JP2022103985A - セリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 - Google Patents

セリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】対象がシリカ膜、Siウェハなどを含む難加工材であっても高速で研磨ができる、研磨用砥粒分散液としてのセリア系複合微粒子分散液の提供。【解決手段】セリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子1は、母粒子と母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と子粒子とを有し、母粒子は非晶質シリカを主成分とし、子粒子は結晶性セリアを主成分とする。複合微粒子は、電子顕微鏡写真において複合微粒子の像が内接する円が存在し、該像は円周上の円弧7と弦5からなる弓形図形Xに対し、弓形図形Xの弦と少なくとも部分的に内接する。弓形図形Xの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。セリア系複合微粒子の像の面積に対し弓形図形Xの面積は特定倍である。複合微粒子の平均粒子径が50~350nmである。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体デバイス製造等に使用される研磨剤として好適なセリア系複合微粒子分散液に関し、特に基板上に形成された被研磨膜を、化学機械的研磨(ケミカルメカニカルポリッシング:CMP)で平坦化するためのセリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液に関する。
半導体基板、配線基板などの半導体デバイスなどは、高密度化・微細化することで高性能化を実現している。この半導体の製造工程においては、いわゆるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)が適用されており、具体的にはシャロートレンチ素子分離、層間絶縁膜の平坦化、コンタクトプラグやCuダマシン配線の形成などに必須の技術となっている。
一般にCMP用研磨剤は、砥粒とケミカル成分とからなり、ケミカル成分は対象被膜を酸化や腐食などさせることにより研磨を促進させる役割を担う。一方で砥粒は機械的作用により研磨する役割を持ち、コロイダルシリカやヒュームドシリカ、セリア粒子が砥粒として使われる。特にセリア粒子は酸化ケイ素膜に対して特異的に高い研磨速度を示すことから、シャロートレンチ素子分離工程での研磨に適用されている。
シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低い事が望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
従来、このような部材の研磨方法として、比較的粗い1次研磨処理を行った後、精密な2次研磨処理を行うことにより、平滑な表面あるいはスクラッチなどの傷が少ない極めて高精度の表面を得る方法が行われている。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法等が提案されている。
例えば、特許文献1には、硝酸第一セリウムの水溶液と塩基とを、pHが5~10となる量比で攪拌混合し、続いて70~100℃に急速加熱し、その温度で熟成することを特徴とする酸化セリウム単結晶からなる酸化セリウム超微粒子(平均粒子径10~80nm)の製造方法が記載されており、更にこの製造方法によれば、粒子径の均一性が高く、かつ粒子形状の均一性も高い酸化セリウム超微粒子を提供できると記載されている。
また、非特許文献1は、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製造方法と類似した製造工程を含むセリアコートシリカの製造方法を開示している。このセリアコートシリカの製造方法は、特許文献1に記載の製造方法に含まれるような焼成―分散の工程を有さないものである。
また、特許文献2には、非晶質のシリカ粒子Aの表面に、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む結晶質の酸化物層Bを有することを特徴とするシリカ系複合粒子が記載されている。また、好ましい態様として、非晶質のシリカ粒子Aの表面に、アルミニウム等の元素を含む非晶質の酸化物層であって、非晶質のシリカ層とは異なる非晶質の酸化物層Cを有し、さらに、その上にジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む結晶質の酸化物層Bを有することを特徴とするシリカ系複合粒子が記載されている。そして、このようなシリカ系複合粒子は、非晶質のシリカ粒子Aの表面に、結晶質の酸化物層Bを有するために、研磨速度を向上させることができ、かつ、シリカ粒子に前処理をすることにより、焼成時に粒子同士の焼結が抑制され研磨スラリー中での分散性を向上させることができ、さらに、酸化セリウムを含まない、あるいは酸化セリウムの使用量を大幅に低減することができるので、安価であって研磨性能の高い研磨材を提供することができると記載されている。また、シリカ系粒子Aと酸化物層Bの間にさらに非晶質の酸化物層Cを有するものは、粒子の焼結抑制効果と研磨速度を向上させる効果に特に優れると記載されている。
さらに、特許文献3には、非晶質シリカを主成分とする母粒子の表面上に結晶性セリアを主成分とする子粒子を有し、さらにその子粒子の表面にシリカ被膜を有している、下記[1]から[3]の特徴を備える平均粒子径50~350nmのシリカ系複合微粒子を含む、シリカ系複合微粒子分散液が記載されている。[1]前記シリカ系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11~316であること。[2]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。[3]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの(111)面の結晶子径が10~25nmであること。そして、このようなシリカ系複合微粒子によれば、シリカ膜、Siウェハや難加工材であっても高速で研磨することができ、同時に高面精度(低スクラッチ、被研磨基板の表面粗さ(Ra)が低いこと等)を達成でき、さらに不純物を含まないため、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができるシリカ系複合微粒子分散液を提供することができると記載されている。
特許第2,746,861号公報 特開2013-119131号公報 国際公開第2016/159167号パンフレット
Seung-Ho Lee, Zhenyu Lu, S.V.Babu and Egon Matijevic、"Chemical mechanical polishing of thermal oxide films using silica particles coated with ceria"、Journal of Materials Research、Volume 17、Issue 10、2002、pp2744-2749
しかしながら、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子について、本発明者が実際に製造して検討したところ、研磨速度が低く、さらに、研磨基材の表面に欠陥(面精度の悪化、スクラッチ増加、研磨基材表面への研磨材の残留)を生じやすいことが判明した。
これは、焼成工程を含むセリア粒子の製造方法(焼成によりセリア粒子の結晶化度が高まる)に比べて、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製法は、焼成工程を含まず、液相(硝酸第一セリウムを含む水溶液)から酸化セリウム粒子を結晶化させるだけなので、生成する酸化セリウム粒子の結晶化度が相対的に低く、また、焼成処理を経ないため酸化セリウムが母粒子と固着せず、酸化セリウムが研磨基材の表面に残留することが主要因であると、本発明者は推定している。
また、非特許文献1に記載のセリアコートシリカは焼成していないため、現実の研磨速度は低いと考えられ、また、シリカ粒子と固着一体化していないため、容易に脱落し、研磨速度の低下や、研摩の安定性を欠き、研磨基材の表面への粒子の残留も懸念される。
さらに、特許文献2に記載の酸化物層Cを有する態様のシリカ系複合粒子を用いて研磨すると、アルミニウム等の不純物が半導体デバイスの表面に残留し、半導体デバイスへ悪影響を及ぼすこともあることを、本発明者は見出した。
また、これら文献に記載されているセリア粒子は母粒子上に付着されたものであり、強く固着されていないので母粒子から脱落しやすい。
さらに、特許文献2の記載の真球状のシリカ母粒子上に結晶性セリア粒子を形成した砥粒を用いて研磨すると、セリア粒子の研摩時の機械的作用と同時に起こる化学的な反応によりシリカ膜の研磨速度は高いものの、高い圧力条件下では、セリア結晶が脱落や磨減、崩壊により、基板とセリアの接触面積が低下し、研磨速度が低くなる恐れがある。
また、特許文献3に記載のシリカ系複合微粒子分散液は、研磨用途において、優れた研磨性能(研磨速度、高面精度など)を発揮可能なものであるが、半導体装置の更なる高密度化・高集積化に伴い、半導体基板に対し、より優れた研磨性能を示す砥粒分散液が求められている。
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、シリカ膜、Siウェハや難加工材であっても高速で研磨することができ、さらに不純物を含まない場合、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができるセリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(10)である。
(1)下記[1]から[3]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を含む、セリア系複合微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子は、次の要件を満たすこと。
1)その電子顕微鏡写真上において、前記セリア系複合微粒子の像が内接する円が存在し、更に該セリア系複合微粒子の像は、その円の該円周上の円弧と弦からなる弓形図形Xに対し次の関係にあること。
(I)弓形図形Xの弦と、少なくとも部分的に内接する。
(II)弓形図形Xの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
2)前記セリア系複合微粒子の像の面積に対し、弓形図形Xの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
[3]前記セリア系複合微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nmであること。
(2)前記セリア系複合微粒子は、その電子顕微鏡写真上において、弦の長さの少なくとも20%と内接している、上記(1)記載のセリア系複合微粒子分散液。
(3)更に前記セリア系複合微粒子は、その電子顕微鏡写真上において、円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dの両側に、円弧に沿ってw/6(w:円弧の全長)ずつの長さに及ぶ円弧曲線とは内接せず、該円弧曲線の両末端と接続する2つの円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接している、上記(1)又は(2)記載のセリア系複合微粒子分散液。
(4)さらに下記[4]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載のセリア系複合微粒子分散液。
[4]前記セリア系複合微粒子は、子粒子の粒子径分布の変動係数が15~50%の範囲にあること。
(5)電子顕微鏡写真上において、全ての粒子に占める前記セリア系複合微粒子の個数割合が20~30%である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のセリア系複合微粒子分散液。
(6)上記(1)または(2)に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
(7)シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする上記(6)に記載の研磨用砥粒分散液。
(8)下記の工程1および工程2を含むことを特徴とし、上記(1)~(5)のいずれかに記載のセリア系複合微粒子分散液が得られる、セリア系複合微粒子分散液の製造方法。
工程1:下記1)、2)及び3)の条件を満たすシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~20℃、pHを5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)その電子顕微鏡写真上において、前記シリカ微粒子の像が内接する円が存在し、更に該シリカ微粒子の像は、該円周上の円弧と弦からなる弓形図形Yに対し次の関係にあること。
(I)弓形図形Yの弦と、少なくとも部分的に内接する。
(II)弓形図形Yの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
2)前記シリカ微粒子の像の面積に対し、弓形図形Yの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
3)前記シリカ微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nmであること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、850~1,100℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
(9)前記工程2が、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することにより前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程である、上記(8)に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
(10)前記工程1が、球状のシリカ粒子を含む分散液のpH9.5~10.5の範囲に調整し、これを湿式で解砕して前記シリカ系微粒子を得る操作を含む、上記(8)または(9)に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
本発明に係るセリア系複合微粒子は、主にシリカからなる母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している主にセリアからなる子粒子とを有する複合微粒子であって、少なくとも一つの平面状構造を有する複合微粒子である。この様なセリア系複合微粒子を含むセリア系複合微粒子分散液を研磨用砥粒分散液として研磨用途に適用した場合、該セリア系複合微粒子は被研磨面に対して、滑り摩擦の作用が働きやすいため、例えば、被研磨面に対して転がり摩擦で作用する砥粒の場合に較べて優れた研磨速度を示すことができる。
本発明のセリア系複合微粒子分散液を、例えば、研磨用砥粒分散液として、シリカ膜あるいはSiウェハなどを含む難加工材を対象とした研磨用途に使用した場合、従来の研磨用砥粒分散液(例えば、球状のシリカ微粒子からなる砥粒を含む研磨用砥粒分散液)を使用した場合に較べて、高速で研磨することができる。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法は、このような優れた性能を示すセリア系複合微粒子分散液を効率的に製造する方法を提供するものである。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法においては、セリア系複合微粒子に含まれる不純物を著しく低減させ、高純度化させることも可能である。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法の好適態様によって得られる、高純度化されたセリア系複合微粒子分散液は、不純物を含まないため、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に特に好ましく用いることができる。
また、本発明のセリア系複合微粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した場合、半導体デバイス表面の平坦化に有効であり、特にはシリカ絶縁膜が形成された基板の研磨に好適である。
本発明の複合微粒子における形状を説明するための写真および図である。 (a)1:複合微粒子 5:弦 3:円 (b)7:円弧 9:矢高 D:円弧7の等分点 10:弓形図形X L1:円弧7の始点 L2:円弧7の終点 S:円弧7上であって、等分点DからL1側に、円弧7の全長(w)の6分の1相当に位置する点 T:円弧7上であって、等分点DからL2側に、円弧7の全長(w)の6分の1相当に位置する点 S-T:円弧7上であって、点Sと点Tを結ぶ円弧曲線 本発明の複合微粒子の断面の模式図である。 実施例1において用いたシリカ系微粒子のSEM画像(10万倍)が図3(a)であり、TEM画像(10万倍)が図3(b)である。 実施例1によって得られたセリア系複合微粒子のSEM画像(10万倍)である。 実施例1によって得られたセリア系複合微粒子のX線回折パターンである。 比較例1によって得られたセリア系複合微粒子のSEM画像(10万倍)が図6(a)であり、TEM画像(10万倍)が図6(b)である。
本発明について説明する。
本発明は、下記[1]から[3]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を含む、セリア系複合微粒子分散液である。
[1]前記セリア系複合微粒子は、シリカからなる母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散しているセリアからなる子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子は、次の要件を満たすこと。
1)その電子顕微鏡写真上において、セリア系複合微粒子の像が内接する円が存在し、更に該セリア系複合微粒子の像は、該円周上の円弧と弦からなる弓形図形Xに対し次の関係にあること。
(I)弓形図形Xの弦と、少なくとも部分的に内接する。
(II)弓形図形Xの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
2)前記セリア系複合微粒子の像の面積に対し、弓形図形Xの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
[3]前記セリア系複合微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nmであること。
このようなセリア系複合微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
また、上記[1]から[3]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を、以下では「本発明の複合微粒子」ともいう。
また、本発明は、下記の工程1及び工程2を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法である。
工程1:下記1)、2)及び3)の条件を満たすシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~20℃、pHを5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)その電子顕微鏡写真上において、シリカ微粒子の像が内接する円が存在し、更に該シリカ微粒子の像は、該円周上の円弧と弦からなる弓形図形Yに対し次の関係にあること。
(I)弓形図形Yの弦と、少なくとも部分的に内接する。
(II)弓形図形Yの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
2)前記シリカ微粒子の像の面積に対し、弓形図形Yの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
3)前記シリカ微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nmであること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、850~1,100℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
以下において、単に「本発明」と記した場合、本発明の分散液、本発明の複合微粒子および本発明の製造方法のいずれをも意味するものとする。
本願明細書において、「セリア系複合微粒子の像」の記載は、特に断りの無い限り、「セリア系複合微粒子の電子顕微鏡写真」を意味する。
電子顕微鏡写真とは、走査型電子顕微鏡写真(画像)または透過型電子顕微鏡写真(画像)と意味する。なお、走査型電子顕微鏡写真(画像)を「SEM」、透過型電子顕微鏡写真(画像)を「TEM」と表示する場合がある。
同様に「シリカ系微粒子の像」あるいは「シリカ微粒子の像」の記載は、それぞれ「シリカ系微粒子の電子顕微鏡写真」あるいは「シリカ微粒子の電子顕微鏡写真」を意味する。
また、「セリア系複合微粒子は、その電子顕微鏡写真上において」の記載は、特に断りの無い限り、「セリア系複合微粒子の電子顕微鏡写真において」を意味する。同様に「シリカ系微粒子は、その電子顕微鏡写真において」の記載は、「シリカ系微粒子の電子顕微鏡写真において」を意味し、「シリカ微粒子は、その電子顕微鏡写真において」の記載は、「シリカ微粒子の電子顕微鏡写真において」を意味する。
<本発明の複合微粒子>
本発明の複合微粒子は、後に述べたように擬球台状の構造をとることを特徴とする。
本発明の複合微粒子の形状について、図1を用いて説明する。
図1(a)は、10万倍に拡大した本発明の複合微粒子のSEM画像である。また、図1(a)には、本発明の複合微粒子を内接する弓形図形Xを特定するための線も示している。そして、図1(b)は、図1(a)によって特定された弓形図形Xを示している。
(a)1:複合微粒子 5:弦 3:円
(b)7:円弧 9:矢高 D:円弧7の等分点
10:弓形図形X
L1:円弧7の始点 L2:円弧7の終点
S:円弧7上であって、等分点DからL1側に、円弧7の全長(w)の6分の1相当に位置する点
T:円弧7上であって、等分点DからL2側に、円弧7の全長(w)の6分の1相当に位置する点
S-T:円弧7上であって、点Sと点Tを結ぶ円弧曲線
本願明細書において、弓形図形を構成する円弧の全部(始点L1から終点L2まで)又は一部を「円弧曲線」と称する場合がある。
図1(a)を用いて、弓形図形の特定方法について説明する。
初めに、10万倍に拡大した本発明の複合微粒子1の電子顕微鏡写真(図1の場合はSEM画像)を用意する。
そして、該画像上の1つの複合微粒子について、その複合微粒子外周のできるだけ多くの部分が内接する円3を決定する。次に、その円3において、その複合微粒子の像の外周のできるだけ多くの部分に内接する弦5を決定する。円3と弦5を決定することにより、弦5と円弧7からなる弓形図形が特定される。
図1(b)を用いて、本発明における弓形図形Xの特定について説明する。
前記図1(a)の方法で、複合微粒子1の像が内接する円3と弦5を決定する。
弦5と円3の2つの交点をそれぞれ始点L1、終点L2とし、円周上で始点L1と終点L2を結ぶ曲線を円弧7とする。ここで弦5と円弧7からなる弓形図形が特定される。
このような弓形図形であって、複合微粒子1の像と、前記弓形図形の関係において、複合微粒子1の像が、円弧7を等分する等分点Dと内接することなく、等分点Dから円弧7の始点L1方向の円弧曲線(D-L1)及び同じく等分点Dから円弧7の終点L2方向の円弧曲線(D-L2)の両円弧曲線にそれぞれ少なくとも部分的に内接する(但し、等分点Dを除く)関係である弓形図形を選び、円弧7と弦5とからなる弓形図形の矢高9の長さと、弓形図形の面積(面積SXとする)を求める。
そして、弦5の長さが80nm以上、矢高9の長さが50nm以上であって、かつ、その弓形図形の面積SXが本発明の複合微粒子1の像の面積(面積S0とする)に対して1.1~4.0倍である場合、その円弧7と弦5とからなる弓形図形を弓形図形Xとする。
また、このような弓形図形Xが特定される場合、対応する複合微粒子の像を、本発明の複合微粒子1の像とする。
本願においては、本発明の複合微粒子1の形状を「擬球台状」、その様な粒子を「擬球台状の粒子」ないし「擬球台状粒子」と呼ぶ場合がある。なお、幾何学では、球を2つの平行する平面で切り取った立体構造を「球台」と呼ぶ場合がある。(なお、球を一つの面で切り取った立体構造を「球欠」と呼ぶ場合がある。)
本発明の複合微粒子は、その電子顕微鏡写真において、前記弓形図形Xを特定できるものであり、該複合微粒子の像と、前記弦5が内接する直線部分は、実体的には複合微粒子の有する平面状構造に相当する。この様な平面状構造を「平面状構造F」と称する場合がある。また、「平面状構造F」を単に「複合微粒子の底面」と称する場合がある。また、該複合微粒子の像が、前記弓形図形Xの円弧の等分点Dと内接せず、該等分点Dを挟んだ両側の円弧曲線とそれぞれ部分的に内接する関係にあることは、該複合微粒子の有する平面状構造Fの反対側の球面には欠損があることに対応する。前記平面状に欠損した構造を総称して「平面状構造G」と称する場合がある。また、「平面状構造G」を単に「複合微粒子の上底面」と称する場合がある。なお、係る球面の欠損は、平面状以外に略平面状に欠損した構造である場合も含まれる。
本発明の複合微粒子は、この様な擬球台状の構造をとり、特に研磨用砥粒として用いた場合、滑り摩擦の作用が働きやすいため、研磨速度向上に寄与するものと考えられる。
ここで、電子顕微鏡写真上における本発明の複合微粒子1の像の面積S0の測定方法は、特に限定されない。例えば従来公知の画像処理装置を用いて測定することができる。
弓形図形Xの面積SXは、擬球台状である本発明の複合微粒子1の像の面積S0に対し1.1~4.0倍であるが、この値(面責SX/面積S0)は1.1~1.5であることが好ましく、1.1~1.3であることがより好ましい。
弓形図形Xの面積SXは、擬球台状である本発明の複合微粒子1の像の面積S0に対して1.1~4.0倍の範囲にあり、他の要件(弦の長さ範囲、矢高の長さ範囲、複合微粒子の平均粒子径範囲及び前記(I)と(II)の内接に関する要件)を満たす本発明の複合微粒子は、研磨用の砥粒として用いた場合、被研磨基板との間での滑り摩擦がはたらきやすく研磨レート向上に寄与することができる。前記面積比が、1.1倍未満の場合、複合微粒子の粒子形状が本願における擬球台状から乖離し、平面状構造が少なく、滑り摩擦作用がはたらく余地が少ない。同じく面積比が4.0倍を超える場合は、複合微粒子が薄片状となり、研磨時に割れ易く、実用的ではない。
本発明のセリア系複合微粒子の画像解析法により測定される平均粒子径は50~350nmが望ましい。本発明の複合微粒子分散液を研磨剤として用いた場合、研磨に伴うスクラッチの発生が少なくなる。前記の平均粒子径が50nm未満の場合、粒子径が小さく研磨レートが実用的な水準に達さない可能性がある。
また、平均粒子径が350nmを超える場合、研磨対象の基板の面精度低下を招く可能性もある。
なお、本発明の複合微粒子の平均粒子径は、次のように測定するものとする。10万倍に拡大した本発明の複合微粒子の電子顕微鏡写真(透過型電子顕微鏡写真)を用意し、画像上の任意の50個の粒子について、次に、その粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその粒子の粒子径とする。
このようにして50個の粒子について粒子径を測定し、これを単純平均して得た値を平均粒子径とする。
本発明の複合微粒子1に対応する弓形図形Xにおける矢高9は、円3の中心を通過し、弦5に垂直な直線上における弦5と円弧7との距離である。なお、必然的に弓形図形毎に矢高の値はひとつに定められる。
このような矢高9は弓形図形Xにおいて50nm以上が好ましい。
矢高が50nm以上の弓形図形と内接する複合微粒子の像に対応する複合微粒子は、砥粒として十分な厚さがあり、壊れにくく、滑り摩擦による研磨に好適である。
矢高が50nm未満の弓形図形と内接する複合微粒子の像に対応する複合微粒子の場合、砥粒として十分な厚さの複合微粒子ではない場合がある。
より好適には、矢高が60nm以上の弓形図形と内接する複合微粒子の像に対応する複合微粒子が推奨される。なお、本発明の複合微粒子の平均粒子径範囲(50~350nm)に対応して、矢高の上限は300nm程度となる。
本発明の複合微粒子1に対応する弓形図形Xにおける弦5は、弓形図形Xの円弧曲線の始点L1と、終点L2を結ぶ最短距離の線分である。
本発明の複合微粒子1に対応する弓形図形Xにおける弦5の長さは、80nm以上である。本発明の複合微粒子1の像が弦5と内接する長さは90nm以上が好ましい。
なお、本発明の複合微粒子の平均粒子径範囲(50~350nm)に対応して、弦の上限は430nm程度となる。
研磨速度の向上を図るためには、粒子と基板の接触による摩擦が重要であり、動摩擦にはころがり摩擦と滑り摩擦があり、一般的に滑り摩擦の方がころがり摩擦より大きな摩擦力を生むとされている。本発明のセリア系複合微粒子は、少なくとも一つの平面状構造を有した擬球台状の構造をとり、研磨用砥粒として用いた場合、滑り摩擦の作用がはたらき易く、研磨用砥粒として球状粒子を用いた場合よりも研磨速度向上に寄与しているものと推察される。
本発明の複合微粒子は、上記のような擬球台状の粒子を含む。
本発明の複合微粒子において、上記のような方法によって、5、10あるいは30万倍に拡大した本発明の複合微粒子1の電子顕微鏡写真を用意し、画像上の全ての粒子について、上記の要領で擬球台状の粒子に該当するか否かを判断する。そして、擬球台状の粒子の個数比率を求める。このような本発明の複合微粒子は、個数比率でその20%以上が擬球台状の粒子であることが好ましく、この比率は25%以上であることがより好ましい。
上記のように、複数の粒子の集合である本発明の複合微粒子は、擬球台状の粒子を主として含み、その他の形状の粒子を含んでもよい。
本発明のセリア系複合微粒子分散液においては、前記セリア系複合微粒子の像は、弦の長さの少なくとも20%と内接してなることが望ましい。係る割合は50以上が好ましく、75%以上が更に好ましく、100%であることが最も好ましい。
前記セリア系複合微粒子の像と、弦との内接割合が高い程、平面状構造Fの領域は広くなり、滑り摩擦の作用効果をより発揮しやすくなるものと推察される。
本発明のセリア系複合微粒子分散液においては、前記のとおり該セリア系複合微粒子の像が、円弧7の全長を二等分する円弧上の等分点Dに内接しないものであるが、より好適には、該セリア系複合微粒子の像が、円弧7の全長を二等分する円弧上の等分点Dの両側に(w)/6(w:円弧の全長)ずつの長さに及ぶ円弧曲線STと内接せず、該円弧曲線STの両末端に接続する2つの円弧曲線(S―L1、T―L1)とそれぞれ少なくとも部分的に内接していることが好ましい。係る構造をとる複合微粒子は、平面状構造Fと平面状構造Gの両方を有する構造の複合微粒子となるので、複合微粒子の有する何れの平面状構造でも研磨に寄与できるので、滑り摩擦の作用効果をより発揮しやすくなるものと推察される。
次に、本発明の複合微粒子の構造について、図2を用いて説明する。
図2(a)および図2(b)は共に本発明の複合微粒子の断面を例示する模式図である。図2(a)は、子粒子の一部が外部に露出しているタイプであり、図2(b)は、全ての子粒子が外部に露出していない、埋没タイプである。
図2に示すように、本発明の複合微粒子20は、母粒子10と、母粒子10の表面上のセリウム含有シリカ層12と、セリウム含有シリカ層12の内部に分散している子粒子14とを有する。なお、図2中の▲は、後述するSTEM-EDS分析を行う測定点X~Zの例示である。
本発明の複合微粒子においてセリウム含有シリカ層が形成される機構およびそのセリウム含有シリカ層の内部に子粒子が分散して存在することになる機構について、本発明者は以下のように推定している。
図2の模式図では理解が容易になるように、母粒子10、セリウム含有シリカ層12および子粒子14を明確に区別して記したが、本発明の複合微粒子は、実際のところは、これらは一体となって存在しており、STEM/SEM像におけるコントラストあるいはEDS分析以外では、母粒子10、セリウム含有シリカ層12および子粒子14を明確に区別することは難しい。ただし、本発明の複合微粒子の断面についてSTEM-EDS分析を行い、CeとSiの元素濃度を測定すると、図2に示した構造であることを確認することができる。
すなわち、走査透過型電子顕微鏡(STEM)によって特定した箇所に電子ビームを選択的に照射するEDS分析を行い、図2に示す本発明の複合微粒子の断面の測定点XにおけるCeとSiとの元素濃度を測定すると、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%未満となる。また、測定点ZにおけるCeとSiとの元素濃度を測定すると、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が50%超となる。そして、測定点YにおけるCeとSiとの元素濃度を測定すると、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3~50%となる。
したがって、STEM-EDS分析を行って得られる元素マップにおいて、本発明の複合微粒子における母粒子10とセリウム含有シリカ層12とは、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインによって、区別することができる。また、STEM-EDS分析を行って得られる元素マップにおいて、本発明の複合微粒子におけるセリウム含有シリカ層12と子粒子14とは、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が50%となるラインによって、区別することができる。
本明細書においてSTEM-EDS分析は、80万倍で観察して行うものとする。
本発明の複合微粒子は図2に示したような態様であるので、その断面についてSTEM-EDS分析を行い、元素マッピングを行うと、その最外殻から中心の母粒子(非晶質シリカを主成分とする)に至る途中に、少なくとも一つ以上のセリア濃度が相対的に高い層(セリア微粒子からなる層)を有していることが多い。
<母粒子>
本発明の複合微粒子における母粒子について説明する。
前述の通り、本発明の複合微粒子についてSTEM-EDS分析を行い、図2に示した本発明の複合微粒子の断面におけるCeとSiとの元素濃度を測定した場合に、母粒子はCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%未満となる部分である。
本発明の複合微粒子における母粒子の平均粒子径は50~350nmであることが好ましく、60~300nmであることがより好ましい。
本発明の複合微粒子分散液を研磨剤として用いた場合、研磨に伴うスクラッチの発生が少なくなる。前記母粒子の平均粒子径が50nm未満の場合、その様な母粒子を用いて得られる複合微粒子の平均粒子径は50nmに達し難く、その様な複合微粒子の分散液を研磨剤として用いると、研磨レートが実用的な水準に達さない可能性がある。
また、前記母粒子の平均粒子径が350nmを超える場合、その様な母粒子を用いて得られる複合微粒子の平均粒子径は350nmを超える場合が多く、その様な複合微粒子の分散液を研磨剤として用いると、研磨レートが実用的な準に達さない可能性があり、研磨対象の基板の面精度低下を招く可能性もある。なお、母粒子は、単分散性を示すものがより好ましい
本発明の複合微粒子における母粒子の平均粒子径は、次のように測定するものとする。
10万倍に拡大した本発明の複合微粒子の母粒子の電子顕微鏡写真を用意し、画像上の全ての粒子について、その母粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその母粒子の粒子径とする。
このようにして50個の母粒子について粒子径を測定し、これを単純平均して得た値を平均粒子径とする。
本発明の複合微粒子における母粒子の形状は主として擬球台状粒子である。
具体的には、STEM-EDS分析によって80万倍で観察し、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインを特定することで母粒子を特定した後、前述の本発明の複合微粒子の形状が擬球台状であるか否かを判断する場合と同様の方法によって、母粒子が擬球台状であるか否かを判断することができる。
母粒子は非晶質シリカを主成分とするものであり、通常はシリカ微粒子ないしシリカ系微粒子である。これらは球状で粒子径が揃ったものを調製し易く、また、多様な粒子径のものを調製することができるので好ましく用いることができる。
母粒子が非晶質シリカを主成分とすることは、例えば、次の方法で確認することができる。本発明の複合微粒子を含む分散液を乾燥させた後、乳鉢を用いて粉砕し、例えば、従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカのピークは現れない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、本発明の分散液を乾燥させ、樹脂包埋した後にPtによるスパッタコーティングを施し、従来公知の収束イオンビーム(FIB)装置を用い断面試料を作成する。例えば作成した断面試料を従来公知のTEM装置を用い、高速フーリエ変換(FFT)解析を用いてFFTパターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカの回折図は現れない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、別の方法として同様に作成し断面試料について、従来公知のTEM装置を用い、母粒子の原子配列による格子縞の有無を観察する方法が挙げられる。結晶質であれば結晶構造に応じた格子縞が観察され、非晶質であれば格子縞は観察されない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
母粒子は非晶質シリカを主成分とし、その他のもの、例えばLa、Ce、Zrを10質量%以下含んでいてもよく、結晶性シリカや不純物元素を含んでもよい。
例えば、前記母粒子において、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ5000ppm以下であることが望ましい。
また、前記母粒子におけるU、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
ここで、母粒子および後述する本発明の複合微粒子ならびに後述するシリカ系微粒子における特定不純物群1または特定不純物群2の含有率はdry量に対する含有率を意味するものとする。
dry量に対する含有率とは、対象物(母粒子、本発明の複合微粒子または後述するシリカ系微粒子)に含まれる固形分の質量に対する測定対象物(特定不純物群1または特定不純物群2)の重量の比(百分率)の値を意味するものとする。なお、母粒子の不純分は、汚染等による混入が無ければ、シリカ系微粒子の不純分と概ね一致する。
<子粒子>
本発明の複合微粒子において結晶性セリアを主成分とする子粒子(以下、「セリア子粒子」ともいう)は、前記母粒子上に配されたセリウム含有シリカ層に分散している。
セリウム含有シリカ層内においてセリア子粒子は積層されていても良く、その形状は真球状、楕円形状、矩形形状など特に限定されず、さらに粒子径分布も均一であってもシャープであっても良い。
前記セリア子粒子は、前記セリウム含有シリカ層中に埋没するものもあれば、セリウム含有シリカ層から部分的に露出するものもある。
前述の通り、本発明の複合微粒子についてSTEM-EDS分析を行い、図2に示した本発明の複合微粒子の断面におけるCeとSiの元素濃度を測定した場合に、子粒子はCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が50%超となる部分である。
本発明における結晶性セリアを主成分とする子粒子は、前記母粒子上に配されたセリウム含有シリカ層に分散しており、当該子粒子の粒子径分布における変動係数(CV値)が15~50%であることが好ましい。すなわち、子粒子の粒度分布の幅が大きいことが好ましい。このような粒度分布幅が大きなセリア子粒子を備えている本発明の分散液を研磨用砥粒分散液として使用すると、研磨の初期においては粒径の大きい子粒子が研磨対象の基板と接触して研磨が行われる。そして、その子粒子が研磨圧力により外れたり、磨滅やどう破壊が生じたりしても、次に、粒子径の小さい子粒子が研磨対象の基板と接触するので、接触面積を高く保つことができる。そのため、効率よく研磨速度が安定した研磨が行われる。
本発明において、セリウム含有シリカ層に分散している子粒子の粒子径分布における変動係数(CV値)は15~50%であることが好ましく、16~35%であることがより好ましく、18~30%であることがさらに好ましい。
子粒子の平均粒子径は、10~25nmが好ましく、14~23nmであることがより好ましい。
子粒子の平均粒子径が25nmを超える場合、工程2において、そのようなセリア子粒子を有した前駆体粒子は、焼成後に焼結や凝結が生じ解砕も困難となる傾向がある。また、このようなセリア系複合微粒子分散液は、研磨用途に使用しても研磨対象でのスクラッチ発生を招き、好ましくない。子粒子の平均粒子径が10nm未満の場合、同じく研磨用途に使用すると、実用的に充分な研磨速度を得難い傾向がある。
本発明において、子粒子の平均粒子径は、上記のようにして得た粒子径分布における個数平均径を意味するものとする。
子粒子はセリウム含有シリカ層内にて積層されていてもよい。すなわち、セリウム含有シリカ層の内部における、母粒子の中心からの放射状の線上において複数存在していてもよい。
また、子粒子はセリウム含有シリカ層中に埋没していてよいし、セリウム含有シリカ層の外部へ部分的に露出していてもよいが、子粒子がセリウム含有シリカ層に埋没した場合は、セリア系複合微粒子の表面はよりシリカ表面に近くなるため、保存安定性及び研磨安定性が向上し、さらに研磨後の基板上に砥粒残りが少なくなることから、子粒子はセリウム含有シリカ層に埋没している方が望ましい。
子粒子の形状は特に限定されない。例えば真球状、楕円形状、矩形状であってもよい。本発明の分散液を研磨用途に使用する場合であって、高研磨速度を得ようとする場合、子粒子は非球形が好ましく、矩形状がより好ましい。
母粒子の表面に配されたセリウム含有シリカ層内に分散された子粒子は、単分散状態であってもよく、子粒子が積層された状態(すなわち、セリウム含有シリカ層の厚さ方向に複数の子粒子が積み重なって存在する状態)であってもよく、複数の子粒子が連結した状態であっても構わない。
本発明において、子粒子は結晶性セリアを主成分とする。
前記子粒子が結晶性セリアを主成分とすることは、例えば、本発明の分散液を乾燥させた後、得られた固形物を乳鉢を用いて粉砕する等して本発明の複合微粒子を得て、その後、これを例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)を用いてX線分析し、得られたX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、前記子粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
子粒子は結晶性セリア(結晶性Ce酸化物)を主成分とし、その他のもの、例えばセリウム以外の元素を含んでもよい。また、研磨の助触媒として含水セリウム化合物を含んでもよい。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ない、あるいはセリア結晶中に固溶しているため、X線回折による検出範囲外となる。
セリア子粒子の平均結晶子径は、本発明の複合微粒子をX線回折に供して得られるチャートに現れる最大ピークの半値全幅を用いて算出される。そして、例えば(111)面の平均結晶子径は10~25nm(半値全幅は0.86~0.34°)であり、14~23nm(半値全幅は0.62~0.37°)であることが好ましい。なお、多くの場合は(111)面のピークの強度が最大になるが、他の結晶面、例えば(100)面のピークの強度が最大であってもよい。その場合も同様に算出でき、その場合の平均結晶子径の大きさは、上記の(111)面の平均結晶子径と同じであってよい。
子粒子の平均結晶子径の測定方法を、(111)面(2θ=28度近傍)の場合を例として以下に示す。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半値全幅を測定し、下記のScherrerの式により、平均結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:平均結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(1.5419オングストローム、Cuランプ)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
本発明の複合微粒子は、前記子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶していることが好ましい。一般に固溶とは、2種類以上の元素(金属の場合も非金属の場合もある)が互いに溶け合い、全体が均一の固相となっているものを意味し、固溶して得られる固溶体は、置換型固溶体と侵入型固溶体とに分類される。置換型固溶体は、原子半径が近い原子において容易に起こり得るが、CeとSiは原子半径が大きく違うため、少なくとも置換型固溶体は生じ難いと見られる。また、Cerianiteの結晶構造において、Ce中心からみたCeの配位数は8であるが、例えばSiがCeと1対1で置換した場合はCeの配位数は7となるはずである。しかし、本発明の複合微粒子の好適態様の分析結果においてはCe中心からみたCeの平均配位数は8.0で、さらにSiの平均配位数は1.2であることから、本発明の複合微粒子の好適態様は侵入型であると推定している。そのうえ、本発明の複合微粒子の好適態様の分析結果からも、Ce-Siの原子間距離は、Ce-Ceの原子間距離よりも小さいことから、本発明の複合微粒子の好適態様は、侵入型固溶体であると推察される。すなわち、子粒子に含まれるセリウム原子およびケイ素原子について、セリウム-ケイ素原子間距離をR1とし、セリウム-セリウム原子間距離をR2としたときにR1<R2の関係を満たすことが好ましい。
従来、砥粒としてセリア粒子を用いてシリカ膜付基板やガラス基材を研磨すると、他の無機酸化物粒子を用いた場合に比べて、特異的に高い研磨速度を示すことが知られている。セリア粒子がシリカ膜付基板に対して、特に高い研磨速度を示す理由の一つとして、セリア粒子中に含まれる三価のセリウムが被研磨基板上のシリカ被膜に対して、高い化学反応性を持つことが指摘されている。
本発明の複合微粒子の好適態様は、その外表面側に存在する子粒子(セリア微粒子)において、Si原子がCeO2結晶に侵入型の固溶をしていると見られる。Si原子の固溶により、CeO2結晶の結晶歪みが生じることで、高温で焼成しても酸素欠陥が多くなりSiO2に対して化学的に活性な三価のセリウムが多く生じ、CeO2の化学反応性を助長する結果、上記の高い研磨速度を示すものと推察される。また三価のセリウム含有量を増加させるために、LaやZrなどをドープさせても構わない。
<セリウム含有シリカ層>
本発明の複合微粒子は、前記母粒子の表面上にセリウム含有シリカ層を有する。そして、セリウム含有シリカ層の内部に子粒子が分散している。
このような構造をとることにより、製造時の解砕処理や研磨時の圧力による子粒子の脱落が生じ難く、また、たとえ一部の子粒子が欠落したとしても、多くの子粒子は脱落せずにセリウム含有シリカ層中に存在するので、研磨機能を低下させることがない。
前述の通り、本発明の複合微粒子についてSTEM-EDS分析を行い、本発明の複合微粒子の断面におけるCeとSiの元素濃度を測定した場合に、セリウム含有シリカ層はCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3~50%となる部分である。
本発明の複合微粒子について透過型電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(TEM像)では、母粒子の表面に子粒子の像が濃く現れるが、その子粒子の周囲および外側、すなわち、本発明の複合微粒子の表面側にも、相対的に薄い像として、セリウム含有シリカ層の一部が現れる。
この部分についてSTEM-EDS分析を行い、当該部分のSiモル濃度及びCeモル濃度を求めると、Siモル濃度が非常に高いことを確認することができる。具体的には、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3~50%となる。
セリウム含有シリカ層の平均の厚さは格別に制限されるものではないが、10~40nmであることが好ましく、12~30nmであることがより好ましい。なお、後に述べるようにセリウム含有シリカ層が存在しない部分があっても構わない。
なお、セリウム含有シリカ層の平均の厚さは、本発明の複合微粒子の母粒子の中心から最外殻まで、任意の12箇所に直線を引き、前述のようにSTEM-EDS分析を行って得た元素マップから特定されるCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインと、本発明の複合微粒子の最外殻との距離(母粒子の中心を通る線上の距離)を測定し、それらを単純平均して求めるものとする。なお、母粒子の中心は、前述の長軸と短軸との交点を意味するものとする。
本発明の複合微粒子におけるセリウム含有シリカ層は、焼成過程でセリウム含有シリカ層に分散し成長した子粒子(結晶性セリアを主成分とするセリア微粒子)と母粒子との結合力を助長すると考えられる。よって、例えば、本発明の分散液を得る工程で、焼成して得られた焼成体解砕分散液について必要な場合は乾式にて予備解砕を行った後、湿式による解砕を行い、さらに必要に応じて遠心分離処理を行うことでセリア系複合微粒子分散液が得られるが、セリウム含有シリカ層により、子粒子が母粒子から外れる事を防ぐ効果があるものと考えられる。この場合、局部的な子粒子の脱落は問題なく、また、子粒子の表面の全てがセリウム含有シリカ層の一部で覆われていなくてもよい。子粒子が解砕工程で母粒子から外れない程度の強固さがあればよい。
このような構造により、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高く、面精度やスクラッチの悪化が少ないと考えられる。
また、本発明の複合微粒子では、子粒子の表面の少なくとも一部がセリウム含有シリカ層によって被覆されているので、本発明の複合微粒子の最表面(最外殻)にはシリカの-OH基が存在することになる。このため研磨剤として利用した場合に、本発明の複合微粒子は研磨基板表面の-OH基による電荷で反発しあい、その結果、研磨基板表面への付着が少なくなると考えられる。
また、一般的にセリアは、シリカや研磨基板、研磨パッドとは電位が異なり、pHがアルカリ性から中性付近に向かうにつれてマイナスのゼータ電位が減少して行き、弱酸性領域では逆のプラスの電位を持つ。そのため研磨時の酸性pHでは電位の大きさの違いや極性の違いなどによって、セリアは研磨基材や研磨パッドに付着し、研磨基材や研磨パッドに残り易い。一方、本発明の複合微粒子は上記のように最外殻にシリカが存在しているため、その電位がシリカに起因した負電荷となるため、pHがアルカリ性から酸性までマイナスの電位を維持し、その結果、研磨基材や研磨パッドへの砥粒残りが起こりにくい。本発明の製造方法における工程2の解砕処理時にpH8.6~10.8を保ちながら解砕すると、本発明の複合微粒子の表面のシリカ(セリウム含有シリカ層のシリカ)の一部が溶解する。係る条件で製造した本発明の分散液を、研磨用途に適用する時にpH<7に調整すれば、溶解したシリカが本発明の複合微粒子(砥粒)に沈着するので、本発明の複合微粒子の表面は負の電位を持つことになる。電位が低い場合には、珪酸を添加し、適度にセリウム含有シリカ層を補強しても構わない。
本発明の複合微粒子の他の性状について以下に説明する。
本発明の複合微粒子は、さらに、前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比は、典型的には100:11~316である。
本発明の複合微粒子において、シリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比は
該複合微粒子を研磨用砥粒として用いて、有用な研磨速度と面精度を示す限り制限されるものではないが、典型的には100:11~316であり、100:30~316であることが好ましく、100:30~230であることがより好ましく、100:30~150であることがより好ましく、100:60~316であることがより好ましく、100:60~230であることがさらに好ましい。
シリカとセリアとの質量比は、概ね、母粒子と子粒子との質量比と同程度と考えられる。母粒子に対する子粒子の量が少なすぎると、母粒子または複合微粒子同士が結合し、粗大粒子が発生する場合がある。この場合に本発明の分散液を含む研磨剤(研磨スラリー)は、研磨基材の表面に欠陥(スクラッチの増加などの面精度の低下)を発生させる可能性がある。また、シリカに対するセリアの量が多すぎても、コスト的に高価になるばかりでなく、資源リスクが増大する。さらに、粒子同士の融着が進む。その結果、基板表面の粗度が上昇(表面粗さRaの悪化)したり、スクラッチが増加する、更に遊離したセリアが基板に残留する、研磨装置の廃液配管等への付着といったトラブルを起こす原因ともなりやすい。
なお、上記のシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比を算定する場合の対象となるシリカとは、本発明の複合微粒子に含まれる全てのシリカ(SiO2)を意味する。従って、母粒子を構成するシリカ成分、母粒子の表面に配されたセリウム含有シリカ層に含まれるシリカ成分、および子粒子に含まれ得るシリカ成分の総量を意味する。
本発明の複合微粒子におけるシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)の含有率(質量%)は、まず本発明の分散液の固形分濃度を、1000℃灼熱減量を行って秤量により求める。
次に、所定量の本発明の複合微粒子に含まれるセリウム(Ce)の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、酸化物質量%(CeO2質量%等)に換算する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO2以外の成分はSiO2であるとして、SiO2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、シリカとセリアの質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したシリカ源物質とセリア源物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやシリカが溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやシリカの使用量と分析値が良い一致を示す。
本発明の分散液中に含まれ得る0.51μm以上の粗大粒子数は、ドライ換算で100百万個/cc以下であることが好ましい。粗大粒子数は、100百万個/cc以下が好ましく、80百万個/cc以下がより好ましい。0.51μm以上の粗大粒子は研磨傷の原因となり、さらに研磨基板の表面粗さを悪化させる原因となり得る。
なお、本発明の分散液中に含まれ得る粗大粒子数の測定法は、以下の通りである。
試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、5mlを採取し、これを従来公知の粗大粒子数測定装置に注入する。そして、0.51μm以上の粗大粒子の個数を求める。この測定を3回行い、単純平均値を求め、その値を1000倍して、0.51μm以上の粗大粒子数の値とする。
本発明の複合微粒子は、格別に制限されるものではないが、比表面積が9~60m2/gであることが好ましく、10~43m2/gであることがより好ましい。
ここで、比表面積(BET比表面積)の測定方法について説明する。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
本発明の複合微粒子において、前記特定不純物群1の各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましい。さらに50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることがよりいっそう好ましい。
また、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群2の各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。本発明の複合微粒子における特定不純物群1及び前記特定不純物群2それぞれの元素の含有率を低減させる方法は、前述の通りである。
なお、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群1および前記特定不純物群2の各々の元素の含有率は、前述の母粒子に含まれる前記特定不純物群1および前記特定不純物群2を測定する場合と同じ方法によって測定することができる。
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
本発明の分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の分散液は、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
また、本発明の分散液を備える分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、などのアルコール類;アセトン、2-ブタノンなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノールなどのグリコールエーテル類;2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2-ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の分散液に含まれる固形分濃度は0.3~50質量%の範囲にあることが好ましい。
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は以下に説明する工程1および工程2を備える。
<工程1>
工程1ではシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を用意する。
なお、本明細書では「工程1」を「調合工程」という場合もある。
工程1で原料として使用されるシリカ系微粒子分散液は、下記1)、2)及び3)の条件を満たすシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液である。
1)その電子顕微鏡写真上において、前記シリカ微粒子の像が内接する円が存在し、更に該シリカ微粒子の像は、その円の円周上の円弧と弦からなる弓形図形Yに対し次の関係にあること。
(I)弓形図形Yの弦と、少なくとも部分的に内接する。
(II)弓形図形Yの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
2)前記シリカ微粒子の像の面積に対し、弓形図形Yの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
3)前記シリカ微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nm
弓形図形Yは弓形図形Xと同様に定めるものとする。
前記原料として使用するシリカ系微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子の割合は格別に制限されるものではないが、通常は、個数割合で、20~30質量%が望ましい。
前擬球台状のシリカ微粒子を含むシリカ系微粒子分散液は、例えば、公知の球状のシリカ系微粒子を含むシリカ系微粒子分散液を、pH9.5~10.5の範囲にて、湿式で解砕処理をすることにより得ることができる。
工程1で原料として使用されるシリカ系微粒子分散液におけるシリカ系微粒子は、本発明の製造方法で得られるセリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子の平均粒子径と同等の大きさのシリカ系微粒子を使用することができるが、目的とする平均粒子径の複合微粒子を得られる限り、格別に制限されるものではない。
本発明の製造方法により、半導体デバイスなどの研磨に適用する本発明の分散液を調製しようとする場合は、シリカ系微粒子分散液として、アルコキシシランの加水分解により製造したシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を用いることが好ましい。なお、上記以外の従来公知のシリカ系微粒子分散液(水硝子を原料として調製したシリカ系微粒子分散液等)を原料とする場合は、シリカ系微粒子分散液を酸処理し、更に脱イオン処理して使用することが好ましい。この場合、シリカ系微粒子に含まれるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が少なくなり、具体的には、100ppm以下となり得るからである。
具体的には、原料であるシリカ系微粒子分散液中のシリカ系微粒子として、次の(a)と(b)の条件を満たすものが好適に使用される。
(a)Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
また、シリカ系微粒子はセリウムとの反応性(セリア重量あたりのシリカ系微粒子の溶解重量)が適度なものが好適に用いられる。シリカ系微粒子は、本発明の製造方法における工程1の調合工程で、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加することで、シリカの一部が水酸化セリウム等によって溶解し、シリカ系微粒子のサイズが小さくなり、溶解したシリカ系微粒子の表面にセリウムの微結晶を含んだセリウム含有シリカ層の前駆体が形成される。この際、シリカ系微粒子がセリウムとの反応性が高い非晶質シリカからなる場合、セリウム含有シリカ層の前駆体が厚くなり、焼成によって生じるセリウム含有シリカ層が厚膜化したり、その層のシリカ割合が過剰に高くなり、解砕工程で解砕が困難になるからである。また、シリカ系微粒子がセリウムとの反応性が極度に低い非晶質シリカからなる場合はセリウム含有シリカ層が十分に形成されず、セリア子粒子が脱落しやすくなる。セリウムとの反応性が適切な場合は、過剰なシリカの溶解が抑制され、セリウム含有シリカ層は適度な厚みとなり子粒子の脱落を防止し、その強度が複合微粒子間との強度よりも大きくなると考えられるので、易解砕となるため、望ましい。
工程1では、シリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~20℃、pH範囲を5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、セリウムの金属塩を中和することで、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る。
シリカ系微粒子分散液における分散媒は水を含むことが好ましく、水系のシリカ系微粒子分散液(水ゾル)を使用することが好ましい。
シリカ系微粒子分散液における固形分濃度は、SiO2換算基準で1~40質量%であることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると、製造工程でのシリカ濃度が低くなり生産性が悪くなり得る。
本発明の製造方法において、例えば、工程1におけるシリカ系微粒子とセリウムの金属塩との反応温度を40~50℃とした場合、セリアとシリカの反応性が高まり、シリカ系微粒子の溶解が進む。その結果、工程2の中間段階で乾燥して得られた前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の粒子径は2.5nm未満となる。このことは係る高温域においてシリカがセリアと液相で反応すると、シリカがセリアの粒子成長を阻害するため、乾燥後のセリアの平均粒子径が2.5nm未満と、小さくなることを示している。
なお、このような前駆体粒子であっても、焼成温度を1100℃超とすることでセリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とすることは可能であるが、この場合は、セリウム含有シリカ層は形成されずにシリカ被膜が形成され、このシリカ被膜がセリア子粒子を強固に被覆する傾向が強まるために、解砕が困難となる点で支障がある。そのため、反応温度を0~20℃に保ち、液相でのシリカとセリアの反応を適度に抑えることで、乾燥後の前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の平均結晶子径を2.5nm以上にでき、解砕しやすい粒子となる。さらに乾燥後の平均結晶子径が大きいため、セリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とするための焼成温度を低くすることができ、焼成により形成されるセリウム含有シリカ層の厚みが過剰に厚膜化せず、解砕が容易となる。
また、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂、あるいは鉱酸、有機酸等で不純物を抽出し、限外ろ過膜などを用いて、必要に応じて、シリカ系微粒子分散液の脱イオン処理を行うことができる。脱イオン処理により不純物イオンなどを除去したシリカ系微粒子分散液は表面にケイ素を含む水酸化物を形成させやすいのでより好ましい。なお、脱イオン処理はこれらに限定されるものではない。
本発明の製造方法において、例えば、工程1におけるシリカ系微粒子とセリウムの金属塩との反応時の酸化還元電位が低いと、棒状等の結晶が生成するために、シリカ系微粒子には沈着し難い。
さらに、酸化還元電位を所定の範囲に調整しない場合は、調合工程で生成したCeO2超微粒子は結晶化しにくい傾向にあり、結晶化していないCeO2超微粒子は調合後の加熱、熟成によっても結晶化が促進されない。そのため工程2の焼成において所定サイズに結晶化させるためには、高温での焼成が必要となり、解砕が困難になる。
セリウムの金属塩の種類は限定されるものではないが、セリウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属アルコキシドなどを用いることができる。具体的には、硝酸第一セリウム、炭酸セリウム、硫酸第一セリウム、塩化第一セリウムなどを挙げることができる。なかでも、硝酸第一セリウムや塩化第一セリウム、炭酸セリウムなどの三価のセリウム塩が好ましい。中和と同時に過飽和となった溶液から、結晶性セリウム酸化物や水酸化セリウム等が生成し、それらは速やかにシリカ系微粒子に凝集沈着し、最終的にCeO2超微粒子が単分散で形成されるからである。さらに三価のセリウム塩はシリカ系微粒子と適度に反応し、セリウム含有シリカ層が形成されやすい。また研磨基板に形成されたシリカ膜と反応性の高い三価のセリウムがセリア結晶中に形成されやすいため、好ましい。しかしこれら金属塩に含まれる硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオンなどは、腐食性を示す。そのため、所望により、調合後に後工程で洗浄し5ppm以下に除去する必要がある。一方、炭酸塩は炭酸ガスとして調合中に放出され、またアルコキシドは分解してアルコールとなるため、好ましく用いることができる。
シリカ系微粒子分散液に対するセリウムの金属塩の添加量は、得られるセリア系の複合微粒子におけるシリカとセリアとの質量比が、前述の本発明の複合微粒子の場合と同様に、100:11~316の範囲となる量とする。
シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加する前または添加した後、撹拌する際の温度は0~20℃であることが好ましく、3~20℃であることがより好ましく、3~18℃であることがさらに好ましい。この温度が低すぎるとセリアとシリカの反応性が低下し、シリカの溶解度が著しく低下するため、セリアの結晶化が制御されなくなる。その結果、粗大なセリアの結晶性酸化物が生成して、シリカ系微粒子の表面におけるCeO2超微粒子の異常成長が起こり、焼成後に解砕されにくくなったり、セリウム化合物によるシリカの溶解量が減るため、セリウム含有シリカ層に供給されるシリカが減少することになる。このためシリカ母粒子とセリア子粒子とのバインダーとなるシリカが不足(母粒子に積層されるシリカ不足)し、セリア子粒子のシリカ母粒子への固定化が起こり難くなる事が考えられる。逆に、この温度が高すぎるとシリカの溶解度が著しく増し、結晶性のセリア酸化物の生成が抑制される事が考えられるが、焼成時に高温を要し粒子間の結合が促進され、解砕できなくなる可能性があり、更に、反応器壁面にスケールなどが生じやすくなり好ましくない。またシリカ系微粒子は、セリウム化合物(セリウム塩の中和物)に対して溶解されにくいものが好ましい。溶解されやすいシリカ系微粒子の場合は、シリカによってセリアの結晶成長が抑制され、調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が2.5nm未満となる。
調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が2.5nm未満であると、焼成後のセリア粒子径を10nm以上とするために、焼成温度を高くする必要があり、その場合、セリウム含有シリカ層が母粒子を強固に被覆してしまい、解砕が困難となる可能性がある。溶解されやすいシリカ系微粒子は、100℃以上で乾燥させた後に原料に供すると溶解性を抑制することができる。
また、工程1において、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度が0~20℃であることで、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得ることができる。
また、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の時間は0.5~50時間であることが好ましく、0.5~35時間であることがより好ましい。この時間が短すぎるとCeO2超微粒子が凝集して、シリカ系微粒子の表面上でシリカと反応し難くなり、解砕されにくい複合微粒子が形成される傾向がある点で好ましくない。逆に、この時間が長すぎてもCeO2超微粒子含有層の形成はそれ以上反応が進まず不経済となる。なお、前記セリウム金属塩の添加後に、所望により0~80℃にて熟成しても構わない。熟成により、セリウム化合物の反応を促進させると同時に、シリカ系微粒子に付着せず遊離したCeO2超微粒子をシリカ系微粒子上に付着させる効果があるからである。
また、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加する前または添加した後、撹拌する際のシリカ系微粒子分散液のpH範囲は10.0以下とするが、7.6~9.6とすることが好ましい。この際、アルカリ等を添加しpH調整を行うことが好ましい。このようなアルカリの例としては、公知のアルカリを使用することができる。具体的には、アンモニア水溶液、水酸化アルカリ、アルカリ土類金属、アミン類の水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加する前または添加した後、撹拌する際の微粒子分散液の酸化還元電位を50~500mVに調整する。酸化還元電位は100~300mVとすることが好ましい。三価のセリウム金属塩を原料として用いた場合、調合中に微粒子分散液の酸還元電位が低下するからである。また酸化還元電位をこの範囲に保つことで、生成したCeO2超微粒子の結晶化が促進される。酸化還元電位が50mV以下または負となった場合、セリウム化合物がシリカ系微粒子の表面に沈着せずに板状・棒状などのセリア単独粒子あるいは複合セリア粒子が生成する場合がある。さらに、シリカ系微粒子に対する水酸化セリウム等の反応性が低下し、CeO2超微粒子含有層が形成されず、仮に形成したとしてもCeO2超微粒子層中のシリカの割合が極めて低くなる。そのため焼成後にセリア子粒子を内在するセリウム含有シリカ層は形成されず、セリア子粒子はシリカ母粒子の表面に露出して配置された状態となる傾向にある。
酸化還元電位を上記の範囲内に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアー、酸素及びオゾンを吹き込む方法が挙げられる。これらの方法を行わない場合は、酸化還元電位は負であったり50mV以下になる傾向にある。
このような工程1によって、本発明の複合微粒子の前駆体である粒子(前駆体粒子)を含む分散液(前駆体粒子分散液)が得られる。本工程において、前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が2.5nm以上、10nm未満の粒子を得ることが可能である。シリカとセリアの反応性が高すぎると前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が2.5nm未満となる傾向があるため、工程2でセリア粒子を10nm以上とするために過剰に高温での焼成が必要となる。その結果、粒子間の固着が強固となり、解砕が困難となる可能性がある。
上記のように工程1では、前記シリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~20℃、pHを5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへ前記セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加するが、その後、温度を20℃超98℃以下、pHを5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへ前記セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前記前駆体粒子分散液を得ることが好ましい。
すなわち、工程1では、温度0~20℃にて処理を行うが、その後に、温度20℃超98℃以下に変更して処理を行って前記前駆体粒子分散液を得ることが好ましい。
このような工程1を行うと、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液をより得やすいからである。
なお、温度を20℃超98℃以下として処理する場合のpHおよび酸化還元電位の好適値、調整方法等は、温度0~20℃にて処理する場合と同様とする。
また、逆に、温度0~20℃にて処理を行う前に、温度20℃超98℃以下にて処理を行って前記前駆体粒子分散液を得ても構わない。すなわち、前記シリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を20℃超98℃以下、pHを5.0~10.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへ前記セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、その後、温度を0~20℃、pHを5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへ前記セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前記前駆体粒子分散液を得ても構わない。
このような工程1を行った場合も、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液をより得やすいからである。
なお、温度を20℃超98℃以下として処理する場合のpHおよび酸化還元電位の好適値、調整方法等は、温度0~20℃にて処理する場合と同様とする。
このように調合中に温度を変化させて調合した場合であっても、温度が0~20℃にて調合が行われる工程が含まれていれば、複合微粒子は前述と同様の生成機構となる。
0~20℃の範囲で反応させると、シリカに対するセリウムの反応性が抑制されるため、サイズの大きなCeO2超微粒子が生成するが、その後調合温度を20℃超98℃以下に保ちセリウムの金属塩を添加すると、シリカに対するセリウムの反応性が高くなり、シリカの溶解が促進されるため、シリカがセリアの結晶成長を阻害し、サイズの小さなCeO2超微粒子が生成する。このように調合工程(工程1)中の反応温度を0~20℃を必須として、反応温度を20℃超98℃以下に変えて、セリウムの金属塩を添加することにより、CeO2超微粒子およびセリア子粒子の粒子径分布を広くすることができる。なお、調合温度は0~20℃の範囲でセリウムの金属塩を添加させる工程があれば、20℃超98℃以下の温度での反応は、0~20℃での反応の前でも後でも構わず、3回以上温度を変えても構わない。
また、反応温度を2段階以上で行う場合の0~20℃で反応させる工程でのセリウム金属塩の添加量は、セリウム金属塩の全添加量に対して10~90質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を超える場合は、サイズの大きい(または小さい)CeO2超微粒子およびセリア子粒子割合が少なくなるため、粒度分布があまり広くならないからである。
工程1で得られた前駆体粒子分散液を、工程2に供する前に、純水やイオン交換水などを用いて、さらに希釈あるいは濃縮して、次の工程2に供してもよい。
なお、前駆体粒子分散液における固形分濃度は1~27質量%であることが好ましい。
また、所望により、前駆体粒子分散液を、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜、イオン交換膜、遠心分離などを用いて脱イオン処理してもよい。
<工程2>
工程2では、前駆体粒子分散液を乾燥させた後、850~1100℃で焼成する。
乾燥する方法は特に限定されない。従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。具体的には、箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等を使用することができる。
なお、好適には、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0~7.0とすることが推奨される。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0~7.0とした場合、表面活性を抑制できるからである。
乾燥後、焼成する温度は850~1100℃であるが、910~1100℃であることが好ましく、920~1090℃であることがより好ましく、930~970℃であることがもっとも好ましい。このような温度範囲において焼成すると、セリアの結晶化が十分に進行し、また、セリア子粒子が分散しているセリウム含有シリカ層が適度な膜厚となり、セリウム含有シリカ層が母粒子へ強固に結合し、セリウム含有シリカ層に分散した子粒子の脱落が生じにくくなる。さらにこのような温度範囲で焼成することで、水酸化セリウム等は残存し難くなる。この温度が高すぎるとセリアの結晶が異常成長したり、セリウム含有シリカ層が厚くなりすぎたり、母粒子を構成する非晶質シリカが結晶化したり、粒子同士の融着が進む可能性もある。
焼成時にアルカリ金属、アルカリ土類金属、硫酸塩などをフラックス成分として添加してセリアの結晶成長を促進することもできるが、フラックス成分は、研磨基板への金属汚染や腐食の原因となり得る。そのため、焼成時のフラックス成分の含有量は、前駆体粒子(ドライ)あたり、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、40ppm以下であることが最も好ましい。
またフラックス成分は、原料のコロイダルシリカからの持込みを利用したり、調合時にセリウム金属塩の中和に使用するアルカリとして利用しても良いが、調合時にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が共存した場合、シリカ系微粒子の重合が促進され緻密化するため、水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が低下する。さらにシリカ系微粒子の表面がアルカリ金属またはアルカリ土類金属で保護されるため、水酸化セリウム等との反応性が抑制され、セリウム含有シリカ層が形成されない傾向にある。さらに調合中にシリカの溶解が抑制されるため、セリア子粒子中にケイ素原子が固溶し難くなる。
また、このような温度範囲において焼成すると、子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶する。したがって、子粒子に含まれるセリウム原子およびケイ素原子について、セリウム-ケイ素原子間距離をR1とし、セリウム-セリウム原子間距離をR2としたときに、R1<R2の関係を満たすものとなり得る。
工程2では、焼成して得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をする。
ここで、焼成体に湿式で解砕処理を施す前に焼成体を乾式で解砕し、その後、湿式で解砕処理を施してもよい。
乾式の解砕装置としては従来公知の装置を使用することができるが、例えば、アトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等を挙げることができる。
湿式の解砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料としたビーズを挙げることができる。
焼成体を湿式で解砕するときに用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。また、ここでの固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3~50質量%の範囲にあることが好ましい。
なお、焼成体に湿式解砕を施す場合は、溶媒のpHを8.6~10.8に維持しながら湿式による解砕を行うことが好ましい。pHをこの範囲に維持すると、カチオンコロイド滴定を行った場合に、前記式(1)で表される、流動電位変化量(ΔPCD)と、クニックにおけるカチオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が-110.0~-15.0となる流動電位曲線が得られるセリア系複合微粒子分散液を、最終的により容易に得ることができる。
すなわち、前述の好ましい態様に該当する本発明の分散液が得られる程度に、解砕を行うことが好ましい。前述のように、好ましい態様に該当する本発明の分散液を研磨剤に用いた場合、研磨速度がより向上するからである。これについて本発明者は、本発明の複合微粒子表面におけるセリウム含有シリカ層が適度に薄くなること、及び/又は複合微粒子表面の一部に子粒子が適度に露出することで、研磨速度がより向上し、且つセリア子粒子の脱落を制御できると推定している。さらに解砕中に、セリウム含有シリカ層中のシリカが溶解し再び沈着することで、軟質で易溶解なシリカ層が最外層に形成され、この易溶解性のシリカ層が基板との凝着作用で摩擦力を向上させ研磨速度が向上すると推定している。また、セリウム含有シリカ層が薄いか剥げた状態であるため、子粒子が研磨時にある程度脱離しやすくなると推定している。ΔPCD/Vは、-100.0~-15.0であることがより好ましく、-100.0~-20.0であることがさらに好ましい。
なお、工程2のような湿式解砕工程を経ずに、焼成粉をほぐす程度であったり、乾式解砕・粉砕だけ、あるいは湿式解砕であっても所定のpH範囲外の場合は、ΔPCD/Vが-100.0~-15の範囲となりにくく、さらに軟質で易溶解性のシリカ層が形成され難い。
工程2において、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合微粒子分散液を得ることが好ましい。
遠心分離処理による分級は、300G以上の相対遠心加速度にて行うことが好ましい。遠心分離処理後、沈降成分を除去し、セリア系複合微粒子分散液を得ることが好ましい。相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
このような遠心加速度とすると、セリア系複合微粒子分散液中に粗大粒子が残存し難くなり、その結果、セリア系複合微粒子分散液を用いた研磨材などの研磨用途に使用した際に、スクラッチが発生し難くなるからである。
本発明では、上記の製造方法によって得られるセリア系複合微粒子分散液を、更に乾燥させて、セリア系複合微粒子を得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。
このような本発明の製造方法によって、本発明の分散液を得ることができる。
<研磨用砥粒分散液>
本発明の分散液を含む液体は、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液は半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のキズ(スクラッチ)が少ない、基板への砥粒の残留が少ないなどの効果に優れている。
本発明の研磨用砥粒分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の研磨用砥粒分散液に、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
<研磨促進剤>
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩及びこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
<界面活性剤及び/又は親水性化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩及びカリウム塩が好ましい。
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステル及びアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1-アリルスルホン酸ナトリウム塩、2-アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3-エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は、何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
本発明の研磨用砥粒分散液が界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001~10gとすることが好ましく、0.01~5gとすることがより好ましく0.1~3gとすることが特に好ましい。
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
界面活性剤又は親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
<複素環化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の研磨用砥粒分散液に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001~1.0質量%であることが好ましく、0.001~0.7質量%であることがより好ましく、0.002~0.4質量%であることがさらに好ましい。
<pH調整剤>
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類の様な、塩酸、硝酸などの鉱酸が使用される。
<pH緩衝剤>
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸塩などを使用することができる。
また、本発明の研磨用砥粒分散液の分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2-ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、3,4-ジヒドロ-2H-ピランなどのエーテル類;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2-ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の研磨用砥粒分散液に含まれる固形分濃度は0.3~50質量%の範囲にあることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると必要とする研磨速度に達しない場合がある。逆に固形分濃度が高すぎても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ない。
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
<実験1>
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第1表に記す。
[セリア系複合微粒子の弓形図形Xの面積(Sx)、面積(S0)、弦の長さ、矢高および円弧の全長(w)ならびにシリカ系微粒子の弓形図形Yの弦の長さ、矢高および円弧の全長(w)]
実施例および比較例において得らえたセリア系複合微粒子について、図1を用いて説明した方法によって、弓形図形Xの面積(Sx)および擬球台状のセリカ系複合微粒子の面積(S0)を求め、その面積比(Sx/S0)を求めた。また、弓形図形Xの弦の長さ、矢高および円弧の全長(w)も求めた。さらに、シリカ系微粒子についても同様に、弓形図形Yの弦の長さ、矢高および円弧の全長(w)を求めた。
[成分の分析]
[SiO2含有量およびCeO2含有量の測定]
セリア系複合微粒子におけるSiO2含有量は、セリア系複合微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い、固形分の質量を求めた後、後述するICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いた標準添加法によってCe含有率を測定してCeO2質量%を算出し、CeO2以外の固形分の成分はSiO2であるとして、SiO2の含有量を求めた。なお、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有率、CeO2含有率およびシリカ100質量部に対するセリアの質量部は、ここで求めたCeO2含有量およびSiO2含有量に基づいて算出した。なお、ここでセリア系複合微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
ICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いた標準添加法によってCe含有率を測定する方法について説明する。
初めに、セリア系複合微粒子またはセリア系複合微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、CeについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、Ceの測定値とする。
[X線回折法、平均結晶子径の測定]
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液またはシリカ系微粒子を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述の方法によって、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半価全幅を測定し、Scherrerの式により、平均結晶子径を求めた。
<平均粒子径>
(1)実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液について、これに含まれるセリア系複合微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基に、前述の画像解析法によって測定を行った。即ち、次のとおりである。
10万倍に拡大した本発明の複合微粒子の電子顕微鏡写真(透過型電子顕微鏡写真)を用意し、画像上の任意の50個の粒子について、次に、その粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその粒子の粒子径とする。このようにして50個の粒子について粒子径を測定し、これを単純平均して得た値を平均粒子径とする。
(2)実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれる擬球台状のセリア系複合微粒子の平均粒子径についても、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基に、前記の画像解析法によって測定を行った。ただし、擬球台状のセリア系複合微粒子の平均粒子径測定にあたっては、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図に写ったセリア系複合微粒子のうち、擬球台状のセリア系複合微粒子
50個を選び前記と同様に測定及び算定を行った。
(3)実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子の母粒子の平均粒子径及び実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれる擬球台状のセリア系複合微粒子の母粒子の平均粒子径については、セリア系複合微粒子分散液を製造するための原料として使用するシリカゾル(シリカ微粒子分散液)について、前記(1)と(2)の方法でそれぞれ平均粒子径の測定及び算定を行った。
<変動係数>
前述の通り、TEM分析を用いて50個の子粒子の平均粒子径を求め、そこから子粒子についての粒子径分布を求め、標準偏差を求めた。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とした。
<比表面積>
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子の比表面積を前述の方法によって測定した。ここで表面積測定装置(マウンテック社製、品番:Mascsorb HM-1220)を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
[擬球台状粒子の個数比率]
10万倍(ないしは5万倍または30万倍)、に拡大した本発明の複合微粒子分散液の電子顕微鏡写真を用意し、画像上の50個の粒子について、擬球台状の粒子に該当するか否かを判断する。そして、擬球台状の粒子の個数比率を求める。
即ち、50個の粒子に占める擬球台状粒子の割合を算定した。
[研磨試験方法]
<SiO2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は0.6質量%であり、硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。
次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
[研磨基板表面粗さ]
上記のようなSiO2膜の研磨試験を行って得られた研磨基材の表面の平滑性(表面粗さRa)を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、第1表には表面粗さを記載した。
以下に実施例を記す。
<実施例1>
[擬球台状のシリカ微粒子を含むシリカ微粒子分散液の調製]
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:スフェリカスラリーSS-300、平均粒子径341nm)500gにイオン交換水を451g添加して、希釈スラリーを得た。
次に、この希釈スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH9.6に調整した後、φ0.05mmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製)を用いて湿式解砕機(カンペ(株)製、バッチ式卓上サンドミル)にて湿式解砕を900分行った。ここで、湿式解砕中に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを9.5~10.5に保った。
そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られたシリカ系微粒子分散液に分散しているシリカ系微粒子のSEM画像(10万倍)を図3(a)に、TEM像(10万倍)を図3(b)に示す。図3に示すように、シリカ系微粒子は擬球台状であった。
また、シリカ系微粒子の平均粒子径は232nm、そのうち擬球台状であるものの平均粒子径は216nmであった。
さらに固形分濃度は4.6質量%、重量は1375gであった。
次に、得られた擬球台状のシリカ微粒子分散液1286gに陽イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製)41gを添加し60分攪拌を行った。
そして、イオン交換後に44メッシュの金網を通して樹脂を分離して、陽イオン交換液を得た。得られた陽イオン交換液の固形分濃度は4.0質量%、pHは3.1で重量は1440gであった。
次に、得られた陽イオン交換液1440gに陰イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製)50gを添加し60分攪拌を行った。
そして、イオン交換後に44メッシュの金網を通して樹脂を分離して、陰イオン交換液を得た。得られた陰イオン交換液の固形分濃度は3.0質量%、pHは4.5で重量は1891gであった。
次に、得られた陰イオン交換液にアンモニア水溶液を添加し、pH9.1に調整した。ここで得られた液を、以下では、A-1液ともいう。
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO2換算で3.0質量%の硝酸セリウム水溶液(以下、B-1液ともいう)を得た。
次に、A-1液(1894g)を15.5℃に保ち、撹拌しながら、ここへB-1液(2293g、CeO2 dry70g)を27時間かけて添加した。この間、液温を15.5℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH5.0から9.0を維持するようにした。そして、添加終了後に、液温15.5℃で4時間熟成を行った。なお、B-1液の添加中および熟成中は調合液にエアーを吹き込みながら調合を行い、酸化還元電位を50~400mVに保った。
その後、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が5.0質量%、pHが7.5(25℃にて)、電導度が20μs/cm(25℃にて)であった。
次に、得られた前駆体粒子分散液を酢酸水溶液を用いてpH6.5に調整し、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、950℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉体(焼成体)を得た。
次に、焼成後に得られた粉体(焼成体)88gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9.2に調整した後、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)を用いて湿式解砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)にて湿式解砕を180分行った。
そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は7.1質量%で重量は1090gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。
さらに、焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、1700Gで102秒処理し、軽液を回収し、イオン交換水を加え200gに希釈した後、3時間超音波照射を行い分散し、セリア系複合微粒子分散液を得た。
得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子の平均粒子径は236nm、そのうち擬球台状のものであるものの平均粒子径は215nmであった。
また、得られたセリア系複合微粒子のSEM画像(10万倍)を図4に示す。図4に示すように、セリア系複合微粒子は擬球台状であった。すなわち、セリア系微粒子を内接させた場合の面積比が1.2であり、矢高が160nmである弓形図形Xが存在していた。
そして、得られたセリア系複合微粒子分散液について研磨試験を行った。結果を第1表に示す。
また、実施例1で得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子のX線回折法によって測定した。得られたX線回折パターンを図5に示す。図5に示すように、X線回折パターンには、かなりシャープなCerianiteの結晶パターンが観察された。
また、実施例1で得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子についてSTEM-EDS分析を行い、セリア系複合微粒子が母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有していることを確認した。
<実施例2>
実施例1と同様の操作を行い、得られた焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、1700Gで102秒処理し、重液を回収し、イオン交換水を加え59gに希釈した後、超音波照射を行い分散し、セリア系複合微粒子分散液を得た。
得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子の平均粒子径は236nm、そのうち擬球台状のものであるものの平均粒子径は215nmであった。
また、得られたセリア系複合微粒子のSEM画像を得た。そして、セリア系複合微粒子は擬球台状であることを確認した。すなわち、シリカ系微粒子を内接させた場合の面積比が1.2であり、矢高が160nmである弓形図形Xが存在していた。
そして、得られたセリア系複合微粒子分散液について研磨試験を行った。結果を第1表に示す。
また、実施例2で得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子のX線回折法によって測定した。そして、Cerianiteの結晶パターンが観察することができた。
<比較例1>
《シリカゾル(60nm)》の調製
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a1及び混合液b1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO2固形分濃度19質量%、レーザー回折・散乱法により測定された平均粒子径60nmのシリカゾルを9,646.3g得た。
《シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:108nm)》の調製
メタノール2,733.3gと正珪酸エチル1,822.2gとを混合し、混合液aとした。
次に、超純水1,860.7gと29%アンモニア水40.6gとを混合し、混合液bとした。
次に、超純水59gとメタノール1,208.9gとを混合して敷き水として、前工程で得た平均粒子径60nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液922.1gを加えた。
そして、シリカ微粒子分散液を含んだ敷き水を撹拌しながら65℃に調整し、ここへ、混合液a及び混合液bを、各々18時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を65℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度(SiO2固形分濃度)を19質量%に調整し、3,600gの高純度シリカ微粒子分散液を得た。
この高純度シリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子は、動的光散乱法(大塚電子社製PAR-III)により測定した平均粒子径が108nmであった。なお、同じくシリカ微粒子の短径/長径比を透過型電子顕微鏡写真に基づいて測定したところ、短径/長径比=1.0であった。
また、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率をICP(誘導結合プラズマ発光分析)を用いて測定したところ、いずれも1ppm以下であった。
次に、この高純度シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:108nm)1,053gに陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK-1BH)114gを徐々に添加し、30分間攪拌し樹脂を分離した。この時のpHは5.1であった。
得られたシリカ微粒子分散液に超純水を加えて、SiO2固形分濃度3質量%のA-3液6,000gを得た。
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO2換算で2.5質量%のB-3液を得た。
次に、A-3液(6,000g)を50℃まで昇温して、撹拌しながら、ここへB-3液(8,453g、SiO2の100質量部に対して、CeO2が117.4質量部に相当)を18時間かけて添加した。この間、液温を50℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH7.85維持するようにした。なお、B-3液の添加中及び熟成中は調合液にエアーを吹き込みながら調合を行い、酸化還元電位は正の値を保った。
そして、B-3液の添加が終了したら、液温を93℃へ上げて4時間熟成を行った。熟成終了後に室内に放置することで放冷し、室温まで冷却した後に、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が7質量%、pHが9.1(25℃にて)、電導度が67μs/cm(25℃にて)であった。
次に得られた前駆体粒子分散液に5質量%酢酸水溶液を加えてpHを6.5に調整して、100℃の乾燥機中で16時間乾燥させた後、1090℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉体を得た。
焼成後に得られた粉体310gと、イオン交換水430gとを、1Lの柄付きビーカーに入れ、そこへ3%アンモニア水溶液を加え、撹拌しながら超音波浴槽中で10分間超音波を照射し、pH10(温度は25℃)の懸濁液を得た。
次に、事前に設備洗浄と水運転を行った粉砕機(アシザワファインテック株式会社製、LMZ06)にφ0.25mmの石英ビーズ595gを投入し、さらに上記の懸濁液を粉砕機のチャージタンクに充填した(充填率85%)。なお、粉砕機の粉砕室及び配管中に残留したイオン交換水を考慮すると、粉砕時の濃度は25質量%である。そして、粉砕機におけるディスクの周速を12m/sec、パス回数を25回、及び1パス当たりの滞留時間を0.43分間とする条件で湿式解砕、粉砕を行った。また、解砕、粉砕時の懸濁液のpHを10に維持するように、パス毎に3%アンモニア水溶液を添加した。このようにして、固形分濃度22質量%のセリカ系複合微粒子分散液を得た。
次いで得られた微粒子分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度675Gで1分間遠心分離処理し、沈降成分を除去し、セリカ系複合微粒子分散液を得た。
比較例1で得られたセリア系複合微粒子のSEM画像(10万倍)を図6(a)に、TEM画像(10万倍)を図6(b)に示す。
Figure 2022103985000002
本発明の分散液に含まれるセリア系複合微粒子は、粗大粒子を含まないため低スクラッチで、かつ高研磨速度である。よって、本発明の分散液を含む研磨用砥粒分散液は、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。具体的には、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用として好ましく用いることができる。

Claims (10)

  1. 下記[1]から[3]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を含む、セリア系複合微粒子分散液。
    [1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
    [2]前記セリア系複合微粒子は、次の要件を満たすこと。
    1)その電子顕微鏡写真上において、前記セリア系複合微粒子の像が内接する円が存在し、更に該セリア系複合微粒子の像は、その円の該円周上の円弧と弦からなる弓形図形Xに対し次の関係にあること。
    (I)弓形図形Xの弦と、少なくとも部分的に内接する。
    (II)弓形図形Xの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
    2)前記セリア系複合微粒子の像の面積に対し、弓形図形Xの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
    [3]前記セリア系複合微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nmであること。
  2. 前記セリア系複合微粒子は、その電子顕微鏡写真上において、弦の長さの少なくとも20%と内接している、請求項1記載のセリア系複合微粒子分散液。
  3. 更に前記セリア系複合微粒子は、その電子顕微鏡写真上において、円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dの両側に、円弧に沿ってw/6(w:円弧の全長)ずつの長さに及ぶ円弧曲線とは内接せず、該円弧曲線の両末端と接続する2つの円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接している、請求項1又は2記載のセリア系複合微粒子分散液。
  4. さらに下記[4]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を含む、請求項1~3のいずれかに記載のセリア系複合微粒子分散液。
    [4]前記セリア系複合微粒子は、子粒子の粒子径分布の変動係数が15~50%の範囲にあること。
  5. 電子顕微鏡写真上において、全ての粒子に占める前記セリア系複合微粒子の個数割合が20~30%である、請求項1~4のいずれかに記載のセリア系複合微粒子分散液。
  6. 請求項1または2に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
  7. シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする請求項6に記載の研磨用砥粒分散液。
  8. 下記の工程1および工程2を含むことを特徴とし、請求項1~5のいずれかに記載のセリア系複合微粒子分散液が得られる、セリア系複合微粒子分散液の製造方法。
    工程1:下記1)、2)及び3)の条件を満たすシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~20℃、pHを5.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
    1)その電子顕微鏡写真上において、前記シリカ微粒子の像が内接する円が存在し、更に該シリカ微粒子の像は、その円の円周上の円弧と弦からなる弓形図形Yに対し次の関係にあること。
    (I)弓形図形Yの弦と、少なくとも部分的に内接する。
    (II)弓形図形Yの円弧の全長を二等分する円弧上の等分点Dと内接せず、かつ、等分点Dを中心として、円弧上の片側の円弧曲線及び反対側の円弧曲線と、それぞれ少なくとも部分的に内接する。
    2)前記シリカ微粒子の像の面積に対し、弓形図形Yの面積は1.1~4.0倍であり、弦の長さが80nm以上であり、矢高が50nm以上である。
    3)前記シリカ微粒子は、画像解析法による平均粒子径が50~350nmであること。
    工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、850~1,100℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
  9. 前記工程2が、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することにより前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程である、請求項8に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
  10. 前記工程1が、球状のシリカ粒子を含む分散液のpH9.5~10.5の範囲に調整し、これを湿式で解砕して前記シリカ系微粒子を得る操作を含む、請求項8または9に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
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