車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が存在することを指す。また、本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。
以下の説明において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、下記において説明する減速装置3(減速装置3を構成する各遊星歯車機構)及び差動歯車装置4において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置或いは機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源となる回転電機2と、回転電機2の回転を減速する減速装置3と、減速装置3を介して伝達される回転電機2からの駆動力を第1車輪501と第2車輪502とに分配する差動歯車装置4と、を備えている。車両用駆動装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とするハイブリッド自動車や、回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とする電気自動車に搭載される駆動装置である。図1及び図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源として回転電機2のみを備えている。2輪駆動の4輪車の場合には、これによって電気自動車が実現できる。また、4輪駆動の4輪車の場合には、他の2輪を内燃機関の駆動力によって駆動することでハイブリッド
車両が実現できる。当然ながら、4輪駆動の4輪車の場合には、本実施形態の車両用駆動装置100を他の2輪にも適用することで、4輪駆動の電気自動車を実現することもできる。なお、後述するように、本実施形態の車両用駆動装置100では、ケース1の径方向Rにおける大型化を抑制することができるため、荷室や客室の下側(車両のフロア下)の空間、すなわち、鉛直方向の大きさが比較的限られた空間に車両用駆動装置100を配置する場合であっても、荷室の容量や客室の容量を適切に確保することが可能となる。すなわち、この車両用駆動装置100は車両の後輪を駆動する後輪駆動ユニットとして好適に用いることができ、この場合、第1車輪501及び第2車輪502の一方が車両の左後輪となり、第1車輪501及び第2車輪502の他方が車両の右後輪となる。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両には、第1車輪501と一体的に回転するように連結される第1ドライブシャフト51と、第2車輪502と一体的に回転するように連結される第2ドライブシャフト52とが設けられる。そして、差動歯車装置4が備える2つの分配出力要素の一方(後述する第1サイドギヤB41)が、第1ドライブシャフト51と一体的に回転するように連結(本実施形態では、分配出力軸53を介して連結)されていると共に、当該2つの分配出力要素の他方(後述する第2サイドギヤB42)が、第2ドライブシャフト52と一体的に回転するように連結されている。よって、減速装置3を介して差動歯車装置4に伝達される回転電機2からの駆動力は、差動歯車装置4によって第1ドライブシャフト51と第2ドライブシャフト52とに分配されることで、第1車輪501と第2車輪502とに分配される。
減速装置3及び差動歯車装置4は、回転電機2と同軸に配置されている。本実施形態では、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51、第2ドライブシャフト52、及び分配出力軸53が、回転電機2のロータ軸27を基準として同軸配置されている。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向は、車両用駆動装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機2のロータ軸27の径方向は、車両用駆動装置100の径方向と等価であり、回転電機2のロータ軸27の周方向は、車両用駆動装置100の周方向と等価である。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向を車両用駆動装置100の軸方向Lと称し、回転電機2のロータ軸27の径方向を車両用駆動装置100の径方向Rと称する。また、以下の説明では、特に明記している場合を除き、周方向は、回転電機2のロータ軸27の周方向を意味する。減速装置3は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。そして、軸方向Lにおける回転電機2に対して減速装置3が配置される側を軸方向第1側L1と称し、軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側を軸方向第2側L2と称する。また、径方向Rにおいて、ロータ軸27とは反対側(すなわち、外側)を径方向外側R1と称し、ロータ軸27側(すなわち、内側)を径方向内側R2と称する。
車両用駆動装置100は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4を収容するケース1を備えている。本実施形態では、ケース1は、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第1側L1の端部)、第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第2側L2の端部)、及び分配出力軸53を内部に収容している。ケース1は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4の径方向外側R1を囲む筒状の周壁部10を備えている。すなわち、周壁部10によって径方向外側R1を区画された収容空間Sの内部に、軸方向第1側L1から順に、差動歯車装置4、減速装置3、及び回転電機2が配置されている。周壁部10は、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、断面形状が軸方向Lの位置によって異なる筒状)に形成されている。そして、周壁部10の全体が、第1ケース部11と、第1ケース部11に対して軸方向第1側L1から接合された第2ケース部12とによって2つに分割されている。すなわち、周壁部10における第1ケース部11と第2ケース部12との接合部15よりも軸方向第2側L2の部分の全体は、第1ケース部11の少なくとも一部により構成され、周壁部10における接合部15
よりも軸方向第1側L1の部分の全体は、第2ケース部12の少なくとも一部により構成される。詳細は後述するが、本実施形態では、第1ケース部11と第2ケース部12とは、ボルト90を用いて接合されている。
このように、周壁部10の全体は、第1ケース部11と第2ケース部12とによって、第1ケース部11により構成される部分である第1周壁部10aと、第2ケース部12により構成される部分である第2周壁部10bとの2つに分割されている。そして、周壁部10は、第1ケース部11と第2ケース部12との接合部15(第1周壁部10aと第2周壁部10bとの接合部)においてのみ、互いに異なる部品同士を軸方向Lに接合した接合部を有している。すなわち、第1ケース部11における少なくとも周壁部10(第1周壁部10a)を構成する部分(例えば、第1ケース部11の全体)は、1つの部品で形成され、第2ケース部12における少なくとも周壁部10(第2周壁部10b)を構成する部分(例えば、第2ケース部12の全体)は、1つの部品で形成される。第1ケース部11や第2ケース部12として、例えば、鋳造(或いは、鋳造品の削り出し)により成形された部品を用いることができる。
本実施形態では、ケース1は、第1ケース部11及び第2ケース部12に加えて、第1ケース部11に対して軸方向第2側L2から接合される第3ケース部13を備えている。第1ケース部11は、軸方向第2側L2に底部を有する有底筒状に形成されており、当該底部を覆うように第3ケース部13が配置されている。そして、第1ケース部11(上記底部)を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、分配出力軸53が挿入され、第3ケース部13を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第1ドライブシャフト51が挿入された状態で、分配出力軸53と第1ドライブシャフト51とが互いに連結されている。また、第2ケース部12を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第2ドライブシャフト52が挿入されている。
本実施形態では、ケース1は、支持部材14を更に有している。支持部材14は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されており、ケース1の内部(収容空間S)に配置される部材を支持する。後述するように、支持部材14は、減速装置3が備える非回転要素(本実施形態では、後述する第1リングギヤR31及び第2リングギヤR32)をケース1(周壁部10)に対して回転不能に支持するために用いられている。また、支持部材14は、回転電機2のロータ軸27を回転可能に支持するためや、第2キャリヤC32或いは差動ケースD4を回転可能に支持するために用いられている。本例では、支持部材14は、第1リングギヤR31及びロータ軸27を支持する第1支持材141と、第2リングギヤR32及び第2キャリヤC32(或いは差動ケースD4)を支持する第2支持材142とを、各別に備えている。そして、第1支持材141及び第2支持材142の一方(本例では、第1支持材141)が、ケース1(本例では、第1ケース部11)に一体的に固定されていると共に、第1支持材141と第2支持材142とが互いに一体的に固定されている。このように、本実施形態では、第1支持材141がロータ21(ロータ軸27)を回転可能に支持する。そして、第1支持材141は、周壁部10の径方向内側R2において第1ケース部11に対して接合(図1に示す例では、ボルトにより接合)されている。すなわち、第1支持材141は、第1周壁部10aの内周面に接合されている。本実施形態では、第1支持材141が「サポート壁」に相当する。
回転電機2は、ロータコア22の内部に永久磁石23を備えたロータ21と、ステータコア25を備えたステータ24と、ロータコア22と一体的に回転するように連結されたロータ軸27とを備えた永久磁石型回転電機である。ステータコア25にはコイルが巻装されており、ステータコア25から軸方向Lに突出するコイルの部分であるコイルエンド部26が、ステータコア25に対して軸方向Lの両側に形成されている。ロータコア22の径方向内側R2で、ロータ軸27がロータコア22に連結され、ロータ21とロータ軸
27とが一体的に回転する。回転電機2は、少なくともステータコア25の全体が周壁部10によって径方向外側R1から囲まれるように配置される。本実施形態では、回転電機2は、ステータコア25に対して軸方向第2側L2に突出するコイルエンド部26も周壁部10によって径方向外側R1から囲まれるように配置されている。なお、本実施形態では、回転電機2は永久磁石型回転電機であるが、例えば誘導型回転電機など他の方式の回転電機であっても良い。また、本実施形態では、回転電機2はインナロータ型の回転電機であるが、回転電機2がアウタロータ型の回転電機である構成としてもよい。
ロータ軸27は、円筒状に形成されている。ここで、「円筒状」とは、多少の異形部分を有していたとしてもその全体としての概略形状が円筒であることを意味する(本明細書において、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同趣旨である)。ロータ軸27における軸方向Lに沿ってロータコア22よりも軸方向第2側L2に突出した部分は、第1ロータ軸受61を介して、ケース1の第1ケース部11に回転可能に支持されている。ロータ軸27における軸方向Lに沿ってロータコア22よりも軸方向第1側L1に突出した部分は、第2ロータ軸受62を介して、支持部材14(本例では、第1支持材141)に回転可能に支持されている。
減速装置3は、回転電機2の回転を減速して差動歯車装置4に駆動力を伝達する。本実施形態では、減速装置3は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32とを有している。第1遊星歯車機構31は、動力伝達経路の順で、第2遊星歯車機構32よりも回転電機2の側に配置されている。第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32はいずれも減速機構として構成され、第1遊星歯車機構31によって減速された回転電機2の回転が、第2遊星歯車機構32によって更に減速されて、差動歯車装置4に伝達される。
第1遊星歯車機構31は、回転電機2に駆動連結される回転要素(入力要素)と、第2遊星歯車機構32(第2遊星歯車機構32の入力要素)に駆動連結される回転要素(出力要素)とを有しており、入力要素に伝達される回転電機2の回転を減速して出力要素から第2遊星歯車機構32に伝達する。本実施形態では、第1遊星歯車機構31は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第1サンギヤS31と、第1リングギヤR31と、第1キャリヤC31とを有している。第1サンギヤS31は、第1遊星歯車機構31の入力要素であり、回転電機2のロータ軸27と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤR31は、ケース1に対して回転不能に支持される非回転要素であり、支持部材14の第1支持材141に、周方向へ回転不能に支持されている。第1キャリヤC31は、第1遊星歯車機構31の出力要素である。
第2遊星歯車機構32は、軸方向Lにおいて、第1遊星歯車機構31に隣接し、第1遊星歯車機構31に対して回転電機2側とは反対側に配置されている。つまり、軸方向Lにおいて、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1へ向かって、回転電機2、第1遊星歯車機構31、及び第2遊星歯車機構32が記載の順に並んで配置されている。第2遊星歯車機構32は、第1遊星歯車機構31(第1遊星歯車機構31の出力要素)に駆動連結される回転要素(入力要素)と、差動歯車装置4に駆動連結される回転要素(出力要素)とを有しており、入力要素に伝達される回転(第1遊星歯車機構31により減速された回転電機2の回転)を減速して出力要素から差動歯車装置4に伝達する。本実施形態では、第2遊星歯車機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第2サンギヤS32と、第2リングギヤR32と、第2キャリヤC32とを有している。第2サンギヤS32は、第2遊星歯車機構32の入力要素であり、第1キャリヤC31と一体的に回転するように構成される。一体的に回転する第1キャリヤC31及び第2サンギヤS32は、ブッシュ等の滑り軸受を介して分配出力軸53に対して回転可能に支持されている。第2リングギヤR32は、ケース1に対して回転不能に支持される非回転要素であり、支持部材14の第2支持材142に、周方向へ回転不能に支持されている。第2キャリヤC32は、第
2遊星歯車機構32の出力要素である。本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第2側L2の端部は、軸方向Lにおける第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第1差動ケース軸受66を介して、支持部材14(本例では、第2支持材142)に回転可能に支持されている。
上記のように、第2サンギヤS32は、第1キャリヤC31と一体的に回転するように構成される。本実施形態では、第2サンギヤS32は、第1キャリヤC31とは別部品で構成され、第1キャリヤC31とスプライン係合によって連結されている。なお、第2サンギヤS32と第1キャリヤC31とが、スプライン係合以外の連結形態(分離可能な連結形態)で連結されることで、互いに一体的に回転する構成とすることもできる。また、第2サンギヤS32と第1キャリヤC31とが一体的に形成されることで、これらが一体的に回転する構成とすることもできる。例えば、第2サンギヤS32と第1キャリヤC31とが溶接等により接合されることで、これらが一体的に形成される構成(分離不能に連結される構成)や、第2サンギヤS32と第1キャリヤC31とが1つの部品で構成されることで、これらが一体的に形成される構成とすることができる。
本実施形態では、第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32は、斜歯歯車を用いて構成されている。そして、図1及び図2に示すように、斜歯歯車を用いて構成された第1遊星歯車機構31や第2遊星歯車機構32が軸方向Lへ移動しようとする荷重を受け止めるために、第1スラスト軸受63、第2スラスト軸受64、及び第3スラスト軸受65が設けられている。具体的には、第1遊星歯車機構31に対して軸方向第2側L2に第1スラスト軸受63が設けられ、第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との軸方向Lの間に第2スラスト軸受64が設けられ、第2遊星歯車機構32に対して軸方向第1側L1に第3スラスト軸受65が設けられている。より詳しくは、第1スラスト軸受63は、第1サンギヤS31に対して軸方向第2側L2に設けられている。第2スラスト軸受64は、第1サンギヤS31に対して軸方向第1側L1であって第1キャリヤC31と第2サンギヤS32との連結部分に対して軸方向第2側L2に設けられている。第3スラスト軸受65は、第2サンギヤS32に対して軸方向第1側L1に設けられている。
差動歯車装置4は、減速装置3(本実施形態では、第2キャリヤC32)に駆動連結される回転要素(入力要素)と、第1車輪501及び第2車輪502(第1ドライブシャフト51及び第2ドライブシャフト52)に駆動連結される2つの回転要素(分配出力要素)とを有しており、減速装置3から入力要素に伝達される回転を第1車輪501と第2車輪502とに(第1ドライブシャフト51と第2ドライブシャフト52とに)分配して伝達する。本実施形態では、差動歯車装置4は、傘歯車式の差動歯車機構(傘歯車式差動歯車機構4a)を備えている。具体的には、差動歯車装置4(傘歯車式差動歯車機構4a)は、入力要素としての差動ケースD4と、差動ケースD4に保持されたピニオンシャフトF4と、ピニオンシャフトF4に対して回転可能に支持されたピニオンギヤP(本例では、第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42の2つのピニオンギヤP)と、分配出力要素としての第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とを有している。第1ピニオンギヤP41、第2ピニオンギヤP42、第1サイドギヤB41、及び第2サイドギヤB42は、いずれも傘歯車である。
差動ケースD4は、中空の部材であり、その内部にピニオンシャフトF4と、ピニオンギヤP(第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42)と、第1サイドギヤB41と、第2サイドギヤB42とが収容されている。本実施形態では、差動ケースD4は、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32と一体的に形成されており、第2キャリヤC32が差動ケースD4の一部として構成されている。差動ケースD4と第2キャリヤC32とは、例えば、鋳造(或いは、鋳造品の削り出し)による一体成形技術を用いて一体的に形成され、或いは、鍛造による一体成形技術を用いて一体的に形成
される。そのため、本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第2側L2の端部が、差動ケースD4の第1被支持部D4aとして機能する。第1被支持部D4aは、軸方向Lにおける第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間に配置されている。第1被支持部D4aは、支持部材14を介してケース1に固定された第1差動ケース軸受66によって直接支持されている。前述のように、支持部材14の第1支持材141がケース1の第1ケース部11に一体的に固定され、第1支持材141と第2支持材142とが互いに一体的に固定されている。そのため、第1被支持部D4aは、第1差動ケース軸受66を介してケース1の第1ケース部11に支持されている。
また、差動ケースD4は、第1被支持部D4aよりも軸方向第1側L1に配置される第2被支持部D4bを有している。ここでは、第2被支持部D4bは、軸方向Lに沿って第2サイドギヤB42よりも軸方向第1側L1に突出するように形成されている。第2被支持部D4bは、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42と同軸の円筒状に形成されている。第2被支持部D4bは、ケース1の第2ケース部12に固定された第2差動ケース軸受67によって直接支持されている。つまり、第2被支持部D4bは、第2差動ケース軸受67を介して回転可能にケース1の第2ケース部12に支持されている。
ピニオンシャフトF4は、ピニオンギヤP(第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42)に挿通され、それらを回転可能に支持している。ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4に径方向Rに沿って形成された貫通孔に挿入されており、係止部材43により差動ケースD4に係止されている。第1ピニオンギヤP41と第2ピニオンギヤP42とは、径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態でピニオンシャフトF4に取り付けられ、差動ケースD4の内部空間においてピニオンシャフトF4を中心として回転するように構成されている。
第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、差動歯車装置4における分配後の回転要素である。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、軸方向Lに沿って互いに間隔を空けて、ピニオンシャフトF4を挟んで対向するように設けられ、差動ケースD4の内部空間においてそれぞれの周方向に回転するように構成されている。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、ピニオンギヤP(第1ピニオンギヤP41及び第2ピニオンギヤP42)に噛み合っている。第1サイドギヤB41の内周面には、第1サイドギヤB41を分配出力軸53に連結するためのスプラインが形成されている。第2サイドギヤB42の内周面には、第2サイドギヤB42を第2ドライブシャフト52に連結するためのスプラインが形成されている。
分配出力軸53は、差動歯車装置4によって分配された回転電機2からの駆動力を第1ドライブシャフト51に伝達する部材である。分配出力軸53は、回転電機2のロータ軸27の径方向内側R2を軸方向Lに貫通している。分配出力軸53における軸方向第1側L1の端部の外周面には、分配出力軸53を差動歯車装置4の第1サイドギヤB41に連結するためのスプラインが形成されている。当該スプラインと第1サイドギヤB41の内周面のスプラインとが係合することにより、分配出力軸53と第1サイドギヤB41とが一体的に回転するように連結されている。分配出力軸53の軸方向第2側L2の端部には、分配出力軸53を第1ドライブシャフト51に連結するための連結部53aが形成されている。このように、分配出力軸53は、回転電機2及び減速装置3を軸方向Lに貫通するように配置されて、差動歯車装置4(第1サイドギヤB41)と第1ドライブシャフト51とを連結している。
連結部53aは、第1ケース部11の内部空間における回転電機2よりも軸方向第2側L2の部分から第3ケース部13の内部空間にかけて延在している。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部
53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部53aは、第1出力軸受68を介して回転可能にケース1の第3ケース部13に支持されていると共に、第2出力軸受69を介して回転可能に第1ケース部11(軸方向第2側L2の底部)に支持されている。連結部53aにおける軸方向第1側L1の部分の内周面には、分配出力軸53(連結部53a)を第1ドライブシャフト51に連結するためのスプラインが形成されている。
第1ドライブシャフト51は、第1車輪501に駆動連結され、第2ドライブシャフト52は、第2車輪502に駆動連結される。なお、本実施形態では、分配出力軸53の軸方向第2側L2の端部に連結部53aが設けられ、第1ドライブシャフト51と分配出力軸53の連結部53aとがスプラインによって連結されている。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、分配出力軸53の軸方向第2側L2の端部に、連結部53aの代わりにフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフト51とがボルトによって締結された構成であっても良い。
ところで、車両用駆動装置100の車載性を考慮すると、装置全体が極力小型化されていることが好ましい。本実施形態の車両用駆動装置100では、以下に述べるような構成を備えることで、車両用駆動装置100の径方向Rにおける大型化を抑制することが可能となっている。
上述したように、周壁部10の全体は、第1ケース部11と、第1ケース部11に対して軸方向第1側L1から接合された第2ケース部12とによって2つに分割されている。すなわち、周壁部10は、第1ケース部11と第2ケース部12との接合部15においてのみ、互いに異なる部品同士を軸方向Lに接合した接合部を有している。そして、図1に示すように、本実施形態では、第1ケース部11と第2ケース部12との接合面16は、回転電機2のステータコア25よりも軸方向第1側L1(ステータコア25の軸方向第1側L1の端面よりも軸方向第1側L1)に配置されている。ここで、接合面16は、第1ケース部11における第2ケース部12と接合される面と、第2ケース部12における第1ケース部11と接合される面とが合わさる面(合わせ面)である。なお、ステータコア25は、ロータ軸27と同軸の円筒状に形成されている。例えば、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層してステータコア25が形成され、或いは、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素としてステータコア25が形成される。なお、第1ケース部11と第2ケース部12との接合面16が、ステータコア25の軸方向第1側L1の端面よりも軸方向第2側L2に配置される構成とすることも可能である。
収容空間Sに配置される装置の中で回転電機2は比較的大径の装置とされる。そのため、周壁部10は、ステータコア25を径方向外側R1から囲む部分において径方向Rに大きくなりやすいが、上記のように接合面16をステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置することで、周壁部10におけるステータコア25を径方向外側R1から囲む部分を避けて、接合面16が形成される接合部15を設けることができる。これにより、ケース1の径方向Rにおける大型化(すなわち、車両用駆動装置100の径方向Rにおける大型化)を抑制しつつ、接合部15を周壁部10に設けることが可能となっている。なお、本実施形態では、回転電機2はインナロータ型の回転電機であり、ステータコア25は周壁部10の内周面に固定されている。よって、ステータコア25を径方向外側R1から囲む部分における周壁部10の径方向Rの大きさは、ステータコア25の外周面の径に応じた大きさとなる。
上記のように接合面16がステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置されるため、ステータコア25の全体が、収容空間Sのうちの第1ケース部11(第1周壁部10a
)によって径方向外側R1を区画される部分(以下、「第1収容空間S1」という。)に配置される。図3に示すように、本実施形態では、ステータコア25に対して軸方向第1側L1に突出するコイルエンド部26も、第1収容空間S1に配置されている。すなわち、本実施形態では、接合面16は、ステータ24の軸方向第1側L1のコイルエンド部26よりも軸方向第1側L1に配置されている。また、図1に示すように、本実施形態では、差動歯車装置4の全体が、収容空間Sのうちの第2ケース部12(第2周壁部10b)によって径方向外側R1を区画される部分(以下、「第2収容空間S2」という。)に配置されている。また、本実施形態では、減速装置3における軸方向第2側L2の部分が第1収容空間S1に配置され、減速装置3における軸方向第1側L1の部分が第2収容空間S2に配置されている。具体的には、第1遊星歯車機構31の少なくとも一部(より詳しくは、第1遊星歯車機構31における少なくとも各ギヤの噛み合い部)が第1収容空間S1に配置され、第2遊星歯車機構32の少なくとも一部(より詳しくは、第2遊星歯車機構32における少なくとも各ギヤの噛み合い部)が第2収容空間S2に配置されている。よって、本実施形態では、接合面16が形成される接合部15は、減速装置3よりも径方向外側R1であって径方向R視で減速装置3と重複する位置に設けられている。
本実施形態では、回転電機2の外径は、減速装置3の外径よりも大きく、また、差動歯車装置4の外径よりも大きい。すなわち、減速装置3の最大径及び差動歯車装置4の最大径が、回転電機2の最大径よりも小さい。本実施形態では、回転電機2の最大径は、ステータコア25の外周面の径となる。また、本実施形態では、減速装置3の最大径は、リングギヤ(R31,R32)の外径(リングギヤが内周面に形成された円筒状部材の外径)の最大値となる。なお、減速装置3の最大径を、リングギヤ(R31,R32)の歯底円の径やリングギヤ(R31,R32)の基準ピッチ円の径に基づき定義してもよい。また、本実施形態では、差動歯車装置4の最大径は、差動ケースD4の外径の最大値となる。なお、減速装置3の最大径及び差動歯車装置4の最大径の一方又は双方が、回転電機2の最大径以上である構成とすることもできる。
本実施形態では、第1ケース部11と第2ケース部12とは、ボルト90を用いて接合されている。具体的には、図3に示すように、周壁部10は、第1ケース部11と第2ケース部12との接合部15に、ボルト90が締結される雌ねじ71が形成された締結部70と、ボルト90が貫通する貫通孔81が形成された座部80と、を備えている。締結部70は、軸方向L視で座部80と重複するように配置される。図示は省略するが、周壁部10は、周方向の複数の位置のそれぞれに、締結部70及び座部80を備えている。そして、締結部70と座部80とが当接した状態でこれらがボルト90により互いに締結固定されることで、第1ケース部11と第2ケース部とが接合されている。なお、ボルト90は、軸方向Lにおいて締結部70に対して座部80が配置される側(本実施形態では、軸方向第1側L1)から貫通孔81に挿入された状態で、雌ねじ71に締結されている。上記のように、本実施形態では、接合部15が、減速装置3よりも径方向外側R1であって径方向R視で減速装置3と重複する位置に設けられる。そのため、ボルト90は、周方向の一部の領域において径方向R視で減速装置3と重複するように配置されている。
図3に示すように、本実施形態では、締結部70が第1ケース部11に設けられ、座部80が第2ケース部12に設けられている。具体的には、締結部70が、第1ケース部11(第1周壁部10a)における軸方向第1側L1の端部に設けられ、座部80が、第2ケース部12(第2周壁部10b)における軸方向第2側L2の端部に設けられている。よって、本実施形態では、締結部70における軸方向第1側L1の端面と座部80における軸方向第2側L2の端面とが合わさって接合面16が形成される。また、本実施形態では、ボルト90は、軸方向第1側L1から貫通孔81に挿入された状態で、雌ねじ71に締結されている。
ボルト90は、貫通孔81よりも大径に形成される頭部90aと、貫通孔81に挿入されて雌ねじ71に締結される軸部90bとを備えている。図3に示すように、座部80は、ボルト90の頭部90aが軸方向Lに当接する当接面(本実施形態では、軸方向第1側L1の端面)を有するように設ける必要がある。よって、座部80は、周壁部10における座部80に対して軸方向Lで締結部70とは反対側(本実施形態では、座部80に対して軸方向第1側L1)に隣接する部分よりも、少なくとも上記当接面の分だけ径方向外側R1に突出するように形成される。この点に関して、本実施形態では座部80を第2ケース部12に設けることで、ケース1の径方向Rにおける大型化の抑制を図ることが可能となっている。
補足説明すると、本実施形態では、第1収容空間S1に配置される回転電機2及び減速装置3(第1遊星歯車機構31)は、第1ケース部11に対して軸方向第1側L1から組み付けられ、第2収容空間S2に配置される減速装置3(第2遊星歯車機構32)及び差動歯車装置4は、第2ケース部12に対して軸方向第2側L2から組み付けられる。そして、上述したように、本実施形態では、回転電機2の外径が、減速装置3の外径よりも大きく、また、差動歯車装置4の外径よりも大きいため、接合部15における周壁部10の径は、回転電機2の外径に応じた径となる。一方、第2ケース部12(第2周壁部10b)における接合部15に対して軸方向第1側L1に隣接する部分は、減速装置3(第2遊星歯車機構32)の外径に応じた径(すなわち、接合部15における周壁部10の径よりも小径)に形成されており、第2ケース部12における軸方向第2側L2の端部には、第2ケース部12(第2周壁部10b)の径をそれよりも大径の第1ケース部11(第1周壁部10a)に合わせるための、径方向外側R1への拡径部18(径方向突出部)が形成されている。ここでは、拡径部18は、第2ケース部12の軸方向第2側L2の端部において、径方向外側R1へ突出すると共に周方向に連続するフランジ状に形成されている。本実施形態では、座部80が第2ケース部12に設けられるため、座部80におけるボルト90の頭部90aが当接する当接面を、この拡径部18を利用して(具体的には、拡径部18における径方向外側R1の部分に)形成することが可能となっている。これにより、第1ケース部11における接合部15に対して軸方向第2側L2に隣接する部分に対する、接合部15(締結部70及び座部80)の径方向外側R1への突出量を、座部80が第1ケース部11に設けられる場合に比べて小さく抑えて(突出量がゼロの場合も含む)、ケース1の径方向Rにおける大型化を抑制することが可能となっている。なお、本実施形態では、拡径部18は、軸方向L視でステータコア25と重複する位置に設けられている。
上記のように本実施形態では座部80が第2ケース部12に設けられるため、座部80は、ステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置される。なお、座部80の軸方向Lの配置位置(配置領域)は、座部80に形成される貫通孔81の軸方向Lの配置位置とする。そして、本実施形態では、座部80に加えて締結部70も、ステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置されている。なお、締結部70の軸方向Lの配置位置(配置領域)は、締結部70に形成される雌ねじ71の軸方向Lの配置位置とする。このように締結部70及び座部80の双方が、ステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置される構成とすることで、第2ケース部12とステータ24の軸方向第1側L1のコイルエンド部26との軸方向Lの離間距離(絶縁距離)を適切に確保しつつ、第2ケース部12における接合部15に対して軸方向第1側L1に隣接する部分の径を小さく抑える(具体的には、減速装置3(第2遊星歯車機構32)の外径に応じた径とする)ことが容易となっている。すなわち、拡径部18の径方向内側R2の端部を、軸方向L視でステータコア25と重複する位置に配置することが容易となっている。この点からも、第1ケース部11における接合部15に対して軸方向第2側L2に隣接する部分に対する、接合部15の径方向外側R1への突出量を小さく抑えることが容易となっている。なお、締結部70は、雌ねじ71を適切に形成することができる程度の径方向Rの厚みを有する必要がある。本実施
形態では、図1及び図3に示すように、締結部70は、第1ケース部11における接合部15(締結部70)に対して軸方向第2側L2に隣接する部分に対して、径方向外側R1に突出するように形成されている。
図1に示すように、ケース1には、ケース1を車体(車体フレーム等)に取り付けるための取付部17が設けられている。取付部17には、マウントを取り付けるための雌ねじを有する筒状に形成されており、ケース1は、取付部17に取り付けられたマウントを介して車体に懸架される。本実施形態では、ケース1におけるステータコア25よりも軸方向第2側L2の部分と、ケース1における減速装置3よりも軸方向第1側L1の部分とのそれぞれに、取付部17が設けられている。具体的には、第1ケース部11は、ステータコア25よりも軸方向第2側L2に、ステータコア25を径方向外側R1から囲む部分よりも小径に形成された部分を有し、当該部分から径方向外側R1に突出するように取付部17が設けられている。また、第2ケース部12は、減速装置3よりも軸方向第1側L1に、減速装置3を径方向外側R1から囲む部分よりも小径に形成された部分(本実施形態では、差動歯車装置4の軸方向第1側L1の部分を径方向外側R1から囲む部分)を有し、当該部分から径方向外側R1に突出するように取付部17が設けられている。取付部17に形成された雌ねじは、マウントとの連結のためのボルト(図示せず)が締結して車両用駆動装置100の重量を支持することができるだけの締結部長さを有している必要がある。そのため、取付部17は、径方向Rにケース1から突出した形状となる。しかしながら、このように、取付部17をケース1(周壁部10)における比較的小径の部分に形成することで、取付部17も含めて車両用駆動装置100の径方向Rにおける大型化を抑制することが可能となっている。
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態では、締結部70及び座部80の双方が、ステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、締結部70の一部が、ステータコア25の軸方向第1側L1の端面よりも軸方向第2側L2に配置される構成とすることもできる。
(2)上記の実施形態では、締結部70が第1ケース部11に設けられ、座部80が第2ケース部12に設けられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、締結部70が第2ケース部12に設けられ、座部80が第1ケース部11に設けられる構成とすることもできる。このような構成では、締結部70に加えて座部80の少なくとも一部(好ましくは全体)が、ステータコア25よりも軸方向第1側L1に配置される構成とすると好適である。
(3)上記の実施形態では、ケース1におけるステータコア25よりも軸方向第2側L2の部分と、ケース1における減速装置3よりも軸方向第1側L1の部分とのそれぞれに、ケース1を車体に取り付けるための取付部17が設けられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケース1におけるステータコア25を径方向外側R1から囲む部分に取付部17が設けられる構成や、ケース1における減速装置3を径方向外側R1から囲む部分に取付部17が設けられる構成とすることもできる。
(4)上記の実施形態では、第1ケース部11と第2ケース部12とがボルト90を用いて接合される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1ケース部11と第2ケース部12との接合が、例えばリベットによる締結等、ボルト締結以外の方法で行われる構成とすることもできる。
(5)上記の実施形態では、差動歯車装置4が傘歯車式の差動歯車機構(傘歯車式差動歯車機構4a)を備える構成(差動歯車装置4が傘歯車式の差動歯車装置である構成)を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車装置4が遊星歯車式の差動歯車機構を備える構成(差動歯車装置4が遊星歯車式の差動歯車装置である構成)とすることもできる。このような構成の一例を図4に示す。図4に示す例では、差動歯車装置4が備える遊星歯車式差動歯車機構4bは、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、第3サンギヤS9、第3キャリヤC9、及び第3リングギヤR9を有している。第3リングギヤR9は、差動歯車装置4(遊星歯車式差動歯車機構4b)の入力要素であり、第2キャリヤC32と一体的に回転するように連結されている。また、第3サンギヤS9及び第3キャリヤC9が差動歯車装置4(遊星歯車式差動歯車機構4b)の分配出力要素である。ここでは、第3キャリヤC9は分配出力軸53に連結され、第3サンギヤS9には第3サンギヤS9を第2ドライブシャフト52に連結するための連結部(スプライン)が形成されている。
(6)上記の実施形態では、差動ケースD4と第2キャリヤC32とが一体的に形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動ケースD4と第2キャリヤとC32とが互いに分離可能な構成(例えば、ボルト、スプライン等で互いに連結された構成)であっても良い。
(7)上記の実施形態では、減速装置3が2つの遊星歯車機構(第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32)を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速装置3が、1つ又は3つ以上の遊星歯車機構を有する構成とすることもできる。
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
車両用駆動装置(100)は、第1車輪(501)及び第2車輪(502)の駆動力源となる回転電機(2)と、前記回転電機(2)の回転を減速する減速装置(3)と、前記減速装置(3)を介して伝達される前記回転電機(2)からの駆動力を前記第1車輪(501)と前記第2車輪(502)とに分配する差動歯車装置(4)と、前記回転電機(2)、前記減速装置(3)、及び前記差動歯車装置(4)を収容するケース(1)と、を備え、前記減速装置(3)及び前記差動歯車装置(4)が、前記回転電機(2)と同軸に配置され、前記減速装置(3)は、軸方向(L)における前記回転電機(2)と前記差動歯車装置(4)との間に配置され、前記ケース(1)は、前記回転電機(2)、前記減速装置(3)、及び前記差動歯車装置(4)の径方向外側(R1)を囲む筒状の周壁部(10)を備え、前記軸方向(L)における前記回転電機(2)に対して前記減速装置(3)が配置される側を軸方向第1側(L1)として、前記周壁部(10)の全体が、第1ケース部(11)と、前記第1ケース部(11)に対して前記軸方向第1側(L1)から接合された第2ケース部(12)とによって2つに分割されている。
上記の構成によれば、周壁部(10)の全体が、第1ケース部(11)と第2ケース部(12)との2つに分割されるため、部品同士の接合部を第1ケース部(11)と第2ケース部(12)との接合部(15)の1箇所のみとしつつ、回転電機(2)、減速装置(
3)、及び差動歯車装置(4)の径方向外側(R1)を囲む周壁部(10)を形成することができる。よって、部品同士の接合部が周壁部(10)における複数の軸方向(L)位置のそれぞれに形成される場合に比べて、ケース(1)の径方向(R)における大型化を抑制することが容易となる。
ここで、前記第1ケース部(11)と前記第2ケース部(12)との接合面(16)が、前記回転電機(2)のステータコア(25)よりも前記軸方向第1側(L1)に配置されていると好適である。
上記の構成によれば、第1ケース部(11)と第2ケース部(12)との接合面(16)が、ステータコア(25)よりも軸方向第1側(L1)に配置される。ここで、ケース(1)に収容される装置の中で回転電機(2)は比較的大径の装置とされるため、接合面(16)がステータコア(25)と径方向(R)視で重複する位置に配置される場合には、第1ケース部(11)及び第2ケース部(12)の双方について、回転電機(2)の少なくともステータコア(25)を収容可能な形状に形成する必要がある。これに対して、上記のように接合面(16)がステータコア(25)よりも軸方向第1側(L1)に配置される構成とすることで、第2ケース部(12)については、ステータコア(25)が収容されない分、その形状に関する制約を緩和することができる。そのため、接合面(16)が形成される接合部(15)の構造を、ステータコア(25)との干渉を受けることなく、第1ケース部(11)におけるステータコア(25)を径方向外側(R1)から囲む部分に対して、径方向外側(R1)への突出量が小さく抑えられた構造とすることが容易となる。この結果、ケース(1)の径方向(R)における大型化を抑制することが可能となる。
また、前記第1ケース部(11)と前記第2ケース部(12)とは、ボルト(90)を用いて接合されており、前記周壁部(10)は、前記第1ケース部(11)と前記第2ケース部(12)との接合部(15)に、前記ボルト(90)が締結される雌ねじ(71)が形成された締結部(70)と、前記ボルト(90)が貫通する貫通孔(81)が形成された座部(80)と、を備え、前記締結部(70)が前記第1ケース部(11)に設けられると共に前記座部(80)が前記第2ケース部(12)に設けられていると好適である。
この構成によれば、ボルト(90)の頭部(90a)が軸方向(L)に当接する当接面を有する座部(80)を、第1ケース部(11)と第2ケース部(12)とのうちの第2ケース部(12)に設けることができる。上記のとおり、第2ケース部(12)は、ステータコア(25)が収容されない分形状に関する制約が少ない。よって、座部(80)が第1ケース部(11)に設けられる場合に比べて、接合部(15)の構造を、径方向外側(R1)への突出量が小さく抑えられた構造とすることが容易となる。
また、前記第1ケース部(11)と前記第2ケース部(12)とは、ボルト(90)を用いて接合されており、前記周壁部(10)は、前記第1ケース部(11)と前記第2ケース部(12)との接合部(15)に、前記ボルト(90)が締結される雌ねじ(71)が形成された締結部(70)と、前記ボルト(90)が貫通する貫通孔(81)が形成された座部(80)と、を備え、前記締結部(70)及び前記座部(80)の双方が、前記ステータコア(25)よりも前記軸方向第1側(L1)に配置されていると好適である。
この構成によれば、雌ねじ(71)を適切に形成することができる程度の径方向(R)の厚みを有する締結部(70)と、ボルト(90)の頭部(90a)が軸方向(L)に当接する当接面を有する座部(80)との双方を、ステータコア(25)よりも軸方向第1側(L1)に配置することができる。言い換えると、これらの締結部(70)及び座部(
80)を、周壁部(10)におけるステータコア(25)を径方向外側(R1)から囲む部分を避けて設けることができる。よって、接合部(15)の構造を、径方向外側(R1)への突出量が小さく抑えられた構造とすることが容易となる。
また、前記軸方向(L)における前記軸方向第1側(L1)とは反対側を軸方向第2側(L2)として、前記ケース(1)における前記ステータコア(25)よりも前記軸方向第2側(L2)の部分と、前記ケース(1)における前記減速装置(3)よりも前記軸方向第1側(L1)の部分とのそれぞれに、前記ケース(1)を車体に取り付けるための取付部(17)が設けられていると好適である。
この構成によれば、取付部(17)をケース(1)における比較的小径の部分に設けることが可能となり、取付部(17)が径方向(R)に突出するように形成されている場合であっても、取付部(17)も含めて車両用駆動装置(100)の径方向(R)における大型化を抑制することが可能となっている。
また、前記回転電機(2)のロータ(21)を回転可能に支持するサポート壁(141)を備え、前記サポート壁(141)は、前記周壁部(10)の径方向内側(R2)において前記第1ケース部(11)に対して接合されていると好適である。
この構成によれば、回転電機(2)のロータ(21)を、ケース(1)に対して接合されたサポート壁(141)により精度よく支持することができる。その上で、上記の構成によれば、サポート壁(141)が、周壁部(10)の径方向内側(R2)において第1ケース部(11)に対して接合されるため、周壁部(10)の全体が第1ケース部(11)と第2ケース部(12)との2つに分割される構成を維持しつつサポート壁(141)を設けることができる。すなわち、ケース(1)の径方向(R)における大型化を抑制しつつサポート壁(141)を設けることができる。なお、サポート壁(141)をこのように周壁部(10)の径方向内側(R2)において第1ケース部(11)に対して接合することで、サポート壁(141)を間に挟んで第1ケース部(11)と第2ケース部(12)とを接合する場合に比べて、シール部品の数を減らすことができるという利点もある。
また、前記減速装置(3)の最大径及び前記差動歯車装置(4)の最大径が、前記回転電機(2)の最大径よりも小さいと好適である。
この構成によれば、減速装置(3)や差動歯車装置(4)に対して径方向外側(R1)に、回転電機(2)に対して径方向外側(R1)に比べて径方向(R)に空間の余裕を設けることができる。そして、このように径方向(R)に余裕がある空間を利用して第1ケース部(11)と第2ケース部(12)との接合部(15)を設けることで、ケース(1)の径方向(R)における大型化を抑制することが可能となる。
また、前記第1車輪(501)及び前記第2車輪(502)の一方が車両の左後輪であり、前記第1車輪(501)及び前記第2車輪(502)の他方が前記車両の右後輪であると好適である。
この構成によれば、車両用駆動装置(100)を車両の後輪を駆動する後輪駆動ユニットとして用いることができる。なお、このように車両用駆動装置(100)を後輪駆動ユニットとして用いる場合、荷室や客室の下側(車両のフロア下)の空間、すなわち、鉛直方向の大きさが比較的限られた空間に車両用駆動装置(100)を配置する必要がある。この点に関し、本開示に係る車両用駆動装置(100)は、上述したようにケース(1)の径方向(R)における大型化を抑制することが可能であるため、荷室の容量や客室の容
量を適切に確保しつつ、鉛直方向の大きさが比較的限られた空間に車両用駆動装置(100)を配置することができる。
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。