以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による画像形成装置1は、いわゆるMFP(Multi Function Peripheral)となっており、媒体としての用紙に画像を形成する(すなわち印刷する)プリンタ機能の他、画像を読み取るイメージスキャナとしての機能や通信機能を有している。このため画像形成装置1は、これらの機能を組み合わせることにより、プリンタ、複写機(コピー機)及びファクシミリ装置等として動作することができる。この画像形成装置1は、プリンタとして機能する場合、例えばA3サイズやA4サイズ等の大きさでなる用紙Pに対し、所望のカラー画像を印刷できる。
画像形成装置1は、略箱型に形成されたプリンタ筐体2の内部に種々の部品が配置されている。因みに以下では、図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。
画像形成装置1は、制御部3により全体を統括制御するようになっている。この制御部3は、コンピュータ装置等の上位装置(図示せず)と無線又は有線により接続されている。制御部3は、この上位装置から印刷対象の画像を表す画像データが与えられると共に当該画像データの印刷が指示されると、用紙Pの表面に印刷画像を形成する印刷処理を実行する。
プリンタ筐体2内の最下部には、用紙Pを収容する用紙収容カセット4が設けられている。用紙収容カセット4の前上方には、給紙部5が設けられている。給紙部5は、用紙収容カセット4の前上側に配置されたホッピングローラ6、用紙Pを搬送路Wに沿って上方へ案内する搬送ガイド7、搬送路Wを挟んで互いに対向するレジストローラ8及びピンチローラ9等により構成されている。
給紙部5は、制御部3の制御に基づいて各ローラを適宜回転させることにより、用紙収容カセット4に集積された状態で収容されている用紙Pを1枚ずつ分離しながらピックアップし、搬送ガイド7により搬送路Wに沿って前上方へ進行させ、やがて後上方へ折り返してレジストローラ8及びピンチローラ9に当接させる。レジストローラ8は、回転が適宜抑制されており、ピンチローラ9との間で用紙Pに摩擦力を作用させることにより、進行方向に対して該用紙Pの側辺が傾斜する、いわゆる斜行を修正し、先頭及び末尾の端辺を左右に沿わせた状態としてから、後方へ送り出す。
レジストローラ8及びピンチローラ9の後側には、搬送路Wがほぼ前後方向に沿って形成されており、その下側に中搬送部10が配置されている。中搬送部10は、前側に配置された前ローラ11と、後側に配置された後ローラ12と、下側に配置された下ローラ13との周囲に無端ベルトでなる搬送ベルト14が張架された構成となっている。また前ローラ11の上側には、搬送ベルト14を挟んで対向する位置に吸着ローラ15が設けられている。
この中搬送部10は、所定のベルト駆動モータ(図示せず)から後ローラ12に対し駆動力が伝達されると、この後ローラ12を矢印R2方向へ回転させることにより、搬送ベルト14を走行させる。これにより搬送ベルト14は、搬送路Wに沿った上側部分、すなわち前ローラ11及び後ローラ12の間に張架された部分を、後方向へ走行させる。このとき中搬送部10は、給紙部5から用紙Pが引き渡されると、これを吸着ローラ15及び前ローラ11の間に搬送ベルト14と共に挟持し、該搬送ベルト14上側に用紙Pを載置した状態で、該搬送ベルト14の走行に伴って該用紙Pを後方へ進行させる。
中搬送部10の上側であり、搬送路Wを挟んで該中搬送部10の反対側には、4個の画像形成ユニット16C、16M、16Y及び16Kが後側から前側へ向かって順に配置されている。画像形成ユニット16C、16M、16Y及び16K(以下これらをまとめて画像形成ユニット16とも呼ぶ)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色にそれぞれ対応しているものの、色のみが相違しており、何れも同様に構成されている。
画像形成ユニット16は、図2に模式的な側面図を示すように、画像形成部31、トナーカートリッジ32、プリントヘッド33により構成されており、その下側に配置された転写ローラ17との間に搬送ベルト14を挟んでいる。因みに画像形成ユニット16及びこれを構成する各部品は、用紙Pにおける左右方向の長さに応じて、左右方向に十分な長さを有している。このため多くの部品は、前後方向や上下方向の長さに対して左右方向の長さが比較的長くなっており、左右方向に沿って細長い形状に形成されている。
トナーカートリッジ32は、現像剤としてのトナーを収容しており、画像形成部31の上側に配置され、当該画像形成部31の上方に取り付けられている。このトナーカートリッジ32は、収容しているトナーを画像形成部31のトナー収容部34へ供給する。画像形成部31には、トナー収容部34の他、供給ローラ35、現像ローラ36、規制ブレード37、感光体ドラム38及び帯電ローラ39が組み込まれている。
供給ローラ35は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、その周側面に導電性ウレタンゴム発泡体等でなる弾性層が形成されている。現像ローラ36は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、その周側面に弾性を有する弾性層や導電性を有する表面層等が形成されている。規制ブレード37は、例えば所定厚さのステンレス鋼板でなり、僅かに弾性変形させた状態で、その一部を現像ローラ36の周側面に当接させている。感光体ドラム38は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、その周側面に薄膜状の電荷発生層及び電荷輸送層が順次形成され、帯電し得るようになっている。帯電ローラ39は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、その周側面に導電性の弾性体が被覆されており、この周側面を感光体ドラム38の周側面に当接させている。
また画像形成部31の前下側であって、感光体ドラム38及び搬送ベルト14の当接箇所よりも上流側となる位置には、除電光源20が設けられている。この除電光源20は、感光体ドラム38に所定の光を照射することにより、帯電している静電気を除去するようになっている。
この画像形成部31は、図示しないドラムモータから駆動力が供給されることにより、供給ローラ35、現像ローラ36及び帯電ローラ39を矢印R2方向(図中の反時計回り)へ回転させると共に、感光体ドラム38を矢印R1方向(図中の時計回り)へ回転させる。さらに画像形成部31は、供給ローラ35、現像ローラ36、規制ブレード37及び帯電ローラ39にそれぞれ所定のバイアス電圧を印加することにより、それぞれ帯電させる。
供給ローラ35は、帯電によりトナー収容部34内のトナーを周側面に付着させ、回転によりこのトナーを現像ローラ36の周側面に付着させる。現像ローラ36は、規制ブレード37によって周側面から余分なトナーが除去された後、この周側面を感光体ドラム38の周側面に当接させる。
一方、帯電ローラ39は、帯電した状態で感光体ドラム38と当接することにより、当該感光体ドラム38の周側面を一様に帯電させる。プリントヘッド33は、複数の発光素子チップが左右方向に沿って直線状に配置されており(詳しくは後述する)、制御部3(図2)から供給される画像データ信号に基づいた発光パターンで、所定の時間間隔毎に発光することにより、感光体ドラム38を露光する。これにより感光体ドラム38は、その上端近傍において周側面に静電潜像が形成される。
続いて感光体ドラム38は、矢印R1方向へ回転することにより、この静電潜像を形成した箇所を現像ローラ36と当接させる。これにより感光体ドラム38の周側面には、静電潜像に基づいてトナーが付着し、画像データに基づいたトナー画像が現像される。
転写ローラ17は、感光体ドラム38の真下に位置しており、その周側面における上端近傍と該感光体ドラム38の下端近傍との間に、搬送ベルト14の上側部分を挟んでいる。この転写ローラ17は、所定のバイアス電圧が印加されると共に、図示しないドラムモータから駆動力が供給されて矢印R2方向へ回転する。これにより画像形成ユニット16は、搬送路Wに沿って用紙Pが搬送されていた場合、感光体ドラム38の周側面に現像されたトナー画像をこの用紙Pに転写することができる。
このようにして各画像形成ユニット16は、搬送路Wに沿って前方から搬送されて来る用紙Pに対し、それぞれの色によるトナー画像を順次転写して重ねながら、後方へ進行させていく。
また中搬送部10(図1)における下ローラ13の下側には、クリーニング部19が設けられている。クリーニング部19は、画像形成処理が行われる場合に用紙Pの搬送不良等が生じて搬送ベルト14に付着したトナーを、該搬送ベルト14の表面から掻き落として清掃する。これにより中搬送部10では、次に搬送される用紙Pの裏面、すなわち搬送路Wにおいて下方を向いている面でありトナー画像が転写されない面にトナーが付着して汚損させてしまう、いわゆる裏写りを防止することができる。
中搬送部10の後端近傍には、定着部21が設けられている。定着部21は、搬送路Wを挟んで対向するように配置された加熱ローラ21A及び加圧ローラ21Bにより構成されている。加熱ローラ21Aは、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、内部にヒータが設けられている。加圧ローラ21Bは、加熱ローラ21Aと同様の円筒状に形成されており、上側の表面を加熱ローラ21Aにおける下側の表面に所定の押圧力で押し付けている。
この定着部21は、制御部3の制御に基づき、加熱ローラ21Aを加熱すると共に当該加熱ローラ21A及び加圧ローラ21Bをそれぞれ所定方向へ回転させる。これにより定着部21は、中搬送部10から受け取った用紙P、すなわち4色のトナー画像が重ねて転写された用紙Pに対して熱及び圧力を加えてトナーを定着させ、さらに後方へ引き渡す。
定着部21の後方には、排紙部22が配置されている。排紙部22は、給紙部5と同様、用紙Pを案内するガイドや複数の搬送ローラ等の組み合わせにより構成されている。この排紙部22は、制御部3の制御に従って各搬送ローラを適宜回転させることにより、定着部21から引き渡される用紙Pを後上方へ搬送してから前方へ向けて折り返し、プリンタ筐体2の上面に形成された排出トレイ2Tへ排出する。
さらにプリンタ筐体2内における搬送路Wに沿った複数の箇所には、用紙Pを検出するための用紙センサ25、26、27及び28が適宜設けられている。この用紙センサ25等は、搬送路W内における用紙Pの有無をそれぞれ検出し、得られた検出結果を制御部3へ通知する。これに応じて制御部3は、各搬送ローラの回転や中搬送部10における搬送ベルト14の走行等を適宜制御する。
次に、画像形成装置1のブロック構成について、図3を参照しながら説明する。制御部3は、コンピュータ装置等の上位装置(図示せず)から制御信号S1を受信し、この制御信号S1に含まれる印刷指示に基づいて印刷動作を開始する。
具体的に制御部3は、まず定着部21(図1)の内部に設けられている定着器温度センサ21C(図3)により、定着部21が所定の温度範囲内であるか否かを判定する。このとき制御部3は、定着部21の温度がこの温度範囲未満であれば、加熱ローラ21A(図1)に通電して加熱させ、該定着部21の温度をこの温度範囲に合わせる。
また制御部3は、ドライバ43を介して現像・転写プロセス用モータ44を回転させると共に帯電用高圧電源41を動作させ、これにより画像形成ユニット16(図2)における帯電ローラ39等を回転させると共に帯電させる。
さらに制御部3は、ドライバ45を介して用紙送りモータ46を回転させることにより、給紙部5(図1)のホッピングローラ6等を回転させ、これにより用紙収容カセット4内から用紙Pを1枚ずつに分離しながら送り出し、搬送路Wに沿って搬送させる。また制御部3は、用紙センサ25~28等から得られる検出結果を基に、用紙Pの位置や搬送の状態等を認識し、搬送速度の調整等を行う。
一方、画像処理部48は、上位装置から供給される画像データに対して所定の画像処理を施すことにより、1ページ毎の画像形成用データを生成する。制御部3は、用紙センサ26による検出結果等を基に、用紙Pが印刷可能な位置、例えば画像形成装置16K(図1)の直前に到達した時点において、画像処理部48に対しタイミング信号S3を送信する。このタイミング信号S3には、主走査同期信号及び副走査同期信号等が含まれている。
これに応じて画像処理部48は、生成した画像形成用データを1ライン分ずつに分離したビデオ信号S2を生成して制御部3へ送信する。制御部3は、このビデオ信号S2を基に印刷データ信号S4を生成し、これを画像形成ユニット16(図2)のプリントヘッド33へ送信する。これによりプリントヘッド33は、画像データに基づいた発光パターンで発光し、感光体ドラム38の周側面に静電潜像を1ラインずつ形成していくことができる。
[1-2.プリントヘッドの回路構成]
[1-2-1.プリントヘッドにおける各部の接続]
次に、プリントヘッド33の回路構成に関し、各部の接続について図4を参照しながら説明する。露光装置としてのプリントヘッド33は、複数の発光サイリスタLT(LT1、LT2、…)と、複数のフリップフロップFF(FF1、FF2、…)と、複数のゲート駆動回路GD(GD1、GD2、…)とにより構成されている。
このうち各フリップフロップFF及び各ゲート駆動回路GDは、シフトレジスタ33R内にそれぞれ設けられている。説明の都合上、以下では、1個ずつの発光サイリスタLT、フリップフロップFF及びゲート駆動回路GDの組合せにより構成される回路を発光駆動回路LDC(LDC1、LDC2、…)とも呼ぶ。また以下では、ゲート駆動回路GD及びフリップフロップFFをまとめて駆動回路とも呼ぶ。
因みにシフトレジスタ33Rは、後述するように、シリコン等の半導体ウェハ上に周知のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造を用いて製造されている。またこのシフトレジスタ33Rは、ガラス基板上に周知のTFT(Thin Film Transistor)技術を用いて製造することもできる。
一方、制御部3には、プリントヘッド33の各発光駆動回路LDCを駆動制御する駆動制御回路50が設けられている。駆動制御回路50は、外部からDRV ON-P信号が供給されると共に、各種信号を出力するシリアルデータ端子50I、クロック端子50CK及びデータ端子50Dを有している。
駆動制御回路50は、所定のクロック周波数の矩形波でなるクロック信号SCKを生成し、これをクロック端子50CKからプリントヘッド33のクロック端子33CKに供給する。また駆動制御回路50は、画像データに応じたシリアルデータ信号SIを生成し、これをシリアルデータ端子50Iからプリントヘッド33のシリアルデータ端子33Iに供給する。さらに駆動制御回路50は、供給されるDRV ON-P信号を反転させた電位をデータ端子50Dに印加する。このデータ端子50Dは、プリントヘッド33のデータ端子33Dと接続されている。
因みにプリントヘッド33は、図示しない電源端子を介して、図示しない電源回路から所定の電源電圧VDDが供給されると共に、図示しないグランド端子を介してグランドに接続されている。従ってプリントヘッド33は、駆動制御回路50や図示しない電源回路等、外部との間での電気的な接続線の数が5本となっている。
一方、プリントヘッド33では、クロック端子33CK、シリアルデータ端子33I及びデータ端子33Dが、発光駆動回路LDCと接続されている。このうちクロック端子33CKは、各フリップフロップFFのクロック入力端子と接続されており、駆動制御回路50から供給されるクロック信号SCKを各フリップフロップFFにそれぞれ供給する。このため各フリップフロップFFは、このクロック信号SCKに同期したタイミングで動作する。
シリアルデータ端子33Iは、初段のフリップフロップFF1の入力端子Dと接続されている。このフリップフロップFF1の出力端子Qは、次段のフリップフロップFF2の入力端子Dに接続されると共に、ゲート駆動回路GD1の入力端子Qに接続されている。このためフリップフロップFF1は、シリアルデータ端子33Iから供給されるシリアルデータ信号SIを基に、クロック信号SCKに従ったタイミングで出力信号SQ1を生成し、これをゲート駆動回路GD1及び次段のフリップフロップFF2へ供給する。
因みに2段目以降のフリップフロップFF(FF2、FF3、…)は、前段のフリップフロップFFの出力端子Qから供給される出力信号SQ(SQ1、SQ2、…)を基に、クロック信号SCKに従ったタイミングで出力信号SQ(SQ2、SQ3、…)を生成し、これをゲート駆動回路GD及び次段のフリップフロップFFへそれぞれ供給する。すなわち各フリップフロップFFは、クロック信号SCKの周期ごとに,シリアルデータ信号SIを順次後段へシフトしていくことになる。
各ゲート駆動回路GDは、出力端子Kが発光サイリスタLTのカソード端子及びデータ端子33Dに接続されており、また出力端子Gが該発光サイリスタLTのゲート端子に接続されている。さらに発光サイリスタLTは、アノード端子に電源電圧VDDが供給されている。
[1-2-2.発光サイリスタの構成及び基本動作]
次に、発光サイリスタLTの構成及び基本動作について説明する。被駆動素子としての発光サイリスタLTは、一般的な発光ダイオード(LED)と類似した構成となっており、電流が供給されると発光する、いわゆる発光素子として機能する。発光サイリスタLTは、図5(A)に回路記号を示すように、アノード(A)、カソード(K)及びゲート(G)といった3個の端子を有している。この発光サイリスタLTは、閾値電圧若しくは閾値電流が外部から制御可能な制御電極(すなわちゲート端子)を有する三端子スイッチ素子となっている。
この発光サイリスタLTは、図5(B)に模式的な断面図を示すように、性質の異なる複数の材料によりそれぞれ構成された複数の層が積層されたような構成となっている。例えば発光サイリスタLTは、GaAsウェハ基材を用い、周知のMO-CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法によりその上側に所定の結晶をエピタキシャル成長させることにより、製造される。
具体的に発光サイリスタLTは、GaAsウェハ基材に対し、所定のバッファ層や犠牲層(図示せず)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型の不純物を含ませたN型層51と、P型の不純物を含ませて成層したP型層52と、N型の不純物を含ませたN型層53とを順次積層させる。これにより発光サイリスタLTは、まず「NPN」の3層構造でなるウェハとして構成される。
次に発光サイリスタLTは、最上層であるN型層53の一部に対し、周知のフォトリソグラフィー法が施されることにより、選択的にP型の不純物が含まれるP型領域54が形成される。さらに発光サイリスタLTは、周知のドライエッチング法が施されることにより、所定の溝部分が形成され、その結果として素子分離が行われ、各発光サイリスタLTに分離される。また発光サイリスタLTは、前述したエッチングの過程において、最下層であるN型層51の一部が露出され、この露出された領域に金属配線が形成されてカソード(K)電極が形成される。さらに発光サイリスタLTは、P型層52及びP型領域54にも、これと同様にアノード(A)電極及びゲート(G)電極がそれぞれ形成される。
なお発光サイリスタLTは、図5(C)に示すように、図5(B)と一部異なる手法により製造することもできる。具体的に発光サイリスタLTは、まず図5(B)に示した手法と同様に、N型層51、P型層52及びN型層53が順次積層された「NPN」の3層構造でなるウェハとして構成される。さらに発光サイリスタLTは、N型層53の上側に、P型の不純物を含ませたP型層55が成層されることにより、上側から「PNPN」の4層構造でなるウェハとして構成される。
次に発光サイリスタLTは、周知のドライエッチング法が施されることにより、所定の溝部分が形成され、その結果として素子分離が行われる。また発光サイリスタLTは、図5(B)の場合と同様、前述したエッチングの過程において、最下層であるN型層51の一部が露出され、この露出された領域に金属配線が形成されてカソード電極が形成される。さらに発光サイリスタLTは、最上層であるP型層55の一部が露出され、アノード電極が形成されると共に、P型層52の一部が露出され、ゲート電極が形成される。
このように製造される発光サイリスタLT(図5(B)及び(C))は、図5(D)に示す等価回路56と同等の電気的特性を有している。等価回路56は、PNPトランジスタ57及びNPNトランジスタ58が組み合わされた構成となっている。すなわち等価回路56は、PNPトランジスタ57のエミッタ端子が発光サイリスタLTのアノード端子に相当し、NPNトランジスタ58のベース端子が発光サイリスタLTのゲート端子に相当し、NPNトランジスタ58のエミッタ端子が発光サイリスタLTのカソード端子に相当している。また等価回路56は、PNPトランジスタ57のコレクタ端子がNPNトランジスタ58のベース端子と接続され、PNPトランジスタ57のベース端子がNPNトランジスタ58のコレクタ端子と接続されている。
かかる構成により発光サイリスタLTは、アノード端子に所定の電源電圧が印加され、且つカソード端子の電位が低くゲート端子の電位が高い状態になると、両者の間にトリガ電流が流れ、これを契機としてアノード端子及びカソード端子間に電流が流れ、発光状態となる。また発光サイリスタLTは、この発光状態において、カソード端子の電位がアノード端子と同程度に高められて両者の電位差が無くなると、消灯状態となる。さらに発光サイリスタLTは、ゲート端子の電位が低い状態であれば、アノード端子及びカソード端子の間に電位差が生じたとしても、トリガ電流が流れないため、発光状態にはならず、消灯状態を維持する。
なお発光サイリスタLTは、GaAsウェハ上にAlGaAs層を形成した構造に限らず、例えばGaP、GaAsPやAlGaInP等の材料を用いるものであっても良く、さらにはサファイア基板上にGaN、AlGaNやInGaN等の材料を成膜したものであっても良い。
[1-2-3.ゲート駆動回路の構成及び基本動作]
一方、ゲート駆動回路GD(図4)は、図6(A)にシンボルを示すように、1個の入力端子Qと、2個の出力端子G及びKとを有している。このゲート駆動回路GDは、図6(B)に示す等価回路60と同等の電気的特性を有している。等価回路60は、インバータ61、PMOSトランジスタ62及び63、並びにアナログスイッチ64により構成されている。このうちアナログスイッチ64は、NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタのソース端子同士及びドレーン端子同士をそれぞれ並列に接続した回路構成となっている。以下、このソース端子及びドレーン端子のうち何れか一方を第1端子と呼び、また他方を第2端子と呼ぶ。
入力端子Qは、インバータ61の入力端子と、アナログスイッチ64におけるPMOSトランジスタ側のゲート端子と接続されている。インバータ61の出力端子は、アナログスイッチ64におけるNMOSトランジスタ側のゲート端子と、PMOSトランジスタ62のゲート端子とに接続されている。
PMOSトランジスタ62のソース端子は図示しない電源回路と接続され、所定の電源電圧VDDが供給される。PMOSトランジスタ62のドレーン端子は、PMOSトランジスタ63のソース端子と接続されている。PMOSトランジスタ63のドレーン端子は、自身のゲート端子、出力端子G及びアナログスイッチ64の第1端子とそれぞれ接続されている。またアナログスイッチ64の第2端子は、出力端子Kと接続されている。
かかる構成によりゲート駆動回路GDは、入力端子Qにハイレベルの信号が供給されると、インバータ61の出力信号がローレベルとなり、PMOSトランジスタ62及び63が何れも「オン」となるため、出力端子Gから出力される出力信号SGがハイレベルとなる。またこのときアナログスイッチ64は、オフ状態となり、第1端子及び第2端子を電気的に切断する。すなわち出力端子Kは、出力端子Gから電気的に切り離された状態となる。
またゲート駆動回路GDは、入力端子Qにローレベルの信号が供給されると、アナログスイッチ64は、オン状態となり、第1端子及び第2端子を電気的に接続する。すなわち出力端子Kは、出力端子Gと電気的に接続された状態となる。またこのときゲート駆動回路GDでは、PMOSトランジスタ62及び63が何れも「オフ」となる。
[1-2-4.ゲート端子駆動回路及び発光サイリスタの基本動作]
次に、発光駆動回路LDC(図4)の一部であるゲート駆動回路GD及び発光サイリスタLTの基本動作について説明する。制御部3の駆動制御回路50は、外部から供給される駆動指令信号DRV ON-P信号がローレベルになると、データ端子50Dをハイレベルとし、発光サイリスタLTのカソード端子を電源電圧VDDとほぼ等しい電位とする。
発光駆動回路LDCでは、発光サイリスタLTにおけるアノード・カソード端子間の電位差がほぼ0[V]となり、いわゆるゲート電流が発生しないため、駆動制御回路50のデータ端子50Dに流れ込む電流Ioutもほぼ0[A]となる。この結果、発光駆動回路LDCでは、発光サイリスタLTが発光しない(すなわち消灯した)非発光状態となる。
一方、駆動制御回路50は、駆動指令信号DRV ON-P信号がハイレベルになると、データ端子50Dがローレベルとなり、電源電圧VDDとの間に十分な電位差を生じる。これにより発光駆動回路LDCでは、発光サイリスタLTにおけるアノード・カソード端子間に十分な電位差が生じる。
この状態において発光駆動回路LDCは、駆動制御回路50から供給されるシリアルデータ信号SIがハイレベルである場合、クロック信号SCKに従ったタイミングで、フリップフロップFFの出力信号SQがハイレベルとなる。これに応じて発光駆動回路LDCでは、ゲート駆動回路GDの出力端子Gがハイレベルとなるため、発光サイリスタLTのゲート端子にトリガ電流が生じ、該発光サイリスタLTが発光した(すなわち点灯した)発光状態となる。
因みに発光駆動回路LDCでは、このとき発光サイリスタLTのカソード端子に流れる電流が、駆動制御回路50のデータ端子50Dに流入する電流Ioutとなる。このため発光サイリスタLTは、この電流Ioutの大きさに応じた発光量で発光することになる。
このように発光駆動回路LDCは、駆動指令信号DRV ON-P信号がハイレベルであることによりデータ端子50Dがローレベルであり、且つシリアルデータ信号SIがハイレベルである場合のみ、クロック信号SCKに従ったタイミングで発光サイリスタLTが発光した発光状態となり、それ以外の場合に非発光状態となるようになっている。
[1-3.プリントヘッドの構成]
次に、プリントヘッド33の構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、プリントヘッド33の模式的な断面図を表している。また図7は、説明の都合上、図2におけるプリントヘッド33を紙面上で半回転させた状態、すなわち上下方向及び前後方向を何れも反対に向けた状態で表している。以下では、図7における上方向を照射方向とも呼び、下方向を反照射方向とも呼ぶ。
プリントヘッド33は、ベース部材71を中心に構成されている。ベース部材71は、左右方向の長さに対して前後方向の長さが短く、上下方向の長さがさらに短い、全体として扁平な直方体状ないし板状に形成されており、十分な強度を有している。ベース部材71の照射方向側(すなわち下側)には、プリント配線板72が設けられている。プリント配線板72は、ベース部材71と比較して、左右方向及び前後方向の長さが概ね同等であり、上下方向の長さがやや短く、すなわち薄くなっている。このプリント配線板72は、例えばガラスエポキシ樹脂でなり、上下それぞれの表面に所定の回路パターンが形成されている。
図8に模式的な斜視図を示すと共に、図9に模式的な平面図を示すように、プリント配線板72の照射方向側には、例えば26個のように多数の発光素子チップ73が、左右方向に沿って1列に整列された状態で、いわゆるダイボンディング技術により取り付けられている。被駆動素子チップとしての発光素子チップ73は、板状に構成されたチップ基体73Bにおける照射方向側(すなわち下側)の表面に、左右方向に細長く、且つ上下方向に短い(すなわち薄い)エピタキシャルフィルム73Fが取り付けられている。説明の都合上、以下では左右方向を整列方向とも呼び、この左右方向と交差する前後方向を交差方向とも呼ぶ。
エピタキシャルフィルム73Fには、例えば192個のように多数の発光サイリスタLTが左右方向に沿って整列した状態で形成されている。このエピタキシャルフィルム73Fは、例えば特許文献1に開示されているエピタキシャルフィルムボンディング法によってチップ基体73Bの表面に接着された後、それぞれに設けられた接続端子同士がフォトリソグラフィー法を用いて配線されることにより、該チップ基体73Bに対して電気的に接続される。
このようにプリント配線板72には、26個の発光素子チップ73が設けられ、各発光素子チップ73に192個の発光サイリスタLTが設けられているため、合計4992個の発光サイリスタLTが設けられている。またプリントヘッド33(図2及び図4)は、例えば左右方向の長さがA4サイズにおける短辺の長さ(210[mm])とほぼ同等となっており、この長さの範囲に4992個の発光サイリスタLTが等間隔に配置されている。これによりプリントヘッド33は、感光体ドラム38(図2)の周側面上に600[dpi]の解像度でなる静電潜像を生成することができる。
因みに、上述した駆動制御回路50(図4)は、1個の発光素子チップ73に設けられた192個の発光駆動回路LDCを1個のグループとして、このグループ内の各発光駆動回路LDCを時分割でそれぞれ駆動するようになっている。このため制御部3には、発光素子チップ73と同数である26個の駆動制御回路50が設けられており、各駆動制御回路50がそれぞれ並列的に、各発光素子チップ73の各発光駆動回路LDCをそれぞれ駆動する。ただし図4では、説明の都合上、1個の駆動制御回路50のみを示し、他を省略した。
また各発光素子チップ73(図8及び図9)における照射方向側(すなわち下側)の表面には、5個の端子パッド(詳しくは後述する)が設けられており、プリント配線板72との間で5本のボンディングワイヤ75により、電気的に接続されている。
さらにプリントヘッド33(図4)は、上述したベース部材71及びプリント配線板72が、ホルダ76に取り付けられている。ホルダ76は、全体として、左右方向に沿って形成された中空の四角柱から反照射方向側の側面を取り除いたような形状となっており、その断面が英大文字の「U」を上下に反転させて反照射方向側を開放させたような形状となっている。
ホルダ76における照射方向側の内側面には、プリント配線板72を支持する支持部76Aが形成されている。プリントヘッド33は、その製造時に、ホルダ76内にプリント配線板72及びベース部材71が重ねられた状態で挿入され、さらにクランプ部材77及び78が取り付けられる。クランプ部材77及び78は、何れも金属製でなり、弾性力の作用により、ベース部材71を介してプリント配線板72の照射方向面をホルダ76の支持部76Aに当接させた状態で固定する。この結果、プリント配線板72に取り付けられた発光素子チップ73の発光素子と、ホルダ76との位置関係が定められる。
またホルダ76における照射方向側部分の中央付近には、左右方向に沿った細長い長孔でなり上下方向に貫通する取付孔76Hが形成され、この取付孔76Hにロッドレンズアレイ79が取り付けられる。ロッドレンズアレイ79は、光軸を上下方向に沿わせた微小なレンズが左右方向に沿って複数並べられた構成となっており、各レンズの焦点を発光素子チップ73の各発光サイリスタLTに合わせるよう、その取付位置が調整された状態で固定されている。
[1-4.発光素子チップの構成]
次に、発光素子チップ73の構成について説明する。発光素子チップ73は、図10に模式的な平面図を示すように、全体として、図の横方向を表すX方向に長く、図の縦方向を表すY方向に短い長方形状に構成されている。また説明の都合上、図10では紙面の手前に向かう方向をZ方向と呼ぶ。
発光素子チップ73は、いわゆる自己走査型となっており、上述したように、大きく分けて板状のチップ基体73B及びフィルム状のエピタキシャルフィルム73Fを中心に構成されている。チップ基体73Bは、例えばシリコンを主な材料とする半導体であり、その照射方向側の表面であるチップ基体表面73BSに、成膜技術等を用いて複数の回路素子が形成されると共に、各回路素子を適宜接続する配線パターン(図示せず)等が形成されている。配置面としてのチップ基体表面73BSは、大きく分けて素子駆動領域82及び付加領域83により構成されている。このうち付加領域83は、さらに端子パッド領域84、第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86により構成されている。
素子駆動領域82は、チップ基体表面73BSにおけるY方向側の約50~80%の範囲を占めており、X方向に関するチップ基体73Bの全範囲に渡る長方形状に形成されている。この素子駆動領域82には、被駆動素子群としての発光素子群91と、及び駆動回路群92が設けられている。発光素子群91は、上述したエピタキシャルフィルム73F上に設けられた192個の発光サイリスタLT(図4)である。この発光素子群91を構成する発光サイリスタLTは、X方向に沿って直線状に、且つチップ基体表面73BSにおけるX方向のほぼ全範囲に渡って等間隔となるよう、整列配置されている。
駆動回路群92は、各発光サイリスタLTをそれぞれ駆動する駆動回路、すなわちフリップフロップFF及びゲート駆動回路GD(図4)を、X方向に沿って直線状に整列配置した構成となっており、図4におけるシフトレジスタ33Rに相当する。また素子駆動領域82内には、複数のマイクロビアがX方向に沿って整列されたマイクロビア列93が形成されている。このマイクロビア列93は、各ゲート駆動回路GDにおける出力端子G及び出力端子Kとそれぞれ接続されており、チップ基体表面73BSと反対面との間や他の層との間で回路パターン同士を接続する他、検査用の端子としても機能する。
付加領域83(図10)は、素子駆動領域82に対し、Y方向の反対(以下-Y方向と呼ぶ)側に隣接しており、且つX方向の反対(以下-X方向と呼ぶ)側における約半分の範囲を占めている。換言すれば、チップ基体73Bは、素子駆動領域82の-Y方向側において、-X方向側の約半分が-Y方向へ突出した形状、若しくはY方向側の約半分が切り欠かれた形状、或いは-X方向側の約半分がY方向へ凹んだ形状となっている。さらに付加領域83は、-X方向側の端部近傍及びX方向側の端部近傍がそれぞれ第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86となっており、残った中央の部分が端子パッド領域84となっている。
端子パッド領域84には、例えば5個の端子パッド94が配置されている。各端子パッド94は、比較的小さな正方形状に形成されており、ボンディングワイヤ75(図5)の一端をボンディング(溶着)するために必要十分な大きさとなっている。また各端子パッド94は、チップ基体表面73BSに形成された配線パターンと適宜接続されている。このため発光素子チップ73は、5本のボンディングワイヤ75を介してプリント配線板72の回路パターンや該プリント配線板72に実装された種々の電子部品等と電気的に接続される。
第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86には、それぞれ第1位置マーク95及び第2位置マーク96が形成されている。第1位置マーク95及び第2位置マーク96は、例えばX方向及びY方向に沿った2本の直線を直交させて英大文字の「L」を描いたような、位置を高精度に表すパターン画像となっている。このため発光素子チップ73では、Z方向側から撮像して画像を生成させた場合、この画像を基に、XY平面上における第1位置マーク95及び第2位置マーク96の位置をそれぞれ高精度に認識させることができ、これを基に該発光素子チップ73の位置や傾きを精度良く調整させることもできる。
因みに第1位置マーク95及び第2位置マーク96は、発光素子群91の各発光サイリスタLTとの間隔、すなわちY方向に沿った長さが、互いに同等となっている。プリントヘッド33では、その製造工程において、上述したようにダイボンディング技術により、プリント配線板72に対し、複数の発光素子チップ73が左右方向に沿って順次取り付けられていく。
このときプリントヘッド33では、プリント配線板72上で、先に取り付けられた発光素子チップ73における一方の位置マーク(例えば第1位置マーク95)に対し、次に取り付ける発光素子チップ73における他方の位置マーク(例えば第2位置マーク96)を左右方向に沿った一直線上に位置させるよう、位置や角度がそれぞれ調整される。具体的にプリントヘッド33では、各発光素子チップ73における第1位置マーク95及び第2位置マーク96の双方が、主走査方向である左右方向に沿った仮想的な基準線N1(図9)上に配置される。これによりプリントヘッド33では、プリント配線板72に対し、各発光素子チップ73の発光サイリスタLTを、左右方向と平行に、且つ前後方向の位置を揃えて一直線状に整列された状態、すなわち左右方向に沿った仮想的な基準線N2に合わせた状態とすることができる。
また以下では、素子駆動領域82の-Y方向側におけるX方向側の約半分、すなわち付加領域83のX方向側であって何も形成されていない部分を、切欠空間87と呼ぶ。チップ基体73Bは、Z方向から見て、所定の長方形から切欠空間87を切り欠いた形状と見なすこともできる。このためチップ基体73Bは、Y方向に関して、端子パッド領域84等がある部分の長さLY1が、該端子パッド領域84等が無い部分、すなわち素子駆動領域82のみの部分における長さLY2よりも、長くなっている。
また以下では、説明の都合上、チップ基体73BのX方向に関する各部の長さをそれぞれ定義する。具体的には、チップ基体73Bの全長でもある素子駆動領域82の長さL1、付加領域83の長さL2、及び付加領域83のX方向側において切り欠かれたような部分、すなわち切欠空間87の長さL3をそれぞれ定義する。ここで長さL3は、長さL2と同様に、長さL1の約半分となっているが、該長さL2よりも僅かに長くなっている。また長さL2及びL3の加算値は、長さL1と同等となる。また以下では、X方向に関し、端子パッド領域84の長さL4、第1位置マーク領域85の長さL5、及び第2位置マーク領域86の長さL6をそれぞれ定義する。この長さL4、L5及びL6の加算値は、長さL2と同等となる。
このように発光素子チップ73のチップ基体73Bは、Z方向側から見て長方形では無く、X方向に沿った長辺のうち一方が、クランク状に屈曲した形状、すなわち折れ線状に形成されている。またチップ基体73Bでは、素子駆動領域82に対し-Y方向側へ突出した位置に、端子パッド領域84、第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86がそれぞれ設けられている。
[1-5.発光素子チップの製造]
次に、発光素子チップ73の製造について説明する。発光素子チップ73は、周知の半導体チップや集積回路等と同様、シリコン等でなる半導体ウェハを基に製造される。この半導体ウェハには、図11にその一部を抜き出して示すように、周知の露光技術やエッチング技術等を利用して、多数の発光素子チップ73が配置された状態で製造される。
このとき半導体ウェハでは、2個の発光素子チップ73(例えば発光素子チップ73J及び73K)を1組とし、その一方(例えば発光素子チップ73K)を他方(例えば発光素子チップ73J)に対してXY平面内で半回転させ、一方の付加領域83を他方の切欠空間87に入り込ませた外形となるように配置される。すなわち1組を構成する2個の発光素子チップ73(以下これを発光素子チップ組73Sと呼ぶ)は、互いの付加領域83同士を概ねX方向に沿って並べた状態で配置されており、また互いの凹凸を嵌め合わせた状態となっている。このため半導体ウェハでは、発光素子チップ組73Sの外形が概ね長方形状となる。
また半導体ウェハでは、複数の発光素子チップ組73Sが、X方向に関して周期PX毎に並び、且つY方向に関して周期PY毎に並ぶよう、間隔d1を隔てながら、格子状に配置されている。このため半導体ウェハでは、各発光素子チップ組73Sの境界が、X方向に沿った直線状のX境界線BX及びY方向に沿った直線状のY境界線BYにより表される。その一方で半導体ウェハでは、各発光素子チップ組73Sにおいて、2個の発光素子チップ73同士の境界が、クランク状に屈曲された、すなわち折れ線状の屈曲境界線BE1により表される。
この半導体ウェハは、まず周知の露光技術やエッチング技術等が用いられることにより、シフトレジスタ33R(図4)のフリップフロップFFやゲート駆動回路GD、並びに各回路パターン等が形成される。また半導体ウェハは、特許文献1に開示されている手法によって発光サイリスタLT等が形成されたエピタキシャルフィルム73Fがチップ基体73Bに取り付けられ、両者の端子同士がフォトリソグラフィー法により配線される。すなわち発光素子チップ73は、発光素子及び駆動素子を何れも有する複合チップとなる。
次に半導体ウェハは、周知のダイシング技術により、各発光素子チップ73が個片化される。具体的に半導体ウェハは、例えば周知のブレードダイシングによりX境界線BX及びY境界線BYに沿って分離され、また周知のディープドライエッチング法やレーザーダイシング法等により屈曲境界線BE1に沿って折れ線状に分離される。
この屈曲境界線BE1は、2箇所の屈曲箇所において、折れ線状ではなく曲線状に、すなわち丸みを帯びた状態で、曲げられている。このため各発光素子チップ73は、図10における-Y方向側の辺における屈曲箇所である屈曲点88及び89の近傍において、折れ線状ではなく曲線状に、すなわち丸め加工が施されたような形状に形成される。
[1-6.プリントヘッドにおける発光動作]
次に、プリントヘッド33における発光動作について、図12のタイミングチャートを参照しながら説明する。ここでは、図4の場合と同様、8個の発光駆動回路LDC1~LDC8に着目し、これらをそれぞれ発光させる場合を想定する。
制御部3(図4)は、画像形成装置1(図1)に電源が投入されると、予備動作として、プリントヘッド33におけるシフトレジスタ33Rのリセット処理を行う。このリセット処理において、制御部3の駆動制御回路50は、シリアルデータ信号SIをローレベルとして供給しながら、クロック信号SCKにシフトレジスタ33Rの段数、すなわちフリップフロップFFの数と同数(この場合は8個)のクロックパルスを生成する。これによりプリントヘッド33では、シフトレジスタ33Rにおける各フリップフロップFFの出力信号SQ1~SQ8が全てローレベルとなる。
一方、制御部3の駆動制御回路50は、上位装置から画像データの印刷命令等を取得した場合、所定の時刻t1(図12)においてシリアルデータ信号SIをローレベルからハイレベルに立ち上げ、その後の時刻t2においてクロック信号SCKに比較的短いパルス幅の第1パルスCP1を発生させる。このクロック信号SCKがハイレベルに立ち上がると、シフトレジスタ33Rの初段であるフリップフロップFF1は、シリアルデータ信号SIを取り込み、これより僅かに遅いタイミングで出力信号SQ1をハイレベルに立ち上げる。また駆動制御回路50は、時刻t2よりも後の時刻t3において、シリアルデータ信号SIをハイレベルからローレベルに立ち下げる。
このように出力信号SQ1がハイレベルに立ち上がると、ゲート駆動回路GD(図4及び図6)は、上述したように出力端子Gから出力される出力信号SG1をハイレベルとし、また出力端子Kを該出力端子Gから電気的に切り離す。これにより発光サイリスタLT1は、ゲート端子の電位が上昇する。
続いて駆動制御回路50は、時刻t4(図12)において、外部から供給される駆動指令信号DRV ON-P信号がハイレベルになり、これに応じてデータ端子50Dをローレベルとする。これにより発光サイリスタLT1は、ゲート端子及びカソード端子の間に電位差が生じるため、両者の間にトリガ電流が流れてターンオン(点灯)し、発光状態となる。
この時刻t4から所定の発光期間TD1が経過した時刻t5において、駆動制御回路50は、外部から供給される駆動指令信号DRV ON-P信号がローレベルになり、これに応じてデータ端子50Dをハイレベルとする。これにより発光サイリスタLT1は、アノード端子及びカソード端子の間における電位差がほぼ0[V]となるため、両者の間に電流が流れなくなってターンオフ(消灯)し、非発光状態となる。
ここで、発光サイリスタLTにおける発光量、すなわち出射される光の強度は、主にアノード端子及びカソード端子の間に流れる電流の大きさに起因する。このため画像形成装置1では、制御部3の駆動制御回路50(図4)として定電流特性を有する駆動回路を採用することにより、データ端子50Dに流れる電流Ioutの大きさをほぼ一定に維持することができる。この場合、例えば各発光サイリスタLTにおいて、アノード端子及びカソード端子の間における電位差に多少のばらつきがあったとしても、流れる駆動電流の大きさをほぼ一定に揃えることができるので、発光量をほぼ一定に揃えることができる。
また駆動制御回路50は、データ端子50Dを時刻t4においてローレベルに立ち下げ、且つ時刻t5においてハイレベルに立ち上げたことにより、発光駆動回路LDC1の発光サイリスタLT1を発光させた。このため駆動制御回路50は、仮に時刻t4及びt5において、データ端子50Dをハイレベルのままとした場合、発光駆動回路LDC1の発光サイリスタLT1を発光させないようにすること、すなわち非発光状態を維持することができる。このように駆動制御回路50は、データ端子50Dをハイレベル又はローレベルに切り替えることにより、発光駆動回路LDC1の発光サイリスタLT1を発光させるか否かを制御することができる。
やがて駆動制御回路50は、時刻t6において、クロック信号SCKが再び立ち上がる。このときシリアルデータ信号SIはローレベルになっているため、フリップフロップFF1は、この時刻t6から僅かに遅いタイミングで、出力信号Q1をローレベルに立ち下げる。一方、次段のフリップフロップFF2は、時刻t6において入力端子Dにハイレベルの出力信号Q1が入力されていたため、出力信号Q2をハイレベルに立ち上げる。
続いて駆動制御回路50は、時刻t7において、時刻t4と同様に、外部から供給される駆動指令信号DRV ON-P信号がハイレベルになり、これに応じてデータ端子50Dをローレベルとする。これにより発光サイリスタLT2は、ゲート端子及びカソード端子の間に電位差が生じるため、両者の間にトリガ電流が流れてターンオン(点灯)し、発光状態となる。
この時刻t7から所定の発光期間TD2が経過した時刻t8において、駆動制御回路50は、時刻t5と同様に、外部から供給される駆動指令信号DRV ON-P信号がローレベルになり、これに応じてデータ端子50Dをハイレベルとする。これにより発光サイリスタLT2は、アノード端子及びカソード端子の間における電位差がほぼ0[V]となるため、両者の間に電流が流れなくなってターンオフ(消灯)し、非発光状態となる。
このようにプリントヘッド33(図4)では、シリアルデータ信号SIが時刻t1から時刻t3までの短い間のみハイレベルとなるため、クロック信号SCK(図12)が立ち上がるごとに、各フリップフロップFF1~FF8の各出力信号SQ1~SQ8を順次切り替えながら、何れか1つのみを一時的にハイレベルとし、他をローレベルとする。
このためプリントヘッド33では、駆動制御回路50におけるデータ端子50Dの電位がローレベルであれば、各出力信号SQ1~SQ8とそれぞれ対応する各発光サイリスタLT1~LT8のうち、該出力信号SQがハイレベルとなっている発光サイリスタLTのみを、択一的に発光させることができる。
かかる構成により、プリントヘッド33では、発光サイリスタLTをターンオン(発光)させる場合、該発光サイリスタLTにおけるゲート・カソード間のPN接合部に対し、順方向にバイアスさせるような電位差を与えてゲート電流を供給させれば良い。またプリントヘッド33では、該発光サイリスタLTを非発光状態のままとする場合、ゲート・カソード間の電位差を順方向電圧以下としておけば良いため、この電位差をゼロとし、或いは逆方向へ電圧を印加することもできる。
またプリントヘッド33では、フリップフロップFFの出力信号SQがローレベルである場合、ゲート駆動回路GDの等価回路60(図6(B))において、アナログスイッチ64がオン状態となり、PMOSトランジスタ62及び63が何れもオフとなる。このためプリントヘッド33では、発光サイリスタLTのゲート・カソード間に電圧が印加されず、ゲート電流が発生しないため、該発光サイリスタLTをオフ状態(非発光状態)に維持することができる。
なおプリントヘッド33では、各発光サイリスタLT(LT1、LT2、…)の発光時間TD(TD1、TD2、…)を統一しても良く、或いは互いに相違させても良い。例えばプリントヘッド33では、各発光サイリスタLTの発光効率がばらついていた場合、それぞれの発光効率に応じて発光時間TDを調整することにより、各発光サイリスタLTから一定の露光エネルギーを得られるように制御することもできる。
[1-7.発光サイリスタのターンオン動作]
次に、発光サイリスタLTにおけるターンオン動作について、詳細に説明する。図13(A)は、図5(A)と対応する回路図であり、発光サイリスタLTのみを表している。この発光サイリスタLTでは、アノード・カソード間電圧Va、ゲート・カソード間電圧Vgk、アノード端子に流れるアノード電流Ia、ゲート端子に流れるゲート電流Igをそれぞれ定義する。
また図13(B)は、図5(D)と同様、発光サイリスタLTを等価回路56により表した回路図である。この図13(B)では、発光サイリスタLTのアノード端子、カソード端子及びゲート端子に相当する各端子を、それぞれ単にアノード端子(A)、カソード端子(K)及びゲート端子(G)と呼ぶ。このうちアノード端子は、図示しない電源回路から所定の電源電圧VDDが印加されている。またカソード端子は、駆動制御回路50(図4)のデータ端子50Dに相当する駆動回路(図示せず)のデータ端子Dと接続されている。
この等価回路56では、図13(A)において定義した各電圧及び電流に加えて、発光サイリスタLTにおけるアノード・カソード間の電圧に相当する電圧Vag及びNPNトランジスタ58のベース端子に流れるベース電流Ibを定義する。また等価回路56では、発光サイリスタLTのカソード端子に相当するNPNトランジスタ58のエミッタ端子に流れるカソード電流Ikを定義する。
ここで、発光サイリスタLTがターンオン(点灯)する過程に着目するものとし、図13(B)の等価回路56においてゲート端子がハイレベルである場合について検討する。またこのとき、データ端子Dがローレベルであるものとする。
この場合、等価回路56では、ゲート端子からカソード端子へ向けて流れるゲート電流Igが発生する。このゲート電流Igは、発光サイリスタLT(図13(A))におけるゲート・カソード間のPN接合部分、すなわち等価回路56(図13(B))におけるNPNトランジスタ58のエミッタ・ベース間を、順方向電流として流れることになる。
図13(B)の等価回路56において、ゲート電流Igは、NPNトランジスタ58のベース電流Ibに相当するものである。このためNPNトランジスタ58は、このベース電流Ibが流れることにより、オン状態への移行を開始し、コレクタ端子にコレクタ電流を発生させる。等価回路56では、このコレクタ電流がPNPトランジスタ57のベース電流となるため、該PNPトランジスタ57もオン状態へ移行する。このとき生じたコレクタ電流は、NPNトランジスタ58のベース電流Ibを増強し、該NPNトランジスタ58のオン状態への移行を加速させることになる。
一方、等価回路56では、PNPトランジスタ57が完全にオン状態へ移行した後に、該PNPトランジスタ57のコレクタ・エミッタ間電圧、すなわち発光サイリスタLTにおけるアノード・カソード間の電圧Vagが低下し、ゲート端子電位が上昇する。ここで等価回路56では、このゲート端子電位が、図示しない駆動回路におけるデータ端子Dのハイレベル電圧以上になると、該データ端子Dから発光サイリスタLTのゲート端子へ流れるゲート電流Igをほぼ0[A]とすることができる。この結果、発光サイリスタLTは、アノード電流Iaとほぼ等しい大きさのカソード電流Ikがカソード端子に流れることになり、完全にオン状態、すなわち発光状態となる。
ここで、発光サイリスタLTにおけるカソード電流Ik(図13(B))とアノード・カソード間電圧Va(図13(A))との関係をグラフ化すると、図13(C)に示すような特性曲線U1として表すことができる。図13(C)において、座標(0,0)である原点は、発光サイリスタLTが消灯している状態を表しており、カソード電流Ikがほぼ0[A]となっている。
発光サイリスタLTがターンオンを開始すると、等価回路56では、カソード電流Ikが増加していき、やがて電流Ikpとなる。これと共に等価回路56では、カソード端子の電位が低下するため、アノード・カソード間電圧Vaが上昇していき、やがて電圧Vapに到達する。またこのときの座標(Ikp,Vap)により表される特性曲線U1上の点を、特性点U1pとする。すなわち特性曲線U1は、矢印wu1として示したように、発光サイリスタLTがターンオンを開始した原点(0,0)から、比較的急峻な傾斜角度の曲線を描きながら、座標(Ikp,Vap)の特性点U1pに到達する。
等価回路56は、アノード端子及びカソード端子の間に電圧Vapが印加されると、ゲート電流Igが流れる。このゲート電流Igは、NPNトランジスタ58のベース電流Ibに等しい大きさとなる。また、図13(C)においてアノード・カソード間電圧Vaが電圧Vapとなる特性点U1pは、カソード電流Ik軸方向に関し、オフ領域RAとオン遷移領域RBとの境界に相当する。このオフ領域RAは、発光サイリスタLTが非発光状態となっている領域である。またオン遷移領域RBは、発光サイリスタLTが非発光状態から発光状態へ遷移している領域である。
続いて等価回路56では、カソード電流Ikが電流Ikpから増加して電流Ikvとなる一方、アノード・カソード間電圧Vaが低下して電圧Vavとなる。また、このとき座標(Ikv,Vav)により表される特性曲線U1上の点を特性点U1vとする。この特性点U1vは、カソード電流Ik軸方向に関し、オン遷移領域RBとオン領域RCとの境界に相当する。このオン領域RCは、発光サイリスタLTが発光状態となっている領域である。このとき等価回路56では、ゲート電流Igがほぼ0[A]まで低下しており、図示しない駆動回路のデータ端子Dを発光サイリスタLTのゲート端子から切り離した場合と実質的に同等の状態となっている。
やがて等価回路56では、矢印wu2として示したように、カソード電流Ikが電流Ikvからさらに増加して電流Ikeになり、アノード・カソード間電圧Vaが再び上昇に転じて電圧Vaeとなる。また、このとき座標(Ike,Vae)により表される特性曲線U1上の点を特性点U1eとする。この特性点U1eは、発光サイリスタLTを発光駆動させる場合における最終的な動作点となっている。このとき発光サイリスタLTでは、図示しない駆動回路から供給される駆動電流(図4における電流Ioutに相当する)に等しい電流Ikeが流れており、所定の光強度で発光する。
また図13(D)は、図13(C)と対応しており、発光サイリスタLTにおけるカソード電流Ikとゲート電流Igとの関係をグラフ化した特性曲線U2を表している。等価回路56では、発光サイリスタLTがターンオンを開始すると、カソード電流Ikが増加していくと共に、ゲート電流Igも増加していく。
やがて等価回路56では、カソード電流Ikが電流Ikpとなったときにゲート電流Igが電流Igpとなった後、カソード電流Ikが増加し続ける一方でゲート電流Igが減少していく。このため特性曲線U2は、カソード電流Ikが電流Ikpとなりゲート電流Igが電流Igpとなったときの特性点U2pがピークとなるような曲線を描いている。
このように発光サイリスタLTは、ターンオン動作において、カソード電流Ikについては単調に増加させるものの、アノード・カソード間電圧Vaについては上昇及び低下を交互に行い、ゲート電流Igについては増加させた後減少させるようになっている。
[1-8.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による画像形成装置1のプリントヘッド33に取り付けられる発光素子チップ73(図10)は、素子駆動領域82の-Y方向側において、X方向に関する約半分の範囲に付加領域83を設ける一方、残り半分の範囲に切欠空間87を設けた。その上でプリントヘッド33では、プリント配線板72の照射方向側に、複数の発光素子チップ73を左右方向に沿って1列に整列した状態で取り付けた(図7、図8及び図9)。
この発光素子チップ73を製造する場合、半導体ウェハでは、図12に示したように、2個の発光素子チップ73を1組の発光素子チップ組73Sとして、互いの付加領域83を相手方の切欠空間87に嵌め込むように配置した。これにより発光素子チップ73は、特許文献1の図11等に示されているように長方形状に構成される場合と比較して、同等の機能及び数量でなる発光サイリスタLT等を配置しながら、その面積を削減することができる。この結果、発光素子チップ73は、1枚の半導体ウェハから製造可能な数量(いわゆる取れ高)を増加させることができ、その製造効率を高めることができる。
これを他の観点から見ると、発光素子チップ73は、付加領域83におけるX方向に沿った長さを、発光素子チップ73の全長に対して約半分とし、詳細には半分よりも僅かに短くした。このため発光素子チップ73は、図11に示したように、2個の発光素子チップ73でなる発光素子チップ組73Sにおいて、外形を長方形状としながら、屈曲境界線BE1に沿ってディープドライエッチング法等によるダイシング処理が行われることにより、2個の発光素子チップ73を何れも過不足なく形成できる。
また発光素子チップ73(図10及び図11)は、付加領域83と切欠空間87との境界部分において、屈曲境界線BE1(図11)の屈曲箇所に丸みを持たせることにより、屈曲点88を曲線状に形成した。これにより発光素子チップ73は、該屈曲点88を折れ線状に形成した場合と比較して強度を高めることができ、応力が集中することによる破損を未然に防止できる。
ここで、本実施の形態によるプリントヘッド33との比較用に、図9と対応する図14(A)に示すように、仮想的なプリントヘッド133を想定する。このプリントヘッド133は、例えば特開平8-216448号公報の図10等に開示された構成と類似したものである。
この仮想的なプリントヘッド133は、プリント配線板72(図7、図8及び図9)と対応するプリント配線板172を有しており、その照射方向側の表面に複数の発光素子チップ173が取り付けられている。図10と対応する図14(B)に示すように、発光素子チップ173は、本実施の形態による発光素子チップ73と対応するものであるが、その構成が相違している。
具体的に発光素子チップ173は、全体としてX方向に長くY方向に短い長方形状となっており、本実施の形態による発光素子チップ73(図10)のような付加領域83や切欠空間87を有していない。この発光素子チップ173の表面には、素子駆動領域182、第1端子パッド領域184及び第2端子パッド領域185が設けられている。このうち素子駆動領域182は、本実施の形態における素子駆動領域82と対応するものであり、発光素子群91及び駆動回路群92にそれぞれ相当する発光素子群191及び駆動回路群192を有している。この素子駆動領域182におけるX方向に沿った長さL11、すなわち発光素子群191及び駆動回路群192におけるX方向に沿った長さL11は、素子駆動領域82における長さL1と同等となっている。
第1端子パッド領域184及び第2端子パッド領域185は、本実施の形態における端子パッド領域84と対応するものであり、複数の端子パッド94と対応する複数の端子パッド194が、2箇所の領域に分けて配置されている。第1端子パッド領域184及び第2端子パッド領域185は、それぞれX方向に沿った長さが長さL12及び長さL13となっている。
この発光素子チップ173は、特許文献1の図11等に開示された構成と比較して、何も配置されていない部分、すなわち無駄な部分が少ないため、本実施の形態による発光素子チップ73の場合と同様、半導体ウェハから製造する場合の数量(取れ高)を増加させることができる。
しかしながら、この発光素子チップ173では、発光素子群191のX方向側及び-X方向側にそれぞれ第1端子パッド領域184及び第2端子パッド領域185が設けられている。このためプリント配線板172では、図14(A)に示したように、複数の発光素子チップ173を前後方向(いわゆる副走査方向)に沿って2列に分けて交互に、すなわちいわゆる千鳥状に配置することにより、各発光素子群191を左右方向、すなわち主走査方向に関して隙間無く配置している。
すなわちプリントヘッド133では、2列に分けて交互に配置された発光素子チップ173が、それぞれの発光素子群191を2本の仮想的な基準線N11及びN12に交互に合わせるようにして、千鳥状に配置される。説明の都合上、以下では発光素子群181が基準線N11に沿った複数の発光素子チップ173を第1群と呼び、また発光素子群191が基準線N12に沿った複数の発光素子チップ173を第2群と呼ぶ。
プリントヘッド133では、発光素子チップ173における製造上の制約やプリント配線板172に対する取付工程の制約等により、2本の基準線N11及びN12が前後方向に沿ってある程度の長さでなる距離DNだけ離れている。すなわちプリントヘッド133では、発光素子チップ173を前後方向に2列に分けて配置する必要があるため、1列に配置する場合と比較して、プリント配線板172の前後長が大幅に長くなってしまう。この結果、プリントヘッド133は、その前後長が比較的長くなり、画像形成装置全体の大型化を招くおそれがあった。
またプリントヘッド133は、例えば感光体ドラム38(図2)の周側面に主走査方向に沿った直線状の静電潜像を形成する場合、第1群と第2群との間で、各発光素子チップ173を発光させるタイミングに時間差を設ける必要が生じ、且つこの時間差を該感光体ドラム38における周側面の進行速度に合わせる必要がある。このためこのプリントヘッド133に対応する制御部等では、第1群と第2群との間で、各発光素子チップ173を発光させるタイミングに適切な時間差を生じさせるよう、高精度な制御が必要となる。
さらにプリントヘッド133では、基準線N11及びN12の間隔である距離DNがある程度の長さとなる。このため該プリントヘッド133を制御する制御部等においては、画像データを記憶させているメモリから1ライン分の画像データを読み出して各発光素子チップ173へ供給する場合に、該メモリ上のアドレスが互いに離れた複数箇所から各画像データを読み出す必要が生じる。そうすると制御部等では、連続したアドレスからデータを順次読み出して転送するバースト転送を行うことができず、該データの読出に時間を要し、また制御部等における読出処理の負荷も比較的高くなる。
そのうえ発光素子チップ173では、駆動回路群192が本実施の形態による駆動回路群92と同様、複数のフリップフロップFF(図4)によるシフトレジスタとして構成されている。このシフトレジスタを構成する各フリップフロップFFは、図4に示したように、例えばX方向側が下段となっており、X方向に沿って順次シフトするように、すなわちシフト方向がX方向と一致するように、構成されている。
しかしながらプリントヘッド133では、基準線N11及びN12の間隔である距離DNを極力小さく抑える等の目的で、照射方向側(すなわち紙面の手前側)から見て、第1群の発光素子チップ173に対し第2群の発光素子チップ173が半回転した姿勢で取り付けられている。すなわちプリントヘッド133では、矢印AN1及びAN2として示すように、第1群と第2群との間で、発光素子チップ173におけるシフト方向が互いに反対方向となっている。
これによりプリントヘッド133を制御する制御部等においては、例えば第1群の発光素子チップ173に対してメモリ上のアドレスと同じ順序で画像データを順次供給できる一方、第2群の発光素子チップ173に対してメモリ上のアドレスと反対の順序で画像データを順次供給する必要がある。このためこの制御部等では、第2群の発光素子チップ173に供給すべき画像データについては、例えばメモリ上のアドレスを逆順に辿るように順次読み出す、或いはメモリ上から順次読み出した画像データを逆順に並べ替える処理を行う、といった複雑な処理が必要となってしまう。
このように仮想的なプリントヘッド133では、発光素子チップ173の面積を比較的小さく抑え得る一方で、プリント配線板172の前後長を増加させ、また画像データに関する処理を複雑化する等、様々な問題を新たに引き起こしてしまう。
これに対し、本実施の形態による発光素子チップ73(図10)が取り付けられたプリントヘッド33(図7)では、発光素子チップ73の発光素子群91が左右方向(すなわち主走査方向)に沿った仮想的な基準線N2に合わせるように、互いに隙間を形成すること無く、一直線状に配置されている(図9)。
このためプリントヘッド33を制御する制御部3(図4)等では、画像データを記憶しているメモリから該画像データを読み出す場合に、1ライン分を順次読み出せば良い。すなわち制御部3等では、メモリ上の画像データを離散した複数のアドレスから読み出すことや逆順に読み出すこと、或いはアドレス順に読み出したデータを逆順に並べ替えること等の処理を何ら行う必要が無く、前述したバースト転送を行うこともできる。
また発光素子チップ73では、基準線N11及びN12の間隔である距離DN(図14)を小さく抑える、といったことが必要無いため、発光素子群91をY方向の端部に寄せて配置する必要が無く、該発光素子群91の配置に関する自由度を、発光素子チップ173(図14(B))の場合よりも高めることができる。例えば発光素子チップ73では、図10に示したように、Y方向に関して駆動回路群92と付加領域83との間に発光素子群91を配置した構成を実現できる。
さらにプリントヘッド33では、発光素子チップ73を前後方向に関して1列に配置すれば良いため(図9)、プリント配線板72における前後方向の長さを比較的短く抑えることができ、該プリントヘッド33の小型化を図ることができる。
そのうえ発光素子チップ73(図10)では、付加領域83に第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86をそれぞれ設け、それぞれに第1位置マーク95及び第2位置マーク96を形成した。
プリントヘッド33は、ダイボンディングによりプリント配線板72に対し各発光素子チップ73を取り付ける製造工程において、左右方向に沿った仮想的な基準線N1に対し、第1位置マーク95及び第2位置マーク96を合わせるようにして、各発光素子チップ73の位置が調整される。これによりプリントヘッド33では、プリント配線板72の左右方向そった基準線N2に合わせて、各発光素子チップ73の発光素子群91、すなわち各発光サイリスタLTを整列させることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による画像形成装置1のプリントヘッド33は、発光素子チップ73における素子駆動領域82の-Y方向側において、X方向に関する約半分の範囲に付加領域83を設けて端子パッド94等を配置する一方、残り半分の範囲に切欠空間87を設けた。この発光素子チップ73は、製造時に、半導体ウェハ上において2個を1組の発光素子チップ組73Sとして、互いの付加領域83を相手方の切欠空間87に嵌め込むように配置した。これにより発光素子チップ73は、長方形状に構成される場合よりも面積を削減することができ、1枚の半導体ウェハから製造可能な数量(取れ高)を増加させることができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による画像形成装置201(図1)は、第1の実施の形態による画像形成装置1と比較して、制御部3及びプリントヘッド33(図2及び図7)に代わる制御部203及びプリントヘッド233を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。プリントヘッド233(図7)は、第1の実施の形態によるプリントヘッド33と比較して、図9と対応する図15に示すように、発光素子チップ73に代わる発光素子チップ273を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[2-1.発光素子チップの構成]
発光素子チップ273は、図10と対応する図16に示すように、板状のチップ基体273Bを中心に構成されている。因みにこの第2の実施の形態では、第1の実施の形態におけるエピタキシャルフィルム73F(図8、図9及び図10)が用いられておらず、チップ基体273Bの表面に発光サイリスタLT等が直接形成されている。
また発光素子チップ273における照射方向側の表面であるチップ基体表面273BSは、大きく分けて素子駆動領域282、第1付加領域283及び第2付加領域286により構成されている。第1付加領域283及び第2付加領域286は、何れも素子駆動領域282の-Y方向側へ突出したような形状となっている。他の観点から見れば、発光素子チップ273では、第1の実施の形態において一体化されていた付加領域83を、2個に分割して第1付加領域283及び第2付加領域286としている。
第2付加領域286は、X方向側の端部に位置している。これに伴い、第1付加領域283及び第2付加領域286の間には、第1切欠空間287が形成されている。また第1付加領域283における-X方向側の端部は、素子駆動領域282における-X方向側の端部よりもX方向に側離れた位置にある。これにより第1付加領域283の-X方向側には、第2切欠空間290が形成されている。換言すれば、発光素子チップ273は、素子駆動領域282の-X方向側において、2箇所が-Y方向へ突出したような形状、若しくは2箇所が素子駆動領域282側へ凹んだような形状となっている。他の観点から見れば、発光素子チップ273では、第1の実施の形態において一体化されていた切欠空間87を、2個に分割して第1切欠空間287及び第2切欠空間290としている。
素子駆動領域282は、第1の実施の形態における発光素子群91及び駆動回路群92(図10)に相当する発光素子群291及び駆動回路群292が設けられ、さらに第1の実施の形態と同様のマイクロビア列93が設けられている。
第1付加領域283は、端子パッド領域284及び第1位置マーク領域285により構成されている。端子パッド領域284は、第1の実施の形態における端子パッド領域84と同様、5個の端子パッド94が設けられている。第1位置マーク領域285は、第1の実施の形態における第1位置マーク領域85と同様、第1位置マーク95が設けられている。第2付加領域286は、第1の実施の形態における第2位置マーク領域86に相当しており、第2位置マーク96が設けられている。
また以下では、第1の実施の形態と同様に、チップ基体273BのX方向に関する各部の長さをそれぞれ定義する。チップ基体273Bの全長を、第1の実施の形態と同様に長さL1と定義し、第1付加領域283の長さL22及び第2付加領域286の長さL23をそれぞれ定義する。また第1切欠空間287の長さL24及び第2切欠空間290の長さL25もそれぞれ定義する。さらに、第1の実施の形態と同様に、端子パッド領域284の長さL4及び第1位置マーク領域285の長さL5もそれぞれ定義する。
ここで、第1付加領域283の長さL22は、第1切欠空間287の長さL24と概ね同等であるものの、詳細には該長さL24よりも僅かに短くなっている。また第2付加領域286の長さL23は、第2切欠空間290の長さL25と概ね同等であるものの、詳細には該長さL25よりも僅かに短くなっている。さらに発光素子チップ273では、第1付加領域283の長さL22及び第2付加領域286の長さL23を加算した値が、第1切欠空間287の長さL24及び第2切欠空間290の長さL25を加算した値と概ね同等であるものの、詳細には僅かに短くなっている。すなわち発光素子チップ273では、X方向に関して、長さL22及び長さL23の加算値が、該発光素子チップ273の全長である長さL1の半分以下となっている。
このように発光素子チップ273のチップ基体273Bは、X方向に沿った長辺のうち一方が、第1の実施の形態と異なる形状に屈曲した折れ線状に形成されている。またチップ基体273Bでは、素子駆動領域282に対し-Y方向側に突出した位置に、端子パッド領域284及び第1位置マーク領域285でなる第1付加領域283と、第2付加領域286とがそれぞれ設けられている。
因みにプリントヘッド233では、第1の実施の形態と同様、各発光素子チップ273における第1位置マーク95及び第2位置マーク96の双方が、主走査方向である左右方向に沿った仮想的な基準線N21(図15)上に配置される。これによりプリントヘッド233では、プリント配線板72に対し、各発光素子チップ273の発光サイリスタLTを、左右方向と平行に、且つ前後方向の位置を揃えて一直線状に整列された状態、すなわち左右方向に沿った仮想的な基準線N22に合わせた状態とすることができる。
[2-2.発光素子チップの製造]
次に、発光素子チップ273の製造について説明する。発光素子チップ273は、第1の実施の形態による発光素子チップ73と類似した手法により製造される。すなわち発光素子チップ273は、図11と対応する図17に示すように、2個の発光素子チップ273(例えば発光素子チップ273J及び273K)を1組として(以下これを発光素子チップ組273Sと呼ぶ)、半導体ウェハ上に複数配置される。
このとき半導体ウェハでは、発光素子チップ組273Sを構成する発光素子チップ273の一方(例えば発光素子チップ273Kとする)を他方(例えば発光素子チップ273Jとする)に対してXY平面内で半回転させた外形とする。これに加えて半導体ウェハでは、一方の第1付加領域283を他方の第1切欠空間287に嵌め込むと共に、一方の第2付加領域286を他方の第2切欠空間290に嵌め込むようにして、長方形状の領域内に配置される。すなわち発光素子チップ組273Sの各発光素子チップ273は、双方の第1付加領域283及び第2付加領域286を、何れも概ねX方向に沿って並べた状態で配置されている。
また半導体ウェハでは、やはり第1の実施の形態と同様、複数の発光素子チップ組273Sが、X方向に関して周期PX毎に並び、且つY方向に関して周期PY毎に並ぶよう、間隔d1を隔てながら、格子状に配置されている。また半導体ウェハでは、各発光素子チップ組273Sにおいて、2個の発光素子チップ273同士の境界が、クランク状に屈曲された折れ線状の屈曲境界線BE2により表される。
この半導体ウェハは、周知の露光技術やエッチング技術等が用いられることにより、発光素子群291及び駆動回路群292の各素子等が形成された後、周知のダイシング技術により、各発光素子チップ73が個片化される。具体的に半導体ウェハは、例えば周知のブレードダイシングによりX境界線BX及びY境界線BYに沿って分離され、また周知のディープドライエッチング法やレーザーダイシング法等により屈曲境界線BE2に沿って折れ線状に分離される。
この屈曲境界線BE2は、6箇所の屈曲箇所において、第1の実施の形態と同様、折れ線状ではなく曲線状に、すなわち丸みを帯びた状態で、曲げられている。このため各発光素子チップ273は、図16における-Y方向側の辺における屈曲箇所である屈曲点288及び289の近傍において、折れ線状ではなく曲線状に形成される。
[2-3.プリントヘッドの回路構成及び基本動作]
次に、プリントヘッド233の回路構成に関し、図4と対応する図18を参照しながら説明する。プリントヘッド233は、第1の実施の形態と同様の複数の発光サイリスタLT(LT1、LT2、…)を有するものの、フリップフロップFFやゲート駆動回路GDを有していない。プリントヘッド233は、これらに代えて自己走査サイリスタST(ST1、ST2、…)、ダイオードKD(KD1、KD2、…)及び抵抗KR(KR1、KR2、…)を有している。
このうち自己走査サイリスタSTは、発光サイリスタLTと基本的な構成や基本的な動作が同等であるものの、発光機能が必要でないため、例えば上層を金属膜で被覆する等の手法によって遮光されている。また説明の都合上、以下では、1個ずつの発光サイリスタLT、自己走査サイリスタST、ダイオードKD及び抵抗KRの組合せにより構成される回路を発光駆動回路LDS(LDS1、LDS2、…)とも呼ぶ。さらに以下では、プリントヘッド233の自己走査サイリスタST、ダイオードKD及び抵抗KRにより構成される回路をシフトレジスタ233Rと呼ぶ。このシフトレジスタ233Rは、第1の実施の形態におけるシフトレジスタ33R(図4)と対応するものである。
一方、制御部203には、プリントヘッド233の各発光駆動回路LDSを駆動制御する駆動制御回路250及びクロック駆動回路260が設けられている。駆動制御回路250は、第1の実施の形態における駆動制御回路50と一部同様に構成されており、外部からDRV ON-P信号の供給を受け、これを反転させた電位をデータ端子250Dに印加する。このデータ端子250Dは、プリントヘッド233側の端子233Dと接続されており、第1の実施の形態と同様、発光サイリスタLTのカソード電流が流入する端子となっている(詳しくは後述する)。
クロック駆動回路260は、端子CK1R、端子CK1C、端子CK2R及び端子CK2Cといった4個の端子を有しており、それぞれスリーステート出力を備えたバッファ回路(図示せず)に接続されている。すなわちこのバッファ回路は、CMOS出力駆動部を備えた回路であり、出力状態として、ハイレベル及びローレベルに加えて、ハイインピーダンス(Hi-Z)出力状態を有している。
端子CK1R及び端子CK1Cは、それぞれ抵抗R1A及びコンデンサC1Aの一端と接続されている。抵抗R1A及びコンデンサC1Aの他端は、互いに接続され、さらに端子CK1に接続されている。これと同様に、端子CK2R及び端子CK2Cは、それぞれ抵抗R2A及びコンデンサC2Aの一端と接続されている。抵抗R2A及びコンデンサC2Aの他端は、互いに接続され、さらに端子CK2に接続されている。
この端子CK1及びCK2は、それぞれプリントヘッド233側の端子233CK1及び233CK2と接続されている。制御部203は、シフトレジスタ233Rを動作させるための2種類のクロック信号SCK1及びSCK2を生成し、それぞれを端子CK1及びCK2から端子233CK1及び233CK2へ供給するようになっている(詳しくは後述する)。
一方、プリントヘッド233では、端子233CK1及び233CK2並びに端子233Dが、発光駆動回路LDSと接続されている。このうち端子233Dは、各発光サイリスタLTのカソード端子とそれぞれ接続されている。各発光サイリスタLTのアノード端子には、図示しない電源回路から電源電圧VDDがそれぞれ供給される。
各自己走査サイリスタSTのアノード端子には、図示しない電源回路から電源電圧VDDがそれぞれ供給される。奇数番目の自己走査サイリスタST(ST1、ST3、…)のカソード端子は、抵抗R1Bを介して端子233CK1と接続されている。また偶数番目の自己走査サイリスタST(ST2、ST4、…)のカソード端子は、抵抗R2Bを介して端子233CK2と接続されている。また各発光サイリスタLTのゲート端子は、シフトレジスタ233Rの端子233RQ(RQ1、RQ2、…)とそれぞれ接続されている。
各自己走査サイリスタSTのゲート端子は、それぞれ抵抗KRを介してグランドに接続されると共に、各ダイオードKDのカソード端子及び端子233RQとそれぞれ接続されている。各ダイオードKDのアノード端子は、前段の発光駆動回路LDSにおけるダイオードKDのカソード端子等と接続されている。ただし初段の発光駆動回路LDS1におけるダイオードKD1のアノード端子は、抵抗R2Bを介して端子233CK2と接続されている。
ここで、プリントヘッド233の各発光駆動回路LDSにおける基本的な動作について説明する。制御部203の駆動制御回路250は、第1の実施の形態における駆動制御回路50と同様、外部から供給される駆動指令信号DRV ON-P信号がローレベルになると、データ端子250Dをハイレベルとし、発光サイリスタLTのカソード端子を電源電圧VDDとほぼ等しい電位とする。
そうすると発光駆動回路LDSでは、発光サイリスタLTにおけるアノード・カソード端子間の電位差がほぼ0[V]となり、いわゆるゲート電流が発生しないため、駆動制御回路250のデータ端子250Dに流れ込む電流Ioutもほぼ0[A]となる。この結果、発光駆動回路LDSでは、発光サイリスタLTが発光しない(すなわち消灯した)非発光状態となる。
一方、駆動制御回路250は、駆動指令信号DRV ON-P信号(図示せず)がハイレベルになると、データ端子250Dがローレベルとなり、電源電圧VDDとの間に十分な電位差を生じる。これにより発光駆動回路LDSでは、発光サイリスタLTにおけるアノード・カソード端子間に十分な電位差が生じる。
この状態において発光駆動回路LDSは、発光サイリスタLTのゲート端子、すなわちシフトレジスタ233Rの端子233RQがハイレベルであれば、該発光サイリスタLTのゲート端子にトリガ電流が生じ、該発光サイリスタLTが発光した(すなわちターンオンした)発光状態となる。
因みに発光駆動回路LDSでは、第1の実施の形態と同様、このとき発光サイリスタLTのカソード端子に流れる電流が、駆動制御回路250のデータ端子250Dに流入する電流Ioutとなる。このため発光サイリスタLTは、この電流Ioutの大きさに応じた発光量で発光することになる。
[2-4.プリントヘッドにおける発光動作]
次に、プリントヘッド233における発光動作について、図12と対応する図19に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。ここでは、第1の実施の形態と同様、8個の発光駆動回路LDS1~LDS8に着目し、これらをそれぞれ発光させる場合を想定する。
まずクロック駆動回路260は、4個の端子CK1R、端子CK1C、端子CK2R及び端子CK2Cから、4種類の信号をそれぞれ出力する。これらの信号は、初期状態において、何れもハイレベルとなっている。
制御部203の端子CK1から出力されるクロック信号SCK1は、端子CK1Rから出力され抵抗R1Aを通過した信号と、端子CK1Cから出力されコンデンサC1Aを介した信号とを基に生成されるため、この初期状態においてハイレベルとなる。これと同様に、制御部203の端子CK2から出力されるクロック信号SCK2も、初期状態においてハイレベルとなる。
これによりプリントヘッド233では、奇数番目の自己走査サイリスタST及び偶数番目の自己走査サイリスタSTの双方において、カソード端子がハイレベルとなり、発光サイリスタLTが非発光状態(すなわちオフ状態)となる。
次にクロック駆動回路260は、時刻t11において、端子CK1Rをローレベルに立ち下げる。これにより制御部203では、端子CK1CからコンデンサC1A及び抵抗R1Aを介して端子CK1Rへ向かう充電電流が発生し、該コンデンサC1Aを徐々に充電して、その両端の電位差を上昇させていく。これに応じて端子CK1の電位は、部分w1のように下降していく。
その後、クロック駆動回路260は、時刻t12において端子CK1Cをローレベルに立ち下げると共に、端子CK1Rをハイインピーダンス状態とする。因みに図19では、このハイインピーダンス状態であることを、中電位の破線として示している。そうすると端子CK1では、コンデンサC1Aの充電電圧に起因して、部分w2のようにアンダーシュートが生じる。
またこのときクロック駆動回路260のスリーステート出力バッファ回路(図示せず)では、寄生ダイオードが形成されており、上述したアンダーシュートの発生によりこの寄生ダイオードに電流が流れる。これにより端子CK1では、負電圧がレベルクランプされ、アンダーシュート波形における極小部の電圧がほぼ-0.6[V]程度に止まる。その後、コンデンサC1Aは、自己放電により両端の電位差が減少していく。これにより端子CK1では、部分w2のアンダーシュートが時間の経過と共に解消していく。
このように端子CK1に部分w2のようなアンダーシュートが生じると、自己走査サイリスタST1では、アノード・カソード間に比較的大きな電圧が印加される。このとき端子CK2は、ハイレベルのままであるため、ダイオードKD1を介して自己走査サイリスタST1のゲート・カソード間に電流を生じさせる。これにより自己走査サイリスタST1は、この電流をトリガ電流として、ターンオンする。この自己走査サイリスタST1は、端子CK1の電位がハイレベルになるまで、ターンオンした状態(すなわちオン状態)を維持する。
次にクロック駆動回路260は、時刻t13において端子CK1Cをハイインピーダンス状態とし、且つ端子CK1Rをローレベルに立ち下げる。これにより端子CK1の電位は、グランドの電位とほぼ等しくなる。
その後、駆動制御回路250では、時刻t14においてDRV ON-P信号がハイレベルに切り替えられることにより、データ端子250Dがローレベルに遷移する。このとき自己走査サイリスタST1は、オン状態を継続しており、カソード・ゲート間に順電圧相当の電位差を生じている。このため自己走査サイリスタST1では、ゲート端子の電位がカソード端子の電位よりも上昇している。
自己走査サイリスタST1及び発光サイリスタLT1は、互いのゲート端子同士が接続されている。このため発光サイリスタLTは、ゲート端子の電位が自己走査サイリスタSTのゲート端子と同等となり、ゲート・カソード間に電流を発生させ、これをトリガ電流としてターンオンし、発光状態(すなわちオン状態)となる。この発光サイリスタLTの発光状態は、後の時刻t16において、駆動制御回路250に供給されるDRV ON-P信号がローレベルに立ち下げられてデータ端子250Dがハイレベルに遷移するまで継続する。
やがてクロック駆動回路260は、時刻t15において、端子CK2Rをローレベルに立ち下げる。これにより制御部203では、時刻t11において端子CK1に関して生じた各端子の電位の変化と同様の変化を、端子CK2に関する各端子について、それぞれ生じさせることになる。具体的に制御部203では、コンデンサC2Aが徐々に充電され、その両端の電位差を上昇させていく。これに応じて端子CK2の電位は、部分w3のように下降していく。
その後、クロック駆動回路260は、時刻t17において端子CK2Cをローレベルに立ち下げると共に、端子CK2Rをハイインピーダンス状態とする。そうすると端子CK2では、時刻t12における端子CK1の場合と同様に、コンデンサC2Aの充電電圧に起因して、部分w4のようにアンダーシュートが生じ、極小部の電圧がほぼ-0.6[V]程度に止まった後、時間の経過と共に解消されていく。
このように端子CK2に部分w4のようなアンダーシュートが生じると、自己走査サイリスタST2では、アノード・カソード間に比較的大きな電圧が印加される。このとき、端子CK2は、ハイレベルのままである。また自己走査サイリスタST1は、オン状態を継続しており、ゲート端子の電位がハイレベルのままとなっている。これにより自己走査サイリスタST1は、ダイオードKD2を介して自己走査サイリスタST2のゲート・カソード間に電流を生じさせ、この電流をトリガ電流としてターンオンさせる。この自己走査サイリスタST2は、端子CK2の電位がハイレベルになるまで、ターンオンした状態(すなわちオン状態)を維持する。
次にクロック駆動回路260は、時刻t18において端子CK2Cをハイインピーダンス状態とし、且つ端子CK2Rをローレベルに立ち下げる。これにより端子CK2の電位は、グランドの電位とほぼ等しくなる。またクロック駆動回路260は、この時刻t18において、端子CK1R及び端子CK1Cを、初期状態と同様にハイレベルに立ち上げる。これにより端子CK1の電位は、ハイレベルとなる。この結果、自己走査サイリスタST1は、ターンオフされる。
さらに駆動制御回路250は、時刻t19において、DRV ON-P信号がハイレベルに切り替えられることにより、データ端子250Dがローレベルに遷移する。このとき自己走査サイリスタST2は、オン状態を継続しており、カソード・ゲート間に順電圧相当の電位差を生じている。このため自己走査サイリスタST2では、ゲート端子の電位がカソード端子の電位よりも上昇している。
自己走査サイリスタST2及び発光サイリスタLT2は、互いのゲート端子同士が接続されている。このため発光サイリスタLT2は、ゲート端子の電位が自己走査サイリスタST2のゲート端子と同等となり、ゲート・カソード間に電流を発生させ、これをトリガ電流としてターンオンし、発光状態(すなわちオン状態)となる。この発光サイリスタLT2の発光状態は、後の時刻t21において、駆動制御回路250に供給されるDRV ON-P信号がローレベルに立ち下げられてデータ端子250Dがハイレベルに遷移するまで継続する。
その後、クロック駆動回路260は、時刻t20において、端子CK1Rをローレベルに立ち下げる。これにより制御部203では、時刻t11において生じた各端子の電位の変化と同様の変化を、それぞれ生じさせることになる。具体的に制御部203では、コンデンサC1Aを徐々に充電され、その両端の電位差を上昇させていく。これに応じて端子CK1の電位は、部分w5のように下降していく。
その後、クロック駆動回路260は、時刻t22において端子CK1Cをローレベルに立ち下げると共に、端子CK1Rをハイインピーダンス状態とする。そうすると端子CK1では、時刻t12と同様に、コンデンサC1Aの充電電圧に起因して、部分w6のようにアンダーシュートが生じ、極小部の電圧がほぼ-0.6[V]程度に止めた後、時間の経過と共に解消されていく。
このように端子CK1に部分w2のようなアンダーシュートが生じると、自己走査サイリスタST3では、アノード・カソード間に比較的大きな電圧が印加される。このとき端子CK2は、ハイレベルのままであるため、ダイオードKD3を介して自己走査サイリスタST3のゲート・カソード間に電流を生じさせる。これにより自己走査サイリスタST3は、この電流をトリガ電流として、ターンオンする。この自己走査サイリスタST3は、端子CK1の電位がハイレベルになるまで、ターンオンした状態(すなわちオン状態)を維持する。
次にクロック駆動回路260は、時刻t23において端子CK1Cをハイインピーダンス状態とし、且つ端子CK1Rをローレベルに立ち下げる。これにより端子CK1の電位は、グランドの電位とほぼ等しくなる。またクロック駆動回路260は、この時刻t23において、端子CK2R及び端子CK2Cを、初期状態と同様にハイレベルに立ち上げる。これにより端子CK2の電位は、ハイレベルとなる。この結果、自己走査サイリスタST2は、ターンオフされる。
このように制御部203は、クロック駆動回路260により端子CK1及びCK2の電位を時間の経過と共に変化させることにより、互いに位相が異なる2種類のクロック信号SCK1及びSCK2を生成してプリントヘッド233に供給する。プリントヘッド233では、クロック信号SCK1が奇数番目の自己走査サイリスタSTに供給され、クロック信号SCK2が偶数番目の自己走査サイリスタSTに供給されることにより、各自己走査サイリスタSTを順次、すなわち自己走査サイリスタST1、ST2、ST3、…の順序でターンオンさせること(オン状態にすること)ができる。
自己走査サイリスタSTにおけるゲート端子の電位は、オン状態であればハイレベルとなり、オフ状態であればグランド電位とほぼ等しいローレベルとなる。また各自己走査サイリスタSTのゲート端子は、シフトレジスタ233Rにおける各端子233RQと接続されている。
このためプリントヘッド233では、シフトレジスタ233Rの各端子233RQから出力される出力信号SRQ(SRQ1、SRQ2、…)を、第1の実施の形態における各フリップフロップFFからの出力信号SQ(図4、図12)と同様に、順次、一時的にハイレベルに切り替わるよう、変化させることができる。これによりプリントヘッド233は、第1の実施の形態と同様に、シフトレジスタ233Rからの出力信号SRQを点灯命令と見なして、選択された発光サイリスタLTを順次点灯させることができる。
[2-5.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による画像形成装置201のプリントヘッド233に取り付けられる発光素子チップ273(図16)は、素子駆動領域282の-Y方向側において、第1付加領域283及び第2付加領域286を設けると共に第1切欠空間287及び第2切欠空間290を形成した。
この発光素子チップ273を製造する場合、半導体ウェハでは、図17に示したように、2個の発光素子チップ273を1組の発光素子チップ組273Sとして、互いの第1付加領域283を相手方の第1切欠空間287に嵌め込むと共に、互いの第2付加領域286を相手方の第2切欠空間290に嵌め込むように配置した。これにより発光素子チップ273は、第1の実施の形態と同様に、特許文献1の図11等に示されているように長方形状に構成される場合と比較して、同等の機能及び数量でなる発光サイリスタLT等を配置しながら、その面積を削減することができる。この結果、発光素子チップ273は、やはり第1の実施の形態と同様、1枚の半導体ウェハから製造可能な数量(取れ高)を増加させることができる。
また発光素子チップ273(図16)は、第2付加領域286をチップ基体273BにおけるX方向側の端部近傍に配置した。このためプリントヘッド233では、複数の発光素子チップ273をプリント配線板72上に左右方向に沿って整列配置する場合に、互いに隣接する発光素子チップ273同士の間で、第1位置マーク95と第2位置マーク96とを、第1の実施の形態よりも格段に近接させることができる。
これによりプリントヘッド233では、その製造過程において、作業者若しくはダイスボンディング装置が、互いに隣接する発光素子チップ273の第1位置マーク95及び第2位置マーク96を撮像装置により拡大して撮像しながらそれぞれの位置を調整する場合に、両者を撮像範囲内に収めたまま、その拡大率を格段に高めることができる。
すなわち第1の実施の形態によるプリントヘッド33では、互いに隣接する発光素子チップ73同士の間で第1位置マーク95及び第2位置マーク96を同時に撮像する場合、図9に示した撮像範囲枠FP1のように、撮像範囲を比較的広げなければならない。このためプリントヘッド33では、その拡大率が比較的低くなり、画像上で第1位置マーク95等を高解像度で位置検出することができず、位置精度の確保が困難であった。
これに対し第2の実施の形態によるプリントヘッド233では、図16に示す撮像範囲枠FP2のように、撮像範囲を比較的狭めることができる。この場合、プリントヘッド233では、拡大率を高めることができるので、画像上で第1位置マーク95等を鮮明に表示でき、各発光素子チップ273の位置精度を容易に高めることができる。
ところで発光素子チップ273は、半導体ウェハからダイシング等により個別に分離された場合や、プリント配線板72上に移動される場合、コレットと呼ばれる治具により運搬される。図20に模式的な-X方向の側面図を示すように、コレット300は、吸引機構301によりチップ基体表面273BS側からZ方向へ空気を吸引すると共に、該チップ基体表面273BSにおけるY方向側及び-Y方向側それぞれの端部(すなわち稜線)を傾斜面302及び303にそれぞれ当接させた状態で吸着し、運搬する。このためコレット300は、チップ基体表面273BSと直接接触することによる発光サイリスタLT等の損傷を未然に防止することができる。
ここで、上述した第1の実施の形態による発光素子チップ73(図10)は、-Y方向側においてX方向側の約半分が切り欠かれた形状であった。これによりコレット300は、傾斜面303を、発光素子チップ73におけるX方向側の約半分の範囲に対し当接させることできないため、該発光素子チップ73を安定的に吸着できない可能性、例えば図10における時計回りに回転させてしまう可能性等があった。
これに対し、第2の実施の形態による発光素子チップ273(図16)は、チップ基体表面273BSの-Y方向側において、-X方向側の端部近傍に第1付加領域283を配置すると共に、X方向側の端部に第2付加領域286を配置している。このためコレット300は、傾斜面303を、発光素子チップ273における-X方向側の端部近傍及びX方向側の端部近傍の双方に対してそれぞれ当接させることができ、該発光素子チップ273を安定的に吸着して運搬することができる。
さらにプリントヘッド233では、CMOS等を用いることなく、自己走査サイリスタST、ダイオードKD及び抵抗KR等により発光駆動回路LDSを構成した。このため発光素子チップ273は、第1の実施の形態のようなエピタキシャルフィルム73Fを貼り付ける必要が無く、モノリシックな半導体として、比較的容易に製造することができ、その製造コストを比較的低廉に抑えることができる。
その他の点においても、第2の実施の形態によるプリントヘッド233及び発光素子チップ273は、第1の実施の形態によるプリントヘッド33及び発光素子チップ73とそれぞれ同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による画像形成装置201のプリントヘッド233は、発光素子チップ273における素子駆動領域282の-Y方向側に、第1付加領域283及び第2付加領域286を設けて端子パッド94等を配置すると共に、第1切欠空間287及び第2切欠空間290を形成した。この発光素子チップ273は、製造時に、半導体ウェハ上において2個を1組の発光素子チップ組273Sとして、互いの第1付加領域283を相手方の第1切欠空間287に嵌め込むと共に、互いの第2付加領域286を相手方の第2切欠空間290に嵌め込むように配置した。これにより発光素子チップ273は、長方形状に構成される場合よりも面積を削減することができ、1枚の半導体ウェハから製造可能な数量(取れ高)を増加させることができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による画像形成装置401(図1)は、第1の実施の形態による画像形成装置1と比較して、プリントヘッド33(図2及び図7)に代わるプリントヘッド433を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。プリントヘッド433(図7)は、第1の実施の形態によるプリントヘッド33と比較して、発光素子チップ73に代わる発光素子チップ473を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
発光素子チップ473は、図10と対応する図21に示すように、第1の実施の形態による発光素子チップ73と比較して、第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86に代わる第1位置マーク領域485及び第2位置マーク領域486を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
第1位置マーク領域485及び第2位置マーク領域486には、第1の実施の形態と同様の第1位置マーク95及び第2位置マーク96がそれぞれ設けられている。ただしこの第3の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、発光素子群91の各発光サイリスタLTから第1位置マーク95までのY方向に沿った距離である長さLY11が、第2位置マーク96までの距離である長さLY12よりも短くなっている。因みに第1位置マーク95及び第2位置マーク96における位置は、2本の直線の交点が基準となっている。
プリントヘッド433では、図9と対応する図22に示すように、その製造時に、プリント配線板72上において、所定の撮像画像上で左右方向に沿った仮想的な基準線N41に対し、第1位置マーク95及び第2位置マーク96を合わせるように、各発光素子チップ473の位置や傾き等が調整される。これによりプリントヘッド433では、前後方向に関して、各発光素子群91の左端が仮想的な基準線N42上に位置する一方、該発光素子群91の右端が該基準線N42よりも前側にある仮想的な基準線N43上に位置している。この結果、プリントヘッド433では、各発光素子チップ473における発光素子群91の整列方向を、左右方向に対して傾斜させること、詳細にはX方向側(図21)の発光サイリスタLTがより前側に位置するように配置することができる。
ところで、第1の実施の形態によるプリントヘッド33では、上述したように、制御部3(図4)の駆動制御回路50により、クロック信号SCKに従って、複数の発光サイリスタLTがX方向に沿って順次点灯するよう制御する(図12)。このためプリントヘッド33では、クロック信号SCKの周期が比較的長い場合等に、1個の発光素子チップ473において初段の発光サイリスタLTが発光してから最終段の発光サイリスタLTが発光するまでにある程度の時間を要し、その間に、回転する感光体ドラム38の周側面がある程度進行してしまう。
この場合、プリントヘッド33では、例えば左右方向に沿った直線を描くように発光素子チップ73の各発光サイリスタLTを順次発光させたとしても、感光体ドラム38の周側面には、左右方向に対して傾斜した直線の静電潜像が形成される恐れがあった。
これに対し、第3の実施の形態によるプリントヘッド433では、各発光素子チップ473における発光素子群91の整列方向を左右方向に対して傾斜させており、初段の発光サイリスタLTよりも最終段の発光サイリスタLTを前側に位置させている(図22)。
特にプリントヘッド433では、発光素子チップ473における発光素子群91の整列方向、すなわち左右方向に対する傾斜角度を、クロック信号SCKの周期、発光サイリスタLTの配列方向に沿った配置間隔、及び感光体ドラム38(図2)の周側面における走行速度に応じて適切に設定した。具体的には、互いに隣接する発光サイリスタLT同士の間における前後方向に沿った距離を、クロック信号SCKにおける1周期の時間に感光体ドラム38の周側面が走行する距離と一致させるようにした。
これにより制御部3は、画像データを走査方向に沿ってプリントヘッド433へ順次供給するだけで、感光体ドラム38の周側面に対し、走査方向である左右方向に沿った静電潜像を形成することができる。この結果、画像形成装置401では、用紙Pに対し高品質な画像を形成(すなわち印刷)することができる。
また発光素子チップ473は、X方向と平行に発光素子群91を配置しているため、X方向に対し発光素子群91を傾斜させる場合と比較して、Y方向の長さを短く抑えることができる。すなわち発光素子チップ473は、半導体ウェハから製造可能な数を減少させることなく、効率良く製造することができる。
さらにプリントヘッド433では、製造時に用いる撮像画像上で基準線を傾斜させるのではなく、発光素子チップ473において第1位置マーク95及び第2位置マーク96のY方向に関する位置を相違させるようにした(図21)。このためプリントヘッド433では、左右方向に沿った基準線N41に各位置マークを合わせるように発光素子チップ473の位置や角度等を調整させるだけで、各発光素子チップ473の前後方向に関する位置を揃えたまま、発光素子群91の整列方向を所望の角度に傾斜させることができる。
その他の点においても、第3の実施の形態によるプリントヘッド433及び発光素子チップ473は、第1の実施の形態によるプリントヘッド33及び発光素子チップ73とそれぞれ同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による画像形成装置401のプリントヘッド433は、発光素子チップ473における素子駆動領域82の-Y方向側において、約半分の範囲に付加領域83を設けて端子パッド94等を配置すると共に、残り半分の範囲に切欠空間87を設けた。また発光素子チップ473は、第1位置マーク領域485及び第2位置マーク領域486において、第1位置マーク95及び第2位置マーク96のY方向に関する位置を相違させた。これによりプリントヘッド433では、左右方向に沿った基準線N41に対し発光素子チップ473の第1位置マーク95及び第2位置マーク96を合わせるだけで、発光素子群91の整列方向を傾斜させることができ、用紙Pに形成する画像の品質を高めることができる。
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態による画像形成装置501(図1)は、第1の実施の形態による画像形成装置1と比較して、プリントヘッド33(図2及び図7)に代わるプリントヘッド533を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。プリントヘッド533(図7)は、第1の実施の形態によるプリントヘッド33と比較して、発光素子チップ73に代わる発光素子チップ573を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
発光素子チップ573は、図16と対応する図23に示すように、第2の実施の形態による発光素子チップ273と比較して、第1位置マーク領域285及び第2付加領域286に代わる第1位置マーク領域585及び第2付加領域586を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
第1位置マーク領域585及び第2付加領域586は、第1の実施の形態と同様の第1位置マーク95及び第2位置マーク96がそれぞれ設けられている。またこの第4の実施の形態では、第3の実施の形態(図21)と同様、発光素子群91の各発光サイリスタLTから第1位置マーク95までのY方向に沿った距離である長さLY21が、第2位置マーク96まで距離である長さLY22よりも短くなっている。
プリントヘッド533では、図16及び図22と対応する図24に示すように、その製造時に、プリント配線板72上において、所定の撮像画像上で左右方向に沿った仮想的な基準線N51に対し、第1位置マーク95及び第2位置マーク96を合わせるように、各発光素子チップ573の位置や傾き等が調整される。これによりプリントヘッド533では、前後方向に関して、各発光素子群291の左端が仮想的な基準線N52上に位置する一方、該発光素子群291の右端が該基準線N52よりも前側にある仮想的な基準線N53上に位置している。この結果、プリントヘッド533では、第3の実施の形態と同様に、各発光素子チップ573における発光素子群91の整列方向を、左右方向に対して傾斜させることができる。
これによりプリントヘッド533は、第3の実施の形態と同様に、画像データを走査方向に沿ってプリントヘッド533へ順次供給するだけで、感光体ドラム38(図2)の周側面に対し、走査方向である左右方向に沿った静電潜像を形成することができる。この結果、画像形成装置501では、やはり第3の実施の形態と同様に、用紙Pに対し高品質な画像を形成(すなわち印刷)することができる。
その他の点においても、第4の実施の形態によるプリントヘッド533及び発光素子チップ573は、第2の実施の形態によるプリントヘッド233及び発光素子チップ273とそれぞれ同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第4の実施の形態による画像形成装置501のプリントヘッド533は、発光素子チップ573における素子駆動領域282の-Y方向側に、第1付加領域283及び第2付加領域586を設けて端子パッド94等を配置すると共に、第1切欠空間287及び第2切欠空間290を形成した。また発光素子チップ573は、第1位置マーク95及び第2位置マーク96のY方向に関する位置を相違させた。これによりプリントヘッド533では、左右方向に沿った基準線N51に対し発光素子チップ573の第1位置マーク95及び第2位置マーク96を合わせるだけで、発光素子群91の整列方向を傾斜させることができ、用紙Pに形成する画像の品質を高めることができる。
[5.第5の実施の形態]
第5の実施の形態による画像形成装置601(図1)は、第1の実施の形態による画像形成装置1と比較して、プリントヘッド33(図2及び図7)に代わるプリントヘッド633を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[5-1.プリントヘッドの構成]
図25(A)及び(B)に模式的な断面図を示すように、プリントヘッド633は、第1の実施の形態によるプリントヘッド33と一部類似した構成を有している。因みに図25(B)は、図7と同様に前後方向に沿った切断面による断面図を表しており、図25(A)は左右方向に沿った切断面による断面図を表している。
露光装置としてのプリントヘッド633は、ホルダ76に代わるホルダ676に対して、プリント配線板672が接着剤677により取り付けられると共に、ロッドレンズアレイ79が接着剤678により取り付けられている。すなわち第5の実施の形態では、第1の実施の形態におけるベース部材71並びにクランプ部材77及び78が省略され、これに代えて接着剤677及び678が用いられている。
プリント配線板672における照射方向側の表面である取付面672Sには、例えば26個のように多数の発光素子チップ673が、接着剤674により、左右方向に沿って1列に整列された状態で取り付けられている。図26に示すように、被駆動素子チップとしての発光素子チップ673は、第1~第4の実施の形態とは異なり、チップ基体673Bが直方体状に形成されている。すなわち発光素子チップ673の長辺は、クランク状に屈曲しておらず、直線状となっている。
また発光素子チップ673には、第1の実施の形態(図8及び図9等)と同様、チップ基体673Bにおける照射方向側の表面にエピタキシャルフィルム73Fが取り付けられている。このエピタキシャルフィルム73Fには、やはり第1の実施の形態と同様、例えば192個のように多数の発光サイリスタLTが左右方向に沿って整列した状態で形成されている。
因みにプリント配線板672の反照射方向側には、コネクタ671が取り付けられている。コネクタ671は、画像形成装置601(図1)内に設けられた所定の接続ケーブル(図示せず)が接続されることにより、制御部3(図4)とプリントヘッド633とを電気的に接続する。
さらに各発光素子チップ673には、チップ基体673Bにおける照射方向側(すなわち下側)の表面であって後側の長辺近傍となる箇所に、10個の端子パッド673Pが設けられている。端子パッド673Pは、全体としてチップ基体673Bにおける後側の長辺に沿って一列に整列している。また10個の端子パッド673Pは、4個、2個及び4個のように3群に分割されており、各群の間にある程度の隙間が形成されている。各端子パッド673Pは、後述するように、プリント配線板672(図25)との間で、10本のボンディングワイヤ75により、それぞれ電気的に接続される。
プリントヘッド633は、ホルダ676の内側面に当接するスプリング631により照射方向へ、すなわち感光体ドラム38の方向へ付勢され、該ホルダ676の照射方向側をスペーサ632に当接させている。スペーサ632は、上下方向の長さが予め所定の長さに調整されており、照射方向側の端部を感光体ドラム38の周側面に当接させている。さらにプリントヘッド633は、ホルダ676に対するロッドレンズアレイ79の取付位置が適切に調整された上で、接着剤678により固定されている。
このためプリントヘッド633は、ロッドレンズアレイ79の各レンズにおける反照射方向側の焦点を各発光サイリスタLTに合わせると共に、照射方向側の焦点を感光体ドラム38の周側面に合わせることができる。すなわちプリントヘッド633は、各発光サイリスタLTから発散光として出射された光を、ロッドレンズアレイ79の各レンズにより集光し、感光体ドラム38の周側面に合焦させることができる。
[5-2.プリント配線板の構成]
図27に斜視図を示すと共に、図28(A)及び(B)に断面図を示すように、配線基板としてのプリント配線板672は、全体として左右方向に長く上下方向に短い(すなわち薄い)薄板状に形成されている。このプリント配線板672は、一般的なプリント配線板と同様に、基板681の表面(例えば照射方向側の面)に配線層682及びソルダレジスト層683が順次積層された構成となっている。
基板681は、第1の実施の形態と同様にガラスエポキシ樹脂となっており、絶縁性を有すると共に、十分な強度を有している。配線層682は、例えば銅やアルミニウム等の導電性を有する金属であり、基板681の表面に薄膜状に付着している。この配線層682は、図4に示したような回路構成に応じた配線パターンを形成している。また配線層682には、ボンディングワイヤ75(図25)を介して発光素子チップ673と電気的に接続するための端子パッド684が複数設けられている。
ソルダレジスト層683は、絶縁性を有する樹脂で構成されており、プリント配線板672の取付面672S(すなわち照射方向側の表面)のうち大部分を覆うことにより、概ね平坦な面を形成し、配線層682を保護している。その一方でプリント配線板672には、端子パッド684及びその近傍部分に、ソルダレジスト層683により覆われていない端子パッド露出領域685が形成されている。すなわちプリント配線板672は、端子パッド露出領域685を設けて端子パッド684を外部に露出させることにより、該端子パッド684にボンディングワイヤ75(図25)を電気的に接続し得るようになっている。
ところでプリント配線板672では、照射方向側の表面(以下これを取付面とも呼ぶ)に、各発光素子チップ673を取り付ける仮想的な領域の輪郭線を表すチップ輪郭線CL1が複数設定されている。さらにプリント配線板672における照射方向側の表面には、各チップ輪郭線CL1のうち後側、すなわち端子パッド684が設けられている側の長辺であり、他のチップ輪郭線CL1と隣接しない部分と重なる位置に、それぞれ3箇所ずつ、チップ接着領域687が形成されている。
チップ接着領域687は、プリント配線板672における照射方向側の表面から配線層682及びソルダレジスト層683が省略されることにより、基板681の表面を外部に露出させている。これを換言すれば、各チップ接着領域687は、ソルダレジスト層683が形成された周辺部分に対して、配線層682及びソルダレジスト層683の厚さに相当する深さだけ窪んだ穴と見なすこともできる。
1箇所のチップ輪郭線CL1と対応する3箇所のチップ接着領域687は、左右方向に沿って1列に整列しており、何れも左右方向に比較的長く、前後方向に短い長方形状となっている。このため各チップ接着領域687は、その表面積に深さを乗じた容積でなる直方体状の空間と見なすこともできる。因みに中央のチップ接着領域687は、左右両側のチップ接着領域687と比較して、左右方向の長さがやや短くなっている。
各チップ接着領域687は、前後方向に沿った短辺が、チップ輪郭線CL1における後側の長辺と交差している。換言すれば、各チップ接着領域687は、前側部分をチップ輪郭線CL1の内部に位置させる一方、後側部分をチップ輪郭線CL1の外部に位置させている。すなわち各チップ接着領域687は、チップ輪郭線CL1の後辺を横切るような位置に、それぞれ配置されている。
因みに各チップ接着領域687は、チップ輪郭線CL1に合わせて発光素子チップ673(図26)を配置した場合における、各端子パッド673Pを反照射方向に投影した位置に重なるよう、それぞれの位置や大きさが調整されている。
またプリント配線板672には、チップ輪郭線CL1における後側の長辺近傍のうち、3箇所のチップ接着領域687を除いた部分、すなわちチップ接着領域687同士の間やその左右両外側に、チップ支持領域688が形成されている。チップ支持領域688は、プリント配線板672の大部分と同様、基板681の表面に配線層682及びソルダレジスト層683が積層されている。このためチップ支持領域688の高さ、すなわち基板681の表面を基準としたソルダレジスト層683の表面までの照射方向に関する距離は、チップ輪郭線CL1内におけるチップ接着領域687以外の部分と同等となっている。
[5-3.プリント配線板に対する発光素子チップの取付]
次に、プリントヘッド633(図25)を製造する場合における、プリント配線板672に対する発光素子チップ673の取付について説明する。プリント配線板672は、図29に示すダイボンダ700により、発光素子チップ673が1個ずつ位置を合わせながら取り付けられる(ダイボンドされる)ようになっている。
プリント配線板672は、ダイボンダ700に設けられたステージ710に予め固定されている。またこのプリント配線板672には、既に発光素子チップ673Jが取り付けられており、該発光素子チップ673Jに隣接するチップ輪郭線CL1に新たな発光素子チップ673が取り付けられるものとする。
ダイボンダ700は、図29(A)に示すように、スタンプコレット720により、プリント配線板672におけるチップ輪郭線CL1と対応する3箇所のチップ接着領域687に対して、未硬化の接着剤674を塗布する。このとき接着剤674は、照射方向側の先端部分が、プリント配線板672におけるソルダレジスト層683の表面(すなわち取付面672S)よりも照射方向側へ突出するように、盛り上がった形状に塗布される。
因みにスタンプコレット720は、プリント配線板672(図27)における、チップ輪郭線CL1に対する3箇所のチップ接着領域687の位置に合わせて、接着剤674を吐出するノズル等が予め適切な形状に調整されている。また接着剤674は、熱硬化型樹脂であり、未硬化の状態において、粘性が十分に高いために塗布された形状を概ね維持することができる。
次にダイボンダ700は、図29(B)に示すように、実装コレット730により、半導体ウェハ(図示せず)から新たな発光素子チップ673Kをピックアップし、これをプリント配線板672におけるチップ輪郭線CL1の照射方向側まで運搬する。このときダイボンダ700は、所定のカメラによりプリント配線板672の表面側を撮像しており、発光素子チップ673の照射方向面に設けられている位置マーク(図示せず)の位置を検出して、新たな発光素子チップ673Kの位置を既存の発光素子チップ673Jに合わせる。
続いてダイボンダ700は、実装コレット730を反照射方向へ移動することにより、発光素子チップ673Kを反照射方向へ移動させ、所定の荷重を加えながらプリント配線板672の表面である取付面672Sに押し付けていく。このとき発光素子チップ673Kは、反照射方向への移動中に、チップ接着領域687に塗布されている接着剤674を、その底面(すなわち反照射方向の面)とチップ接着領域687の底部分(すなわち基板681)との間に挟み、押し潰しながら変形させる。
やがてダイボンダ700は、図29(C)に示すように、発光素子チップ673Kの底面を取付面672Sに当接させ、チップ輪郭線CL1に合わせて配置する。ここで接着剤674は、チップ接着領域687の空間内に収まりきらない場合、その一部を、発光素子チップ673Kの後側において取付面672Sよりも照射方向側へ逃がすようにして盛り上げさせる。
これによりプリント配線板672は、チップ輪郭線CL1に合わせて発光素子チップ673Kが配置され、且つ未硬化の接着剤674により仮止めされた状態、すなわち比較的弱い力で固定された状態となる。また発光素子チップ673K(図26)の底面における後辺近傍は、チップ接着領域687において接着剤674が硬化しておらず不安定であるものの、チップ支持領域688(図27)により安定的に支持されている。
その後、ダイボンダ700は、一連の動作を繰り返すことにより、プリント配線板672の各チップ輪郭線CL1(例えば26箇所)に合わせて、発光素子チップ673を順次配置していく。さらにプリント配線板672は、図示しない恒温槽へ搬送され、所定の温度(例えば百数十度)に加熱されることにより接着剤674を硬化させ、その結果として発光素子チップ673が接着される。
次にプリント配線板672は、図示しないワイヤボンダにより、発光素子チップ673の端子パッド673Pと該プリント配線板672の端子パッド684との間でワイヤボンディングが行われる。この結果、プリント配線板672は、図30に斜視図を示すと共に図31(A)に模式的な断面図を示すように、各端子パッド673P及び各端子パッド684の間が、それぞれボンディングワイヤ75により電気的に接続される。
その後、プリント配線板672は、コネクタ671(図25)等の部品が取り付けられた上で、ホルダ676(図25)に対し接着剤677によって固定されることにより、プリントヘッド633の一部となる。
[5-4.効果等]
ここで、本実施の形態と比較するために、他の構成によるプリント配線板に対し他の手法により発光素子チップ673を取り付ける場合について検討する。ここでは、プリント配線板672に替えて、チップ接着領域687(図27及び図28)が省略され、チップ輪郭線CL1が平坦に形成されたプリント配線板772を想定する。
図32(A)は、プリント配線板772の表面に十分な量の接着剤674を塗布した上で、発光素子チップ673を配置した場合を表している。この場合、発光素子チップ673は、その底面が全体的に接着剤674によりプリント配線板772の表面に接着されているため、ワイヤボンディングが行われる際に発光素子チップ673の照射方向面に比較的大きな力が局所的に加えられたとしても、その姿勢を維持できる。
しかしながらこの場合、発光素子チップ673の底面から左右方向へはみ出した接着剤674が、毛細管現象により該発光素子チップ673同士の隙間を照射方向側へ流れ、該発光素子チップ673の照射方向面に到達する現象、いわゆる「這い上がり」が発生する恐れがある。この場合、発光素子チップ673は、照射方向側の面に到達した接着剤674により発光サイリスタLTや端子パッド673P等が覆われ、正常に発光し得なくなる恐れがある。
そこで図32(B)に示すように、プリント配線板772のチップ輪郭線CL1内に比較的少ない量の接着剤674を塗布した上で、発光素子チップ673を配置することにより、接着剤674の這い上がりを未然に防止することが考えられる。しかしながらこの場合、図31(B)に示すように、接着剤674の量が少なく、発光素子チップ673の底面が中央付近でのみ支持されることに起因し、該発光素子チップ673の底面がプリント配線板772の表面に対して傾斜する恐れがある。このようなプリント配線板772では、法線方向に対して発光サイリスタLTの光軸が発光素子チップ673毎に傾くため、不良品となる恐れもある。
またこの場合、端子パッド673Pの反照射方向側において、接着剤674が充填されておらず、該発光素子チップ673の底面とプリント配線板772の表面との間に隙間が生じる場合がある。この場合、プリント配線板772では、ワイヤボンダにより発光素子チップ673の端子パッド673Pに反照射方向へ強い力が加えられたときに、該発光素子チップ673の傾斜や剥離が生じる恐れもある。
これに対して本実施の形態によるプリントヘッド633(図25)では、プリント配線板672(図27及び図28)において、チップ輪郭線CL1の後辺を横切る位置、すなわちその内側及び外側に渡る位置に、配線層682及びソルダレジスト層683を省略したチップ接着領域687を設けた。そのうえでプリントヘッド633では、プリント配線板672の該チップ接着領域687に未硬化の接着剤674を塗布して発光素子チップ673を取付面672Sに配置し、該接着剤674を硬化させるようにした(図29)。
このためプリントヘッド633では、発光素子チップ673に押し潰された接着剤674がチップ接着領域687の空間内に収まらなかったとしても、該発光素子チップ673の後側において取付面672Sよりも照射方向側へはみ出させることができる。このためプリントヘッド633では、発光素子チップ673の底面を取付面672Sから浮き上がらせることや傾かせることを回避でき、両者を当接させた状態で、該発光素子チップ673をプリント配線板672に接着させることができる(図30及び図31(A))。
またプリントヘッド633では、チップ輪郭線CL1の後辺における全ての部分ではなく、一部のみを横切るようにチップ接着領域687を形成し、これ以外の部分をチップ支持領域688とした(図27及び図28)。このためプリントヘッド633では、プリント配線板672に接着剤674が塗布され発光素子チップ673が配置されてから(図29(C))該接着剤674が硬化されるまでの間に、仮に該発光素子チップ673の後側に反照射方向へ向かう力が作用したとしても、該発光素子チップ673の後側をチップ支持領域688により確実に支持できる。
これによりプリントヘッド633では、プリント配線板672の表面である取付面672Sに対して各発光素子チップ673の表面(照射方向側の面)を傾けることなくほぼ平行に揃えた状態で固定でき、各発光サイリスタLTの光軸を取付面672Sの法線方向に揃えることができる。この結果、プリントヘッド633を搭載する画像形成装置601では、感光体ドラム38の周側面に高品質な静電潜像を形成でき、その結果として用紙Pに高品質な画像を形成することができる。
さらにプリントヘッド633では、発光素子チップ673の後面側に相当する箇所、すなわちチップ輪郭線CL1の後辺を横切る位置にのみ、チップ接着領域687を設けた(図27)。これを換言すれば、プリントヘッド633では、発光素子チップ673同士が隣接する部分、すなわち各発光素子チップ673の左側面や右側面の近傍に、接着剤674が塗布されていない。このためプリントヘッド633では、プリント配線板672に接着剤674が塗布され、さらに実装コレット730(図29)によって発光素子チップ673がプリント配線板672の表面に押し付けられたときに、図31(A)のような接着剤674の這い上がりを確実に回避できる。
これを換言すれば、プリントヘッド633では、各チップ接着領域687に対して、それぞれの空間からややはみ出す程度の量の接着剤674を塗布すれば良い。これによりプリントヘッド633では、接着剤674の硬化後に、発光素子チップ673を取付面672Sに十分な強度で接着できる。これと共にプリントヘッド633では、各チップ接着領域687からはみ出した接着剤674を後側へ、すなわち他の発光素子チップ673が隣接しない方向へ逃がして、這い上がりを確実に阻止できる。
そのうえプリントヘッド633では、配置される発光素子チップ673における端子パッド673Pを反照射方向側に投影した箇所に、チップ接着領域687を設けた(図27、図30及び図31(A))。このためプリントヘッド633では、チップ接着領域687に塗布されて硬化した接着剤674により端子パッド673Pの反照射方向側を支えた状態で、該端子パッド673Pにワイヤボンディングが行われる際に加えられる力を確実に受け止め、ボンディングワイヤ75を安定的に接合させることができる。
以上の構成によれば、第5の実施の形態による画像形成装置601のプリントヘッド633では、プリント配線板672の取付面672Sにおけるチップ輪郭線CL1の後辺を横切る位置に設けたチップ接着領域687に未硬化の接着剤674が塗布され、発光素子チップ673が配置される。プリントヘッド633は、発光素子チップ673の配置時に押し潰された接着剤674を、該発光素子チップ673の後面側において照射方向側へはみ出させる。これによりプリントヘッド633は、発光素子チップ673の底面を取付面672Sに当接させ、各発光サイリスタLTの光軸を該取付面672Sの法線方向に揃えた姿勢で、接着剤674の這い上がりを引き起こすことなく、該発光素子チップ673を固定できる。
[6.第6の実施の形態]
第6の実施の形態による画像形成装置801(図1)は、第1の実施の形態による画像形成装置1と比較して、プリントヘッド33(図2及び図7)に代わるプリントヘッド833を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[6-1.プリントヘッドの構成]
プリントヘッド833は、第5の実施の形態によるプリントヘッド633(図25)と比較して、プリント配線板672、発光素子チップ673及び接着剤674に代わるプリント配線板872、発光素子チップ873及び接着剤874を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
図26と対応する図33に示すように、発光素子チップ873は、第2の実施の形態による発光素子チップ273(図15及び図16)と同様、後辺の一部分が矩形状に切り欠かれたような形状となっている。ただし発光素子チップ873では、第2の実施の形態とは異なり、後側に突出した2箇所に分かれて、2群の端子パッド873Pが配置されている。因みに発光素子チップ873は、第1の実施の形態(図8及び図9等)と同様、チップ基体873Bにおける照射方向側の表面にエピタキシャルフィルム73Fが取り付けられている。
プリント配線板872は、第5の実施の形態によるプリント配線板672(図28)と同様、基板681の照射方向側に配線層682及びソルダレジスト層683が順次積層された構成となっている。その一方でプリント配線板872は、発光素子チップ873の形状や構成に合わせて、プリント配線板672と異なる構成を有している。
図27と対応する図34に示すように、プリント配線板872の表面である取付面872Sには、チップ輪郭線CL1に代えて、発光素子チップ873の形状に合わせたチップ輪郭線CL2が複数設定されている。またプリント配線板872には、端子パッド684、端子パッド露出領域685、チップ接着領域687及びチップ支持領域688に代えて、端子パッド884、端子パッド露出領域885、チップ接着領域887及びチップ支持領域888がそれぞれ設けられている。
チップ接着領域887は、第5の実施の形態におけるチップ接着領域687(図28)と同様、配線層682及びソルダレジスト層683が局所的に省略されることにより、基板681の表面を外部に露出させている。ただしチップ接着領域887は、図34に示したように、各チップ輪郭線CL2の後側において後方へ突出した2箇所に合わせて、すなわち取り付けられる発光素子チップ873における端子パッド873P(図33)を反照射方向側に投影した箇所において、チップ輪郭線CL2の後辺を横切る位置に、それぞれ設けられている。
各チップ接着領域887は、第5の実施の形態と同様、チップ輪郭線CL2の後辺を横切る位置に、すなわち後辺の前側及び後側に渡る範囲に形成されており、その一部を該チップ輪郭線CL2の後辺よりも後方へはみ出させている。これに加えてチップ接着領域887は、チップ輪郭線CL2における後方へ突出した2箇所に対して、それぞれ左右方向の長さが該チップ輪郭線CL2よりも大きく(すなわち長く)なっており、左方向及び右方向へそれぞれはみ出している。
また各チップ接着領域887同士の間、すなわちチップ輪郭線CL2の後辺における前方へ凹んだ部分には、チップ支持領域888が設けられている。このチップ支持領域888は、第5の実施の形態におけるチップ支持領域688と同様、基板681に配線層682及びソルダレジスト層683が積層されており、プリント配線板872における他の部分と同様に構成されている。
端子パッド884は、チップ輪郭線CL2に実装される発光素子チップ873(図33)における端子パッド873Pの位置に応じて、該端子パッド873Pの近傍となる箇所に配置されている。端子パッド露出領域885は、複数の端子パッド884の配置や数量に合わせて、その形状や大きさが設定されている。
接着剤874は、第5の実施の形態による接着剤674(熱硬化型樹脂)と異なり、紫外線硬化型樹脂となっている。すなわち接着剤874は、塗布時は粘性の高い液状であるものの、所定時間に渡って所定強度の紫外線が照射されることにより硬化する、といった性質を有する。
[6-2.プリント配線板に対する発光素子チップの取付]
ところでプリントヘッド833は、その製造工程において、第5の実施の形態と同様、ダイボンダ700(図29)により、プリント配線板872に発光素子チップ873が1個ずつ配置されていく。ただし本実施の形態では、ダイボンダ700に紫外線光源が設けられている。
ダイボンダ700は、まず第5の実施の形態と同様に、塗布装置としてのスタンプコレット720により、プリント配線板872のチップ接着領域887に未硬化の接着剤874を塗布する(図29(A))。因みに本実施の形態では、1箇所のチップ輪郭線CL2に対して2箇所のチップ接着領域887が設けられていることに応じて、スタンプコレット720に2本のノズルが適切な位置に設けられている。
続いてダイボンダ700は、搬送装置としての実装コレット730により発光素子チップ873をピックアップして把持し、これをプリント配線板872におけるチップ輪郭線CL2の照射方向側へ移動させる。続いてダイボンダ700は、実装コレット730により把持している発光素子チップ873を、プリント配線板872の表面である取付面872Sに対して遠方から近接させていき、さらに所定の荷重を加えながら押し付ける(図29(B))。このときチップ接着領域887からはみ出した接着剤874は、発光素子チップ873における後方へ突出した部分の後側において、照射方向側へ盛り上がる。
さらにダイボンダ700は、実装コレット730により発光素子チップ873を取付面872Sに押し付けた状態のまま、紫外線光源(図示せず)から紫外線を接着剤874に照射して硬化させ、発光素子チップ873を固定する。
ここでプリント配線板872(図34)は、チップ輪郭線CL2の後方へ突出した部分において、後側に加えて左側及び右側にも、該チップ輪郭線CL2の外側にはみ出すようにチップ接着領域887が形成されている。そこでダイボンダ700は、チップ接着領域887の後上方に加えて、左上方及び右上方から紫外線を照射することにより、チップ接着領域887内において発光素子チップ873に覆われた部分についても、紫外線を十分に到達させて接着剤874を効率良く硬化させることができる。
この結果、図35に示すように、プリント配線板872には、発光素子チップ873が接着剤874により固定される。その後、プリント配線板872は、第5の実施の形態と同様、図示しないワイヤボンダにより端子パッド873P及び端子パッド884の間がボンディングワイヤ75によって接続された上で、プリントヘッド833として組み立てられる。
[6-3.効果等]
以上の構成により、第6の実施の形態による画像形成装置801のプリントヘッド833は、第5の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
ところで、仮に熱硬化型樹脂を接着剤として用いてプリント配線板872を高温環境下(例えば百数十度)に置いた場合、該プリント配線板872及び発光素子チップ873が、それぞれの熱膨張率に従って伸びた状態となったまま、接着剤を硬化させることになる。一方、プリントヘッド833は、画像形成装置801に組み込まれて使用される環境において、各部の発熱等に伴ってその温度が上昇したとしても、数十度程度に過ぎない。このためプリントヘッド833では、発光素子チップ873が、プリント配線板872から熱膨張率の違いによる残留応力を受けて、変形する恐れがある。
特に発光素子チップ873に貼り付けられたエピタキシャルフィルム73F(図33)は、伸縮が発生すると格子定数が変化し、これに伴ってバンドギャップが変化してしまう可能性がある。このような場合、発光素子チップ873の発光サイリスタLTでは、設計通りの特性を得られない恐れがあった。
これに対し、本実施の形態によるプリントヘッド833は、接着剤874を紫外線硬化型樹脂としたことにより、室温や画像形成装置801内の環境下と同等の温度において硬化させることが可能であるため、上述したような問題が発生する可能性を原理的に排除できる。
また図32や図31(B)に示したように、プリント配線板772の表面に接着剤を塗布する手法では、一般に、発光素子チップ673における高さ方向(すなわち照射方向)に関する位置ずれや傾斜等を抑制する目的で、接着剤の厚さを数[μm]程度とする。このため、仮に紫外線硬化型樹脂を接着剤として用いた場合、紫外線が内部まで伝搬し難く、硬化不良を引き起こす恐れがある。
これに対して、本実施の形態によるプリントヘッド833では、接着剤874が塗布されるチップ接着領域887の深さ、すなわちプリント配線板872における配線層682及びソルダレジスト層683(図28)の厚さの合計値を、十分な長さ、例えば50[μm]以上とすることができる。このためプリントヘッド833では、プリント配線板872のチップ接着領域887に塗布された紫外線硬化型の接着剤874に対し、紫外線をその内部にまで容易に伝搬することができる。
またプリントヘッド833では、配置される発光素子チップ873(すなわちチップ輪郭線CL2)における後方へ突出した部分に対して、チップ接着領域887が後側、左側及び右側の3方向に拡大されている(図34)。このためプリントヘッド833では、その製造時に後上側、左上側及び右上側の3方向から紫外線を照射することにより、チップ接着領域887内の接着剤874を十分に短い照射時間で硬化でき、高い強度を得ることができる。
以上の構成によれば、第6の実施の形態による画像形成装置801のプリントヘッド833では、プリント配線板872の取付面872Sにおけるチップ輪郭線CL2の後辺を横切る位置に設けたチップ接着領域887に、紫外線硬化型の接着剤874が塗布され、発光素子チップ873が配置される。プリントヘッド833は、発光素子チップ873に押し潰された接着剤874を、該発光素子チップ873の後面側において照射方向側へはみ出させ、さらに紫外線により硬化させる。これによりプリントヘッド833は、発光素子チップ873の底面を取付面872Sに当接させ、各発光サイリスタLTの光軸を該取付面872Sの法線方向に揃えた姿勢で、熱膨張に伴う問題を生じることなく、該発光素子チップ873を固定できる。
[7.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、発光素子チップ73(図10)における素子駆動領域82の-Y方向側において、-X方向側の約半分に付加領域83を設け、その反対側に切欠空間87を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばX方向側の約半分に付加領域83を設け、その反対側に切欠空間87を設けても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、発光素子チップ73(図10)の付加領域83における-X方向側の端部及びX方向側の端部に第1位置マーク領域85及び第2位置マーク領域86をそれぞれ配置する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第2位置マーク領域86を付加領域83におけるX方向の中央付近等、各位置マーク領域をX方向に関する種々の箇所に配置しても良い。また、例えば第2の実施の形態による発光素子チップ273(図16)において、第1付加領域283におけるX方向側の端部やX方向に関する中央付近等、種々の箇所に第1位置マーク領域285を配置しても良い。第3及び第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、発光素子チップ73(図10)の付加領域83内に第1位置マーク95及び第2位置マーク96といった2個の位置マークを設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば付加領域83内に1個又は3個以上の位置マークを設けても良く、或いは該付加領域83から位置マークを省略しても良い。この場合、例えば発光素子チップ73の頂点や稜線等を用いて、若しくはこれらと位置マークとを適宜組み合わせて、位置や角度を調整すれば良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、発光素子チップ273(図16)に第1付加領域283及び第2付加領域286といった2箇所の付加領域を設けながら、端子パッド領域284を第1付加領域283内に1箇所のみ設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図16と対応する図36に示す発光素子チップ973のように、第1付加領域983及び第2付加領域993といった2箇所の付加領域を設け、第1端子パッド領域984及び第2端子パッド領域994といった2箇所の端子パッド領域を設けて、それぞれに端子パッド94を分配して配置しても良い。この場合、X方向に関して、第1付加領域983の長さL31が第1切欠空間987の長さL33よりも短く、また第2付加領域993の長さL32が第2切欠空間990の長さL34よりも短ければ良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、発光素子チップ473(図21)において発光素子群91から第1位置マーク95までのY方向に沿った距離である長さLY11が、第2位置マーク96まで距離である長さLY12よりも短くなるよう、第1位置マーク95及び第2位置マーク96をそれぞれ配置する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば感光体ドラム38(図2)が矢印R1方向へ回転する場合に、長さLY11(図21)が長さLY12(図22)よりも長くなるよう、第1位置マーク95及び第2位置マーク96をそれぞれ配置しても良い。第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、第1位置マーク95及び第2位置マーク96を、互いに直交する2本の直線により表し、その交点を位置の基準とする場合について述べた(図10)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば単なる点や「*」印等、種々の図形や記号、或いは文字等を位置マークとして用いても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第3の実施の形態においては、第1位置マーク領域485及び第2位置マーク領域486に、第1位置マーク95及び第2位置マーク96を1個ずつのみ設ける場合について述べた(図21)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第1位置マーク領域485におけるY方向に異なる複数箇所に、第1位置マーク95をそれぞれ設けても良い。この場合、ダイボンディングにおいて、左右方向に対して発光素子群91を傾斜させたい角度に応じて何れかの第1位置マーク95を選択し、これを基準線N41(図22)上に配置するように発光素子チップ473の位置や角度を調整すれば良い。これにより、感光体ドラム38における周側面の走行速度が異なる複数の画像形成装置に対し、1種類の発光素子チップ473により対応することができる。第4の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、プリント配線板672に設けるチップ接着領域687を、配線層682及びソルダレジスト層683を省略して基板681の表面を露出させた構成とする場合について述べた(図28)。しかしながら本発明はこれに限らず、チップ接着領域687を、例えば端子パッド684と同様に、配線層682を残したままソルダレジスト層683を省略し、該配線層682の表面を露出させた構成とする等、プリント配線板672における種々の部分を省略した構成としても良い。これらの場合、要は、プリント配線板672におけるソルダレジスト層683の表面(すなわち取付面672S)よりも反照射方向側であって、該表面上に配置された発光素子チップ673の反照射方向側に、接着剤674を溜め得る空間を形成できれば良い。第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、プリント配線板672に発光素子チップ673が実装された場合に端子パッド673Pを反照射方向側に投影した箇所に重なるように、チップ接着領域687を設ける場合について述べた(図30)。しかしながら本発明はこれに限らず、発光素子チップ673が実装された場合における端子パッド673Pを反照射方向側に投影した箇所以外にも、チップ接着領域687を設けても良い。第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、長方形状であり4本の辺を有するチップ輪郭線CL1のうち1本の辺である後辺の近傍にのみ、チップ接着領域687を設ける場合について述べた(図27)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばチップ輪郭線CL1における後辺の近傍に加えて、例えば前辺の近傍等、他の辺の近傍にもチップ接着領域687を設けても良い。ただし、発光素子チップ673同士の隙間における接着剤674の這い上がり(図32(A))を阻止する観点から、左辺及び右辺の近傍を避けるように、すなわち他のチップ輪郭線CL1が隣接しない辺の近傍にチップ接着領域687を設けることが望ましい。第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、チップ輪郭線CL1の後辺近傍のうち、左右方向に関する一部分にのみチップ接着領域687を設け、これ以外の部分をチップ支持領域688とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばチップ輪郭線CL1の後辺近傍のうち、左右方向に関する全部分をチップ接着領域687とし、チップ支持領域688を省略しても良い。第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、チップ接着領域687を、照射方向側から見て長方形状に形成する場合について述べた(図27)。しかしながら本発明はこれに限らず、楕円形状等、他の種々の形状としても良い。第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、チップ接着領域687の底面を基板681の表面とすることにより、該チップ接着領域687における深さ、すなわちソルダレジスト層683の表面からの反照射方向への距離を、ほぼ一定とする場合について述べた(図28)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばチップ接着領域687内における場所ごとに深さを相違させても良い。第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第5の実施の形態においては、接着剤674を熱硬化型樹脂とする場合について述べた。また第6の実施の形態においては、接着剤874を紫外線硬化型樹脂とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第5の実施の形態における接着剤674を紫外線硬化型樹脂等、他の種々の接着剤としても良く、第6の実施の形態における接着剤874を熱硬化型樹脂等、他の種々の接着剤としても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、発光素子チップ73に発光サイリスタLTを設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば発光ダイオード等、他の種々の発光素子を設けても良い。第2~第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、発光素子チップ73(図10)の発光サイリスタLTを発光させることにより感光体ドラム38(図2)の周側面に静電潜像を形成し、最終的に用紙P(図1)にトナー画像を転写して画像を形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば有機EL(Electro Luminescence)素子のアレイにより構成された有機ELヘッドを有するプリンタや、整列された発熱抵抗体を有するサーマルプリンタ等、種々の方式により画像を形成する種々のプリンタに搭載されるヘッド部分において、直線状又はマトリクス状に配置された種々の被駆動素子を種々の駆動回路により駆動する場合に適用しても良い。第2~第6の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、MFPでなる画像形成装置1に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば複写機やファクシミリ装置等、電子写真方式によりトナー画像を形成して用紙に定着させる機能を有する種々の電子機器に適用しても良い。第2~第6の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、チップ基体としてのチップ基体73Bと、被駆動素子群としての発光素子群91と、駆動回路群としての駆動回路群92と、端子パッド領域としての端子パッド領域84と、端子パッドとしての端子パッド94とによって被駆動素子チップとしての発光素子チップ73を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるチップ基体と、被駆動素子群と、駆動回路群と、端子パッド領域と、複数の端子パッドとによって被駆動素子チップを構成しても良い。