1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について図面を参照して説明する。車両用駆動装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を複数の車輪の駆動力源とするハイブリッド自動車や、回転電機を複数の車輪の駆動力源とする電気自動車に搭載される駆動装置である。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1車輪W1及び第2車輪W2の駆動力源として回転電機2のみを備えている。2輪駆動の4輪車の場合には、これによって電気自動車が実現できる。また、4輪駆動の4輪車の場合には、他の2輪を内燃機関の駆動力によって駆動することでハイブリッド車両が実現できる。当然ながら、4輪駆動の4輪車の場合には、本実施形態の車両用駆動装置100を他の2輪にも適用することで、4輪駆動の電気自動車を実現することもできる。
本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、下記において説明する減速装置3及び差動歯車装置4において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置100は、ケース1と、回転電機2と、減速装置3と、差動歯車装置4と、インバータユニット7と、を備えている。本実施形態では、動力伝達経路の上流側から下流側に向けて、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4の順で配置されている。つまり、本実施形態では、減速装置3が、動力伝達経路における回転電機2と差動歯車装置4との間に設けられている。また、本実施形態では、差動歯車装置4は、減速装置3を介して伝達される回転電機2からの駆動力を、分配出力軸53に駆動連結された第1ドライブシャフト51と、第2ドライブシャフト52とのそれぞれに分配するように構成されている。
車両用駆動装置100においては、減速装置3及び差動歯車装置4が、回転電機2と同軸に配置されている。本実施形態では、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51、第2ドライブシャフト52、及び分配出力軸53が、回転電機2と同軸に配置されている。そのため、回転電機2の軸方向は、車両用駆動装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機2の径方向は、車両用駆動装置100の回転軸の径方向と等価であり、回転電機2の周方向は、車両用駆動装置100の回転軸の周方向と等価である。したがって、回転電機2の軸方向を車両用駆動装置100の「軸方向L」とし、回転電機2の径方向を車両用駆動装置100の「径方向R」とし、回転電機2の周方向を車両用駆動装置100の「周方向C」とする。また、軸方向Lにおいて、減速装置3に対して回転電機2側を「軸方向第1側L1」とし、減速装置3に対して差動歯車装置4側を「軸方向第2側L2」とする。更に、径方向Rにおいて、回転電機2とは反対の外側を「径方向外側R1」とし、回転電機2側の内側を「径方向内側R2」とする。
本実施形態では、ケース1は、第1ケース部11と、第1ケース部11に対して軸方向第2側L2から接合される第2ケース部12と、第1ケース部11に対して軸方向第1側L1から接合される第3ケース部13と、を備えている。
第1ケース部11には、回転電機2が支持されている。より具体的には、回転電機2のステータ21が、第1ケース部11に支持されている。また、本実施形態では、第1ケース部11は、減速装置3及び差動歯車装置4の軸方向第1側L1での支持も行っている。第1ケース部11は、回転電機2の径方向外側R1を囲む筒状の第1周壁部111と、第1周壁部111の軸方向第1側L1の端部から径方向内側R2に延在する第1側壁部112と、を有している。ここで、「筒状」とは、多少の異形部分を有していたとしてもその全体としての概略形状が筒であることを意味する(以下、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同様とする)。
第2ケース部12には、インバータユニット7が支持されている。また、本実施形態では、第2ケース部12は、減速装置3及び差動歯車装置4の軸方向第2側L2での支持も行っている。図1及び図3に示すように、第2ケース部12は、後述する第1収容室81の径方向外側R1を囲む筒状の第2周壁部121と、第2周壁部121の軸方向第2側L2の端部から径方向内側R2に延在する第2側壁部122と、インバータユニット7が収容される第2収容室82を囲む収容壁部123と、を有している。本実施形態では、収容壁部123は、第2周壁部121に対して径方向外側R1において径方向R及び軸方向Lに延在するように形成されている。
第1ケース部11と第2ケース部12とは、第1周壁部111の軸方向第2側L2の端部と、第2周壁部121の軸方向第1側L1の端部とが接触した状態で、ボルト等の連結部材によって互いに連結されている。第1ケース部11と第3ケース部13とは、第1側壁部112に第3ケース部13が軸方向第1側L1から接触した状態で、ボルト等の連結部材によって互いに連結されている。
図1に示すように、本実施形態では、ケース1は、減速装置3を支持する支持部材14を更に備えている。図示の例では、支持部材14は、第1ケース部11に連結されている。そして、支持部材14は、減速装置3の径方向外側R1を囲むように配置されている。支持部材14は、第1支持材141と、第2支持材142とを含んでいる。
第1支持材141は、回転電機2と減速装置3との間において、径方向R及び周方向Cに沿って延在するように設けられている。本例では、第1支持材141は、周方向Cの全域にわたって連続的に形成されている。第1支持材141は、第1ケース連結部141aと、第1接続部141bと、を有している。
第1ケース連結部141aは、ボルト等の連結部材によって第1ケース部11に連結されている。本例では、第1ケース連結部141aは、第1支持材141の径方向外側R1の端部に形成されている。また、本例では、第1ケース連結部141aは、第1支持材141の周方向Cの1箇所又は複数箇所に形成されている。第1接続部141bは、ボルト等の連結部材によって第2支持材142に連結されている。本例では、第1接続部141bは、減速装置3に対して径方向外側R1であって第1ケース連結部141aに対して径方向内側R2に形成されている。また、本例では、第1接続部141bは、第1支持材141の周方向Cの1箇所又は複数箇所に形成されている。
第2支持材142は、第1支持材141に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第2支持材142は、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、径方向R及び周方向Cに沿って延在するように設けられている。本例では、第2支持材142は、周方向Cの全域にわたって連続的に形成されている。第2支持材142は、第2接続部142aを有している。
第2接続部142aは、ボルト等の連結部材によって第1支持材141の第1接続部141bに連結されている。本例では、第2接続部142aは、第2支持材142の周方向Cの1箇所又は複数箇所に形成されている。
回転電機2は、第1車輪W1及び第2車輪W2の駆動力源である。回転電機2は、ステータ21と、ステータ21に対して径方向内側R2に配置されたロータ22と、を備えている。ステータ21は、第1ケース部11の第1周壁部111に支持されたステータコア211を有している。ロータ22は、ステータ21に対して回転可能なロータコア221を有している。ステータコア211にはコイル212が巻装され、ロータコア221には永久磁石222が設けられている。本実施形態では、ロータコア221の内周面には、軸方向Lに沿って延在するロータ軸23が連結されている。
ロータ軸23は、円筒状に形成されている。ロータ軸23は、ロータコア221の軸方向Lの両側から突出するように配置されている。ロータ軸23におけるロータコア221よりも軸方向第1側L1に突出した部分は、第1ロータ軸受61を介して、第1ケース部11の第1側壁部112に回転可能に支持されている。ロータ軸23におけるロータコア221よりも軸方向第2側L2に突出した部分は、第2ロータ軸受62を介して、支持部材14の第1支持材141に回転可能に支持されている。
減速装置3は、回転電機2の側から伝達された回転を減速して複数の車輪W1,W2の側へ伝達する。本実施形態では、減速装置3は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置され、回転電機2の回転を減速して差動歯車装置4に駆動力を伝達する。また、本実施形態では、減速装置3は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32とを含んでいる。
第1遊星歯車機構31は、第1サンギヤS31と、第1リングギヤR31と、第1キャリヤC31とを有している。第1サンギヤS31は、第1遊星歯車機構31の入力要素であり、回転電機2のロータ軸23と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤR31は、支持部材14の第1支持材141に、周方向Cへ回転不能に支持されている。第1キャリヤC31は、第1遊星歯車機構31の出力要素である。
第2遊星歯車機構32は、軸方向Lにおいて、第1遊星歯車機構31に隣接し、第1遊星歯車機構31に対して回転電機2側とは反対側に配置されている。つまり、軸方向Lにおいて、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向けて、回転電機2、第1遊星歯車機構31、及び第2遊星歯車機構32が記載の順に並んで配置されている。第2遊星歯車機構32は、第2サンギヤS32と、第2リングギヤR32と、第2キャリヤC32とを有している。
第2サンギヤS32は、第2遊星歯車機構32の入力要素である。本実施形態では、第2サンギヤS32は、ブッシュ等の滑り軸受を介して分配出力軸53に対して回転可能に支持されている。図1に示す例では、第2サンギヤS32は、第1キャリヤC31とスプライン係合により連結されている。なお、第2サンギヤS32と第1キャリヤC31とが、一体的に形成され、或いは溶接等により互いに接合された構成としても良い。第2リングギヤR32は、支持部材14の第2支持材142に、周方向Cへ回転不能に支持されている。第2キャリヤC32は、第2遊星歯車機構32の出力要素である。本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第1側L1の端部は、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第1差動ケース軸受66を介して、支持部材14の第2支持材142に回転可能に支持されている。
本実施形態では、減速装置3の外径は、回転電機2の外径よりも小さい。具体的には、第1遊星歯車機構31の第1リングギヤR31の外径、及び第2遊星歯車機構32の第2リングギヤR32の外径は、回転電機2のステータコア211の外径よりも小さい。
差動歯車装置4は、回転電機2からの駆動力を第1車輪W1と第2車輪W2とに分配する。本実施形態では、差動歯車装置4は、減速装置3を介して伝達される回転電機2からの駆動力を、分配出力軸53に駆動連結された第1ドライブシャフト51と、第2ドライブシャフト52とを介して、それぞれ第1車輪W1と第2車輪W2とに分配する。具体的には、差動歯車装置4は、入力要素としての差動ケースD4と、差動ケースD4と一体的に回転するように差動ケースD4に支持されたピニオンシャフトF4と、ピニオンシャフトF4に対して回転可能に支持された第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42と、分配出力要素としての第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とを有している。ここでは、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42、並びに第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、いずれも傘歯車である。
差動ケースD4は、中空の部材であり、その内部にピニオンシャフトF4と、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42と、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とが収容されている。本実施形態では、差動ケースD4は、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32と一体的に形成されており、第2キャリヤC32が差動ケースD4の一部として構成されている。そのため、本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第1側L1の端部が、差動ケースD4の第1被支持部D4aとして機能する。第1被支持部D4aは、軸方向Lにおける第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間に配置されている。第1被支持部D4aは、支持部材14を介してケース1に固定された第1差動ケース軸受66によって回転可能に支持されている。
また、差動ケースD4は、軸方向Lにおける第1被支持部D4aが配置された側とは反対側(軸方向第2側L2)に位置する第2被支持部D4bを有している。ここでは、第2被支持部D4bは、軸方向Lに沿って第2サイドギヤB42よりも軸方向第2側L2に突出するように形成されている。第2被支持部D4bは、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42と同軸の円筒状に形成されている。第2被支持部D4bは、第2ケース部12の第2側壁部122に固定された第2差動ケース軸受67によって回転可能に支持されている。
ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4と一体的に回転するように差動ケースD4に支持されている。具体的には、ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4に径方向Rに沿って形成された貫通孔に挿入されており、係止部材43により差動ケースD4に係止されている。ピニオンシャフトF4は、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42に挿通され、それらを回転可能に支持している。
第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42は、径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態でピニオンシャフトF4に取り付けられている。第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42は、差動ケースD4の内部空間においてピニオンシャフトF4を中心として回転するように構成されている。
第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、差動歯車装置4における分配後の回転要素である。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、互いに軸方向Lに間隔を空けて、ピニオンシャフトF4を挟んで対向するように配置されている。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、差動ケースD4の内部空間において、それぞれの周方向Cに回転するように構成されている。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、第1ピニオンギヤP41と第2ピニオンギヤP42とに噛み合っている。本実施形態では、第1サイドギヤB41の内周面には、分配出力軸53を連結するためのスプラインが形成されている。そして、第2サイドギヤB42の内周面には、第2ドライブシャフト52を連結するためのスプラインが形成されている。
本実施形態では、差動歯車装置4の外径は、回転電機2の外径よりも小さい。具体的には、差動歯車装置4の差動ケースD4の外径は、回転電機2のステータコア211の外径よりも小さい。また、本実施形態では、差動歯車装置4の外径は、減速装置3の外径よりも小さい。具体的には、差動歯車装置4の差動ケースD4の外径は、第1遊星歯車機構31の第1リングギヤR31の外径、及び第2遊星歯車機構32の第2リングギヤR32の外径よりも小さい。つまり、軸方向Lにおいて、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向けて、回転電機2、第1遊星歯車機構31、第2遊星歯車機構32、及び差動歯車装置4が記載の順に並んで配置されている。そして、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4の外径は、軸方向第2側L2に向かう程小さくなっている。
分配出力軸53は、差動歯車装置4によって分配された回転電機2からの駆動力を第1ドライブシャフト51に伝達する部材である。分配出力軸53は、回転電機2のロータ軸23を軸方向Lに貫通するように、ロータ軸23の径方向内側R2に配置されている。分配出力軸53における軸方向第2側L2の端部の外周面には、差動歯車装置4の第1サイドギヤB41に連結するためのスプラインが形成されている。このスプラインと第1サイドギヤB41の内周面のスプラインとが係合することにより、分配出力軸53と第1サイドギヤB41とが一体的に回転するように連結されている。分配出力軸53の軸方向第1側L1の端部には、第1ドライブシャフト51を連結するための連結部53aが形成されている。
連結部53aは、第1ケース部11の内部空間における回転電機2よりも軸方向第1側L1の部分から第3ケース部13の内部空間にかけて延在している。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部53aは、第1出力軸受68を介して第3ケース部13に回転可能に支持されていると共に、第2出力軸受69を介して第1ケース部11の第1側壁部112に回転可能に支持されている。連結部53aにおける軸方向第2側L2の部分の内周面には、第1ドライブシャフト51を連結するためのスプラインが形成されている。
第1ドライブシャフト51は、第1車輪W1に駆動連結され、第2ドライブシャフト52は、第2車輪W2に駆動連結されている。なお、本実施形態では、分配出力軸53の軸方向第1側L1の端部に連結部53aが設けられ、第1ドライブシャフト51と分配出力軸53の連結部53aとがそれぞれに形成されたスプラインによって連結されている。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、分配出力軸53の軸方向第1側L1の端部に、連結部53aの代わりにフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフト51とがボルトによって締結された構成であっても良い。
インバータユニット7は、回転電機2を制御可能に構成されている。インバータユニット7は、減速装置3及び差動歯車装置4の少なくとも一方と径方向R視で重複し、かつ、回転電機2と軸方向L視で重複する位置に配置されている。本実施形態では、インバータユニット7は、差動歯車装置4と径方向R視で重複しているが、減速装置3とは径方向R視で重複していない。ここで、2つの部材(ここでは、孔等の無体物をも含む概念)の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
また、好ましくは、インバータユニット7の全体が、減速装置3及び差動歯車装置4の少なくとも一方と径方向R視で重複していると良い。つまり、インバータユニット7の軸方向Lにおける配置領域が、減速装置3及び差動歯車装置4の少なくとも一方の軸方向Lにおける配置領域内に収まっていると良い。本実施形態では、インバータユニット7の全体が、差動歯車装置4と径方向R視で重複している。なお、そのような構成に限定されることなく、例えば、インバータユニット7が差動歯車装置4の軸方向第2側L2の端部よりも軸方向第2側L2に突出するように配置された構成としても良い。
図3に示すように、インバータユニット7は、スイッチング素子ユニットを含む第1モジュール71と、キャパシタを含む第2モジュール72と、制御基板を含む第3モジュール73と、を有している。本実施形態では、第1モジュール71、第2モジュール72、及び第3モジュール73は、差動歯車装置4に対する径方向外側R1において、周方向Cに並んで配置されている。図示の例では、第1モジュール71に対して周方向Cの両側に、第2モジュール72と第3モジュール73とがそれぞれ配置されている。つまり、第1モジュール71と第2モジュール72とが互いに隣接して配置され、第1モジュール71と第3モジュール73とが互いに隣接して配置されている。第1モジュール71と第2モジュール72とは、バスバー等の第1接続部材74によって互いに電気的に接続されている。第1モジュール71と第3モジュール73とは、信号線等の第2接続部材75によって互いに接続されている。
また、本実施形態では、車両用駆動装置100が車両に搭載された状態で、第2モジュール72は、第3モジュール73よりも車両の内側に位置している。ここで、車両の内側とは、車両の前後方向の中央側又は幅方向の中央側のことである。車両用駆動装置100の軸方向Lが車両の幅方向に沿って配置されている場合、車両の内側は前後方向の中央側、すなわち運転席側となる。例えば、この車両用駆動装置100が車両の運転席より前側に配置されている場合、第2モジュール72は、第3モジュール73よりも車両の後側に位置することになる。
図1及び図3に示すように、ケース1は、回転電機2及び差動歯車装置4を収容する第1収容室81と、インバータユニット7を収容する第2収容室82と、を有している。本実施形態では、第1収容室81は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4を収容するように、第1ケース部11から第2ケース部12に亘って形成されている。一方、第2収容室82は、第2ケース部12に形成されている。そして、第2収容室82は、第1収容室81における差動歯車装置4が配置された部分に対して径方向外側R1に配置されている。上記のとおり、本実施形態では、インバータユニット7は、第1モジュール71と第2モジュール72と第3モジュール73とに分割され、これらが周方向Cに並んで配置されている。そのため、第2収容室82も、第1モジュール71を収容する第1空間82Aと、第2モジュール72を収容する第2空間82Bと、第3モジュール73を収容する第3空間82Cと、を備えている。第1空間82Aと第2空間82Bとは周方向Cに連通しており、この連通部に第1接続部材74が配置されている。また、第1空間82Aと第3空間82Cとは周方向Cに連通しており、この連通部に第2接続部材75が配置されている。
第1収容室81と第2収容室82とは、ケース1の区画壁部15によって区画されている。本実施形態では、区画壁部15は、第2ケース部12が備えている。また、区画壁部15は、第1収容室81の径方向外側R1を囲む第2周壁部121の一部を構成している。そして、区画壁部15は、軸方向Lに沿って延在する軸方向延在部151と、軸方向延在部151から径方向Rに沿って延在する径方向延在部152と、を有している。なお、軸方向延在部151及び径方向延在部152は、いずれも、周方向Cに沿う方向にも延在するように形成されている。
軸方向延在部151は、差動歯車装置4とインバータユニット7との間に配置されている。図3に示す例では、軸方向延在部151は、差動歯車装置4の下方を除いて差動歯車装置4の径方向外側R1を囲むように形成されている。図1に示すように、軸方向延在部151の軸方向第1側L1の端部は径方向延在部152に連結され、軸方向延在部151の軸方向第2側L2の端部は第2ケース部12の第2側壁部122に連結されている。図示の例では、軸方向延在部151の軸方向第1側L1の端部は径方向延在部152と一体的に形成され、軸方向延在部151の軸方向第2側L2の端部は第2ケース部12の第2側壁部122と一体的に形成されている。
径方向延在部152は、軸方向延在部151の軸方向第1側L1の端部から径方向外側R1へ径方向Rに沿って延在している。径方向延在部152は、第2ケース部12における第2収容室82を囲む収容壁部123の一部を構成している。本実施形態では、径方向延在部152は、減速装置3の第2遊星歯車機構32に対して軸方向第2側L2に配置されている。径方向延在部152には、第1ケース部11と第2ケース部12とを連通する連通孔152aが形成されている。
連通孔152aは、区画壁部15の径方向延在部152を軸方向Lに貫通するように形成されている。連通孔152aは、閉塞部材83によって閉塞されている。
第1収容室81の内部であって、軸方向Lにおける回転電機2とインバータユニット7との間には、回転電機2とインバータユニット7とを接続する接続端子部10が配置されている。本実施形態では、接続端子部10は、減速装置3の第2遊星歯車機構32と径方向R視で重複し、かつ、回転電機2と軸方向L視で重複する位置に配置されている。なお、図示は省略するが、本実施形態では、複数の接続端子部10が周方向Cに沿って配列されている。本例では、回転電機2は三相交流(U相、V相、W相)で駆動されるため、3つの接続端子部10が周方向Cに沿って配列されている。本実施形態では、接続端子部10のそれぞれは、第1導電部材91と第2導電部材92とを有している。
第1導電部材91は、導電性を有する部材であり、軸方向Lに沿って延在している。第1導電部材91の軸方向第1側L1の端部は第2導電部材92に接続され、第1導電部材91の軸方向第2側L2の端部はインバータユニット7に接続されている。本実施形態では、スイッチング素子ユニットを含む第1モジュール71がインバータユニット7の交流出力を行うため、第1導電部材91は第1モジュール71に接続されている。第1導電部材91は、閉塞部材83を貫通し、第1収容室81から第2収容室82に亘って配置されている。なお、閉塞部材83は、電気的絶縁体であり、第1導電部材91とケース1との間の電気的な絶縁性を確保する。
第2導電部材92は、導電性を有する部材であり、軸方向Lに沿って延在している。第2導電部材92の軸方向第2側L2の端部は、第1導電部材91の軸方向第1側L1の端部に接続されている。ここでは、第2導電部材92の軸方向第2側L2の端部と、第1導電部材91の軸方向第1側L1の端部とが接触した状態で、当該接触部分にボルト等の締結部材93によって締結されている。第2導電部材92の軸方向第1側L1の端部は、コイル接続部213に接続されている。
コイル接続部213は、ステータ21のコイル212におけるステータコア211から突出したコイルエンド部と第2導電部材92の軸方向第1側L1の端部とを接続するように配置されている。本実施形態では、コイル接続部213は、第1支持材141の第1ケース連結部141a及び第1接続部141b、並びに第2支持材142の第2接続部142aと干渉しないように、支持部材14を軸方向Lに貫通するように配置されている。コイル接続部213は、コイル212を構成する導体の一部であっても良いし、コイル212を構成する導体に溶接等によって固定された導電性を有する部材であっても良い。
上記のように、本実施形態では、インバータユニット7に接続された第1導電部材91が、区画壁部15の連通孔152aを閉塞する閉塞部材83を軸方向Lに貫通し、第1収容室81から第2収容室82に亘って配置されている。そして、第1導電部材91の軸方向第1側L1の端部、つまり、第1導電部材91における第1収容室81に位置する部分が、コイル接続部213に接続される第2導電部材92と電気的に接続されている。このように、本実施形態では、第1導電部材91の軸方向第1側L1の端部と第2導電部材92とが、回転電機2とインバータユニット7とを接続する接続端子部10として機能する。
図1及び図3に示すように、ケース1は、第2収容室82と連通し、径方向外側R1に向けて開口する第1開口部124を有している。本実施形態では、上記の通り、第2収容室82は、第1空間82Aと第2空間82Bと第3空間82Cとを備えている。したがって、ケース1は、これらの各空間に対応する第1開口部124として、第1空間82Aから径方向外側R1に向けて開口する第1モジュール用開口部124Aと、第2空間82Bから径方向外側R1に向けて開口する第2モジュール用開口部124Bと、第3空間82Cから径方向外側R1に向けて開口する第3モジュール用開口部124Cと、を有している。本実施形態では、第1モジュール用開口部124A、第2モジュール用開口部124B、及び第3モジュール用開口部124Cは、第2ケース部12の収容壁部123に形成されている。
第1モジュール用開口部124Aは、第2収容室82の第1空間82Aに収容されたインバータユニット7の第1モジュール71と径方向R視で重複する位置に配置されている。第1モジュール用開口部124Aは、当該第1モジュール用開口部124Aを通して、第1モジュール71を第1空間82A内に出し入れできるような寸法及び形状とされる。第1モジュール用開口部124Aは、ケース1に取り付けられた第1カバー部材161によって閉塞されている。本実施形態では、第1カバー部材161は、ボルト等の固定部材によって第2ケース部12の収容壁部123に固定されている。
第2モジュール用開口部124Bは、第2収容室82の第2空間82Bに収容されたインバータユニット7の第2モジュール72と径方向R視で重複する位置に配置されている。第2モジュール用開口部124Bは、当該第2モジュール用開口部124Bを通して第2モジュール72を第2空間82B内に出し入れできるような寸法及び形状とされる。第2モジュール用開口部124Bは、ケース1に取り付けられた第2カバー部材162によって閉塞されている。本実施形態では、第2カバー部材162は、ボルト等の固定部材によって第2ケース部12の収容壁部123に固定されている。
第3モジュール用開口部124Cは、第2収容室82の第3空間82Cに収容されたインバータユニット7の第3モジュール73と径方向R視で重複する位置に配置されている。第3モジュール用開口部124Cは、当該第3モジュール用開口部124Cを通して第3モジュール73を第3空間82C内に出し入れできるような寸法及び形状とされる。第3モジュール用開口部124Cは、ケース1に取り付けられた第3カバー部材163によって閉塞されている。本実施形態では、第3カバー部材163は、ボルト等の固定部材によって第2ケース部12の収容壁部123に固定されている。
図1に示すように、ケース1は、接続端子部10と径方向R視で重複する位置において、第1収容室81と連通し、径方向外側R1に向けて開口する端子用開口部111aを更に有している。端子用開口部111aは、ケース1の「第2開口部」に相当する。端子用開口部111aは、当該端子用開口部111aを通して接続端子部10がケース1の外部から見える位置に配置されている。本実施形態では、端子用開口部111aは、第2ケース部12の第2周壁部121に形成されている。
そして、本実施形態では、端子用開口部111aは、第1カバー部材161によって閉塞されている。つまり、本実施形態では、一個の第1カバー部材161が、第1モジュール用開口部124A及び端子用開口部111aの双方を閉塞している。そのため、本実施形態では、端子用開口部111aは、第1モジュール用開口部124Aと周方向Cの位置を合わせて配置されている。より具体的には、端子用開口部111aは、第1モジュール用開口部124Aと軸方向L視で重複する位置に配置されている。なお、端子用開口部111aが第1カバー部材161とは別のカバー部材によって閉塞された構成としても良い。
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図4を参照して説明する。本実施形態では、インバータユニット7の形状が上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
本実施形態では、インバータユニット7は、第2収容室82の1つの空間にまとめて収容されている。すなわち、本実施形態では、インバータユニット7は、複数のモジュールが周方向Cに分かれて配列された構成となっておらず、第2収容室82も周方向Cに分かれた複数の空間を有する構成とはなっていない。また、図4に示すように、このインバータユニット7は、径方向Rの寸法(厚さ)が最も大きい最厚部7Aと、最厚部7Aよりも径方向Rの寸法が小さい薄部7Bと、を有している。本実施形態では、インバータユニット7の軸方向Lの中央部に最厚部7Aが位置し、最厚部7Aの軸方向Lの両側にそれぞれ薄部7Bが位置している。なお、上記第1の実施形態のように、インバータユニット7(第1モジュール71)の径方向Rの長さが軸方向Lの全体に亘って同一である場合は、インバータユニット7(第1モジュール71)の全体が最厚部7Aに相当する。
また、本実施形態では、軸方向第1側L1の薄部7Bにおける径方向内側R2の表面は、最厚部7Aの径方向内側R2の表面よりも径方向外側R1に位置している。そして、軸方向第2側L2の薄部7Bにおける径方向内側R2の表面は、最厚部7Aの径方向内側R2の表面と面一となっている。
本実施形態では、最厚部7Aは、差動歯車装置4と径方向R視で重複する位置に配置されている。また、軸方向第1側L1の薄部7Bは、減速装置3の第2遊星歯車機構32と径方向R視で重複する位置に配置されている。なお、本実施形態では、インバータユニット7の全体が、減速装置3及び差動歯車装置4と径方向R視で重複している。
これに伴い、本実施形態では、区画壁部15の形状が上記第1の実施形態のものとは異なっている。具体的には、本実施形態では、軸方向延在部151が、第2遊星歯車機構32及び差動歯車装置4とインバータユニット7との間に配置されている。そして、軸方向延在部151における第2遊星歯車機構32とインバータユニット7との間に位置する部分が、軸方向延在部151における差動歯車装置4とインバータユニット7との間に位置する部分よりも径方向外側R1に位置している。また、本実施形態では、径方向延在部152が、第2遊星歯車機構32と径方向R視で重複している。
また、本実施形態に係るインバータユニット7の最厚部7Aの径方向Rの長さは、上記第1の実施形態に係る第1モジュール71の径方向Rの長さよりも大きい。そのため、本実施形態では、第1カバー部材161の形状が上記第1の実施形態のものとは異なっている。具体的には、本実施形態では、第1カバー部材161における第1開口部124を閉塞する部分は、第1カバー部材161における端子用開口部111aを閉塞する部分よりも径方向外側R1に位置している。
3.第3の実施形態
以下では、第3の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図5を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、減速装置3が設けられていない点で、上記第1の実施形態及び第2の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態及び第2の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態又は第2の実施形態と同様とする。
図5に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置100には、減速装置3が設けられていない。それに伴い、インバータユニット7は、差動歯車装置4と径方向R視で重複する位置に配置されている。
また、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、インバータユニット7の径方向Rの長さが軸方向Lの全体に亘って同一である。そして、本実施形態でも、インバータユニット7の全体が、差動歯車装置4と径方向R視で重複する位置に配置されている。
4.第4の実施形態
以下では、第4の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図6を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、減速装置3が、回転電機2から車輪W1,W2までの動力伝達経路における、差動歯車装置4に対して上流側と下流側とに分かれて設けられている点で、上記第1の実施形態のものとは異なっている。図示の例では、減速装置3は、第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32の代わりに、差動歯車装置4に対して上流側に設けられた第3遊星歯車機構33と、差動歯車装置4に対して下流側に設けられた第4遊星歯車機構34及び第5遊星歯車機構35とを備えている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
図6に示すように、本実施形態では、動力伝達経路における回転電機2と差動歯車装置4との間に第3遊星歯車機構33が配置されている。更に、動力伝達経路における差動歯車装置4と第1車輪W1との間に第4遊星歯車機構34が配置され、動力伝達経路における差動歯車装置4と第2車輪W2との間に第5遊星歯車機構35が配置されている。なお、第3遊星歯車機構33、第4遊星歯車機構34、及び第5遊星歯車機構35のそれぞれは、上述した第1遊星歯車機構31又は第2遊星歯車機構32と同様の遊星歯車機構とすることができるが、これらと異なる構成の遊星歯車機構としても良い。
本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、インバータユニット7の径方向Rの長さが軸方向Lの全体に亘って同一である。また、インバータユニット7は、差動歯車装置4と径方向R視で重複しているが、減速装置3とは径方向R視で重複していない。
5.第5の実施形態
以下では、第5の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図7を参照して説明する。本実施形態では、インバータユニット7の形状が上記第4の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第4の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第4の実施形態と同様とする。
図7に示すように、本実施形態では、インバータユニット7が最厚部7Aと薄部7Bとを有している。また、最厚部7Aの軸方向第1側L1に薄部7Bが位置している。そして、薄部7Bの径方向内側R2の表面は、最厚部7Aの径方向内側R2の表面よりも径方向外側R1に位置している。
本実施形態では、最厚部7Aは、差動歯車装置4と径方向R視で重複する位置に配置されている。そして、薄部7Bは、減速装置3の第3遊星歯車機構33と径方向R視で重複する位置に配置されている。
6.第6の実施形態
以下では、第6の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図8を参照して説明する。本実施形態では、インバータユニット7の形状が上記第5の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第5の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第5の実施形態と同様とする。
図8に示すように、本実施形態では、インバータユニット7の最厚部7Aの軸方向第2側L2に薄部7Bが位置している。そして、薄部7Bの径方向内側R2の表面は、最厚部7Aの径方向内側R2の表面よりも径方向外側R1に位置している。
本実施形態では、最厚部7Aは、差動歯車装置4と径方向R視で重複する位置に配置されている。そして、薄部7Bは、減速装置3の第5遊星歯車機構35と径方向R視で重複する位置に配置されている。
7.第7の実施形態
以下では、第7の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図9を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、減速装置3が、回転電機2から車輪W1,W2までの動力伝達経路における、差動歯車装置4に対して下流側のみに設けられている点で、上記第4から第6の実施形態のものとは異なっている。図示の例では、減速装置3は、第3遊星歯車機構33を有しておらず、第4遊星歯車機構34及び第5遊星歯車機構35を有している。以下では、上記第6の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第6の実施形態と同様とする。
図9に示すように、本実施形態では、最厚部7Aは、差動歯車装置4と径方向R視で重複する位置に配置されている。そして、薄部7Bは、減速装置3の第5遊星歯車機構35と径方向R視で重複する位置に配置されている。
8.第8の実施形態
以下では、第8の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図10を参照して説明する。本実施形態では、インバータユニット7の形状及び位置が上記第7の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第7の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第7の実施形態と同様とする。
図10に示すように、本実施形態では、インバータユニット7の径方向Rの長さが軸方向Lの全体に亘って同一である。また、インバータユニット7は、減速装置3(ここでは、第5遊星歯車機構35)と径方向R視で重複しているが、差動歯車装置4とは径方向R視で重複していない。
9.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、差動歯車装置4の外径が減速装置3の外径よりも小さい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車装置4の外径が減速装置3の外径以上である構成としても良い。
(2)上記第1の実施形態では、インバータユニット7の複数のモジュール71,72,73が差動歯車装置4に対する径方向外側R1において周方向Cに並んで配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、複数のモジュール71,72,73が径方向Rに並んで配置された構成、又は複数のモジュール71,72,73が軸方向Lに並んで配置された構成としても良い。或いは、インバータユニット7の複数のモジュールが一体的に形成されていても良い。
(3)上記の実施形態では、第1モジュール71に対して周方向Cの両側に、第2モジュール72と第3モジュール73とがそれぞれ配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることはない。例えば、第2モジュール72に対して周方向Cの両側に、第1モジュール71と第3モジュール73とがそれぞれ配置された構成としても良く、複数のモジュール71,72,73の位置は適宜変更可能である。
(4)上記の実施形態では、第1収容室81と第2収容室82とが、ケース1の区画壁部15によって区画された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1収容室81と第2収容室82とが連通した構成としても良い。この場合、インバータユニット7をケース1内の油から保護するようにカバー部材を設けると好適である。
(5)上記の実施形態では、第1開口部124が径方向外側R1に向けて開口するように第2ケース部12に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1開口部124が軸方向第2側L2に向けて開口するように第2ケース部12に形成された構成としても良い。
(6)上記の実施形態では、端子用開口部111aが第2ケース部12の第2周壁部121に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、端子用開口部111aが第1ケース部11の第1周壁部111に形成された構成としても良い。また、端子用開口部111aがケース1に形成されていない構成としても良い。
(7)上記の実施形態では、ケース1が第1ケース部11と第2ケース部12と第3ケース部13とを備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、ケース1の全体が一体的に形成された構成としても良い。
(8)上記の実施形態では、支持部材14の第1支持材141が第1ケース部11に連結され、第1支持材141と第2支持材142とが互いに連結された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1支持材141が第1ケース部11に連結され、第2支持材142が第2ケース部12に連結された構成であっても良いし、第1支持材141及び第2支持材142の双方が第2ケース部12に連結された構成であっても良い。
(9)上記の各実施形態では、減速装置3が、サンギヤ、キャリヤ及びリングギヤを備えた単一の遊星歯車機構、又は複数の遊星歯車機構の組み合わせにより構成される例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速装置3が、遊星歯車機構以外の減速機構を用いて構成されていても良い。例えば、遊星歯車機構に代えて、平行軸歯車機構や傘歯車機構等の各種歯車機構や、チェーンやベルト等を介した伝達機構等を用いても良い。また、上記の各実施形態における複数の遊星歯車機構の一部のみを別の減速機構に置き換えても良い。
(10)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
10.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
車両用駆動装置(100)は、
複数の車輪(W1,W2)の駆動力源となる回転電機(2)と、
前記回転電機(2)の側から伝達された回転を減速して複数の前記車輪(W1,W2)の側へ伝達する減速装置(3)と、
前記回転電機(2)からの駆動力を複数の前記車輪(W1,W2)のそれぞれに分配する差動歯車装置(4)と、
前記回転電機(2)を制御するインバータユニット(7)と、を備え、
前記減速装置(3)及び前記差動歯車装置(4)が、前記回転電機(2)と同軸に配置され、
前記減速装置(3)の外径及び前記差動歯車装置(4)の外径のそれぞれは、前記回転電機(2)の外径よりも小さく、
前記インバータユニット(7)は、前記減速装置(3)及び前記差動歯車装置(4)の少なくとも一方と径方向(R)視で重複し、かつ、前記回転電機(2)と軸方向(L)視で重複する位置に配置されている。
この構成によれば、減速装置(3)及び差動歯車装置(4)が回転電機(2)と同軸に配置され、減速装置(3)の外径及び差動歯車装置(4)の外径のそれぞれが回転電機(2)の外径よりも小さい。そして、インバータユニット(7)を減速装置(3)及び差動歯車装置(4)の少なくとも一方と径方向(R)視で重複する位置に配置することにより車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の大型化を抑制し、インバータユニット(7)を回転電機(2)と軸方向(L)視で重複する位置に配置することにより車両用駆動装置(100)の径方向(R)の大型化を抑制している。つまり、減速装置(3)及び差動歯車装置(4)の少なくとも一方と径方向(R)視で重複し、かつ、回転電機(2)と軸方向(L)視で重複するスペースを利用してインバータユニット(7)を配置することにより、インバータユニット(7)の配置による車両用駆動装置(100)の大型化を抑えることができる。
ここで、前記インバータユニット(7)は、当該インバータユニット(7)の全体が、前記減速装置(3)及び前記差動歯車装置(4)の少なくとも一方と前記径方向(R)視で重複する位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、インバータユニット(7)の軸方向(L)における配置領域が、減速装置(3)及び差動歯車装置(4)の少なくとも一方の軸方向(L)における配置領域内に収まっている。そのため、インバータユニット(7)を配置したことによる車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の大型化を抑えることができる。
また、前記差動歯車装置(4)の外径が、前記減速装置(3)の外径よりも小さく、
前記インバータユニット(7)における前記径方向(R)の寸法が最も大きい部分(7A)が、前記差動歯車装置(4)と前記径方向(R)視で重複する位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、車両用駆動装置(100)の全体の中で径方向(R)の寸法が比較的小さい差動歯車装置(4)に対して径方向(R)の外側(R1)のスペースを利用して、インバータユニット(7)を適切に配置することができる。したがって、インバータユニット(7)を配置したことによる車両用駆動装置(100)の径方向(R)の大型化を抑えることができる。
車両用駆動装置(100)は、
複数の車輪(W1,W2)の駆動力源となる回転電機(2)と、
前記回転電機(2)からの駆動力を複数の前記車輪(W1,W2)のそれぞれに分配する差動歯車装置(4)と、
前記回転電機(2)を制御するインバータユニット(7)と、を備え、
前記差動歯車装置(4)が、前記回転電機(2)と同軸に配置され、
前記差動歯車装置(4)の外径は、前記回転電機(2)の外径よりも小さく、
前記インバータユニット(7)は、前記差動歯車装置(4)と径方向(R)視で重複し、かつ、前記回転電機(2)と軸方向(L)視で重複する位置に配置されている。
この構成によれば、差動歯車装置(4)が回転電機(2)と同軸に配置され、差動歯車装置(4)の外径が回転電機(2)の外径よりも小さい。そして、インバータユニット(7)を差動歯車装置(4)と径方向(R)視で重複する位置に配置することにより車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の大型化を抑制し、インバータユニット(7)を回転電機(2)と軸方向(L)視で重複する位置に配置することにより車両用駆動装置(100)の径方向(R)の大型化を抑制している。つまり、差動歯車装置(4)と径方向(R)視で重複し、かつ、回転電機(2)と軸方向(L)視で重複するスペースを利用してインバータユニット(7)を配置することにより、インバータユニット(7)の配置による車両用駆動装置(100)の大型化を抑えることができる。
また、前記インバータユニット(7)は、複数のモジュールを含み、
複数の前記モジュールが、前記差動歯車装置(4)に対する前記径方向(R)の外側(R1)において、周方向(C)に並んで配置されていると好適である。
上記のとおり、差動歯車装置(4)又は差動歯車装置(4)及び減速装置(3)の外径が回転電機(2)の外径よりも小さいため、これらに対して径方向(R)の外側(R1)には周方向(C)に延びるスペースが生じる。この構成によれば、このような周方向(C)に延びるスペースを有効利用してインバータユニット(7)の複数のモジュールを配置することができる。したがって、インバータユニット(7)が複数のモジュールを含む構成とした場合において、車両用駆動装置(100)の大型化を抑えることができる。
また、前記インバータユニット(7)が複数の前記モジュールを含む構成において、
複数の前記モジュールは、スイッチング素子ユニットを含む第1モジュール(71)、キャパシタを含む第2モジュール(72)、及び制御基板を含む第3モジュール(73)であり、
前記第1モジュール(71)に対して前記周方向(C)の両側に、前記第2モジュール(72)と前記第3モジュール(73)とがそれぞれ配置されていると好適である。
この構成によれば、スイッチング素子ユニットを含む第1モジュール(71)とキャパシタを含む第2モジュール(72)とを隣接して配置することができる。そのため、第1モジュール(71)と第2モジュール(72)とを電気的に接続する接続部材(74)の長さを小さく抑えることができる。よって、第1モジュール(71)と第2モジュール(72)との間のインダクタンスを低減することができる。したがって、インバータユニット(7)における電力効率の低下を抑制することができる。
また、この構成によれば、スイッチング素子ユニットを含む第1モジュール(71)と制御基板を含む第3モジュール(73)とを隣接して配置することができる。そのため、第1モジュール(71)と第3モジュール(73)とを接続する信号線等の接続部材(75)の長さを小さく抑えることができる。したがって、インバータユニット(7)の制御におけるノイズの影響を低減することができる。
また、複数の前記モジュールが前記第1モジュール(71)、前記第2モジュール(72)、及び前記第3モジュール(73)である構成において、
車両に搭載された状態で、前記第2モジュール(72)が、前記第3モジュール(73)よりも前記車両の内側に位置すると好適である。
この構成によれば、車両用駆動装置(100)が車両に搭載された状態で、キャパシタを含む第2モジュール(72)が、制御基板を含む第3モジュール(73)よりも車両の内側に位置している。したがって、高電圧となり易いキャパシタ及びその関連部品を外部からの衝撃に対して保護することが容易となっている。
また、前記回転電機(2)及び前記差動歯車装置(4)を収容する第1収容室(81)と、前記インバータユニット(7)を収容する第2収容室(82)と、を有するケース(1)を備え、
前記ケース(1)は、前記第1収容室(81)の前記径方向(R)の外側(R1)を囲む周壁部(121)を有し、
前記第1収容室(81)と前記第2収容室(82)とが、前記周壁部(121)によって区画されていると好適である。
一般的に、車両用駆動装置(100)において、回転電機(2)及び差動歯車装置(4)には、潤滑及び冷却のための油を供給する必要がある。これに対して、インバータユニット(7)は油から保護する必要がある。この構成によれば、回転電機(2)及び差動歯車装置(4)を収容する第1収容室(81)と、インバータユニット(7)を収容する第2収容室(82)とをケース(1)に一体的に設けつつ、互いに区画することができる。
また、前記ケース(1)が備えられた構成において、
前記ケース(1)は、前記径方向(R)の外側(R1)に向けて開口する第1開口部(124)を有し、
前記第1開口部(124)は、前記第2収容室(82)と連通し、
前記第1開口部(124)を閉塞するカバー部材(161,162,163)が、前記ケース(1)に取り付けられていると好適である。
この構成によれば、インバータユニット(7)を、第1開口部(124)を通して径方向(R)に沿って第2収容室(82)の内部に配置することができる。また、この第1開口部(124)を閉塞するカバー部材(161,162,163)を備えているため、第2収容室(82)に水等が侵入することを規制でき、第2収容室(82)の内部のインバータユニット(7)を適切に保護することができる。
また、前記ケース(1)が前記第1開口部(124)を有し、前記第1開口部(124)を閉塞する前記カバー部材(161,162,163)が前記ケース(1)に取り付けられている構成において、
前記第1収容室(81)の内部であって、前記軸方向(L)における前記回転電機(2)と前記インバータユニット(7)との間に、前記回転電機(2)と前記インバータユニット(7)とを接続する接続端子部(10)が配置され、
前記ケース(1)は、前記接続端子部(10)と前記径方向(R)視で重複する位置において、前記第1収容室(81)と連通し、前記径方向(R)の外側(R1)に向けて開口する第2開口部(111a)を更に有し、
前記カバー部材(161)が、前記第1開口部(121a)及び前記第2開口部(111a)の双方を閉塞すると好適である。
この構成によれば、回転電機(2)及び差動歯車装置(4)を収容する第1収容室(81)と連通し、径方向(R)の外側(R1)に向けて開口する第2開口部(111a)が、回転電機(2)とインバータユニット(7)とを接続する接続端子部(10)と径方向(R)視で重複するようにケース(1)に設けられている。そのため、接続端子部(10)を、第2開口部(111a)を通してケース(1)の外部から見えるように露出させることが容易となっている。したがって、ケース(1)の径方向(R)の外側(R1)から第2開口部(111a)を通して接続端子部(10)に対する作業を容易に行うことができる。また、この構成によれば、1つのカバー部材(161)によって、第1開口部(121a)及び第2開口部(111a)の双方が閉塞される。したがって、第1開口部(121a)及び第2開口部(111a)のそれぞれが別のカバー部材によって閉塞される構成と比較して、車両用駆動装置(100)の部品点数を減らすことができる。
また、前記ケース(1)が備えられた構成において、
前記ケース(1)は、第1ケース部(11)と、前記第1ケース部(11)に対して前記軸方向(L)の一方側から接合される第2ケース部(12)と、を備え、
前記第1ケース部(11)に前記回転電機(2)が支持され、
前記第2ケース部(12)に前記インバータユニット(7)が支持されていると好適である。
この構成によれば、第1ケース部(11)と第2ケース部(12)とが接合される前に、第1ケース部(11)に支持された回転電機(2)と、第2ケース部(12)に支持されたインバータユニット(7)とに対して、個別に検査を行うことができる。したがって、第1ケース部(11)と第2ケース部(12)とが接合される前に、回転電機(2)及びインバータユニット(7)のそれぞれの状態を適切に検査することができる。