1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1は、車両用駆動装置100の軸方向断面図であり、図2は、車両用駆動装置100のスケルトン図である。車両用駆動装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を複数の車輪の駆動力源とするハイブリッド自動車や、回転電機を複数の車輪の駆動力源とする電気自動車に搭載される駆動装置である。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1車輪W1及び第2車輪W2の駆動力源として回転電機2のみを備えている。2輪駆動の4輪車の場合には、これによって電気自動車が実現できる。また、4輪駆動の4輪車の場合には、他の2輪を内燃機関の駆動力によって駆動することでハイブリッド車両が実現できる。当然ながら、4輪駆動の4輪車の場合には、本実施形態の車両用駆動装置100を他の2輪にも適用することで、4輪駆動の電気自動車を実現することもできる。
以下の説明において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、下記において説明する減速装置3及び差動歯車装置4において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、ケース1と、回転電機2と、差動歯車装置4とを備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、更に減速装置3も備えている。そして、回転電機2は、駆動力を出力するためのロータ軸23を有している。また、本実施形態では、差動歯車装置4は、分配出力軸53に駆動連結された第1ドライブシャフト51、及び第2ドライブシャフト52のそれぞれに回転電機2からの駆動力を分配するように構成されている。
車両用駆動装置100においては、差動歯車装置4が回転電機2と同軸に配置されている。本実施形態では、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51、第2ドライブシャフト52、及び分配出力軸53が、回転電機2を基準として同軸配置されている。したがって、回転電機2の軸方向は、車両用駆動装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機2の径方向は、車両用駆動装置100の径方向と等価である。したがって、回転電機2の軸方向を車両用駆動装置100の軸方向Lと称し、回転電機2の径方向を車両用駆動装置100の径方向Rと称する。また、軸方向Lにおいて、減速装置3に対して回転電機2側を軸方向第1側L1と称し、減速装置3に対して差動歯車装置4側を軸方向第2側L2と称する。更に、径方向Rにおいて、回転電機2とは反対の外側を径方向外側R1と称し、回転電機2側の内側を径方向内側R2と称する。
ケース1は、回転電機2、及び差動歯車装置4を内部に収容している。本実施形態では、ケース1は、更に、減速装置3、第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第2側L2の端部)、第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第1側L1の端部)、及び分配出力軸53も内部に収容している。
本実施形態では、ケース1は、有底筒状のケース本体11と、ケース本体11の軸方向第1側L1の端部に位置する底部11aとは反対側(軸方向第2側L2)の開口部を覆うように配置される筒状の本体カバー12と、ケース本体11の底部11aよりも軸方向側L1で底部11aを覆うように配置される底部カバー13とを有している。ケース本体11と本体カバー12とは、互いにボルト等の固定部材によって固定されている。ケース本体11と底部カバー13とは、互いにボルト等の固定部材によって固定されている。ケース1においては、ケース本体11における底部11aを除いた部分、及び本体カバー12が、「周壁部15」に相当する。つまり、ケース1は、回転電機2及び差動歯車装置4の径方向外側R1を囲む筒状の「周壁部15」を備えている。ここで、「筒状」とは、多少の異形部分を有していたとしてもその全体としての概略形状が筒であることを意味する(以下、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同様とする)。
ケース1の内部には、回転電機2のステータ21の冷却やロータ22等の回転部材の潤滑等のための油10が貯溜されている。本実施形態では、ケース本体11及び本体カバー12の内部に油10が貯溜されている。つまり、ケース1内における、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4が収容される空間に、油10が貯留されている。
回転電機2、及び減速装置3の一部(後述の第1遊星歯車機構31)は、ケース本体11の内部空間に配置されている。そして、減速装置3の他部(後述の第2遊星歯車機構32)、差動歯車装置4、及び第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第1側L1の端部)は、本体カバー12の内部空間に配置されている。第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第2側L2の端部)は、ケース本体11と底部カバー13とによって形成される内部空間に配置されている。分配出力軸53は、ケース本体11と本体カバー12と底部カバー13とによって形成される内部空間に配置されている。
本実施形態では、ケース1は、支持部材14を更に有している。支持部材14は、第1支持材141と、第2支持材142とを含んでいる。第1支持材141は、回転電機2と減速装置3との間において、径方向R及び周方向に沿って延在するように設けられている。本例では、第1支持材141は、周方向の全域にわたって連続的に形成されている。図示は省略するが、第1支持材141の周方向の1箇所又は複数個所において、第1支持材141の径方向外側R1の端部が、ケース1のケース本体11に一体的に固定されている。第2支持材142は、第1支持材141よりも軸方向第2側L2において、第1支持材141に一体的に固定されている。第2支持材142は、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、径方向R及び周方向に沿って延在するように設けられている。本例では、第2支持材142は、周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
回転電機2は、第1車輪W1及び第2車輪W2の駆動力源である。回転電機2は、ステータ21と、ステータ21の径方向内側R2に配置されたロータ22と、を備えている。ステータ21は、ケース1に固定されたステータコア211を有している。ロータ22は、ステータ21に対して回転可能なロータコア221を有している。ステータコア211にはコイル212が巻装され、ロータコア221には永久磁石222が設けられている。本実施形態では、ロータコア221の内周面には、軸方向Lに沿って延在するロータ軸23が連結されている。
ロータ軸23は、円筒状に形成されている。ロータ軸23における軸方向Lに沿ってロータコア221よりも軸方向第1側L1に突出した部分は、第1ロータ軸受61を介して、ケース1のケース本体11に回転可能に支持されている。ロータ軸23における軸方向Lに沿ってロータコア221よりも軸方向第2側L2に突出した部分は、第2ロータ軸受62を介して、支持部材14の第1支持材141に回転可能に支持されている。
減速装置3は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置され、回転電機2の回転を減速して差動歯車装置4に駆動力を伝達する。本実施形態では、減速装置3は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32とを含んでいる。
第1遊星歯車機構31は、第1サンギヤS31と、第1リングギヤR31と、第1キャリヤC31とを有している。第1サンギヤS31は、第1遊星歯車機構31の入力要素であり、回転電機2のロータ軸23と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤR31は、支持部材14の第1支持材141に、周方向へ回転不能に支持されている。第1キャリヤC31は、第1遊星歯車機構31の出力要素である。
第2遊星歯車機構32は、軸方向Lにおいて、第1遊星歯車機構31に隣接し、第1遊星歯車機構31に対して回転電機2側とは反対側に配置されている。つまり、軸方向Lにおいて、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向けて、回転電機2、第1遊星歯車機構31、及び第2遊星歯車機構32が記載の順に並んで配置されている。第2遊星歯車機構32は、第2サンギヤS32と、第2リングギヤR32と、第2キャリヤC32とを有している。
第2サンギヤS32は、第2遊星歯車機構32の入力要素である。本実施形態では、第2サンギヤS32は、ブッシュ等の滑り軸受を介して分配出力軸53に対して回転可能に支持されている。また、本実施形態では、第2サンギヤS32は、第1遊星歯車機構31の第1キャリヤC31と一体的に形成されている。なお、第2サンギヤS32と第1キャリヤC31とが、スプライン係合等により連結され、或いは溶接等により接合された構成としても良い。第2リングギヤR32は、支持部材14の第2支持材142に、周方向へ回転不能に支持されている。第2キャリヤC32は、第2遊星歯車機構32の出力要素である。本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第1側L1の端部は、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第1差動ケース軸受66を介して、支持部材14の第2支持材142に回転可能に支持されている。
差動歯車装置4は、回転電機2からの駆動力を第1車輪W1と第2車輪W2とに分配する。本実施形態では、差動歯車装置4は、減速装置3を介して伝達される回転電機2からの駆動力を、分配出力軸53に駆動連結された第1ドライブシャフト51と、第2ドライブシャフト52とを介して、それぞれ第1車輪W1と第2車輪W2とに分配する。具体的には、差動歯車装置4は、入力要素としての差動ケースD4と、差動ケースD4と一体的に回転するように差動ケースD4に支持されたピニオンシャフトF4と、ピニオンシャフトF4に対して回転可能に支持された第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42と、分配出力要素としての第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とを有している。ここでは、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42、並びに第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、いずれも傘歯車である。
差動ケースD4は、中空の部材であり、その内部にピニオンシャフトF4と、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42と、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とが収容されている。本実施形態では、差動ケースD4は、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32と一体的に形成されており、第2キャリヤC32が差動ケースD4の一部として構成されている。そのため、本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第1側L1の端部が、差動ケースD4の第1被支持部D4aとして機能する。第1被支持部D4aは、軸方向Lにおける第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間に配置されている。第1被支持部D4aは、支持部材14を介してケース1に固定された第1差動ケース軸受66によって直接支持されている。前述のように、支持部材14の第1支持材141がケース1のケース本体11に一体的に固定され、第1支持材141と第2支持材142とが互いに一体的に固定されている。そのため、第1被支持部D4aは、第1差動ケース軸受66を介してケース1のケース本体11に支持されている。
また、差動ケースD4は、軸方向Lにおける第1被支持部D4aとは反対側(軸方向第2側L2)に位置する第2被支持部D4bを有している。ここでは、第2被支持部D4bは、軸方向Lに沿って第2サイドギヤB42よりも軸方向第2側L2に突出するように形成されている。第2被支持部D4bは、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42と同軸の円筒状に形成されている。第2被支持部D4bは、ケース1の本体カバー12に固定された第2差動ケース軸受67によって直接支持されている。つまり、第2被支持部D4bは、第2差動ケース軸受67を介して回転可能にケース1の本体カバー12に支持されている。
ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4と一体的に回転するように差動ケースD4に支持されている。具体的には、ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4に径方向Rに沿って形成された貫通孔に挿入されており、係止部材43により差動ケースD4に係止されている。ピニオンシャフトF4は、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42に挿通され、それらを回転可能に支持している。
第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42は、径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態でピニオンシャフトF4に取り付けられている。第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42は、差動ケースD4の内部空間においてピニオンシャフトF4を中心として回転するように構成されている。
第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、差動歯車装置4における分配後の回転要素である。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、軸方向Lに沿って互いに間隔を空けて、ピニオンシャフトF4を挟んで対向するように設けられている。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、差動ケースD4の内部空間において、それぞれの周方向に回転するように構成されている。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、第1ピニオンギヤP41と第2ピニオンギヤP42とに噛み合っている。本実施形態では、第1サイドギヤB41の内周面には、分配出力軸53を連結するためのスプラインが形成されている。そして、第2サイドギヤB42の内周面には、第2ドライブシャフト52を連結するためのスプラインが形成されている。
分配出力軸53は、差動歯車装置4によって分配された回転電機2からの駆動力を第1ドライブシャフト51に伝達する部材である。分配出力軸53は、回転電機2のロータ軸23の径方向内側R2を軸方向Lに貫通している。分配出力軸53における軸方向第2側L2の端部の外周面には、差動歯車装置4の第1サイドギヤB41に連結するためのスプラインが形成されている。当該スプラインと第1サイドギヤB41の内周面のスプラインとが係合することにより、分配出力軸53と第1サイドギヤB41とが一体的に回転するように連結されている。分配出力軸53の軸方向第1側L1の端部には、第1ドライブシャフト51を連結するための連結部53aが形成されている。
連結部53aは、ケース本体11の内部空間における回転電機2よりも軸方向第1側L1の部分から底部カバー13の内部空間にかけて延在している。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部53aは、第1出力軸受68を介して回転可能にケース1の底部カバー13に支持されていると共に、第2出力軸受69を介して回転可能にケース本体11の底部11aに支持されている。連結部53aにおける軸方向第2側L2の部分の内周面には、第1ドライブシャフト51を連結するためのスプラインが形成されている。
第1ドライブシャフト51は、第1車輪W1に駆動連結され、第2ドライブシャフト52は、第2車輪W2に駆動連結されている。なお、本実施形態では、分配出力軸53の軸方向第1側L1の端部に連結部53aが設けられ、第1ドライブシャフト51と分配出力軸53の連結部53aとがそれぞれに形成されたスプラインによって連結されている。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、分配出力軸53の軸方向第1側L1の端部に、連結部53aの代わりにフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフト51とがボルトによって締結された構成であっても良い。
図1及び図3に示すように、車両用駆動装置100は、端子台7を更に備えている。端子台7は、回転電機2のコイル212と電気的に接続された導体71を有している。導体71は、径方向Rに沿ってケース1の周壁部15を貫通するように形成された貫通孔16に挿通されている。この導体71は、周壁部15の外周面15aに開口する貫通孔16の開口部16aから径方向外側R1に突出するように配置されている。
本実施形態では、端子台7は、導体71とケース1との間の電気的な絶縁性を確保するための絶縁部材72を更に有している。
図3に示すように、絶縁部材72は、周壁部15の外周面15aに配置された座部721と、貫通孔16に嵌挿された筒状部722と、を有している。座部721は、板状に形成され、周壁部15の外周面15aにおける開口部16aの周囲の部分を覆っている。そして、この座部721が、周壁部15に対してボルト等の固定部材72aによって固定されている。筒状部722は、貫通孔16の形状に沿った筒状に形成され、周壁部15から径方向内側R2に突出するように貫通孔16に嵌挿されている。本例では、筒状部722は、座部721と一体的に形成されている。筒状部722と貫通孔16との間には、Oリング等のシール部材72bが介装されている。なお、シール部材72bは、座部721と周壁部15との間に配置されても良い。
本実施形態では、導体71は、柱部材711と、内側接続部材712と、外側接続部材713と、を有している。
柱部材711は、径方向Rに沿って延在する柱状の部材である。柱部材711は、絶縁部材72を介して貫通孔16に挿入されている。具体的には、柱部材711は、絶縁部材72に嵌合され、当該絶縁部材72を径方向Rに貫通するように設けられている。そして、柱部材711は、絶縁部材72の座部721における径方向外側R1の表面から突出すると共に、絶縁部材72の筒状部722における径方向内側R2の端面から突出するように配置されている。
内側接続部材712は、柱部材711と回転電機2のコイル212とを電気的に接続するための部材であり、例えば板状のバスバー等である。内側接続部材712は、内側固定部材714によって柱部材711に固定されている。図示の例では、内側固定部材714は、柱部材711における径方向内側R2の端面から径方向内側R2に突出した雄ねじ部と、当該雄ねじ部に内側接続部材712が貫通された状態で当該雄ねじ部に締結されたナットと、を含んでいる。内側接続部材712は、コイル接続部213を介してコイル212に接続されている。コイル接続部213は、コイル212におけるステータコア211から突出したコイルエンド部の一部であっても良いし、コイルエンド部に溶接等によって固定された導電性を有する部材であっても良い。
外側接続部材713は、柱部材711と、ケース1の外部に設けられたインバータ等の装置とを電気的に接続するための部材であり、例えば板状のバスバー等である。外側接続部材713は、ケース1の外面に沿って延在している。本例では、外側接続部材713は、軸方向Lに沿って延在している。外側接続部材713の一端部(軸方向第1側L1の端部)は、外側固定部材715によって柱部材711に固定されている。図示の例では、外側固定部材715は、柱部材711における径方向外側R1の端面から径方向内側R1に窪んだ雌ねじ部と、柱部材711における径方向外側R1の端面と外側接続部材713における径方向内側R1の表面とが接触した状態で当該雌ねじ部に締結されたボルトと、を含んでいる。外側接続部材713の他端部(軸方向第2側L2の端部)である先端部713aは、導体71の「端子」として機能する。
本実施形態では、端子台7は、径方向外側R1から導体71を覆うコネクタカバー73を更に有している。コネクタカバー73は、導体71における絶縁部材72から径方向外側R1に突出した部分、つまり、柱部材711における座部721の径方向外側R1の表面から突出した部分及び外側接続部材713を覆うように形成されている。コネクタカバー73には、外側接続部材713の先端部713a(端子)を露出させるためのカバー開口部73aが形成されている。カバー開口部73aは、外側接続部材713の先端部713aの周囲を囲む囲い壁部を有すると共に、当該囲い壁部の内側において先端部713aが突出するように形成されている。本例では、カバー開口部73a(囲い壁部)は、軸方向Lに沿って開口するように形成されている。コネクタカバー73に形成されたカバー開口部73aと、カバー開口部73a内に配置された外側接続部材713の先端部713aとが、回転電機2に電力を供給する動力線を接続するためのコネクタとして機能する。
端子台7は、導体71と絶縁部材72とを合わせた全体として見た場合に、周壁部15から径方向外側R1に突出する外側突出部7oと、貫通孔16を通して配置された貫通部7mと、を有している。更に本実施形態では、端子台7は、周壁部15から径方向内側R2に突出する内側突出部7iを有している。図示の例では、柱部材711における周壁部15から径方向外側R1に突出した部分と、外側接続部材713と、外側固定部材715と、絶縁部材72の座部721と、固定部材72aと、コネクタカバー73とが、外側突出部7oに相当する。また、柱部材711における貫通孔16内に位置する部分と、絶縁部材72の筒状部722における貫通孔16内に位置する部分とが、貫通部7mに相当する。更に、柱部材711における周壁部15から径方向内側R2に突出した部分と、内側接続部材712と、内側固定部材714と、絶縁部材72の筒状部722における周壁部15から径方向内側R2に突出した部分とが、内側突出部7iに相当する。
図4に示すように、本実施形態では、周方向に沿って複数の導体71が設けられている。本例では、回転電機2は三相交流(U相、V相、W相)で駆動されるため、周方向に並ぶように3つの導体71が設けられている。それに伴い、導体71が挿通される貫通孔16、及び導体71と貫通孔16との間に介装された絶縁部材72の筒状部722も、それぞれ導体71と同数設けられている。なお、絶縁部材72の座部721は、筒状部722ごとに設けられていても良いし、複数の筒状部722と一体的に形成されていても良い。
以下では、図4及び5を参照して、端子台7について更に詳細に説明する。図4及び5は、車両に搭載した状態の車両用駆動装置100の軸方向Lに直交する方向に沿った面における断面図である。図4及び5では、説明の便宜上、ケース1、ステータ21、及び端子台7以外の図示を省略すると共に、ステータ21についてはその外形部分のみを図示している(図6も同様)。
なお、以下の説明において、車両に搭載した状態の車両用駆動装置100の鉛直方向を上下方向Vと称する。そして、前記鉛直方向の上側を上側V1と称し、前記鉛直方向の下側を下側V2と称する。
図5に示すように、複数の貫通孔16の開口部16aの全体は、上下方向V視で回転電機2の軸心Axと重複しない位置に配置されている。換言すれば、複数の開口部16aの全体は、軸心Axを通る上下方向Vに沿った仮想平面VP_Axと重複しない位置に配置されている。ここで、「複数の開口部16aの全体」とは、周壁部15の外周面15aにおける複数の開口部16aが形成された領域の全体を指し、周方向においては、周方向一方側の開口部16aにおける周方向一方側の端部から周方向他方側の開口部16aにおける周方向他方側の端部までの領域である。
図4に示すように、本実施形態では、複数の貫通孔16は、ケース1内に貯溜された油10の上面である油面10aよりも上側V1に配置されている。
図5に示すように、本実施形態では、端子台7の外側突出部7oにおける軸心Axから最も遠い箇所である最外端7oaが、上下方向V視で軸心Axと重複しない位置に配置されている。換言すれば、外側突出部7oの最外端7oaは、仮想平面VP_Axと重複しない位置に配置されている。図示の例では、コネクタカバー73の径方向外側R1の端面が径方向Rに直交する平面であるため、外側突出部7oには2つの最外端7oaが存在している。そして、2つの最外端7oaは、仮想平面VP_Axよりも周方向の一方側(図5における時計回り方向側)に位置している。なお、図示の例のように、複数の最外端7oaが存在する場合、複数の開口部16aの全体が仮想平面VP_Axと重複しない位置に配置されていれば、複数の最外端7oaの間に仮想平面VP_Axが位置していても良い。
また、本実施形態では、端子台7の外側突出部7oの全体が、上下方向V視で軸心Axと重複しない位置に配置されている。換言すれば、外側突出部7oの全体は、仮想平面VP_Axと重複しない位置に配置されている。前述のように、本実施形態では、柱部材711における周壁部15から径方向外側R1に突出した部分と、外側接続部材713と、外側固定部材715と、絶縁部材72の座部721と、固定部材72aと、コネクタカバー73とが、外側突出部7oに相当する。そのため、本実施形態では、これらの全てが、仮想平面VP_Axと重複しない位置に配置されている。
また、本実施形態では、ステータ21は、円筒状のステータ外周面21aと、ステータ外周面21aから径方向外側R1に突出するステータ突出部24と、を有している。ステータ外周面21aは、ステータ突出部24が形成された部分を除くステータコア211の外周面である。また、ステータ突出部24は、ステータコア211の外周面が沿う円筒面から径方向外側R1に突出した部分の全体である。本実施形態では、ステータ突出部24が複数(本例では、3個)設けられている。これら複数のステータ突出部24は、ケース1に固定される「被固定部」として機能する。具体的には、複数のステータ突出部24のそれぞれは、ボルト等のステータ固定部材25によってケース1に固定されている。
本実施形態では、端子台7の内側突出部7iの全体が、径方向R視でステータ突出部24と重複しない位置に配置されている。前述のように、本実施形態では、柱部材711における周壁部15から径方向内側R2に突出した部分と、内側接続部材712と、内側固定部材714と、絶縁部材72の筒状部722における周壁部15から径方向内側R2に突出した部分とが、内側突出部7iに相当する。そのため、本実施形態では、これらの全てが、径方向R視でステータ突出部24と重複しない位置に配置されている。更に、本実施形態では、内側突出部7iの全体が、上下方向V視で軸心Axと重複しない位置に配置されている。換言すれば、内側突出部7iの全体は、仮想平面VP_Axと重複しない位置に配置されている。
また、本実施形態では、車両の車体底面Bに対して下側に車両用駆動装置100が配置されている。車両用駆動装置100においては、回転電機2に電力を供給する動力線の配置等のために端子台7の周囲にクリアランスCを設ける必要があるが、本実施形態では、車体底面Bの形状を変更することなくクリアランスCが確保されている。このように、本構成によれば、車両における車体底面Bよりも上側V1の空間を広く確保することができる。そのため、例えば、車両用駆動装置100を後輪駆動用ユニットとして使用する場合には、後部座席付近の室内スペースやラゲッジスペースを広く確保し易くなるため特に好適である。
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、端子台7の周方向の位置が上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
図6に示すように、本実施形態では、端子台7の周方向の位置が、上記第1の実施形態のものよりも、図6における反時計回り方向側にある。本実施形態は、端子台7の外側突出部7oが、上下方向V視で軸心Axと重複する位置に配置されている点、及び内側突出部7iが、上下方向V視で軸心Axと重複する位置に配置されている点で、上記第1の実施形態と異なっている。つまり、本実施形態では、外側突出部7oは、仮想平面VP_Axと重複する位置に配置されていると共に、内側突出部7iは、仮想平面VP_Axと重複する位置に配置されている。
本実施形態では、クリアランスCを確保するために、車体底面Bを上側V1に窪ませた形状変更部Baが形成されている。このような構成においても、開口部16aが上下方向V視で回転電機2の軸心Axと重複する位置に配置された構成と比べて、車体底面Bの形状変更を少なく抑えることができる。なお、形状変更部Baが形成された構成においては、車体底面Bにおける形状変更部Baが形成されていない部分よりも上側V1に端子台7が位置する場合がある。しかし、このような形状変更部Baが形成されることにより、車両用駆動装置100は、車体底面Bに対して下側V2に配置される。
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、周方向に並ぶように3つの導体71が設けられた構成を例として説明した。しかし、導体71の配列方向、及び導体71の数は限定されない。よって、導体71の数は2つ以下であっても良いし、4つ以上であっても良い。また、導体71の配列方向は、軸方向Lに沿う方向であっても良いし、軸方向L及び周方向に対して傾斜した方向であっても良い。
(2)上記の実施形態では、複数の貫通孔16が油面10aよりも上側V1に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、複数の貫通孔16の一部又は全部が油面10aよりも下側V1に配置された構成としても良い。
(3)上記の実施形態では、外側突出部7oの最外端7oaが上下方向V視で軸心Axと重複しない位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、外側突出部7oの最外端7oaが上下方向V視で軸心Axと重複する位置に配置された構成としても良い。
(4)上記の実施形態では、導体71が柱部材711と内側接続部材712と外側接続部材713とを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、内側接続部材712が設けられず、コイル接続部213によってコイル212と柱部材711とが接続された構成としても良い。或いは、外側接続部材713が設けられず、回転電機2に電力を供給する動力線と柱部材711とが直接接続された構成としても良い。
(5)上記の実施形態では、端子台7がコネクタカバー73を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、端子台7がコネクタカバー73を有しない構成としても良い。
(6)上記の実施形態では、ステータ突出部24が複数設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、1つのステータ突出部24が設けられた構成としても良いし、ステータ突出部24が設けられていない構成としても良い。
(7)上記の実施形態では、絶縁部材72が筒状部722を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、絶縁部材72が筒状部722を有しない構成としても良い。このような構成では、導体71の柱部材711が、ケース1に接触しないように、絶縁部材72の座部721に固定される。また、この場合、座部721と周壁部15との間にシール部材72bが配置されると良い。
(8)上記の実施形態では、貫通孔16及び絶縁部材72の筒状部722が複数に分かれて形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、貫通孔16及び絶縁部材72の筒状部722が、一体的に形成されていても良い。この場合、1つの貫通孔16に1つの筒状部722が挿入され、1つの筒状部722の中に複数本(3本)の導体71が配置されると良い。
(9)上記の実施形態では、減速装置3として、2つの遊星歯車機構31,32が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速装置3として、1つ又は3つ以上の遊星歯車機構が設けられた構成としても良いし、減速装置3が設けられていない構成としても良い。
(10)上記の実施形態では、差動歯車装置4の差動ケースD4が、第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32と一体的に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動ケースD4と第2キャリヤとC32とが互いに分離可能な構成(例えば、ボルト、スプライン等で互いに連結された構成)であっても良い。
(11)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
4.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
車両用駆動装置(100)は、
第1車輪(W1)及び第2車輪(W2)の駆動力源となる回転電機(2)と、
前記回転電機(2)からの駆動力を前記第1車輪(W1)と前記第2車輪(W2)とに分配する差動歯車装置(4)と、
前記回転電機(2)及び前記差動歯車装置(4)を収容するケース(1)と、を備え、
前記差動歯車装置(4)が、前記回転電機(2)と同軸に配置された車両用駆動装置(100)であって、
前記回転電機(2)のコイル(212)と電気的に接続された導体(71)と、前記ケース(1)の外部に配置された、前記導体(71)の端子(713a)と、を有する端子台(7)を備え、
前記ケース(1)は、前記回転電機(2)及び前記差動歯車装置(4)の径方向(R)の外側(R1)を囲む筒状の周壁部(15)と、前記径方向(R)に沿って前記周壁部(15)を貫通するように形成された貫通孔(16)と、を有し、
前記端子台(7)は、前記周壁部(15)から前記径方向(R)の外側(R1)に突出する外側突出部(7o)と、前記貫通孔(16)を通して配置された貫通部(7m)と、を有し、
前記貫通孔(16)における、前記周壁部(15)の外周面(15a)に開口する開口部(16a)の全体が、鉛直方向(V)視で前記回転電機(2)の軸心(Ax)と重複しない位置に配置されている。
この構成のように、差動歯車装置(4)が回転電機(2)と同軸に配置された構成では、差動歯車装置(4)の設置高さが車輪軸に近い高さに制限されることが多いために、車両用駆動装置(100)の全体も車両の下部に配置されることが多く、その結果、車両用駆動装置(100)の上側(V1)に車両の他の構成要素が配置されることになり易い。上記の構成によれば、端子台(7)の貫通部(7m)が配置される貫通孔(16)の開口部(16a)の全体が、鉛直方向(V)視で回転電機(2)の軸心(Ax)と重複しない位置に配置される。そのため、端子台(7)が有する導体(71)における貫通孔(16)の開口部(16a)から径方向(R)の外側(R1)に突出する突出部分も、鉛直方向(V)視で回転電機(2)の軸心(Ax)からずれた位置に配置されることになる。これにより、車両用駆動装置(100)の鉛直方向(V)の大きさを小さく抑えることが容易となる。したがって、上記の構成によれば、車両用駆動装置(100)が車両に搭載された場合に、車両用駆動装置(100)よりも上側(V1)に配置されることが多い他の構成要素の配置の妨げになり難い車両用駆動装置(100)を実現できる。
ここで、前記貫通孔(16)は、前記ケース(1)内に貯溜された油(10)の上面である油面(10a)よりも上側(V1)に配置されていると好適である。
上記の構成によれば、貫通孔(16)が油(10)の中に配置されないため、油(10)がケース(1)の外部に漏出し難い。したがって、貫通孔(16)と端子台(7)との間のシール構造を簡略化することができる。
また、前記端子台(7)の前記外側突出部(7o)における前記軸心(Ax)から最も遠い箇所(7oa)が、前記鉛直方向(V)視で前記軸心(Ax)と重複しない位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、端子台(7)の外側突出部(7o)における回転電機(2)の軸心(Ax)から最も遠い箇所(7oa)が、鉛直方向(V)視で当該軸心(Ax)と重複する位置に配置されている場合に比べて、車両用駆動装置(100)の鉛直方向(V)の大きさを小さく抑えることが容易となる。したがって、外側突出部(7o)の形状によらず、車両の他の構成要素の配置の妨げとなり難い車両用駆動装置(100)を実現できる。
また、前記端子台(7)の前記外側突出部(7o)の全体が、前記鉛直方向(V)視で前記軸心(Ax)と重複しない位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、端子台(7)の外側突出部(7o)の一部が、鉛直方向(V)視で回転電機(2)の軸心(Ax)と重複する位置に配置されている場合に比べて、車両用駆動装置(100)の鉛直方向(V)の大きさを小さく抑えることが容易となる。したがって、外側突出部(7o)の形状によらず、車両の他の構成要素の配置の妨げとなり難い車両用駆動装置(100)を実現できる。
また、前記回転電機(2)は、円筒状のステータ外周面(21a)を有するステータ(21)と、前記ステータ(21)の前記径方向(R)の内側(R2)に配置されたロータ(22)と、を有し、
前記ステータ(21)は、前記ケース(1)に固定される被固定部として、前記ステータ外周面(21a)から前記径方向(R)の外側(R1)に突出するステータ突出部(24)を有し、
前記端子台(7)は、前記周壁部(15)から前記径方向(R)の内側(R2)に突出する内側突出部(7i)を有し、
前記内側突出部(7i)の全体が、前記径方向(R)視で前記ステータ突出部(24)と重複しない位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、端子台(7)の内側突出部(7i)とステータ突出部(24)との干渉を少なくすることができる。したがって、ステータ外周面(21a)にステータ突出部(24)が設けられている場合であっても、端子台(7)の径方向(R)の外側(R1)への突出を小さく抑えることができ、延いては車両用駆動装置(100)の径を小さく抑えることができる。
上記の構成によれば、車両用駆動装置(100)の鉛直方向(V)の大きさを小さく抑えることが容易であり、よって車両用駆動装置(100)の上側(V1)に配置されることが多い他の構成要素の配置の妨げにもなり難い。そのため、車両用駆動装置(100)を車両に搭載する場合における、車体底面(B)の形状変更を少なく抑えることができる。したがって、上記の車両用駆動装置(100)は、車両の車体底面(B)に対して下側(V2)に配置される場合に特に適している。