車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が存在することを指す。また、本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。
以下の説明において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、下記において説明する減速装置3(減速装置3を構成する各遊星歯車機構)及び差動歯車装置4において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置或いは機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源となる回転電機2と、回転電機2の回転を減速する減速装置3と、減速装置3を介して伝達される回転電機2からの駆動力を第1車輪501と第2車輪502とに分配する差動歯車装置4と、を備えている。車両用駆動装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とするハイブリッド自動車や、回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とする電気自動車に搭載される駆動装置である。図1及び図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源として回転電機2のみを備えている。2輪駆動の4輪車の場合には、これによって電気自動車が実現できる。また、4輪駆動の4輪車の場合には、他の2輪を内燃機関の駆動力によって駆動することでハイブリッド車両が実現できる。当然ながら、4輪駆動の4輪車の場合には、本実施形態の車両用駆動装置100を他の2輪にも適用することで、4輪駆動の電気自動車を実現することもできる。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両には、第1車輪501と一体的に回転するように連結される第1ドライブシャフト51と、第2車輪502と一体的に回転するように連結される第2ドライブシャフト52とが設けられる。そして、差動歯車装置4が備える2つの分配出力要素の一方(後述する第1サイドギヤB41)が、第1ドライブシャフト51と一体的に回転するように連結(本実施形態では、分配出力軸53を介して連結)されていると共に、当該2つの分配出力要素の他方(後述する第2サイドギヤB42)が、第2ドライブシャフト52と一体的に回転するように連結されている。よって、減速装置3を介して差動歯車装置4に伝達される回転電機2からの駆動力は、差動歯車装置4によって第1ドライブシャフト51と第2ドライブシャフト52とに分配されることで、第1車輪501と第2車輪502とに分配される。
減速装置3及び差動歯車装置4は、回転電機2と同軸に配置されている。本実施形態では、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51、第2ドライブシャフト52、及び分配出力軸53が、回転電機2のロータ軸27を基準として同軸配置されている。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向は、車両用駆動装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機2のロータ軸27の径方向は、車両用駆動装置100の径方向と等価である。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向を車両用駆動装置100の軸方向Lと称し、回転電機2のロータ軸27の径方向を車両用駆動装置100の径方向Rと称する。また、減速装置3は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。そして、軸方向Lにおける回転電機2に対して減速装置3が配置される側を軸方向第1側L1と称し、軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側
を軸方向第2側L2と称する。また、径方向Rにおいて、ロータ軸27とは反対側(すなわち、外側)を径方向外側R1と称し、ロータ軸27側(すなわち、内側)を径方向内側R2と称する。
車両用駆動装置100は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4を収容するケース1を備えている。本実施形態では、ケース1は、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第1側L1の端部)、第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第2側L2の端部)、及び分配出力軸53を内部に収容している。ケース1は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4の径方向外側R1を囲む筒状の周壁部10を備えている。すなわち、周壁部10によって径方向外側R1を区画された収容空間Sの内部に、軸方向第1側L1から順に、差動歯車装置4、減速装置3、及び回転電機2が配置されている。周壁部10は、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、断面形状が軸方向Lの位置によって異なる筒状)に形成されている。そして、周壁部10の全体が、第1ケース部11と、第1ケース部11に対して軸方向第1側L1から接合された第2ケース部12とによって2つに分割されている。すなわち、周壁部10における第1ケース部11と第2ケース部12との接合部よりも軸方向第2側L2の部分(第1周壁部10a)の全体は、第1ケース部11の少なくとも一部により構成され、周壁部10における当該接合部よりも軸方向第1側L1の部分(第2周壁部10b)の全体は、第2ケース部12の少なくとも一部により構成される。本実施形態では、第1ケース部11と第2ケース部12とは、ボルト90を用いて接合されている。
図1に示すように、本実施形態では、ステータコア25の全体が、収容空間Sのうちの第1ケース部11(第1周壁部10a)によって径方向外側R1を区画される部分(以下、「第1収容空間S1」という。)に配置される。図3に示すように、本実施形態では、ステータコア25に対して軸方向第1側L1に突出するコイルエンド部26も、第1収容空間S1に配置されている。また、図1に示すように、本実施形態では、差動歯車装置4の全体が、収容空間Sのうちの第2ケース部12(第2周壁部10b)によって径方向外側R1を区画される部分(以下、「第2収容空間S2」という。)に配置されている。また、本実施形態では、減速装置3における軸方向第2側L2の部分が第1収容空間S1に配置され、減速装置3における軸方向第1側L1の部分が第2収容空間S2に配置されている。
本実施形態では、ケース1は、第1ケース部11及び第2ケース部12に加えて、第1ケース部11に対して軸方向第2側L2から接合される第3ケース部13を備えている。第1ケース部11は、軸方向第2側L2に底部を有する有底筒状に形成されており、当該底部を覆うように第3ケース部13が配置されている。そして、第1ケース部11(上記底部)を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、分配出力軸53が挿入され、第3ケース部13を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第1ドライブシャフト51が挿入された状態で、分配出力軸53と第1ドライブシャフト51とが互いに連結されている。また、第2ケース部12を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第2ドライブシャフト52が挿入されている。
本実施形態では、ケース1は、支持部材14を更に有している。支持部材14は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されており、ケース1の内部(収容空間S)に配置される部材を支持する。後述するように、支持部材14は、減速装置3が備える非回転要素(本実施形態では、後述する第1リングギヤR31及び第2リングギヤR32)をケース1(周壁部10)に対して回転不能に支持するために用いられている。また、支持部材14は、回転電機2のロータ軸27を回転可能に支持するためや、第2キャリヤC32或いは差動ケースD4を回転可能に支持するために用いられている。本例では、支持部材14は、第1リングギヤR31及びロータ軸27を支持する第1支持材1
41と、第2リングギヤR32及び第2キャリヤC32(或いは差動ケースD4)を支持する第2支持材142とを、各別に備えている。そして、第1支持材141及び第2支持材142の一方(本例では、第1支持材141)が、ケース1(本例では、第1ケース部11)に一体的に固定されていると共に、第1支持材141と第2支持材142とが互いに一体的に固定されている。
回転電機2は、ロータコア22の内部に永久磁石23を備えたロータ21と、ステータコア25を備えたステータ24と、ロータコア22と一体的に回転するように連結されたロータ軸27とを備えた永久磁石型回転電機である。ステータコア25にはコイルが巻装されており、ステータコア25から軸方向Lに突出するコイルの部分であるコイルエンド部26が、ステータコア25に対して軸方向Lの両側に形成されている。ロータコア22の径方向内側R2で、ロータ軸27がロータコア22に連結され、ロータ21とロータ軸27とが一体的に回転する。回転電機2は、少なくともステータコア25の全体が周壁部10によって径方向外側R1から囲まれるように配置される。本実施形態では、回転電機2は、ステータコア25に対して軸方向第2側L2に突出するコイルエンド部26も周壁部10によって径方向外側R1から囲まれるように配置されている。なお、本実施形態では、回転電機2は永久磁石型回転電機であるが、例えば誘導型回転電機など他の方式の回転電機であっても良い。また、本実施形態では、回転電機2はインナロータ型の回転電機であるが、回転電機2がアウタロータ型の回転電機である構成としてもよい。
ロータ軸27は、円筒状に形成されている。ここで、「円筒状」とは、多少の異形部分を有していたとしてもその全体としての概略形状が円筒であることを意味する(本明細書において、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同趣旨である)。ロータ軸27における軸方向Lに沿ってロータコア22よりも軸方向第2側L2に突出した部分は、第1ロータ軸受61を介して、ケース1の第1ケース部11に回転可能に支持されている。ロータ軸27における軸方向Lに沿ってロータコア22よりも軸方向第1側L1に突出した部分は、第2ロータ軸受62を介して、支持部材14(本例では、第1支持材141)に回転可能に支持されている。
減速装置3は、回転電機2の回転を減速して差動歯車装置4に駆動力を伝達する。本実施形態では、減速装置3は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32とを有している。軸方向Lに沿って第1遊星歯車機構31が第2遊星歯車機構32よりも回転電機2の側に配置されている。また、第1遊星歯車機構31は、動力伝達経路の順で、第2遊星歯車機構32よりも回転電機2の側に配置されている。第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32はいずれも減速機構として構成され、第1遊星歯車機構31によって減速された回転電機2の回転が、第2遊星歯車機構32によって更に減速されて、差動歯車装置4に伝達される。
第1遊星歯車機構31は、回転電機2に駆動連結される回転要素(入力要素)と、第2遊星歯車機構32(第2遊星歯車機構32の入力要素)に駆動連結される回転要素(出力要素)とを有しており、入力要素に伝達される回転電機2の回転を減速して出力要素から第2遊星歯車機構32に伝達する。本実施形態では、第1遊星歯車機構31は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第1サンギヤS31と、第1リングギヤR31と、第1キャリヤC31とを有している。第1キャリヤC31は、第1ピニオンギヤP31を回転可能に支持している。第1ピニオンギヤP31は、第1サンギヤS31及び第1リングギヤR31のそれぞれと噛み合うように配置されている。第1サンギヤS31は、第1遊星歯車機構31の入力要素であり、回転電機2のロータ軸27と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤR31は、ケース1に対して回転不能に支持される非回転要素であり、支持部材14の第1支持材141に、周方向へ回転不能に支持されている。第1キャリヤC31は、第1遊星歯車機構31の出力要素である。
第2遊星歯車機構32は、軸方向Lにおいて、第1遊星歯車機構31に隣接し、第1遊星歯車機構31に対して回転電機2側とは反対側に配置されている。つまり、軸方向Lにおいて、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1へ向かって、回転電機2、第1遊星歯車機構31、及び第2遊星歯車機構32が記載の順に並んで配置されている。第2遊星歯車機構32は、第1遊星歯車機構31(第1遊星歯車機構31の出力要素)に駆動連結される回転要素(入力要素)と、差動歯車装置4に駆動連結される回転要素(出力要素)とを有しており、入力要素に伝達される回転(第1遊星歯車機構31により減速された回転電機2の回転)を減速して出力要素から差動歯車装置4に伝達する。本実施形態では、第2遊星歯車機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第2サンギヤS32と、第2リングギヤR32と、第2キャリヤC32とを有している。第2キャリヤC32は、第2ピニオンギヤP32を回転可能に支持している。第2ピニオンギヤP32は、第2サンギヤS32及び第2リングギヤR32のそれぞれと噛み合うように配置されている。第2サンギヤS32は、第2遊星歯車機構32の入力要素であり、第1キャリヤC31と一体的に回転するように構成される。一体的に回転する第1キャリヤC31及び第2サンギヤS32は、ブッシュ等の滑り軸受を介して分配出力軸53に対して回転可能に支持されている。第2リングギヤR32は、ケース1に対して回転不能に支持される非回転要素であり、支持部材14の第2支持材142に、周方向へ回転不能に支持されている。第2キャリヤC32は、第2遊星歯車機構32の出力要素である。本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第2側L2の端部は、軸方向Lにおける第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第1差動ケース軸受66を介して、支持部材14(本例では、第2支持材142)に回転可能に支持されている。
第1遊星歯車機構31のいずれか1つの回転要素である第1回転要素E1と、第2遊星歯車機構32のいずれか1つの回転要素である第2回転要素E2とが連結されることで、第1遊星歯車機構31で減速された後の回転電機2の回転が、第2遊星歯車機構32に伝達される。第2回転要素E2は、第2遊星歯車機構32のいずれか1つの回転要素であって第1回転要素E1に連結される回転要素である。上記のように、本実施形態では、第2サンギヤS32が、第1キャリヤC31と一体的に回転するように構成される。すなわち、本実施形態では、第1キャリヤC31が第1回転要素E1であり、第2サンギヤS32が第2回転要素E2である。そして、本実施形態では、第1回転要素E1と第2回転要素E2とが一体的に回転するように連結されている。図3に示すように、第2サンギヤS32は、第1キャリヤC31とは別部品で構成され、第1キャリヤC31とスプライン係合によって連結されている。すなわち、第1回転要素E1と第2回転要素E2とは、別部材(別部品)で構成されている。そして、本実施形態では、第1回転要素E1と第2回転要素E2とがスプライン係合により連結されている。
本実施形態では、第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32は、斜歯歯車を用いて構成されている。そして、図1及び図2に示すように、斜歯歯車を用いて構成された第1遊星歯車機構31や第2遊星歯車機構32が軸方向Lへ移動しようとする荷重を受け止めるために、第1スラスト軸受63、第2スラスト軸受64、及び第3スラスト軸受65が設けられている。具体的には、第1遊星歯車機構31に対して軸方向第2側L2に第1スラスト軸受63が設けられ、第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との軸方向Lの間に第2スラスト軸受64が設けられ、第2遊星歯車機構32に対して軸方向第1側L1に第3スラスト軸受65が設けられている。より詳しくは、第1スラスト軸受63は、第1サンギヤS31に対して軸方向第2側L2に設けられている。第2スラスト軸受64は、第1サンギヤS31に対して軸方向第1側L1であって第1キャリヤC31と第2サンギヤS32との連結部分に対して軸方向第2側L2に設けられている。第3スラスト軸受65は、第2サンギヤS32に対して軸方向第1側L1に設けられている。
差動歯車装置4は、減速装置3(本実施形態では、第2キャリヤC32)に駆動連結される回転要素(入力要素)と、第1車輪501及び第2車輪502(第1ドライブシャフト51及び第2ドライブシャフト52)に駆動連結される2つの回転要素(分配出力要素)とを有しており、減速装置3から入力要素に伝達される回転を第1車輪501と第2車輪502とに(第1ドライブシャフト51と第2ドライブシャフト52とに)分配して伝達する。差動歯車装置4(差動歯車装置4が有する歯車機構5)は、傘歯車式の差動歯車機構5aを有している。具体的には、差動歯車装置4は、歯車機構5(ここでは、差動歯車機構5a)を収容する差動ケースD4を有している。差動ケースD4は差動歯車装置4の入力要素であり、差動歯車装置4は、減速装置3から差動ケースD4に入力される駆動力を第1車輪501と第2車輪502とに分配するように構成されている。差動歯車装置4は、差動ケースD4に保持されたピニオンシャフトF4を有しており、差動ケースD4の内部には、ピニオンシャフトF4に対して回転可能に支持された差動ピニオンギヤP(本例では、第1差動ピニオンギヤP41及び第2差動ピニオンギヤP42の2つの差動ピニオンギヤP)と、分配出力要素としての第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とが収容されている。第1差動ピニオンギヤP41、第2差動ピニオンギヤP42、第1サイドギヤB41、及び第2サイドギヤB42は、いずれも傘歯車であり、差動歯車機構5aを構成している。
本実施形態では、差動ケースD4が、第2遊星歯車機構32のいずれか1つの回転要素と一体的に形成されている。ここでは、差動ケースD4は、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32と一体的に形成されており、第2キャリヤC32が差動ケースD4の一部として構成されている。差動ケースD4と第2キャリヤC32とは、例えば、鋳造(或いは、鋳造品の削り出し)による一体成形技術を用いて一体的に形成され、或いは、鍛造による一体成形技術を用いて一体的に形成される。そのため、本実施形態では、第2キャリヤC32の軸方向第2側L2の端部が、差動ケースD4の第1被支持部D4aとして機能する。第1被支持部D4aは、軸方向Lにおける第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間に配置されている。第1被支持部D4aは、支持部材14を介してケース1に固定された第1差動ケース軸受66によって直接支持されている。前述のように、支持部材14の第1支持材141がケース1の第1ケース部11に一体的に固定され、第1支持材141と第2支持材142とが互いに一体的に固定されている。そのため、第1被支持部D4aは、第1差動ケース軸受66を介してケース1の第1ケース部11に支持されている。
また、差動ケースD4は、第1被支持部D4aよりも軸方向第1側L1に配置される第2被支持部D4bを有している。ここでは、第2被支持部D4bは、軸方向Lに沿って第2サイドギヤB42よりも軸方向第1側L1に突出するように形成されている。第2被支持部D4bは、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42と同軸の円筒状に形成されている。第2被支持部D4bは、ケース1の第2ケース部12に固定された第2差動ケース軸受67によって直接支持されている。つまり、第2被支持部D4bは、第2差動ケース軸受67を介して回転可能にケース1の第2ケース部12に支持されている。
ピニオンシャフトF4は、差動ピニオンギヤP(第1差動ピニオンギヤP41及び第2差動ピニオンギヤP42)に挿通され、それらを回転可能に支持している。ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4に径方向Rに沿って形成された貫通孔に挿入されており、係止部材43により差動ケースD4に係止されている。第1差動ピニオンギヤP41と第2差動ピニオンギヤP42とは、径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態でピニオンシャフトF4に取り付けられ、差動ケースD4の内部空間においてピニオンシャフトF4を中心として回転するように構成されている。
第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、差動歯車装置4における分配後の
回転要素である。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、軸方向Lに沿って互いに間隔を空けて、ピニオンシャフトF4を挟んで対向するように設けられ、差動ケースD4の内部空間においてそれぞれの周方向に回転するように構成されている。すなわち、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、差動ケースD4の内部において軸方向Lの両側に分かれて配置され、差動ケースD4に入力される駆動力を第1車輪501と第2車輪502とに分配する。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、差動ピニオンギヤP(第1差動ピニオンギヤP41及び第2差動ピニオンギヤP42)に噛み合っている。第1サイドギヤB41の内周面には、第1サイドギヤB41を分配出力軸53に連結するためのスプラインが形成されている。第2サイドギヤB42の内周面には、第2サイドギヤB42を第2ドライブシャフト52に連結するためのスプラインが形成されている。
分配出力軸53は、差動歯車装置4によって分配された回転電機2からの駆動力を第1ドライブシャフト51に伝達する部材である。分配出力軸53は、回転電機2のロータ軸27の径方向内側R2を軸方向Lに貫通している。分配出力軸53における軸方向第1側L1の端部の外周面には、分配出力軸53を差動歯車装置4の第1サイドギヤB41に連結するためのスプラインが形成されている。当該スプラインと第1サイドギヤB41の内周面のスプラインとが係合することにより、分配出力軸53と第1サイドギヤB41とが一体的に回転するように連結されている。分配出力軸53の軸方向第2側L2の端部には、分配出力軸53を第1ドライブシャフト51に連結するための連結部53aが形成されている。このように、分配出力軸53は、回転電機2及び減速装置3を軸方向Lに貫通するように配置されて、差動歯車装置4(第1サイドギヤB41)と第1ドライブシャフト51とを連結している。
連結部53aは、第1ケース部11の内部空間における回転電機2よりも軸方向第2側L2の部分から第3ケース部13の内部空間にかけて延在している。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部53aは、分配出力軸53における連結部53a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部53aは、第1出力軸受68を介して回転可能にケース1の第3ケース部13に支持されていると共に、第2出力軸受69を介して回転可能に第1ケース部11(軸方向第2側L2の底部)に支持されている。連結部53aにおける軸方向第1側L1の部分の内周面には、分配出力軸53(連結部53a)を第1ドライブシャフト51に連結するためのスプラインが形成されている。
第1ドライブシャフト51は、第1車輪501に駆動連結され、第2ドライブシャフト52は、第2車輪502に駆動連結される。なお、本実施形態では、分配出力軸53の軸方向第2側L2の端部に連結部53aが設けられ、第1ドライブシャフト51と分配出力軸53の連結部53aとがスプラインによって連結されている。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、分配出力軸53の軸方向第2側L2の端部に、連結部53aの代わりにフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフト51とがボルトによって締結された構成であっても良い。
ところで、減速装置3の減速比(出力側回転部材の回転速度に対する入力側回転部材の回転速度の比)は、車両用駆動装置100が搭載される車両の種類や仕様に応じて変更可能であることが望ましい。本実施形態の車両用駆動装置100では、以下に述べるような構成を備えることで、第2遊星歯車機構32のギヤ比に関する設計の自由度を確保しやすい車両用駆動装置100を実現可能としている。
図1及び図3に示すように、第2遊星歯車機構32は、径方向R視で差動歯車装置4が有する歯車機構5(ここでは、差動歯車機構5a)の噛み合い部Mと重複しないように、
歯車機構5(差動歯車機構5a)に対して軸方向Lにおける回転電機2の側(すなわち、軸方向第2側L2)に配置されている。ここでは、噛み合い部Mには、第1差動ピニオンギヤP41と第1サイドギヤB41との噛み合い部(図3参照)、第2差動ピニオンギヤP42と第1サイドギヤB41との噛み合い部(図3参照)、第1差動ピニオンギヤP41と第2サイドギヤB42との噛み合い部、及び第2差動ピニオンギヤP42と第2サイドギヤB42の噛み合い部が含まれる。第2遊星歯車機構32は、歯車機構5(差動歯車機構5a)のいずれの噛み合い部Mとも径方向R視で重複しないように配置される。このような第2遊星歯車機構32の配置構成を採用することで、第2遊星歯車機構32が径方向R視で噛み合い部Mと重複するように配置される場合に比べて第2サンギヤS32の径を小さくしやすくなる等、第2遊星歯車機構32のギヤ比についての差動歯車装置4による制約を緩和することが可能となっている。
なお、“第2遊星歯車機構32が径方向R視で噛み合い部Mと重複しない”とは、少なくとも第2遊星歯車機構32における第2サンギヤS32と第2ピニオンギヤP32との噛み合い部が径方向R視で噛み合い部Mと重複しないことを意味する。本実施形態では、第2遊星歯車機構32における第2サンギヤS32と第2ピニオンギヤP32との噛み合い部に加えて、第2遊星歯車機構32における第2ピニオンギヤP32と第2リングギヤR32との噛み合い部も、径方向R視で噛み合い部Mと重複しないように配置されている。すなわち、本実施形態では、第2遊星歯車機構32における全ての噛み合い部が、径方向R視で噛み合い部Mと重複しないように配置されている。
上述したように、第1回転要素E1(本実施形態では、第1キャリヤC31)と第2回転要素E2(本実施形態では、第2サンギヤS32)とは、別部材で構成されている。このような構成とは異なり第1回転要素E1と第2回転要素E2とが1つの部材で構成される場合には、第2遊星歯車機構32の設計変更が第1遊星歯車機構31の構成に与える影響が大きくなりやすいが、このように第1回転要素E1と第2回転要素E2とを別部材で構成することで、第1遊星歯車機構31の構成に与える影響を少なく抑えつつ、第2サンギヤS32の径の変更等の第2遊星歯車機構32の設計変更を行うことが容易となっている。この点からも、第2遊星歯車機構32のギヤ比に関する設計の自由度を確保しやすくなっている。
本実施形態では、第1回転要素E1と第2回転要素E2とが、互いに相対回転不能であって互いに軸方向Lに相対移動可能な連結形態で、互いに一体的に回転するように連結されている。具体的には、図3に示すように、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の一方が、第1筒状部81を有し、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の他方が、第2筒状部82を有している。第1筒状部81及び第2筒状部82はいずれも、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、回転電機2と同軸に配置されている。第1筒状部81の外周面には第1係合部81aが設けられ、第2筒状部82の内周面には第2係合部82aが設けられている。そして、第1筒状部81と第2筒状部82との周方向の相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第1係合部81aと第2係合部82aとが係合して、第1回転要素E1と第2回転要素E2とが連結されている。本実施形態では、第1係合部81aは、軸方向Lに延びるように形成されると共に周方向に沿って並ぶ複数の外歯(外周スプライン歯)を備え、第2係合部82aは、軸方向Lに延びるように形成されると共に周方向に沿って並ぶ複数の内歯(内周スプライン歯)を備えており、第1係合部81aと第2係合部82aとが(第1回転要素E1と第2回転要素E2とが)スプライン係合により連結されている。このように、本実施形態では、第1回転要素E1と第2回転要素E2とを一体的に回転するように連結するための連結構造が、軸方向Lに分離可能な連結構造であり、この結果、第1回転要素E1と第2回転要素E2とを連結する工程の簡素化等、第1遊星歯車機構31や第2遊星歯車機構32の組み付け工程の簡素化を図ることが可能となっている。
図3に示すように、本実施形態では、第1回転要素E1が第1筒状部81を有し、第2回転要素E2が第2筒状部82を有している。具体的には、第1回転要素E1である第1キャリヤC31は、軸方向Lに沿って第2遊星歯車機構32側(軸方向第1側L1)へ延びる延出部80を備えている。第1キャリヤC31は、第1ピニオンギヤP31に対して軸方向第1側L1に配置されて第1ピニオンギヤP31を回転可能に支持する円環板状部を備えており、延出部80は、当該円環板状部における径方向内側R2の部分から軸方向第1側L1に延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。そして、延出部80に(具体的には、延出部80における軸方向第1側L1の部分に)、第1筒状部81が形成されている。また、第2回転要素E2である第2サンギヤS32は、歯部71を有すると共に歯部71と径方向R視で重複する本体部70を備えている。本体部70は円筒状に形成され、本体部70の内周面は、延出部80(具体的には、延出部80における第1筒状部81が形成された部分、以下本段落において同様。)の外周面よりも大径に形成されている。歯部71は、本体部70の外周面に形成されている。本体部70は、延出部80よりも径方向外側R1であって、径方向R視で延出部80と重複するように配置されている。そして、本体部70に(具体的には、本体部70における延出部80に対して径方向Rに対向する部分に)、第2筒状部82が形成されている。
第1キャリヤC31と第2サンギヤS32とが上記のように連結された構成とすることで、第1係合部81aと第2係合部82aとの係合部を、第2サンギヤS32の歯幅(歯部71の軸方向Lの長さ)に応じた軸方向Lの長さを有する本体部70に対して径方向内側R2であって、径方向R視で本体部70と重複する位置に設けることが可能となっている。これにより、減速装置3の軸方向Lの長さの拡大を抑制しつつ、第1係合部81aと第2係合部82aとの係合部の軸方向Lの長さを適切に確保することが可能となっている。
本実施形態では、図3に示すように、第2サンギヤS32の径を、第1サンギヤS31の径よりも小さくしている。これにより、減速装置3の軸方向Lにおける小型化、延いては車両用駆動装置100の全体の軸方向Lにおける小型化を図ることが可能となっている。なお、ギヤ同士の径の比較は、各ギヤの基準ピッチ円同士の比較とすることができる。補足説明すると、例えば、同一径のリングギヤを非回転要素(固定要素)とし、サンギヤを入力要素とし、キャリヤを出力要素とする遊星歯車機構の場合、サンギヤの径が小さくなるに従って減速比が大きくなる。従って、各ギヤの構成(径、歯数等)が多少異なっていたとしても、サンギヤの径が小さい方が減速比を大きくしやすい。本実施形態では、上記のように第2サンギヤS32の径が第1サンギヤS31の径よりも小さいため、第1遊星歯車機構31に比べて第2遊星歯車機構32の減速比を大きくしやすく、その分、減速装置3の全体の減速比を所望の値とするために必要な第1遊星歯車機構31の減速比を小さく抑えることが可能となっている。そして、動力伝達経路の順で第1遊星歯車機構31は第2遊星歯車機構32よりも回転電機2の側に配置されるため、第1遊星歯車機構31の減速比が小さく抑えられる分、第1遊星歯車機構31から第2遊星歯車機構32への入力トルクを低減することができる。これにより、第2遊星歯車機構32の機械的強度を適切に確保するために必要な歯幅を短く抑えて、第2遊星歯車機構32の軸方向Lの長さを短く抑えることが可能となっており、この結果、減速装置3の軸方向Lにおける小型化、延いては車両用駆動装置100の全体の軸方向Lにおける小型化を図ることが可能となっている。
なお、本実施形態では、第2リングギヤR32の径は、第1リングギヤR31の径と実質的に同一(同一或いは同程度)とされている。よって、本実施形態では、第2遊星歯車機構32の減速比が第1遊星歯車機構31の減速比よりも大きい構成を、第2サンギヤS32の径を第1サンギヤS31の径よりも小さくすることで実現している。図3に示すよ
うに、本実施形態では、第2サンギヤS32の径は、差動歯車装置4の外径(差動ケースD4の外径)よりも小さい。本実施形態では、第2サンギヤS32の径は、差動ピニオンギヤPの径(外径)よりも小さく、更には、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42の径(外径)よりも小さい。
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態では、第1回転要素E1(上記実施形態の例では、第1キャリヤC31)が第1筒状部81を有し、第2回転要素E2(上記実施形態の例では、第2サンギヤS32)が第2筒状部82を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1回転要素E1が第2筒状部82を有し、第2回転要素E2が第1筒状部81を有する構成とすることもできる。
(2)上記の実施形態では、第1回転要素E1(上記実施形態の例では、第1キャリヤC31)と第2回転要素E2(上記実施形態の例では、第2サンギヤS32)とが、スプライン係合によって連結される構成を例として説明した。しかし、第1回転要素E1と第2回転要素E2とを連結(ここでは、一体的に回転するように連結)するための連結形態は、スプライン係合に限られず、第1回転要素E1と第2回転要素E2とが、スプライン係合以外の分離可能な連結形態(例えば、キー係合等)で連結される構成とすることもできる。また、第1回転要素E1と第2回転要素E2とが、溶接等の分離不能な連結形態で連結される構成(すなわち、互いに別部材で構成される第1回転要素E1と第2回転要素E2とが、互いに連結されることで一体的に形成される構成)とすることもできる。
(3)上記の実施形態では、差動歯車装置4(差動歯車装置4が有する歯車機構5)が、傘歯車式の差動歯車機構5aを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車装置4(歯車機構5)が、遊星歯車機構5b(遊星歯車式の差動歯車機構)を有する構成とすることもできる。このような構成の一例を図4に示す。図4に示す例では、遊星歯車機構5bは、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、第3サンギヤS9、第3キャリヤC9、及び第3リングギヤR9を有している。第3キャリヤC9は、第3ピニオンギヤP9及び第4ピニオンギヤP10を回転可能に支持している。第3ピニオンギヤP9は、第3サンギヤS9及び第4ピニオンギヤP10のそれぞれと噛み合うように配置され、第4ピニオンギヤP10は、第3リングギヤR9及び第3ピニオンギヤP9のそれぞれと噛み合うように配置されている。第3リングギヤR9は、差動歯車装置4(遊星歯車機構5b)の入力要素であり、第2キャリヤC32と一体的に回転するように連結されている。また、第3サンギヤS9及び第3キャリヤC9が差動歯車装置4(遊星歯車機構5b)の分配出力要素である。ここでは、第3キャリヤC9は分配出力軸53に連結され、第3サンギヤS9には第3サンギヤS9を第2ドライブシャフト52に連結するための連結部(スプライン)が形成されている。図4に示す例では、歯車機構5(遊星歯車機構5b)の噛み合い部Mには、第3サンギヤS9と第3ピニオンギヤP9との噛み合い部、第3ピニオンギヤP9と第4ピニオンギヤP10との噛み合い部、及び第4ピニオンギヤP10と第3リングギヤR9との噛み合い部が含まれ、第2遊星歯車機構32は、歯車機構5(遊星歯車機構5b)のいずれの噛み合い部Mとも径方向R視で重複しないように配置されている。
(4)上記の実施形態では、第2サンギヤS32の径が第1サンギヤS31の径よりも小さい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2サンギヤS32の径が第1サンギヤS31の径と実質的に同一(同一或いは同程度)である構成や、第2サンギヤS32の径が第1サンギヤS31の径よりも大きい構成とすることもできる。このような場合であっても、第2リングギヤR32の径が第1リングギヤR31
の径よりも大きい構成とすることで、上記実施形態と同様に、第2遊星歯車機構32の減速比が第1遊星歯車機構31の減速比よりも大きい構成を実現することができる。なお、上記実施形態とは異なり、第2遊星歯車機構32の減速比が第1遊星歯車機構31の減速比と同一である構成や、第2遊星歯車機構32の減速比が第1遊星歯車機構31の減速比よりも小さい構成とすることも可能である。
(5)上記の実施形態では、第1キャリヤC31が第1回転要素E1であり、第2サンギヤS32が第2回転要素E2である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1キャリヤC31以外の第1遊星歯車機構31の回転要素が第1回転要素E1であると共に第2サンギヤS32が第2回転要素E2である構成、第1キャリヤC31が第1回転要素E1であると共に第2サンギヤS32以外の第2遊星歯車機構32の回転要素が第2回転要素E2である構成、或いは、第1キャリヤC31以外の第1遊星歯車機構31の回転要素が第1回転要素E1であると共に第2サンギヤS32以外の第2遊星歯車機構32の回転要素が第2回転要素E2である構成とすることもできる。
(6)上記の実施形態では、差動ケースD4が第2キャリヤC32と一体的に形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動ケースD4が第2キャリヤC32以外の第2遊星歯車機構32の回転要素と一体的に形成される構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、差動ケースD4が、第2遊星歯車機構32のいずれか1つの回転要素(上記実施形態の例では、第2キャリヤC32)と一体的に形成される構成を例として説明したが、差動ケースD4と、第2遊星歯車機構32における差動ケースD4に駆動連結される回転要素とが互いに分離可能な構成(例えば、ボルト、スプライン等で互いに連結された構成)であっても良い。
(7)上記の実施形態では、減速装置3が2つの遊星歯車機構(第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32)を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速装置3が、動力伝達経路における回転電機2と第1遊星歯車機構31との間に他の遊星歯車機構を備える構成(すなわち、減速装置3が3つ以上の遊星歯車機構を有する構成)とすることもできる。
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
車両用駆動装置(100)は、第1車輪(501)及び第2車輪(502)の駆動力源となる回転電機(2)と、前記回転電機(2)の回転を減速する減速装置(3)と、前記減速装置(3)を介して伝達される前記回転電機(2)からの駆動力を前記第1車輪(501)と前記第2車輪(502)とに分配する差動歯車装置(4)と、を備え、前記減速装置(3)及び前記差動歯車装置(4)は、前記回転電機(2)と同軸に配置され、前記減速装置(3)は、軸方向(L)における前記回転電機(2)と前記差動歯車装置(4)との間に配置され、前記減速装置(3)は、第1遊星歯車機構(31)と第2遊星歯車機構(32)とを有し、前記軸方向(L)に沿って前記第1遊星歯車機構(31)が前記第2遊星歯車機構(32)よりも前記回転電機(2)の側に配置され、前記第2遊星歯車機構(32)が、径方向(R)視で前記差動歯車装置(4)が有する歯車機構(5)の噛み合い部(M)と重複しないように、前記歯車機構(5)に対して前記軸方向(L)におけ
る前記回転電機(2)の側に配置され、前記第1遊星歯車機構(31)のいずれか1つの回転要素である第1回転要素(E1)と、前記第2遊星歯車機構(32)のいずれか1つの回転要素であって前記第1回転要素(E1)に連結される第2回転要素(E2)とが、別部材で構成されている。
上記の構成によれば、第2遊星歯車機構(32)が、径方向(R)視で差動歯車装置(4)が有する歯車機構(5)の噛み合い部(M)と重複しないように、歯車機構(5)に対して軸方向(L)における回転電機(2)の側に配置される。よって、第2遊星歯車機構(32)が径方向(R)視で歯車機構(5)の噛み合い部(M)と重複するように配置される場合に比べて第2遊星歯車機構(32)の第2サンギヤ(S32)の径を小さくしやすくなる等、第2遊星歯車機構(32)のギヤ比についての差動歯車装置(4)による制約を緩和することができる。
その上で、上記の構成によれば、第1遊星歯車機構(31)の第1回転要素(E1)と第2遊星歯車機構(32)の第2回転要素(E2)とが、別部材で構成される。よって、これらの第1回転要素(E1)及び第2回転要素(E2)が1つの部材で構成される場合に比べて、第1遊星歯車機構(31)の構成に与える影響を少なく抑えつつ、第2サンギヤ(S32)の径の変更等の第2遊星歯車機構(32)の設計変更を行うことが容易となり、その分、第2遊星歯車機構(32)のギヤ比に関する設計の自由度を確保しやすくなる。
以上のように、上記の構成によれば、第2遊星歯車機構(32)のギヤ比に関する設計の自由度を確保しやすい車両用駆動装置(100)を実現することが可能となる。
ここで、前記第1回転要素(E1)及び前記第2回転要素(E2)の一方が、第1筒状部(81)を有し、前記第1回転要素(E1)及び前記第2回転要素(E2)の他方が、第2筒状部(82)を有し、前記第1筒状部(81)の外周面に第1係合部(81a)が設けられ、前記第2筒状部(82)の内周面に第2係合部(82a)が設けられ、前記第1筒状部(81)と前記第2筒状部(82)との周方向の相対回転が規制され、前記軸方向(L)の相対移動が許容されるように、前記第1係合部(81a)と前記第2係合部(82a)とが係合して、前記第1回転要素(E1)と前記第2回転要素(E2)とが連結されていると好適である。
この構成によれば、第1回転要素(E1)と第2回転要素(E2)とを一体的に回転するように連結するための連結構造を、軸方向(L)に分離可能な連結構造とすることができる。よって、第1回転要素(E1)と第2回転要素(E2)とが溶接等で分離不能に連結される場合に比べて、第1回転要素(E1)と第2回転要素(E2)とを連結する工程の簡素化等、第1遊星歯車機構(31)や第2遊星歯車機構(32)の組み付け工程の簡素化を図ることが可能となる。
上記のように、前記第1回転要素(E1)及び前記第2回転要素(E2)の一方が前記第1筒状部(81)を有し、前記第1回転要素(E1)及び前記第2回転要素(E2)の他方が前記第2筒状部(82)を有する構成において、前記第1遊星歯車機構(31)は、第1サンギヤ(S31)と第1キャリヤ(C31)と第1リングギヤ(R31)とを有し、前記第2遊星歯車機構(32)は、第2サンギヤ(S32)と第2キャリヤ(C32)と第2リングギヤ(R32)とを有し、前記第1キャリヤ(C31)が、前記第1回転要素(E1)であり、前記第2サンギヤ(S32)が、前記第2回転要素(E2)であり、前記第1キャリヤ(C31)は、前記軸方向(L)に沿って前記第2遊星歯車機構(32)側へ延びる延出部(80)を備え、前記延出部(80)に前記第1筒状部(81)が形成され、前記第2サンギヤ(S32)は、歯部(71)を有すると共に前記歯部(71)と前記径方向(R)視で重複する本体部(70)を備え、前記本体部(70)に前記第2筒状部(82)が形成されていると好適である。
この構成によれば、第1係合部(81a)と第2係合部(82a)との係合部を、第2サンギヤ(S32)の歯幅に応じた軸方向(L)長さを有する本体部(70)に対して径方向内側(R2)であって、径方向(R)視で本体部(70)と重複する位置に設けることができる。よって、減速装置(3)の軸方向(L)の長さの拡大を抑制しつつ、第1係合部(81a)と第2係合部(82a)との係合部の軸方向(L)長さを適切に確保して、第1回転要素(E1)と第2回転要素(E2)とを適切に連結することができる。
上記の各構成の車両用駆動装置(100)において、前記第1遊星歯車機構(31)は、第1サンギヤ(S31)と第1キャリヤ(C31)と第1リングギヤ(R31)とを有し、前記第2遊星歯車機構(32)は、第2サンギヤ(S32)と第2キャリヤ(C32)と第2リングギヤ(R32)とを有し、前記第2サンギヤ(S32)の径が、前記第1サンギヤ(S31)の径よりも小さいと好適である。
例えば、同一径のリングギヤを非回転要素(固定要素)とし、サンギヤを入力要素とし、キャリヤを出力要素とする遊星歯車機構の場合、サンギヤの径が小さくなるに従って減速比が大きくなる。従って、各ギヤの構成(径、歯数等)が多少異なっていたとしても、サンギヤの径が小さい方が減速比を大きくしやすい。上記の構成によれば、第2サンギヤ(S32)の径が第1サンギヤ(S31)の径よりも小さいため、第1遊星歯車機構(31)に比べて第2遊星歯車機構(32)の減速比を大きくしやすく、その分、減速装置(3)の全体の減速比を所望の値とするために必要な第1遊星歯車機構(31)の減速比を小さく抑えることができる。よって、動力伝達経路の順で第1遊星歯車機構(31)が第2遊星歯車機構(32)よりも回転電機(2)の側に配置される構成とした場合に、第1遊星歯車機構(31)の減速比が小さく抑えられる分、第1遊星歯車機構(31)から第2遊星歯車機構(32)への入力トルクを低減することができる。これにより、第2遊星歯車機構(32)の機械的強度を適切に確保するために必要な歯幅を短く抑えて、第2遊星歯車機構(32)の軸方向(L)の長さを短く抑えることが可能となる。この結果、減速装置(3)の軸方向(L)における小型化、延いては車両用駆動装置(100)の全体の軸方向(L)における小型化を図ることが可能となる。
また、前記歯車機構(5)は、傘歯車式の差動歯車機構(5a)を有し、前記差動歯車装置(4)は、前記差動歯車機構(5a)を収容する差動ケース(D4)を有し、前記減速装置(3)から前記差動ケース(D4)に入力される駆動力を前記第1車輪(501)と前記第2車輪(502)とに分配するように構成され、前記差動ケース(D4)が、前記第2遊星歯車機構(32)のいずれか1つの回転要素と一体的に形成されていると好適である。
この構成によれば、差動ケース(D4)が第2遊星歯車機構(32)の回転要素とは一体的に形成されない場合に比べて、差動ケース(D4)と第2遊星歯車機構(32)との連結構造を、軸方向(L)の占有スペースが小さく抑えられた構造とすることが容易となる。この結果、装置全体の軸方向(L)における小型化を図ることができる。
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。