JP2021014375A - セリア系微粒子分散液、その製造方法およびセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 - Google Patents

セリア系微粒子分散液、その製造方法およびセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】シリカ膜、Siウェハや難加工材であっても高速で研磨することができ、同時に高面精度を達成できることができるセリア系複合粒子分散液の提供。【解決手段】下記の特徴を備える平均粒子径5〜500nmのセリア系微粒子を含む、セリア系微粒子分散液。原料セリア微粒子と、前記原料セリア微粒子の表面上の易溶解性のセリアを含む層とを有し、前記原料セリア微粒子は結晶性のセリアを主成分とすること。前記セリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリアの質量D1の割合D(D=D1/D2×100)が0.005〜10%であること。X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出されること。X線回折に供して測定される前記結晶性セリアの平均結晶子径が3〜300nmであること。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体デバイス製造等に使用される研磨剤として好適なセリア系微粒子分散液に関し、特に基板上に形成された被研磨膜を、化学機械的研磨(ケミカルメカニカルポリッシング:CMP)で平坦化するためのセリア系微粒子分散液、その製造方法及びセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液に関する。
半導体基板、配線基板などの半導体デバイスなどは、高密度化・微細化することで高性能化を実現している。この半導体の製造工程においては、いわゆるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)が適用されており、具体的にはシャロートレンチ素子分離、層間絶縁膜の平坦化、コンタクトプラグやCuダマシン配線の形成などに必須の技術となっている。
一般にCMP用研磨剤は、砥粒とケミカル成分とからなり、ケミカル成分は対象被膜を酸化や腐食などさせることにより研磨を促進させる役割を担う。一方で砥粒は機械的作用により研磨する役割を持ち、コロイダルシリカやヒュームドシリカ、セリア粒子が砥粒として使われる。特にセリア粒子は酸化ケイ素膜に対して特異的に高い研磨速度を示すことから、シャロートレンチ素子分離工程での研磨に適用されている。
シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低い事が望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
従来、このような部材の研磨方法として、比較的粗い1次研磨処理を行った後、精密な2次研磨処理を行うことにより、平滑な表面あるいはスクラッチなどの傷が少ない極めて高精度の表面を得る方法が行われている。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法等が提案されている。
例えば、特許文献1には、硝酸第一セリウムの水溶液と塩基とを、pHが5〜10となる量比で攪拌混合し、続いて70〜100℃に急速加熱し、その温度で熟成することを特徴とする酸化セリウム単結晶からなる酸化セリウム超微粒子(平均粒子径10〜80nm)の製造方法が記載されており、更にこの製造方法によれば、粒子径の均一性が高く、かつ粒子形状の均一性も高い酸化セリウム超微粒子を提供できると記載されている。
また、非特許文献1は、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製造方法と類似した製造工程を含むセリアコートシリカの製造方法を開示している。このセリアコートシリカの製造方法は、特許文献1に記載の製造方法に含まれるような焼成―分散の工程を有さないものである。
さらに、特許文献2には、酸化セリウム粒子を媒体に分散させたスラリーを含む研磨剤であり、前記酸化セリウム粒子は、セリウム化合物を焼成および粉砕して得られ、全酸化セリウム粒子のうち、新面の生成に有効な酸化セリウム粒子は、結晶子から構成され結晶粒界を有する多結晶であり、前記結晶粒界を有する酸化セリウム粒子は、前記スラリー中に含まれる全酸化セリウム粒子の5〜100体積%であり、前記結晶粒界を有する酸化セリウム粒子の粒子径の中央値が100〜1500nmである研磨剤が記載されている。そして、このような研磨剤を使用することで、SiO2絶縁膜等の被研磨面を傷なく高速に研磨することが可能であることが記載されている。
特許第2,746,861号公報 特許第4,776,519号公報
Seung−Ho Lee, Zhenyu Lu, S.V.Babu and Egon Matijevic、"Chemical mechanicalpolishing of thermal oxide films using silica particles coated with ceria"、Journal of Materials Research、Volume 17、Issue 10、2002、pp2744−2749
しかしながら、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子について、本発明者が実際に製造して検討したところ、研磨速度が低く、さらに、研磨基材の表面に欠陥(面精度の悪化、スクラッチ増加、研磨基材表面への研磨材の残留)を生じやすいことが判明した。
これは、焼成工程を含むセリア粒子の製造方法(焼成によりセリア粒子の結晶化度が高まる)に比べて、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製法は、焼成工程を含まず、液相(硝酸第一セリウムを含む水溶液)から酸化セリウム粒子を結晶化させるだけなので、生成する酸化セリウム粒子の結晶化度が相対的に低く、また、焼成処理を経ないため砥粒の密度が低いため研磨速度が低く、さらに酸化セリウムが母粒子と固着せず、酸化セリウムが研磨基材の表面に残留することが主要因であると、本発明者は推定している。
また、特許文献2に記載の酸化セリウム粒子について、本発明者が実際に製造して検討したところ、焼成を行わない特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子と比較した場合、研磨速度は高いものの十分では無く、さらに研磨後の基材表面に欠陥が生じやすいことが判明した。特許文献2では、例えば炭酸セリウムを700℃で焼成し、ジェットミルにて乾式粉砕するプロセスで製造されているが、焼成工程で生じた粗大な凝集塊が、粉砕しきれずに残留したことが原因と推定される。また分散剤として、ポリアクリル酸アンモニウム塩などの有機物を使用していることから、基板表面への有機物汚染も懸念される。
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、シリカ膜、Siウェハや難加工材であっても高速で研磨することができ、同時に高面精度(低スクラッチ、基板上の砥粒残が少ない、基板Ra値の良化等)を達成でき、さらに不純物を含まない場合、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができるセリア系微粒子分散液、その製造方法及びセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(10)である。
(1)下記[1]から[4]の特徴を備える平均粒子径5〜500nmのセリア系微粒子を含む、セリア系微粒子分散液。
[1]前記セリア系微粒子は、原料セリア微粒子と、前記原料セリア微粒子の表面上の易溶解性のセリアを含む層とを有し、前記原料セリア微粒子は結晶性のセリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリアの質量D1の割合D(D=D1/D2×100)が0.005〜10%であること。
[3]前記セリア系微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[4]前記セリア系微粒子は、X線回折に供して測定される前記結晶性セリアの平均結晶子径が3〜300nmであること。
(2)pH値を3〜8とした場合に流動電位がプラスとなる、上記(1)に記載のセリア系微粒子分散液。
(3)アニオンコロイド滴定を行った場合に、下記式(1)で表される流動電位変化量(ΔPCD)と、流動電位の微分値が最大になるときのアニオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が2〜500となる流動電位曲線が得られる、上記(1)または(2)に記載のセリア系微粒子分散液。
ΔPCD/V=(I−C)/V・・・式(1)
C:前記流動電位の微分値が最大になるときの流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記流動電位の微分値が最大になるときの前記アニオンコロイド滴定液の添加量(ml)
(4)0.98μm以上の粗大粒子となっている前記セリア系微粒子の数が、3000百万個/cc以下である請求項1〜3のいずれかに記載のセリア系微粒子分散液。
(5)前記セリア系微粒子に含まれる不純物の含有割合が、次の(a)及び(b)のとおりであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセリア系微粒子分散液。
(a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
(7)シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする、上記(6)に記載の研磨用砥粒分散液。
(8)下記の工程1および工程2aを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法。
工程1:セリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る工程。
工程2a:前記焼成体にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、その後、解砕もしくは粉砕することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
(9)下記の工程1および工程2bを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法。
工程1:セリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る工程。
工程2b:前記焼成体を解砕もしくは粉砕し、得られた原料セリア微粒子分散液にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
(10)下記の工程Aおよび工程Bを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法。
工程A:セリウム化合物を溶解したセリウム溶液を、温度を3〜98℃、pHを5.0〜10.0に維持した溶媒中に連続的または断続的に添加し、コロイダルセリアを得る工程。
工程B:前記コロイダルセリアにセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
本発明のセリア系微粒子分散液を、例えば、研磨用砥粒分散液として研磨用途に使用した場合、対象がシリカ膜、Siウェハなどを含む難加工材であっても、高速で研磨することができ、同時に高面精度(低スクラッチ、被研磨基板の表面粗さ(Ra)が低いこと等)を達成することができる。本発明のセリア系微粒子分散液の製造方法は、このような優れた性能を示すセリア系微粒子分散液を効率的に製造する方法を提供するものである。
本発明のセリア系微粒子分散液の製造方法の好適態様においては、セリア系微粒子に含まれる不純物を著しく低減させ、高純度化させることも可能である。本発明のセリア系微粒子分散液の製造方法の好適態様によって得られる、高純度化されたセリア系微粒子分散液は、不純物を含まないため、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。
また、本発明のセリア系微粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した場合、半導体デバイス表面の平坦化に有効であり、特にはシリカ絶縁膜が形成された基板の研磨に好適である。
実施例1のセリア系微粒子のSEM像及びTEM像である。 実施例1のセリア系微粒子のX線回折パターンである。 比較例1のセリア系微粒子のSEM像およびTEM像である。 比較例3のセリア微粒子のSEM像である。 流動電位測定結果を示すグラフである。 図5に示した流動電位測定データから算出した流動電位の変化割合(微分値)のグラフである。
本発明について説明する。
本発明は、下記[1]から[4]の特徴を備える平均粒子径5〜500nmのセリア系微粒子を含む、セリア系微粒子分散液である。
[1]前記セリア系微粒子は、原料セリア微粒子と、前記原料セリア微粒子の表面上の易溶解性のセリアを含む層とを有し、前記原料セリア微粒子は結晶性のセリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリアの質量D1の割合D(D=D1/D2×100)が0.005〜10%であること。
[3]前記セリア系微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[4]前記セリア系微粒子は、X線回折に供して測定される前記結晶性セリアの平均結晶子径が3〜300nmであること。
上記[1]から[4]の特徴を備えるセリア系微粒子を、以下では「本発明のセリア系微粒子」ともいう。
また、このようなセリア系微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
また、本発明は、下記の工程1および工程2aを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法である。
工程1:セリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る工程。
工程2a:前記焼成体にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、その後、解砕もしくは粉砕することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法[α]」ともいう。
また、本発明は、下記の工程1および工程2bを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法である。
工程1:セリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る工程。
工程2b:前記焼成体を解砕もしくは粉砕し、得られた原料セリア微粒子分散液にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る工程である。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法[β]」ともいう。
また、本発明は、下記の工程Aおよび工程Bを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法である。
工程A:セリウム化合物を溶解したセリウム溶液を、温度を3〜98℃、pHを5.0〜10.0に維持した溶媒中に、連続的または断続的に添加し、コロイダルセリアを得る工程。
工程B:前記コロイダルセリアにセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法[X]」ともいう。
以下において、単に「本発明の製造方法」と記した場合、「本発明の製造方法[α]」、「本発明の製造方法[β]」および「本発明の製造方法[X]」のいずれをも意味するものとする。
また、以下において、単に「本発明」と記した場合、本発明の分散液、本発明のセリア系微粒子および本発明の製造方法のいずれをも意味するものとする。
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
<原料セリア微粒子>
原料セリア微粒子について説明する。
本発明のセリア系微粒子の平均粒子径は5〜500nmの範囲にあるので、原料セリア微粒子の平均粒子径の上限は必然的に500nmと同じか、より小さい値となる。なお、本願において原料セリア微粒子の平均粒子径は、後述する本発明の製造方法[β]が含む工程2bで使用する原料セリア微粒子分散液に含まれる原料セリア微粒子の平均粒子径とほぼ同じになると考えられる。
平均結晶子径が3〜300nmの範囲で、平均粒子径が5〜500nm(好ましくは5〜485nm、より好ましくは5〜470nm)の範囲である原料セリア微粒子が好適に使用される。
平均粒子径が5〜500nmの範囲にある原料セリア微粒子を原料として用いて得られる本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨に伴うスクラッチの発生が少なくなる。
原料セリア微粒子の平均粒子径が5nm未満の場合、その様な原料セリア微粒子を用いて得られた分散液を研磨剤として用いると、研磨レートが実用的な水準に達さない傾向がある。
また、原料セリア微粒子の平均粒子径が500nmを超える場合も同じく研磨レートが実用的な水準に達さない傾向があり、研磨対象の基板の面精度低下を招く傾向もある。なお、原料セリア微粒子は、単分散性を示すものがより好ましい。
原料セリア微粒子の平均粒子径は、次のように測定するものとする。
本発明のセリア系微粒子をTEM観察すると、例えば図1のように粒子の外側にコントラストの淡い領域とその内側の濃い領域が観察できる。コントラストの濃い領域が原料セリア微粒子で、原料セリア微粒子の外側に観察されるコントラストの淡い領域が易溶解性のセリアを含む層である。このようにコントラストの違いから原料セリア微粒子を特定する。次に、TEM画像において、その原料セリア微粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその1個の原料セリア微粒子の幾何平均粒子径とする。
このようにして50個の原料セリア微粒子について幾何平均粒子径を測定し、これを単純平均して得た値を平均粒子径とする。なお、易溶解性のシリカを含む層が粒子膜(粒子が積み重なって膜状となったもの)の場合であっても同様に測定することができる。
またSTEM分析などで結晶性のセリアによる格子縞から、原料セリア微粒子の領域が明らかに特定できる場合は、これらの方法で代用しても構わない。
原料セリア微粒子は、結晶性セリアを主成分とすれば特に制限されず、単結晶であっても、単結晶の凝集体であっても、多結晶体(多結晶体とは、結晶粒界を有する粒子を指す)であっても、あるいはこれらの混合体であっても良い。
本発明において原料セリア微粒子が結晶性セリアを主成分とすることは、例えば、本発明の分散液を乾燥させた後、得られた固形物(すなわち、本発明のセリア系微粒子)を乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)を用いてX線分析し、得られたX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、前記原料セリア微粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
本願における「原料セリア微粒子」の用語は、結晶性セリア(結晶性Ce酸化物)の粒子、即ちセリア微粒子を意味する。
なお、原料セリア微粒子は結晶性セリア(結晶性Ce酸化物)を主成分とし、その他のもの、例えば酸化セリウム以外の成分を10質量%以下ならば含んでもよい。さらに結晶性セリアにSiやLa、Zr、Alなどが固溶していることが望ましい。また、研磨の助触媒的に含水セリウム化合物を含んでもよい。
ただし、上記のように、本発明のセリア系微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ない、あるいはセリア結晶中に固溶しているため、X線回折による検出範囲外となる。
原料セリア微粒子の平均結晶子径は、本発明のセリア系微粒子をX線回折に供して得られるチャートに現れる最大ピークの半値全幅を用いて算出される。そして、例えば(111)面の平均結晶子径は3〜300nm(半値全幅は2.850〜0.02856°)であり、10〜250nm(半値全幅は0.860〜0.03427°)であることが好ましく、30〜200nm(半値全幅は0.290〜0.04284°)であることがより好ましい。なお、多くの場合は(111)面のピークの強度が最大になるが、他の結晶面、例えば(100)面のピークの強度が最大であってもよい。その場合も同様に算出でき、その場合の平均結晶子径の大きさは、上記の(111)面の平均結晶子径と同じであってよい。
原料セリア微粒子の平均結晶子径の測定方法を、(111)面(2θ=28度近傍)の場合を例として以下に示す。
初めに、本発明のセリア系微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半値全幅を測定し、下記のScherrerの式により、平均結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:平均結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(1.5419オングストローム、Cuランプ)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
原料セリア微粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、俵状、短繊維状、繭型、四面体状(三角錐型)、六面体状、八面体状、板状、不定形、多孔質状、オコシ状、金平糖状、ラズベリー状(球状粒子又は略球状粒子の表面に突起部ないしは粒状の部位が点在している状態)のものであってよい。
前述のように、原料セリア微粒子は結晶性セリアを主成分とするが、不純物元素を含んでもよい。
例えば、前記原料セリア微粒子において、Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。
また、前記原料セリア微粒子におけるU、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
ここで、原料セリア微粒子および後述する本発明のセリア系微粒子における特定不純物群1または特定不純物群2の含有率は、dry量に対する含有率を意味するものとする。
dry量に対する含有率とは、対象物(原料セリア微粒子または本発明のセリア系微粒子)に含まれる固形分の質量に対する測定対象物(特定不純物群1または特定不純物群2)の重量の比の値を意味するものとする。
固形分の質量は、対象物(原料セリア微粒子または本発明のセリア系微粒子)に1000℃灼熱減量を施して求める。
一般にセリウム塩などのセリウム化合物を原料として調製した原料セリア微粒子は、原料に由来する前記特定不純物群1と前記特定不純物群2を合計で数十から数百ppm程度含有する。
このような原料セリア微粒子が溶媒に分散してなる原料セリア微粒子分散液の場合、イオン交換処理を行って前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも前記特定不純物群1と前記特定不純物群2が合計で数ppmから数百ppm残留する。そのため、セリウム塩を一度溶解して再結晶化させることを繰り返して純度を向上させることや、溶解後にキレート型イオン交換樹脂等で不純分を除去した後に再結晶化することも行われている。
なお、本発明において、原料セリア微粒子におけるNa、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各々の含有率は、それぞれ次の方法を用いて測定して求めた値とする。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、U及びTh:ICP−MS(誘導結合プラズマ発光分光質量分析)
・Cl:電位差滴定法
・NO3、SO4及びF:イオンクロマトグラフ
<易溶解性のセリアを含む層>
本発明のセリア系微粒子における易溶解性のセリアを含む層(以下では「易溶解層」ともいう)は、例えば本発明の製造方法において焼成体を得た後、または焼成体をさらに解砕もしくは粉砕した後にセリアを含む添加材(例えば塩化セリウム水溶液や硝酸セリウム水溶液など)を添加し10〜98℃に保ちながら加熱熟成することで、前記セリア微粒子の表面上に形成することができる。
易溶解性のセリアを含む層は、セリアを50質量%以上含んでいればよく、La、Zr、Al、Siなどその他の成分を含んでいても良い。
易溶解性のセリアを含む層におけるセリアの含有率は50〜100質量%であることが好ましく、55〜100質量%であることがより好ましく、60〜100質量%であることがさらに好ましい。
易溶解性のセリアを含む層におけるセリアの含有率およびLa、Zr、Al、Siの含有率の測定方法については、後述する。
セリア系微粒子中に含まれる易溶解性セリアの質量は、次の方法によって求めるものとする。
初めに、本発明のセリア系微粒子をイオン交換水にて3.3質量%に希釈し、希釈水酸化ナトリウム水溶液または塩酸でpHを5.0に調整し、更にイオン交換水を添加して、pH5.0で固形分濃度3.0質量%に調整し、15分間撹拌する(限外処理用試料)。しかるのちに限外膜付きの遠心管(分画分子量5000)に投入し1820Gで30分間処理を行う。処理後に限外膜を透過した分離液を回収し、CeO2濃度の測定を行う。そして、限外処理用試料の重量と限外処理用試料中のdry量との差異に、求めたCeO2濃度を乗じることで、溶解したセリア(易溶解性セリア)の質量(D1)を求める。
このとき易溶解性のセリアを含む層を備えた本発明のセリア系微粒子は、本発明のセリア系微粒子の質量をD2とし、溶解したセリア(易溶解性セリア)の質量D1とした場合、D2に対するD1の割合D(D=D1/D2×100)が0.005〜10%となる。
なお、易溶解性のセリアを含む層におけるLa、Zr、Al、Siの含有量は、ここで得らえた、限外膜を透過した分離液をICPなどで分析することで求めることができる。
前述のように形成され、前述のようにpHを5.0等に調整して撹拌等する処理を行うことで溶解する易溶解性のセリアを含む層は溶解性セリアであることから、密度が低い軟質なセリア層と考えている。
さらに膜厚も非常に薄い(概ね0.1nm〜30nm程度と考えられる)ため、測定上、本発明のセリア系微粒子の平均粒子径もほとんど変化しないことから、本発明のセリア系微粒子の粒度分布も変化していないと考えられる。
そのため本発明のセリア系微粒子を砥粒として用いて基板を研磨する場合、易溶解性のセリアを含む層は基板に対する化学的な研磨効果や、基板に対する砥粒の押し込み深さを増加させるような効果は無く、むしろ押し込み深さを軽減させると考えられる。
しかし、密度が低く軟質なセリアを含む層であるため、砥粒としての本発明のセリア系微粒子と基板との接触面積を増加させる効果を有すると同時に、軟質であるため基板と砥粒間の付着力(凝着作用)を高める効果や、あるいは基板との凝着により砥粒の転がりを抑制する効果があると考えられる。その結果、基板と砥粒間の摩擦力が増加し、研磨速度を高める効果があると考えられる。また砥粒表面に形成された易溶解性のセリアを含む層は軟質であるため、原料セリア微粒子の矩形部による基板への局部的な応力集中を緩和させ、スクラッチを抑制する効果もある。特に研磨傷が生じやすいアルミハードディスク等の基板に対して有効である。そのため、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高く、面精度の悪化やスクラッチの発生が少ないと考えられる。
また、易溶解性のセリアを含む層は、原料セリア微粒子全体を覆っていても良く、その一部が被覆されておらず、原料セリア微粒子の一部が露出していても構わない。ここで、原料セリア微粒子は、例えば、セリア微粒子を母粒子として、その表面に該母粒子より粒子径の小さなセリア微粒子(セリア子粒子)の1個又は複数個が結合した構造のものを含んでも構わない。この様な構造の原料セリア微粒子の場合、セリア子粒子を含めた粒子表面に易溶解性のセリアを含む層が被覆されていれば構わない。
セリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリアの質量D1の割合D(D=D/D×100)が0.005〜10質量%の範囲内であれば、基板と粒子間の凝着作用がより発現し、研磨速度がより高くなるからである。
前記のとおり本発明のセリア系微粒子は、原料セリア微粒子上に易溶解性のセリアを含む層が形成されてなるものである。
該セリア系微粒子の具体的な態様としては次の場合を挙げることができる。
1.原料セリア微粒子上に易溶解性のセリアを含む被膜が被覆されている場合。
2.原料セリア微粒子上に易溶解性のセリアを含む粒子が膜状に被覆されている場合。
3.原料セリア微粒子上に易溶解性のセリアを含む被膜が被覆されており、更に易溶解性のセリアを含む粒子が膜状に被覆されている場合。
4.原料セリア微粒子上にセリア微粒子が膜状に被覆されており、更に易溶解性のセリアを含む被膜が被覆されている場合。
なお、公知の方法で製造されたセリアゾル、例えば硝酸セリウムを原料としてアルカリで中和することで得られるコロイダルセリアなどを原料セリア微粒子上に凝着させただけでは、易溶解性のセリアを含む層とはならない。このような場合であって、特に粒子膜が形成された場合は、易溶解性のセリアではないため研磨速度向上には寄与せず、むしろ研磨速度は低下する。
また、本発明のセリア系微粒子では、原料セリア微粒子の表面の少なくとも一部が易溶解性のセリアを含む層によって被覆されており、本発明のセリア系微粒子のゼータ電位はプラスの電位を有している。このため研磨剤として利用した場合に、本発明のセリア系微粒子はマイナスの電位を有する研磨基板と引き合うため、研磨速度が高くなる効果があるものと考えられる。
例えば本発明の製造方法[β]の工程2bの解砕処理時にpHを5〜11に保ちながら解砕し、その後にセリアを含む添加材を添加すると、解砕によって分散したセリアの表面は易溶解性のセリアが、原料セリア微粒子に沈着し、さらに易溶解のセリアを含む層を形成するので、本発明のセリア系微粒子の表面は正の電位を持つことになる。研磨基板が負の電位であるため研磨後の基板への砥粒残りが懸念される場合は、研磨pHを中性から弱アルカリ性に調整し砥粒の電位を負にして研磨することも可能である。さらに、ポリアクリル酸等の高分子有機物によって砥粒を負に電位調節することも可能である。
なお、本発明の分散液において、セリアの存在態様は多様であり、一部は本発明のセリア系微粒子を構成しておらず、溶媒中に分散又は溶解したり、本発明のセリア系微粒子の表面上に付着した状態で存在している場合もある。溶媒中に分散または溶解したセリアは、明確な粒子形態が認められず、固液分離した溶液中では可溶性セリアとしてICP法などで測定される。
本発明のセリア系微粒子について透過型電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(TEM像)では、原料セリア微粒子の像が濃く現れるが、その原料セリア微粒子の周囲および外側、すなわち、本発明のセリア系微粒子の表面側に、相対的に薄い像として、易溶解性のセリアを含む層の一部が現れる。この部分についてSTEM−EDS分析を行い、当該部分のCeO2質量%を求めると50質量%以上であることを確認することができる。
本発明のセリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリア質量D1の割合D(D=D1/D2×100)は0.005〜10%であることが好ましく、0.01〜8%であることがより好ましい。0.05〜6%であることが最も好ましい。
割合Dが0.005%未満の場合、本発明のセリア系微粒子の表面における易溶解性のセリアを含む層がごく僅かに部分的にしか被覆していないため研磨速度が向上せず、分散安定性も向上しないからである。また10%超の場合は、これ以上多く被覆しても分散安定性はそれ以上向上せず、その一方で易溶解性のセリアを含む層の厚みが厚すぎて、研磨時に原料セリア微粒子が基板と接触しなくなり、研磨速度が低下する傾向があるからである。
<本発明のセリア系微粒子>
本発明のセリア系微粒子について説明する。
本発明のセリア系微粒子は前述の[1]〜[4]の特徴を備える。
平均粒子径が5〜500nmの範囲にある本発明のセリア系微粒子を含む本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨に伴うスクラッチの発生が少なくなる。本発明のセリア系微粒子の平均粒子径は30〜300nmがより好ましい。本発明のセリア系微粒子の平均粒子径が5nm未満の場合、研磨剤として用いると、研磨レートが実用的な水準に達さない傾向がある。また、同じくセリア系微粒子の平均粒子径が500nmを超える場合も同じく研磨レートが実用的な水準に達しない傾向があり、研磨対象の基板の面精度低下を招く傾向もある。
本発明のセリア系微粒子の平均粒子径は、画像解析法で測定された平均粒子径の個数平均値を意味する。
画像解析法による平均粒子径の測定方法を説明する。透過型電子顕微鏡により、本発明のセリア系微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これを本発明のセリア系微粒子の平均粒子径とする。
このようにして50個以上の本発明のセリア系微粒子について幾何平均粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出する。
易溶解性のセリアを含む層はセリアを含んでおり、本発明のセリア系微粒子を酸性水溶液中で撹拌保持し、溶液中の溶解したCe濃度を測定することによって易溶解性のセリアを含む層を確認することができる。
すなわち、本発明のセリア系微粒子が水に分散してなる分散液にイオン交換水を添加して3.3質量%に希釈し、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5に調整し、イオン交換水を添加して3.0質量%でpH5.0に調整した後、15分間撹拌することで溶解する部分が易溶解性のセリアを含む層である。しかるのちに限外膜付き遠心管(分画分子量5000)に投入し、1820Gで30分処理すると、易溶解セリア層を構成していたものは限外膜を透過すると考えられる。そこで、限外膜を透過した分離液を回収しCe濃度の測定を行い、上澄み液中に溶解したセリアの質量をD1、セリア系微粒子の質量をD2とすると、易溶解セリア層を備えたセリア系微粒子の場合は、D2に対するD1の割合D(D=D1/D2×100)が0.005〜10%となるので、易溶解セリア層を有していない原料セリア微粒子またはセリア系微粒子と区別することができる。
本発明のセリア系微粒子をX線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出される。本発明のセリア系微粒子が結晶性のセリアを主成分とすることは、例えば、次の方法で確認することができる。
本発明の分散液を乾燥させた後、乳鉢を用いて粉砕し、例えば、従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、本発明のセリア系微粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
また、本発明の分散液を乾燥させ、樹脂包埋した後にPtによるスパッタコーティングを施し、従来公知の収束イオンビーム(FIB)装置を用い断面試料を作成する。例えば作成した断面試料を従来公知のTEM装置を用い、高速フーリエ変換(FFT)解析を用いてFFTパターンを得ると、例えばCerianiteのような結晶性セリアの回折図が現れる。このことから、本発明のセリア系微粒子が結晶性セリアを主成分とすることを確認できる。また、このような場合に、結晶性セリアが主成分とするものとする。
また、別の方法として同様に作成した断面試料について、従来公知のTEM分析を用い、原料セリア微粒子の原子配列による格子縞の有無を観察する方法が挙げられる。結晶質であれば結晶構造に応じた格子縞が観察され、非晶質であれば格子縞は観察されない。このことから、本発明のセリア系微粒子が結晶性セリアを主成分とすることを確認できる。また、このような場合に、結晶性セリアが主成分とするものとする。
本発明のセリア系微粒子におけるセリア(CeO2)およびセリア以外の含有率(質量%)の測定方法について説明する。
まず本発明の分散液の固形分濃度を、1000℃灼熱減量を行って秤量により求める。
次に、所定量の本発明のセリア系微粒子に含まれるセリウム(Ce)以外の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、酸化物質量%(例えばSiO2質量%等)に換算する。本発明のセリア系微粒子を構成するその他の酸化物以外の成分はCeO2であるとして、CeO2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、セリアとセリア以外の質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したセリア源物質とセリア以外の原料物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやセリア以外の物質が溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやセリア以外の物質の使用量と分析値が良い一致を示す。
本発明のセリア系微粒子においては、単結晶の原料セリア微粒子が「粒子連結型」であっても「単粒子の単分散型」であっても良いが、基板との接触面積を高く保つことができ、研磨速度が速いことから、粒子連結型が望ましい。粒子連結型とは、2以上の原料セリア微粒子同士が各々一部において結合しているもので、連結は3以下が好ましい。原料セリア微粒子どうしの結合は異相を介した単結晶体の連結体(凝集体)でもよく、結晶粒界を有した多結晶体型の連結型でもよく、さらに多結晶体が異相を介した凝集体でもよく、これらの混合物であっても良い。
連結型であると基板との接触面積を多くとることができるため、研磨エネルギーを効率良く基板へ伝えることができる。そのため、研磨速度が高い。
本発明のセリア系微粒子の形状は、格別に制限されるものではなく、粒子連結型粒子であっても、単粒子(非連結粒子)であってもよく、通常は両者の混合物である。
本発明のセリア系微粒子は、粒子連結型であって、かつ、画像解析法で測定された短径/長径比が0.80未満(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合は45%以上であることが好ましい。
ここで、画像解析法で測定された短径/長径比が0.80未満である粒子は、粒子結合型のものと考えられる。
ここで、本発明の分散液を研磨用途に使用する場合であって、被研磨基板に対する研磨レート向上を重視する場合は、本発明のセリア系微粒子の画像解析法で測定された短径/長径比が0.80未満(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合は45%以上(より好ましくは51%以上)であることが好ましい。
また、同じく被研磨基板上の表面粗さが低い水準にあることを重視する場合は、本発明のセリア系微粒子の画像解析法で測定された短径/長径比が0.80以上(好ましくは0.9以上)である粒子の個数割合は40%以上であることが好ましく、51%以上がより好ましい。
前記の被研磨基板に対する研磨レート向上を重視する場合における、本発明のセリア系微粒子分散液としては、次の態様1を挙げることができる。
[態様1]本発明のセリア系微粒子が、更に、画像解析法で測定された短径/長径比が0.8未満である粒子の個数割合が45%以上であることを特徴とする、本発明の分散液。
また、前記被研磨基板上の表面粗さが低い水準にあることを重視する場合における、本発明のセリア系微粒子分散液としては、次の態様2を挙げることができる。
[態様2]本発明のセリア系微粒子が、更に、画像解析法で測定された短径/長径比が0.8以上である粒子の個数割合が40%以上であることを特徴とする、本発明の分散液。
画像解析法による短径/長径比の測定方法を説明する。透過型電子顕微鏡により、本発明のセリア系微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。これより、短径/長径比(DS/DL)を求める。そして、写真投影図で観察される任意の50個の粒子において、短径/長径比が0.80未満および0.80以下である粒子の個数割合(%)を求める。
本発明のセリア系微粒子では、短径/長径比が0.80未満(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合が45%以上であることが好ましく、51%以上であることがより好ましい。この範囲の本発明のセリア系微粒子は、研磨材として使用した際に、研磨速度が高くなり好ましい。
本発明の分散液中に含まれ得る0.98μm以上の粗大粒子数は、3000百万個/cc以下であることが好ましい。粗大粒子数は、3000百万個/cc以下が好ましく、2000百万個/cc以下がより好ましい。0.98μm以上の粗大粒子は研磨傷の原因となり、さらに研磨基板の表面粗さを悪化させる原因となり得る。通常研磨速度が高い場合、研磨速度が高い反面、研磨傷が多発し基板の表面粗さが悪化する傾向にある。しかし、本発明のセリア系微粒子が粒子連結型である場合、高い研磨速度が得られ、その一方で0.98μm以上の粗大粒子数が3000百万個/cc以下であると研磨傷が少なく、表面粗さを低く抑えることができる。
なお、本発明の分散液中に含まれ得る粗大粒子数の測定法は、以下の通りである。
試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、5mlを採取し、これを従来公知の粗大粒子数測定装置に注入する。そして、0.98μm以上の粗大粒子の個数を求める。この測定を3回行い、単純平均値を求め、その値を1000倍して、0.98μm以上の粗大粒子数の値とする。
本発明のセリア系微粒子は、比表面積が3〜100m2/gであることが好ましく、6〜80m2/gであることがより好ましい。
ここで、比表面積(BET比表面積)の測定方法について説明する。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
本発明のセリア系微粒子において、前記特定不純物群1の各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。
また、本発明のセリア系微粒子における前記特定不純物群2の各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。本発明のセリア系微粒子における特定不純物群1及び前記特定不純物群2それぞれの元素の含有率を低減させる方法は、前述の通りである。
なお、本発明のセリア系微粒子における前記特定不純物群1および前記特定不純物群2の各々の元素の含有率は、前述の原料セリア微粒子に含まれる前記特定不純物群1および前記特定不純物群2を測定する場合と同じ方法によって測定することができる。
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明のセリア系微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
本発明の分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の分散液は、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
また、本発明の分散液を備える分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
本発明の分散液は、アニオンコロイド滴定を行った場合に、下記式(1)で表される流動電位変化量(ΔPCD)と、流動電位の微分値が最大になるときのアニオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が2〜500となる流動電位曲線が得られるものであることが好ましい。
ΔPCD/V=(I−C)/V・・・式(1)
C:前記流動電位の微分値が最大になるときの流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記流動電位の微分値が最大になるときの前記アニオンコロイド滴定液の添加量(ml)
ここで、アニオンコロイド滴定は、固形分濃度を1質量%に調整した本発明の分散液80gにアニオンコロイド滴定液を添加することで行う。アニオンコロイド滴定液として、0.001Nポリビニル硫酸カリウム溶液を用いる。
このアニオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線とは、後述する実施例において示す図5のように、アニオン滴定液の添加量(ml)をX軸、本発明の分散液の流動電位(mV)をY軸に取ったグラフである。
そして、このグラフの流動電位曲線を滴定量(X)で微分し、得られた微分値を新たにY軸、滴定量をX軸としたグラフを得る。このグラフは、例えば後述する実施例において示す図6のようなグラフである。このグラフにおける微分値(Y軸の流動電位の微分値)が最大となる点における流動電位をC(mV)とし、その点におけるアニオンコロイド滴定液の添加量(X軸)をV(ml)とする。
流動電位曲線の開始点とは、滴定前の本発明の分散液における流動電位である。具体的にはアニオンコロイド滴定液の添加量が0である点を開始点とする。この開始点における流動電位をI(mV)とする。
上記のΔPCD/Vの値が2〜500であると、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨剤の研磨速度がより向上する。このΔPCD/Vは、本発明のセリア系微粒子表面における易溶解性のセリアを含む層によるセリア微粒子の被覆具合及び/又はセリア系微粒子の表面におけるセリア微粒子の露出具合を反映していると考えられる。ΔPCD/Vの値が上記範囲内であると研磨速度が高く、さらにセリア系微粒子の分散安定性が向上するため安定した研磨が行われると本発明者は推定している。
逆にΔPCD/Vの値が2よりも小さい場合は、セリア系微粒子表面が易溶解性のセリアを含む層で全面が厚く覆われているため、研磨時に易溶解性のセリアを含む層が剥離し難くなり、セリア微粒子が十分に露出しないため、研磨速度が低くなる。一方、500よりも大きい場合は易溶解性のセリアを含む層の被覆が十分でないため、基板との凝着による摩擦力向上効果低くなるため研磨速度が向上し難い。ΔPCD/Vは、5〜400であることがより好ましく、10〜300であることがさらに好ましく、10〜120の範囲が最も好ましい。
本発明の分散液は、そのpH値を3〜8の範囲とした場合に、アニオンコロイド滴定を始める前、すなわち、滴定量がゼロである場合の流動電位がプラスの電位となるものであることが好ましい。これは、この流動電位がプラスの電位を維持する場合、マイナスの表面電位を示す研磨基材と砥粒(セリア系微粒子)が引き合うため研磨速度が向上するからである。さらにゼータ電位の測定においてもpH値が3〜8の範囲とした場合に、プラスの電位となることが好ましい。
本発明において、原料セリア微粒子は結晶性であれば製法は限定されるものではない。
本発明の製造方法における原料セリア微粒子は、例えば焼成型セリア(液相で合成したセリアやコロイダルセリアを焼成したものを含む)や、液相で合成したセリア(コロイダルセリアを含む)などが挙げられる。具体的には、本発明の製造方法[α]および本発明の製造方法[β]における工程1、2a、2bでは焼成型セリアを原料セリア微粒子として用いた製造プロセスである。また、本発明の製造方法[X]における工程A、Bはコロイダルセリアを原料セリア微粒子として用いた製造プロセスである。
また、易溶解性のセリアは、結晶性セリアを3〜300nmの範囲に結晶成長させた後に、形成させることができるが、具体的には、解砕工程の前や解砕工程の後に形成させることができる。液相で合成したセリアに易溶解性のセリアを形成させる製造方法は本発明の製造方法[X]であり、焼成型セリアに易溶解性のセリアを形成させる製造方法は本発明の製造方法[α]および本発明の製造方法[β]である。
以下に製造の詳細を説明する。
<本発明の製造方法[α]、[β]>
本発明の製造方法[α]および本発明の製造方法[β]について説明する。本発明の製造方法[α]、[β]は焼成型セリアを原料セリア微粒子として用いるものである。これらは全て工程1を備え、次の工程として工程2aまたは工程2bを備える。
以下に詳細に説明する。
<工程1>
工程1では、初めにセリウム化合物を用意する。
本発明の製造方法により、半導体デバイスなどの研磨に適用する本発明の分散液を調製しようとする場合は、原料としてのセリウム化合物として、Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が低いセリウムの金属塩が好ましい。具体的には、dry換算のNa、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下で、さらにU、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下であることが望ましい。セリウムの金属塩の純度を向上させるために、セリウムの金属塩を溶解させて再結晶化させたり、キレートイオン交換などの処理を行うことが好ましい。
セリウムの金属塩の種類は限定されるものではないが、セリウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属アルコキシドなどを用いることができる。具体的には、硝酸第一セリウム、炭酸セリウム、硫酸第一セリウム、塩化第一セリウムなどを挙げることができる。
これらの中でも、炭酸セリウムが好ましい。硝酸塩や硫酸塩あるいは塩酸塩などを工程1に適用した場合、SOXやNOXあるいは腐食性のガスなどの有毒性、有害性の高いガスが発生するのに対して、炭酸塩の場合は有害性の低いCO2しか発生しないからである。
セリウムの金属塩はあらかじめ篩などにより粗大な凝集塊を除去し、さらに湿式または乾式分級を行うなどしてセリウムの金属塩の粒子径分布を均一にすることが望ましい。セリウム金属塩の粒子径分布が不均一であると、焼成時に粗大なあるいは極めて小さなセリウム結晶が生じるからである。粗大なセリウム結晶は、解砕あるいは粉砕が困難となり、解砕あるいは粉砕しきれずに残存した場合は、研磨時にスクラッチの原因となるからである。また極めて小さなセリウム結晶は、研磨基板上に残留しやすく、砥粒残りが生じやすいからである。
工程1では、このようなセリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る。
セリウムの金属塩等のセリウム化合物を焼成する方法は特に限定されないが、ロータリーキルン、バッチ炉、流動焼成炉、ローラーハースキルンなどが挙げられるが、ロータリーキルンは、焼成ムラなく均一に焼成できること、設備の掃除性から、ロータリーキルンで焼成することが望ましい。
また焼成時の温度は300〜1200℃であるが、400〜950℃であることが好ましく、500〜900℃であることがより好ましい。このような温度範囲において焼成すると、セリアの結晶化が十分に進行するからである。1200℃超で焼成した場合、セリア結晶が異常成長したり、粒子どうしが融着し粗大な凝集塊が生じ、スクラッチが多発するからである。また300℃未満で焼成した場合は、セリアの結晶化が十分に進行しないため、研磨速度が著しく低くなる。このような温度範囲で30分〜10時間焼成することが望ましく、好ましくは30分〜5時間、さらに好ましくは30分〜3時間温度を保持することが望ましい。
焼成時の昇温速度は、10〜300℃/分とすることが好ましく、30〜200℃/分とすることがより好ましい。
<工程2a、工程2b>
工程2a及び工程2bでは、何れの工程でも、工程1で得た焼成体について、解砕もしくは粉砕の処理と、セリアを含む添加材の添加とそれに続く加熱熟成の処理を行って、セリア系微粒子分散液を得る。
ここで焼成体の解砕もしくは粉砕は、湿式または乾式にて行う。
なお、本発明において「解砕」とは、焼成体が単結晶の凝集体である場合に凝集構造を解きほぐして単結晶体に分散する操作や、焼成体が多結晶である場合に、凝集構造が解きほぐされて粒界を維持したまま元の多結晶体よりも小さな多結晶体に解かれたり、粒界が破断されて一部が単結晶に解する操作をいう。また、「粉砕」とは、焼成体に含まれる単結晶を更に小さな単結晶にする操作のことをいう。
なお、工程2a及び工程2bでは、何れの工程でも、焼成体について解砕もしくは粉砕またはそれら両方の操作を施す。
湿式で解砕または粉砕する装置として、従来公知の装置を使用することができる。例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料としたビーズを挙げることができる。
湿式で解砕処理または粉砕処理する場合の溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。
また、湿式で解砕する際の固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
なお、湿式による解砕を行う場合は、溶媒のpHを5〜11に維持しながら湿式による解砕を行うことが好ましい。pHをこの範囲に維持すると、セリアが単分散を保ちながら解砕が進むからである。pH値が11越えた条件で解砕しても解砕効率は向上し難く、解砕中に再凝集が進むからである。またpHが5未満では、セリアが溶解する可能性があるからである。解砕中のpHが5〜11が好ましく、6〜10.5がより好ましい。なお、解砕時にメジアから混入した不純分は必要に応じて遠心分離あるいはイオン交換、限外膜による洗浄などで除去することもできる。
焼成して得られた焼成体を乾式にて解砕あるいは粉砕する装置としては従来公知の装置を使用することができるが、例えば、アトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミルジェットミル等を挙げることができる。
また、焼成して得られた焼成体を乾式で解砕処理した後に、溶媒を加えて、pH5〜11の範囲にて、湿式で解砕処理してもよい。
上記のように、工程2a及び工程2bでは、何れの工程でも、は、前記焼成体の解砕もしくは粉砕の処理を行うが、工程2aでは、焼成体の解砕もしくは粉砕の前にセリアを含む添加材を添加し、加熱熟成を行う。他方、工程2bでは、同じく焼成体の解砕もしくは粉砕の後にセリアを含む添加材を添加し、加熱熟成を行う。
まず、工程2aでは、前記焼成体にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、その後、解砕もしくは粉砕を行う。そして、得られたものをセリア系微粒子分散液とする。
また、工程2bでは、前記焼成体を解砕もしくは粉砕し、得られた原料セリア微粒子分散液にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成する。そして、得られたものをセリア系微粒子分散液とする。
<セリアを含む添加材>
工程2aおよび工程2bにおいて用いるセリアを含む添加材について説明する。
セリアを含む添加材はセリアをdryベースで50質量%以上含むものであり、その他のものとして、例えばZr、La、Alなどを含んでも構わない。
セリアを含む添加材の添加量は、焼成体の質量(dryベース)に対する比(セリアを含む添加剤の質量/焼成体の質量)で50ppm〜43%であることが好ましく、100ppm〜25%であることがより好ましく、500ppm〜11%であることがさらに好ましい。
添加量がこの範囲よりも少ない場合、易溶解性のセリアを含む層が十分に形成されない可能性がある。またこの範囲よりも多い場合は、易溶解性のセリアを含む層が過剰に厚膜化したり、本発明のセリア系微粒子に沈着しない成分が生じる場合がある。
前述のように、工程2aでは、前記焼成体にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、その後、解砕もしくは粉砕を行うことによりセリアを含む添加剤の原料セリア微粒子の表面への沈着を促進させる。
また、工程2bでは、前記焼成体解砕もしくは粉砕を行い、その後、にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、セリアを含む添加剤の原料セリア微粒子の表面への沈着を促進させる。
何れの工程においても加熱熟成の温度は10〜98℃であり、20〜80℃が好ましい。この範囲よりも低い場合は、粒子の表面に沈着しない場合がある。またこの範囲よりも高い場合は本発明のセリア系微粒子が凝集する場合がある。このような工程を経ることで原料セリア微粒子の表面に易溶解性のセリアを含む層が、相対的に均一に形成される。
なお、前記工程2bにおける、10〜98℃での加熱熟成に先立ち、セリアを含む添加剤を添加された原料セリア微粒子分散液のpHを、好ましくはpH4〜11の範囲、より好ましくは5〜10の範囲にすることが推奨される。pHがこの範囲にあると、セリアを含む添加剤が原料セリア微粒子の表面に沈着し易くなる。係るpHが4未満の場合、セリアが溶解するので、沈着し難くなる。係るpHが11以上の場合は、セリア微粒子が凝集し易くなり、望ましくない。
なお、このように処理したセリアを含む添加材は、全量が原料セリア微粒子の表面に沈着していても良いが、一部は溶媒中に存在していても構わない。研磨時にpHを5〜8に調整した際に、本発明のセリア系微粒子表面に沈着するからである。また一部の沈着しない成分が溶媒中に残存したままであったとしても、セリアを含む添加材が、研磨中に発生する研磨屑や、セリア系微粒子が崩壊するなどして生じた原料セリア微粒子を被覆し、スクラッチを防止するからである。
<工程3>
工程2aもしくは工程2bにおいて得られたセリア系微粒子分散液について、所望により、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することができる。
工程2aもしくは工程2bにおいて得られたセリア系微粒子分散液について、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去する工程を、工程3とする。
相対遠心加速度が300G以上とすると、セリア系微粒子分散液中に粗大粒子が残存し難いため、セリア系微粒子分散液を用いた研磨材などの研磨用途に使用した際に、スクラッチが発生し難くなる。
ここで相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
なお、工程3に続いて、沈降成分を除去した後、更にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成して、セリア系微粒子分散液を得ても構わない。
<本発明の製造方法[X]>
本発明の製造方法[X]について説明する。本発明の製造方法[X]は液相で合成したセリアを原料セリア微粒子として用いるものである。本発明の製造方法[X]は工程Aを備え、次の工程として工程Bを備える。
以下に詳細に説明する。
<工程A>
工程Aでは、前述の工程1において説明したセリウム化合物を溶媒に添加して溶解し、セリウム溶液を得る。この際、セリウム化合物を溶解させる目的で、酸を添加しても構わない。酸の種類は特に制限はないが、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸が好ましい。
次にアルカリ水溶液、あるいはイオン交換水を撹拌し、温度を3〜98℃、pH範囲を5.0〜10.0に維持しながら、ここへセリウム溶液を連続的又は断続的に添加し、セリウム溶液を中和することで、結晶性のセリアを生成する。
ここで、前記アルカリ水溶液、あるいは前記イオン交換水を撹拌し、温度を3〜98℃、pH範囲を5.0〜9.0、酸化還元電位を10〜500mVに維持しながら、ここへセリウム溶液を連続的又は断続的に添加することが好ましい。
セリウム溶液を添加した後は、反応を完結させることを目的として熟成することが望ましい。
このような工程により、コロイダルセリアを得る。
セリウム溶液を溶媒へ添加する際の固形分濃度は、CeO2換算基準で1〜40質量%であることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると、製造工程でのセリアの濃度が低くなり生産性が悪くなり得る。
セリウム溶液をアルカリで中和することで、平均結晶子径が3〜300nmの結晶性のセリアが得られる。結晶性のセリアは、単結晶であっても単結晶の凝集体であっても多結晶であっても、これらの混合体であっても良い。また中和反応中は、セリウム化合物を溶解する際に使用した酸やセリウム化合物から持ち込まれる酸がアルカリと反応して塩が生成する。生成する塩によってイオン強度が高くなるため、単結晶の凝集体となりやすい。
アルカリ水溶液またはイオン交換水を撹拌しながらセリウム溶液を添加する際の反応溶液の温度は3〜98℃であり、10〜90℃であることが好ましい。この温度が低すぎるとセリウム溶解液とアルカリの反応性が低下し、結果としてセリアの結晶成長が妨げられ、水酸化セリウムなどが生じる可能性がある。仮に、結晶成長したとしても結晶子径が5nm未満の小さなセリア結晶が生じる可能性がある。逆に、この温度が高すぎるとセリアが異常成長したり、単結晶の凝集が進み、粗大な凝集塊が生じ、解砕あるいは粉砕しにくくなる傾向がある。
また、セリウム溶解液を添加する際の反応溶液の時間は0.5〜24時間であることが好ましく、0.5〜18時間であることがより好ましい。この時間が短すぎると結晶性の酸化セリウムが凝集して、解砕されにくくなる傾向がある点で好ましくない。逆に、この時間が長すぎても結晶性の酸化セリウムの形成はそれ以上反応が進まず不経済となる。なお、前記セリウム金属塩の添加後に、所望により3〜98℃にて熟成しても構わない。熟成により、セリアの結晶化の反応を促進させる効果があるからである。
また、セリウム溶液を添加する際の反応溶液のpH範囲5.0〜10とするが、6〜10とすることが好ましい。この際、アルカリ等を添加しpH調整を行うことが好ましい。このようなアルカリの例としては、公知のアルカリを使用することができる。具体的には、アンモニア水溶液、水酸化アルカリ、アルカリ土類金属、アミン類の水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、セリウム溶液を添加する反応溶液の酸化還元電位は10〜500mVに調整することが好ましい。酸化還元電位は100〜300mVとすることよりが好ましい。酸化還元電位が負となった場合、セリウム化合物が結晶性セリアとならずに板状・棒状などの複合セリウム化合物が生成する場合がある。酸化還元電位を上記の範囲内に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアー及びオゾンを吹き込む方法が挙げられる。
セリウム溶液を添加し、熟成させた反応溶液中に残存する塩を除去する目的で、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂、キレート型イオン交換樹脂によるイオン交換、あるいは限外ろ過洗浄、ろ過洗浄など、必要に応じて脱イオン処理を行うことができる。脱イオン処理によりセリア系微粒子を高純度化でき、さらに研磨材として使用する際に、設備腐食が防げるため脱イオン処理をすることが望ましい。なお、脱イオン処理はこれらに限定されるものではない。
工程Aで得られたコロイダルセリアを、次の工程に供する前に、純水やイオン交換水などを用いて、さらに希釈あるいは濃縮してもよい。
なお、コロイダルセリアにおける固形分濃度は1〜30質量%であることが好ましい。
<工程B>
工程Bでは、前記コロイダルセリアにセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る。
ここで、前記コロイダルセリアにセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成する操作については、前述の工程2a、工程2bの場合と同様であってよい。
工程Bでは、前記コロイダルセリアを解砕もしくは粉砕した後に前記添加剤を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得ることが好ましい。
工程Bでは、前記コロイダルセリアに前記添加剤を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、その後、解砕もしくは粉砕して前記セリア系微粒子分散液を得ることが好ましい。
ここで解砕もしくは粉砕する方法は、前述の工程2aまたは工程2bにおいて前記焼成体を解砕もしくは粉砕する方法と同様であってよい。
上記のような工程Bによって得られたセリア系微粒子分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心処理を行い、続いて沈降成分を除去することが好ましい。このような処理は、前述の工程3と同様であってよい。
なお、前述の工程Aによって、得たコロイダルセリアを好ましくは解砕もしくは粉砕した後、相対遠心加速度300G以上にて遠心処理を行って沈降成分を除去し、その後、セリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成して、セリア系微粒子分散液を得ることもできる。
なお、工程Bのようにセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成する操作を行い、その後、遠心処理して沈降成分を除去した後に、さらに、セリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成する操作を行ってセリア系微粒子分散液を得てもよい。このようなケースは、本発明の製造方法[X]に該当する。
本発明では、上記の製造方法によって得られるセリア系微粒子分散液を、更に乾燥させて、セリア系微粒子を得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。
このような本発明の製造方法によって、本発明の分散液を得ることができる。
<研磨用砥粒分散液>
本発明の分散液を含む液体は、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。また研磨用砥粒分散液をそのまま研磨スラリーとして好適に用いることもできる。
本発明の研磨用砥粒分散液は半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のキズ(スクラッチ)が少ない、基板への砥粒の残留が少ないなどの効果に優れている。
本発明の研磨用砥粒分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。またpH調整材として酸やアルカリ、緩衝溶液を添加しても良い。さらに、本発明の研磨用砥粒分散液に、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
<研磨促進剤>
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩及びこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
<界面活性剤及び/又は親水性化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩及びカリウム塩が好ましい。
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステル及びアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は、何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
本発明に係る研磨用砥粒分散液が界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
界面活性剤又は親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
<複素環化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る研磨用砥粒分散液に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
<pH調整剤>
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
研磨用砥粒分散液をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
研磨用砥粒分散液をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類の様な、塩酸、硝酸などの鉱酸が使用される。
<pH緩衝剤>
研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸塩などを使用することができる。
また、本発明の研磨用砥粒分散液の分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の研磨用砥粒分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると研磨速度が低下する可能性がある。逆に固形分濃度が高すぎても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ないので、不経済となり得る。
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
<実験1>
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第1表〜第2表に記す。
[成分の分析]
[CeO2含有量の測定]
実施例及び比較例におけるセリア系微粒子におけるCeO2含有量の測定方法について説明する。
初めに、セリア系微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い、固形分の質量を求めた後、後述するAg〜Th等の場合と同様に、ICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いて標準添加法によってCe以外の成分の含有率を測定して、それぞれ酸化物質量%、例えばSiO2、La23、ZrO2、Al23質量%等を算出した。そして、酸化物以外の固形分の成分はCeO2であるとして、CeO2の含有量を求めた。
なお、ここでセリア系微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
以下に説明する特定不純物群1および特定不純物群2の含有率の測定では、このようにして求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
[易溶解性のセリアの割合(D)の測定]
各実施例及び比較例で得られたセリア系微粒子にイオン交換水を添加して3.3質量%に調整した溶液を81.8g(dry2.7g)準備し、撹拌しながら1質量%の塩酸水溶液を用いてpHを5.0に調整し、さらにイオン交換水を添加して合計90g(dry2.7g)にして、pH5.0で固形分濃度3.0質量%に調整した。
15分撹拌を継続した後、限外膜付きの遠心管sartorius社製の型番VIVASPIN20(分画分子量5000)に溶液20gを投入し、遠心分離装置(KOKUSAN社製H−38F)にて1820Gで30分処理した。処理後に限外膜を透過した分離液を回収し、分離液中のCeO2濃度を測定した。溶解セリア濃度(セリア系微粒子dry当りの溶解割合)の算出は以下の計算式で求めた。
溶解セリア濃度(%)=CeO2濃度(ppm)÷1,000,000×87.3g÷2.7g×100
このようにして算出された溶解性セリア濃度は、セリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリアの質量D1の割合Dと同一である。
[セリア系微粒子の成分分析]
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
初めに、セリア系微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z−2310)で測定する。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
各陰イオンの含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
<Cl>
セリア系微粒子分散液からなる試料20g(固形分20質量%に調整したもの)にアセトンを加え100mlに調整し、この溶液に、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT−610)で分析を行う。
別途ブランク測定として、アセトン100mlに酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で滴定を行った場合の滴定量を求めておき、試料を用いた場合の滴定量から差し引き、試料の滴定量とした。
そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
<NO3、SO4、F>
セリア系微粒子分散液からなる試料5g(固形分20質量%に調整したもの)を水で希釈して100mlにおさめ、遠心分離機(日立製 HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、沈降成分を除去して得た液をイオンクロマトグラフ(DIONEX製 ICS−1100)にて分析した。
そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、dry量に対する各成分の含有率を求めた。
[X線回折法、平均結晶子径の測定]
実施例及び比較例で得られたセリア系微粒子分散液を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述の方法によって、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半価全幅を測定し、前述のScherrerの式により、平均結晶子径を求めた。
<平均粒子径>
実施例及び比較例で得られたセリア系微粒子分散液について、これに含まれる粒子の平均粒子径は、前述の画像解析法によって測定を行った。
<粗大粒子数>
研磨スラリーまたは研磨用砥粒分散液に含まれるセリア系複微粒子の粗大粒子数は、Particle sizing system Inc.社製Accusizer 780APSを用いて測定を行った。また測定試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、測定装置に5mLを注入して、以下の条件にて測定を行い、3回測定した後、得られた測定データの0.98μm以上の粗大粒子数の値の平均値を算出した値をセリア系微粒子の粗大粒子数とした。なお測定条件は以下の通り。
<System Setup>
・Stir Speed Control / Low Speed Factor 1500 / High Speed Factor 2500
<System Menu>
・Data Collection Time 60 Sec.
・Syringe Volume 2.5ml
・Sample Line Number :Sum Mode
・Initial 2nd-Stage Dilution Factor 350
・Vessel Fast Flush Time 35 Sec.
・System Flush Time / Before Measurement 60 Sec. / After Measurement 60 Sec.
・Sample Equilibration Time 30 Sec./ Sample Flow Time 30 Sec.
[研磨試験方法]
<SiO2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。また、一部の実施例又は比較例については研磨用砥粒分散液に添加材(硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等)を加え、研磨スラリーを調整した。ここで研磨用砥粒分散液および研磨スラリーのいずれの場合も、固形分濃度は0.6質量%とし、また、硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。
次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液または研磨スラリーを50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さRa)を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、第2表には表面粗さを記載した。
なお研磨傷の観察は、光学顕微鏡を用いて絶縁膜表面を観察することで行った。
<アルミハードディスクの研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。また、一部の実施例又は比較例については研磨用砥粒分散液に添加材(硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等)を加え、研磨スラリーを調整した。ここで研磨用砥粒分散液および研磨スラリーのいずれの場合も、固形分濃度は9質量%とし、また、硝酸を添加してpHは2.0に調整した。
アルミハードディスク用基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板負荷0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用砥粒分散液または研磨スラリーを20ml/分の速度で5分間供給して研磨を行い、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Maicro―Max)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cm2に相当する研磨処理された基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計し、次の基準に従って評価した。
線状痕の個数 評価
50個未満 「非常に少ない」
50個から80個未満 「少ない」
80個以上 「多い」
少なくとも80個以上で総数をカウントできないほど多い 「※」
以下に実施例を記す。なお、単に「固形分濃度」とある場合は、化学種を問わず溶媒に分散した微粒子の濃度を意味する。
[準備工程1]
炭酸セリウムを710℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。次いで、粉状の焼成体100gをイオン交換水300gと共に1Lの柄付ビーカーへ入れ、撹拌しながら超音波浴槽中で10分間超音波を照射した。
次にφ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)にて湿式解砕(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)を30分行った。
そして解砕後に44メッシュの金網を通して、イオン交換水で押水をしながらビーズを分離し、さらに遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度1700Gで102秒間遠心分離処理し、沈降成分を除去し、除去後の溶液をロータリーエバポレーターで1.6質量%に濃縮して原料セリア微粒子分散液を得た。
[準備工程2]
<高純度珪酸液の調製>
珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.06質量%、Na2O濃度7.97質量%)に純水を加えて、珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度5質量%)を得た。
得られた珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に、空間速度3.0h-1で通液させ、酸性珪酸液18kg(シリカ濃度4.6質量%、pH2.7)を得た。次いで、得られた酸性珪酸液18kgを6Lのキレート型イオン交換樹脂(三菱化学社製CR−11)に、空間速度3.0h-1で通液させ、高純度珪酸液18kg(シリカ濃度4.5質量%、pH2.7)を得た。更にイオン交換水を添加して0.2質量%の高純度珪酸液を得た。
[準備工程3]
硝酸第一セリウム六水和物(チカモチ純薬社製)にイオン交換水を添加してCeO2濃度0.2質量%の溶液(B液)を得た。
<実施例1>
29質量%濃度のアンモニア水(関東化学社製鹿一級)をイオン交換水で希釈し、1質量%のアンモニア水を準備した。
次に、準備工程1で得られた固形分濃度1.6質量%の原料セリア微粒子分散液にイオン交換水を加え、0.5質量%の希釈液(以下、A液ともいう)を得た。
A液10,000g(dry50g)を室温で撹拌しながら、準備工程3と同様にして得られたCeO2濃度0.2質量%のB液100g(dry0.2g)を添加し、添加終了後も10分間撹拌を継続した。その後、1質量%のアンモニア水を添加して、pHを9.1に調整し、50℃に昇温して撹拌を続けながら24時間温度を保った。その後室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで3.0質量%に濃縮した。
次いで、得られた微粒子分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度675Gで1分間遠心分離処理し、沈降成分を除去し、セリア系微粒子分散液を得た。
実施例1において得られたセリア系微粒子のSEM像およびTEM像を図1(a)および図1(b)に示す。図1のTEM像から、セリア系微粒子の最外層に薄く易溶解性のセリアを含む層が形成されている様子が観察された。
また、セリア系微粒子のX線回折パターンを図2に示す。
<実施例2>
準備工程3と同様にして得たCeO2濃度0.2質量%の溶液70g(B液)に、準備工程2によって得られた0.2質量%の高純度珪酸液30gを添加することで、CeO2とSiO2の混合液(C液)100gを得た。
そしてA液10,000g(dry50g)を室温で撹拌しながら0.2質量%のC液100g(dry0.2g)を添加して、添加終了後も10分間撹拌を継続した。その後1質量%のアンモニア水を添加して、pHを9.1に調整し、50℃に昇温して撹拌を続けながら24時間温度を保った。その後室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで3.0質量%に濃縮してセリア系複微粒子分散液を得た。
次いで、得られた微粒子分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度675Gで1分間遠心分離処理し、沈降成分を除去し、セリア系微粒子分散液を得た。
<実施例3>
実施例1ではA液10,000g(dry50g)に0.2質量%のB液100g(dry0.2g)を添加したが、実施例3ではA液10,000gに0.2質量%のB液25g(dry0.05g)を添加した。それ以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例1>
準備工程1で得られた原料セリア微粒子分散液について、実施例と同様に評価を行った。
この原料セリア微粒子分散液に含まれる微粒子のSEM像およびTEM像を図3(a)および図3(b)に示す。図3(b)のTEM像において、原料セリア微粒子の最外層には実施例1で観察されたような易溶解性のセリアを含む層は観察されなかった。
<比較例2>
準備工程1で得られた原料セリア微粒子の分散液に、ポリアクリル酸重合体(東亜合成社製アロンSD-10)及びイオン交換水を添加して、固形分濃度1.0質量%でポリアクリル酸濃度800ppmとなるように調整し、添加後に超音波で分散させた。得られた研磨スラリーを用いて実施例1と同様に行った。
<比較例3>
準備工程1で得られた原料セリア微粒子の分散液156.25gを撹拌しながらイオン交換水837.58gを添加した。さらに18nmのシリカゾル(日揮触媒化成社製カタロイドSI-40 SiO2濃度40.5質量%)を6.17gをゆっくり添加し、添加終了後も30分間撹拌を継続することで、固形分濃度0.5質量%のセリア系微粒子分散液を得た。
このセリア系微粒子分散液に含まれる微粒子のSEM像を図4に示す。
<実験2>
実施例1、実施例3及び比較例1で得られた各セリア系微粒子分散液について、流動電位の測定及びアニオンコロイド滴定を行った。滴定装置として、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した自動滴定装置AT−510(京都電子工業製)を用いた。
まず、固形分濃度を0.005質量%に調整したセリア系微粒子分散液へ0.05%の硝酸水溶液を添加してpH6に調整した。次に、その液の固形分として0.01gに相当する量を200mlのトールビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アニオンコロイド滴定液(0.001Nポリビニル硫酸カリウム溶液)を1回の注入量0.005ml、注入速度を0.005mL/秒とし、注入後の時間(間欠時間)は5秒として滴定を行った。なおピストンスピードは目盛り7でマグネッチスターラーの回転目盛り3で行った。そして、アニオンコロイド滴定液の添加量(ml)をX軸、流動電位のアニオンコロイド添加量の微分値をY軸(mV/ml)にプロットし、微分値の最大値における流動電位C(mV)およびアニオンコロイド滴定液の添加量V(ml)を求め、ΔPCD/V=(I−C)/Vを算出した。結果を第3表に示す。
また、ここで得られた流動電位曲線を図5に、その微分曲線を図6に示す。
本発明の分散液に含まれるセリア系微粒子は、粗大粒子を含まないため低スクラッチで、かつ高研磨速度である。よって、本発明の分散液を含む研磨用砥粒分散液は、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。具体的には、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用として好ましく用いることができる。

Claims (10)

  1. 下記[1]から[4]の特徴を備える平均粒子径5〜500nmのセリア系微粒子を含む、セリア系微粒子分散液。
    [1]前記セリア系微粒子は、原料セリア微粒子と、前記原料セリア微粒子の表面上の易溶解性のセリアを含む層とを有し、前記原料セリア微粒子は結晶性のセリアを主成分とすること。
    [2]前記セリア系微粒子の質量D2に対する易溶解性のセリアを含む層に含まれる易溶解性セリアの質量D1の割合D(D=D1/D2×100)が0.005〜10%であること。
    [3]前記セリア系微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
    [4]前記セリア系微粒子は、X線回折に供して測定される前記結晶性セリアの平均結晶子径が3〜300nmであること。
  2. pH値を3〜8とした場合に流動電位がプラスとなる、請求項1に記載のセリア系微粒子分散液。
  3. アニオンコロイド滴定を行った場合に、下記式(1)で表される流動電位変化量(ΔPCD)と、流動電位の微分値が最大になるときのアニオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が2〜500となる流動電位曲線が得られる、請求項1または2に記載のセリア系微粒子分散液。
    ΔPCD/V=(I−C)/V・・・式(1)
    C:前記流動電位の微分値が最大になるときの流動電位(mV)
    I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
    V:前記流動電位の微分値が最大になるときの前記アニオンコロイド滴定液の添加量(ml)
  4. 0.98μm以上の粗大粒子となっている前記セリア系微粒子の数が、3000百万個/cc以下である請求項1〜3のいずれかに記載のセリア系微粒子分散液。
  5. 前記セリア系微粒子に含まれる不純物の含有割合が、次の(a)及び(b)のとおりであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセリア系微粒子分散液。
    (a)Na、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下。
    (b)U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のセリア系微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
  7. シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする、請求項6に記載の研磨用砥粒分散液。
  8. 下記の工程1および工程2aを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法。
    工程1:セリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る工程。
    工程2a:前記焼成体にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成し、その後、解砕もしくは粉砕することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
  9. 下記の工程1および工程2bを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法。
    工程1:セリウム化合物を300〜1200℃で焼成して焼成体を得る工程。
    工程2b:前記焼成体を解砕もしくは粉砕し、得られた原料セリア微粒子分散液にセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
  10. 下記の工程Aおよび工程Bを含むことを特徴とするセリア系微粒子分散液の製造方法。
    工程A:セリウム化合物を溶解したセリウム溶液を、温度を3〜98℃、pHを5.0〜10.0に維持した溶媒中に連続的または断続的に添加し、コロイダルセリアを得る工程。
    工程B:前記コロイダルセリアにセリアを含む添加材を添加し、10〜98℃で加熱熟成することによりセリア系微粒子分散液を得る工程。
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