JP7002350B2 - セリア系複合中空微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合中空微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 - Google Patents
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Description
シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低い事が望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法等が提案されている。
これは、焼成工程を含むセリア粒子の製造方法(焼成によりセリア粒子の結晶化度が高まる)に比べて、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製法は、焼成工程を含まず、液相(硝酸第一セリウムを含む水溶液)から酸化セリウム粒子を結晶化させるだけなので、生成する酸化セリウム粒子の結晶化度が相対的に低く、また、焼成処理を経ないため酸化セリウムが母粒子と固着せず、酸化セリウムが研磨基材の表面に残留することが主要因であると、本発明者は推定している。
また、これら文献に記載されているセリア粒子は母粒子上に付着されたものであり、強く固着されていないので母粒子から脱落しやすい。
さらに、特許文献2の記載の真球状のシリカ母粒子上に結晶性セリア粒子を形成した砥粒を用いて研磨すると、セリア粒子の研摩時の機械的作用と同時に起こる化学的な反応によりシリカ膜の研磨速度は高いものの、高い圧力条件下では、セリア結晶が脱落や磨減、崩壊により、基板とセリアの接触面積が低下し、研磨速度が低くなる恐れがある。
本発明は以下の(1)~(6)である。
(1)下記[1]から[3]の特徴を備える平均粒子径20~400nmのセリア系複合中空微粒子を含む、セリア系複合中空微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合中空微粒子は外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備え、前記セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散していること。
[2]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が8~30nmであること。
(2)前記セリア系複合中空微粒子に含まれる不純物の含有割合が、次の(a)及び(b)のとおりであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のセリア系複合中空微粒子分散液。
(a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl及びSO4の含有率が、それぞれ5ppm以下。
(3)上記(1)または(2)に記載のセリア系複合中空微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
(4)前記研磨用砥粒分散液が、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする上記(3)に記載の研磨用砥粒分散液。
(5)下記の工程1~工程3を含み、上記(1)または(2)に記載のセリア系複合中空微粒子分散液が得られることを特徴とするセリア系複合中空微粒子分散液の製造方法。
工程1:シリカ中空微粒子が溶媒に分散しているシリカ中空微粒子分散液を撹拌し、温度を0~70℃、pHを7.0~11.0、酸化還元電位を-400~300mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、400~1,200℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えてpH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして焼成体解砕分散液を得る工程。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合中空微粒子分散液を得る工程。
(6)前記工程1における前記シリカ中空微粒子に含まれる不純物の含有割合が、次の(a)及び(b)のとおりであることを特徴とする上記(5)に記載のセリア系複合中空微粒子分散液の製造方法。
(a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl及びSO4の含有率が、それぞれ5ppm以下。
本発明のセリア系複合中空微粒子分散液の製造方法においては、セリア系複合中空微粒子に含まれる不純物を著しく低減させ、高純度化させることも可能である。本発明のセリア系複合中空微粒子分散液の製造方法の好適態様によって得られる、高純度化されたセリア系複合中空微粒子分散液は、不純物を含まないため、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。
また、本発明のセリア系複合中空微粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した場合、半導体デバイス表面の平坦化に有効であり、特にはシリカ絶縁膜が形成された基板の研磨に好適である。
また、本発明のセリア系複合中空微粒子分散液に分散しているセリア系複合中空微粒子は、外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備え、更に、該セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散してなる粒子であり、セリア固有の効果である排ガス浄化用触媒、アンモニア浄化用触媒、Pd等の他の触媒金属の安定化剤等の用途に適用可能であり、特に外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造をとるので外径が同程度のセリア単体粒子に比べて、密度は低く、より少量のセリアであっても、同等ないし同等以上の触媒機能等を発揮することが可能となる。
本発明は、下記[1]から[3]の特徴を備える平均粒子径20~400nmのセリア系複合中空微粒子を含む、セリア系複合中空微粒子分散液である。
[1]前記セリア系複合中空微粒子は外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備え、前記セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散していること。
[2]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が8~30nmであること。
また、このようなセリア系複合中空微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
工程1:シリカ中空微粒子が溶媒に分散しているシリカ中空微粒子分散液を撹拌し、温度を0~70℃、pHを7.0~11.0、酸化還元電位を-400~300mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、400~1,200℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えてpH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして焼成体解砕分散液を得る工程。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合中空微粒子分散液を得る工程。
なお、相対遠心加速度とは、地球の重力加速度を1Gとして、その比で表したものである。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の複合微粒子の形成過程および結果として中空構造を備えることとなる機構、ならびに結晶性セリア粒子が外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に分散して存在することになる機構について、本発明者は以下のように推定している。図1を用いて説明する。
例えば、特許文献3に記載のシリカ中空微粒子の製造方法の操作を行うことで得た中空シリカゾルに、セリウム塩の溶解液を添加しながら、並行してアルカリを添加すると、セリウム塩の溶解液が中和される。そうすると、シリカ中空微粒子の表面のシラノール基と、セリウム塩の溶解液の中和による生成物(水酸化セリウム等)とが反応(図1(a)参照)し、一例として、Ce(OH)・Si(OH)様の化合物を経由して、シリカ中空微粒子の表面にCeO2・SiO2・SiOH等およびCeO2超微粒子(粒径が2.5nm以上、8nm未満の範囲)を含む層(以下「CeO2超微粒子含有層」ともいい、CeO2超微粒子とセリウムシリケート層からなる層)が、シリカ中空微粒子の外側に形成される(図1(b)参照)。シリカ中空微粒子の表面に形成されるCeO2超微粒子は、焼成工程においてセリウムシリケート層から分相したセリウム原子がCeO2超微粒子に沈着してセリアが粒子成長する。必要とする研磨速度を達成するためのセリア粒子の結晶の大きさ(8~30nm)とするためには、調合で得た結晶子径が2.5nm未満であるとより高温焼成が必要とされる。しかし、高温で処理されると分相で生じたシリカが接着剤となって、当該発明の単結晶性セリア被覆複合粒子を、後工程における解砕によって得ることができない。
前記CeO2超微粒子含有層は、シリカ中空微粒子表面のシラノール基と、セリウム塩の溶解液の中和による生成物(水酸化セリウム等)との反応によりシリカ中空微粒子の表面が溶出し、これに(吹き込んだエアー等に由来する)酸素等が影響して、固化して形成されたものと推定される。
そして、その後、乾燥し、400~1200℃程度で焼成すると、前記CeO2超微粒子含有層の内部に存在している、粒径が2.5nm以上、8nm未満のCeO2超微粒子が、セリウムシリケート層内に存在しているセリウム原子を取り込んで粒径を成長させ、最終的には平均結晶子径が8~30nm程度にまで成長した結晶性セリア粒子(セリア子粒子)となる(図1(c)参照)。また、セリウムシリケート層(例えばCeO2・SiO2・SiOH)は、熱分解や熱拡散等によりセリウム含有シリカ層となる(図1(c)参照)。そのため、結晶性セリア粒子はセリウム含有シリカ層内で分散した状態で存在することとなる。
なお、図1(c)では、シリカ中空微粒子を構成するシリカの全てが外殻としてのセリウム含有シリカ層を構成する物質に変わった例を示しているが、シリカ中空微粒子の一部がセリウム含有シリカ層の内側に残存する場合もある。このような場合でも、本発明の複合微粒子に含まれる。
また、このような機構によって形成された結晶性セリア粒子(子粒子)は粒子どうしの合着が生じ難い。なお、セリウムシリケート層に含まれるセリウムの一部は結晶性セリア粒子になりきれず残存するため、セリウム含有シリカ層が形成される。
シリカ中空微粒子分散液とセリウムの金属塩の反応時の調合温度が0~70℃でかつ酸化還元電位を所定範囲に保った場合は、水酸化セリウム等とシリカ中空微粒子との反応性が抑制され、シリカ中空微粒子があまり溶解せず、調合後のシリカ中空微粒子は、例えばシリカ中空微粒子の空隙の径は維持し、厚さは10~20%程度、体積は10~25%程度の減少に抑えられる。そのため前述の例の場合、CeO2超微粒子含有層の組成はシリカ濃度が約1割、セリア濃度が約9割になり、CeO2超微粒子含有層のセリアの割合が増加し、焼成後にセリウム含有シリカ層が形成される。また調合後のセリアの結晶サイズは2.5nm以上、8nm未満(一例として5~7nm)程度となるため、焼成により所定サイズにセリア子粒子を結晶成長させるためのセリウム原子の拡散量が少なくてよく、結果的にセリウムシリケート層中に多くセリウムが残存し、低温焼成で結晶成長がおきて、8~30nmのセリア粒子が得られる。従って、0~70℃で調合した場合は、セリウム含有シリカ層の層内にセリア子粒子が分散した形態となる。
本発明の複合微粒子は図2および図3に例示する構造を備えている。図2(a)、図2(b)、図3(a)および図3(b)は共に本発明の複合微粒子の断面の模式図である。図2(a)および図3(a)は、子粒子の一部が外部に露出しているタイプであり、図2(b)および図3(b)は、全ての子粒子が外部に露出していない、埋没タイプである。また、図2はシリカ中空微粒子が残存しているタイプであり、図3はシリカ中空微粒子が残存していないタイプを示している。
図2および図3に示すように、本発明の複合微粒子20は、外殻としてのセリウム含有シリカ層12の内部に空隙10を有する中空構造を備え、セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子14が分散している。
なお、図2および図3中の▲は、TEM-EDS分析を行う測定点X、X´、YおよびZの例示である。
ただし、本発明の複合微粒子の断面についてSTEM-EDS分析を行い、CeとSiの元素濃度を測定すると、図2または図3に示した構造であることを確認することができる。
すなわち、走査透過型電子顕微鏡(STEM)によって特定した箇所に電子ビームを選択的に照射するEDS分析を行い、図3に示す本発明の複合微粒子の断面の測定点XにおけるCeとSiとの元素濃度を測定すると、いずれもゼロ%となる。別の言い方をすれば、走査透過型電子顕微鏡(STEM)によって特定した箇所に電子ビームを選択的に照射するEDS分析を行ったときに、粒子内におけるCeとSiとの元素濃度がいずれもゼロ%となった部分が空隙10である。
ここで、図3において10を囲む円状のラインの外側はセリウム含有シリカ層12となる。
本発明の複合微粒子は、外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備える。そして、セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散している。
セリウム含有シリカ層が非晶質シリカ層を主成分とすることは、例えば、次の方法で確認することができる。本発明の複合微粒子を含む分散液を乾燥させた後、乳鉢を用いて粉砕し、例えば、従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカのピークは現れない。このことから、セリウム含有シリカ層に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、セリウム含有シリカ層が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、本発明の分散液を乾燥させ、樹脂包埋した後にPtによるスパッタコーティングを施し、従来公知の収束イオンビーム(FIB)装置を用い断面試料を作成する。例えば作成した断面試料を従来公知のTEM装置を用い、高速フーリエ変換(FFT)解析を用いてFFTパターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカの回折図は現れない。このことから、セリウム含有シリカ層に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、セリウム含有シリカ層が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、別の方法として同様に作成し断面試料について、従来公知のTEM装置を用い、セリウム含有シリカ層の原子配列による格子縞の有無を観察する方法が挙げられる。結晶質であれば結晶構造に応じた格子縞が観察され、非晶質であれば格子縞は観察されない。このことから、セリウム含有シリカ層に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、セリウム含有シリカ層が非晶質シリカを主成分とするものとする。
セリウム含有シリカ層は、例えばLa、Ce、Zrを10質量%以下含んでいてもよく、その他の不純物元素を含んでもよい。
なお、セリウム含有シリカ層の平均の厚さは、STEM-EDS分析を行った元素マップにおいて本発明の複合微粒子の中心からセリウム含有シリカ層の最も外側まで任意の12箇所に直線を引き、その直線上において、前述のようにSTEM-EDS分析を行って得た元素マップから特定されるCeモル濃度とSiモル濃度とが共にゼロ%となっている空洞の輪郭と、本発明の複合微粒子のセリウム含有シリカ層の最も外側との距離(本発明の複合微粒子の中心を通る線上の距離)を測定し、それらを単純平均して求めるものとする。なお、本発明の複合微粒子の中心は、後述する本発明の複合微粒子の長軸と短軸との交点を意味するものとする。
本発明の複合微粒子において結晶性セリアを主成分とする子粒子(以下、「セリア子粒子」ともいう)は、外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に分散している。
前記セリア子粒子は、前記セリウム含有シリカ層中に埋没するものもあれば、セリウム含有シリカ層から部分的に露出するものもある。
子粒子は、例えばLa、Ce、Zrを10質量%以下含んでいてもよく、その他の不純物元素を含んでもよい。
初めに本発明の複合微粒子をSTEM-EDS分析によって80万倍で観察し、得られた元素マップにおいてCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が50%となるラインを特定することで子粒子を特定する。次に、その子粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその子粒子の粒子径とする。
このようにして100個以上の子粒子について粒子径を測定し、粒子径分布を得ることができる。
子粒子の平均粒子径が30nmを超える場合、工程2において、そのようなセリア子粒子を有した前駆体粒子は、焼成後に焼結や凝結が生じ解砕も困難となる傾向がある。また、セリウム含有シリカ層からセリウムが排出されるとセリウム含有シリカ層の強度が低下して本発明の複合粒子が破壊されることがある。このようなセリア系複合中空微粒子分散液は、研磨用途に使用しても研磨対象でのスクラッチ発生を招く可能性がある。子粒子の平均粒子径が8nm未満の場合、同じく研磨用途に使用すると、実用的に充分な研磨速度を得難い傾向がある。
また、子粒子はセリウム含有シリカ層内に埋没していてよいし、セリウム含有シリカ層の外部へ部分的に露出していてもよいが、子粒子がセリウム含有シリカ層の内部に埋没した場合は、保存安定性及び研磨安定性が向上し、さらに研磨後の基板上に砥粒残りが少なくなることから、子粒子はセリウム含有シリカ層の内部に埋没している方が望ましい。
前記子粒子が結晶性セリアを主成分とすることは、例えば、本発明の分散液を乾燥させた後、得られた固形物を乳鉢を用いて粉砕する等して本発明の複合微粒子を得た後、これを例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)を用いてX線分析し、得られたX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、前記子粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ない、あるいはセリア結晶中に固溶しているため、X線回折による検出範囲外となる。
なお、多くの場合は(111)面のピークの強度が最大になるが、他の結晶面、例えば(100)面のピークの強度が最大であってもよい。その場合も同様に算出でき、その場合の平均結晶子径の大きさは、上記の(111)面の平均結晶子径と同じであってよい。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半値全幅を測定し、下記のScherrerの式により、平均結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:平均結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(1.5419オングストローム、Cuランプ)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
従来、砥粒としてセリア粒子を用いてシリカ膜付基板やガラス基材を研磨すると、他の無機酸化物粒子を用いた場合に比べて、特異的に高い研磨速度を示すことが知られている。セリア粒子がシリカ膜付基板に対して、特に高い研磨速度を示す理由の一つとして、セリア粒子中に含まれる三価のセリウムが被研磨基板上のシリカ被膜に対して、高い化学反応性を持つことが指摘されている。酸化セリウム中のセリウムは三価と四価の価数となりうるが、半導体用の研磨材として用いられる純度の高い酸化セリウム粒子は、炭酸セリウムなどの高純度なセリウム塩を700℃の高温で焼成するプロセスを経ている。そのため、焼成型セリア粒子中のセリウムの価数は四価を主としており、例え三価のセリウムを含んでいたとしてもその含有量は十分でない。
本発明の複合微粒子の好適態様は、その外表面側に存在する子粒子(セリア微粒子)において、Si原子がCeO2結晶に侵入型の固溶をしていると見られる。Si原子の固溶により、CeO2結晶の結晶歪みが生じることで、高温で焼成しても酸素欠陥が多くなりSiO2に対して化学的に活性な三価のセリウムが多く生じ、CeO2の化学反応性を助長する結果、上記の高い研磨速度を示すものと推察される。また三価のセリウム含有量を増加させるために、LaやZrなどをドープさせても構わない。
なお、上記のR1、R2等の、セリウム原子およびケイ素原子の原子間距離は、従来公知のX線吸収分光測定装置(例えばRigaku社製のR-XAS Looper)を用いて、CeL III吸収端(5727eV)におけるX線吸収スペクトルを測定し、そのX線吸収スペクトルに現れるEXAFS振動を得た後、従来公知の方法(例えば、Rigaku製ソフトウエアREX-2000を使用した解析)によって求めた値を意味するものとする。
本発明の複合微粒子は、外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備える。
空隙の大きさは特に限定されない。空隙の大きさは、本発明の複合微粒子の大きさから、セリウム含有シリカ層の厚さを引いた大きさということになる。
ここで空隙の平均径は、次の方法によって測定するものとする。
初めに本発明の複合微粒子についてSTEM-EDS分析によって80万倍で観察し、Ceモル濃度とSiモル濃度とが共にゼロ%となる部分を空隙として特定する。次に、その空隙の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が空隙を特定するラインと交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその空隙の径とする。
このようにして50個の粒子の空隙について径を測定し、これを単純平均して得た値を平均径とする。
本発明の複合微粒子について説明する。
本発明の複合微粒子は、前述のように、[1]前記セリア系複合中空微粒子は外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備え、前記セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散しており、[2]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出され、[3]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が8~30nmである。
なお、上記のシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比を算定する場合の対象となるシリカとは、本発明の複合微粒子に含まれる全てのシリカ(SiO2)を意味する。
次に、所定量の本発明の複合微粒子に含まれるセリウム(Ce)の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、酸化物質量%(CeO2質量%等)に換算する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO2以外の成分はSiO2であるとして、SiO2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、シリカとセリアの質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したシリカ源物質とセリア源物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやシリカが溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやシリカの使用量と分析値が良い一致を示す。
なお、前記粒子連結型粒子とは、粒子間に再分散できない程度の化学結合が生じて粒子が連結してなるもの(凝結粒子)を意味する。また、単粒子とは、複数粒子が連結したものではなく、粒子のモルホロジーに関係なく凝集していないものを意味する。
前記の被研磨基板に対する研磨レート向上を重視する場合における、本発明の複合微粒子分散液としては、次の態様1を挙げることができる。
[態様1]本発明の複合微粒子が、更に、画像解析法で測定された短径/長径比が0.8未満である粒子の個数割合が45%以上であることを特徴とする、本発明の分散液。
また、前記被研磨基板上の表面粗さが低い水準にあることを重視する場合における、本発明の複合微粒子分散液としては、次の態様2を挙げることができる。
[態様2]本発明の複合微粒子が、更に、画像解析法で測定された短径/長径比が0.8以上である粒子の個数割合が40%以上であることを特徴とする、本発明の分散液。
ここで、写真投影図で観察される任意の50個の粒子において、短径/長径比が0.80未満または0.80以上である粒子の個数割合(%)を求めることができる。
試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、5mlを採取し、これを従来公知の粗大粒子数測定装置に注入する。そして、0.51μm以上の粗大粒子の個数を求める。この測定を3回行い、単純平均値を求め、その値を1000倍して、0.51μm以上の粗大粒子数の値とする。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
まず、密度測定装置の試料室の温度を25℃に設定し、あらかじめN2ガスを流し、校正球を使用して試料室容量の校正を行う。次に、乾燥させた試料を試料セルに約8割入れ、試料セルを装置にセットして測定を開始する。試料の質量と試料室にかかる圧力から得られる試料の体積から密度を測定する。
このような気相置換法による密度測定は、例えば従来公知の密度測定装置を用いて行うことができる。
本発明において密度は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
本発明の複合微粒子の平均粒子径は、画像解析法で測定された平均粒子径の個数平均値を意味する。
このようにして50個以上の複合粒子について平均粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出する。
また、本発明の複合微粒子において、Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ100ppm以下であることが好ましい。さらに50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましい。
また、本発明の複合微粒子において、U、Th、Cl及びSO4の各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
dry量に対する含有率とは、対象物(本発明の複合微粒子または後述するシリカ中空微粒子)に含まれる固形分の質量に対する測定対象物(特定不純物群1または特定不純物群2)の重量の比(百分率)の値を意味するものとする。
このようなシリカ中空微粒が溶媒に分散してなる分散液の場合、イオン交換処理を行って前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも前記特定不純物群1または前記特定不純物群2が合計で数ppmから数百ppm残留する。そのため水硝子を原料としたシリカ中空微粒子を用いる場合は、酸処理等で不純物を低減させることも行われている。
これに対し、アルコキシシランを原料として合成したシリカ中空微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、通常、前記特定不純物群1における各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、前記特定不純物群2における各元素と各陰イオンの含有率は、それぞれ20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Zn、Zr、U及びTh:ICP-MS(誘導結合プラズマ発光分光質量分析)
・Cl:電位差滴定法
・SO4:イオンクロマトグラフ
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
ΔPCD/V=(I-C)/V・・・式(1)
C:前記クニックにおける流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記クニックにおける前記カチオンコロイド滴定液の添加量(ml)
また、クニックとは、カチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線において急激に流動電位が変化する点(変曲点)である。そして変曲点における流動電位をC(mV)とし、変曲点におけるカチオンコロイド滴定液の添加量をV(ml)とする。
流動電位曲線の開始点とは、滴定前の本発明の分散液における流動電位である。具体的にはカチオンコロイド滴定液の添加量が0である点を開始点とする。この開始点における流動電位をI(mV)とする。
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は以下に説明する工程1~工程3を備える。
工程1ではシリカ中空微粒子が溶媒に分散してなるシリカ中空微粒子分散液を用意する。
なお、本明細書では「工程1」を「調合工程」という場合もある。
シリカ中空微粒子が非晶質シリカを主成分とすることは、前述のセリウム含有シリカ層の場合と同様に、例えば、次の方法で確認することができる。シリカ中空微粒子が溶媒に分散しているシリカ中空微粒子分散液を乾燥させた後、乳鉢を用いて粉砕し、例えば、従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカのピークは現れない。このことから、シリカ中空微粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、シリカ中空微粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
具体的には、原料であるシリカ中空微粒子分散液中のシリカ中空微粒子として、次の(a)と(b)の条件を満たすものが好適に使用される。
(a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl及びSO4の含有率が、それぞれ5ppm以下。
画像解析法による平均粒子径の測定方法を説明する。透過型電子顕微鏡により、シリカ中空微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをシリカ中空微粒子の平均粒子径とする。
このようにして50個以上のシリカ中空微粒子について平均粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出する。このようにして得られた値をシリカ中空微粒子の平均粒子径とする。
このセリウム含有シリカ層の厚さは、画像解析法で測定するものとする。
画像解析法について詳細に説明する。透過型電子顕微鏡により、シリカ中空微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、長軸上にて長軸を2等分する点を特定し、この点をシリカ中空微粒子の中心と定める。次に、この中心から粒子の最外縁まで任意の12箇所に直線を引き、その直線上における空洞の輪郭と交わる点と最外縁と交わる点との長さを測定し、12箇所におけるそれらを単純平均し、得られた値をその1粒子のセリウム含有シリカ層の厚さとする。そして、50個のシリカ中空微粒子のセリウム含有シリカ層の厚さを求め、それらを単純平均して得られた値を、そのシリカ中空微粒子のセリウム含有シリカ層の厚さとする。
ここで空隙の平均径は、画像解析法で測定するものとする。
画像解析法について詳細に説明する。透過型電子顕微鏡により、シリカ中空微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の空隙の輪郭を特定する。そして、その輪郭の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が輪郭を特定するラインと交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその空隙の径とする。
このようにして50個の粒子の空隙について径を測定し、これを単純平均して得た値を平均径とする。
ここで密度は、前述の本発明の複合微粒子の密度と同じ方法によって測定するものとする。
ここで、シリカ中空微粒子を用いてなる本発明の分散液を研磨用途に使用する場合であって、被研磨基板に対する研磨レート向上を重視する場合は、シリカ中空微粒子の画像解析法で測定された短径/長径比が0.80以下(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合は45%以下(より好ましくは35%以下)であることが好ましい。なお、同じく被研磨基板上の表面粗さが低い水準にあることを重視する場合は、この限りではない。
なお、前記粒子連結型粒子とは、粒子間に再分散できない程度の化学結合が生じて粒子が連結してなるもの(凝結粒子)を意味する。また、単粒子とは、複数粒子が連結したものではなく、粒子のモルホロジーに関係なく凝集していないものを意味する。
なお、このような前駆体粒子であっても、焼成温度を1200℃以上とすることでセリア子粒子の平均結晶子径を8~30nmとすることは可能であるが、この場合は、セリウム含有シリカ層は形成されずにシリカ被膜が形成され、このシリカ被膜がセリア子粒子を強固に被覆する傾向が強まるために、解砕が困難となる点で支障がある。そのため、反応温度を0~70℃に保ち、液相でのシリカとセリアの反応を適度に抑えることで、乾燥後の前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の平均結晶子径を2.5nm以上にでき、解砕しやすい粒子となる。さらに乾燥後の平均結晶子径が大きいため、セリア子粒子の平均結晶子径を8~30nmとするための焼成温度を低くすることができ、焼成により形成されるセリウム含有シリカ層の厚みが過剰に厚膜化せず、解砕が容易となる。
さらに、酸化還元電位を所定の範囲に調整しない場合は、調合工程で生成したCeO2超微粒子は結晶化しにくい傾向にあり、結晶化していないCeO2超微粒子は調合後の加熱、熟成によっても結晶化が促進されない。そのため工程2の焼成において所定サイズに結晶化させるためには、高温での焼成が必要となり、解砕が困難になる。
調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が2.5nm未満であると、焼成後のセリア粒子径を8nm以上とするために、焼成温度を高くする必要があり、その場合、解砕が困難となる可能性がある。溶解されやすいシリカ中空微粒子は、100℃以上で乾燥させた後に原料に供すると溶解性を抑制することができる。
酸化還元電位を上記の範囲内に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアー、酸素及びオゾンを吹き込む方法が挙げられる。これらの方法を行わない場合は、酸化還元電位は-400mV以下になる傾向にある。
すなわち、工程1では、温度0~70℃にて処理を行うが、その後に、温度70℃超98℃以下に変更して処理を行って前記前駆体粒子分散液を得ることが好ましい。
このような工程1を行うと、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得やすいからである。
なお、温度を70℃超98℃以下として処理する場合のpHおよび酸化還元電位の好適値、調整方法等は、温度0~70℃にて処理する場合と同様とする。
このような工程1を行うと、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得やすいからである。
なお、温度を70℃超98℃以下として処理する場合のpHおよび酸化還元電位の好適値、調整方法等は、温度0~70℃にて処理する場合と同様とする。
このように調合中に温度を変化させて調合した場合であっても、温度が0~70℃にて調合が行われる工程が含まれていれば、複合微粒子は前述と同様の生成機構となる。
また、反応温度を2段階以上で行う場合の0~70℃で反応させる工程でのセリウム金属塩の添加量は、セリウム金属塩の全添加量に対して10~90質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を超える場合は、サイズの大きい(または小さい)CeO2超微粒子およびセリア子粒子割合が少なくなるため、粒度分布があまり広くならないからである。
工程2では、前駆体粒子分散液を乾燥させた後、400~1,200℃で焼成する。
なお、好適には、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0~7.0とすることが推奨される。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0~7.0とした場合、表面活性を抑制できるからである。
またフラックス成分は、原料のコロイダルシリカからの持込みを利用したり、調合時にセリウム金属塩の中和に使用するアルカリとして利用しても良いが、調合時にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が共存した場合、シリカ中空微粒子の重合が促進され緻密化するため、水酸化セリウム等とシリカ中空微粒子との反応性が低下する。さらにシリカ中空微粒子の表面がアルカリ金属またはアルカリ土類金属で保護されるため、水酸化セリウム等との反応性が抑制され、セリウム含有シリカ層が形成されない傾向にある。さらに調合中にシリカの溶解が抑制されるため、セリア子粒子中にケイ素原子が固溶し難くなる。
ここで、焼成体に湿式で解砕処理を施す前に焼成体を乾式で解砕し、その後、湿式で解砕処理を施してもよい。
湿式の解砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料としたビーズを挙げることができる。
焼成体を湿式で解砕するときに用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。また、焼成体解砕分散液の固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3~50質量%の範囲にあることが好ましい。
すなわち、前述の好ましい態様に該当する本発明の分散液が得られる程度に、解砕を行うことが好ましい。前述のように、好ましい態様に該当する本発明の分散液を研磨剤に用いた場合、研磨速度がより向上するからである。これについて本発明者は、本発明の複合微粒子表面におけるセリウム含有シリカ層が適度に薄くなること、及び/又は複合微粒子表面の一部に子粒子が適度に露出することで、研磨速度がより向上し、且つセリア子粒子の脱落を制御できると推定している。さらに解砕中に、セリウム含有シリカ層中のシリカが溶解し再び沈着することで、軟質で易溶解なシリカ層が最外層に形成され、この易溶解性のシリカ層が基板との凝着作用で摩擦力を向上させ研磨速度が向上すると推定している。また、セリウム含有シリカ層が薄いか剥げた状態であるため、子粒子が研磨時にある程度脱離しやすくなると推定している。ΔPCD/Vは、-145.0~-10.0であることがより好ましく、-140.0~-20.0であることがさらに好ましい。
なお、工程2のような湿式解砕工程を経ずに、焼成粉をほぐす程度であったり、乾式解砕・粉砕だけ、あるいは湿式解砕であっても所定のpH範囲外の場合は、ΔPCD/Vが-150.0~-5.0の範囲となりにくく、さらに軟質で易溶解性のシリカ層が形成され難い。
工程3では、工程2において得られた前記焼成体解砕分散液について、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去し、セリア系複合中空微粒子散液を得る。
具体的には、前記焼成体解砕分散液について、遠心分離処理による分級を行う。遠心分離処理における相対遠心加速度は300G以上とする。遠心分離処理後、沈降成分を除去し、セリア系複合中空微粒子分散液を得ることができる。相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
本発明の分散液を含む液体は、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸塩などを使用することができる。
[SiO2含有量の測定]
シリカ中空微粒子分散液におけるSiO2含有量について、珪酸ナトリウムを原料とした場合は、シリカ中空微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。また、アルコキシシランを原料とした場合は、シリカ中空微粒子分散液を150℃で1時間乾燥させた後に秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。ここで得られたSiO2の含有量をシリカ中空微粒子分散液の固形分量(dry量)とする。また、この値を用いて、シリカ中空微粒子分散液の固形分濃度を求める。
また、セリア系複合中空微粒子におけるSiO2含有量は、セリア系複合中空微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い、固形分の質量を求めた後、後述するAg~Th等の場合と同様に、ICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いて標準添加法によってCe含有率を測定してCeO2質量%を算出し、CeO2以外の固形分の成分はSiO2であるとして、SiO2の含有量を求めた。なお、セリア系複合中空微粒子におけるSiO2含有率、CeO2含有率およびシリカ100質量部に対するセリアの質量部は、ここで求めたCeO2含有量およびSiO2含有量に基づいて算出した。ここで得られたCeO2含有量およびSiO2含有量の合計量を、セリア系複合中空微粒子分散液の固形分量(dry量)とする。また、この値を用いて、セリア系複合中空微粒子分散液の固形分濃度を求める。
以下に説明する特定不純物群1および特定不純物群2の含有率の測定では、このようにして求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
初めに、セリア系複合中空微粒子またはセリア系複合中空微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z-2310)で測定する。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Zn、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
<Cl>
セリア系複合中空微粒子またはセリア系複合中空微粒子分散液からなる試料20g(固形分20質量%に調整したもの)にアセトンを加え100mlに調整し、この溶液に、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT-610)で分析を行う。
別途ブランク測定として、アセトン100mlに酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で滴定を行った場合の滴定量を求めておき、試料を用いた場合の滴定量から差し引き、試料の滴定量とした。
そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
セリア系複合中空微粒子またはセリア系複合中空微粒子分散液からなる試料5g(固形分20質量%に調整したもの)を水で希釈して100mlにおさめ、遠心分離機(日立製 HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、沈降成分を除去して得た液をイオンクロマトグラフ(DIONEX製 ICS-1100)にて分析した。
そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対するSO4成分の含有率を求めた。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合中空微粒子分散液またはセリア系複合中空微粒子を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述の方法によって、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半価全幅を測定し、Scherrerの式により、平均結晶子径を求めた。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合中空微粒子分散液について、これに含まれる粒子の平均粒子径は、前述の画像解析法によって測定を行った。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合中空微粒子分散液について、これに含まれる粗大粒子数(0.51μm以上の粒子の個数)を測定した。測定は、前述の通り、従来公知の粗大粒子数測定装置を用いた方法である。
<SiO2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合中空微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は0.6質量%で硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。
次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さRa)を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、第3表には表面粗さを記載した。
なお研磨傷の観察は、光学顕微鏡を用いて絶縁膜表面を観察することで行った。
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合中空微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は9質量%で硝酸を添加してpHを2.0に調整した。
アルミハードディスク用基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板負荷0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨スラリーを20ml/分の速度で5分間供給して研磨を行い、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Maicro―Max)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cm2に相当する研磨処理された基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計し、次の基準に従って評価した。
線状痕の個数 評価
50個未満 「非常に少ない」
50個から80個未満 「少ない」
80個以上 「多い」
少なくとも80個以上で総数をカウントできないほど多い 「※」
《シリカ中空微粒子》の調製
シリカ・アルミナゾル(日揮触媒化成株式会社製:USBB-120、平均粒子径25nm、SiO2・Al2O3濃度:20重量%、固形分中Al2O3含有量:27重量%)100gに純水3900gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.5重量%の珪酸ナトリウム水溶液7,000gと、Al2O3として濃度0.5重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液7,000gとを5時間で添加して、SiO2・Al2O3一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは12.0であった。また、平均粒子径は50nmであった。
また、シリカ中空微粒子の短径/長径比を前述の画像解析法で測定したところ、短径/長径比が0.80以下である粒子の個数割合は32%であった。
また、シリカ中空微粒子の比表面積を、前述のBET比表面積測定法(窒素吸着法)によって測定したところ、100m2/gであった。
また、シリカ中空微粒子の密度を前述の方法によって測定したところ、1.2g/cであった。
さらに、シリカ中空微粒子に含まれる特定不純物群1および特定不純物群2の含有率を前述の方法によって測定した。結果を第1表に示す。
上記準備工程1のように得られたシリカ中空微粒子分散液に超純水を加えて、SiO2固形分濃度3質量%の分散液6,000g(SiO2 dry180g)(以下、A液ともいう)を得た。
そして、前駆体微粒子分散液の液温を15℃のまま4時間撹拌を継続した。熟成中は酸化還元電位を-200~100mVに保った。熟成終了後に室内に放置することで室温に戻し、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を施した後の前駆体粒子分散液は、固形分濃度が5質量%、pHが4.9(25℃にて)、電導度が47μs/cm(25℃にて)であった。
そして、解砕後にイオン交換水を用いて希釈し、アクリルビーズを分離して、固形分濃度が5質量%の焼成体解砕分散液を1115g得た。
結果を第2表に示す。
これらの測定結果を第3表に示す。
結果を第3表に示す。
なお、以下の実施例2~実施例5の各々にて得られたセリア系複合中空微粒子分散液に含まれるセリア系複合中空微粒子について、SEM像とTEM像を確認し、いずれも中空構造を有すること及び表面にセリア含有シリカ層が存在し、その層内に子粒子(セリア結晶粒子)が分散して存在していることを確認した。
実施例1では1050℃で焼成を行ったが、この焼成温度を940℃として焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
実施例1では1050℃で焼成を行ったが、この焼成温度を1140℃として焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
実施例1ではA液(6,000g)を15℃に保ち、撹拌しながらB液(13,803g)を18時間かけて添加し、この間、液温15℃を維持し、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pHを7.5~9.5を維持するように調合したが、実施例4では、A液(6,000g)を15℃に保ち、撹拌しながら、ここへB液(24,000.0g、SiO2の100質量部に対して、CeO2が400.0質量部に相当)を18時間かけて添加し、添加終了後に、液温15℃で4時間熟成を行った。
それら以外は実施例1と同様に実施し、同様の評価を行った。
実施例1ではA液(6,000g)を15℃に保ち、撹拌しながらB液(13,803g)を18時間かけて添加し、この間、液温15℃を維持し、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pHを7.5~9.5を維持するように調合したが、実施例4では、A液(6,000g)を15℃に保ち、撹拌しながら、ここへB液(666.7g、SiO2の100質量部に対して、CeO2が11.1質量部に相当)を18時間かけて添加し、添加終了後に、液温15℃で4時間熟成を行った。
それら以外は実施例1と同様に実施し、同様の評価を行った。
準備工程1で得られたシリカ中空微粒子分散液を用いて実施例1と同様の評価を行った。
<高純度113nm粒子の調整>
<< シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径63nm)の調製>>
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a1及び混合液b1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO2固形分濃度19質量%、画像解析法による平均粒子径63nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを9,646.3g得た。
メタノール2,733.3gと正珪酸エチル1,822.2gとを混合し、混合液a2とした。
次に、超純水1,860.7gと29%アンモニア水40.6gとを混合し、混合液b2とした。
次に、超純水59gとメタノール1,208.9gとを混合して敷き水として、前工程で得た平均粒子径63nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾル922.1gを加えた。
そして、シリカゾルを含んだ敷き水を撹拌しながら65℃に調整し、ここへ、混合液a2及び混合液b2を、各々18時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を65℃のまま3時間保持して熟成させた後、限外膜、ロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度(SiO2固形分濃度)を19質量%に調整し、3,600gのシリカ系微粒子分散液を得た。
また、陽イオン交換樹脂による処理を行った後のシリカ系微粒子分散液に含まれる粒子のNa、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの含有率(シリカdry量に対する各成分の含有率)は何れも1ppm以下であった。また、U、Th、Cl及びSO4の含有率が、それぞれ5ppm以下であった。
上記のようにして得られたシリカ系微粒子分散液を用いて実施例1と同様の評価を行った。
なお、比較例2で用いたシリカ系微粒子分散液に含まれるシリカ系微粒子は、中空構造を備えないものであるが、平均粒子径、成分等の測定結果を第1表に示す。
Claims (7)
- 下記[1]から[3]の特徴を備える平均粒子径20~400nmのセリア系複合中空微粒子を含む、セリア系複合中空微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合中空微粒子は外殻としてのセリウム含有シリカ層のみからなり、その内部に空隙を有する中空構造を備え、前記セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散していること。
[2]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が8~30nmであること。 - 下記[1]から[3]の特徴を備える平均粒子径20~400nmのセリア系複合中空微粒子を含む、セリア系複合中空微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合中空微粒子の一粒は、外殻としてのセリウム含有シリカ層の内部に空隙を有する中空構造を備え、その中空構造は一粒のシリカ中空微粒子からなり、前記セリウム含有シリカ層の内部に結晶性セリアを主成分とする子粒子が分散していること。
[2]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記セリア系複合中空微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が8~30nmであること。 - 前記セリア系複合中空微粒子に含まれる不純物の含有割合が、次の(a)及び(b)のとおりであることを特徴とする請求項1または2に記載のセリア系複合中空微粒子分散液。
(a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl及びSO4の含有率が、それぞれ5ppm以下。 - 請求項1~3のいずれかに記載のセリア系複合中空微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
- 前記研磨用砥粒分散液が、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする請求項4に記載の研磨用砥粒分散液。
- 下記の工程1~工程3を含み、請求項1~3のいずれかに記載のセリア系複合中空微粒子分散液が得られることを特徴とするセリア系複合中空微粒子分散液の製造方法。
工程1:シリカ中空微粒子が溶媒に分散しているシリカ中空微粒子分散液を撹拌し、温度を0~70℃、pHを7.0~11.0、酸化還元電位を-400~300mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、400~1,200℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えてpH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして焼成体解砕分散液を得る工程。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合中空微粒子分散液を得る工程。 - 前記工程1における前記シリカ中空微粒子に含まれる不純物の含有割合が、次の(a)及び(b)のとおりであることを特徴とする請求項6に記載のセリア系複合中空微粒子分散液の製造方法。
(a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Zn及びZrの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl及びSO4の含有率が、それぞれ5ppm以下。
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