JP7002677B2 - レーザ加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ光を用いてワークを加工するレーザ加工装置に関する。
近年、レーザ加工装置として、レーザ光を用いて溶接加工を実施するレーザ溶接装置が知られている。一般に、レーザ溶接装置の場合、溶接対象である金属製のワークを挟持治具の挟持部によって挟持しながら、レーザ溶接が実施される関係上、溶接作業中、スパッタが溶接箇所の近傍の挟持部に付着する。その結果、レーザ溶接作業の進行に伴い、挟持部に付着したスパッタが増大し、レーザ光の光路まで到達することがある。その場合には、スパッタがレーザ光に干渉し、レーザ溶接を適切に実施できなくなってしまう。この問題は、レーザ溶接に限らず、レーザ光を用いて金属製のワークを加工するとき、例えば、切断加工や穴あけ加工をするときにも発生する。
従来、上記のような問題を解消するためのスパッタ除去装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。このスパッタ除去装置は、溶接治具の表面に付着したスパッタを除去するものであり、エアシリンダ、ロッド及びスパッタ除去具などを備えている。このスパッタ除去装置では、ロッドがエアシリンダによって伸縮駆動され、スパッタ除去具が溶接治具との間を往復動するのに伴い、スパッタが溶接治具から離脱してスパッタ除去具側に付着する。それにより、スパッタが溶接治具の表面から除去される。
特開2017-24023号公報
上記特許文献1のスパッタ除去装置をレーザ溶接装置などのレーザ加工装置に適用した場合、スパッタを除去するための構成として、エアシリンダ、ロッド及びスパッタ除去具が必要となるので、その分、部品点数が増加し、コストの増大を招いてしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、部品点数及びコストを削減しながら、スパッタを除去することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、金属で構成されたワーク3を挟持しながら、ワーク3をレーザ光2aを用いて加工するレーザ加工装置(レーザ溶接装置1)において、ワーク3の加工時にワーク3を互いの間に挟持する2つの挟持部(下挟持部24、上挟持部32及び薄肉部31c)を有し、2つの挟持部の一方(上挟持部32及び薄肉部31c)の側端部が、レーザ光2aの光路を横切る方向においてレーザ光2aによるワーク3の加工領域(溶接領域3b)との間に所定間隔Dを存するように設けられた挟持治具(クランプ装置10)と、一方の挟持部(上挟持部32及び薄肉部31c)を、ワーク3を2つの挟持部の他方(下挟持部24)との間に挟持する挟持位置(図7に示す位置)と、挟持位置から待避することによりワーク3を解放する待避位置(図12に示す位置)との間で駆動する駆動手段(アクチュエータ40)と、一方の挟持部(上挟持部32及び薄肉部31c)が駆動手段によって挟持位置と待避位置との間で駆動される際、一方の挟持部(上挟持部32及び薄肉部31c)の側端部が駆動中に所定間隔D以下の間隔で通過するように設けられたスパッタ除去部(スクレーパ26,50,51)と、を備えることを特徴とする。
このレーザ加工装置によれば、ワークの加工時に、ワークが挟持治具の2つの挟持部の間に挟持され、2つの挟持部の一方の側端部が、レーザ光の光路を横切る方向においてレーザ光によるワークの加工領域との間に所定間隔を存するように設けられている。また、駆動手段により、一方の挟持部が、ワークを2つの挟持部の他方との間に挟持する挟持位置と、挟持位置から待避することによりワークを解放する待避位置との間で駆動される。さらに、スパッタ除去部が、駆動手段によって一方の挟持部が挟持位置と待避位置との間で駆動される際、一方の挟持部の側端部が駆動中に所定間隔以下の間隔で通過するように設けられている。
それにより、ワークの加工時、スパッタが一方の挟持部の側端部に付着し、これが所定間隔を上回るサイズにまで増大したときには、一方の挟持部が駆動手段によって挟持位置と待避位置との間で駆動される際、スパッタがその駆動中にスパッタ除去部に接触することで、スパッタの少なくとも一部が除去される。その結果、スパッタを一方の挟持部の側端部から所定間隔以下のサイズまで低減できることで、スパッタがワークの加工時にレーザ光に干渉するのを回避できる。さらに、スパッタ除去用の駆動源を別個に設けることなく、一方の挟持部を駆動する駆動手段をスパッタ除去用の駆動源として流用しながら、1つのスパッタ除去部のみを用い、上記のようなスパッタ除去効果を得ることができる。すなわち、部品点数及びコストを削減しながら、スパッタを除去することがきる。
本発明において、一方の挟持部(上挟持部32及び薄肉部31c)の側端部は、駆動手段によって一方の挟持部が挟持位置と待避位置との間で駆動されたときに、所定平面に沿って移動するように構成されており、スパッタ除去部(スクレーパ26,50,51)は、所定平面に沿って延びる縁部を有し、一方の挟持部(上挟持部32及び薄肉部31c)の側端部は、所定平面に沿って移動するときに、スパッタ除去部(スクレーパ26,50,51)の縁部の付近を所定間隔D以下の間隔で通過することが好ましい。
このレーザ加工装置によれば、一方の挟持部の側端部が、駆動手段によって一方の挟持部が挟持位置と待避位置との間で駆動されたときに、所定平面に沿って移動するように構成されている。さらに、スパッタ除去部は、所定平面に沿って延びる縁部を有しており、一方の挟持部の側端部が、所定平面に沿って移動するときに、スパッタ除去部の縁部の付近を所定間隔以下の間隔で通過する。したがって、スパッタが一方の挟持部の側端部にワークの挟持方向に延びながら付着しているときでも、そのようなスパッタをスパッタ除去部の縁部で効果的に除去することができる。
本発明において、ワーク3の加工領域の部位は、複数の金属板3aが互いに積層された部位であり、加工領域(溶接領域3b)は加工時にレーザ光2aによってレーザスポット溶接されることが好ましい。
一般に、レーザ光によって複数の金属板が互いに積層された部位をレーザスポット溶接した場合、レーザスポット溶接以外のレーザ加工を実施した場合と比べて、スパッタが大量に発生し、それに起因して、一方の挟持部の側端部に付着するスパッタ量も増大することになる。これに対して、本発明のレーザ加工装置によれば、レーザスポット溶接の実施後、一方の挟持部がワークを解放するために挟持位置から待避位置に毎回、移動されるので、多量のスパッタがレーザスポット溶接の実施中に一方の挟持部に付着したときでも、レーザスポット溶接の実施後、そのようなスパッタの少なくとも一部が毎回、除去されることになる。それにより、スパッタが大量に発生する条件下でも、これを確実に減少させることができる。
本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置としてのレーザ溶接装置の構成を示す斜視図である。 レーザ溶接装置の正面図である。 レーザ溶接装置の平面図である。 レーザ溶接装置の側面図である。 レーザ溶接装置のレーザスポット溶接中の状態を示す正面図である。 レーザ溶接装置のレーザ光の溶接領域を示す平面図である。 クランプ装置がワークを挟持した状態を示す側面図である。 スパッタがワーク溶接中に上クランプに付着する状態を示す正面図である。 スパッタが溶接領域と重なった状態を示す平面図である。 スパッタが上クランプに付着した状態を示す側面図である。 上クランプが、スクレーパがスパッタを剥離し始める位置まで回動した状態を示す側面図である。 上クランプが待避位置まで回動した状態を示す側面図である。 上クランプが待避位置まで回動した後、挟持位置に復帰したときのスパッタの付着状態を示す平面図である。 スクレーパの変形例を示す側面図である。 上クランプが待避位置まで回動するときのスクレーパの変形例との位置関係の推移を示す側面図である。 スクレーパの他の変形例を示す側面図である。 上クランプが待避位置まで回動するときのスクレーパの他の変形例との位置関係の推移を示す側面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。本実施形態のレーザ加工装置は、レーザ光を用いてレーザスポット溶接加工を実施するレーザ溶接装置である。
図1~4に示すように、本実施形態のレーザ溶接装置1は、1つのレーザ発振器2、クランプ装置10及びアクチュエータ40などを備えている。なお、以下の説明では、図2の左右方向及び上下方向をそれぞれ「左右」及び「上下」というとともに、図2の手前方向を「前」、奥行方向を「後ろ」という。
レーザ発振器2は、クランプ装置10の上方に配置されており、レーザ(例えば、YAGレーザなどの固体レーザ)光2aを発生する発振器と、レーザ光2aを増幅する増幅器と、集光用のレンズなどを備えている(いずれも図示せず)。
図5に示すように、レーザ発振器2は、ワーク3の溶接時、レーザ光2aを下方のワーク3に向かって照射する。その際、レーザ光2aは、後述する2つの上挟持部32,32の間を通過して、ワーク3の溶接箇所に到達する。本実施形態の場合、ワーク3の溶接箇所は、複数の金属板3a(2つのみ図示)が互いに積層された部位となっている。
また、レーザ発振器2は、ワーク3の溶接時、図示しない駆動機構によって、図2に実線で示す位置と図2に2点鎖線で示す位置との間で駆動されるとともに、これらの位置の各々において以下のように平面的に移動しながら溶接箇所への溶接動作を実行する。すなわち、レーザ発振器2は、ワーク3の溶接時、レーザ光2aの照射点を、図6にハッチングで示す溶接領域3b(加工領域)内で平面的に移動させながら、レーザ光2aをワーク3上に照射する。
図6に示すように、この溶接領域3bの場合、その左右端と、これらと対向する後述する上クランプ30の左右の薄肉部31cとの間隔が、所定間隔Dにそれぞれ設定されている。さらに、溶接領域3bと後述するスクレーパ26は、両者の中心が前後方向に同一線上に並ぶように配置されているとともに、両者の左右方向の幅が同じ所定幅Wに設定されている。この理由については後述する。
また、クランプ装置10(挟持治具)は、下クランプ20と、この下クランプ20上に回動自在に設けられた上クランプ30などを備えている。下クランプ20は、金属製の部材であり、図示しない固定部材を介して移動不能に固定されている。この下クランプ20は、基部21と、この基部21の中央部から上方及び後方に突出する一対の軸受部22,22とを備えている。
この基部21は、平面視「コ」字状に形成され、その前端部が左右方向に延びている。基部21の前端部の所定箇所には、4つの取付部23が互いに等間隔で基部21と一体に形成されている。各取付部23は、角柱状のものであり、基部21の上面から所定高さで突出しているとともに、その前面が基部21の前面と面一に設けられている。
この取付部23の上面には、下挟持部24が固定されている。この下挟持部24は、断面円形の金属製部材であり、その上半部が円柱状でかつ上面が平らに形成されている。溶接時、ワーク3は、この下挟持部24の上面と後述する上挟持部32の下端面との間に挟持される(図7f参照)。なお、本実施形態では、下挟持部24が2つの挟持部の他方に相当する。
さらに、一対の軸受部22,22の各々は、下クランプ20から上方に突出しており、その上側の所定部位には軸受孔22aが形成されている。この軸受孔22aは、断面円形で軸受部22を左右方向に貫通しながら延びており、この軸受孔22aには、後述する上クランプ30の回動軸35が回動自在に嵌合している。
軸受部22の上面は、平らに構成されており、この上面には、取付板25が取り付けられている。この取付板25は、左右方向に延びる金属板で構成され、その上面が水平な状態でボルト25aを介して軸受部22の上面に固定されている。
この取付板25の上面の所定部位には、4つのスクレーパ26が互いに等間隔で設けられている。各スクレーパ26(スパッタ除去部)は、図4に示すように、側面視「L」字状の金属板(例えばクロムメッキされたステンレス鋼板)で構成され、固定部26a及び壁部26bを備えている。この固定部26aは、ボルト26cを介して取付板25に固定されている。
また、壁部26bは、正面から見て矩形で、取付板25から上方に延びている。壁部26bの幅は、前述した溶接領域3bと同じ所定幅Wに設定され、スクレーパ26の壁部26bの両端面(両縁部)は、上クランプ30の上挟持部32などの回動時の軌跡が位置する鉛直面(所定平面)と平行に設けられている。この理由については後述する。さらに、壁部26bの上下方向の高さは、後述する上クランプ30の回動時に、スパッタ4を適切に除去できるようなサイズに設定されている。
一方、前述した上クランプ30は、上クランプ本体31、4つの上挟持部32及び回動基部33などで構成されている。上クランプ本体31は、金属で構成され、板状部31a及び4つの腕部31bを備えており、板状部31aは、上方から見て台形状に形成されている。4つの腕部31bは、板状部31aの前端部に互いに等間隔で配置され、板状部31aの前端部から所定幅かつ所定長さで前方に延びている。
4つの腕部31bの前端部は、上下方向の厚みがそれ以外の部分よりも薄い薄肉部31cになっており、これらの薄肉部31cには、4つの上挟持部32がそれぞれ取り付けられている。各上挟持部32は、当接部32aと縦長のナット32bで構成されており、これらの当接部32a及びナット32bの左右端部の幅は、薄肉部31cとほぼ同じ幅に設定されている。それにより、当接部32a及びナット32bの左右端部は、薄肉部31cと同様に、溶接領域3bとの間隔が所定間隔Dにそれぞれ設定されている。
さらに、当接部32aは、上下方向に延びており、その上側部は、図示しない雄ねじ部になっている。この当接部32aの雄ねじ部は、薄肉部31cの図示しない孔を通って上方に延びるとともに、縦長のナット32bの図示しない雌ねじと螺合している。それにより、上挟持部32は、当接部32aとナット32bの間に薄肉部31cを挟持した状態で、腕部31bに固定されている。さらに、当接部32aは、ナット32bと当接部32aの雄ねじ部との螺合状態を変えることにより、薄肉部31cから下方に突出するサイズを変更可能に構成されている。
また、上挟持部32は、当接部32aの下端面が球面状に形成されており、上クランプ30が図4に示す原点位置にある場合、当接部32aの下端面が下挟持部24の上面に当接する。また、上挟持部32は、上クランプ30が図7に示す挟持位置にあって、ワーク3を下挟持部24との間に挟持している場合には、当接部32aの下端面がワーク3の上面に当接する。なお、本実施形態では、上挟持部32及び薄肉部31cが2つの挟持部の一方に相当する。
さらに、前述した回動基部33は、上クランプ本体31の下側に配置され、2つのボルト34,34を介して、上クランプ本体31に固定されている。この回動基部33の前端部には、回動軸35が取り付けられており、この回動軸35は、左右方向に延びるとともに、前述した軸受部22の軸受孔22aに嵌合している。
以上の構成により、上クランプ本体31すなわち上クランプ30は、この回動軸35を中心として、回動自在に構成されている。また、回動基部33の後端部は、連結部33aになっており、この連結部33aには、左右方向に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔には、前述したアクチュエータ40の後述する回動軸43bが嵌合している。
このアクチュエータ40(駆動手段)は、上クランプ30が回動するように、これを駆動するためのものである。このアクチュエータ40は、エア駆動式のものであり、エア駆動部41、ロッド42及び連結部43を備えている。
エア駆動部41は、シリンダ及びピストン(いずれも図示せず)などで構成されており、このシリンダ内に供給される圧縮エアが制御されることにより、ピストンが移動する。このピストンには、金属製のロッド42が接続されており、それにより、ロッド42は、ピストンの移動に伴って、上下方向に移動する。
連結部43は、金属製でロッド42の上端部に設けられており、ロッド42と一体に上下方向に移動する。この連結部43は、一対の軸受部43a,43aと、回動軸43b及び割ピン43cなどで構成されている。一対の軸受部43a,43aは、板状に形成され、互いに所定間隔を存してロッド42の上端部に設けられているとともに、貫通孔が左右方向に延びるように形成されている。
回動軸43bは、前述した回動基部33の連結部33aが一対の軸受部43a,43aの間に配置された状態で、連結部33a及び軸受部43a,43aの貫通孔に嵌合しているとともに、その状態で、割ピン43cによって軸受部43a,43aに抜け止め状態で係止されている。
以上の構成により、クランプ装置10では、アクチュエータ40の連結部43が上下方向に移動するのに伴い、上クランプ30は、ワーク3が下クランプ20との間に存在しない場合には、回動軸35を中心として、図4に示す原点位置と図12に示す待避位置との間で回動する。その際、上クランプ30における上挟持部32の左右両側の側端部及び薄肉部31cの左右両側の側端部は、回動軸35の中心軸と直交する鉛直面に沿って回動する。
次に、以上のように構成されたレーザ溶接装置1によるワーク3のレーザスポット溶接時の動作などについて説明する。まず、レーザスポット溶接の開始時には、下クランプ20が、アクチュエータ40によって駆動されることにより、図12に示す待避位置から図7に示す挟持位置まで反時計回りに回動する。その結果、ワーク3が下クランプ20と上クランプ30との間に挟持される。この状態で、レーザ光2aがワーク3の溶接領域3bに対して照射され、レーザスポット溶接が実施される(図5参照)。
それに伴い、図8に示すように、スパッタ4が、発生して飛散し、溶接領域3bの左右両側における上クランプ30の上挟持部32の側端部及び薄肉部31cの側端部などに付着する。このようなスパッタ4は、レーザスポット溶接作業の進行に伴い、例えば、図9に示すように、溶接領域3bと平面的にオーバーラップする状態まで増大することがある。
上記の状態でレーザスポット溶接作業が終了すると、上クランプ30は、スパッタ4が付着した状態で、アクチュエータ40によって、図10に示す挟持位置から回動軸35を中心として時計回りに回動するように駆動される。
このように上クランプ30が回動した場合、例えば、上クランプ30が図11に示す位置まで回動したタイミングで、スクレーパ26が上クランプ30の側端部に付着したスパッタ4と当接し始める。そして、上クランプ30が図11に示す位置からさらに回動し、図12に示す待避位置まで回動する間、スパッタ4は、その少なくとも一部がスクレーパ26によって上クランプ30の側端部から剥離するように除去される。これは、前述したように、スクレーパ26の壁部26bの幅が溶接領域3bの所定幅Wと同一に設定されているとともに、上クランプ30の側端部(すなわち上挟持部32の側端部及び薄肉部31cの側端部)が、回動軸35の中心軸と直交する鉛直面に沿って回動することによる。
その後、上クランプ30は、図12に示す待避位置に達すると、この待避位置に保持される。そして、次回のレーザスポット溶接作業を開始する際には、上クランプ30は、図12に示す待避位置から図7に示す挟持位置まで復帰するように、アクチュエータ40によって反時計回りに駆動される。この待避位置に復帰した時点では、上記のスクレーパ26の除去作用により、スパッタ4が、例えば図13に示す状態まで減少し、溶接領域3bとの平面的なオーバーラップが解消された状態となっている。それにより、レーザスポット溶接作業を開始する際、レーザ光2aが溶接領域3b内に確実に照射され、レーザスポット溶接を適切に実施することができる。
なお、本出願人の試験により、本実施形態のレーザ溶接装置1においては、レーザスポット溶接を繰り返し実行した場合でも、上記スクレーパ26のスパッタ除去効果によって、上挟持部32の側端部及び薄肉部31cの側端部に付着するスパッタ4の厚みすなわち左右方向のサイズを、D/2以下に抑制できることが確認できた。
以上のように、本実施形態のレーザ溶接装置1によれば、ワーク3のレーザスポット溶接時、ワーク3が、下クランプ20の下挟持部24と上クランプ30の上挟持部32との間に挟持され、その状態で、レーザスポット溶接が実行される。それに伴い、スパッタ4が上挟持部32及び上クランプ本体31の薄肉部31cの側端部に付着する。そして、レーザスポット溶接の終了後、アクチュエータ40によって、上クランプ30が図10に示す挟持位置から図12の待避位置まで回動するように駆動される。
その際、スクレーパ26の壁部26bの両端面は、上クランプ30の上挟持部32などの回動時の軌跡が位置する鉛直面と平行に設けられているとともに、上挟持部32及び上クランプ本体31の薄肉部31cの側端部が通過するときに、両者の間隔が所定間隔Dになるように配置されている。そのため、図9に示すように、スパッタ4が溶接領域3bと平面的にオーバーラップする状態まで増大した場合でも、上クランプ30の回動時、スパッタ4がスクレーパ26の壁部26bの縁部に接触することで、スパッタ4の少なくとも一部が除去される。
それにより、上挟持部32及び上クランプ本体31の薄肉部31cの側端部に付着したスパッタ4の厚さを、所定間隔D以下のサイズまで減少させることができる。特に、スクレーパ26の壁部26bの両端面が、上クランプ30の上挟持部32などの回動時の軌跡が位置する鉛直面と平行に設けられているので、スパッタ4を効果的に減少させることができる。
その結果、次回のレーザスポット溶接時、スパッタ4がレーザ光2aに干渉するのを回避でき、レーザスポット溶接を適切に実施することができる。さらに、駆動源を別個に設けることなく、上クランプ30駆動用のアクチュエータ40を駆動源として流用しながら、スクレーパ26によって上記のようなスパッタ4の除去効果を得ることができる。すなわち、部品点数及びコストを削減しながら、スパッタ4を除去することがきる。
また、一般に、レーザ光2aによって複数の金属板3aが互いに積層された部位をレーザスポット溶接した場合、レーザスポット溶接以外のレーザ加工を実施した場合と比べて、スパッタ4が大量に発生し、それに起因して、スパッタ4の付着量も増大することになる。これに対して、本実施形態のレーザ溶接装置1によれば、レーザスポット溶接の実施後、上クランプ30がワーク3を解放するために挟持位置から待避位置に毎回、駆動される。
それにより、多量のスパッタ4がレーザスポット溶接の実施中に上クランプ30の上挟持部32の側端部及び薄肉部31cの側端部などに付着したときでも、レーザスポット溶接の実施後、そのようなスパッタ4の少なくとも一部が毎回、除去されることになる。その結果、スパッタ4が大量に発生する条件下でも、これを確実に減少させることができる。
なお、実施形態は、レーザ加工装置として、レーザ溶接装置1を用いた例であるが、本発明のレーザ加工装置はこれに限らず、金属で構成されたワークを挟持しながらワークをレーザ光を用いて加工するものであればよい。例えば、レーザ加工装置として、レーザ光を用いて、ワークを切断加工したり、穴あけ加工したりするものを用いてもよい。
また、実施形態は、一方の挟持部として、アクチュエータ40によって、挟持位置と待避位置との間で回動しながら駆動される上クランプ30の上挟持部32及び薄肉部31cを用いた例であるが、本発明の一方の挟持部はこれに限らず、駆動手段によって、挟持位置と待避位置との間で駆動されるものであればよい。
例えば、一方の挟持部として、駆動手段によって、挟持位置と待避位置との間で鉛直面に沿って上下方向に移動するように駆動されるものを用いてもよい。また、一方の挟持部として、駆動手段によって、鉛直面に対して斜めに傾斜した面に沿って回動/移動しながら、挟持位置と待避位置との間で駆動されるものを用いてもよい。さらに、一方の挟持部として、駆動手段によって、湾曲面に沿って回動/移動しながら、挟持位置と待避位置との間で駆動されるものを用いてもよい。以上のような一方の挟持部を用いた場合にも、スパッタ除去部を、一方の挟持部の側端部が駆動中に所定間隔以下の間隔で通過するように設ければよい。
さらに、実施形態は、2つの挟持部の他方として、下クランプ20の下挟持部24を用いた例であるが、本発明の2つの挟持部の他方はこれに限らず、一方の挟持部との間にワークを挟持するものであればよい。
一方、実施形態は、スパッタ除去部として、スクレーパ26を用いた例であるが、本発明のスパッタ除去部はこれに限らず、一方の挟持部が駆動手段によって挟持位置と待避位置との間で駆動される際、一方の挟持部の側端部が駆動中に所定間隔以下の間隔で通過するように設けられたものであればよい。例えば、スパッタ除去部として、スクレーパ26に代えて、図14及び図15に示すスクレーパ50を用いてもよい。
両図に示すように、このスクレーパ50は、固定部50aと壁部50bを備えている。これらの固定部50a及び壁部50bの左右方向の幅は、図示しないが、実施形態のスクレーパ26と同一の所定幅Wに設定されており、スクレーパ50の両端面は、上クランプ30の回動時の軌跡が位置する鉛直面と平行に配置されている。
このスクレーパ50の場合、壁部50bが固定部50aの前端部から斜め後ろ上がりに傾斜した状態で延びており、この点のみが実施形態のスクレーパ26と異なっている。以上のように構成されたスクレーパ50によれば、実施形態のスクレーパ26と同じ作用効果を奏することができる。すなわち、前述したように、スパッタ4が溶接領域3bと平面的にオーバーラップする状態まで増大している場合には、上クランプ30が図14に示す挟持位置から、図15に実線で示す待避位置まで回動する際、スクレーパ50によって、スパッタ4の少なくとも一部を上クランプ30の側端部から除去することができる。
また、スパッタ除去部として、スクレーパ26に代えて、図16及び図17に示すスクレーパ51を用いてもよい。両図に示すように、このスクレーパ51は、固定部51aと壁部51bを備えている。これらの固定部51a及び壁部51bの左右方向の幅は、図示しないが、実施形態のスクレーパ26と同一の所定幅Wに設定されており、スクレーパ51の両端面は、上クランプ30の回動時の軌跡が位置する鉛直面と平行に配置されている。
このスクレーパ51の場合、壁部51bが固定部51aの前端部から斜め前上がりに傾斜した状態で延びており、この点のみが実施形態のスクレーパ26と異なっている。以上のように構成されたスクレーパ51によれば、実施形態のスクレーパ26と同じ作用効果を奏することができる。すなわち、前述したように、スパッタ4が溶接領域3bと平面的にオーバーラップする状態まで増大している場合には、上クランプ30が図16に示す挟持位置から、図17に実線で示す待避位置まで回動する際、スクレーパ51によって、スパッタ4の少なくとも一部を上クランプ30の側端部から除去することができる。
また、実施形態は、スパッタ除去部として、上クランプ30の回動時の軌跡が位置する鉛直面と平行な両端面を有するスクレーパ26を用いた例であるが、本発明のスパッタ除去部はこれに限らず、一方の挟持部が所定平面に沿って移動するときに、その所定平面に沿って延びる縁部を有するものであればよい。例えば、スパッタ除去部として、スクレーパ26の両端面の前端が所定幅Wに設定され、後方に向かうほど、両端面の幅が狭くなるような構成のものを用いてもよい。
さらに、実施形態は、レーザとして、固体レーザを用いた例であるが、これに代えて、ガスレーザ及び半導体レーザなどの各種レーザを用いてもよい。
一方、実施形態では、図12に示す位置を待避位置としたが、待避位置はこれに限らず、スクレーパ26によって、上クランプ30の上挟持部32及び薄肉部31cの側端部に付着したスパッタ4を除去できる位置であればよい。例えば、上クランプ30が、図12に示す位置から回動軸35を中心として時計回りにさらに回動した位置を待避位置としてもよい。
また、実施形態では、スクレーパ26の壁部26bの左右方向の幅を溶接領域3bと同じ所定幅Wに設定したが、壁部26bの左右方向の幅を所定幅Wよりも大きく、かつ上クランプ30の腕部31b,31b間の間隔よりも小さいサイズに設定してもよい。このように構成した場合、上クランプ30が図7に示す挟持位置から図12に示す待避位置まで回動する際、上挟持部32及び薄肉部31cがスクレーパ26の側面付近を通過するときの、両者の間隔を所定間隔Dよりも小さくすることができる。それにより、スパッタ4をより効果的に除去することができる。
さらに、実施形態のレーザ溶接装置1は、上下の挟持部32,24を1組として、4組の挟持部32,24を備えるように構成した例であるが、3組以下又は5組以上の挟持部32,24を備えるように構成してもよい。
一方、実施形態のレーザ溶接装置1は、1つのレーザ発振器2を図2の実線で示す位置と、図2の2点鎖線で示す3つの位置との間で移動することにより、4つの溶接箇所への溶接を実施した例であるが、4つのレーザ発振器2を、図2の実線で示す位置と図2の2点鎖線で示す3つの位置にそれぞれ設け、これらのレーザ発振器2によって同時に4つの溶接箇所への溶接動作を実行してもよい。
また、実施形態は、駆動手段として、エア駆動式のアクチュエータ40を用いた例であるが、本発明の駆動手段はこれに限らず、一方の挟持部を、ワークを2つの挟持部の他方との間に挟持する挟持位置と、挟持位置から待避することによりワークを解放する待避位置との間で駆動するものであればよい。例えば、駆動手段として、電動アクチュエータや、油圧アクチュエータなどを用いてもよい。
1 レーザ溶接装置(レーザ加工装置)
2 レーザ発振器
2a レーザ光
3 ワーク
3a 金属板
3b 溶接領域(加工領域)
10 クランプ装置(挟持治具)
24 下挟持部(2つの挟持部の他方)
26 スクレーパ(スパッタ除去部)
31c 薄肉部(2つの挟持部の一方)
32 上挟持部(2つの挟持部の一方)
40 アクチュエータ(駆動手段)
50 スクレーパ(スパッタ除去部)
51 スクレーパ(スパッタ除去部)
D 所定間隔

Claims (3)

  1. 金属で構成されたワークを挟持しながら、当該ワークをレーザ光を用いて加工するレーザ加工装置において、
    前記ワークの加工時に当該ワークを互いの間に挟持する2つの挟持部を有し、当該2つの挟持部の一方の側端部が、前記レーザ光の光路を横切る方向において当該レーザ光による前記ワークの加工領域との間に所定間隔を存するように設けられた挟持治具と、
    前記一方の挟持部を、前記ワークを前記2つの挟持部の他方との間に挟持する挟持位置と、当該挟持位置から待避することにより前記ワークを解放する待避位置との間で駆動する駆動手段と、
    前記一方の挟持部が前記駆動手段によって前記挟持位置と前記待避位置との間で駆動される際、当該一方の挟持部の前記側端部が当該駆動中に前記所定間隔以下の間隔で通過するように設けられたスパッタ除去部と、
    を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
  2. 請求項1に記載のレーザ加工装置において、
    前記一方の挟持部の前記側端部は、前記駆動手段によって前記一方の挟持部が前記挟持位置と前記待避位置との間で駆動されたときに、所定平面に沿って移動するように構成されており、
    前記スパッタ除去部は、前記所定平面に沿って延びる縁部を有し、
    前記一方の挟持部の前記側端部は、前記所定平面に沿って移動するときに、前記スパッタ除去部の前記縁部の付近を前記所定間隔以下の間隔で通過することを特徴とするレーザ加工装置。
  3. 請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
    前記ワークの前記加工領域の部位は、複数の金属板が互いに積層された部位であり、当該加工領域は前記加工時に前記レーザ光によってレーザスポット溶接されることを特徴とするレーザ加工装置。
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