JP7215977B2 - セリア系複合微粒子分散液、その製造方法及びセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液 - Google Patents
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Description
シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低い事が望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法等が提案されている。
これは、焼成工程を含むセリア粒子の製造方法(焼成によりセリア粒子の結晶化度が高まる)に比べて、特許文献1に記載の酸化セリウム超微粒子の製法は、焼成工程を含まず、液相(硝酸第一セリウムを含む水溶液)から酸化セリウム粒子を結晶化させるだけなので、生成する酸化セリウム粒子の結晶化度が相対的に低く、また、焼成処理を経ないため酸化セリウムが母粒子と固着せず、酸化セリウムが研磨基材の表面に残留することが主要因であると、本発明者は推定している。
また、これら文献に記載されているセリア粒子は母粒子上に付着されたものであり、強く固着されていないので母粒子から脱落しやすい。
さらに、特許文献2の記載の真球状のシリカ母粒子上に結晶性セリア粒子を形成した砥粒を用いて研磨すると、セリア粒子の研摩時の機械的作用と同時に起こる化学的な反応によりシリカ膜の研磨速度は高いものの、高い圧力条件下では、セリア結晶が脱落や磨減、崩壊により、基板とセリアの接触面積が低下し、研磨速度が低くなる恐れがある。
本発明は以下の(1)~(6)である。
(1)下記[1]から[6]の特徴を備える平均粒子径50~350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5~1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5~0.95の範囲であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11~316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10~30nmであること。
[6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3~0.85の範囲にあること。
(2)前記セリア系複合微粒子の平均円形度が0.6以上である上記(1)記載のセリア系複合微粒子分散液。
(3)上記(1)又は(2)に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
(4)シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする上記(3)に記載の研磨用砥粒分散液。
(5)下記の工程1および工程2を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
工程1:下記1)~2)の特徴を有するシリカ微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~8℃、pHを7.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)平均粒子径が30~200nmであること。
2)短径/長径比が0.3~0.85の範囲にあること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950~1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
(6)前記工程2が、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することにより前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程である、上記(5)に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法は、このような優れた性能を示すセリア系複合微粒子分散液を効率的に製造する方法を提供するものである。
また、本発明のセリア系複合微粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した場合、半導体デバイス表面の平坦化に有効であり、特にはシリカ絶縁膜が形成された基板の研磨に好適である。
本発明は、下記[1]から[6]の特徴を備える平均粒子径50~350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液である。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5~1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5~0.95の範囲であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11~316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10~30nmであること。
[6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3~0.85の範囲にあること。
上記[1]から[6]の特徴を備えるセリア系複合微粒子を、以下では「本発明の複合微粒子」ともいう。
また、このようなセリア系複合微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
工程1:下記1)~2)の特徴を有する球状のシリカ微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~8℃、pHを7.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)平均粒子径が30~200nmであること。
2)短径/長径比が0.3~0.85の範囲にあること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950~1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の複合微粒子について説明する。本発明の複合微粒子は図1(a)に例示する構造を備えている。
図1(a)は、本発明の複合微粒子(実施例相当)の断面の模式図である。
母粒子1の表面に、非球状のセリア子粒子2aがその長軸方向を母粒子1の表面に略平行となるように存在させ、その周辺にセリウム含有シリカ層3が存在する。非球状のセリア子粒子2aの外表面側のセリウム含有シリカ層3が、基板との接触面4aとなる。
図1(b)は、比較例相当の複合微粒子の断面の模式図である。母粒子1の表面に、球状のセリア子粒子2bが存在し、その周辺にセリウム含有シリカ層3が存在する。球状のセリア子粒子2bの外表面側のセリウム含有シリカ層3が、基板との接触面4bとなる。
このようにして50個の粒子について粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出して得た値を本発明の複合微粒子の平均粒子径とする。
なお、長径(DL)と短径(DS)の値が等しい場合は、その値を当該粒子の平均粒子径とした。走査型透過電子顕微鏡写真の撮影には、電子顕微鏡S-5500((株)日立ハイテクノロジーズ社製)を使用することができる。
なお、前述の本発明の複合微粒子の平均粒子径を測定する場合と同様の画像解析法によって、50個の粒子の各々について短径(DS)および長径(DL)を測定して短径(DS)/長径(DL)を求め、それらの個数平均値を算出して得た値を本発明の複合微粒子の短径/長径比とする。
ここで平均包絡度について説明する。本発明の複合微粒子を走査型透過電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(STEM像)についての画像解析法で測定して得た平面画像において、1粒の本発明の複合微粒子に着目すると、その最外縁は凹凸を繰り返しているが、それら凸部の頂点を直線で結んで得た多角形の全辺の合計長さを包絡周囲長[A]とし、同じく本発明の複合微粒子の輪郭そのものの長さを実周囲長[B]としたとき、平均包絡度[C]は、100個の粒子の包絡度[(包絡周囲長[A])/(実周囲長[B])]の値の平均値として定義される。後述するように、平均包絡度は、SEM用画像解析ソフトウェア((株)オリンパス製、Scandium)を使用して自動解析することができる。
平均包絡度が下限未満の場合、本発明の複合微粒子の粒子表面の凹凸が大きくなることで、研磨時の過剰な応力集中により、小さなスクラッチを生じやすくなり望ましくない。
1)シリカ母粒子の表面に、非球状のセリア子粒子が、その長軸方向を母粒子表面と略平行にして存在する。
2)該セリア子粒子は、シリカ母粒子表面に比較的密に存在する。
このように非球形構造のセリア子粒子が母粒子表面と略平行に存在することで、セリア系複合微粒子は、その平均包絡度が0.5~0.95の範囲となる傾向にある。
例えば、セリア子粒子が球状粒子の場合、非球状の子粒子の場合に比して、基板との接触面積は小さく、研磨性能は向上しないものといえる。該セリア子粒子の短径/長径比としては0.3~0.85の範囲が好ましい。短径/長径比が0.85を超えるとセリア子粒子は球状に近くなり、前記問題が生じやすくなる。短径/長径比が0.3未満の場合、セリア子粒子の長軸方向の長さが過大となり、却って本発明の複合微粒子の外表面に起伏が多くなる場合があり、前記研磨性能向上に寄与しない場合がある。セリア子粒子の短径/長径比は好適には、0.5~0.8の範囲が推奨される。
なお、セリア子粒子の短径/長径比の測定方法は後述する。
例えば、正珪酸四エチル(Si(OC2H5)4)にアンモニアを添加し、加水分解・縮重合の操作を行うことで得た球状(又は略球状)のシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液(シリカゾル)に、セリウム塩の溶解液を添加しながら、並行してアルカリを添加すると、セリウム塩の溶解液が中和される。そうすると、シリカ系微粒子の表面のシラノール基と、セリウム塩の溶解液の中和による生成物(水酸化セリウム等)とが反応し、一例として、Ce(OH)・Si(OH)様の化合物を経由して、シリカ系微粒子の表面にセリウムシリケート(例えば、CeO2・SiO2・SiOH等)およびCeO2超微粒子(粒子径が5nm以上、10nm未満の範囲)を含む層(以下「CeO2超微粒子含有層」ともいい、CeO2超微粒子とセリウムシリケートからなる層を意味する。)が形成される。
前記工程1における前駆体粒子は、このようなCeO2超微粒子とセリウムシリケートからなる層がシリカ系微粒子の表面に形成された構造を有する。該前駆体粒子は工程2の焼成処理により、セリウムシリケートから分相したセリウム原子がCeO2超微粒子に沈着するため、シリカ系微粒子の表面に形成される前記CeO2超微粒子は粒子成長する。本発明の複合微粒子分散液を研磨用途に適用したときに必要とする研磨速度を達成するためのセリア子粒子の結晶の大きさ(平均結晶子径が10~30nm)とするためには、工程1の調合で得たセリア微粒子の結晶子径が5nm未満である場合、できるだけ高温での焼成処理が必要となる。ただし、該焼成処理が、あるレベル以上の高温で処理されると分相によりシリカが生じ、そのようなシリカが前駆体粒子構造内部でのいわば接着剤となり、当該発明の単結晶性セリア系複合微粒子を、後工程における解砕によって得ることができず、焼成処理に続いて行われる解砕処理を阻害する傾向が強まるので、本発明に係るセリア系複合微粒子を得難くなり望ましくない。
そして、その後、乾燥し、950~1150℃程度で焼成すると、前記CeO2超微粒子含有層の内部に存在している、粒径が5nm以上、10nm未満のCeO2超微粒子が、セリウムシリケートに含まれているセリウム原子を取り込んで粒径を成長させ、最終的には平均結晶子径が10~30nm程度にまで成長した結晶性セリア微粒子(セリア子粒子)となる。
またセリウムシリケート(例えばCeO2・SiO2・SiOH等)は、熱分解や熱拡散等によりセリウム含有シリカ層となる。そのため、結晶性セリア微粒子はセリウム含有シリカ層内で分散した状態で存在することとなる。調合工程での温度が8℃超の場合はシリカ系微粒子の溶出量が著しく増し、セリウム含有シリカ層中のシリカの割合が増え、セリア子粒子を厚く被覆するため、セリア子粒子どうしの合着が生じ難い。しかし、調合温度が8℃以下の場合は、シリカの溶解が抑制されるため、セリウム含有シリカ層中のシリカの割合が減り、セリウム含有シリカ層の厚みが薄くなるため、焼成工程でセリア子粒子が粒子成長する際に、セリア子粒子同士の合着が進み、セリアの異形化が生じる傾向にある。また、セリウムシリケート層中のCe濃度が高いため、焼成時にセリア子粒子へのセリウムの供給速度が早くなり、セリア子粒子の特定の結晶軸方向に粒子成長することで、セリア子粒子の異形化が促進する。なお、セリウムシリケート層に含まれるセリウムの一部は結晶性セリア微粒子になりきれず残存するため、セリウム含有シリカ層が形成される。
この時、焼成温度が1,150℃を超えると、セリアで被覆された母粒子を、セリア子粒子を被覆したシリカが接着剤となって、複合微粒子同士の合着を促進するため、後工程の解砕処理によっても、単分散状態にすることができない。
950℃未満の場合、複合微粒子の解砕処理は容易になるが、セリア微粒子の成長は不十分で、得られた複合微粒子を研磨用途に適用しても十分な研磨速度を得ることができない。
また調合後のセリア子粒子の結晶子径は5nm以上、10nm未満の範囲(一例として結晶子径6~9nm程度)となるため、焼成により所定サイズにセリア子粒子を結晶成長させるためのセリウム原子の拡散量が少なくてよく、低温焼成で結晶成長がおきて、平均結晶子径10~30nmのセリア子粒子が得られる。
従って、0~8℃で調合した場合は、母粒子表面上にセリウム含有シリカ層が形成され、この層内にセリア子粒子が分散した形態となる。しかし、セリウム含有シリカ層の厚みが薄いため、焼成時にセリア子粒子が結晶成長する際に、隣り合ったセリア子粒子が互いに粒子成長した結果、セリア子粒子が合着して異形化する。またセリアの供給速度が早いため、特定の結晶軸が成長することによってセリア子粒子の異形化が生じる。
係るシリカ系微粒子は、通常、シリカ微粒子と呼ばれるものであるが、本願では特に酸化物換算でSiO2を80モル%以上含有し、残量がある場合は、本発明の効果を阻害しない成分を含有する場合を含める目的でシリカ系微粒子とした。ここでSiO2以外の成分は、本発明の効果を阻害しない成分であれば特に制限がなく、例えば、TiO2、ZrO2、Al2O3、Na2O等が挙げられる。SiO2の含有量は90モル%以上が好ましく、実質的に(すなわち不可避的不純物を除いて)100モル%であることが好ましい。
シリカ系微粒子は、その形状として、球状粒子、略球状粒子又は非球状粒子のシリカ系微粒子を公知の方法で調製可能であり、また市販品の入手も可能である。
また、本発明の分散液を乾燥させ、樹脂包埋した後にPtによるスパッタコーティングを施し、従来公知の収束イオンビーム(FIB)装置を用い断面試料を作成する。例えば作成した断面試料を従来公知のTEM装置を用い、高速フーリエ変換(FFT)解析を用いてFFTパターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカの回折図は現れない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
また、別の方法として同様に作成し断面試料について、従来公知のTEM装置を用い、母粒子の原子配列による格子縞の有無を観察する方法が挙げられる。結晶質であれば結晶構造に応じた格子縞が観察され、非晶質であれば格子縞は観察されない。このことから、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。また、このような場合に、母粒子が非晶質シリカを主成分とするものとする。
例えば、前記母粒子において、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ5000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。また、前記母粒子におけるU、Th、Cl、NO3、SO4及びFの各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
dry量に対する含有率とは、対象物(母粒子、本発明の複合微粒子または後述するシリカ系微粒子)に含まれる固形分の質量に対する測定対象物(特定不純物群1または特定不純物群2)の重量の比の値を意味するものとする。なお、母粒子の不純分は、汚染等による混入が無ければ、原料として用いたシリカ系微粒子の不純分と概ね一致する。
このようなシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、イオン交換処理を行って前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも前記特定不純物群1と前記特定不純物群2が合計で数ppmから数百ppm残留する。そのため水硝子を原料としたシリカ系微粒子を用いる場合は、酸処理等で不純物を低減させることも行われている。
これに対し、アルコキシシランを原料として合成したシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる分散液の場合、通常、前記特定不純物群1における各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、前記特定不純物群2における各元素と各陰イオンの含有率は、それぞれ20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びTh:ICP-MS(誘導結合プラズマ発光分光質量分析)
・Cl:電位差滴定法
・NO3、SO4及びF:イオンクロマトグラフ
本発明の複合微粒子において結晶性セリアを主成分とする子粒子(以下、「セリア子粒子」ともいう)は、前記母粒子上に配されたセリウム含有シリカ層の内部に分散している。
(a)母粒子の凸部に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して、結合した形態。
(b)母粒子の凸部と凹部との両方に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して、結合した形態。
(c)母粒子の凹部に子粒子が、セリウム含有シリカ層の一部を介して結合した形態。
子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比がこのような範囲であると、子粒子は非球状(異形)と言える。前記のとおり、研磨対象の基板との接触面積を大きくするうえで、非球状(異形)であることが好ましい。非球状構造のセリア子粒子を有するセリア系複合微粒子を研磨用途に適用した場合、球状構造のセリア子粒子を有するセリア系複合微粒子を用いた場合に比べて、基板との接触面が広くなり、研磨レートに優れる傾向がある。本発明の複合微粒子は、その様な非球状構造である子粒子を複数有するものであるため、より効率的な研磨が行われる。
なお、本発明の複合微粒子は、前記の平均包絡度が特定の範囲にあり、その表面に起伏又は凹凸構造を有するので、この様なセリア系複合微粒子の外形構造と、係る子粒子の非球状構造との相乗効果が研磨性能に寄与しているものと推察される。
初めに本発明の複合微粒子の分散液(固形分0.05質量%)を走査型透過電子顕微鏡(倍率30万倍)を用いて観察した。得られたSTEM画像において、1つの子粒子について、その最大径を長軸とし、その長さを測定して長径とする。そして、任意の50個の子粒子について長径を測定し、それらの単純平均値を平均長径(D)とする。
次に、各子粒子の長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線がその子粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径とする。そして、任意の50個の子粒子について短径を測定し、それらの単純平均値を平均短径(S)とする。
このようして求めた平均短径(S)および平均長径(D)から、平均短径(S)/平均長径(D)の比を求める。
なお、平均短径(S)と平均長径(D)との幾何平均値を、子粒子の平均粒子径とする。
本発明では、電子顕微鏡S-5500((株)日立ハイテクノロジーズ社製)を使用することができる。
子粒子の平均粒子径が30nmを超える場合、工程2において、そのようなセリア子粒子を有した前駆体粒子は、焼成後に焼結や凝結が生じ解砕も困難となる傾向がある。このようなセリア系複合微粒子分散液は、研磨用途に使用しても研磨対象でのスクラッチ発生を招き、好ましくない。子粒子の平均粒子径が10nm未満の場合、同じく研磨用途に使用すると、実用的に充分な研磨速度を得難い傾向がある。
また、子粒子の粒子径分布における変動係数は、格別に制限されるものではないが18~28%であることが好ましく、21~25%であることがより好ましい。
本発明の複合微粒子が砥粒として使用される場合、子粒子の粒子径の均一性が高い程、複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に増大するものの、研磨レートは相対的に低下し、同じく子粒子の粒子径の均一性が低い程、複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に減少するものの、研磨レートは相対的に増大するものと考えられ、上記標準偏差範囲と、変動係数範囲は、本発明の複合微粒子が良好な研磨性能を示すうえで適切な範囲であると推察される。
初めに本発明の複合微粒子をSTEM分析によって30万倍で観察する。
次に、1つの子粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して長径とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径とする。そして、短径と長径との幾何平均値を求め、これをその子粒子における粒子径とする。このようにして50個の子粒子について粒子径を求め、それより子粒子についての粒子径分布を求め、標準偏差を求める。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とする。
また、該子粒子は、単層で分散した状態で存在してもよく、積層(すなわち、セリウム含有シリカ層の厚さ方向に複数の子粒子が積み重なって存在する状態)されていてもよい。なお、ここで積層は、セリウム含有シリカ層の内部において、母粒子の中心からの放射状の線上において子粒子が複数存在する場合を含む。
更に子粒子はセリウム含有シリカ層中に埋没していてよいし、セリウム含有シリカ層の外部へ部分的に露出していてもよいが、子粒子がセリウム含有シリカ層に埋没した場合は、セリア系複合微粒子の表面はよりシリカ表面に近くなるため、保存安定性及び研磨安定性が向上し、さらに研磨後の基板上に砥粒残りが少なくなることから、子粒子はセリウム含有シリカ層に埋没している方が望ましい。
前記子粒子が結晶性セリアを主成分とすることは、例えば、本発明の分散液を乾燥させた後、得られた固形物を乳鉢を用いて粉砕する等して本発明の複合微粒子を得た後、これを例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)を用いてX線分析し、得られたX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。このような場合に、前記子粒子が結晶性セリアを主成分とするものとする。なお、セリアの結晶相としては、特に限定されないが、例えばCerianite等が挙げられる。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ない、あるいはセリア結晶中に固溶しているため、X線回折による検出範囲外となる。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半値全幅を測定し、下記のScherrerの式により、平均結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:平均結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(1.5419オングストローム、Cuランプ)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
球状の母粒子がその表面に非球状のセリア子粒子を有してなる本発明の複合微粒子において、その半径の変動係数は、本発明の複合微粒子の表面の起伏又は凹凸構造の多寡を示す指標となる。即ち、同変動係数が相対的に高い程、複合微粒子の表面は起伏又は凹凸が多くなり、同変動係数が相対的に低い程、複合微粒子の表面は、起伏又は凹凸が少なく、より平坦なものとなる。
本発明の複合微粒子を砥粒として使用する場合、複合微粒子の半径の変動係数の値が高い程、本発明の複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に減少するものの、削る効果は相対的に増大するものと考えられ、本発明の複合微粒子の半径の変動係数の値が低い程、本発明の複合微粒子が研磨対象の基板上での転がり易さが相対的に増大するものの、削る効果は相対的に低下するものと考えられる。前記の本発明の複合微粒子の半径の変動係数範囲は、複合微粒子の転がり易さと、削り易さが両立し、良好な研磨性能を示すうえで適切な範囲であると推察される。
ここでセリア系複合微粒子の半径の分布は、次のように測定する。
まず、本発明の分散液(固形分濃度0.05重量%)について電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S-5500)を用いて倍率30万倍で観察し、得られたSTEM画像に関し、任意のセリア系複合微粒子について、外縁上の2点を結ぶ線分のうち最長の線分を長径とする。次に、その長径を二等分する点を該球状シリカ微粒子の中心とし、該中心から最長径の一方の端を角度0度とし、そこから10度ずつ0度から180度までの半径を測定する。そして、その値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求めた。この測定および算定を任意の50個の粒子について行い、粒子径の変動係数の平均値をとり、その値を粒子径の変動係数(CV値)とした。なお、粒子径の変動係数(CV値)については、粒子径の変動係数(CV値)[%]=(粒子径の標準偏差/粒子径の平均値)×100として表示した。
本発明の複合微粒子の好適態様は、その外表面側に存在する子粒子(セリア微粒子)において、Si原子がCeO2結晶に侵入型の固溶をしていると見られる。Si原子の固溶により、CeO2結晶の結晶歪みが生じることで、高温で焼成しても酸素欠陥が多くなりSiO2に対して化学的に活性な三価のセリウムが多く生じ、CeO2の化学反応性を助長する結果、上記の高い研磨速度を示すものと推察される。また三価のセリウム含有量を増加させるために、LaやZrなどをドープさせても構わない。
なお、上記のR1、R2等の、セリウム原子およびケイ素原子の原子間距離は、後述する実施例に説明する方法で測定して得た平均原子間距離を意味するものとする。
本発明の複合微粒子は、前記母粒子の表面上にセリウム含有シリカ層を有する。そして、セリウム含有シリカ層の内部に子粒子が分散している。
このような構造により、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高くなるものと考えられる。
一方、本発明の複合微粒子は上記のように最外殻にシリカが存在しているため、そのゼータ電位がシリカに起因した負電荷となるため、アルカリ性から酸性まで広範なpH領域においてマイナスの電位を維持することができる。その結果、本発明の複合微粒子を砥粒とした場合、研磨基材や研磨パッドへの砥粒残りが起こりにくい。
本発明の製造方法における工程2の解砕処理時にpH8.6~10.8を保ちながら解砕すると、本発明の複合微粒子の表面のシリカ(セリウム含有シリカ層のシリカ)の一部が溶解する。係る条件で製造した本発明の分散液を、研磨用途に適用する時にpH<7に調整すれば、溶解したシリカが本発明の複合微粒子(砥粒)に沈着するので、本発明の複合微粒子の表面は負の電位を持つことになる。電位が低い場合には、珪酸を添加し、適度にセリウム含有シリカ層を補強しても構わない。
そして、本発明の複合微粒子は、さらに、[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11~316であるという特徴を備えている。
なお、上記のシリカ(SiO2)とセリア(CeO2)との質量比を算定する場合の対象となるシリカとは、本発明の複合微粒子に含まれる全てのシリカ(SiO2)を意味する。従って、母粒子を構成するシリカ成分、母粒子の表面に配されたセリウム含有シリカ層に含まれるシリカ成分、および子粒子に含まれ得るシリカ成分の総量を意味する。
次に、所定量の本発明の複合微粒子に含まれるセリウム(Ce)の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、酸化物質量%(CeO2質量%等)に換算する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO2以外の成分はSiO2であるとして、SiO2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、シリカとセリアの質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したシリカ源物質とセリア源物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやシリカが溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやシリカの使用量と分析値が良い一致を示す。
そして、各粒子について、下記式より円形度を求め、それらを単純平均することで平均円形度を算出する。
円形度=(粒子の投影像と面積の等しい円の周長)/(粒子の投影像の周長)
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
また、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群2の各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。本発明の複合微粒子における特定不純物群1及び前記特定不純物群2それぞれの元素の含有率を低減させる方法は、前述の通りである。
なお、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群1および前記特定不純物群2の各々の元素の含有率は、前述の母粒子に含まれる前記特定不純物群1および前記特定不純物群2を測定する場合と同じ方法によって測定することができる。
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
ΔPCD/V=(I-C)/V・・・式(1)
C:前記クニックにおける流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記クニックにおける前記カチオンコロイド滴定液の添加量(ml)
また、クニックとは、カチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線において急激に流動電位が変化する点(変曲点)である。そして変曲点における流動電位をC(mV)とし、変曲点におけるカチオンコロイド滴定液の添加量をV(ml)とする。
流動電位曲線の開始点とは、滴定前の本発明の分散液における流動電位である。具体的にはカチオンコロイド滴定液の添加量が0である点を開始点とする。この開始点における流動電位をI(mV)とする。
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は以下に説明する工程1および工程2を備える。
工程1ではシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系微粒子分散液を用意する。
なお、本明細書では「工程1」を「調合工程」という場合もある。
シリカ系微粒子分散液(固形分濃度0.05質量%)を走査型透過電子顕微鏡(倍率30万倍)で観察し、得られたSTEM画像について、シリカ系微粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをそのシリカ系微粒子の粒子径とする。このようにして50個の粒子について粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出して得た値をシリカ系微粒子の平均粒子径とする。なお、長径(DL)と短径(DS)の値が等しい場合は、その値を当該粒子の平均粒子径とした。
なお、前述のシリカ系微粒子分散液の平均粒子径を測定する場合と同様に走査型透過電子顕微鏡(倍率30万倍)で観察し、得られたSTEM画像において50個の粒子の各々について短径(DS)および長径(DL)を測定して短径(DS)/長径(DL)を求め、それらの個数平均値を算出して得た値をシリカ系微粒子の短径/長径比とする。
なお、シリカ系微粒子の平均円形度は、前述の本発明の複合微粒子の平均円形度と同様に、走査型透過電子顕微鏡を用いて撮影したシリカ系微粒子の画像を、SEM用画像解析ソフトウェアで読み取り、シリカ系微粒子の投影像の周長を求め、円形度=(粒子の投影像と面積の等しい円の周長)/(粒子の投影像の周長)の式を用いて円形度を求め、単純平均して平均円形度を算出した。
具体的には、原料であるシリカ系微粒子分散液中のシリカ系微粒子として、次の(a)と(b)の条件を満たすものが好適に使用される。
(a)Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti及びZnの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
なお、このような前駆体粒子であっても、焼成温度を1150℃以上とすることでセリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とすることは可能であるが、この場合は、セリウム含有シリカ層は形成されずにシリカ被膜が形成され、このシリカ被膜がセリア子粒子を強固に被覆する傾向が強まるために、解砕が困難となる点で支障がある。そのため、反応温度を0~8℃に保ち、液相でのシリカとセリアの反応を適度に抑えることで、乾燥後の前駆体粒子におけるCeO2超微粒子の平均結晶子径を5nm以上にでき、解砕しやすい粒子となる。さらに乾燥後の平均結晶子径が大きいため、セリア子粒子の平均結晶子径を10nm以上とするための焼成温度を低くすることができ、焼成により形成されるセリウム含有シリカ層の厚みが過剰に厚膜化せず、解砕が容易となる。
さらに、酸化還元電位を所定の範囲に調整しない場合は、調合工程で生成したCeO2超微粒子は結晶化しにくい傾向にあり、結晶化していないCeO2超微粒子は調合後の加熱、熟成によっても結晶化が促進されない。そのため工程2の焼成において所定サイズに結晶化させるためには、高温での焼成が必要となり、解砕が困難になる。
シリカ系微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度が0~8℃の範囲にある場合、セリアとシリカの反応性は低く、シリカの溶解はある程度抑制される結果、結晶性のセリアが生成し易くなり、特にその形状は焼成温度が高い場合に異方化(非球状化)し易くなる。
セリア子粒子の異方化(非球状化)は、前記攪拌時の温度の場合、母粒子のSiO2溶解量が少なく、調合で母粒子上に形成する7~9nmの結晶子径を有し近接する単結晶CeO2超微粒子同士が焼成により接する状態になりやすいことで起こる。
または、調合で母粒子上に形成する7~9nmの結晶子径を有する単結晶CeO2超微粒子へCeO2が供給される際に、母粒子のSiO2溶解量が少ないため球状に成長しにくく、a,b軸方向の成長よりもc軸方向の成長が早い場合にも起こりやすい。
逆に、前記攪拌時の温度が8℃を超え、20℃までの場合、球状構造のセリア子粒子が生成しやすくなる。セリア子粒子が球状となった場合、母粒子表面に存在するセリア子粒子の大きさにもよるが、そのような複合微粒子においては、比較的子粒子数が多くなるため、表面凹凸が小さく包絡度としては大きくなる。この場合、前記のとおり、該複合微粒子を研磨砥粒とした場合、研磨対象の基板との接触面積が低下し、研磨速度は低くなる。
調合段階でのCeO2超微粒子の粒子径が5nm未満であると、焼成後のセリア粒子径を10nm以上とするために、焼成温度を高くする必要があり、その場合、セリウム含有シリカ層が母粒子を強固に被覆してしまい、解砕が困難となる可能性がある。溶解されやすいシリカ系微粒子は、100℃以上で乾燥させた後に原料に供すると溶解性を抑制することができる。
逆に、この攪拌時間を24時間以上としても、CeO2超微粒子含有層(セリウム含有被覆層)の生成反応はそれ以上進行しないため、不経済となる。
なお、前記セリウム金属塩の添加後に、所望により0~80℃にて熟成しても構わない。熟成により、セリウム化合物とシリカ系微粒子との反応が促進させると同時に、シリカ系微粒子に付着せず遊離したCeO2超微粒子を、改めてシリカ系微粒子上に付着させる効果があるからである。
この際、アルカリ等を添加しpH調整を行うことが好ましい。このようなアルカリの例としては、公知のアルカリを使用することができる。具体的には、アンモニア水溶液、水酸化アルカリ、アルカリ土類金属、アミン類の水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また酸化還元電位を50~500mVの範囲に保つことで、生成したCeO2超微粒子の結晶化が促進される。酸化還元電位が50mV未満または負となった場合、セリウム化合物がシリカ系微粒子の表面に沈着せずに板状・棒状などの単独のセリア粒子が生成したり、あるいは過度に凝集した複合セリア粒子が生成する場合がある。
さらに、前記pH調整などによる中和により過飽和となった溶液から生成する水酸化セリウム等のシリカ系微粒子に対する反応性が低下し、CeO2超微粒子含有層の形成が進行し難くなり、仮に形成したとしてもCeO2超微粒子層中に含まれるシリカの割合が極めて低くなる。そのため、焼成後にセリア子粒子を内在するセリウム含有シリカ層は形成されず、セリア子粒子はシリカ母粒子の表面に露出して配置された状態となる傾向にある。
酸化還元電位を上記の範囲内に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアー、酸素及びオゾンを吹き込む方法が挙げられる。これらの方法を行わない場合は、酸化還元電位は負であったり50mV以下になる傾向にある。
シリカとセリアの反応性が高すぎると前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が5nm未満となる傾向がある。仮に、前駆体粒子に含まれるCeO2超微粒子の平均結晶子径が5nm未満となった場合は、工程2でセリア粒子を10nm以上とするために過剰に高温での焼成が必要となると考えられる。しかし、この場合、複合微粒子間の固着が強固となり、解砕が困難となる可能性が高く、実用的ではない。
工程2では、前駆体粒子分散液を乾燥させた後、950~1,150℃で焼成する。
なお、好適には、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0~7.0とすることが推奨される。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0~7.0とした場合、表面活性を抑制できるからである。
さらにこのような温度範囲で焼成することで、工程1で中間的に生成した水酸化セリウム等は残存し難くなる。この温度が1150℃を超えるとセリアの結晶が異常成長したり、セリウム含有シリカ層が厚くなりすぎたり、母粒子を構成する非晶質シリカが結晶化したり、粒子同士の融着が進むなどの可能性がある。
また、焼成温度範囲を950~1150℃とすることで、前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3~0.85の範囲にあるセリア系複合微粒子分散液を得やすくなる。これについては、焼成温度がセリアの結晶化度、結晶成長、粒子径及び粒子の形状に影響し、本発明の製造方法の要件においては、焼成温度950℃付近からセリア子粒子形状の非球状化が進行するものと推察される。
これは、工程1でのシリカ微粒子(シリカ母粒子)と、セリウム金属塩との調合を室温付近で行った場合に、シリカ母粒子の一部が溶解し、セリウム金属塩に由来するセリウムの一部と反応してセリウムシリケートを生成するので、セリア子粒子の成長に寄与するセリウム量が減少するので、結果として、シリカはセリア子粒子成長の阻害因子となり、セリア子粒子の粒子成長に必要なセリウムの供給速度が緩慢になるものと推察される。
他方、本発明の製造方法の工程1では、シリカ微粒子(シリカ母粒子)と、セリウム金属塩との調合時の温度が0~8℃の場合、焼成後のセリア子粒子の形状は非球状になり易く、その機構は以下の2通りを推定している。一つはより低温調合なので、前記水酸化セリウム等とシリカ系微粒子との反応性が低下し、セリウム成分に対するシリカ成分の割合が低下することで、セリア子粒子同士の合着を妨げる障壁が小さくなるため、セリア子粒子同士の合着により単結晶の凝集体を形成して非球状になり易いと推察される。もう一方では、調合時のシリカ母粒子の溶解が抑制されることでセリアの供給速度が速いため、セリア子粒子のa,b軸方向のよりもc軸方向の成長が早いことにより異方成長した結果、非球状のセリア子粒子になると推定している。
ここで、焼成体に湿式で解砕処理を施す前に焼成体を乾式で解砕し、その後、湿式で解砕処理を施してもよい。
湿式の解砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料としたビーズを挙げることができる。
焼成体を湿式で解砕するときに用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。また、ここでの固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3~50質量%の範囲にあることが好ましい。
前記溶媒のpH範囲としては、好適には8.8~10.2の範囲が推奨される。
また、pHをこの範囲に維持すると、カチオンコロイド滴定を行った場合に、前記式(1)で表される、流動電位変化量(ΔPCD)と、クニックにおけるカチオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が-110.0~-5.0となる流動電位曲線が得られるセリア系複合微粒子分散液を、最終的により容易に得ることができる。
なお、工程2のような湿式解砕工程を経ずに、焼成粉をほぐす程度であったり、乾式解砕・粉砕だけ、あるいは湿式解砕であっても所定のpH範囲外の場合は、ΔPCD/Vが-110~-5の範囲となりにくく、さらに軟質で易溶解性のシリカ層が形成され難い。
遠心分離処理による分級は、300G以上の相対遠心加速度にて行うことが好ましい。遠心分離処理後、沈降成分を除去し、セリア系複合微粒子分散液を得ることが好ましい。相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
このような遠心加速度とすると、セリア系複合微粒子分散液中に粗大粒子は更に残存し難くなり、その結果、セリア系複合微粒子分散液を用いた研磨材などの研磨用途に使用した際のスクラッチ発生をいっそう低減させることができる。
本発明のセリア系複合微粒子分散液の製造方法の工程2において、焼成体について前記の湿式解砕処理を行い、更に解砕処理後に前記遠心分離処理を行うことにより得られたセリア系複合微粒子分散液は、粗大粒子の残留が極めて僅かであり、そのようなセリア系複合微粒子分散液を研磨用途に適用した場合、研磨対象の基板において、比較的大きなスクラッチの発生を効果的に抑制することが可能となる。
本発明の分散液を含む液体は、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸塩などを使用することができる。
[SiO2含有量およびCeO2含有量の測定]
シリカ系微粒子分散液におけるSiO2含有量について、ヒュームドシリカ又は珪酸ナトリウムを原料とした場合は、シリカ系微粒子分散液に前記と同様の1000℃での灼熱減量法を行い、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。また、アルコキシシランを原料とした場合は、シリカ系微粒子分散液を150℃で1時間乾燥させた後に秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。なお、ここでシリカ系微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
また、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有量は、セリア系複合微粒子分散液に前記と同様の1000℃での灼熱減量法を行い、固形分の質量を求めた後、ICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いて標準添加法によってCe含有率を測定してCeO2質量%を算出し、CeO2以外の固形分の成分はSiO2であるとして、SiO2の含有量を求めた。なお、セリア系複合微粒子におけるSiO2含有率、CeO2含有率およびシリカ100質量部に対するセリアの質量部は、ここで求めたCeO2含有量およびSiO2含有量に基づいて算出した。なお、前記のとおり、灼熱減量法を用いて、セリア系複合微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
初めに、セリア系複合微粒子またはセリア系複合微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z-2310)で測定する。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
そして、前述の方法で求めたSiO2の質量に基づいて、シリカdry量に対する各成分の含有率を求めた。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液またはシリカ系微粒子を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述の方法によって、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半価全幅を測定し、Scherrerの式により、セリア子粒子の平均結晶子径を求めた。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液について、これに含まれるセリア系複合微粒子の平均粒子径は、前述の通り走査型透過電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(STEM像)についての画像解析法によって測定を行った。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子分散液におけるセリア系複合微粒子の一部であるセリア子粒子の平均短径(S)、平均長径(D)および平均粒子径についても前述の通り、STEM分析によって30万倍で観察し、それぞれ求めた値をもって、平均短径(S)、平均長径(D)および平均粒子径とした。
また、実施例及び比較例で原料として使用したシリカ微粒子分散液におけるシリカ微粒子(原料シリカ微粒子)の平均粒子径についても前述の通り、STEM分析によって30万倍で観察し画像解析法によって測定を行った。
pH9の試料(複合微粒子分散液、固形分濃度3.1質量%)を遠心分離を使用して固液分離することで溶解シリカを除去した後、乾燥させ、走査型透過電子顕微鏡(例えば日立ハイテクノロジーズ社製S-5500)を用いて、STEM写真の画像データを得る。そして、このSTEM写真の中から無作為に100個の粒子を選ぶ。STEM写真の画像データ(2次電子像、100倍、jpg画像)を、例えば、SEM用画像解析ソフトウェア((株)オリンパス製、Scandium)に読み取らせる。画像上から、特定の領域を解析領域(フレーム)として選択し、この解析領域(フレーム)を2値化処理する。詳細には、RGB値のそれぞれの下限値として153諧調、上限値として255諧調を選択し、これら2つの閾値による2値化を実行する。2値化を実行した解析領域内の粒子を検出し、検出された粒子のうち、複数個の粒子の塊を一つの粒子として検出されたものを削除する。単一粒子と認められた粒子について、粒子の投影像の周長を求める。この手順を100個の粒子について行う。そして、各粒子について、下記式より包絡度を求め、それらを単純平均することで平均包絡度を算出する。
包絡度[(包絡周囲長[A])/(実周囲長[B])]
(セリア系複合微粒子の凸部の頂点を最短の距離をもって結んだときの周囲の長さを包絡周囲長[A]とし、同じくセリア系複合微粒子の輪郭そのものの長さを実周囲長[B]とする。)
前述の通り、STEM分析を用いて50個の子粒子の平均粒子径を求め、そこから子粒子についての粒子径分布を求め、標準偏差を求めた。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とした。
また、セリア系複合微粒子の半径についても同様に、前述の通りに粒度分布(半径分布)を求め、標準偏差を求めた。また、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものを変動係数とした。
実施例及び比較例で得られたセリア系複合微粒子の比表面積を前述の方法によって測定した。ここで表面積測定装置(マウンテック社製、品番:Mascsorb HM-1220)を用いて行うことができる。
セリア系複合微粒子およびシリカ微粒子(原料シリカ微粒子)の各々について、前述の方法で平均円形度を求めた。なお、走査型透過電子顕微鏡として、日立ハイテクノロジーズ社製S-5500を用い、STEM写真の画像データを得て、SEM用画像解析ソフトウェアとして、(株)オリンパス製、Scandiumを用いた。
セリア系複合微粒子分散液に含まれる粗大粒子数は、Particle sizing system Inc.社製Accusizer 780APSを用いて測定を行った。また測定試料を純水で0.1質量%に希釈調整した後、測定装置に5mLを注入して、以下の条件にて測定を行い、3回測定した後、得られた測定データの0.51μm以上の粗大粒子数の値の平均値を算出した。さらに平均値を1000倍して、セリア系複合微粒子のドライ換算の粗大粒子数とした。なお測定条件は以下の通り。
<System Setup>
・Stir Speed Control / Low Speed Factor 1500 / High Speed Factor 2500
<System Menu>
・Data Collection Time 60 Sec.
・Syringe Volume 2.5ml
・Sample Line Number :Sum Mode
・Initial 2nd-Stage Dilution Factor 350
・Vessel Fast Flush Time 35 Sec.
・System Flush Time / Before Measurement 60 Sec. / After Measurement 60 Sec.
・Sample Equilibration Time 30 Sec./ Sample Flow Time 30 Sec.
<SiO2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液を調整した。ここで固形分濃度は0.6質量%であり、硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
<シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径113nm)の調製>
最初に次の調製工程を行った。
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a1及び混合液b1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO2固形分濃度19質量%、画像解析法による平均粒子径63nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を9,646.3g得た。
メタノール2,733.3gと正珪酸エチル1,822.2gとを混合し、混合液a2とした。
次に、超純水1,860.7gと29%アンモニア水40.6gとを混合し、混合液b2とした。
次に、超純水59gとメタノール1,208.9gとを混合して敷き水として、前工程で得た平均粒子径63nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液922.1gを加えた。
そして、このシリカ微粒子分散液を含んだ敷き水を撹拌しながら65℃に調整し、そこへ、混合液a2及び混合液b2を、各々18時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を65℃のまま3時間保持して熟成させた後、限外膜、ロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度(SiO2固形分濃度)を19質量%に調整し、3,600gのシリカ微粒子分散液を得た。
また、陽イオン交換樹脂による処理を行った後のシリカ微粒子分散液に含まれる粒子のNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、U、Th、Cl、NO3、SO4及びFの含有率(シリカdry量に対する各成分の含有率)は何れも1ppm以下であった。
このシリカ微粒子分散液は、画像解析法による平均粒子径113nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液であり、前記のとおりイオン交換処理により不純物濃度を著しく低減させた高純度シリカ微粒子分散液であった。
<高純度酸性珪酸液の調製>
珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.06質量%、Na2O濃度7.97質量%)に純水を加えて、珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度5質量%)を得た。
得られた珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に、空間速度3.0h-1で通液させ、酸性珪酸液18kg(シリカ濃度4.6質量%、pH2.7)を得た。次いで、得られた酸性珪酸液18kgを6Lのキレート型イオン交換樹脂(三菱化学社製CR-11)に、空間速度3.0h-1で通液させ、高純度酸性珪酸液18kg(シリカ濃度4.5質量%、pH2.7)を得た。
上記の準備工程1によって得られたシリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径113nm)に超純水を加えて、SiO2固形分濃度3質量%の分散液6,000g(SiO2 dry180g)(以下、A液ともいう)を得た。
その後、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が4.7質量%、pHが8.8(25℃にて)、電導度が44μs/cm(25℃にて)であった。
そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は3.1質量%で重量は1115gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。
1700Gで102秒処理し、処理して得られた分散液から、沈降成分以外の成分(セリア系複合微粒子分散液)を回収した。こうして得られたセリア系複合微粒子分散液の平均粒子径を測定した。測定方法は前述の通りの画像解析法である。平均粒子径の測定結果を第1表に示す。
なお、実施例で調製したセリア系複合微粒子分散液、セリア子粒子(セリア微粒子)、原料であるシリカ微粒子の特徴ないし配合等を第1表に記した。比較例についても同様である。
また、実施例でのセリア系複合微粒子分散液の製造方法に係る条件を第1表に記した。比較例についても同様である。
なお、特には原料としたシリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子(母粒子)の平均粒子径を第1表に示す。また、セリア系複合微粒子分散液に含まれるシリカ含有率とセリア含有率(及びシリカ100質量部に対するセリアの質量部)、焼成温度、セリア系複合微粒子の平均結晶子径、結晶型、比表面積、セリア系複合微粒子の平均粒子径及びその短径/長径比、セリア系複合微粒子の包絡度及びその平均円形度、研磨性能の測定結果を第1表に示す。以降の実施例、比較例も同様である。
実施例1における前駆体粒子分散液の乾燥後の焼成処理を、1107℃のマッフル炉を用いて2時間の焼成とした他は、実施例1と同様の操作を行い、同様の評価を行った。
21.7 gの硝酸セリウム(III)(99%、Sigma-Aldrich)を780gの超純水に加えて溶解し、CeO2換算で1.1質量%の硝酸セリウム水溶液を得た。この水溶液に室温で、45質量%のシリカゾル(40?50nmの粒径を有するSiO2, Levasil 100/45 )を65.7g滴下し、安定した分散液を得た。激しく撹拌しながら 30.6gのトリエチルアミンを上記の分散液に2回に分けて等量を加えた。 得られた混合物のpHは10.7であった。分散液の色は紫色から、開放した状態で室温で24時間撹拌後に黄白色に変わり、その時のpHは7.5であった。遠心分離により精製し、次いで所望のスラリーを得るために超純水に再分散した。(焼成なし)。
Claims (6)
- 下記[1]から[6]の特徴を備える平均粒子径50~350nmのセリア系複合微粒子含む、セリア系複合微粒子分散液。
[1]前記セリア系複合微粒子は、母粒子と、前記母粒子の表面上のセリウム含有シリカ層と、前記セリウム含有シリカ層の内部に分散している子粒子とを有し、前記母粒子は非晶質シリカを主成分とし、前記子粒子は結晶性セリアを主成分とすること。
[2]前記セリア系複合微粒子の短径/長径比が0.5~1.0の範囲であり、その平均包絡度は0.5~0.95の範囲であること。
[3]前記セリア系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11~316の範囲であること。
[4]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[5]前記セリア系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの平均結晶子径が10~30nmであること。
[6]前記子粒子の平均短径(S)/平均長径(D)の比が0.3~0.85の範囲にあること。 - 前記セリア系複合微粒子の平均円形度が0.6以上である請求項1記載のセリア系複合微粒子分散液。
- 請求項1又は請求項2に記載のセリア系複合微粒子分散液を含む研磨用砥粒分散液。
- シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用であることを特徴とする請求項3に記載の研磨用砥粒分散液。
- 下記の工程1および工程2を含むことを特徴とするセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
工程1:下記1)~2)の特徴を有するシリカ微粒子が溶媒に分散しているシリカ系微粒子分散液を撹拌し、温度を0~8℃、pHを7.0~9.0、酸化還元電位を50~500mVに維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
1)平均粒子径が30~200nmであること。
2)短径/長径比が0.3~0.85の範囲にあること。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、950~1,150℃で焼成し、得られた焼成体に溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をして前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程。 - 前記工程2が、前記焼成体に前記溶媒を加えて、pH8.6~10.8の範囲にて、湿式で解砕処理をした後、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することにより前記セリア系複合微粒子分散液を得る工程である、請求項5に記載のセリア系複合微粒子分散液の製造方法。
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