の例》
上記した実施形態では、第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部が、ともに同一方向に延在する矩形状であるものとしたが、上記重なる部分が存在するように配置されていれば、これに限られるものではない。例えば、図4に示すように、第1水蒸気バリアー性試験領域部10が幅手方向TDに延在する矩形状であり、かつ第2水蒸気バリアー性試験領域部20が長手方向MDに延在する矩形状であるものとしても良い。この場合であっても、長手方向MDから見たときに、互いに一部重なる部分L1が存在し得る。
また、上記した実施形態では、第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部が、幅手方向TDに沿って配置されているものとしたが、第1水分反応性金属層と第2水分反応性金属層とが、長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分が存在するように配置されていれば、これに限られるものではない。
例えば、図5に示すように、第1水蒸気バリアー性試験領域部10及び第2水蒸気バリアー性試験領域部20が長手方向MDに沿って配置されているものとしても良い。この場合には、第1水分反応性金属層12と第2水分反応性金属層22とが幅手方向TDから見たときに互いに一部重なる部分が存在するように配置されており、ガスバリアー性フィルムにおいて複数の周期が重畳された横段故障を検出することができる。また、その周期を正確に検出することができるため、当該横段故障の発生原因を特定し、これが解消するよう対処することができる。
また、例えば、図6に示すように、第1水蒸気バリアー性試験領域部10及び第2水蒸気バリアー性試験領域部20が矢印方向aに沿って配置されているものとしても良い。この場合には、第1水分反応性金属層12と第2水分反応性金属層22とが長手方向MD及び幅手方向TDから見たときに互いに一部重なる部分L1が存在するように配置されており、長手スジ状の微細な傷、及び横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性をいずれも高精度に検出することができる。
《樹脂基材》
樹脂基材としては、可撓性を有する折り曲げ可能な樹脂フィルムが挙げられる。
ここでいう「可撓性」とは、φ(直径)50mmロールに巻き付け、一定の張力で巻取る前後で割れ等が生じることのない樹脂基材をいう。より好ましくはφ30mmロールに巻き付け可能な樹脂基材であるとより柔軟なガスバリアー性フィルムを提供できる。
この樹脂基材は、ガスバリアー層やその他の各種機能層を保持することができる材料であれば、特に限定されるものではない。
樹脂基材に適用可能な樹脂材料としては、例えば、アクリルポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂材料から構成される樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名:シルプラス、新日鉄住金化学株式会社製)、さらには上記したフィルム材料を2層以上積層して構成される樹脂フィルム等を用いることができる。
これら樹脂フィルムのうち、経済性や入手の容易性の観点からは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムが好ましく用いられる。
また、成膜処理で高温処理が必要な場合には、耐熱性と透明性を両立した透明ポリイミドフィルム、例えば、東洋紡株式会社製の透明ポリイミド系フィルム(例えば、タイプHM)や、三菱瓦斯化学株式会社製の透明ポリイミド系フィルム(例えば、ネオプリム L-3430)などを好ましく用いることができる。
本発明に適用する樹脂基材の厚さとしては、5~500μmの範囲が好ましいが、特に限定されない。
上記の樹脂材料を用いた樹脂基材は、未延伸フィルムでも良く、延伸フィルムでも良い。
《ガスバリアー層》
〔1〕ガスバリアー層の概要
本発明に係るガスバリアー層は、上記樹脂基材の少なくとも一方の面上に設けられ、両面に設けられていても良い。
本発明に係るガスバリアー層は、特に限定されるものではなく、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して乾燥した層に改質処理を施してなる層や、少なくともケイ素を含む層を、真空プラズマCVD法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition)やスパッタ法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD法)によって形成したガスバリアー層であっても良い。
中でも、本発明のガスバリアー性フィルムは、可撓性(屈曲性、折り曲げ耐性)、機械的強度、ロールtoロールでの搬送時の耐久性と、ガスバリアー性能とを両立する観点から、ガスバリアー層が構成元素に炭素、ケイ素及び酸素を含み、少なくとも磁場を発生させる磁場発生部材を有する対向ローラー電極間に、電圧を印加して発生させたプラズマを用いたプラズマ化学気相成長法により成膜処理されており、当該ガスバリアー層が、下記要件(i)~(iii)を全て満たすガスバリアー性フィルムの製造方法によって製造されることが好ましい。
(i)ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、並びに前記Lとケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、ガスバリアー層の層厚の表面から90%以上(上限:100%)の領域で、(炭素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(酸素の原子比)の順で多い(原子比がC<Si<O);
(ii)炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有する;
(iii)炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Cmax-Cmin差」とも称する。)が3at%以上である。
この製造方法によってガスバリアー性フィルムを製造することにより、全体のガスバリアー性及び当該ガスバリアー性の面内のばらつきと、折り曲げ耐性とを高度に両立したガスバリアー性フィルムを得ることが可能になるものである。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間はガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)におおむね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離をそのまま採用することができる。なお、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成することができる。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名“VG Theta Probe”
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
ガスバリアー層は、(ii)炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有することが好ましい。当該ガスバリアー層は、炭素分布曲線が少なくとも三つの極値を有することがより好ましく、少なくとも四つの極値を有することがさらに好ましく、五つ以上有していても良い。炭素分布曲線の極値が一つ以下である場合、得られるガスバリアー性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性が不十分となる場合がある。なお、炭素分布曲線の極値の数の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下であるが、極値の数は、ガスバリアー層の層厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
ここで、少なくとも三つの極値を有する場合においては、炭素分布曲線の有する一つの極値及び当該極値に隣接する極値におけるガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する。)は、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリアー層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、ガスバリアー層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリアー性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止でき、折り曲げを繰り返したときのガスバリアー性の劣化を改善することができる。
なお、本明細書において「極値」とは、ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比の極大値又は極小値のことをいう。また、本明細書において「極大値」とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素又は炭素)の原子比の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比の値よりも、当該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離をさらに4~20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4~20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少していれば良い。
同様にして、本明細書において「極小値」とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素又は炭素)の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比の値よりも、当該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離をさらに4~20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、4~20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上増加していれば良い。ここで、少なくとも三つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリアー性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されないが、ガスバリアー層の屈曲性、クラックの抑制/防止効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
さらに、当該ガスバリアー層は、(iii)炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Cmax-Cmin差」とも称する。)が3at%以上であることが好ましい。絶対値が3at%未満では、得られるガスバリアー性フィルムを屈曲させた場合に、ガスバリアー性が不十分となる場合がある。Cmax-Cmin差は5at%以上であることが好ましく、7at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。上記Cmax-Cmin差とすることによって、ガスバリアー性をより向上させることができる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。ここで、Cmax-Cmin差の上限は、特に制限されないが、ガスバリアー性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
上記のプラズマCVD法により形成されるガスバリアー層の層厚(乾燥層厚)は、上記(i)~(iii)を満たす限り、特に制限されない。例えば、当該ガスバリアー層の1層当たりの層厚は、20~3000nmであることが好ましく、50~2500nmであることがより好ましく、100~1000nmであることが特に好ましい。このような層厚であれば、ガスバリアー性フィルムは、優れたガスバリアー性及び屈曲時のクラック発生抑制/防止効果を発揮できる。なお、上記のプラズマCVD法により形成されるバリアー層が2層以上から構成される場合には、各ガスバリアー層が上記したような層厚を有することが好ましい。
本発明において、膜面全体において均一でかつ優れたガスバリアー性を有するバリアー層を形成するという観点から、ガスバリアー層が膜面方向(ガスバリアー層の表面に平行な方向)において実質的に一様であり、ばらつきが少ないことが好ましい。
ここで、ガスバリアー層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりバリアー層の膜面の任意の2か所の測定箇所について酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2か所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか又は5at%以内の差であることをいう。
その他、ガスバリアー層の組成とガスバリアー性との関係及び炭素分布曲線等の詳細については、特開2010-260347号公報や特開2011-73430号公報に記載されており、周知であるので詳細な説明を省略する。
〔2〕プラズマCVD法によるガスバリアー層の形成方法
本発明に係るガスバリアー層が上記(i)~(iii)までを全て満たすためには、以下説明するプラズマCVD法を行える成膜装置を用いることが好ましい。
本発明に係るガスバリアー層を形成する成膜装置は、真空チャンバー内において、樹脂基材を対向配置させる一対の対向ローラー電極を具備し、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜装置であって、少なくとも一組の下記手段(1)~(5)を有することが好ましい。
手段(1):対向配置させる樹脂基材間の対向空間に成膜ガスを供給する供給口
手段(2):対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する磁場発生装置
手段(3):対向空間にプラズマを発生させる電源
手段(4):樹脂基材上に薄膜層を形成する一対の対向ローラー電極
手段(5):対向空間の成膜ガスを排気する排気口
また、本発明に係るガスバリアー層の製造方法は、真空チャンバー内において、樹脂基材を対向配置させ、樹脂基材上に薄膜層を形成する成膜方法であって、少なくとも一組の下記工程(1)~(5)を有することが好ましい。
工程(1):対向配置させる樹脂基材間の対向空間に成膜ガスを供給する工程
工程(2):対向空間に膨らんだ無終端のトンネル状の磁場を形成する工程
工程(3):対向空間にプラズマを発生させる工程
工程(4):樹脂基材を対向配置させ、当該樹脂基材上に薄膜層を形成する工程
工程(5):対向空間の成膜ガスを排気する工程
ちなみに、従来の平坦電極(水平搬送タイプ)を用いた大気圧プラズマ放電でのCVD法(以下、大気圧プラズマCVD法という場合がある。)では、ガスバリアー層内の炭素原子成分の濃度勾配の連続的な変化が起こらないため、ガスバリアー性及び折り曲げ耐性の両立は困難である。磁場を発生させる磁場発生部材を有する対向ローラー電極間に電圧を印加して発生させたプラズマを用いたプラズマ化学気相成長法で形成されるガスバリアー層内において、炭素原子成分の濃度勾配が連続的に変化することによって、ガスバリアー性及び折り曲げ耐性を両立することができる。
本発明に係るガスバリアー層を形成する装置としては、図7に示す成膜装置100が好ましく用いられる。図7は、成膜装置の一例を示す概略構成図である。
図7に示すとおり、成膜装置100は、送り出しロール110と、搬送ロール111~114、112’、113’と、第1、第2、第3及び第4成膜ロール115、116、115’、116’と、巻取りロール117と、ガス供給管118、118’と、プラズマ発生用電源119、119’と、磁場発生装置120、121、120’、121’と、真空チャンバー130と、真空ポンプ140、140’と、制御部141と、を有する。
送り出しロール110、搬送ロール111~114、112’、113’、第1、第2、第3及び第4成膜ロール115、116、115’、116’、並びに巻取りロール117は、真空チャンバー130に収容されている。
送り出しロール110は、あらかじめ巻き取られた状態で設置されている樹脂基材1aを搬送ロール111に向けて送り出す。送り出しロール110は、紙面に対して垂直方向に延在した円筒状のロールであり、図示しない駆動モーターにより反時計回りに回転(図7の矢印を参照。)することにより、送り出しロール110に巻回された樹脂基材1aを搬送ロール111に向けて送り出す。
搬送ロール111~114、112’、113’は、送り出しロール110と略平行な回転軸を中心に回転可能に構成された円筒状のロールである。搬送ロール111は、樹脂基材1aに適当な張力を付与しつつ、樹脂基材1aを送り出しロール110から第1成膜ロール115に搬送するためのロールである。搬送ロール112、113は、第1成膜ロール115で成膜された樹脂基材1bに適当な張力を付与しつつ、樹脂基材1bを第1成膜ロール115から第2成膜ロール116に搬送するためのロールである。搬送ロール112’、113’は、第3成膜ロール115’で成膜された樹脂基材1eに適当な張力を付与しつつ、樹脂基材1eを第3成膜ロール115’から第4成膜ロール116’に搬送するためのロールである。さらに、搬送ロール114は、第4成膜ロール116’で成膜された樹脂基材1cに適当な張力を付与しつつ、樹脂基材1cを第4成膜ロール116’から巻取りロール117に搬送するためのロールである。
第1成膜ロール115及び第2成膜ロール116は、送り出しロール110と略平行な回転軸を有し、互いに所定距離だけ離間して対向配置された成膜ロール対である。また、第3成膜ロール115’及び第4成膜ロール116’も同様に、送り出しロール110と略平行な回転軸を有し、互いに所定距離だけ離間して対向配置された成膜ロール対である。第2成膜ロール116は、樹脂基材1bに対して成膜し、成膜された樹脂基材1dに適当な張力を付与しつつ、樹脂基材1dを第3成膜ロール115’へ搬送する。第4成膜ロール116’は、樹脂基材1eを成膜し、成膜された樹脂基材1cに適当な張力を付与しつつ、樹脂基材1cを搬送ロール114へ搬送する。
図7に示す例では、第1成膜ロール115と第2成膜ロール116との離間距離は、点Aと点Bとを結ぶ距離であり、第3成膜ロール115’と第4成膜ロール116’との離間距離は、点A’と点B’とを結ぶ距離である。第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’は、導電性材料で形成された放電電極であり、第1成膜ロール115と第2成膜ロール116、第3成膜ロール115’と第4成膜ロール116’とは、それぞれは互いに絶縁されている。なお、第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’の材質や構成は、電極として所望の機能を達成できるように適宜選択することができる。
さらに、第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’は、それぞれ独立に調温しても良い。第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’の温度は、特に制限されるものではないが、例えば-30~100℃の範囲内であるが、樹脂基材1aのガラス転移温度を超えて過度に高温に設定すると、樹脂基材が熱によって変形等を生じるおそれがある。
第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’の内部には、磁場発生装置120、121、120’、121’が各々設置されている。第1成膜ロール115と第2成膜ロール116とにはプラズマ発生用電源119により、第3成膜ロール115’と第4成膜ロール116’とにはプラズマ発生用電源119’により、プラズマ発生用の高周波電圧が印加される。それにより、第1成膜ロール115と第2成膜ロール116との間の成膜部S、又は第3成膜ロール115’と第4成膜ロール116’との間の成膜部S’に電場が形成され、ガス供給管118又は118’から供給される成膜ガスの放電プラズマが発生する。プラズマ発生用電源119が印加する電圧と、プラズマ発生用電源119’が印加する電圧とは、同一であっても異なっていても良い。プラズマ発生用電源119又は119’の電源周波数は任意に設定できるが、本構成の装置としては、例えば60~100kHzの範囲内であり、印加される電力は、有効成膜幅1mに対して、例えば1~10kWの範囲内である。
巻取りロール117は、送り出しロール110と略平行な回転軸を有し、樹脂基材1cを巻き取り、ロール状にして収容する。巻取りロール117は、図示しない駆動モーターにより反時計回りに回転(図7の矢印を参照。)することにより、樹脂基材1cを巻き取る。
送り出しロール110から送り出された樹脂基材1aは、送り出しロール110と巻取りロール117との間で、搬送ロール111~114、112’、113’、第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’に巻き掛けられることにより適当な張力を保ちつつ、これらの各ロールの回転により搬送される。なお、樹脂基材1a、1b、1c、1d、1eの搬送方向は矢印で示されている。樹脂基材1a~1eの搬送速度(ラインスピード)(例えば、図7の点Cや点C’における搬送速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー130内の圧力などに応じて適宜調整され得る。搬送速度は、送り出しロール110及び巻取りロール117の駆動モーターの回転速度を制御部141によって制御することにより調整される。搬送速度を遅くすると、形成される領域の厚さが厚くなる。
また、この成膜装置100を用いる場合、樹脂基材1a~1eの搬送方向を図7の矢印で示す方向(以下、順方向と称する。)とは反対方向(以下、逆方向と称する。)に設定してガスバリアー性フィルムの成膜工程を実行することもできる。具体的には、制御部141は、巻取りロール117によって樹脂基材1cが巻き取られた状態において、送り出しロール110及び巻取りロール117の駆動モーターの回転方向を上述の場合とは逆方向に回転するように制御する。このように制御すると、巻取りロール117から送り出された樹脂基材1cは、送り出しロール110と巻取りロール117との間で、搬送ロール111~114、112’、113’、第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’に巻き掛けられることにより適当な張力を保ちつつ、これらの各ロールの回転により逆方向に搬送される。
成膜装置100を用いてガスバリアー層を形成する場合は、樹脂基材1aを順方向及び逆方向に搬送して成膜部S又は成膜部S’を往復させることにより、ガスバリアー層の形成(成膜)工程を複数回繰り返すこともできる。
ガス供給管118、118’は、真空チャンバー130内にプラズマCVDの原料ガスなどの成膜ガスを供給する。ガス供給管118は、成膜部Sの上方に第1成膜ロール115及び第2成膜ロール116の回転軸と同じ方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から成膜部Sに成膜ガスを供給する。ガス供給管118’も同様に、成膜部S’の上方に第3成膜ロール115’及び第4成膜ロール116’の回転軸と同じ方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から成膜部S’に成膜ガスを供給する。ガス供給管118から供給される成膜ガスとガス供給管118’から供給される成膜ガスとは同一でも良いし、異なっていても良い。さらに、これらのガス供給管から供給される供給ガス圧についても、同一でも良いし異なっていても良い。
原料ガスには、ケイ素化合物を使用することができる。ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。これ以外にも、特開2008-056967号公報の段落0075に記載の化合物を使用することもできる。これらのケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い易さや得られるガスバリアー性フィルムの高いガスバリアー性などの観点から、ガスバリアー層の形成においては、HMDSOを使用することが好ましい。なお、これらのケイ素化合物は、2種以上が組み合わせて使用されても良い。また、原料ガスには、ケイ素化合物の他にモノシランが含有されても良い。
成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスが使用されても良い。反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物などのケイ素化合物となるガスが選択される。薄膜として酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素ガス、オゾンガスを使用することができる。なお、これらの反応ガスは、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー130内に供給するために、さらにキャリアガスが使用されても良い。また、成膜ガスとして、プラズマを発生させるために、さらに放電用ガスが使用されても良い。キャリアガス及び放電ガスとしては、例えば、アルゴンなどの希ガス、及び水素や窒素が使用される。
磁場発生装置120、121は、第1成膜ロール115と第2成膜ロール116との間の成膜部Sに磁場を形成する部材であり、磁場発生装置120’、121’も同様に、第3成膜ロール115’と第4成膜ロール116’との間の成膜部S’に磁場を形成する部材である。これらの磁場発生装置120、120’、121、121’は、第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’の回転に追随せず、所定位置に格納されている。
真空チャンバー130は、送り出しロール110、搬送ロール111~114、112’、113’、第1~第4成膜ロール115、116、115’、116’、及び巻取りロール117を密封して減圧された状態を維持する。真空チャンバー130内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類などに応じて適宜調整することができる。成膜部S又はS’の圧力は、0.1~50Paの範囲内であることが好ましい。
真空ポンプ140、140’は、制御部141に通信可能に接続されており、制御部141の指令に従って真空チャンバー130内の圧力を適宜調整する。
制御部141は、成膜装置100の各構成要素を制御する。制御部141は、送り出しロール110及び巻取りロール117の駆動モーターに接続されており、これらの駆動モーターの回転数を制御することにより、樹脂基材1aの搬送速度を調整する。また、駆動モーターの回転方向を制御することにより、樹脂基材1aの搬送方向を変更する。また、制御部141は、図示しない成膜ガスの供給機構と通信可能に接続されており、成膜ガスの各々の成分ガスの供給量を制御する。また、制御部141は、プラズマ発生用電源119、119’と通信可能に接続されており、プラズマ発生用電源119、119’の出力電圧及び出力周波数を制御する。さらに、制御部141は、真空ポンプ140、140’に通信可能に接続されており、真空チャンバー130内を所定の減圧雰囲気に維持するように真空ポンプ140、140’を制御する。
制御部141は、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備える。HDDには、成膜装置100の各構成要素を制御して、ガスバリアー層の形成を実現する手順を記述したソフトウェアプログラムが格納されている。そして、成膜装置100の電源が投入されると、上記ソフトウェアプログラムが上記RAMにロードされ上記CPUによって逐次的に実行される。また、上記ROMには、上記CPUが上記ソフトウェアプログラムを実行する際に使用する各種データ及びパラメーターが記憶されている。
〔3〕塗布法によるガスバリアー層の形成
樹脂基材上に、塗布方式でポリシラザン含有液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)を照射して改質処理することによりガスバリアー層を形成することも好ましい。
また、上記プラズマCVD法で設けたガスバリアー層の上に、塗布法によりガスバリアー層を形成することも好ましい。この場合には、下地のガスバリアー層に残存する微小な欠陥を、ポリシラザンのガスバリアー成分で埋めることができ、全体のガスバリアー性及び屈曲性をさらに向上でき、ガスバリアー性のばらつきを低減できる。
塗布法によるガスバリアー層の層厚は、例えば、1~500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~300nmの範囲内である。層厚が1nm以上であると十分なガスバリアー性能を発揮でき、500nm以下であると緻密な酸窒化ケイ素膜にクラックが入りにくい。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120-20、NAX120-20、NL120-20等が挙げられる。また、ポリシラザン溶液に、金属アルコキシド化合物又は金属キレート化合物、低分子シラザン/シロキサンを添加しても良い。
《水蒸気バリアー性評価試験片》
本発明の水蒸気バリアー性評価試験片は、長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムから切り出された切片の水蒸気バリアー性を評価する水蒸気バリアー性評価試験片であって、ガスバリアー層上に設けられる水分反応性金属層と、水分反応性金属層を封止する水蒸気不透過性層と、を備え、ガスバリアー性フィルムの長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方における座標を示すマーカーが形成されていることを特徴とする。
本発明の水蒸気バリアー性評価試験片を構成する樹脂基材、ガスバリアー層、水分反応性金属層及び水蒸気不透過性層は、それぞれ、上記した本発明のガスバリアー性フィルムを構成する樹脂基材、ガスバリアー層、第1及び第2水分反応性金属層、並びに第1及び第2水蒸気不透過性層と略同様に構成される。
本発明の水蒸気バリアー性評価試験片には、母体のガスバリアー性フィルムから切り出される前の配置を判断可能なように、ガスバリアー性フィルムの長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方における座標を示すマーカーが形成されている。マーカーは、水分反応性金属層に重ならない領域に形成されていることが好ましい。また、マーカーとしては、水蒸気バリアー性評価に影響がなければいずれの態様で形成されていても良く、所定のインクにより樹脂基材の裏面(ガスバリアー層形成面と反対側の面)に印字されているものとしても良いし、当該樹脂基材の裏面に刻印されているものとしても良い。インクを用いる場合は、水分反応性金属層を形成するプロセスにおいて、アウトガスの発生が少ないことが好ましい。
本発明の水蒸気バリアー性評価試験片の製造方法としては、上記した本発明のガスバリアー性フィルムから第1水蒸気バリアー性試験領域部又は第2水蒸気バリアー性試験領域部が形成された領域を切り出す方法や、ガスバリアー層が形成された樹脂基材の所定領域を切り出し、切り出した切片のガスバリアー層上に水分反応性金属層及び水蒸気不透過性層を形成する方法等を挙げることができる。
《ガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法》
本発明のガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法は、上記ガスバリアー性フィルム、又は上記水蒸気バリアー性評価試験片を用いることを特徴とする。
具体的には、上記ガスバリアー性フィルム又は水蒸気バリアー性評価試験片を、水蒸気に曝す前後において、一方の面側から光を入射して水分反応性金属層の光学的特性の変化を確認又は測定する。
測定手段としては、光電子増倍管(Photomultiplier tube)又は分光器を用いることができる。
分光器を用いる場合は、上記ガスバリアー性フィルム又は水蒸気バリアー性評価試験片の一方の面側から光を入射し、反射光又は透過光によって、水分反応性金属層の光学的特性の変化をスポット的に移動しながら測定することが好ましい。
また、水分反応性金属層の指定した範囲を画像として撮影する場合は、上記ガスバリアー性フィルム又は水蒸気バリアー性評価試験片の一方の面側から光を入射し、反射光又は透過光を、エリア型若しくはラインセンサ型のCCD、又はCMOSカメラを用いて撮影することができ、中でもエリア型のCCD、又はCMOSカメラを用いることが好ましい。
光学的特性の変化を測定する場合においては、上記したようにガスバリアー性フィルム又は水蒸気バリアー性評価試験片に入射した光の反射光を測定する場合と、透過光を測定する場合がある。機器からの反射光等によるノイズ等の影響が少ないことから、ガスバリアー性フィルム又は水蒸気バリアー性評価試験片が透明である場合には、透過光を測定することが好ましい。
測定は、水蒸気に曝した後は所定の時間毎に行うことが好ましい。これにより、水分反応性金属層の腐食が経時的にどのように進行するかをデータ化することができる。
上記「水蒸気に曝す」とは、ガスバリアー性フィルム又は水蒸気バリアー性評価試験片を、例えば恒温恒湿槽に格納して水蒸気と接触させることをいう。当該恒温恒湿槽の温度及び湿度条件は適宜選択されるものであるが、例えば、温度は室温~90℃の範囲内であることが好ましく、湿度は40~90%RHの範囲内であることが好ましい。また、当該恒温恒湿槽への格納時間は、特に限定されるものではないが、10~2000時間程度であることが好ましく、格納時間中に適当な間隔で一旦試料を取出して評価しても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[実施例1]
《ガスバリアー性フィルム1-1の作製》
(1)樹脂基材の作製
樹脂基材として、東レ社製、両面に易接着層を有する100μm厚さのPETフィルム、ルミラーU403を準備した。
次に、ロールtoロール方式の塗布装置を用い、下記組成からなる表面用ハードコート塗布液HC1を、樹脂基材の片面に乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線を500mJ/cmの条件で照射して硬化させ、巻き取った。
重合性バインダー:サートマー社製SR368 12.0質量部
重合性バインダー:荒川化学社製ビームセット575 22.0質量部
重合開始剤:BASF社製イルガキュア651 1.0質量部
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 65.0質量部
次に、特開2017-33891号公報の実施例2に従い、導電性高分子有機溶剤分散液を調製し、下記の材料を混合して裏面用ハードコート塗布液HC2を調製した。
導電性高分子有機溶剤分散液(固形分0.5質量%) 53.5質量部
重合性バインダー:サートマー社製SR368 12.0質量部
重合性バインダー:荒川化学社製ビームセット575 22.0質量部
重合開始剤:BASF社製イルガキュア651 1.0質量部
シリカ分散液:日産化学社製MA-ST-ZL 2.0質量部
溶媒:ジアセトンアルコール 9.5質量部
次に、上記裏面用ハードコート塗布液HC2を、樹脂基材の反対面に乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線を500mJ/cmの条件で照射して硬化させ、巻き取った。これにより、樹脂基材に帯電防止機能及びアンチブロック機能を付与した。
次に、上記樹脂基材を1200mm幅にスリットして巻き取り、1200mm幅の樹脂基材ロールを得た。
(2)ガスバリアー層の形成
図7に示す成膜装置100を用いて次のようにしてガスバリアー層を形成した。成膜条件としては、有効成膜幅:1040mm、搬送速度:20.0m/min、第1成膜部の原料ガス(HMDSO)供給量:150sccm、第1成膜部の酸素ガス供給量:500sccm、第1成膜部の真空度:1.5Pa、第1成膜部の印加電力4.5kW、第2成膜部の原料ガス(HMDSO)供給量:150sccm、第2成膜部の酸素ガス供給量:1000sccm、第2成膜部の真空度:1.5Pa、第2成膜部の印加電力:4.5kWとした。また、電源周波数を84kHz、成膜ロールの温度を全て30℃とした。成膜装置100において樹脂基材を複数パス通過させてガスバリアー層を形成するに当たり、奇数パス目(1パス目、3パス目、5パス目、・・・)は樹脂基材を巻き出す方向に搬送し、偶数パス目(2パス目、4パス目、6パス目、・・・)は樹脂基材を巻き戻す方向に搬送するものであるが、パス方向が異なる場合でも、最初に通過する成膜部を第1成膜部、次に通過する成膜部を第2成膜部とした。成膜回数は、10パスとし、樹脂基材上に20層が積層された総層厚300nmのガスバリアー層を形成した。
ただし、上記ガスバリアー層の形成における1パス目において、図7に示す、樹脂基材の成膜面側にタッチする搬送ロール112の、樹脂基材が巻き付けられていない、ロール周面が露出している部分に、搬送ロール112の軸方向100mm間隔で針状金属部材を押し付けた。これにより、樹脂基材の幅方向一端部(以下、フィルムエッジともいう。)から100~1100mmの11か所で、成膜中に微細な金属粉を発生させて、成膜面に転写させ、故意に長手方向MDにスジ状に連続的な成膜異常部を形成した。2パス目の成膜を行う前に、針状金属部材を取り外し、2パス目以降は正常な成膜を行ったが、1パス目に形成したスジ状成膜異常部の影響で、樹脂基材の幅手方向TDの11か所において、長手方向MDに延びるスジ状欠陥部が形成された。なお、ガスバリアー層に対する目視観察では、スジ状欠陥部は確認できなかった。
(3)第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の形成
まず、樹脂基材の裏面(ガスバリアー層形成面の反対面)のうち、水蒸気バリアー性試験領域部を形成する領域に対応する位置に、長手方向MDから見たときに後述するカルシウム層の端部同士が互いに一部重なる部分が存在する構成をなすように位置決めマーキングを施した。マーキング後、図8に示すように、樹脂基材とガスバリアー層の積層体をそれぞれ断裁し、水蒸気バリアー性試験領域部を形成する対象である切片を8個切り出した。各切片にはマーキングが施されているため、各切片が、母体の樹脂基材のいずれの位置から切り出されたものであるか判断可能となっている。また、各切片は、長手方向MDから見たときに互いに一部重なる部分が存在するように切り出した。
次いで、日本電子(株)製真空蒸着装置JEE-400を用いて、40mm(長手方向MD)×180mm(幅手方向TD)の面積のガラス板状部材(第1及び第2水蒸気不透過性層)の中央部に、20mm(長手方向MD)×152mm(幅手方向TD)の面積でカルシウム層(第1及び第2水分反応性金属層)を蒸着した。このようなガラス板状部材を8個作製した。
次いで、上記作製した各切片のガスバリアー層上に、33mm(長手方向)×165mm(幅手方向TD)の面積の接着層(スリーボンド製1655、第1及び第2接着層)をそれぞれ設けた。これを1昼夜グローブボックス(GB)内に放置して、接着層の水分及びガスバリアー層表面の吸着水を除去した。その後、各切片の接着層のそれぞれに、カルシウム層が対向するように上記ガラス板状部材を貼合し、ガスバリアー層上に第1及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を計八つ形成した。これにより、各切片を母体の樹脂基材から切り出される前の配置のとおりに並べた状態で、長手方向MDから見たときにカルシウム層の端部同士が互いに重なる部分が存在する、ガスバリアー性フィルム1-1を作製した。なお、当該重なる部分の幅手方向TDにおける長さを1.0mmとした。
《ガスバリアー性フィルム1-2の作製》
上記ガスバリアー性フィルム1-1の作製において、カルシウム層の面積サイズを20mm(長手方向MD)×215mm(幅手方向TD)、ガラス板状部材及び接着層の面積サイズをそれぞれ40mm(長手方向MD)×243mm(幅手方向TD)に変更し、第1及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を計五つ形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム1-2を作製した。なお、カルシウム層の端部同士が互いに重なる部分の幅手方向TDにおける長さを5.0mmとした。
《ガスバリアー性フィルム1-3の作製》
上記ガスバリアー性フィルム1-1の作製において、カルシウム層の面積サイズを20mm(長手方向MD)×20mm(幅手方向TD)、ガラス板状部材及び接着層の面積サイズをそれぞれ40mm(長手方向MD)×40mm(幅手方向TD)に変更し、水蒸気バリアー性試験領域部を計四つ形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム1-3を作製した。なお、四つの水蒸気バリアー性試験領域部は、図8に示すように、長手方向MDから見たときにカルシウム層が互いに重なる部分が存在しないように形成した。
《ガスバリアー性フィルム1-4の作製》
上記ガスバリアー性フィルム1-1の作製において、カルシウム層の面積サイズを20mm(長手方向MD)×146mm(幅手方向TD)、ガラス板状部材及び接着層の面積サイズをそれぞれ40mm(長手方向MD)×174mm(幅手方向TD)に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム1-4を作製した。なお、八つの水蒸気バリアー性試験領域部は、図8に示すように、長手方向MDから見たときにカルシウム層が互いに重なる部分が存在しないように形成した。
《ガスバリアー性フィルム1-5の作製》
上記ガスバリアー性フィルム1-1の作製において、カルシウム層の面積サイズを20mm(長手方向MD)×150mm(幅手方向TD)、ガラス板状部材及び接着層の面積サイズをそれぞれ40mm(長手方向MD)×178mm(幅手方向TD)に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム1-5を作製した。なお、八つの水蒸気バリアー性試験領域部は、図8に示すように、長手方向MDから見たときに、ガラス板状部材及び接着層が互いに一部重なるが、カルシウム層が互いに重なる部分が存在しないように形成した。
《ガスバリアー性フィルム1-1~1-5の評価》
上記作製したガスバリアー性フィルムの各切片のガラス板状部材側から法線方向より光を入射し、その反対面側よりエリア型のCCDカメラにて撮影を行った。その後、各切片を85℃・85%RHの恒温恒湿槽(Yamato Humidic ChamberIG47M)にて50時間放置し、同様にCCDカメラにて撮影を行った。
恒温恒湿槽に入れた前後の画像からスジ状欠陥部の有無を確認した。その結果を図8に示す。スジ状欠陥部が検出された場合を「○」、スジ状欠陥部が検出されなかった場合を「×」として評価した。
図8に示すように、ガスバリアー性フィルム1-1、1-2は、11個のスジ状欠陥部[1]~[11]の全てが検出されているのに対し、ガスバリアー性フィルム1-3~1-5はスジ状欠陥部の一部が検出されていない。したがって、ガスバリアー性フィルム1-1、1-2は、長手スジ状の微細な傷を高精度に検出することができるといえる。
[実施例2]
《ガスバリアー性フィルム2-1の作製》
(1)樹脂基材の作製
上記ガスバリアー性フィルム1-1の樹脂基材の作製において、表面用ハードコート塗布液HC1を塗布、硬化させた後、ハードコート形成面に保護フィルム(フタムラ化学社製、FSA-020M)を貼合した以外は同様にして、樹脂基材を作製した。
(2)ガスバリアー層の形成
図9に示すロールtoロール方式の塗布装置200を用いて、2層積層構成のガスバリアー層を形成した。
塗布装置200は、図9に示すように、巻出しロール201から巻き出された樹脂基材を複数の搬送ローラーにより搬送し、保護フィルム巻取りロール202により樹脂基材から保護フィルム203を剥離して回収する。また、塗布装置200は、保護フィルム203を剥離した後、コーター204によりガスバリアー層形成用塗布液を塗布し、ドライヤー205で乾燥させてから、真空紫外線照射装置206により塗膜に対し真空紫外線照射を施す。さらに、塗布装置200は、真空紫外線照射後の層形成面に対して面タッチロール207を接触させ、保護フィルム巻出しロール208により層形成面に保護フィルム209を貼合させた後、巻取りロール210により樹脂基材を巻き取る。
上記塗布装置200を用いて、搬送速度3.0m/minで樹脂基材を搬送しながら、保護フィルム巻取りロール202により樹脂基材から保護フィルムを剥離し、コーター204により乾燥層厚110nmとなるようポリシラザンを塗布した。次いで、温度80℃で3.3分間の乾燥処理を行い、4.0J/cmで真空紫外線照射処理を行った。次いで、面タッチロール207(直径:120mmφ)を層形成面に接触させた。ここで、面タッチロール207の周面には、あらかじめ針状金属部材を接触させて幅手方向TD(面タッチロール207の軸方向)に1本の引っ掻き傷が形成されている。これにより、面タッチロール207は、当該引っ掻き傷が形成されていることで微細な突起を有しており、樹脂基材上の層形成面と接触することで、層表面に幅手方向TDに連なる微細傷が形成される。よって、樹脂基材上に形成されるガスバリアー層には、長手方向MDにおいて約377mm周期で、幅手方向TDに連なる微細傷が形成された。
上記のようにして1層目のガスバリアー層が形成された樹脂基材に、保護フィルム巻出しロール208により保護フィルム(フタムラ化学社製、FSA-020M)を貼合した後、巻取りロール210により巻き取った。
次いで、塗布装置200から面タッチロール207を取り外した上で、1層目のガスバリアー層が形成された樹脂基材のロールを、再び巻出しロール201にセットした。
次いで、搬送速度3.0m/minで樹脂基材を搬送しながら、保護フィルム巻取りロール202により樹脂基材から保護フィルムを剥離し、コーター204により乾燥層厚110nmとなるようポリシラザンを塗布した。ここで、図示しない振動機構を用いて、コーター204に4Hzの振動を印加した。これにより、2層目のガスバリアー層は塗布膜厚が4Hzの周期で変化し、長手方向MDに12.5mmピッチの横段状のムラが形成された。次いで、温度80℃で3.3分間の乾燥処理を行い、4.0J/cmで真空紫外線処理を行った。次いで、保護フィルム巻出しロール208により保護フィルムを貼合した後、巻取りロール210により巻き取った。
このようにして、樹脂基材上にガスバリアー層を形成した。なお、ガスバリアー層に対する目視観察では、12.5mmピッチの横段状のムラが確認できたが、水蒸気バリアー性に影響はないと判断できた。また、約377mm周期の幅手方向TDに連なる微細傷は確認できなかった。
(3)第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の形成
まず、樹脂基材の裏面(ガスバリアー層形成面の反対面)のうち、水蒸気バリアー性試験領域部を形成する領域に対応する位置に、幅手方向TDから見たときに後述するカルシウム層の端部同士が互いに一部重なる部分が存在する構成をなすように位置決めマーキングを施した。マーキング後、図10に示すように、樹脂基材とガスバリアー層の積層体をそれぞれ断裁し、水蒸気バリアー性試験領域部を形成する対象である切片を8個切り出した。各切片にはマーキングが施されているため、各切片が、母体の樹脂基材のいずれの位置から切り出されたものであるか判断可能となっている。また、各切片は、幅手方向TDから見たときに互いに一部重なる部分が存在するように切り出した。
次いで、日本電子(株)製真空蒸着装置JEE-400を用いて、180mm(長手方向MD)×40mm(幅手方向TD)の面積のガラス板状部材(第1及び第2水蒸気不透過性層)の中央部に、152mm(長手方向MD)×20mm(幅手方向TD)の面積でカルシウム層(第1及び第2水分反応性金属層)を蒸着した。このようなガラス板状部材を8個作製した。
次いで、上記作製した各切片のガスバリアー層上に、165mm(長手方向)×33mm(幅手方向TD)の面積の接着層(スリーボンド製1655、第1及び第2接着層)をそれぞれ設けた。これを1昼夜グローブボックス(GB)内に放置して、接着層の水分及びガスバリアー層表面の吸着水を除去した。その後、各切片の接着層のそれぞれに、カルシウム層が対向するように上記ガラス板状部材を貼合し、ガスバリアー層上に第1及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を計八つ形成した。これにより、各切片を母体の樹脂基材から切り出される前の配置のとおりに並べた状態で、幅手方向TDから見たときにカルシウム層の端部同士が互いに重なる部分が存在する、ガスバリアー性フィルム2-1を作製した。なお、当該重なる部分の長手方向MDにおける長さを1.0mmとした。
《ガスバリアー性フィルム2-2の作製》
上記ガスバリアー性フィルム2-1の作製において、カルシウム層の面積サイズを146mm(長手方向MD)×20mm(幅手方向TD)、ガラス板状部材及び接着層の面積サイズをそれぞれ174mm(長手方向MD)×40mm(幅手方向TD)に変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム2-2を作製した。なお、八つの水蒸気バリアー性試験領域部は、幅手方向TDから見たときにカルシウム層が互いに重なる部分が存在しないように形成した。
《ガスバリアー性フィルム2-1、2-2の評価》
上記作製したガスバリアー性フィルムの各切片のガラス板状部材側から法線方向より光を入射し、その反対面側よりエリア型のCCDカメラにて撮影を行った。その後、各切片を85℃・85%RHの恒温恒湿槽(Yamato Humidic ChamberIG47M)にて50時間放置し、同様にCCDカメラにて撮影を行った。
恒温恒湿槽に入れた前後の画像から、幅手方向TDに連なる微細傷の有無を確認した。その結果を図10に示す。微細傷が検出された場合を「○」、微細傷が検出されなかった場合を「×」として評価した。
図10に示すように、ガスバリアー性フィルム2-1は、微細傷〔1〕~〔3〕の全てが検出されているため、幅手方向TDに連なる微細傷が約377mm周期で発生していることが分かり、原因として直径120mmφのロールの存在が示唆される。一方で、ガスバリアー性フィルム2-2は、微細傷〔2〕が検出されていないため、幅手方向TDに連なる微細傷が約754mm周期で発生していると誤判断してしまうおそれがある。したがって、ガスバリアー性フィルム2-1は、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することができるといえる。
[実施例3]
(1)樹脂基材の作製
上記ガスバリアー性フィルム1-1における樹脂基材の作製と同様にして、樹脂基材を作製した。
(2)ガスバリアー層の形成
上記ガスバリアー性フィルム1-1におけるガスバリアー層の形成と同様にして、樹脂基材上にガスバリアー層を形成した。
(3)第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部の形成
まず、樹脂基材の裏面(ガスバリアー層形成面の反対面)のうち、水蒸気バリアー性試験領域部を形成する領域に対応する位置に、長手方向MDから見たときに後述するカルシウム層の端部同士が互いに一部重なる部分が存在する構成をなすように位置決めマーキングを施した。マーキング後、樹脂基材とガスバリアー層の積層体をそれぞれ断裁し、水蒸気バリアー性試験領域部を形成する対象である切片を8個切り出した。各切片にはマーキングが施されているため、各切片が、母体の樹脂基材のいずれの位置から切り出されたものであるか判断可能となっている。また、各切片は、長手方向MDから見たときに互いに一部重なる部分が存在するように切り出した。
次いで、上記作製した各切片を、それぞれ50mm×180mmのガラス板の略中央に、樹脂基材側が対向するようにして配置し、切片の四つの角をカプトンテープでガラス板上に固定した。その後、各切片のガスバリアー層表面のUVオゾン洗浄を行った。
次いで、日本電子(株)製真空蒸着装置JEE-400を用いて、各切片のガスバリアー層上に、20mm(長手方向MD)×152mm(幅手方向TD)の面積でカルシウム層(第1及び第2水分反応性金属層)を蒸着した。このようにして、各切片を母体の樹脂基材から切り出される前の配置のとおりに並べた状態で、長手方向MDから見たときにカルシウム層の端部同士が互いに重なる部分が存在するように各カルシウム層を形成した。なお、当該重なる部分の幅手方向TDにおける長さを1.0mmとした。
次いで、カルシウム層を蒸着した切片をグローブボックス内に取り出し、大気に暴露させずに、CVD装置に移送し、3層の窒化ケイ素層からなる水分不透過性層を、26mm×158mmのサイズで形成した。
すなわち、まず、カルシウム層上に層厚200nmの第1窒化ケイ素層を形成した。成膜条件としては、シランのガス流量:100sccm、アンモニアのガス流量:300sccm、水素のガス流量:1000sccm、窒素のガス流量:1000sccm、圧力:200Pa、電源:13.56MHz、電源出力:800W、電極間距離:2.3cmとした。
上記第1窒化ケイ素層上に、層厚400nmの第2窒化ケイ素層を形成した。成膜条件としては、シランのガス流量:100sccm、アンモニアのガス流量:300sccm、水素のガス流量:1500sccm、窒素のガス流量:1000sccm、圧力:200Pa、電源:13.56MHz、電源出力:1200W、電極間距離:3.2cmとした。
上記第2窒化ケイ素層上に、層厚200nmの第3窒化ケイ素層を形成した。成膜条件としては、上記第1窒化ケイ素層形成時の成膜条件と同一とした。
以上のようにして、各切片のガスバリアー層上に、水蒸気バリアー性試験領域部を形成して、ガスバリアー性フィルム3-1を作製した。
作製したガスバリアー性フィルム3-1を用いて、上記実施例1と同様にして水蒸気バリアー性評価を行ったところ、ガスバリアー性フィルム1-1と同様の結果が得られた。
[実施例4]
《ガスバリアー性フィルム4-1~4-3の作製》
上記ガスバリアー性フィルム1-1の作製において、長手方向MDから見たときに、カルシウム層同士の端部同士が互いに重なる部分の幅手方向TDにおける長さ、及びガラス板状部材の端部同士が互いに重なる部分の幅手方向TDにおける長さを表Iに記載のとおりに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム4-1~4-3を作製した。
《ガスバリアー性フィルム4-1~4-3の評価》
上記作製したガスバリアー性フィルムの各切片のうち、母体のガスバリアー性フィルムのフィルムエッジ側から2番目と3番目に配置される切片において、互いのカルシウム層同士の重なる部分(上記スジ状欠陥部[3]が重なる部分)に対して、評価を行った。すなわち、当該切片のガラス板状部材側から法線方向より光を入射し、その反対面側よりエリア型のCCDカメラにて撮影を行った。その後、各切片を85℃・85%RHの恒温恒湿槽(Yamato Humidic ChamberIG47M)にて50時間、100時間、200時間放置し、それぞれの放置時間ごとに上記と同様にしてCCDカメラにて撮影を行った。
ここで、各切片の端部から侵入する水分の影響で各カルシウム層はその周縁部から徐々に縮小し、一定時間経過すると、各切片が切り出される前の配置における、カルシウム層同士の重なる部分は消失する。
上記各放置時間における撮影画像において、カルシウム層同士の重なる部分が消失しているか否かを確認した。その結果を表Iに示す。
Figure 0007006694000001
表Iに示すように、ガラス板状部材の重なる部分の幅手方向TDにおける長さを長くすることで、カルシウム層同士の重なる部分が消失する時間も長くなる。したがって、有機EL用基板として用いられる、ガスバリアー性が非常に高いガスバリアー性フィルムにおいて発生するスジ状欠陥部の検出に対しても有用であるといえる。
本発明のガスバリアー性フィルム及び水蒸気バリアー性評価試験片は、長手スジ状の微細な傷や、横段状に現れるガスバリアー性変化の周期性を高精度に検出することを可能とし、ガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法として有用である。
1 ガスバリアー性フィルム
4 樹脂基材
5 ガスバリアー層
10 第1水蒸気バリアー性試験領域部
11 第1水蒸気不透過性層
12 第1水分反応性金属層
13 第1接着層
20 第2水蒸気バリアー性試験領域部
21 第2水蒸気不透過性層
22 第2水分反応性金属層
L1、L2 重なる部分

Claims (11)

  1. 長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、
    前記ガスバリアー層上に、第1水蒸気バリアー性試験領域部及び第2水蒸気バリアー性試験領域部を備え、
    前記第1水蒸気バリアー性試験領域部は、前記ガスバリアー層上に、第1水分反応性金属層と、前記第1水分反応性金属層を封止する第1水蒸気不透過性層とをこの順に有し、
    前記第2水蒸気バリアー性試験領域部は、前記ガスバリアー層上に、第2水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層を封止する第2水蒸気不透過性層とをこの順に有し、
    前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記樹脂基材の長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されている構成をなすことを特徴とするガスバリアー性フィルム。
  2. 前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記幅手方向から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアー性フィルム。
  3. 前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアー性フィルム。
  4. 前記第1水蒸気不透過性層及び前記第2水蒸気不透過性層の少なくとも一方が、蒸着層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  5. 前記第1水蒸気バリアー性試験領域部は、前記第1水蒸気不透過性層を前記ガスバリアー層に対して固定する第1接着層をさらに有し、
    前記第1水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  6. 前記第2水蒸気バリアー性試験領域部は、前記第2水蒸気不透過性層を前記ガスバリアー層に対して固定する第2接着層をさらに有し、
    前記第2水蒸気不透過性層が、金属、不透明金属化合物及び透明金属化合物から選ばれる一種の板状部材で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3まで、請求項5のいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  7. 前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、1.0mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  8. 前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向の少なくともいずれか一方から見たときに、互いに一部重なる部分が存在するように配置され、
    前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、前記第1水分反応性金属層と、前記第2水分反応性金属層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さよりも長いことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  9. 前記第1水蒸気不透過性層と、前記第2水蒸気不透過性層とが、前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか一方から見たときに互いに一部重なる部分の前記長手方向及び前記幅手方向のいずれか他方における長さが、3.0mm以上であることを特徴とする請求項8に記載のガスバリアー性フィルム。
  10. 長尺状の樹脂基材の少なくとも一方の面上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムから切り出された切片の水蒸気バリアー性を評価する水蒸気バリアー性評価試験片であって、
    前記ガスバリアー層上に設けられる水分反応性金属層と、
    前記水分反応性金属層を封止する水蒸気不透過性層と、を備え、
    前記ガスバリアー性フィルムの長手方向及び幅手方向の少なくともいずれか一方における座標を示すマーカーが形成されていることを特徴とする水蒸気バリアー性評価試験片。
  11. 請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム、又は請求項10に記載の水蒸気バリアー性評価試験片を用いることを特徴とするガスバリアー性フィルムの水蒸気バリアー性評価方法。
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