JP2019089670A - セリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 - Google Patents
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Abstract
Description
シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低い事が望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法等が提案されている。
これは、焼成工程を含むセリア粒子の製造方法(焼成によりセリア粒子の結晶化度が高まる)に比べて、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製法は、焼成工程を含まず、液相(硝酸第一セリウムを含む水溶液)から酸化セリウム粒子を結晶化させるだけなので、生成する酸化セリウム粒子の結晶化度が相対的に低く、また、焼成処理を経ないため酸化セリウムが母粒子と固着せず、酸化セリウムが研磨基材の表面に残留することが主要因であると、本発明者は推定している。
また、これら文献に記載されているセリア粒子は母粒子上に付着されたものであり、強く固着されていないので母粒子から脱落しやすい。
さらに、特許文献2の記載の真球状のシリカ母粒子上に結晶性セリア粒子を形成した砥粒を用いて研磨すると、セリア粒子の研摩時の機械的作用と同時に起こる化学的な反応によりシリカ膜の研磨速度は高いものの、高い圧力条件下では、セリア結晶が脱落や磨減、崩壊により、基板とセリアの接触面積が低下し、研磨速度が低くなる恐れがある。
本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)下記[1]から[6]の特徴を備え、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあり、平均粒子径が50〜350nmであるセリア系複合微粒子を含む、セリア系複合微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記子粒子の粒子径分布における変動係数(CV値)が14〜60%であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜25nmであること。
[6]前記母粒子は、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあること。
(2)上記(1)に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
(3)前記研磨用砥粒分散液が、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする上記(2)に記載の研磨用砥粒分散液。
(4)下記の工程1〜工程3を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
工程1:短径/長径比が0.1以上、1.0未満であるシリカ系微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜20℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,200℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして焼成体解砕分散液を得る工程。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合微粒子分散液を得る工程。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法においては、セリア系複合微粒子に含まれる不純物を著しく低減させ、高純度化させることも可能である。本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法の好適態様によって得られる、高純度化されたセリア系複合微粒子分散液は、不純物を含まないため、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。
また、本発明のセリア系複合微粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した場合、半導体デバイス表面の平坦化に有効であり、特にはシリカ絶縁膜が形成された基板の研磨に好適である。
本発明は、下記[1]から[6]の特徴を備え、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあり、平均粒子径が50〜350nmであるセリア系複合微粒子を含む、セリア系複合微粒子分散液である。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記子粒子の粒子径分布における変動係数(CV値)が14〜60%であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜25nmであること。
[6]前記母粒子は、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあること。
また、このようなセリア系複合微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
工程1:短径/長径比が0.1以上、1.0未満であるシリカ系微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜20℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,200℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして焼成体解砕分散液を得る工程。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合微粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の複合微粒子について説明する。
本発明の複合微粒子は、その外形が非球状ないし異形状であり、かつ、本発明の複合微粒子のコアとなる母粒子部分が非球状で異形度の高い構造をとるものである。
本発明の複合微粒子の外形が非球状ないし異形なので、本発明の複合微粒子を研磨用途に適用した場合、本発明の複合微粒子と、研磨基板との複数の接触点において応力集中を受けやすいものであるが、本発明の複合微粒子は、母粒子部分も外形と同様に非球状構造をとり、構造上強靭であるので、何れの接触点においても良好な研磨性能を発揮することが可能である。
更には、本発明の複合微粒子は、Feret径が長い粒子なので、研磨基板との接触点も多いので、高研磨速度の発揮が可能となる。
本発明の製造方法においては、原料として非球状ないし異形状のシリカ系微粒子を採用しており、これにより非球状ないし異形状のセリア系複合微粒子をより容易に得ることが可能となった。本発明の複合微粒子分散液の製造方法は、特に短径/長径比の値が、より小さいセリア系複合微粒子を得ることに適したものといえる。
図1に示すように、本発明の複合微粒子20は、母粒子10と、母粒子10の表面上のセリウム含有シリカ層12と、セリウム含有シリカ層12の内部に分散している子粒子14とを有する。なお、図1中の▲は、後述するSTEM−EDS分析を行う測定点X〜Zの例示である。
例えば、正珪酸四エチル(Si(OC2H5)4)にアンモニアを添加し、加水分解・縮重合の操作を行うことで得たシリカ系微粒子分散液(シリカゾル)あるいは水硝子の中和、脱塩、脱不純物の操作を行うことで得たシリカ系微粒子分散液に、セリウム塩の溶解液を添加しながら、並行してアルカリを添加すると、セリウム塩の溶解液が中和される。そうすると、シリカ系微粒子の表面のシラノール基と、セリウム塩の溶解液の中和による生成物(水酸化セリウム等)とが反応し、一例として、Ce(OH)・Si(OH)様の化合物を経由して、シリカ系微粒子の表面にCeO2・SiO2・SiOH等およびCeO2超微粒子(粒径が2.5nm以上、10nm未満の範囲)を含む層(以下「CeO2超微粒子含有層」ともいい、CeO2超微粒子とセリウムシリケートからなる層)が形成される。焼成工程において、セリウムシリケートから分相したセリウム原子がCeO2超微粒子に沈着するため、シリカ系微粒子の表面に形成されるCeO2超微粒子は粒子成長する。必要とする研磨速度を達成するためのセリア子粒子の結晶の大きさ(10〜25nm)とするためには、調合で得た結晶子径が2.5nm未満である場合、より高温焼成が必要とされる。しかし、高温で処理されると分相で生じたシリカが接着剤となって、当該発明の単結晶性セリア系複合微粒子を、後工程における解砕によって得ることができない。
そして、その後、乾燥し、950〜1200℃程度で焼成すると、前記CeO2超微粒子含有層の内部に存在している、粒径が2.5nm以上、10nm未満のCeO2超微粒子が、セリウムシリケートに含まれているセリウム原子を取り込んで粒径を成長させ、最終的には平均結晶子径が10〜25nm程度にまで成長した結晶性セリア粒子(セリア子粒子)となる。またセリウムシリケート(例えばCeO2・SiO2・SiOH)は、熱分解や熱拡散等によりセリウム含有シリカ層となる。そのため、結晶性セリア粒子はセリウム含有シリカ層内で分散した状態で存在することとなる。また、このような機構によって形成された結晶性セリア粒子(子粒子)は粒子どうしの合着が生じ難い。なお、セリウムシリケート層に含まれるセリウムの一部は結晶性セリア粒子になりきれず残存するため、セリウム含有シリカ層が形成される。
ただし、本発明の複合微粒子の断面についてSTEM−EDS分析を行い、CeとSiの元素濃度を測定すると、図1に示した構造であることを確認することができる。
したがって、STEM−EDS分析を行って得られる元素マップにおいて、本発明の複合微粒子における母粒子10とセリウム含有シリカ層12とは、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインによって、区別することができる。また、STEM−EDS分析を行って得られる元素マップにおいて、本発明の複合微粒子におけるセリウム含有シリカ層12と子粒子14とは、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が50%となるラインによって、区別することができる。
本発明の複合微粒子における母粒子について説明する。
前述の通り、本発明の複合微粒子についてSTEM−EDS分析を行い、図1に示した本発明の複合微粒子の断面におけるCeとSiとの元素濃度を測定した場合に、母粒子はCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%未満となる部分である。
平均粒子径が30〜330nmの範囲にある母粒子を原料として用いて得られる本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨に伴うスクラッチの発生が少なくなる。母粒子の平均粒子径が30nm未満の場合、その様な母粒子を用いて得られた分散液を研磨剤として用いると、研磨レートが実用的な水準に達さない傾向がある。また、母粒子の平均粒子径が330nmを超える場合も同じく研磨レートが実用的な水準に達さない傾向があり、研磨対象の基板の面精度低下を招く傾向もある。なお、母粒子は、単分散性を示すものがより好ましい。
初めにSTEM−EDS分析によって80万倍で観察し、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインを特定することで母粒子を特定する。次に、その母粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその母粒子の粒子径とする。
このようにして50個の母粒子について粒子径を測定し、これを単純平均して得た値を平均粒子径とする。
本発明の複合微粒子における母粒子の短径/長径比は、次のように測定するものとする。
初めにSTEM−EDS分析によって80万倍で観察し、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインを特定することで母粒子を特定する。次に、その母粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との比(DS/DL)を求め、これをその母粒子の短径/長径比とする。
短径/長径比の範囲は、0.25以上、0.65以下であることが好ましい。
また、本発明の分散液を乾燥させ、樹脂包埋した後にPtによるスパッタコーティングを施し、従来公知の収束イオンビーム(FIB)装置を用い断面試料を作成する。例えば作成した断面試料を従来公知のTEM装置を用い、高速フーリエ変換(FFT)解析を用いてFFTパターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカの回折図は現れない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、別の方法として同様に作成し断面試料について、従来公知のTEM装置を用い、母粒子の原子配列による格子縞の有無を観察する方法が挙げられる。結晶質であれば結晶構造に応じた格子縞が観察され、非晶質であれば格子縞は観察されない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
例えば、前記母粒子において、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ5000ppm以下であることが望ましく、1000ppm以下であることが望ましく、100ppm以下であることが好ましい。さらに50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることがよりいっそう好ましい。また、前記母粒子におけるU、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
dry量に対する含有率とは、対象物(母粒子、本発明の複合微粒子または後述するシリカ系微粒子)に含まれる固形分の質量に対する測定対象物(特定不純物群1または特定不純物群2)の重量の比(百分率)の値を意味するものとする。なお、母粒子の不純分は、汚染等による混入が無ければ、シリカ系微粒子の不純分と概ね一致する。
このようなシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、イオン交換処理を行って前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも前記特定不純物群1と前記特定不純物群2が合計で数ppmから数百ppm残留する。そのため水硝子を原料としたシリカ系微粒子を用いる場合は、酸処理等で不純物を低減させることも行われている。
これに対し、アルコキシシランを原料として合成したシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、通常、前記特定不純物群1における各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、前記特定不純物群2における各元素と各陰イオンの含有率は、それぞれ20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びTh:ICP−MS(誘導結合プラズマ発光分光質量分析)
・Cl:電位差滴定法
・NO3、SO4及びF:イオンクロマトグラフ
本発明の複合微粒子において結晶性セリアを主成分とする子粒子(以下、「セリア子粒子」ともいう)は、前記母粒子上に配されたセリウム含有シリカ層に分散している。
また、本発明の複合微粒子における母粒子は短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲であり、その表面に凹凸を備えることが好ましい。すなわち、凹部と凸部を備えることが好ましい。そして、本発明の複合微粒子において子粒子は、次の(a)、(b)または(c)の形態が主として存在する。
(a)母粒子の凸部に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して、結合した形態。
(b)母粒子の凸部と凹部との両方に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して、結合した形態。
(c)母粒子の凹部に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して結合した形態
これら(a)、(b)または(c)の形態が同時に存在していることが望ましい。なぜならば、本発明の分散液を研磨用砥粒分散液として使用した場合、母粒子が段差を有しているため、研磨時は最初に(a)の形態の子粒子が、研磨対象の基板と接触して研磨が行われる。仮に(a)の形態の子粒子が研磨圧力により外れや磨滅、破壊が生じても次に(b)、そして(c)の形態のセリア子粒子が研磨対象の基板と接触し、接触面積を高く保つことができるため、効率よく研磨速度が安定した研磨が行われるからである。
後述する本発明の製造方法によると、これら(a)、(b)または(c)の形態の子粒子が同時に存在している本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得やすい。
前記セリア子粒子は、前記セリウム含有シリカ層中に埋没するものもあれば、セリウム含有シリカ層から部分的に露出するものもある。
初めに本発明の複合微粒子をSTEM−EDS分析によって80万倍で観察し、Ceモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が50%となるラインを特定することで子粒子を特定する。次に、その子粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをその子粒子の粒子径とする。
このようにして100個以上の子粒子について粒子径を測定し、粒子径分布を得ることができる。
子粒子の平均粒子径が25nmを超える場合、工程2において、そのようなセリア子粒子を有した前駆体粒子は、焼成後に焼結や凝結が生じ解砕も困難となる傾向がある。このようなセリア系複合微粒子分散液は、研磨用途に使用しても研磨対象でのスクラッチ発生を招き、好ましくない。子粒子の平均粒子径が10nm未満の場合、同じく研磨用途に使用すると、実用的に充分な研磨速度を得難い傾向がある。
また、子粒子はセリウム含有シリカ層中に埋没していてよいし、セリウム含有シリカ層の外部へ部分的に露出していてもよいが、子粒子がセリウム含有シリカ層に埋没した場合は、セリア系複合微粒子の表面はよりシリカ表面に近くなるため、保存安定性及び研磨安定性が向上し、さらに研磨後の基板上に砥粒残りが少なくなることから、子粒子はセリウム含有シリカ層に埋没している方が望ましい。
前記子粒子が結晶性セリアを主成分とすることは、例えば、本発明の分散液を乾燥させた後、得られた固形物を乳鉢を用いて粉砕する等して本発明の複合微粒子を得た後、これを例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)を用いてX線分析し、得られたX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、前記子粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ない、あるいはセリア結晶中に固溶しているため、X線回折による検出範囲外となる。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半値全幅を測定し、下記のScherrerの式により、平均結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:平均結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(1.5419オングストローム、Cuランプ)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
従来、砥粒としてセリア粒子を用いてシリカ膜付基板やガラス基材を研磨すると、他の無機酸化物粒子を用いた場合に比べて、特異的に高い研磨速度を示すことが知られている。セリア粒子がシリカ膜付基板に対して、特に高い研磨速度を示す理由の一つとして、セリア粒子中に含まれる三価のセリウムが被研磨基板上のシリカ被膜に対して、高い化学反応性を持つことが指摘されている。酸化セリウム中のセリウムは三価と四価の価数となりうるが、半導体用の研磨材として用いられる純度の高い酸化セリウム粒子は、炭酸セリウムなどの高純度なセリウム塩を700℃の高温で焼成するプロセスを経ている。そのため、焼成型セリア粒子中のセリウムの価数は四価を主としており、例え三価のセリウムを含んでいたとしてもその含有量は十分でない。
本発明の複合微粒子の好適態様は、その外表面側に存在する子粒子(セリア微粒子)において、Si原子がCeO2結晶に侵入型の固溶をしていると見られる。Si原子の固溶により、CeO2結晶の結晶歪みが生じることで、高温で焼成しても酸素欠陥が多くなりSiO2に対して化学的に活性な三価のセリウムが多く生じ、CeO2の化学反応性を助長する結果、上記の高い研磨速度を示すものと推察される。また三価のセリウム含有量を増加させるために、LaやZrなどをドープさせても構わない。
なお、上記のR1、R2等の、セリウム原子およびケイ素原子の原子間距離は、後述する実施例に説明する方法で測定して得た平均原子間距離を意味するものとする。
本発明の複合微粒子は、前記母粒子の表面上にセリウム含有シリカ層を有する。そして、セリウム含有シリカ層の内部に子粒子が分散している。
なお、セリウム含有シリカ層の平均の厚さは、本発明の複合微粒子の母粒子の中心から最外殻まで、任意の12箇所に直線を引き、前述のようにSTEM−EDS分析を行って得た元素マップから特定されるCeモル濃度とSiモル濃度との合計に対するCeモル濃度の比(百分率)(Ce/(Ce+Si)×100)が3%となるラインと、本発明の複合微粒子の最外殻との距離(母粒子の中心を通る線上の距離)を測定し、それらを単純平均して求めるものとする。なお、母粒子の中心は、前述の長軸と短軸との交点を意味するものとする。
このような構造により、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高く、面精度やスクラッチの悪化が少ないと考えられる。
なお、本発明の分散液において、シリカの存在する態様は多様であり、本発明の複合微粒子を構成しておらず、溶媒中に分散又は溶解したり、本発明の複合微粒子の表面上に付着した状態で存在している場合もある。
本発明の複合微粒子について説明する。
本発明の複合微粒子は、前述のように、[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とし、[2]前記子粒子の粒子径分布における変動係数(CV値)が14〜40%であり、[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出され、[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜25nmであり、[6]前記母粒子は、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にある。
そして、本発明の複合微粒子は、さらに、[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316であるという特徴を備えている、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあり、平均粒子径50〜350nmのセリア系複合微粒子である。
なお、上記のシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比を算定する場合の対象となるシリカとは、本発明の複合微粒子に含まれる全てのシリカ(SiO2)を意味する。従って、母粒子を構成するシリカ成分、母粒子の表面に配されたセリウム含有シリカ層に含まれるシリカ成分、および子粒子に含まれ得るシリカ成分の総量を意味する。
次に、所定量の本発明の複合微粒子に含まれるセリウム(Ce)の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、酸化物質量%(CeO2質量%等)に換算する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO2以外の成分はSiO2であるとして、SiO2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、シリカとセリアの質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したシリカ源物質とセリア源物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやシリカが溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやシリカの使用量と分析値が良い一致を示す。
本発明の複合微粒子の短径/長径比は特定範囲であるため、本発明の分散液を研磨用途に使用する場合、被研磨基板に対する研磨レート向上を高めることができ、同時に、被研磨基板上の表面粗さを低くすることができる。
まず、透過型電子顕微鏡により、本発明の複合微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。これより、短径/長径比(DS/DL)を求める。そして、写真投影図で観察される任意の50個の粒子において、それぞれの複合微粒子の短径/長径比(DS/DL)を求め、その平均値を複合微粒子の短径/長径比の値とした。
連結型であると基板との接触面積を多くとることができるため、研磨エネルギーを効率良く基板へ伝えることができる。そのため、研磨速度が高い。
なお、前記粒子連結型粒子とは、粒子間に再分散できない程度の化学結合が生じて粒子が連結してなるもの(凝結粒子)を意味する。また、単粒子とは、複数粒子が連結したものではなく、粒子のモルホロジーに関係なく凝集していないものを意味する。
ここで粒子連結型のものは、通常、画像解析法で測定された短径/長径比は0.2以上、0.7以下となる。
なお、本発明の複合微粒子の形状は、格別に制限されるものではなく、粒子連結型粒子であっても、単粒子型(非連結粒子)であってもよく、通常は両者の混合物である。
試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、5mlを採取し、これを従来公知の粗大粒子数測定装置に注入する。そして、0.51μm以上の粗大粒子の個数を求める。この測定を3回行い、単純平均値を求め、その値を1000倍して、0.51μm以上の粗大粒子数の値とする。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
本発明の複合微粒子の平均粒子径は、画像解析法で測定された平均粒子径の個数平均値を意味する。
画像解析法による平均粒子径の測定方法を説明する。透過型電子顕微鏡により、本発明の複合微粒子を倍率30万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これを複合微粒子の平均粒子径とする。
このようにして50個以上の複合粒子について平均粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出する。
また、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群2の各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。本発明の複合微粒子における特定不純物群1及び前記特定不純物群2それぞれの元素の含有率を低減させる方法は、前述の通りである。
なお、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群1および前記特定不純物群2の各々の元素の含有率は、前述の母粒子に含まれる前記特定不純物群1および前記特定不純物群2を測定する場合と同じ方法によって測定することができる。
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
ΔPCD/V=(I−C)/V・・・式(1)
C:前記クニックにおける流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記クニックにおける前記カチオンコロイド滴定液の添加量(ml)
また、クニックとは、カチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線において急激に流動電位が変化する点(変曲点)である。そして変曲点における流動電位をC(mV)とし、変曲点におけるカチオンコロイド滴定液の添加量をV(ml)とする。
流動電位曲線の開始点とは、滴定前の本発明の分散液における流動電位である。具体的にはカチオンコロイド滴定液の添加量が0である点を開始点とする。この開始点における流動電位をI(mV)とする。
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は以下に説明する工程1〜工程3を備える。
工程1ではシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を用意する。
なお、本明細書では「工程1」を「調合工程」という場合もある。
このシリカ系微粒子分散液におけるシリカ系微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基にそれぞれ算出した値をもって平均粒子径とすることができる。具体的な測定方法は、前述の本発明の複合微粒子における平均粒子径の測定方法と同様である。
このシリカ系微粒子分散液におけるシリカ系微粒子の短径/長径比は、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基にそれぞれ算出した値をもって短径/長径比とすることができる。具体的な測定方法は、前述の本発明の複合微粒子における短径/長径比の測定方法と同様である。
具体的には、原料であるシリカ系微粒子分散液中のシリカ系微粒子として、次の(a)と(b)の条件を満たすものが好適に使用される。
(a)Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
なお、このような前駆体粒子であっても、焼成温度を1200℃以上とすることでセリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とすることは可能であるが、この場合は、セリウム含有シリカ層は形成されずにシリカ被膜が形成され、このシリカ被膜がセリア子粒子を強固に被覆する傾向が強まるために、解砕が困難となる点で支障がある。そのため、反応温度を0〜20℃に保ち、液相でのシリカとセリアの反応を適度に抑えることで、乾燥後の前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の平均結晶子径を2.5nm以上にでき、解砕しやすい粒子となる。さらに乾燥後の平均結晶子径が大きいため、セリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とするための焼成温度を低くすることができ、焼成により形成されるセリウム含有シリカ層の厚みが過剰に厚膜化せず、解砕が容易となる。
さらに、酸化還元電位を所定の範囲に調整しない場合は、調合工程で生成したCeO2超微粒子は結晶化しにくい傾向にあり、結晶化していないCeO2超微粒子は調合後の加熱、熟成によっても結晶化が促進されない。そのため工程2の焼成において所定サイズに結晶化させるためには、高温での焼成が必要となり、解砕が困難になる。
調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が2.5nm未満であると、焼成後のセリア粒子径を10nm以上とするために、焼成温度を高くする必要があり、その場合、セリウム含有シリカ層が母粒子を強固に被覆してしまい、解砕が困難となる可能性がある。溶解されやすいシリカ系微粒子は、100℃以上で乾燥させた後に原料に供すると溶解性を抑制することができる。
酸化還元電位を上記の範囲内に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアー、酸素及びオゾンを吹き込む方法が挙げられる。これらの方法を行わない場合は、酸化還元電位は負であったり50mV以下になる傾向にある。
すなわち、工程1では、温度0〜20℃にて処理を行うが、その後に、温度20℃超98℃以下に変更して処理を行って前記前駆体粒子分散液を得ることが好ましい。
このような工程1を行うと、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得やすいからである。
なお、温度を20℃超98℃以下として処理する場合のpHおよび酸化還元電位の好適値、調整方法等は、温度0〜20℃にて処理する場合と同様とする。
このような工程1を行うと、子粒子の粒子径分布における変動係数が好適値である本発明の複合微粒子を含む本発明の分散液を得やすいからである。
なお、温度を20℃超98℃以下として処理する場合のpHおよび酸化還元電位の好適値、調整方法等は、温度0〜20℃にて処理する場合と同様とする。
このように調合中に温度を変化させて調合した場合であっても、温度が0〜20℃にて調合が行われる工程が含まれていれば、複合微粒子は前述と同様の生成機構となる。
また、反応温度を2段階以上で行う場合の0〜20℃で反応させる工程でのセリウム金属塩の添加量は、セリウム金属塩の全添加量に対して10〜90質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を超える場合は、サイズの大きい(または小さい)CeO2超微粒子およびセリア子粒子割合が少なくなるため、粒度分布があまり広くならないからである。
工程2では、前駆体粒子分散液を乾燥させた後、950〜1,200℃で焼成する。
なお、好適には、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とすることが推奨される。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とした場合、表面活性を抑制できるからである。
またフラックス成分は、原料のコロイダルシリカからの持込みを利用したり、調合時にセリウム金属塩の中和に使用するアルカリとして利用しても良いが、調合時にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が共存した場合、シリカ系微粒子の重合が促進され緻密化するため、水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が低下する。さらにシリカ系微粒子の表面がアルカリ金属またはアルカリ土類金属で保護されるため、水酸化セリウム等との反応性が抑制され、セリウム含有シリカ層が形成されない傾向にある。さらに調合中にシリカの溶解が抑制されるため、セリア子粒子中にケイ素原子が固溶し難くなる。
ここで、焼成体に湿式で解砕処理を施す前に焼成体を乾式で解砕し、その後、湿式で解砕処理を施してもよい。
湿式の解砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料としたビーズを挙げることができる。
焼成体を湿式で解砕するときに用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。また、焼成体解砕分散液の固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
すなわち、前述の好ましい態様に該当する本発明の分散液が得られる程度に、解砕を行うことが好ましい。前述のように、好ましい態様に該当する本発明の分散液を研磨剤に用いた場合、研磨速度がより向上するからである。これについて本発明者は、本発明の複合微粒子表面におけるセリウム含有シリカ層が適度に薄くなること、及び/又は複合微粒子表面の一部に子粒子が適度に露出することで、研磨速度がより向上し、且つセリア子粒子の脱落を制御できると推定している。さらに解砕中に、セリウム含有シリカ層中のシリカが溶解し再び沈着することで、軟質で易溶解なシリカ層が最外層に形成され、この易溶解性のシリカ層が基板との凝着作用で摩擦力を向上させ研磨速度が向上すると推定している。また、セリウム含有シリカ層が薄いか剥げた状態であるため、子粒子が研磨時にある程度脱離しやすくなると推定している。ΔPCD/Vは、−100.0〜−15.0であることがより好ましく、−100.0〜−20.0であることがさらに好ましい。
なお、工程2のような湿式解砕工程を経ずに、焼成粉をほぐす程度であったり、乾式解砕・粉砕だけ、あるいは湿式解砕であっても所定のpH範囲外の場合は、ΔPCD/Vが−100.0〜−15の範囲となりにくく、さらに軟質で易溶解性のシリカ層が形成され難い。
工程3では、工程2において得られた前記焼成体解砕分散液について、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去し、セリア系複合微粒子散液を得る。
具体的には、前記焼成体解砕分散液について、遠心分離処理による分級を行う。遠心分離処理における相対遠心加速度は300G以上とする。遠心分離処理後、沈降成分を除去し、セリア系複合微粒子分散液を得ることができる。相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
本発明の分散液を含む液体は、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸塩などを使用することができる。
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第1表〜第3表に記す。
[SiO2含有量の測定]
シリカ系微粒子分散液におけるSiO2含有量について、ヒュームドシリカ又は珪酸ナトリウムを原料とした場合は、シリカ系微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。また、アルコキシシランを原料とした場合は、シリカ系微粒子分散液を150℃で1時間乾燥させた後に秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。なお、ここでシリカ系微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
また、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有量は、セリア系複合微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い、固形分の質量を求めた後、後述するAl〜Th等の含有率を測定する場合と同様に、ICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いて標準添加法によってCe含有率を測定してCeO2質量%を算出し、CeO2以外の固形分の成分はSiO2であるとして、SiO2の含有量を求めた。なお、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有率、CeO2含有率およびシリカ100質量部に対するセリアの質量部は、ここで求めたCeO2含有量およびSiO2含有量に基づいて算出した。なお、ここでセリア系複合微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
以下に説明する特定不純物群1および特定不純物群2の含有率の測定では、このようにして求めたSiO2の質量に基づいて、シリカdry量に対する各成分の含有率を求めた。
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
初めに、セリア系複合微粒子またはセリア系複合微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z−2310)で測定する。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
そして、前述の方法で求めたSiO2の質量に基づいて、シリカdry量に対する各成分の含有率を求めた。
<Cl>
セリア系複合微粒子またはセリア系複合微粒子分散液からなる試料20g(固形分20質量%に調整したもの)にアセトンを加え100mlに調整し、この溶液に、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT−610)で分析を行う。
別途ブランク測定として、アセトン100mlに酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で滴定を行った場合の滴定量を求めておき、試料を用いた場合の滴定量から差し引き、試料の滴定量とした。
そして、前述の方法で求めたSiO2の質量に基づいて、シリカdry量に対する各成分の含有率を求めた。
セリア系複合微粒子またはセリア系複合微粒子分散液からなる試料5g(固形分20質量%に調整したもの)を水で希釈して100mlにおさめ、遠心分離機(日立製 HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、沈降成分を除去して得た液をイオンクロマトグラフ(DIONEX製 ICS−1100)にて分析した。
そして、前述の方法で求めたSiO2の質量に基づいて、シリカdry量に対する各成分の含有率を求めた。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液またはシリカ系微粒子を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述の方法によって、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半価全幅を測定し、Scherrerの式により、平均結晶子径を求めた。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液について、これに含まれるセリア系複合微粒子の平均粒子径と短径/長径比は、前述の画像解析法によって測定を行った。
即ち、セリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子の平均粒子径及び短径/長径比は、前述の通り、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基にそれぞれ算出した値をもって、平均粒子径又は短径/長径比とした。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子の一部である母粒子の平均粒子径と短径/長径比についても前述の通り、STEM−EDS分析によって80万倍で観察し、それぞれ求めた値をもって、平均粒子径又は短径/長径比とした。
また、実施例及び比較例で原料として使用したシリカ微粒子分散液におけるシリカ微粒子の平均粒子径と短径/長径比についても前述の通り、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基にそれぞれ算出した値をもって、平均粒子径又は短径/長径比とした。なお、実施例4については、シリカ微粒子の平均粒子径は測定が不可能だった。また、実施例4の短径/長径比については、目視により非球状(短径/長径比の値が1未満)であることを確認した。比較例1については、シリカ微粒子の平均粒子径を動的光散乱法により測定し、短径/長径比については、前述の通り、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影して得た写真投影図を基に算出した値をもって短径/長径比とした。
セリア系複合微粒子分散液に含まれる粗大粒子数は、Particle sizing system Inc.社製Accusizer 780APSを用いて測定を行った。また測定試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、測定装置に5mLを注入して、以下の条件にて測定を行い、3回測定した後、得られた測定データの0.51μm以上の粗大粒子数の値の平均値を算出した。さらに平均値を1000倍して、セリア系複合微粒子のドライ換算の粗大粒子数とした。なお測定条件は以下の通り。
<System Setup>
・Stir Speed Control / Low Speed Factor 1500 / High Speed Factor 2500
<System Menu>
・Data Collection Time 60 Sec.
・Syringe Volume 2.5ml
・Sample Line Number :Sum Mode
・Initial 2nd-Stage Dilution Factor 350
・Vessel Fast Flush Time 35 Sec.
・System Flush Time / Before Measurement 60 Sec. / After Measurement 60 Sec.
・Sample Equilibration Time 30 Sec./ Sample Flow Time 30 Sec.
<SiO2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は0.6質量%であり、硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。
次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さRa)を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、第3表には表面粗さを記載した。
なお研磨傷の観察は、光学顕微鏡を用いて絶縁膜表面を観察することで行った。
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は9質量%であり、硝酸を添加してpHを2.0に調整した。
アルミハードディスク用基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板負荷0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨スラリーを20ml/分の速度で5分間供給して研磨を行い、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Maicro―Max)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cm2に相当する研磨処理された基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計し、次の基準に従って評価した。
線状痕の個数 評価
50個未満 「非常に少ない」
50個から80個未満 「少ない」
80個以上 「多い」
少なくとも80個以上で総数をカウントできないほど多い 「※」
[シリカ系微粒子分散液の調製]
ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL50)300gにイオン交換水3986gを加え、φ0.25mmの高純度シリカビーズ(大研化学工業株式会社製、アシザワファインテック社製ビーズミルLMZ06)を用い、湿式解砕、粉砕を行い、固形分濃度7質量%のシリカ微粒子分散液4286gを得た。
上記得られたシリカ系微粒子分散液2571gに超純水3387.7gと3%アンモニア29.7gを加えて混合し、SiO2固形分濃度3質量%の分散液6000g(以下、A−1液ともいう)を得た。このA−1液(シリカ系微粒子分散液)に含まれるシリカ系微粒子の平均粒子径は、32nmであり、前述の画像解析法により短径/長径比を算出すると、0.44であった。また、このシリカ微粒子について、前記測定方法で測定したNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率は何れも1ppm以下であった。この結果を表1に記す。(以下の実施例及び比較例も同様)
その後、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が4.7質量%、pHが8.2(25℃にて)、電導度が19μs/cm(25℃にて)であった
そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は5.9質量%で重量は1148gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを10.1に保った。
なお、原料としたシリカ系微粒子分散液に含まれるシリカ系微粒子(母粒子)の平均粒子径、不純物の含有率を第1表に示す。また、セリア系複合微粒子分散液に含まれるシリカ含有率とセリア含有率(及びシリカ100質量部に対するセリアの質量部)、焼成温度、セリア系複合微粒子の平均結晶子径、結晶型、比表面積、セリア系複合微粒子に含まれる不純物の含有率(シリカdry量に対する各成分の含有率)、セリア系複合微粒子の平均粒子径、短径/長径比、研磨性能の測定結果を第3表に示す。以降の実施例、比較例も同様である。
実施例1において前駆体粒子分散液を120℃の乾燥機中で16時間乾燥させた後の焼成温度を1,130℃として焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
実施例1で用いたヒュームドシリカをAEROSIL200に変更し、更に前駆体粒子分散液を120℃の乾燥機中で16時間乾燥させた後の焼成温度を1,109℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL50)300gにイオン交換水3,986gを加え、湿式解砕と湿式粉砕を行うことなく、分散処理のみ行って固形分濃度7質量%のシリカ微粒子分散液4,286gを得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。なお、シリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径については、前記の透過型電子顕微鏡写真に基づく測定方法では測定ができなかったが、参照用試料の透過型電子顕微鏡写真と比べる限り、粒子径が350nmより短い粒子(350nm未満)だった。また、同じくシリカ微粒子の短径/長径比については、目視によれば何れの粒子も非球状であり、短径/長径比が0.1以上、1.0未満であることは明らかであった。
《シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径60nm)》の調製
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a1及び混合液b1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO2固形分濃度19質量%、動的光散乱法(大塚電子社製PAR−III)により測定された平均粒子径60nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を9,646.3g得た。
メタノール2,733.3gと正珪酸エチル1,822.2gとを混合し、混合液a2とした。
次に、超純水1,860.7gと29%アンモニア水40.6gとを混合し、混合液b2とした。
次に、超純水59gとメタノール1,208.9gとを混合して敷き水として、前工程で得た平均粒子径60nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液922.1gを加えた。
そして、シリカ微粒子分散液を含んだ敷き水を撹拌しながら65℃に調整し、ここへ、混合液a2及び混合液b2を、各々18時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を65℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度(SiO2固形分濃度)を19質量%に調整し、3,600gの高純度シリカ微粒子分散液を得た。
この高純度シリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子は、動的光散乱法(大塚電子社製PAR−III)により測定した平均粒子径が108nmであった。なお、同じくシリカ微粒子の短径/長径比を透過型電子顕微鏡写真に基づいて測定したところ、短径/長径比=1.0であった。また、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率は何れも1ppm以下であった。
得られたシリカ微粒子分散液に超純水を加えて、SiO2固形分濃度3質量%のA−2液6,000gを得た。
そして、B−2液の添加が終了したら、液温を93℃へ上げて4時間熟成を行った。熟成終了後に室内に放置することで放冷し、室温まで冷却した後に、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が7質量%、pHが9.1(25℃にて)、電導度が67μs/cm(25℃にて)であった。
次に、事前に設備洗浄と水運転を行った粉砕機(アシザワファインテック株式会社製、LMZ06)にφ0.25mmの石英ビーズ595gを投入し、さらに上記の懸濁液を粉砕機のチャージタンクに充填した(充填率85%)。なお、粉砕機の粉砕室及び配管中に残留したイオン交換水を考慮すると、粉砕時の濃度は25質量%である。そして、粉砕機におけるディスクの周速を12m/sec、パス回数を25回、及び1パス当たりの滞留時間を0.43分間とする条件で湿式解砕、粉砕を行った。また、解砕、粉砕時の懸濁液のpHを10に維持するように、パス毎に3%アンモニア水溶液を添加した。このようにして、固形分濃度22質量%のシリカ系複合微粒子分散液を得た。
次いで得られた微粒子分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度675Gで1分間遠心分離処理し、沈降成分を除去し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。
《異形のシリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:35nm)》の調製
エタノール7,100gと正珪酸エチル3,742gとを混合し、混合液a3とした。
次に、超純水1,060gと29%アンモニア水128gとを混合し、混合液b3とした。
次に、エタノール1,868gを敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a3及び混合液b3を、各々6時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO2固形分濃度19質量%のシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を5,400g得た。
得られたシリカ微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径が35nm、短径/長径比が0.75であり、異形形状であった。
次に、得られた異形シリカ微粒子分散液に超純水を加えて、SiO2固形分濃度3質量%のC液を得た。
そして、C液をシリカ系微粒子分散液とし、焼成温度を1100℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
Claims (4)
- 下記[1]から[6]の特徴を備え、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあり、平均粒子径が50〜350nmであるセリア系複合微粒子を含む、セリア系複合微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記子粒子の粒子径分布における変動係数(CV値)が14〜60%であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10〜25nmであること。
[6]前記母粒子は、短径/長径比が0.2以上、0.7以下の範囲にあること。 - 請求項1に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
- 前記研磨用砥粒分散液が、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする請求項2に記載の研磨用砥粒分散液。
- 下記の工程1〜工程3を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
工程1:短径/長径比が0.1以上、1.0未満であるシリカ系微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0〜20℃、pHを7.0〜9.0、酸化還元電位を50〜500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950〜1,200℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして焼成体解砕分散液を得る工程。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりセリア系複合微粒子分散液を得る工程。
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