JP7004980B2 - パルスパターン生成装置 - Google Patents

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本発明は、パルスパターン生成装置に関する。
モータを駆動するためのインバータは、複数のスイッチング素子を備える。このスイッチング素子が、スイッチング動作されることで、直流電力が交流電力に変換される。
特許文献1には、予め定められたパルスパターンでスイッチング素子をスイッチング動作されるインバータが開示されている。非特許文献1には、簡易回路を用いて、高調波損失を低減させるパルスパターンを生成するパルスパターン生成方法が開示されている。簡易回路は、線間電圧を印加する電圧源と、線間電圧が加わる2つのコイルとを接続したものである。非特許文献1では、簡易回路に流れる電流から電流実効値を算出し、電流実効値が最小となるようにパルスパターンを生成している。電流実効値を小さくすると、高調波損失が低減されるため、電流実効値が最小となるようにパルスパターンを生成することで、高調波損失を低減させることができる。
特公平6-36676号公報
「New Control of PWM Inverter Waveform for Minimum Loss Operation of an Induction Motor Drive」ISAO TAKAHASHI AND HIROSHI MOCHIKAWA
ところで、非特許文献1に開示のパルスパターン生成方法は、実際にモータのコイルに流れる電流を十分に模擬できているとはいえない。
本発明の目的は、モータのコイルに実際に流れる電流と、算出される電流との差を小さくすることができるパルスパターン生成装置を提供することにある。
上記課題を解決するパルスパターン生成装置は、三相モータを駆動するインバータが備える複数のスイッチング素子を制御するためのパルスパターンを生成するパルスパターン生成装置であって、前記三相モータの駆動時に前記三相モータのコイルに流れると想定される電流を算出する電流算出部と、前記電流算出部によって算出された前記電流から電流実効値を算出する電流実効値算出部と、前記電流実効値算出部によって算出された前記電流実効値に基づき、前記パルスパターンを生成するパターン生成部と、を備え、前記電流算出部は、空間ベクトルから前記コイルに流れると想定される電流を算出する。
コイルに流れる電流は、空間ベクトルによって変化する。空間ベクトルからコイルに流れると想定される電流を算出することで、線間電圧により2つのコイルに流れると想定される電流を算出する場合に比べて、モータのコイルに実際に流れる電流と、算出される電流との差を小さくすることができる。したがって、空間ベクトルから算出された電流からパルスパターンを生成し、このパルスパターンでスイッチング素子が制御されることで、所望の電流波形が得られる。
上記パルスパターン生成装置について、前記パターン生成部は、前記電流実効値が最小となるように前記パルスパターンを生成してもよい。
電流実効値を小さくすることで、高調波損失は低減される。電流実効値が最小となるようにパルスパターンを生成し、このパルスパターンでスイッチング素子をスイッチング制御させることで、高調波損失を低減できる。
本発明によれば、モータのコイルに実際に流れる電流と、算出される電流との差を小さくすることができる。
モータ、及び、モータを駆動するインバータを示すブロック図。 d,q/u,v,w変換回路の構成を示すブロック図。 パルスパターン生成装置のブロック図。 相電圧印加部による回路を示す図。 空間ベクトルとu相電流の対応関係を示す表。 空間ベクトルから得られた相電流の電流波形と、比較例の電流波形と、解析による電流波形を示す図。 変形例における空間ベクトルとu相電流の対応関係を示す表。
以下、パルスパターン生成装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、インバータ10は、インバータ回路20と、インバータ制御装置30と、を備える。インバータ制御装置30は、ドライブ回路31と、制御部32と、を備える。本実施形態のインバータ10は、モータ60を駆動するためのものである。
インバータ回路20は、6つのスイッチング素子Q1~Q6と、6つのダイオードD1~D6と、を備える。スイッチング素子Q1~Q6としては、IGBTを用いている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、u相上アームを構成するスイッチング素子Q1と、u相下アームを構成するスイッチング素子Q2が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、v相上アームを構成するスイッチング素子Q3と、v相下アームを構成するスイッチング素子Q4が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、w相上アームを構成するスイッチング素子Q5と、w相下アームを構成するスイッチング素子Q6が直列接続されている。スイッチング素子Q1~Q6にはダイオードD1~D6が逆並列接続されている。正極母線Lp、負極母線Lnには平滑コンデンサCを介してバッテリBが接続されている。
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の間は、モータ60のu相端子に接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4の間は、モータ60のv相端子に接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6の間は、モータ60のw相端子に接続されている。上下のアームを構成するスイッチング素子Q1~Q6を有するインバータ回路20は、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作に伴いバッテリBの電圧である直流電圧を交流電圧に変換してモータ60に供給することができるようになっている。モータ60は、3つのコイルU,V,Wをスター結線した三相交流モータである。本実施形態のモータ60は、誘導モータである。
各スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子にはドライブ回路31が接続されている。ドライブ回路31は、制御信号に基づいてインバータ回路20のスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング動作させる。
インバータ10は、モータ60の電気角θを検出する位置検出部61と、モータ60のu相電流Iuを検出する電流センサ62と、モータ60のv相電流Ivを検出する電流センサ63と、電源電圧Vdcを検出する電圧センサ64と、を備える。
制御部32はマイクロコンピュータにより構成されている。制御部32は、減算部33と、トルク制御部34と、トルク/電流指令値変換部35と、減算部36,37と、電流制御部38と、d,q/u,v,w変換回路39と、座標変換部40と、速度演算部41と、を備える。
速度演算部41は、位置検出部61により検出される電気角θから速度ωを演算する。減算部33は、指令速度ω*と速度演算部41により演算された速度ωとの差分Δωを算出する。トルク制御部34は、速度ωの差分Δωからトルク指令値T*を演算する。
トルク/電流指令値変換部35は、トルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部35は、記憶部(図示略)に予め記憶される目標トルクとd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*とが対応付けられたテーブルを用いてトルク/電流指令値変換を行う。
座標変換部40は、電流センサ62,63によるu相電流Iuおよびv相電流Ivからモータ60のw相電流Iwを求め、位置検出部61により検出される電気角θに基づいて、u相電流Iu、v相電流Ivおよびw相電流Iwをd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。なお、d軸電流Idはモータ60に流れる電流において、界磁を発生させるための電流ベクトル成分であり、q軸電流Iqはモータ60に流れる電流において、トルクを発生させるための電流ベクトル成分である。
減算部36は、d軸電流指令値Id*とd軸電流Idとの差分ΔIdを算出する。減算部37は、q軸電流指令値Iq*とq軸電流Iqとの差分ΔIqを算出する。電流制御部38は、差分ΔIdおよび差分ΔIqに基づいてd軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を算出する。
d,q/u,v,w変換回路39は、電気角θと、d軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*と、電源電圧Vdcを入力して各スイッチング素子Q1~Q6の制御信号をドライブ回路31に出力する。
図2に示すように、d,q/u,v,w変換回路39は、d,q/u,v,w変換部50と、変調率算出部51と、パルスパターン決定部52と、信号生成部53と、を備える。
d,q/u,v,w変換部50は、角度情報(ロータの位置)である電気角θに基づいてd軸電圧指令値Vd*、及び、q軸電圧指令値Vq*を、u,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に座標変換する。
変調率算出部51は、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*と、電源電圧Vdcに基づき、変調率Keu,Kev,Kewを算出する。変調率算出部51は、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を電源電圧Vdcで除算した値であり、電圧指令値(電圧振幅)Vu*,Vv*,Vw*と電源電圧Vdcの比率である。
パルスパターン決定部52は、電気角θと変調率Keu,Kev,Kewに基づいて、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチングパターンであるパルスパターンを決定する。パルスパターンは、マップ54としてメモリなどの記憶部に記憶されている。パルスパターンは、電気角θと変調率Keu,Kev,Kewに対応付けて設定されている。
マップ54は、オン指示信号とオフ指示信号とのそれぞれが、電気角θ及び変調率Keu,Kev,Kewに対応付けられた情報である。オン指示信号は、上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5をオンし、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6をオフすることを指示する信号である。オフ指示信号は、上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5をオフし、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6をオンすることを指示する信号である。マップ54は、オン指示信号からオフ指示信号への切り替え、及び、オフ指示信号からオン指示信号への切り替えを指示する電気角θであるパルス角を示すものである。
信号生成部53は、パルスパターン決定部52で決定されたパルスパターンに基づき、制御信号を生成する。信号生成部53は、パルスパターンに基づき、上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5と下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6のオン/オフを切り替える際のデッドタイムを設定するとともに、制御信号を生成する。これにより、インバータ10のスイッチング素子Q1~Q6は、予め定められたパルスパターンでスイッチング制御されることになる。
次に、上記したパルスパターンを生成するパルスパターン生成装置について説明する。
図3に示すように、パルスパターン生成装置70は、モータ60のコイルU,V,Wに仮想的に相電圧を加える相電圧印加部72を備える。パルスパターン生成装置70は、モータ60の駆動状況を模擬することで、パルスパターンを生成する装置である。
相電圧印加部72は、コイルU,V,Wに、モータ60の駆動時にコイルU,V,Wに加わる電圧である相電圧を仮想的に印加する。相電圧はバッテリBの電圧から定まる。相電圧印加部72は、図4に示すように、三相分のコイルU,V,Wと、相電圧を加える電圧源と、を備える回路C1として表現することができる。
図3に示すように、パルスパターン生成装置70は、相電流を算出する電流算出部73と、相電流から電流実効値Irmsを算出する電流実効値算出部74と、を備える。電流算出部73は、三相のうちの一相の相電流を算出する。本実施形態では、三相の相電流のうちu相電流を算出する。
図5に示すように、空間ベクトルによって相電流は異なる。図5には、一例として、空間ベクトルとu相電流の傾きとの対応関係を示している。なお、空間ベクトルは、三相のスイッチング素子Q1~Q6のスイッチングパターンともいえる。図5に示すV0~V7の0,1は、それぞれ、各相のスイッチング素子Q1~Q6のオン/オフ、即ち、スイッチング状態を示す。0は上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5がオフであり、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6がオンの状態を示す。1は上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5がオンであり、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6がオフの状態を示す。V0~V7の3つの0,1は左から順にu相、v相、w相に対応している。図5に示すLはコイルUのインダクタンスであり、EはバッテリBの電圧である。図5に示すように、電流算出部73は、空間ベクトルに応じて、u相電流を算出することができる。
図6には、本実施形態の電流算出部73により算出された相電流による電流波形L21と、比較例の電流波形L22と、解析により得られた電流波形L23とを示す。比較例の電流波形L22は、線間電圧を当該線間電圧が加わる2つのコイルに加えた場合に流れる電流(=線間電流)を算出した場合の電流波形である。電流波形L21は、比較例の電流波形L22に比べて、解析により得られた電流波形L23と近似していることがわかる。即ち、空間ベクトルから算出されたu相電流は、モータ60の駆動時に実際にコイルUに流れる電流との差が少ないといえる。
電流実効値算出部74は、電流算出部73が算出した相電流により得られる電流波形L21から電流実効値Irmsを算出する。
図3に示すように、パルスパターン生成装置70は、パターン生成部76を備える。パターン生成部76は、電流実効値Irmsに基づきパルスパターンを生成する。パルスパターンは、電流実効値Irmsを評価項目とした評価関数から生成されているといえる。パターン生成部76は、電流実効値Irmsが最小となるようにパルスパターンを生成する。これにより、実施形態のインバータ10に用いられるパルスパターン(マップ54)が生成される。
本実施形態の作用について説明する。
インバータ10の各スイッチング素子Q1~Q6は、パルスパターン生成装置70で生成されたパルスパターンでスイッチング制御される。このパルスパターンは、空間ベクトルから算出された相電流により生成されたものである。空間ベクトルから算出された相電流は、モータ60の駆動時にコイルU,V,Wに流れる電流との差が小さく、所望の電流波形を得ることができる。また、パルスパターンは、電流実効値Irmsが最小になるように定められたパルスパターンである。このパルスパターンでスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング制御することで、電流実効値Irmsが小さくなるようにスイッチング動作が行われることになる。
実施形態の効果について説明する。
(1)電流算出部73は、空間ベクトルから相電流を算出している。コイルU,V,Wに流れる電流は、空間ベクトルによって変化する。空間ベクトルからコイルU,V,Wに流れると想定される電流を算出することで、線間電圧を2つのコイルに加えたときに流れると想定される電流を算出する場合に比べて、モータ60のコイルU,V,Wに実際に流れる電流と、算出される電流との差を小さくすることができる。したがって、空間ベクトルから算出された電流からパルスパターンを生成し、このパルスパターンでスイッチング素子Q1~Q6を制御することで、所望の電流波形が得られる。
(2)パターン生成部76は、電流実効値Irmsが最小となるようにパルスパターンを生成する。高調波損失は、電流実効値Irmsに比例するため、電流実効値Irmsが最小となるようなパルスパターンでスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング制御することで、高調波損失を低減させることができる。
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○パルスパターン生成装置70は、コイルU,V,Wをデルタ結線したモータのパルスパターンを生成するものであってもよい。この場合、空間ベクトルに対応するu相電流の傾きとしては、図7の表に示すようになる。なお、図7に示すV0~V6の1は、上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5がオン、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6がオフの状態を示す。0は、上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5、及び、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6の両方がオフの状態を示す。-1は、上アームスイッチング素子Q1,Q3,Q5がオフ、下アームスイッチング素子Q2,Q4,Q6がオンの状態を示す。
○パルスパターンを生成するときのコイルU,V,Wのインダクタンスを可変としてもよい。コイルU,V,Wのインダクタンスは、各コイルU,V,Wを流れる電流の値や、モータ60の回転位置によって変化する。相電流を算出するときに、モータ60の回転位置などを加味したインダクタンスを用いることで、相電流と、モータ60の駆動時にコイルU,V,Wに実際に流れる電流との差を更に低減させることができる。
○パルスパターン生成装置70は、インバータ10に搭載されていてもよい。この場合、コイルUの劣化具合を検出できる検出部や、コイルUの劣化具合を推定できる推定部を設けることで、パルスパターンの生成に用いられるコイルUのインダクタンスを補正する。これにより、コイルUの劣化具合を考慮したパルスパターンを生成することができる。パルスパターンをコイルUの劣化具合に応じて更新していくことで、インバータ10に適したパルスパターンによりスイッチング素子Q1~Q6のスイッチング制御を行うことができる。
○パターン生成部76は、電流実効値Irmsが最小となるパルスパターンに限られず、任意の電流波形を出力できるパルスパターンなどを生成するようにしてもよい。
○モータ60としては、IPMモータやSPMモータなど、どのような種類のモータを用いてもよい。
○変調率は、一相分のみ算出されていてもよい。この場合、一相分の変調率を三相共通の変調率として制御が行われる。
Q1~Q6…スイッチング素子、U,V,W…コイル、10…インバータ、60…モータ、70…パルスパターン生成装置、73…電流算出部、74…電流実効値算出部、76…パターン生成部。

Claims (2)

  1. 三相モータを駆動するインバータが備える複数のスイッチング素子を制御するためのパルスパターンを生成するパルスパターン生成装置であって、
    前記三相モータの駆動時に前記三相モータのコイルに流れると想定される電流を算出する電流算出部と、
    前記電流算出部によって算出された前記電流から電流実効値を算出する電流実効値算出部と、
    前記電流実効値算出部によって算出された前記電流実効値に基づき、前記パルスパターンを生成するパターン生成部と、を備え、
    前記電流算出部は、空間ベクトルから前記コイルに流れると想定される電流を算出するパルスパターン生成装置。
  2. 前記パターン生成部は、前記電流実効値が最小となるように前記パルスパターンを生成する請求項1に記載のパルスパターン生成装置。
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