JP2021027274A - セリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 - Google Patents

セリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】シリカ膜、Siウェハのような難加工材であっても、高速で研磨することができるセリア系複合微粒子分散液の提供。【解決手段】下記の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液。母粒子とその表面上のセリウム含有シリカ層と、セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、母粒子は非晶質シリカを主成分とし、子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。短径/長径比が0.5〜1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5〜0.95の範囲であること。シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。X線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出されること。X線回折に供して測定される結晶性セリアの平均結晶子径が10〜30nmであること。子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にあること。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体デバイス製造等に使用される研磨剤として好適なセリア系複合微粒子分散液に関し、特に基板上に形成された被研磨膜を、化学機械的研磨(ケミカルメカニカルポリッシング:CMP)で平坦化するためのセリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液に関する。
半導体基板、配線基板などの半導体デバイスなどは、高密度化・微細化することで高性能化を実現している。この半導体の製造工程においては、いわゆるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)が適用されており、具体的にはシャロートレンチ素子分離、層間絶縁膜の平坦化、コンタクトプラグやCuダマシン配線の形成などに必須の技術となっている。
一般にCMP用研磨剤は、砥粒とケミカル成分とからなり、ケミカル成分は対象被膜を酸化や腐食などさせることにより研磨を促進させる役割を担う。一方で砥粒は機械的作用により研磨する役割を持ち、コロイダルシリカやヒュームドシリカ、セリア粒子が砥粒として使われる。特にセリア粒子は酸化ケイ素膜に対して特異的に高い研磨速度を示すことから、シャロートレンチ素子分離工程での研磨に適用されている。
シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低い事が望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
従来、このような部材の研磨方法として、比較的粗い1次研磨処理を行った後、精密な2次研磨処理を行うことにより、平滑な表面あるいはスクラッチなどの傷が少ない極めて高精度の表面を得る方法が行われている。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法等が提案されている。
例えば、特許文献1には、硝酸第一セリウムの水溶液と塩基とを、pHが5〜10となる量比で攪拌混合し、続いて70〜100℃に急速加熱し、その温度で熟成することを特徴とする酸化セリウム単結晶からなる酸化セリウム超微粒子(平均粒子径10〜80nm)の製造方法が記載されており、更にこの製造方法によれば、粒子径の均一性が高く、かつ粒子形状の均一性も高い酸化セリウム超微粒子を提供できると記載されている。
また、非特許文献1は、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製造方法と類似した製造工程を含むセリアコートシリカの製造方法を開示している。このセリアコートシリカの製造方法は、特許文献1に記載の製造方法に含まれるような焼成―分散の工程を有さないものである。
また、特許文献2には、非晶質のシリカ粒子Aの表面に、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む結晶質の酸化物層Bを有することを特徴とするシリカ系複合粒子が記載されている。また、好ましい態様として、非晶質のシリカ粒子Aの表面に、アルミニウム等の元素を含む非晶質の酸化物層であって、非晶質のシリカ層とは異なる非晶質の酸化物層Cを有し、さらに、その上にジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む結晶質の酸化物層Bを有することを特徴とするシリカ系複合粒子が記載されている。そして、このようなシリカ系複合粒子は、非晶質のシリカ粒子Aの表面に、結晶質の酸化物層Bを有するために、研磨速度を向上させることができ、かつ、シリカ粒子に前処理をすることにより、焼成時に粒子同士の焼結が抑制され研磨スラリー中での分散性を向上させることができ、さらに、酸化セリウムを含まない、あるいは酸化セリウムの使用量を大幅に低減することができるので、安価であって研磨性能の高い研磨材を提供することができると記載されている。また、シリカ系粒子Aと酸化物層Bの間にさらに非晶質の酸化物層Cを有するものは、粒子の焼結抑制効果と研磨速度を向上させる効果に特に優れると記載されている。
さらに、特許文献3には、非晶質シリカを主成分とする母粒子の表面上に結晶性セリアを主成分とする子粒子を有し、さらにその子粒子の表面にシリカ被膜を有している、下記[1]から[3]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのシリカ系複合微粒子を含む、シリカ系複合微粒子分散液が記載されている。[1]前記シリカ系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316であること。[2]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。[3]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの(111)面の結晶子径が10〜25nmであること。そして、このようなシリカ系複合微粒子によれば、シリカ膜、Siウェハや難加工材であっても高速で研磨することができ、同時に高面精度(低スクラッチ、被研磨基板の表面粗さ(Ra)が低いこと等)を達成でき、さらに不純物を含まないため、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができるシリカ系複合微粒子分散液を提供することができると記載されている。
特許第2,746,861号公報 特開2013−119131号公報 国際公開第2016/159167号パンフレット
Seung−Ho Lee, Zhenyu Lu, S.V.Babu and Egon Matijevic、"Chemical mechanical polishing of thermal oxide films using silica particles coated with ceria"、Journal of Materials Research、Volume 17、Issue 10、2002、pp2744−2749
しかしながら、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子について、本発明者が実際に製造して検討したところ、研磨速度が低く、さらに、研磨基材の表面に欠陥(面精度の悪化、スクラッチ増加、研磨基材表面への研磨材の残留)を生じやすいことが判明した。
これは、焼成工程を含むセリア粒子の製造方法(焼成によりセリア粒子の結晶化度が高まる)に比べて、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製法は、焼成工程を含まず、液相(硝酸第一セリウムを含む水溶液)から酸化セリウム粒子を結晶化させるだけなので、生成する酸化セリウム粒子の結晶化度が相対的に低く、また、焼成処理を経ないため酸化セリウムが母粒子と固着せず、酸化セリウムが研磨基材の表面に残留することが主要因であると、本発明者は推定している。
また、非特許文献1に記載のセリアコートシリカは焼成していないため、現実の研磨速度は低いと考えられ、また、シリカ粒子と固着一体化していないため、容易に脱落し、研磨速度の低下や、研摩の安定性を欠き、研磨基材の表面への粒子の残留も懸念される。
さらに、特許文献2に記載の酸化物層Cを有する態様のシリカ系複合粒子を用いて研磨すると、アルミニウム等の不純物が半導体デバイスの表面に残留し、半導体デバイスへ悪影響を及ぼすこともあることを、本発明者は見出した。
また、これら文献に記載されているセリア粒子は母粒子上に付着されたものであり、強く固着されていないので母粒子から脱落しやすい。
さらに、特許文献2の記載の真球状のシリカ母粒子上に結晶性セリア粒子を形成した砥粒を用いて研磨すると、セリア粒子の研摩時の機械的作用と同時に起こる化学的な反応によりシリカ膜の研磨速度は高いものの、高い圧力条件下では、セリア結晶が脱落や磨減、崩壊により、基板とセリアの接触面積が低下し、研磨速度が低くなる恐れがある。
また、特許文献3に記載のシリカ系複合微粒子分散液は、研磨用途において、優れた研磨性能(研磨速度、高面精度など)を発揮可能なものであるが、半導体装置の更なる高密度化・高集積化に伴い、半導体基板に対し、より優れた研磨性能を示す砥粒分散液が求められている。
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、シリカ膜、Siウェハや難加工材であっても高速で研磨することができ、さらに不純物を含まない場合、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができるセリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(6)である。
(1)下記[1]から[6]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5〜1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5〜0.95の範囲であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜30nmであること。
[6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にあること。
(2)前記セリア系複合微粒子の平均円形度が0.6以上である上記(1)記載のセリア系複合微粒子分散液。
(3)上記(1)又は(2)に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
(4)シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする上記(3)に記載の研磨用砥粒分散液。
(5)下記の工程1および工程2を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
工程1:下記1)〜2)の特徴を有するシリカ微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜8℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)平均粒子径が30〜200nmであること。
2)短径/長径比が0.3〜0.85の範囲にあること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
(6)前記工程2が、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することにより前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程である、上記(5)に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
本発明のセリア系複合微粒子分散液を、例えば、研磨用砥粒分散液として研磨用途に使用した場合、対象がシリカ膜、Siウェハなどを含む難加工材であっても、高速で研磨することができる。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法は、このような優れた性能を示すセリア系複合微粒子分散液を効率的に製造する方法を提供するものである。
また、本発明のセリア系複合微粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した場合、半導体デバイス表面の平坦化に有効であり、特にはシリカ絶縁膜が形成された基板の研磨に好適である。
本発明の複合微粒子の断面の模式図である。 実施例1のX線回折パターンである。
本発明について説明する。
本発明は、下記[1]から[6]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液である。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5〜1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5〜0.95の範囲であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜30nmであること。
[6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にあること。
上記[1]から[6]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を、以下では「本発明の複合微粒子」ともいう。
また、このようなセリア系複合微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
また、本発明は、下記の工程1および工程2を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法である。
工程1:下記1)〜2)の特徴を有する球状のシリカ微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜8℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)平均粒子径が30〜200nmであること。
2)短径/長径比が0.3〜0.85の範囲にあること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
以下において、単に「本発明」と記した場合、本発明の分散液、本発明の複合微粒子および本発明の製造方法のいずれをも意味するものとする。
<本発明の複合微粒子>
本発明の複合微粒子について説明する。本発明の複合微粒子は図1(a)に例示する構造を備えている。
図1(a)は、本発明の複合微粒子(実施例相当)の断面の模式図である。
母粒子1の表面に、非球状のセリア子粒子2aがその長軸方向を母粒子1の表面に略平行となるように存在させ、その周辺にセリウム含有シリカ層3が存在する。非球状のセリア子粒子2aの外表面側のセリウム含有シリカ層3が、基板との接触面4aとなる。
図1(b)は、比較例相当の複合微粒子の断面の模式図である。母粒子1の表面に、球状のセリア子粒子2bが存在し、その周辺にセリウム含有シリカ層3が存在する。球状のセリア子粒子2bの外表面側のセリウム含有シリカ層3が、基板との接触面4bとなる。
本発明の複合微粒子は、平均粒子径が50〜350nmであり、80〜300nmであることが好ましい。平均粒子径が50nmを下回ると1粒子の研磨力が著しく低下するため、研磨速度が低下する傾向にある。また、平均粒子径が350nmを越えると粒子個数が減り研磨速度が低下し、さらにサイズが大きすぎるためスクラッチが発生し易いからである。なお、本発明の複合微粒子の平均粒子径は画像解析法により測定されたものである。具体的には走査型透過電子顕微鏡により、本発明の複合微粒子分散液(固形分濃度 0.05質量%)を倍率30万倍(ないしは50万倍)で観察して得られる像(STEM像)において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、その粒子の粒子径とする。
このようにして50個の粒子について粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出して得た値を本発明の複合微粒子の平均粒子径とする。
なお、長径(DL)と短径(DS)の値が等しい場合は、その値を当該粒子の平均粒子径とした。走査型透過電子顕微鏡写真の撮影には、電子顕微鏡S-5500((株)日立ハイテクノロジーズ社製)を使用することができる。
本発明の複合微粒子の形状は、非球状(例えば、繭型、双子型、比較的短い粒子連結型、比較的短い鎖状など)、略球状(例えば、長球状、卵型など)又は球状などであり、具体的には、本発明の複合微粒子の短径/長径比が0.5〜1.0(好ましくは0.6〜0.9)の範囲にある複合微粒子である。
なお、前述の本発明の複合微粒子の平均粒子径を測定する場合と同様の画像解析法によって、50個の粒子の各々について短径(DS)および長径(DL)を測定して短径(DS)/長径(DL)を求め、それらの個数平均値を算出して得た値を本発明の複合微粒子の短径/長径比とする。
本発明の複合微粒子は、更にその平均包絡度が0.5〜0.95の範囲であることと、セリア子粒子が非球状構造(その短径/長径比が0.3〜0.85の範囲)にあることを特徴とする。
ここで平均包絡度について説明する。本発明の複合微粒子を走査型透過電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(STEM像)についての画像解析法で測定して得た平面画像において、1粒の本発明の複合微粒子に着目すると、その最外縁は凹凸を繰り返しているが、それら凸部の頂点を直線で結んで得た多角形の全辺の合計長さを包絡周囲長[A]とし、同じく本発明の複合微粒子の輪郭そのものの長さを実周囲長[B]としたとき、平均包絡度[C]は、100個の粒子の包絡度[(包絡周囲長[A])/(実周囲長[B])]の値の平均値として定義される。後述するように、平均包絡度は、SEM用画像解析ソフトウェア((株)オリンパス製、Scandium)を使用して自動解析することができる。
平均包絡度は、研磨砥粒表面と、研磨対象物(基板等)とが接する度合の多寡を表す指標となる。本発明の複合微粒子において、平均包絡度が1の場合、本発明の複合微粒子の包絡周囲長[A]と実周囲長[B]は等しく、本発明の複合微粒子は外形上、起伏がほぼない形状となる。
本発明の複合微粒子の平均包絡度が0.5〜0.95の範囲にある場合、本発明の複合微粒子を研磨砥粒に適用すると、優れた研磨性能を示すことができる。これは、本発明の複合微粒子表面で基板と接触する面積が比較的増大し、また、本発明の複合微粒子表面で適度な応力集中が得られるために、効率的な研磨が行われることに起因するものと推察される。前記平均包絡度は好適には0.75〜0.90の範囲が推奨される。
平均包絡度が下限未満の場合、本発明の複合微粒子の粒子表面の凹凸が大きくなることで、研磨時の過剰な応力集中により、小さなスクラッチを生じやすくなり望ましくない。
本発明の複合微粒子は、構造上、特に次の特徴を有する。
1)シリカ母粒子の表面に、非球状のセリア子粒子が、その長軸方向を母粒子表面と略平行にして存在する。
2)該セリア子粒子は、シリカ母粒子表面に比較的密に存在する。
このように非球形構造のセリア子粒子が母粒子表面と略平行に存在することで、セリア系複合微粒子は、その平均包絡度が0.5〜0.95の範囲となる傾向にある。
セリア子粒子の非球状構造については、例えば、セリア子粒子が球状粒子の場合、非球状の子粒子の場合に比して、凸部の基板との接触面積は小さく、研磨性能は向上しないものといえる。一方、セリア子粒子が非球状の子粒子の場合、凸部の基盤との接触面積が大きく、球状子粒子の場合に比してセリア子粒子数が少なくなることにより包絡度が小さくなり、適度な応力集中が得られるため研磨性能が向上するものといえる。
本発明の複合微粒子のセリア子粒子(平均結晶子径10〜30nm)の構造については、平均包絡度を0.5〜0.95の範囲に維持し、本発明の複合微粒子からなる砥粒と、研磨基板との接触面積を、より広く保つうえで、非球状構造であることが好ましい。
例えば、セリア子粒子が球状粒子の場合、非球状の子粒子の場合に比して、基板との接触面積は小さく、研磨性能は向上しないものといえる。該セリア子粒子の短径/長径比としては0.3〜0.85の範囲が好ましい。短径/長径比が0.85を超えるとセリア子粒子は球状に近くなり、前記問題が生じやすくなる。短径/長径比が0.3未満の場合、セリア子粒子の長軸方向の長さが過大となり、却って本発明の複合微粒子の外表面に起伏が多くなる場合があり、前記研磨性能向上に寄与しない場合がある。セリア子粒子の短径/長径比は好適には、0.5〜0.8の範囲が推奨される。
なお、セリア子粒子の短径/長径比の測定方法は後述する。
前記のとおり、本発明の製造方法は、所定の球状のシリカ系微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜8℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程1と、それに続いて、前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をしてセリア系複合微粒子分散液を得る工程2からなる。
本発明の複合微粒子においてセリウム含有シリカ層が形成される機構およびそのセリウム含有シリカ層の内部に子粒子が分散して存在することになる機構について、本発明者は以下のように推定している。
例えば、正珪酸四エチル(Si(OC254)にアンモニアを添加し、加水分解・縮重合の操作を行うことで得た球状(又は略球状)のシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液(シリカゾル)に、セリウム塩の溶解液を添加しながら、並行してアルカリを添加すると、セリウム塩の溶解液が中和される。そうすると、シリカ系微粒子の表面のシラノール基と、セリウム塩の溶解液の中和による生成物(水酸化セリウム等)とが反応し、一例として、Ce(OH)・Si(OH)様の化合物を経由して、シリカ系微粒子の表面にセリウムシリケート(例えば、CeO2・SiO2・SiOH等)およびCeO2超微粒子(粒子径が5nm以上、10nm未満の範囲)を含む層(以下「CeO2超微粒子含有層」ともいい、CeO2超微粒子とセリウムシリケートからなる層を意味する。)が形成される。
前記工程1における前駆体粒子は、このようなCeO2超微粒子とセリウムシリケートからなる層がシリカ系微粒子の表面に形成された構造を有する。該前駆体粒子は工程2の焼成処理により、セリウムシリケートから分相したセリウム原子がCeO2超微粒子に沈着するため、シリカ系微粒子の表面に形成される前記CeO2超微粒子は粒子成長する。本発明の複合微粒子分散液を研磨用途に適用したときに必要とする研磨速度を達成するためのセリア子粒子の結晶の大きさ(平均結晶子径が10〜30nm)とするためには、工程1の調合で得たセリア微粒子の結晶子径が5nm未満である場合、できるだけ高温での焼成処理が必要となる。ただし、該焼成処理が、あるレベル以上の高温で処理されると分相によりシリカが生じ、そのようなシリカが前駆体粒子構造内部でのいわば接着剤となり、当該発明の単結晶性セリア系複合微粒子を、後工程における解砕によって得ることができず、焼成処理に続いて行われる解砕処理を阻害する傾向が強まるので、本発明に係るセリア系複合微粒子を得難くなり望ましくない。
調合工程(工程1)で平均粒子径5nm以上のCeO2超微粒子を得るためには、セリウム塩と、シリカ系微粒子の表面のシラノール基との反応を抑制することが必要であり、その目的で、セリウム塩を添加する際のシリカ系微粒子分散液の温度は、8℃以下であることが好ましい。この際、一部のCeO2超微粒子は調合中の酸化還元電位を所定範囲に保つことにより、加熱・熟成がなくとも既に結晶化している。一方、8℃超の温度で調合した後、液相において加熱処理・熟成しても、CeO2超微粒子は5nm以上に成長せず、また結晶化も生じ難い傾向にある。
前記CeO2超微粒子含有層は、シリカ系微粒子の表面のシラノール基と、セリウム塩の溶解液の中和による生成物(水酸化セリウム等)との反応によりシリカ系微粒子の表面が溶出し、これに(製造工程中に吹き込んだエアー等に由来する)酸素等が影響して、固化して形成されたものと推定される。
そして、その後、乾燥し、950〜1150℃程度で焼成すると、前記CeO2超微粒子含有層の内部に存在している、粒径が5nm以上、10nm未満のCeO2超微粒子が、セリウムシリケートに含まれているセリウム原子を取り込んで粒径を成長させ、最終的には平均結晶子径が10〜30nm程度にまで成長した結晶性セリア微粒子(セリア子粒子)となる。
またセリウムシリケート(例えばCeO2・SiO2・SiOH等)は、熱分解や熱拡散等によりセリウム含有シリカ層となる。そのため、結晶性セリア微粒子はセリウム含有シリカ層内で分散した状態で存在することとなる。調合工程での温度が8℃超の場合はシリカ系微粒子の溶出量が著しく増し、セリウム含有シリカ層中のシリカの割合が増え、セリア子粒子を厚く被覆するため、セリア子粒子どうしの合着が生じ難い。しかし、調合温度が8℃以下の場合は、シリカの溶解が抑制されるため、セリウム含有シリカ層中のシリカの割合が減り、セリウム含有シリカ層の厚みが薄くなるため、焼成工程でセリア子粒子が粒子成長する際に、セリア子粒子同士の合着が進み、セリアの異形化が生じる傾向にある。また、セリウムシリケート層中のCe濃度が高いため、焼成時にセリア子粒子へのセリウムの供給速度が早くなり、セリア子粒子の特定の結晶軸方向に粒子成長することで、セリア子粒子の異形化が促進する。なお、セリウムシリケート層に含まれるセリウムの一部は結晶性セリア微粒子になりきれず残存するため、セリウム含有シリカ層が形成される。
なお、調合温度が8℃超でかつ酸化還元電位を所定範囲に保った場合は、前記水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が増し、シリカ系微粒子の溶出量が著しく増し、調合後のシリカ系微粒子は、例えば平均粒子径は50%程度減少し、体積は80〜90%減少する。そして溶解したシリカはCeO2超微粒子含有層に含まれ、前述の例の場合、CeO2超微粒子含有層の組成はシリカ濃度が約4割、セリア濃度が約6割となり、CeO2超微粒子含有層のシリカの割合が増える。そして焼成によりセリア子粒子を10〜30nmに結晶成長させた際に、セリウムシリケート層から分相したセリウム原子がセリア子粒子に沈着・成長し、セリウム原子の分相(拡散)により結果的に生成したシリカがセリア微粒子を被覆することになり、母粒子シリカに固着して、セリア子粒子がシリカ被膜で覆われた形態となる。また、Ce含有シリカ層の厚みが厚いため、セリア子粒子の合着(異形化)は生じ難い。
この時、焼成温度が1,150℃を超えると、セリアで被覆された母粒子を、セリア子粒子を被覆したシリカが接着剤となって、複合微粒子同士の合着を促進するため、後工程の解砕処理によっても、単分散状態にすることができない。
950℃未満の場合、複合微粒子の解砕処理は容易になるが、セリア微粒子の成長は不十分で、得られた複合微粒子を研磨用途に適用しても十分な研磨速度を得ることができない。
なお、調合温度が8℃超でかつ酸化還元電位を所定範囲に保った場合、調合後の結晶子径は5nm以下と小さくなり、焼成により所定サイズにセリア子粒子を結晶成長させるためには、セリウムシリケートからより多くのセリウム原子の拡散が必要となり、結果的にセリウムシリケート中のシリカ濃度が高まり、子粒子を覆うシリカ被膜が増大する傾向が強まる。
シリカ系微粒子分散液とセリウムの金属塩の反応時の調合温度が0〜8℃でかつ酸化還元電位を所定範囲に保った場合は、前記水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が抑制され、シリカ系微粒子があまり溶解せず、調合後のシリカ系微粒子は、例えば平均粒子径は1〜5%程度の減少、体積は3〜15%程度の減少に抑えられる。そのため前述の例の場合、CeO2超微粒子含有層の組成は、シリカ濃度が約1割以下、セリア濃度が約9割以上になり、CeO2超微粒子含有層のセリアの割合が増加し、焼成後にセリウム含有シリカ層が形成される。
また調合後のセリア子粒子の結晶子径は5nm以上、10nm未満の範囲(一例として結晶子径6〜9nm程度)となるため、焼成により所定サイズにセリア子粒子を結晶成長させるためのセリウム原子の拡散量が少なくてよく、低温焼成で結晶成長がおきて、平均結晶子径10〜30nmのセリア子粒子が得られる。
従って、0〜8℃で調合した場合は、母粒子表面上にセリウム含有シリカ層が形成され、この層内にセリア子粒子が分散した形態となる。しかし、セリウム含有シリカ層の厚みが薄いため、焼成時にセリア子粒子が結晶成長する際に、隣り合ったセリア子粒子が互いに粒子成長した結果、セリア子粒子が合着して異形化する。またセリアの供給速度が早いため、特定の結晶軸が成長することによってセリア子粒子の異形化が生じる。
なお、調合段階で、セリア微粒子の平均粒子径が10nm以上となると、セリア微粒子どうしの合着がおきて、母粒子表面に均一なセリア子粒子が単分散配列しないので、優れた研磨特性が得られない傾向がある。
前述の通り、本発明の複合微粒子は母粒子の表面にセリウム含有シリカ層を備える構造であり、母粒子の形状は本発明の複合微粒子の形状と近似している。また、母粒子の大きさは、本発明の複合微粒子よりもセリウム含有シリカ層の厚さの分だけ小さい。
母粒子は非晶質シリカを主成分とするシリカ系微粒子である。
係るシリカ系微粒子は、通常、シリカ微粒子と呼ばれるものであるが、本願では特に酸化物換算でSiO2を80モル%以上含有し、残量がある場合は、本発明の効果を阻害しない成分を含有する場合を含める目的でシリカ系微粒子とした。ここでSiO2以外の成分は、本発明の効果を阻害しない成分であれば特に制限がなく、例えば、TiO2、ZrO2、Al23、Na2O等が挙げられる。SiO2の含有量は90モル%以上が好ましく、実質的に(すなわち不可避的不純物を除いて)100モル%であることが好ましい。
シリカ系微粒子は、その形状として、球状粒子、略球状粒子又は非球状粒子のシリカ系微粒子を公知の方法で調製可能であり、また市販品の入手も可能である。
母粒子が非晶質シリカを主成分とすることは、例えば、次の方法で確認することができる。本発明の複合微粒子を含む分散液を乾燥させた後、乳鉢を用いて粉砕し、例えば、従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカのピークは現れない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、本発明の分散液を乾燥させ、樹脂包埋した後にPtによるスパッタコーティングを施し、従来公知の収束イオンビーム(FIB)装置を用い断面試料を作成する。例えば作成した断面試料を従来公知のTEM装置を用い、高速フーリエ変換(FFT)解析を用いてFFTパターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカの回折図は現れない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、別の方法として同様に作成し断面試料について、従来公知のTEM装置を用い、母粒子の原子配列による格子縞の有無を観察する方法が挙げられる。結晶質であれば結晶構造に応じた格子縞が観察され、非晶質であれば格子縞は観察されない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
母粒子は非晶質シリカを主成分とし、その他のもの、例えばLa、Ce、Zrを10質量%以下含んでいてもよく、結晶性シリカや不純物元素又は不純物となる化合物を含んでもよい。
例えば、前記母粒子において、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ5000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。また、前記母粒子におけるU、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
ここで、母粒子および後述する本発明の複合微粒子ならびに後述するシリカ系微粒子における特定不純物群1または特定不純物群2の含有率はdry量に対する含有率を意味するものとする。
dry量に対する含有率とは、対象物(母粒子、本発明の複合微粒子または後述するシリカ系微粒子)に含まれる固形分の質量に対する測定対象物(特定不純物群1または特定不純物群2)の重量の比の値を意味するものとする。なお、母粒子の不純分は、汚染等による混入が無ければ、原料として用いたシリカ系微粒子の不純分と概ね一致する。
一般に水硝子を原料として調製したシリカ系微粒子は、原料水硝子に由来する前記特定不純物群1と前記特定不純物群2を合計で数千ppm程度含有する。
このようなシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、イオン交換処理を行って前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも前記特定不純物群1と前記特定不純物群2が合計で数ppmから数百ppm残留する。そのため水硝子を原料としたシリカ系微粒子を用いる場合は、酸処理等で不純物を低減させることも行われている。
これに対し、アルコキシシランを原料として合成したシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、通常、前記特定不純物群1における各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、前記特定不純物群2における各元素と各陰イオンの含有率は、それぞれ20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
母粒子におけるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各々の含有率は、それぞれ次の方法を用いて測定して求めることができる。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びTh:ICP−MS(誘導結合プラズマ発光分光質量分析)
・Cl:電位差滴定法
・NO3、SO4及びF:イオンクロマトグラフ
<子粒子>
本発明の複合微粒子において結晶性セリアを主成分とする子粒子(以下、「セリア子粒子」ともいう)は、前記母粒子上に配されたセリウム含有シリカ層の内部に分散している。
本発明の複合微粒子における母粒子は、その表面が平滑であってもよく、凹凸を備えていてもよい。後者の場合、本発明の複合微粒子において子粒子は、次の(a)、(b)または(c)の形態が主として存在する。
(a)母粒子の凸部に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して、結合した形態。
(b)母粒子の凸部と凹部との両方に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して、結合した形態。
(c)母粒子の凹部に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して結合した形態。
子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にあることが好ましく、0.5〜0.8の範囲にあることがより好ましい。
子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比がこのような範囲であると、子粒子は非球状(異形)と言える。前記のとおり、研磨対象の基板との接触面積を大きくするうえで、非球状(異形)であることが好ましい。非球状構造のセリア子粒子を有するセリア系複合微粒子を研磨用途に適用した場合、球状構造のセリア子粒子を有するセリア系複合微粒子を用いた場合に比べて、基板との接触面が広くなり、研磨レートに優れる傾向がある。本発明の複合微粒子は、その様な非球状構造である子粒子を複数有するものであるため、より効率的な研磨が行われる。
なお、本発明の複合微粒子は、前記の平均包絡度が特定の範囲にあり、その表面に起伏又は凹凸構造を有するので、この様なセリア系複合微粒子の外形構造と、係る子粒子の非球状構造との相乗効果が研磨性能に寄与しているものと推察される。
本発明において、子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比は、次のように測定するものとする。
初めに本発明の複合微粒子の分散液(固形分0.05質量%)を走査型透過電子顕微鏡(倍率30万倍)を用いて観察した。得られたSTEM画像において、1つの子粒子について、その最大径を長軸とし、その長さを測定して長径とする。そして、任意の50個の子粒子について長径を測定し、それらの単純平均値を平均長径(D)とする。
次に、各子粒子の長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線がその子粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径とする。そして、任意の50個の子粒子について短径を測定し、それらの単純平均値を平均短径(S)とする。
このようして求めた平均短径(S)および平均長径(D)から、平均短径(S)/平均長径(D)の比を求める。
なお、平均短径(S)と平均長径(D)との幾何平均値を、子粒子の平均粒子径とする。
本発明では、電子顕微鏡S−5500((株)日立ハイテクノロジーズ社製)を使用することができる。
上記の方法で求める子粒子の平均粒子径は、10〜30nmが好ましく、17〜25nmであることがより好ましい。
子粒子の平均粒子径が30nmを超える場合、工程2において、そのようなセリア子粒子を有した前駆体粒子は、焼成後に焼結や凝結が生じ解砕も困難となる傾向がある。このようなセリア系複合微粒子分散液は、研磨用途に使用しても研磨対象でのスクラッチ発生を招き、好ましくない。子粒子の平均粒子径が10nm未満の場合、同じく研磨用途に使用すると、実用的に充分な研磨速度を得難い傾向がある。
子粒子の粒子径分布における標準偏差は、格別に制限されるものではないが3.0〜8.0nmであることが好ましく、3.5〜6.0nmであることがより好ましい。
また、子粒子の粒子径分布における変動係数は、格別に制限されるものではないが18〜28%であることが好ましく、21〜25%であることがより好ましい。
本発明の複合微粒子が砥粒として使用される場合、子粒子の粒子径の均一性が高い程、複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に増大するものの、研磨レートは相対的に低下し、同じく子粒子の粒子径の均一性が低い程、複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に減少するものの、研磨レートは相対的に増大するものと考えられ、上記標準偏差範囲と、変動係数範囲は、本発明の複合微粒子が良好な研磨性能を示すうえで適切な範囲であると推察される。
子粒子の標準偏差および変動係数は次のように測定する。
初めに本発明の複合微粒子をSTEM分析によって30万倍で観察する。
次に、1つの子粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して長径とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径とする。そして、短径と長径との幾何平均値を求め、これをその子粒子における粒子径とする。このようにして50個の子粒子について粒子径を求め、それより子粒子についての粒子径分布を求め、標準偏差を求める。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とする。
母粒子の表面に配されたセリウム含有シリカ層内に分散された子粒子は、単分散状態であってもよく、複数の子粒子が連結した状態であっても構わない。
また、該子粒子は、単層で分散した状態で存在してもよく、積層(すなわち、セリウム含有シリカ層の厚さ方向に複数の子粒子が積み重なって存在する状態)されていてもよい。なお、ここで積層は、セリウム含有シリカ層の内部において、母粒子の中心からの放射状の線上において子粒子が複数存在する場合を含む。
更に子粒子はセリウム含有シリカ層中に埋没していてよいし、セリウム含有シリカ層の外部へ部分的に露出していてもよいが、子粒子がセリウム含有シリカ層に埋没した場合は、セリア系複合微粒子の表面はよりシリカ表面に近くなるため、保存安定性及び研磨安定性が向上し、さらに研磨後の基板上に砥粒残りが少なくなることから、子粒子はセリウム含有シリカ層に埋没している方が望ましい。
本発明において、子粒子は結晶性セリアを主成分とする。
前記子粒子が結晶性セリアを主成分とすることは、例えば、本発明の分散液を乾燥させた後、得られた固形物を乳鉢を用いて粉砕する等して本発明の複合微粒子を得た後、これを例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)を用いてX線分析し、得られたX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、前記子粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
子粒子は結晶性セリア(結晶性Ce酸化物)を主成分とし、その他のもの、例えばセリウム以外の元素を含んでもよい。また、研磨の助触媒として含水セリウム化合物を含んでもよい。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ない、あるいはセリア結晶中に固溶しているため、X線回折による検出範囲外となる。
セリア子粒子の平均結晶子径は、本発明の複合微粒子をX線回折に供して得られるチャートに現れる最大ピークの半値全幅を用いて算出される。そして、例えば(111)面の平均結晶子径は10〜30nm(半値全幅は0.86〜0.29°)であり、14〜23nm(半値全幅は0.62〜0.37°)であることが好ましく、15〜22nm(半値全幅は0.58〜0.38°)であることがより好ましい。なお、多くの場合は(111)面のピークの強度が最大になるが、他の結晶面、例えば(100)面のピークの強度が最大であってもよい。その場合も同様に算出でき、その場合の平均結晶子径の大きさは、上記の(111)面の平均結晶子径と同じであってよい。
本発明の複合微粒子は、前記球状(又は略球状)構造をとり、更にセリア子粒子の平均結晶子径が10〜30nmの範囲にある場合に、より優れた研磨性能を得ることができる。これは複合微粒子の半径の変動係数との関係で、セリア子粒子の平均結晶子径が10〜30nmの範囲であることの相乗効果と推察される。
子粒子の平均結晶子径の測定方法を、(111)面(2θ=28度近傍)の場合を例として以下に示す。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半値全幅を測定し、下記のScherrerの式により、平均結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:平均結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(1.5419オングストローム、Cuランプ)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
また、本発明の複合微粒子は[1]〜[6]の特徴に加え、さらに[7]前記セリア系複合微粒子の半径の変動係数が7〜20%の範囲にあり、8〜18%の範囲にあることが好ましく、11〜15%の範囲にあることがより好ましい。セリア系複合微粒子の半径の変動係数がこの範囲にある場合、優れた研磨性能(研磨レート)を得ることができる。
球状の母粒子がその表面に非球状のセリア子粒子を有してなる本発明の複合微粒子において、その半径の変動係数は、本発明の複合微粒子の表面の起伏又は凹凸構造の多寡を示す指標となる。即ち、同変動係数が相対的に高い程、複合微粒子の表面は起伏又は凹凸が多くなり、同変動係数が相対的に低い程、複合微粒子の表面は、起伏又は凹凸が少なく、より平坦なものとなる。
本発明の複合微粒子を砥粒として使用する場合、複合微粒子の半径の変動係数の値が高い程、本発明の複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に減少するものの、削る効果は相対的に増大するものと考えられ、本発明の複合微粒子の半径の変動係数の値が低い程、本発明の複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に増大するものの、削る効果は相対的に低下するものと考えられる。前記の本発明の複合微粒子の半径の変動係数範囲は、複合微粒子の転がり易さと、削り易さが両立し、良好な研磨性能を示すうえで適切な範囲であると推察される。
なお、前記セリア系複合微粒子の半径の変動係数は、セリア系複合微粒子の半径の分布の標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものであり、相対的なばらつきを示している。
ここでセリア系複合微粒子の半径の分布は、次のように測定する。
まず、本発明の分散液(固形分濃度0.05重量%)について電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−5500)を用いて倍率30万倍で観察し、得られたSTEM画像に関し、任意のセリア系複合微粒子について、外縁上の2点を結ぶ線分のうち最長の線分を長径とする。次に、その長径を二等分する点を該球状シリカ微粒子の中心とし、該中心から最長径の一方の端を角度0度とし、そこから10度ずつ0度から180度までの半径を測定する。そして、その値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求めた。この測定および算定を任意の50個の粒子について行い、粒子径の変動係数の平均値をとり、その値を粒子径の変動係数(CV値)とした。なお、粒子径の変動係数(CV値)については、粒子径の変動係数(CV値)[%]=(粒子径の標準偏差/粒子径の平均値)×100として表示した。
本発明の複合微粒子は、前記子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶していることが好ましい。一般に固溶とは、2種類以上の元素(金属の場合も非金属の場合もある)が互いに溶け合い、全体が均一の固相となっているものを意味し、固溶して得られる固溶体は、置換型固溶体と侵入型固溶体とに分類される。置換型固溶体は、原子半径が近い原子において容易に起こり得るが、CeとSiは原子半径が大きく違うため、少なくとも置換型固溶体は生じ難いと見られる。また、Cerianiteの結晶構造において、Ce中心からみたCeの配位数は8であるが、例えばSiがCeと1対1で置換した場合はCeの配位数は7となるはずである。しかし、本発明の複合微粒子の好適態様の分析結果においてはCe中心からみたCeの平均配位数は8.0で、さらにSiの平均配位数は1.2であることから、本発明の複合微粒子の好適態様は侵入型であると推定している。そのうえ、本発明の複合微粒子の好適態様の分析結果からも、Ce−Siの原子間距離は、Ce−Ceの原子間距離よりも小さいことから、本発明の複合微粒子の好適態様は、侵入型固溶体であると推察される。すなわち、子粒子に含まれるセリウム原子およびケイ素原子について、セリウム−ケイ素原子間距離をR1とし、セリウム−セリウム原子間距離をR2としたときにR1<R2の関係を満たすことが好ましい。
従来、砥粒としてセリア粒子を用いてシリカ膜付基板やガラス基材を研磨すると、他の無機酸化物粒子を用いた場合に比べて、特異的に高い研磨速度を示すことが知られている。セリア粒子がシリカ膜付基板に対して、特に高い研磨速度を示す理由の一つとして、セリア粒子中に含まれる三価のセリウムが被研磨基板上のシリカ被膜に対して、高い化学反応性を持つことが指摘されている。酸化セリウム中のセリウムは三価と四価の価数となりうるが、半導体用の研磨材として用いられる純度の高い酸化セリウム粒子は、炭酸セリウムなどの高純度なセリウム塩を700℃の高温で焼成するプロセスを経ている。そのため、焼成型セリア粒子中のセリウムの価数は四価を主としており、例え三価のセリウムを含んでいたとしてもその含有量は十分でない。
本発明の複合微粒子の好適態様は、その外表面側に存在する子粒子(セリア微粒子)において、Si原子がCeO2結晶に侵入型の固溶をしていると見られる。Si原子の固溶により、CeO2結晶の結晶歪みが生じることで、高温で焼成しても酸素欠陥が多くなりSiO2に対して化学的に活性な三価のセリウムが多く生じ、CeO2の化学反応性を助長する結果、上記の高い研磨速度を示すものと推察される。また三価のセリウム含有量を増加させるために、LaやZrなどをドープさせても構わない。
なお、上記のR1、R2等の、セリウム原子およびケイ素原子の原子間距離は、後述する実施例に説明する方法で測定して得た平均原子間距離を意味するものとする。
<セリウム含有シリカ層>
本発明の複合微粒子は、前記母粒子の表面上にセリウム含有シリカ層を有する。そして、セリウム含有シリカ層の内部に子粒子が分散している。
このような構造をとることにより、製造時の解砕処理や研磨時の圧力による子粒子の脱落が生じ難く、また、たとえ一部の子粒子が欠落したとしても、多くの子粒子は脱落せずにセリウム含有シリカ層中に存在するので、研磨機能を低下させることがない。
本発明の複合微粒子について走査型透過電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(STEM像)では、母粒子の表面に子粒子の像が濃く現れるが、その子粒子の周囲および外側、すなわち、本発明の複合微粒子の表面側にも、相対的に薄い像として、セリウム含有シリカ層の一部が現れる。
セリウム含有シリカ層の厚さは、特に限定されるものではないが、10〜40nmであることが好ましく、12〜30nmであることがより好ましい。
本発明の複合微粒子におけるセリウム含有シリカ層は、焼成過程でセリウム含有シリカ層に分散し成長した子粒子(結晶性セリアを主成分とするセリア微粒子)と母粒子との結合力を助長すると考えられる。よって、例えば、本発明の分散液を得る工程で、焼成した後、湿式による解砕を行い、さらに場合によっては遠心分離処理を行うことでセリア系複合微粒子分散液が得られるが、セリウム含有シリカ層により、子粒子が母粒子から外れる事を防ぐ効果があるものと考えられる。この場合、局部的な子粒子の脱落は問題なく、また、子粒子の表面の全てがセリウム含有シリカ層の一部で覆われていなくてもよい。子粒子が解砕工程で母粒子から外れない程度の強固さがあればよい。
このような構造により、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高くなるものと考えられる。
また、本発明の複合微粒子では、子粒子の表面の少なくとも一部がセリウム含有シリカ層によって被覆されているので、本発明の複合微粒子の最表面(最外殻)にはシリカの−OH基が存在することになる。このため研磨剤として利用した場合に、本発明の複合微粒子は研磨基板表面の−OH基による電荷で反発しあい、その結果、研磨基板表面への付着が少なくなると考えられる。
また、一般的にセリアは、シリカや研磨基板あるいは研磨パッドとは、pHとゼータ電位の相関性が異なり、pHがアルカリ性から中性付近に向かうにつれてマイナスのゼータ電位が減少して行き、弱酸性領域では逆のプラスの電位を持つ。そのため、セリア粒子を砥粒とした場合、研磨時の酸性pHの条件では、セリアのゼータ電位の大きさの違いやその極性の違いなどによって、セリアは研磨基材や研磨パッドに付着し、研磨基材や研磨パッドに残り易い。
一方、本発明の複合微粒子は上記のように最外殻にシリカが存在しているため、そのゼータ電位がシリカに起因した負電荷となるため、アルカリ性から酸性まで広範なpH領域においてマイナスの電位を維持することができる。その結果、本発明の複合微粒子を砥粒とした場合、研磨基材や研磨パッドへの砥粒残りが起こりにくい。
本発明の製造方法における工程2の解砕処理時にpH8.6〜10.8を保ちながら解砕すると、本発明の複合微粒子の表面のシリカ(セリウム含有シリカ層のシリカ)の一部が溶解する。係る条件で製造した本発明の分散液を、研磨用途に適用する時にpH<7に調整すれば、溶解したシリカが本発明の複合微粒子(砥粒)に沈着するので、本発明の複合微粒子の表面は負の電位を持つことになる。電位が低い場合には、珪酸を添加し、適度にセリウム含有シリカ層を補強しても構わない。
本発明の複合微粒子は、前述のように、[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とし、[2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5〜1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5〜0.95の範囲であり、[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出され、[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜30nmであり、[6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にある。
そして、本発明の複合微粒子は、さらに、[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316であるという特徴を備えている。
本発明の複合微粒子において、シリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比は100:11〜100:316であり、100:30〜100:230であることが好ましく、100:30〜100:150であることがより好ましく、100:60〜100:130であることがさらに好ましい。シリカとセリアとの質量比は、概ね、母粒子と子粒子との質量比と同程度と考えられる。母粒子に対する子粒子の量が少なすぎると、母粒子または複合微粒子同士が結合し、粗大粒子が発生する場合がある。この場合に本発明の分散液を含む研磨剤(研磨スラリー)は、研磨基材の表面に欠陥(スクラッチの増加などの面精度の低下)を発生させる可能性がある。また、シリカに対するセリアの量が多すぎても、コスト的に高価になるばかりでなく、資源リスクが増大する。さらに、粒子同士の融着が進む。その結果、基板表面の粗度が上昇(表面粗さRaの悪化)したり、スクラッチが増加する、更に遊離したセリアが基板に残留する、研磨装置の廃液配管等への付着といったトラブルを起こす原因ともなりやすい。
なお、上記のシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比を算定する場合の対象となるシリカとは、本発明の複合微粒子に含まれる全てのシリカ(SiO2)を意味する。従って、母粒子を構成するシリカ成分、母粒子の表面に配されたセリウム含有シリカ層に含まれるシリカ成分、および子粒子に含まれ得るシリカ成分の総量を意味する。
本発明の複合微粒子におけるシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)の含有率(質量%)は、まず本発明の分散液の固形分濃度を、灼熱減量法(試料を1000℃の電気炉内で1時間加熱し、得られた試料を秤量する)により求める。
次に、所定量の本発明の複合微粒子に含まれるセリウム(Ce)の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、酸化物質量%(CeO2質量%等)に換算する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO2以外の成分はSiO2であるとして、SiO2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、シリカとセリアの質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したシリカ源物質とセリア源物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやシリカが溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやシリカの使用量と分析値が良い一致を示す。
本発明の複合微粒子の平均円形度は0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。なお、円形度の理論上の最大値は1.0であり、平均円形度の最大値も1となる。平均円形度が1.0に近づく程、複合微粒子は球形に近づき、1.0より小さくなる程、球状構造から離れて、非球状構造をとるようになる。本発明の複合微粒子を砥粒とした場合、複合微粒子の形状が球状に近い程、研磨基板上での砥粒の転がりやすさが増大するので、研磨対象の基板上での比較的微小なスクラッチの発生抑止に寄与することが可能となる。他方、複合微粒子の形状が非球状である場合、研磨基板上での砥粒と基板の接触面積が増大するので、研磨速度向上に寄与することが可能となる。
ここで本発明の複合微粒子の平均円形度は、次のように測定する。試料(複合微粒子分散液、固形分濃度0.05質量%)を乾燥させ、走査型透過電子顕微鏡(例えば日立ハイテクノロジーズ社製S−5500)を用いて、STEM写真の画像データを得る。そして、このSTEM写真の中から無作為に100個の粒子を選ぶ。STEM写真の画像データ(2次電子像、100倍、jpg画像)を、SEM用画像解析ソフトウェア(例えば、(株)オリンパス製、Scandium)に読み取らせる。画像上から、特定の領域を解析領域(フレーム)として選択し、この解析領域(フレーム)を2値化処理する。詳細には、RGB値のそれぞれの下限値として153諧調、上限値として255諧調を選択し、これら2つの閾値による2値化を実行する。2値化を実行した解析領域内の粒子を検出し、検出された粒子のうち、複数個の粒子の塊を一つの粒子として検出されたものを削除する。単一粒子と認められた粒子について、粒子の投影像の周長を求める。この手順を100個の粒子について行う。
そして、各粒子について、下記式より円形度を求め、それらを単純平均することで平均円形度を算出する。
円形度=(粒子の投影像と面積の等しい円の周長)/(粒子の投影像の周長)
本発明の複合微粒子は、比表面積が4〜100m2/gであることが好ましく、20〜70m2/gであることがより好ましい。
ここで、比表面積(BET比表面積)の測定方法について説明する。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
本発明の複合微粒子において、前記特定不純物群1の各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群2の各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。本発明の複合微粒子における特定不純物群1及び前記特定不純物群2それぞれの元素の含有率を低減させる方法は、前述の通りである。
なお、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群1および前記特定不純物群2の各々の元素の含有率は、前述の母粒子に含まれる前記特定不純物群1および前記特定不純物群2を測定する場合と同じ方法によって測定することができる。
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
本発明の分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の分散液は、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
また、本発明の分散液を備える分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
本発明の分散液は、カチオンコロイド滴定を行った場合に、下記式(1)で表される流動電位変化量(ΔPCD)と、クニックにおけるカチオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が−110.0〜−5.0となる流動電位曲線が得られるものであることが好ましい。
ΔPCD/V=(I−C)/V・・・式(1)
C:前記クニックにおける流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記クニックにおける前記カチオンコロイド滴定液の添加量(ml)
ここで、カチオンコロイド滴定は、固形分濃度を1質量%に調整した本発明の分散液80gにカチオンコロイド滴定液を添加することで行う。カチオンコロイド滴定液として、0.001Nポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム溶液を用いる。
このカチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線とは、カチオン滴定液の添加量(ml)をX軸、本発明の分散液の流動電位(mV)をY軸に取ったグラフである。
また、クニックとは、カチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線において急激に流動電位が変化する点(変曲点)である。そして変曲点における流動電位をC(mV)とし、変曲点におけるカチオンコロイド滴定液の添加量をV(ml)とする。
流動電位曲線の開始点とは、滴定前の本発明の分散液における流動電位である。具体的にはカチオンコロイド滴定液の添加量が0である点を開始点とする。この開始点における流動電位をI(mV)とする。
上記のΔPCD/Vの値が−110.0〜−5.0であると、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨剤の研磨速度がより向上する。このΔPCD/Vは、本発明の複合微粒子表面におけるセリウム含有シリカ層による子粒子の被覆具合及び/又は複合微粒子の表面における子粒子の露出具合あるいは脱離しやすいシリカの存在を反映していると考えられる。ΔPCD/Vの値が上記範囲内であると、湿式による解砕時において子粒子は脱離する事が少なく、研磨速度も高いと本発明者は推定している。逆にΔPCD/Vの値が−110.0よりもその絶対値が大きい場合は、複合微粒子表面がセリウム含有シリカ層で全面覆われているため解砕工程にて子粒子脱落は起き難いが研磨時にシリカが脱離しがたく研磨速度が低下する。一方、−5.0よりもその絶対値が小さい場合は脱落が起きやすいと考えられる。上記範囲内であると、研磨時において子粒子表面が適度に露出して子粒子の脱落が少なく、研磨速度がより向上すると本発明者は推定している。ΔPCD/Vは、−100.0〜−5.0であることがより好ましく、−100.0〜−10.0であることがさらに好ましい。
本発明の分散液は、そのpH値を3〜8の範囲とした場合に、カチオンコロイド滴定を始める前、すなわち、滴定量がゼロである場合の流動電位がマイナスの電位となるものであることが好ましい。これは、この流動電位がマイナスの電位を維持する場合、同じくマイナスの表面電位を示す研磨基材への砥粒(セリア系複合微粒子)の残留が生じ難いからである。
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は以下に説明する工程1および工程2を備える。
<工程1>
工程1ではシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を用意する。
なお、本明細書では「工程1」を「調合工程」という場合もある。
工程1で使用されるシリカ系微粒子は、前述の母粒子と同様に、非晶質シリカを主成分とするものである。ここで主成分の定義も母粒子の場合と同様である。
シリカ系微粒子は、平均粒子径が30〜200nmであり、40〜150nmであることが好ましい。なお、シリカ系微粒子の平均粒子径は、次のように測定するものとする。
シリカ系微粒子分散液(固形分濃度0.05質量%)を走査型透過電子顕微鏡(倍率30万倍)で観察し、得られたSTEM画像について、シリカ系微粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをそのシリカ系微粒子の粒子径とする。このようにして50個の粒子について粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出して得た値をシリカ系微粒子の平均粒子径とする。なお、長径(DL)と短径(DS)の値が等しい場合は、その値を当該粒子の平均粒子径とした。
シリカ系微粒子は、短径/長径比が0.8〜1.0であり、0.9〜1.0であることが好ましい。なお、シリカ系微粒子の平均粒子径は、次のように測定するものとする。
なお、前述のシリカ系微粒子分散液の平均粒子径を測定する場合と同様に走査型透過電子顕微鏡(倍率30万倍)で観察し、得られたSTEM画像において50個の粒子の各々について短径(DS)および長径(DL)を測定して短径(DS)/長径(DL)を求め、それらの個数平均値を算出して得た値をシリカ系微粒子の短径/長径比とする。
シリカ系微粒子の平均円形度は0.80以上であり、0.90以上であることが好ましい。円形度の理論上の最大値は1.00であり、平均円形度の最大値も1となる。平均円形度が0.80を超えて1.00に近づく程、シリカ系微粒子は球形に近づいてゆくので、最終的に得られる複合微粒子の外形も球形に近づく傾向が大きくなる。複合微粒子を砥粒として使用した場合の基板上での転がり易さが高い方が研磨速度が向上する傾向にあるので、シリカ系微粒子は球形であることが好ましい。
なお、シリカ系微粒子の平均円形度は、前述の本発明の複合微粒子の平均円形度と同様に、走査型透過電子顕微鏡を用いて撮影したシリカ系微粒子の画像を、SEM用画像解析ソフトウェアで読み取り、シリカ系微粒子の投影像の周長を求め、円形度=(粒子の投影像と面積の等しい円の周長)/(粒子の投影像の周長)の式を用いて円形度を求め、単純平均して平均円形度を算出した。
工程1で原料として使用されるシリカ系微粒子分散液におけるシリカ系微粒子は、本発明の製造方法で得られるセリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子より小さいものが使用される。
本発明の製造方法により、半導体デバイスなどの研磨に適用する本発明の分散液を調製しようとする場合は、シリカ系微粒子分散液として、アルコキシシランの加水分解により製造したシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を用いることが好ましい。なお、上記以外の従来公知のシリカ系微粒子分散液(水硝子を原料として調製したシリカ系微粒子分散液等)を原料とする場合は、シリカ系微粒子分散液を酸処理し、更に脱イオン処理して使用することが好ましい。この場合、シリカ系微粒子に含まれるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が少なくなり、具体的には、100ppm以下となり得るからである。
具体的には、原料であるシリカ系微粒子分散液中のシリカ系微粒子として、次の(a)と(b)の条件を満たすものが好適に使用される。
(a)Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
また、シリカ系微粒子はセリウムとの反応性(セリア重量あたりのシリカ系微粒子の溶解重量)が適度なものが好適に用いられる。シリカ系微粒子は、本発明の製造方法における工程1の調合工程でセリウムの金属塩を添加することで、シリカの一部が水酸化セリウム等によって溶解し、シリカ系微粒子のサイズが小さくなり、溶解したシリカ系微粒子の表面にセリウムの微結晶を含んだセリウム含有シリカ層の前駆体が形成される。この際、シリカ系微粒子がセリウムとの反応性が高い非晶質シリカからなる場合、セリウム含有シリカ層の前駆体が厚くなり、焼成によって生じるセリウム含有シリカ層が厚膜化したり、その層のシリカ割合が過剰に高くなり、解砕工程で解砕が困難になるからである。また、シリカ系微粒子がセリウムとの反応性が極度に低い非晶質シリカからなる場合はセリウム含有シリカ層が十分に形成されず、セリア子粒子が脱落しやすくなる。セリウムとの反応性が適切な場合は、過剰なシリカの溶解が抑制され、セリウム含有シリカ層は適度な厚みとなり子粒子の脱落を防止し、その強度が複合微粒子間との強度よりも大きくなると考えられるので、易解砕となるため、望ましい。
工程1では、シリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜8℃、pH範囲を7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、セリウムの金属塩を中和することで、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る。
セリウムの金属塩を添加する際のシリカ系微粒子分散液の温度は0〜8℃であることが好ましい。
シリカ系微粒子分散液における分散媒は水を含むことが好ましく、水系のシリカ系微粒子分散液(水ゾル)を使用することが好ましい。
シリカ系微粒子分散液における固形分濃度は、SiO2換算基準で1〜40質量%であることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると、製造工程でのシリカ濃度が低くなり生産性が悪くなり得る。
例えば、工程1におけるシリカ系微粒子とセリウムの金属塩との反応温度を40〜50℃とした場合、セリアとシリカの反応性が高まり、シリカ系微粒子の溶解が進む。その結果、工程2の中間段階で乾燥して得られた前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の粒子径は2.5nm未満となる。このことは係る高温域においてシリカがセリアと液相で反応すると、シリカがセリアの粒子成長を阻害するため、乾燥後のセリアの平均粒子径が5nm未満と、小さくなることを示している。
なお、このような前駆体粒子であっても、焼成温度を1150℃以上とすることでセリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とすることは可能であるが、この場合は、セリウム含有シリカ層は形成されずにシリカ被膜が形成され、このシリカ被膜がセリア子粒子を強固に被覆する傾向が強まるために、解砕が困難となる点で支障がある。そのため、反応温度を0〜8℃に保ち、液相でのシリカとセリアの反応を適度に抑えることで、乾燥後の前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の平均結晶子径を5nm以上にでき、解砕しやすい粒子となる。さらに乾燥後の平均結晶子径が大きいため、セリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とするための焼成温度を低くすることができ、焼成により形成されるセリウム含有シリカ層の厚みが過剰に厚膜化せず、解砕が容易となる。
また、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂、あるいは鉱酸、有機酸等で不純物を抽出し、限外ろ過膜などを用いて、必要に応じて、シリカ系微粒子分散液の脱イオン処理を行うことができる。脱イオン処理により不純物イオンなどを除去したシリカ系微粒子分散液は表面にケイ素を含む水酸化物を形成させやすいのでより好ましい。なお、脱イオン処理はこれらに限定されるものではない。
工程1では、上記のようなシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜8℃、pH範囲を7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加する。酸化還元電位が低いと、棒状等の結晶が生成するために、シリカ系微粒子には沈着し難い。
さらに、酸化還元電位を所定の範囲に調整しない場合は、調合工程で生成したCeO2超微粒子は結晶化しにくい傾向にあり、結晶化していないCeO2超微粒子は調合後の加熱、熟成によっても結晶化が促進されない。そのため工程2の焼成において所定サイズに結晶化させるためには、高温での焼成が必要となり、解砕が困難になる。
セリウムの金属塩の種類は限定されるものではないが、セリウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属アルコキシドなどを用いることができる。具体的には、硝酸第一セリウム、炭酸セリウム、硫酸第一セリウム、塩化第一セリウムなどを挙げることができる。なかでも、硝酸第一セリウムや塩化第一セリウム、炭酸セリウムなどの三価のセリウム塩が好ましい。中和と同時に過飽和となった溶液から、結晶性セリウム酸化物や水酸化セリウム等が生成し、それらは速やかにシリカ系微粒子に凝集沈着し、最終的にCeO2超微粒子が単分散で形成されるからである。さらに三価のセリウム塩はシリカ系微粒子と適度に反応し、セリウム含有シリカ層が形成されやすい。また研磨基板に形成されたシリカ膜と反応性の高い三価のセリウムがセリア結晶中に形成されやすいため、好ましい。しかしこれら金属塩に含まれる硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオンなどは、腐食性を示す。そのため、所望により、調合後に後工程で洗浄し5ppm以下に除去する必要がある。一方、炭酸塩は炭酸ガスとして調合中に放出され、またアルコキシドは分解してアルコールとなるため、好ましく用いることができる。
シリカ系微粒子分散液に対するセリウムの金属塩の添加量は、得られるセリア系の複合微粒子におけるシリカとセリアとの質量比が、前述の本発明の複合微粒子の場合と同様に、100:11〜316の範囲となる量とする。
シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度は0〜8℃であることが好ましく、3〜7℃であることがより好ましく、3〜6℃であることがさらに好ましい。
シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度が0〜8℃の範囲にある場合、セリアとシリカの反応性は低く、シリカの溶解はある程度抑制される結果、結晶性のセリアが生成し易くなり、特にその形状は焼成温度が高い場合に異方化(非球状化)し易くなる。
セリア子粒子の異方化(非球状化)は、前記攪拌時の温度の場合、母粒子のSiO2溶解量が少なく、調合で母粒子上に形成する7〜9nmの結晶子径を有し近接する単結晶CeO2超微粒子同士が焼成により接する状態になりやすいことで起こる。
または、調合で母粒子上に形成する7〜9nmの結晶子径を有する単結晶CeO2超微粒子へCeO2が供給される際に、母粒子のSiO2溶解量が少ないため球状に成長しにくく、a,b軸方向の成長よりもc軸方向の成長が早い場合にも起こりやすい。
前記攪拌時の温度が0℃未満の場合、セリアとシリカの反応性が低下し、シリカの溶解性が著しく低下するため、セリアの結晶化が制御されなくなる。その結果、粗大なセリアの結晶性酸化物が生成し易くなり、例えば、シリカ系微粒子の表面においてCeO2超微粒子の異常成長が起こり、焼成後に解砕されにくくなったり、セリウム化合物によるシリカの溶解量が減るため、セリウム含有シリカ層に供給されるシリカが減少することになる。このためシリカ母粒子とセリア子粒子とのバインダーとなるシリカが不足(母粒子に積層されるシリカ不足)し、セリア子粒子のシリカ母粒子への固定化が起こり難くなる事が考えられる。
逆に、前記攪拌時の温度が8℃を超え、20℃までの場合、球状構造のセリア子粒子が生成しやすくなる。セリア子粒子が球状となった場合、母粒子表面に存在するセリア子粒子の大きさにもよるが、そのような複合微粒子においては、比較的子粒子数が多くなるため、表面凹凸が小さく包絡度としては大きくなる。この場合、前記のとおり、該複合微粒子を研磨砥粒とした場合、研磨対象の基板との接触面積が低下し、研磨速度は低くなる。
更に前記攪拌時の温度が20℃を超えると、シリカの溶解度が著しく増し、結晶性のセリア酸化物の生成が抑制される事が考えられるが、焼成時に高温を要し粒子間の結合が促進され、解砕できなくなる可能性があり、更に、反応器壁面にスケールなどが生じやすくなり好ましくない。またシリカ系微粒子は、セリウム化合物(セリウム塩の中和物)に対して溶解されにくいものが好ましい。溶解されやすいシリカ系微粒子の場合は、シリカによってセリアの結晶成長が抑制され、調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が5nm未満となる。
調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が5nm未満であると、焼成後のセリア粒子径を10nm以上とするために、焼成温度を高くする必要があり、その場合、セリウム含有シリカ層が母粒子を強固に被覆してしまい、解砕が困難となる可能性がある。溶解されやすいシリカ系微粒子は、100℃以上で乾燥させた後に原料に供すると溶解性を抑制することができる。
また、工程1において、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度が0〜8℃であることで、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得ることができる。
また、シリカ系微粒子分散液を撹拌する際の時間は0.5〜24時間であることが好ましく、0.5〜18時間であることがより好ましい。この攪拌時間が、0.5時間未満の場合、CeO2超微粒子どうしが凝集する傾向が強まるため、シリカ系微粒子の表面上でのCeO2超微粒子とシリカとの反応が進行し難くなり、解砕されにくい複合微粒子が形成される傾向があり好ましくない。
逆に、この攪拌時間を24時間以上としても、CeO2超微粒子含有層(セリウム含有被覆層)の生成反応はそれ以上進行しないため、不経済となる。
なお、前記セリウム金属塩の添加後に、所望により0〜80℃にて熟成しても構わない。熟成により、セリウム化合物とシリカ系微粒子との反応が促進させると同時に、シリカ系微粒子に付着せず遊離したCeO2超微粒子を、改めてシリカ系微粒子上に付着させる効果があるからである。
また、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加し、撹拌する際のシリカ系微粒子分散液のpH範囲はpH7.0〜9.0とするが、pH7.6〜8.6とすることが好ましい。
この際、アルカリ等を添加しpH調整を行うことが好ましい。このようなアルカリの例としては、公知のアルカリを使用することができる。具体的には、アンモニア水溶液、水酸化アルカリ、アルカリ土類金属、アミン類の水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加し、撹拌する際の微粒子分散液の酸化還元電位を50〜500mVに調整することが好ましい。更に酸化還元電位は100〜300mVとすることが更に好ましい。これはセリウムの金属塩として、例えば三価のセリウム金属塩を原料として用いた場合、調合中に微粒子分散液の酸還元電位が低下するからである。
また酸化還元電位を50〜500mVの範囲に保つことで、生成したCeO2超微粒子の結晶化が促進される。酸化還元電位が50mV未満または負となった場合、セリウム化合物がシリカ系微粒子の表面に沈着せずに板状・棒状などの単独のセリア粒子が生成したり、あるいは過度に凝集した複合セリア粒子が生成する場合がある。
さらに、前記pH調整などによる中和により過飽和となった溶液から生成する水酸化セリウム等のシリカ系微粒子に対する反応性が低下し、CeO2超微粒子含有層の形成が進行し難くなり、仮に形成したとしてもCeO2超微粒子層中に含まれるシリカの割合が極めて低くなる。そのため、焼成後にセリア子粒子を内在するセリウム含有シリカ層は形成されず、セリア子粒子はシリカ母粒子の表面に露出して配置された状態となる傾向にある。
酸化還元電位を上記の範囲内に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアー、酸素及びオゾンを吹き込む方法が挙げられる。これらの方法を行わない場合は、酸化還元電位は負であったり50mV以下になる傾向にある。
このような工程1によって、本発明の複合微粒子の前駆体である粒子(前駆体粒子)を含む分散液(前駆体粒子分散液)が得られる。本工程において、前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が5nm以上、10nm未満の粒子を得ることが可能である。
シリカとセリアの反応性が高すぎると前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が5nm未満となる傾向がある。仮に、前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が5nm未満となった場合は、工程2でセリア粒子を10nm以上とするために過剰に高温での焼成が必要となると考えられる。しかし、この場合、複合微粒子間の固着が強固となり、解砕が困難となる可能性が高く、実用的ではない。
工程1で得られた前駆体粒子分散液を、工程2に供する前に、純水やイオン交換水などを用いて、さらに希釈あるいは濃縮して、次の工程2に供してもよい。
なお、前駆体粒子分散液における固形分濃度は1〜27質量%であることが好ましい。
また、所望により、前駆体粒子分散液を、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜、イオン交換膜、遠心分離などを用いて脱イオン処理してもよい。
<工程2>
工程2では、前駆体粒子分散液を乾燥させた後、950〜1,150℃で焼成する。
乾燥する方法は特に限定されない。従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。具体的には、箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等を使用することができる。
なお、好適には、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とすることが推奨される。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とした場合、表面活性を抑制できるからである。
乾燥後、焼成する温度は950〜1150℃であるが、970〜1140℃であることが好ましく、990〜1130℃であることがより好ましく、1000〜1120℃であることがもっとも好ましい。このような温度範囲において焼成すると、セリアの結晶化が十分に進行し、また、セリア子粒子が分散しているセリウム含有シリカ層が適度な膜厚となり、セリウム含有シリカ層が母粒子へ強固に結合し、セリウム含有シリカ層に分散した子粒子の脱落が生じにくくなる。
さらにこのような温度範囲で焼成することで、工程1で中間的に生成した水酸化セリウム等は残存し難くなる。この温度が1150℃を超えるとセリアの結晶が異常成長したり、セリウム含有シリカ層が厚くなりすぎたり、母粒子を構成する非晶質シリカが結晶化したり、粒子同士の融着が進むなどの可能性がある。
また、焼成温度範囲を950〜1150℃とすることで、前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にあるセリア系複合微粒子分散液を得やすくなる。これについては、焼成温度がセリアの結晶化度、結晶成長、粒子径及び粒子の形状に影響し、本発明の製造方法の要件においては、焼成温度950℃付近からセリア子粒子形状の非球状化が進行するものと推察される。
通常は焼成時におけるセリア子粒子の粒子成長の際に、(セリウム含有シリカ層からの)セリウムの供給速度が比較的緩慢であるため、セリア子粒子は、球状の結晶に成長し易い。
これは、工程1でのシリカ微粒子(シリカ母粒子)と、セリウム金属塩との調合を室温付近で行った場合に、シリカ母粒子の一部が溶解し、セリウム金属塩に由来するセリウムの一部と反応してセリウムシリケートを生成するので、セリア子粒子の成長に寄与するセリウム量が減少するので、結果として、シリカはセリア子粒子成長の阻害因子となり、セリア子粒子の粒子成長に必要なセリウムの供給速度が緩慢になるものと推察される。
他方、本発明の製造方法の工程1では、シリカ微粒子(シリカ母粒子)と、セリウム金属塩との調合時の温度が0〜8℃の場合、焼成後のセリア子粒子の形状は非球状になり易く、その機構は以下の2通りを推定している。一つはより低温調合なので、前記水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が低下し、セリウム成分に対するシリカ成分の割合が低下することで、セリア子粒子同士の合着を妨げる障壁が小さくなるため、セリア子粒子同士の合着により単結晶の凝集体を形成して非球状になり易いと推察される。もう一方では、調合時のシリカ母粒子の溶解が抑制されることでセリアの供給速度が速いため、セリア子粒子のa,b軸方向のよりもc軸方向の成長が早いことにより異方成長した結果、非球状のセリア子粒子になると推定している。
焼成時にアルカリ金属、アルカリ土類金属、硫酸塩などをフラックス成分として添加してセリアの結晶成長を促進することもできるが、フラックス成分は、研磨基板への金属汚染や腐食の原因となり得る。そのため、焼成時のフラックス成分の含有量は、本発明の複合微粒子分散液を研磨砥粒分散液として適用する用途又は対象材料によっては、前駆体粒子(ドライ)あたり、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、40ppm以下であることが最も好ましい。またフラックス成分は、原料のコロイダルシリカからの持込みを利用したり、調合時にセリウム金属塩の中和に使用するアルカリとして利用しても良いが、調合時にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が共存した場合、シリカ系微粒子の重合が促進され緻密化するため、水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が低下する。さらにシリカ系微粒子の表面がアルカリ金属またはアルカリ土類金属で保護されるため、水酸化セリウム等との反応性が抑制され、セリウム含有シリカ層が形成されない傾向にある。さらに調合中にシリカの溶解が抑制されるため、セリア子粒子中にケイ素原子が固溶し難くなる。
また、このような温度範囲において焼成すると、子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶する。したがって、子粒子に含まれるセリウム原子およびケイ素原子について、セリウム−ケイ素原子間距離をR1とし、セリウム−セリウム原子間距離をR2としたときに、R1<R2の関係を満たすものとなり得る。
工程2では、焼成して得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をする。
ここで、焼成体に湿式で解砕処理を施す前に焼成体を乾式で解砕し、その後、湿式で解砕処理を施してもよい。
乾式の解砕装置としては従来公知の装置を使用することができるが、例えば、アトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等を挙げることができる。
湿式の解砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料としたビーズを挙げることができる。
焼成体を湿式で解砕するときに用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。また、ここでの固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
なお、焼成体(焼成体を乾式解砕してから湿式解砕に供する場合を含む)に湿式解砕を施すに当たっては、溶媒のpHを8.6〜10.8のアルカリ性領域に維持しながら湿式による解砕を行うことが好ましい。焼成体の湿式解砕時のpHがこのようなアルカリ性領域にある場合、焼成体中のシリカ成分を溶解せしめることで解砕の進行が促進されるので、特に粗大粒子は優先的に解砕される。また、解砕された焼成体は、溶媒のpHが高いので負の電荷が付与されて安定化し、再凝集が起こり難くなるので、新たな凝集粒子が生じ難くなり、粗大粒子を殆ど含まなくなるので望ましい。該溶媒のpHが8.6未満の場合、pHがアルカリ性領域より下がるにつれて、徐々に溶媒の負の電位が低下し、不安定になるため、解砕により生じた粒子が安定に存在できず、凝集する傾向が強くなり、粗大粒子が残りやすくなる。また、溶媒のpHが10.8を超える場合、焼成体に含まれるシリカ成分の溶解が過度に促進されるので、粒子の安定性が低下し、凝集粒子が生成し、残留し易くなる。
前記溶媒のpH範囲としては、好適には8.8〜10.2の範囲が推奨される。
また、pHをこの範囲に維持すると、カチオンコロイド滴定を行った場合に、前記式(1)で表される、流動電位変化量(ΔPCD)と、クニックにおけるカチオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が−110.0〜−5.0となる流動電位曲線が得られるセリア系複合微粒子分散液を、最終的により容易に得ることができる。
すなわち、前述の好ましい態様に該当する本発明の分散液が得られる程度に、解砕を行うことが好ましい。前述のように、好ましい態様に該当する本発明の分散液を研磨剤に用いた場合、研磨速度がより向上するからである。これについて本発明者は、本発明の複合微粒子表面におけるセリウム含有シリカ層が適度に薄くなること、及び/又は複合微粒子表面の一部に子粒子が適度に露出することで、研磨速度がより向上し、且つセリア子粒子の脱落を制御できると推定している。さらに解砕中に、セリウム含有シリカ層中のシリカが溶解し再び沈着することで、軟質で易溶解なシリカ層が最外層に形成され、この易溶解性のシリカ層が基板との凝着作用で摩擦力を向上させ研磨速度が向上すると推定している。また、セリウム含有シリカ層が薄いか剥げた状態であるため、子粒子が研磨時にある程度脱離しやすくなると推定している。ΔPCD/Vは、−100.0〜−15.0であることがより好ましく、−100.0〜−20.0であることがさらに好ましい。
なお、工程2のような湿式解砕工程を経ずに、焼成粉をほぐす程度であったり、乾式解砕・粉砕だけ、あるいは湿式解砕であっても所定のpH範囲外の場合は、ΔPCD/Vが−110〜−5の範囲となりにくく、さらに軟質で易溶解性のシリカ層が形成され難い。
工程2において、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合微粒子分散液を得ることが好ましい。
遠心分離処理による分級は、300G以上の相対遠心加速度にて行うことが好ましい。遠心分離処理後、沈降成分を除去し、セリア系複合微粒子分散液を得ることが好ましい。相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
このような遠心加速度とすると、セリア系複合微粒子分散液中に粗大粒子は更に残存し難くなり、その結果、セリア系複合微粒子分散液を用いた研磨材などの研磨用途に使用した際のスクラッチ発生をいっそう低減させることができる。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法の工程2において、焼成体について前記の湿式解砕処理を行い、更に解砕処理後に前記遠心分離処理を行うことにより得られたセリア系複合微粒子分散液は、粗大粒子の残留が極めて僅かであり、そのようなセリア系複合微粒子分散液を研磨用途に適用した場合、研磨対象の基板において、比較的大きなスクラッチの発生を効果的に抑制することが可能となる。
本発明では、上記の製造方法によって得られるセリア系複合微粒子分散液を、更に乾燥させて、セリア系複合微粒子を得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。
このような本発明の製造方法によって、本発明の分散液を得ることができる。
<研磨用砥粒分散液>
本発明の分散液を含む液体は、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液は半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のキズ(スクラッチ)が少ない、基板への砥粒の残留が少ないなどの効果に優れている。
本発明の研磨用砥粒分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の研磨用砥粒分散液に、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
<研磨促進剤>
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩及びこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
<界面活性剤及び/又は親水性化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩及びカリウム塩が好ましい。
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステル及びアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は、何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
本発明の研磨用砥粒分散液が界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
界面活性剤又は親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
<複素環化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の研磨用砥粒分散液に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
<pH調整剤>
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類の様な、塩酸、硝酸などの鉱酸が使用される。
<pH緩衝剤>
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸塩などを使用することができる。
また、本発明の研磨用砥粒分散液の分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の研磨用砥粒分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると必要とする研磨速度に達しない場合がある。逆に固形分濃度が高すぎても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ない。
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第1表に記す。
[成分の分析]
[SiO2含有量およびCeO2含有量の測定]
シリカ系微粒子分散液におけるSiO2含有量について、ヒュームドシリカ又は珪酸ナトリウムを原料とした場合は、シリカ系微粒子分散液に前記と同様の1000℃での灼熱減量法を行い、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。また、アルコキシシランを原料とした場合は、シリカ系微粒子分散液を150℃で1時間乾燥させた後に秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。なお、ここでシリカ系微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
また、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有量は、セリア系複合微粒子分散液に前記と同様の1000℃での灼熱減量法を行い、固形分の質量を求めた後、ICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いて標準添加法によってCe含有率を測定してCeO2質量%を算出し、CeO2以外の固形分の成分はSiO2であるとして、SiO2の含有量を求めた。なお、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有率、CeO2含有率およびシリカ100質量部に対するセリアの質量部は、ここで求めたCeO2含有量およびSiO2含有量に基づいて算出した。なお、前記のとおり、灼熱減量法を用いて、セリア系複合微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
[セリア系複合微粒子またはシリカ系微粒子の成分分析]
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
初めに、セリア系複合微粒子またはセリア系複合微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z−2310)で測定する。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
そして、前述の方法で求めたSiO2の質量に基づいて、シリカdry量に対する各成分の含有率を求めた。
[X線回折法、平均結晶子径の測定]
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液またはシリカ系微粒子を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述の方法によって、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半価全幅を測定し、Scherrerの式により、セリア子粒子の平均結晶子径を求めた。
<平均短径、平均長径および平均粒子径>
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液について、これに含まれるセリア系複合微粒子の平均粒子径は、前述の通り走査型透過電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(STEM像)についての画像解析法によって測定を行った。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子の一部であるセリア子粒子の平均短径(S)、平均長径(D)および平均粒子径についても前述の通り、STEM分析によって30万倍で観察し、それぞれ求めた値をもって、平均短径(S)、平均長径(D)および平均粒子径とした。
また、実施例及び比較例で原料として使用したシリカ微粒子分散液におけるシリカ微粒子(原料シリカ微粒子)の平均粒子径についても前述の通り、STEM分析によって30万倍で観察し画像解析法によって測定を行った。
<平均包絡度>
pH9の試料(複合微粒子分散液、固形分濃度3.1質量%)を遠心分離を使用して固液分離することで溶解シリカを除去した後、乾燥させ、走査型透過電子顕微鏡(例えば日立ハイテクノロジーズ社製S−5500)を用いて、STEM写真の画像データを得る。そして、このSTEM写真の中から無作為に100個の粒子を選ぶ。STEM写真の画像データ(2次電子像、100倍、jpg画像)を、例えば、SEM用画像解析ソフトウェア((株)オリンパス製、Scandium)に読み取らせる。画像上から、特定の領域を解析領域(フレーム)として選択し、この解析領域(フレーム)を2値化処理する。詳細には、RGB値のそれぞれの下限値として153諧調、上限値として255諧調を選択し、これら2つの閾値による2値化を実行する。2値化を実行した解析領域内の粒子を検出し、検出された粒子のうち、複数個の粒子の塊を一つの粒子として検出されたものを削除する。単一粒子と認められた粒子について、粒子の投影像の周長を求める。この手順を100個の粒子について行う。そして、各粒子について、下記式より包絡度を求め、それらを単純平均することで平均包絡度を算出する。
包絡度[(包絡周囲長[A])/(実周囲長[B])]
(セリア系複合微粒子の凸部の頂点を最短の距離をもって結んだときの周囲の長さを包絡周囲長[A]とし、同じくセリア系複合微粒子の輪郭そのものの長さを実周囲長[B]とする。)
<標準偏差および変動係数>
前述の通り、STEM分析を用いて50個の子粒子の平均粒子径を求め、そこから子粒子についての粒子径分布を求め、標準偏差を求めた。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とした。
また、セリア系複合微粒子の半径についても同様に、前述の通りに粒度分布(半径分布)を求め、標準偏差を求めた。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とした。
<比表面積>
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子の比表面積を前述の方法によって測定した。ここで表面積測定装置(マウンテック社製、品番:Mascsorb HM-1220)を用いて行うことができる。
<平均円形度>
セリア系複合微粒子およびシリカ微粒子(原料シリカ微粒子)の各々について、前述の方法で平均円形度を求めた。なお、走査型透過電子顕微鏡として、日立ハイテクノロジーズ社製S−5500を用い、STEM写真の画像データを得て、SEM用画像解析ソフトウェアとして、(株)オリンパス製、Scandiumを用いた。
<粗大粒子数>
セリア系複合微粒子分散液に含まれる粗大粒子数は、Particle sizing system Inc.社製Accusizer 780APSを用いて測定を行った。また測定試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、測定装置に5mLを注入して、以下の条件にて測定を行い、3回測定した後、得られた測定データの0.51μm以上の粗大粒子数の値の平均値を算出した。さらに平均値を1000倍して、セリア系複合微粒子のドライ換算の粗大粒子数とした。なお測定条件は以下の通り。
<System Setup>
・Stir Speed Control / Low Speed Factor 1500 / High Speed Factor 2500
<System Menu>
・Data Collection Time 60 Sec.
・Syringe Volume 2.5ml
・Sample Line Number :Sum Mode
・Initial 2nd-Stage Dilution Factor 350
・Vessel Fast Flush Time 35 Sec.
・System Flush Time / Before Measurement 60 Sec. / After Measurement 60 Sec.
・Sample Equilibration Time 30 Sec./ Sample Flow Time 30 Sec.
[研磨試験方法]
<SiO2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は0.6質量%であり、硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
以下に実施例を記す。なお、単に「固形分濃度」とある場合は、化学種を問わず溶媒に分散した微粒子の濃度を意味する。
[準備工程1]
<シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径113nm)の調製>
最初に次の調製工程を行った。
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a1及び混合液b1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO2固形分濃度19質量%、画像解析法による平均粒子径63nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を9,646.3g得た。
続いて、次の調製工程を行った。
メタノール2,733.3gと正珪酸エチル1,822.2gとを混合し、混合液a2とした。
次に、超純水1,860.7gと29%アンモニア水40.6gとを混合し、混合液b2とした。
次に、超純水59gとメタノール1,208.9gとを混合して敷き水として、前工程で得た平均粒子径63nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液922.1gを加えた。
そして、このシリカ微粒子分散液を含んだ敷き水を撹拌しながら65℃に調整し、そこへ、混合液a2及び混合液b2を、各々18時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を65℃のまま3時間保持して熟成させた後、限外膜、ロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度(SiO2固形分濃度)を19質量%に調整し、3,600gのシリカ微粒子分散液を得た。
得られたシリカ微粒子分散液1,053gに陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK−1BH)114gを徐々に添加し、30分間攪拌し樹脂を分離した。この時のpHは5.1であった。
また、陽イオン交換樹脂による処理を行った後のシリカ微粒子分散液に含まれる粒子のNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率(シリカdry量に対する各成分の含有率)は何れも1ppm以下であった。
このシリカ微粒子分散液は、画像解析法による平均粒子径113nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液であり、前記のとおりイオン交換処理により不純物濃度を著しく低減させた高純度シリカ微粒子分散液であった。
[準備工程2]
<高純度酸性珪酸液の調製>
珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.06質量%、Na2O濃度7.97質量%)に純水を加えて、珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度5質量%)を得た。
得られた珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に、空間速度3.0h-1で通液させ、酸性珪酸液18kg(シリカ濃度4.6質量%、pH2.7)を得た。次いで、得られた酸性珪酸液18kgを6Lのキレート型イオン交換樹脂(三菱化学社製CR−11)に、空間速度3.0h-1で通液させ、高純度酸性珪酸液18kg(シリカ濃度4.5質量%、pH2.7)を得た。
<実施例1>
上記の準備工程1によって得られたシリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径113nm)に超純水を加えて、SiO2固形分濃度3質量%の分散液6,000g(SiO2 dry180g)(以下、A液ともいう)を得た。
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO2換算で3.0質量%の硝酸セリウム水溶液(以下、B液ともいう)を得た。
次に、A液(6,000g)を3℃に保ち、撹拌しながら、ここへB液(7,186.7g、CeO2 dry215.6g)を18時間かけて添加した。この間、液温を3℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH8.6から8.8を維持するようにした。そして、添加終了後に、液温3℃で4時間熟成を行った。なお、B液の添加中および熟成中は調合液にエアーを吹き込みながら調合を行い、酸化還元電位を100〜200mVに保った。
その後、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が4.7質量%、pHが8.8(25℃にて)、電導度が44μs/cm(25℃にて)であった。
次に、得られた前駆体粒子分散液を120℃の乾燥機中で16時間乾燥させた後、1030℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉体(焼成体)を得た。
焼成後に得られた粉体(焼成体)100gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9.2に調整した後、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)にて湿式解砕(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)を120分行った。
そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は3.1質量%で重量は1115gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。
さらに解砕した分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、
1700Gで102秒処理し、処理して得られた分散液から、沈降成分以外の成分(セリア系複合微粒子分散液)を回収した。こうして得られたセリア系複合微粒子分散液の平均粒子径を測定した。測定方法は前述の通りの画像解析法である。平均粒子径の測定結果を第1表に示す。
次に、得られたセリア系複合微粒子分散液を用いて研磨試験を行った。
なお、実施例で調製したセリア系複合微粒子分散液、セリア子粒子(セリア微粒子)、原料であるシリカ微粒子の特徴ないし配合等を第1表に記した。比較例についても同様である。
また、実施例でのセリア系複合微粒子分散液の製造方法に係る条件を第1表に記した。比較例についても同様である。
なお、特には原料としたシリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子(母粒子)の平均粒子径を第1表に示す。また、セリア系複合微粒子分散液に含まれるシリカ含有率とセリア含有率(及びシリカ100質量部に対するセリアの質量部)、焼成温度、セリア系複合微粒子の平均結晶子径、結晶型、比表面積、セリア系複合微粒子の平均粒子径及びその短径/長径比、セリア系複合微粒子の包絡度及びその平均円形度、研磨性能の測定結果を第1表に示す。以降の実施例、比較例も同様である。
また、実施例1で得られたセリア系複合微粒子分散液に含まれるセリア系複合微粒子のX線回折法によって測定した。得られたX線回折パターンを図2に示す。図2に示すように、X線回折パターンには、かなりシャープなCerianiteの結晶パターンが観察された。
<実施例2>
実施例1における前駆体粒子分散液の乾燥後の焼成処理を、1107℃のマッフル炉を用いて2時間の焼成とした他は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
<比較例1>
21.7 gの硝酸セリウム(III)(99%、Sigma-Aldrich)を780gの超純水に加えて溶解し、CeO2換算で1.1質量%の硝酸セリウム水溶液を得た。この水溶液に室温で、45質量%のシリカゾル(40?50nmの粒径を有するSiO2, Levasil 100/45 )を65.7g滴下し、安定した分散液を得た。激しく撹拌しながら 30.6gのトリエチルアミンを上記の分散液に2回に分けて等量を加えた。 得られた混合物のpHは10.7であった。分散液の色は紫色から、開放した状態で室温で24時間撹拌後に黄白色に変わり、その時のpHは7.5であった。遠心分離により精製し、次いで所望のスラリーを得るために超純水に再分散した。(焼成なし)。
本発明の分散液に含まれるセリア系複合微粒子は、粗大粒子を含まないため低スクラッチで、かつ高研磨速度である。よって、本発明の分散液を含む研磨用砥粒分散液は、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。具体的には、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用として好ましく用いることができる。

Claims (6)

  1. 下記[1]から[6]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液。
    [1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
    [2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5〜1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5〜0.95の範囲であること。
    [3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。
    [4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
    [5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜30nmであること。
    [6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3〜0.85の範囲にあること。
  2. 前記セリア系複合微粒子の平均円形度が0.6以上である請求項1記載のセリア系複合微粒子分散液。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
  4. シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする請求項3に記載の研磨用砥粒分散液。
  5. 下記の工程1および工程2を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
    工程1:下記1)〜2)の特徴を有するシリカ微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜8℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
    1)平均粒子径が30〜200nmであること。
    2)短径/長径比が0.3〜0.85の範囲にあること。
    工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
  6. 前記工程2が、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することにより前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程である、請求項5に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
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