以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[実施形態1]
本実施形態1は、スペクトルシフト運転を行うことが可能な自然循環方式の沸騰水型軽水炉100、及び、当該沸騰水型軽水炉を提供することを意図している。
<沸騰水型軽水炉の全体構成>
以下、図1を参照して、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100の全体構成につき説明する。図1は、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100の全体構成図である。
図1に示すように、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100は、原子炉圧力容器1に内包された炉心2と、炉心2の径方向の外側を囲むシュラウド4と、中性子と燃料との反応度を調整するための十字型制御棒5と、炉心2に対して十字型制御棒5の引き抜き及び挿入を行うための制御棒駆動機構7と、湿り蒸気から微小液滴を分離して乾き蒸気に変える環状ドライヤ14と、蒸気をタービン(図示せず)に導く主蒸気管15と、原子炉圧力容器1内に給水する給水配管(図示せず)と、を有している。炉心2には、後記する正方形燃料集合体16(図2A参照)が装荷されている。
本実施形態1では、十字型制御棒5は、制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有している。制御材充填部5Aは、内部に中性子吸収材が充填された領域である。制御材充填部5Aは、中性子を吸収することで、中性子と燃料との反応度を制御する反応度制御部として機能する。フォロア部5Bは、内部にフォロア材が充填された領域である。フォロア材は、中性子吸収材よりも中性子吸収性能の低い材料(中性子との反応断面積が小さい材料)であり、かつ、中性子を減速させる能力が水よりも低い材料であり、ボイド(気泡)と同様の役割を果たす。フォロア部5Bは、炉心2に挿入されたときに炉心2の内部(後記する十字型制御棒案内管22の内部)から外部に冷却材(冷却水)を排除する。すなわち、フォロア部5Bの部分では中性子が吸収も減速もされないため、フォロア部5Bが炉心2に位置するときは、フォロア部5Bがボイドの役割を果たして、見掛け上、炉心2にボイドが増えたときと同じ状態になる。制御材充填部5A及びフォロア部5Bは、それぞれ、炉心2の高さと同程度の長さに形成されている。フォロア部5Bは、制御材充填部5Aの下方に配置されている。
十字型制御棒5は、前記のように、制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有することにより、一般に標準的に用いられている通常長さの十字型制御棒(例えば、図10に示す十字型制御棒5Z)よりも長さが倍程度長い長尺な制御棒として構成されている。なお、図10は、従来技術に相当する比較例に係る沸騰水型軽水炉1000の構成を示している。比較例に係る沸騰水型軽水炉1000については、後記する。
十字型制御棒5は、制御棒駆動軸6を介して制御棒駆動機構7と接続されている。沸騰水型軽水炉100は、炉心2に対して十字型制御棒5の引き抜き及び挿入を制御棒駆動機構7で行うことにより、中性子と燃料との反応度を調整する。
例えば、沸騰水型軽水炉100は、炉心2から十字型制御棒5を引き抜くことで、中性子と冷却材との衝突による中性子エネルギー(速度)の減少を促進させて、熱中性子を増加させる。これにより、沸騰水型軽水炉100は、中性子と燃料との反応を促進させて、出力を上昇させる。
また、沸騰水型軽水炉100は、炉心2に十字型制御棒5の制御材充填部5Aを挿入することで、中性子を吸収する。これにより、沸騰水型軽水炉100は、中性子と燃料との反応を抑制して、出力レベルを調整することができる。また、沸騰水型軽水炉100は、全ての十字型制御棒5を炉心に挿入することで、中性子と燃料との反応を停止させることも可能である。
また、本実施形態では、十字型制御棒5は、ボイドの役割を果たすフォロア部5Bを有しており、フォロア部5Bが炉心2に挿入されると、中性子と冷却材との衝突による中性子エネルギーの減少を抑制して(即ち中性子スペクトルを硬くして)、中性子と燃料との反応を抑制する。ちなみに、ポンプを備える場合は、ポンプによって炉心2を通過する冷却材の流量を減らすことでボイドの量を多くして、中性子のスペクトルを硬くすることが可能であったが、ポンプを備えない自然循環式の場合は、このような調整はできなかった。
すなわち、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、従来とは異なり、原子力発電プラントの運転状態に応じて、十字型制御棒5を位置29,30,31のいずれかの位置に配置する。
(1)例えば、図1で模式的に3本並べて図示されている十字型制御棒5の内の、左側の位置29の十字型制御棒5のように、原子力発電プラントの運転停止時において、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5の中性子を吸収する役割を果たす制御材充填部5Aが炉心2に挿入されるとともに、十字型制御棒5のフォロア部5Bが炉心2の下方に出るように、十字型制御棒5を位置29に配置する。以下、位置29を「炉停止時位置29」と称する場合がある。
(2)また、例えば、図1で模式的に3本並べて図示されている十字型制御棒5の内の、中央の位置30の十字型制御棒5のように、原子力発電プラントの運転サイクル初期において、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5のボイドの役割を果たすフォロア部5Bが炉心2に挿入されるとともに、十字型制御棒5の制御材充填部5Aが炉心2の上方に出るように、十字型制御棒5を位置30に配置する。以下、位置30を「運転サイクル初期時位置30」と称する場合がある。ただし、沸騰水型軽水炉100は、運転サイクル初期における燃料の余剰反応度を制御する場合に、一部の十字型制御棒5を、炉停止時位置29と運転サイクル初期時位置30との中間の位置に配置した状態(部分挿入状態)にする。
(3)また、例えば、図1で模式的に3本並べて図示されている十字型制御棒5の内の、右側の位置31の十字型制御棒5のように、原子力発電プラントの運転サイクル末期において、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5の全部分が炉心2の上方に出るように、換言すると、十字型制御棒5があった部分が冷却材(減速材でもある水)で満たされるように、十字型制御棒5を位置31に配置する。以下、位置31を「運転サイクル末期時位置31」と称する場合がある。
沸騰水型軽水炉100は、原子力発電プラント運転時において、炉心2で発生する核反応熱によって冷却材(冷却水)を沸騰させて、炉心2の内部で蒸気-飽和水の気液二相流を発生させる。つまり、炉心2の内側では、冷却材(冷却水)が沸騰して蒸気(ボイド)が発生することで、冷却材(冷却水)が単相水状態から蒸気-飽和水の気液二相の状態に変化する。原子炉圧力容器1の内部では、原子炉圧力容器内水位3よりも上方の重力気水分離空間13で、比較的大きい液滴が自重によって水面に落下する。これにより、飽和水が湿り蒸気中から分離されて、気液二相流が湿り蒸気(水蒸気及び水蒸気に随伴される微小液滴)と飽和水とに分離される。
重力気水分離空間13で分離された飽和水は、原子炉圧力容器1とシュラウド4との間の間隙(ダウンカマ領域11)を流下し、給水配管(図示せず)を介して原子炉圧力容器1の外部から供給される給水と混合された後、炉心2の下方空間(下部プレナム10)を経由して炉心2の下方から炉心2の内部に流入する。
一方、重力気水分離空間13で分離された微小液滴を伴う湿り蒸気は、環状ドライヤ14でほぼ全ての微小液滴が除去されて、乾き蒸気に変化する。乾き蒸気は、主蒸気管15を介してタービン(図示せず)に導かれ、発電に使用される。
冷却材の密度は、炉心2の内側で冷却材(冷却水)が沸騰して蒸気が発生することで、炉心2の内側と外側とで大きく変化する。つまり、炉心2の内側(具体的には、シュラウド4の内側の炉心領域)では、冷却材(冷却水)は、単相水状態よりも密度の低い蒸気-飽和水の気液二相状態になっている。これに対して、炉心2の外側(具体的には、シュラウド4の外側のダウンカマ領域11)では、冷却材(冷却水)は、単相水状態になっている。そのため、冷却材の密度は、炉心2(シュラウド4)の内側の方が外側よりも低くなっている。このため、圧力容器1の内部では、炉心2の内部を上昇し、ダウンカマ領域11を下降する冷却材の自然対流が生じる。すなわち、沸騰水型軽水炉100は、冷却材を流動させる駆動力として炉心2(シュラウド4)の内側と外側との冷却材の密度差を利用することにより、冷却材を炉心2に効率よく供給して炉心2を冷却することができる。
このような沸騰水型軽水炉100は、炉心で冷却材(水)が沸騰して蒸気が発生することで冷却材の平均密度が大きく変化するため、水が沸騰しない加圧水型軽水炉に比べて、自然循環方式を容易に採用することができる。このため、本実施形態では、沸騰水型軽水炉100がインターナルポンプやジェットポンプ等を採用しない自然循環方式の軽水炉となっている。
沸騰水型軽水炉100は、炉心2の上方に、十字型制御棒5をガイドする制御棒ガイド8を有している。制御棒ガイド8は、炉心2の上端から上方に突出するように配置されている。制御棒ガイド8は、上下方向に延びる長尺でかつ中空な構造になっている。制御棒ガイド8の軸方向長さは、十字型制御棒5の制御材充填部5Aの軸方向長さよりも長くなっている。これにより、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5の制御材充填部5Aを十分にガイドすることができる。
沸騰水型軽水炉100は、上下方向に延びる長尺な部材として制御棒ガイド8を炉心2の上方に配置することにより、制御棒ガイド8をチムニとして機能させることができる。チムニの内側の冷却材は、原子力発電プラント運転時において、沸騰しており、多量のボイド(気泡)を含んでいるため、チムニの外側の冷却材よりも密度が低くなっている。したがって、沸騰水型軽水炉100は、チムニ内外の冷却材量差を増加させることにより、冷却材の自然循環駆動力を増大させることができる。沸騰水型軽水炉100は、チムニの長さ(高さ)を長く(高く)すること、即ちチムニ領域の体積を増やすことでチムニ内外の冷却材量差を増加させることができ、その結果、炉心2での冷却材の自然循環流量を増加させることができる。つまり、沸騰水型軽水炉100は、チムニの長さ(高さ)を長く(高く)することにより、チムニ機能を向上(増大)させることができる。
なお、チムニ部は、仕切りの無い大口径空間ではなく、ある程度の領域で仕切り板を設ける必要がある。仮に、制御棒ガイド8の領域が空間的に分割されていない構成になっていたとする。つまり、シュラウド4の内部の空間が仕切りのない大空間になっていたとする。この構成の場合に、炉心2で発生した蒸気は、大空間の径方向中央にドリフト(漂流)して、大気泡に成長する。この場合に、気泡の上昇速度が増加することにより、シュラウド4の内部のボイド率が低下する。その結果、シュラウド4の内側と外側との冷却材の密度差が低下するため、炉心2での冷却材の自然循環駆動力が低下する。
したがって、炉心2での冷却材の自然循環駆動力の低下を抑制するためには、炉心2の上方に設けられた制御棒ガイド8の領域をある程度の幅の流路に分割して、蒸気泡のドリフトを防止することが好ましい。つまり、炉心2での冷却材の自然循環駆動力の低下を抑制するためには、制御棒ガイド8の領域が空間的に分割された構成になっており、シュラウド4の内部の空間が制御棒ガイド8で複数の小空間に仕切られた構成になっていることが好ましい。換言すると、制御棒ガイド8がシュラウド4の内部の空間を複数の小空間に仕切る分割チムニとして機能させる構成にすることが好ましい。
本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、一般的な沸騰水型軽水炉で採用されている制御棒下部挿入方式ではなく、加圧水型軽水炉と同様に制御棒上部挿入方式を採用している。
このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、制御棒上部挿入方式を採用することにより、十字型制御棒5の自重を駆動力として利用する、緊急時の制御棒スクラムを実現することができる。また、沸騰水型軽水炉100は、制御棒上部挿入方式を採用することにより、制御棒駆動機構7及び十字型制御棒5の引き抜き代を炉心2の下方空間(下部プレナム10)内や原子炉圧力容器1の下方に確保しなくてもよいため、原子炉圧力容器1内における炉心2の設置高さを下げることができる。このような沸騰水型軽水炉100は、仮に、炉心2が溶融して、その溶融物が下部プレナム10に堆積するような事故が発生した場合であっても、比較的少ない水量で原子炉圧力容器1や炉心2を水漬けにすることができる。そのため、沸騰水型軽水炉100は、事故を収束させ易くすることができる。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100では、十字型制御棒5が制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有する長尺な制御棒として構成されている。そのため、炉心2から十字型制御棒5を引き抜いたときに、制御棒ガイド8の上下方向の長さに対して、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の制御材充填部5Aの突出量(突出部分の長さ)が、チムニの長さとして加わる。つまり、沸騰水型軽水炉100は、上下方向に延びる長尺な部材として制御棒ガイド8に加えて十字型制御棒5も炉心2の上方に配置することができる。そのため、十字型制御棒5が運転サイクル末期時位置31に配置された場合に、制御棒ガイド8の領域に加えて、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の制御材充填部5Aによって形成される流路が新たなチムニ領域として機能する。このような沸騰水型軽水炉100は、さらにチムニ機能を向上させることができる。したがって、このような沸騰水型軽水炉100は、炉心2での冷却材の自然循環流量を増加させることができる。
なお、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5の完全引き抜き時に(つまり、十字型制御棒5を運転サイクル末期時位置31に配置したときに)、十字型制御棒5の制御材充填部5Aが水面の上に露出しない高さに、原子炉圧力容器内水位3を設定している。沸騰水型軽水炉100は、後記する従来技術に相当する比較例に係る沸騰水型軽水炉1000(図10参照)と比較すると、原子炉圧力容器内水位3から炉心2の上端までの距離(深さ)が大きく(深く)なっている。このように水位を設定することにより、十字型制御棒5の完全引き抜き時においても、冷却水の自然循環流路が途切れることなく、炉心冷却を維持できる。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、炉心2の下方に、フォロアガイド9を有している。フォロアガイド9は、十字型制御棒5の完全挿入時に(つまり、十字型制御棒5を炉停止時位置29に配置したときに)、十字型制御棒5のフォロア部5Bの側面を支持する部材である。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、炉心2の径方向の外側に、円筒形状のシュラウド4を有している。本実施形態のシュラウド4の上端は、制御棒ガイド8の上端と同等の高さ位置に配置されている。また、シュラウド4の下端は、フォロアガイド9の下端よりも下方の高さ位置に配置されている。したがって、シュラウド4の上下方向長さ(高さ)は、制御棒ガイド8の上端と同等の高さ位置からフォロアガイド9の下端よりも下方の高さ位置までの長さになっている。本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、シュラウド4をこのような上下方向長さ(高さ)に構成にすることにより、シュラウド4の上下方向長さの分だけダウンカマ領域11の上下方向長さを延長している。
炉心2よりも下方の領域(フォロアガイド9が設けられた領域)は、発熱体である燃料がなく、また、冷却材の密度がシュラウド4の内側と外側とで同じである。そのため、炉心2よりも下方の領域は、冷却材の自然循環流量の増加に寄与しない。したがって、原子炉圧力容器1の内部において、冷却材の自然循環流量の増加に寄与する領域は、炉心2が設置された領域と制御棒ガイド8と設置された領域との2つの領域となる。
以上に述べたように、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、制御棒ガイド8をチムニとして機能させることができるため、制御棒ガイド8の長さ分だけ、シュラウド4の内側の冷却材の水頭とシュラウド4の外側のダウンカマ領域11の冷却材の水頭との差を増大させることができ、その結果、冷却材の自然循環駆動力を増加させて、燃料(後記する正方形燃料集合体16(図2A参照))を冷却するための十分な冷却材の炉心流量を確保することができる。
<沸騰水型軽水炉の細部の構成>
以下、図2A乃至図2Dを参照して、本実施形態の沸騰水型軽水炉100の炉心2付近の構成につき説明する。また、図3を参照して、制御棒ガイド8の上端付近の構成につき説明する。また、図4A乃至図4Eを参照して、十字型制御棒5の構成につき説明する。図2A乃至図2Dは、それぞれ、炉心2付近の構成図である。また、図3は、制御棒ガイド8の上端付近の構成図である。また、図4A乃至図4Eは、それぞれ、十字型制御棒5の構成図である。
図2Aは、原子力発電プラントの運転停止時(すなわち、十字型制御棒5が炉停止時位置29(図1参照)に配置されたとき)の炉心2内の状態を示している。図2Aに示すように、炉心2には、複数本の正方形燃料集合体16が装荷されている。正方形燃料集合体16は、複数の燃料棒33が正方格子状に配列されて束ねられた正方格子配列燃料棒群である。正方形燃料集合体16は、複数本の燃料棒33を正方格子状に配置して束ね、径方向の外周を略四角形のチャンネルボックス32Aで覆うことで構成されている。十字型制御棒5は、複数のチャンネルボックス32A(図2A参照)の間隙に、設置される。なお、本実施形態の図では6行6列の燃料棒配列として図示されているが、これはあくまでも一例であり、現行の沸騰水型軽水炉で用いられている9行9列格子燃料や、将来装荷される可能性のある10行10列格子燃料に対しても、同様に適用可能である。
なお、「チャンネルボックス」とは、燃料集合体の内部スペースを規定する部材である。本実施形態1では、一般に標準的に用いられている通常長さのチャンネルボックスではなく、通常長さのチャンネルボックスよりも長尺化されたチャンネルボックス32Aが用いられるものとして説明する。以下、チャンネルボックス32Aを「長尺チャンネルボックス32A」と称する場合がある。
チャンネルボックス32Aは、内部に複数体の燃料棒33が充填された燃料充填部132Aと、中空なガイド部132Bと、を有している。ガイド部132Bは、制御棒ガイド8として機能する部材であり、燃料充填部132Aから上方に延びるように形成されている。沸騰水型軽水炉100は、制御棒ガイド8として機能するガイド部132Bをチャンネルボックス32Aに有することにより、チムニ機能を得ることができ、その結果、炉心2での冷却材の自然循環流量を増加させることができる。
図2Aは、十字型制御棒5が炉停止時位置29(図1参照)に配置されたときの炉心2内の状態を示している。そのため、図2Aに示す例では、十字型制御棒5の制御材充填部5Aがチャンネルボックス32Aの燃料充填部132Aに隣接する位置に配置されており、また、十字型制御棒5のフォロア部5Bが炉心2の下方に配置されている。
沸騰水型軽水炉100は、炉心2の下部を構成する炉心下部支持板(図示省略)の上方に、正方形燃料集合体16を有している。また、沸騰水型軽水炉100は、炉心下部支持板(図示省略)の下方に、十字型制御棒5のフォロア部5Bをガイドするフォロアガイド9を有している。フォロアガイド9は、十字型制御棒5のフォロア部5Bの上下方向の移動を案内する十字型制御棒案内管22と、正方形燃料集合体16、炉心下部支持板(図示省略)、及び十字型制御棒案内管22の荷重を支える制御棒案内管支持部23と、を有している。十字型制御棒案内管22は、制御棒案内管支持部23を介して原子炉圧力容器1の下部ヘッドに固定されている。
十字型制御棒案内管22は、有底構造になっている。そのため、沸騰水型軽水炉100は、フォロア部5Bの下端が十字型制御棒案内管22の底部に突き当たる位置までしか、十字型制御棒5を下方に可動することができない。このような沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5を挿入し過ぎることにより、十字型制御棒5が炉心2を突き抜けて、十字型制御棒5の制御材充填部5Aが原子炉圧力容器1の底に落下する事故の発生を防止することができる。また、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒案内管22(フォロアガイド9)が存在することにより、炉心2を上昇する冷却材(冷却水)の流れによって十字型燃料棒5が振動するのを防止することができる。
なお、本実施形態1では、フォロアガイド9は、十字型制御棒5のフォロア部5Bを支持することができればよく、図2Aに示した構造に限定されるものではない。また、沸騰水型軽水炉100は、以下のような構造にすることで、フォロアガイド9を削除することもできる。例えば、沸騰水型軽水炉100は、長尺チャンネルボックス32Aをさらに下方に延長して、長尺チャンネルボックス32Aをフォロアガイド9と同様に機能させることにより、フォロアガイド9を削除することができる。
図2Bは、図2Aに示すX1-X1線に沿ってチャンネルボックス32Aのガイド部132Bを切断して得られる正方形燃料集合体16と制御棒駆動軸6の概略的な断面形状を示している。図2Bに示すように、チャンネルボックス32Aの上部領域であるガイド部132Bは、内部に燃料棒33が配置されていない空洞領域となっている。
図2Cは、図2Aに示すX2-X2線に沿ってチャンネルボックス32Aの燃料充填部132Aを切断して得られる正方形燃料集合体16と十字型制御棒5の制御材充填部5Aの概略的な断面形状を示している。図2Cに示すように、チャンネルボックス32Aの下部領域である燃料充填部132Aは、内部に燃料棒33が配置された領域となっている。
図2Dは、図2Aに示すX3-X3線に沿って十字型制御棒5のフォロア部5Bを切断して得られる十字型制御棒5のフォロア部5Bの概略的な断面形状を示している。図2Dに示すように、十字型制御棒5のフォロア部5Bは、十字型制御棒案内管22によって周方向を支持されているため、流動振動やデブリ接触等に起因する破損を防止することができる。
図3は、制御棒ガイド8として機能するチャンネルボックス32Aのガイド部132Bの上端付近の具体的な形状を示している。図3は、シュラウド4が含まれるように、図2Bに示す構成を径方向に拡大して示している。図3に示すように、シュラウド4の内部には、チャンネルボックス32Aのガイド部132Bの上端付近の側面を支持するための上部格子17が設置される。十字型制御棒5は、隣接する他の制御棒と併せて、4本で4体の正方形燃料集合体16を囲む1つの大口径流路を形成している。
図3では、複数の正方形燃料集合体16が縦-横方向に等間隔で配置されている。そのため、各正方形燃料集合体16において、制御棒挿入側の集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)と制御棒が無い側の集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)とは同じである。
チャンネルボックス32Aの壁は、十字型制御棒5の側面をガイドするガイド機能を有する。また、チャンネルボックス32Aの壁は、制御棒ガイド8の領域の流路を分割する役割も果たす。これにより、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5のガイド機能とチムニ機能との両方を同時に実現することができる。
なお、本実施形態1では、上部格子17が上下方向に長い(高い)単体のシュラウド4(以下、「長尺シュラウド4」と称する)に溶接固定されているものとして説明する。しかしながら、以下のような複数の部材を用いることにより、同様の構成を実現することができる。例えば、長尺シュラウド4を炉心2の上端位置で上下2領域に分割する。下部の円筒をシュラウド、上部の円筒をチムニ円筒18と呼ぶ。チムニ円筒18には上部格子17を溶接する。このチムニ円筒18をシュラウドの上に積み重ねて、ボルト等でシュラウドとチムニ円筒18を固定することによって、同様の構成を実現することができる。
図4A乃至図4Eは、十字型制御棒5の構成を示している。図4Aは、正面から見た十字型制御棒5の構成を示している。また、図4Bは、図4Aに示すX4-X4線に沿って十字型制御棒5の制御材充填部5Aを切断して得られる概略的な断面形状を示している。また、図4Cは、図4Bに示す制御材充填部5Aの領域R11の内部構造を拡大して示している。また、図4Dは、図4Aに示すX5-X5線に沿って十字型制御棒5のフォロア部5Bを切断して得られる概略的な断面形状を示している。また、図4Eは、図4Dに示すフォロア部5Bの領域R12の内部構造を拡大して示している。
図4Aに示すように、十字型制御棒5は、制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有している。十字型制御棒5は、御棒駆動軸6を介して制御棒駆動機構7(図1参照)に接続されている。
図4Bと図4Dに示すように、十字型制御棒5は、上面視で十字状の形状を呈している。つまり、十字型制御棒5は、上面視で中心部から四方に突出する翼部分を有する形状になっている。
図4C及び図4Eに示すように、十字型制御棒5は、各翼部分に複数本の充填管26が直列に(例えば1列に)並べられて配置されており、また、各翼部分でそれら複数本の充填管26の周囲がブレードシース25で覆われた構成になっている。なお、冷却材は、ブレードシース25と充填管26との間を流れるが、充填管26の内部は流れない。
図4Cに示すように、制御材充填部5Aでは、中性子吸収材27が充填管26の中に充填されている。一方、図4Eに示すように、フォロア部5Bでは、フォロア材28が充填管26の中に充填されている。
十字型制御棒5は、制御材充填部5Aとフォロア部5Bとで、充填管26に充填する物質が異なるだけで、同様の構造になっている。
このように、本実施形態1は、製作時において、充填管26に充填する2種類の物質を使い分けることで、制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有する十字型制御棒5を比較的容易に実現することができる。
なお、フォロア部5Bに充填するフォロア材28としては、例えばグラファイトを用いることができる。
ただし、フォロア材28としては、グラファイトの代わりに、酸化銅(CuO)を用いることも可能である。フォロア材28として酸化銅を用いた場合に、銅は水素よりもイオン化傾向が小さい。そのため、酸化銅と水素とが反応すると、酸化銅が銅に還元されると同時に、水素が酸化されて水に戻る。したがって、フォロア材28として酸化銅を用いた場合は、過酷事故時に発生する水素の量を低減する効果を得ることができる。また、酸化銅の密度は、グラファイトよりも大きい。そのため、フォロア材28として酸化銅を用いた場合に、十字型制御棒5の重量が増加する。これにより、沸騰水型軽水炉100は、緊急時の制御棒スクラムにおいて、十字型制御棒5の落下速度を上昇させることができ、十字型制御棒5を短時間で炉心2に挿入することができる。そのため、沸騰水型軽水炉100は、安全性を向上させることもできる。
なお、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100は、制御棒ガイド8付近の構成を以下のような構成にすることにより、制御棒ガイド8の領域をある程度の幅の流路に分割している。
具体的には、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、正方形燃料集合体16の内部スペースを定義するチャンネルボックスとして、一般に標準的に使用されている通常長さのチャンネルボックスではなく、通常長さのチャンネルボックスよりも長尺化されたチャンネルボックス32Aを用いるものとする。そして、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、図2Cに示すように、長尺チャンネルボックス32Aの下部領域に、燃料棒33が充填された燃料充填部132Aを配置するとともに、図2Bに示すように、長尺チャンネルボックス32Aの上部領域に、燃料棒33の無い空洞領域(正方形燃料集合体16のガイド部132B)を配置した構成になっている。
沸騰水型軽水炉100は、制御棒ガイド8付近の構成をこのような構成とすることで、炉心2の上方の大空間を長尺チャンネルボックス32Aの壁で分割している。このような沸騰水型軽水炉100は、蒸気泡のドリフトを防止して、制御棒ガイド8のチムニとしての機能を増大させる効果を確保することができる。同時に、沸騰水型軽水炉100は、長尺チャンネルボックス32Aの壁で十字型制御棒5をガイドすることができる。
また、沸騰水型軽水炉100は、長尺チャンネルボックス32Aの壁で十字型制御棒5をガイドすることができるため、沸騰水型軽水炉100を停止して燃料を交換する際に、チムニとして機能する制御棒ガイド8を取り外す必要がなく、燃料交換作業を効率よく行うことができる。
<十字型制御棒が2つの領域を有することによる利点>
ここで、十字型制御棒5が制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有することによる利点を説明する。ここでは、十字型制御棒5が2つの領域を有することによる利点を分かり易く説明するために、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000(図10参照)の構成と、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100(図1参照)の構成とを比較して説明する。
図10は、従来技術に相当する比較例に係る沸騰水型軽水炉1000の構成図である。図10に示すように、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000は、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100(図1参照)と比較すると、十字型制御棒5の代わりに、十字型制御棒5Zを有している点で相違している。十字型制御棒5Zは、制御材充填部5A(つまり、内部に中性子吸収材が充填された領域)しか有していない制御棒である。十字型制御棒5Zは、制御材充填部5Aしか有していないため、その長さが十字型制御棒5よりも短くなっている。
比較例に係る沸騰水型軽水炉1000は、炉心2に対して本実施形態の十字型制御棒5よりも長さの短い十字型制御棒5Zの引き抜き及び挿入を行う。そのため、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000では、炉心2から十字型制御棒5Zを引き抜いたときに、炉心2の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5Zの突出量は、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100の十字型制御棒5の突出量よりも小さくなっている。したがって、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000は、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100よりも小さなチムニ効果しか得ることができない。換言すると、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100は、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000よりも大きなチムニ効果を得ることができる。
また、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000の十字型制御棒5Zは、制御材充填部5Aしか有していない。そのため、比較例に係る沸騰水型軽水炉1000は、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100が十字型制御棒5を引き抜いたときと異なり、十字型制御棒5Zを引き抜いたときに、炉心2のチャンネルボックス間の冷却材をフォロア部5Bで排除することができない。換言すると、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5Zを引き抜いたときに、炉心2のチャンネルボックス間の冷却材をフォロア部5Bで排除することができる。
<沸騰水型軽水炉の動作>
係る構成において、沸騰水型軽水炉100は、以下のようにしてスペクトルシフト運転を良好に行うことができる。その結果、沸騰水型軽水炉100は、良好なスペクトルシフト効果を得ることができる。なお、「スペクトルシフト効果」とは、運転サイクル初期で中性子スペクトルを硬くしてウラン235の反応度を下げると共にウラン238をプルトニウム239に転換して燃料を蓄積し、ウラン235が燃焼して反応度が低下する運転サイクル末期において中性子スペクトルを軟らかくすることで燃え残っているウラン235と生成したプルトニウム239とを燃焼させることで、燃料の経済性を向上させる効果を意味している。
(1)原子力発電プラントの運転停止時において、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5を炉停止時位置29(図1参照)に配置した状態になっている。このとき、制御材充填部5Aは、チャンネルボックス32A(図2A参照)によって支持されるとともに、フォロア部5Bは、フォロアガイド9の十字型制御棒案内管22(図2A参照)によって支持される。また、このとき、全ての制御材充填部5Aが炉心2に挿入されているため、炉心2は未臨界状態になる。
(2)原子力発電プラントの運転サイクル初期において、沸騰水型軽水炉100は、起動する際に、十字型制御棒5を炉心2から引き抜いていき、多くの十字型制御棒5を炉停止時位置29(図1参照)から運転サイクル初期時位置30(図1参照)に移動させる。ただし、沸騰水型軽水炉100は、運転サイクル初期における燃料の余剰反応度を制御するために、一部の十字型制御棒5を、炉停止時位置29と運転サイクル初期時位置30との中間の位置に配置した状態(部分挿入状態)にする。
したがって、運転サイクル初期では、多くの十字型制御棒5は、フォロア部5Bが炉心2のチャンネルボックス32A(図2A参照)によって支持されるとともに、制御材充填部5Aが制御棒ガイド8によって支持された状態になっている。また、部分挿入状態になっている一部の十字型制御棒5は、フォロアガイド9の上端領域の一部、チャンネルボックス32A(図2A参照)、及び制御棒ガイド8の下端領域の一部によって支持される。このとき、多くの十字型制御棒5のフォロア部5Bが炉心2に挿入された状態になっているため、チャンネルボックス32A(図2A参照)間の冷却材がフォロア部5Bによって排除される。
一般的に、沸騰水型軽水炉では、冷却材/燃料体積比が大きければ大きいほど、中性子スペクトルが軟化し、中性子と燃料との反応度が増加する傾向にある。沸騰水型軽水炉では、運転サイクル末期で燃料が燃え尽きるように、ウラン235を余分に装荷しており、運転サイクル初期に余分なウラン235分の反応度(余剰反応度)を調整して臨界を維持する必要がある。
従来技術に相当する比較例に係る沸騰水型軽水炉1000(図10参照)は、運転サイクル初期において、十字型制御棒5の中性子吸収材充填部5Aで吸収することでしか余分なウラン235分の反応度(余剰反応度)を調整することができない。このような比較例に係る沸騰水型軽水炉1000(図10参照)は、スペクトルシフト運転を行うことができない。
これに対して、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100は、運転サイクル初期において、十字型制御棒5のボイドの役割を果たすフォロア部5Bを炉心2に挿入することで、冷却材/燃料体積比を減少させて、中性子スペクトルを硬化させる。これにより、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、中性子と冷却材(水分子)との衝突による中性子エネルギーの減少を抑制することができ、熱中性子の量を減らし、その結果、中性子とウラン235との反応度を抑制して、燃料の余剰反応度をある程度まで調整することができる。なお、残りの余剰反応度は、十字型制御棒5の制御材充填部(中性子吸収材充填部)5Aで調整する。このように、十字型燃料棒5の下部にボイドの役割を果たすフォロワ部5Bを有する本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、図10に示されるような比較例の沸騰水型軽水炉に比較して、良好にスペクトルシフト運転を行うことができる。また、同時に高速中性子とウラン238の反応によって燃料物質であるプルトニウム239を生成することもできる。
(3)原子力発電プラントの運転サイクル初期から運転サイクル末期に亘って、沸騰水型軽水炉100は、部分挿入状態となっている一部の十字型制御棒5を徐々に引き抜いていく。これにより、沸騰水型軽水炉100は、ウラン235が燃焼して失われた分の反応度を補填し、一定の出力レベルで運転を継続することができる。
(4)原子力発電プラントの運転サイクル末期において、沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5をさらに引き抜いて、全ての十字型制御棒5を運転サイクル初期時位置30から運転サイクル末期時位置31に移動させる。
このとき、沸騰水型軽水炉100は、以下の2つの効果が得られる。
1つ目の効果は、十字型制御棒5のフォロア部5Bを炉心2から引き抜くことで、炉心2の冷却材/燃料体積比を増加させて、燃え残っているウラン235及び蓄積されたプルトニウム239を効率よく燃焼させることで、反応度を向上させることができる、という効果である。
2つ目の効果は、チムニとして機能する制御棒ガイド8の長さを増加させることによって、炉心2での冷却材の自然循環流量を増加させることができる、という効果である。
2つ目の効果は、以下のようにして得られる。すなわち、例えば、図1に示すように、十字型制御棒5が運転サイクル末期時位置31に配置された場合に、十字型制御棒5の制御材充填部5Aが制御棒ガイド8の上方に突き出した状態となる。
図3に示すように、十字型制御棒5は、隣接する制御棒と併せて、4本で4体の正方形燃料集合体16を囲む1つの大口径流路を形成している。十字型制御棒5が運転サイクル末期時位置31に配置された場合に、制御棒ガイド8の領域に加えて、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の制御材充填部5Aによって形成される流路が新たなチムニ領域として機能する。
運転サイクル初期から運転サイクル末期までは、原子炉圧力容器1の内部における冷却材の自然循環駆動力を確保するための軸方向の領域は、炉心2の領域と制御棒ガイド8の領域との2つの領域だけである。これに対して、運転サイクル末期時位置31では、制御棒ガイド8の上下方向の長さに加え、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の制御材充填部5Aの突出量(突出部分の長さ)が、チムニの長さとして加わる。このような沸騰水型軽水炉100は、実効的なチムニ長さを十字型制御棒5の制御材重点部5Aの突出部によって増加させることができるため、チムニ機能を向上させることができる。したがって、このような沸騰水型軽水炉100は、ポンプを用いることなく、炉心2での冷却材の自然循環流量を増加させることができる。
前記したように、沸騰水型軽水炉100では、炉心2で蒸気が発生し、気液二相流状態となっている。以下、単位体積当たりの蒸気体積割合を「ボイド率」と称する。一般に、ボイド率は、冷却材の炉心流量が増加すると低下する。そのため、チャンネルボックス32A(図2A参照)の内側の冷却材領域における冷却材/燃料体積比が増加する。これにより、沸騰水型軽水炉100は、前記した1つ目の効果である十字型制御棒5のフォロア部5Bの引き抜きによるチャンネルボックス32A(図2A参照)の外側の冷却材/燃料体積比の増加に加えて、前記した2つ目の効果であるチャンネルボックス32A(図2A参照)の内側の冷却材/燃料体積比の増加を実現することができる。
以上の2つの効果によって、スペクトルシフト効果がさらに向上して燃料経済性が向上する。特に、2つ目の効果は、従来技術に相当する比較例に係る自然循環方式の沸騰水型軽水炉1000(図10参照)では、冷却材の炉心流量を増加(変化)させることができない(困難である)、という課題があったが、本実施形態の沸騰水型軽水炉100では、これを解決することができる。
すなわち、本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、以下のような利点を有する。
(1)沸騰水型軽水炉100は、チムニとして機能する制御棒ガイド8の長さを増加させることによって、炉心2での冷却材の自然循環流量を増加させることができる。また、沸騰水型軽水炉100は、原子力発電プラントの運転サイクル末期において、十字型制御棒5のフォロア部5Bを炉心2から引き抜くことで、炉心2の冷却材/燃料体積比を増加させて、燃え残っているウラン235及び蓄積されたプルトニウム239を効率よく燃焼させることで、反応度を向上させることができる。これらの要因により、沸騰水型軽水炉100は、自然循環方式の軽水炉でありながら、良好なスペクトルシフト効果(燃料経済性の向上効果)を得ることができる。
(2)沸騰水型軽水炉100は、充填管26に充填する材料を変更するだけで、2つの領域からなる十字型制御棒5を比較的容易に製造することができる。
(3)沸騰水型軽水炉100は、燃料の交換を容易に行うことができる。
(4)沸騰水型軽水炉100は、制御棒の過剰挿入事故を物理的に防止することができる。
<実施形態1に係る沸騰水型軽水炉の主な特徴>
(1)図1に示すように、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100では、十字型制御棒5は、内部に中性子吸収材が充填された制御材充填部(反応度制御部)5Aと、内部にフォロア材が充填されたフォロア部5Bと、を備えている。制御材充填部5A及びフォロア部5Bは、それぞれ、炉心2の高さと同程度の長さに形成されている。フォロア部5Bは、制御材充填部5Aの下方に配置されている。フォロア材は、ボイド(気泡)と同様の役割を果たす。
本実施形態の沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5が引き抜かれると、制御材充填部5Aが制御棒ガイド8の上方に突き出した状態になる。これにより、沸騰水型軽水炉100は、チムニ機能を増大させる効果を確保することができる。このような沸騰水型軽水炉100は、冷却材の炉心流量や炉心2での中性子スペクトルを変化させることができ、スペクトルシフト運転を効率よく行うことができる。そのため、沸騰水型軽水炉100は、スペクトルシフト効果を向上させることができる。また、沸騰水型軽水炉100は、圧力容器の近傍に再循環ポンプや配管等を設置したり、又は、原子炉内蔵型の再循環ポンプ(インターナルポンプ)を圧力容器内(炉心近傍)に設置したりする必要がないため、圧力容器周りや炉心近傍の構造を単純化することができる。
(2)図1に示すように、沸騰水型軽水炉100は、少なくとも炉心2の上方で十字型制御棒5の側面を支持する制御棒ガイド8を有している。制御棒ガイド8は、炉心2の上端から上方に突出するように配置されている。制御棒ガイド8の軸方向長さは、十字型制御棒5の制御材充填部5Aの軸方向長さよりも長くなっている。
このような沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5の制御材充填部5Aを十分にガイドすることができるとともに、チムニ効果を向上させて、炉心2の内部の冷却材を上方に誘導し易くすることができる。
(3)図2Aに示すように、制御棒ガイド8は、複数の燃料棒が正方格子状に配列されて束ねられた正方形燃料集合体の径方向の外周を覆うチャンネルボックスを有している。チャンネルボックスは、十字型制御棒5の制御材充填部5Aの軸方向長さよりも長い長尺チャンネルボックス32Aとして構成されている。このような沸騰水型軽水炉100は、チムニ効果を向上させて、炉心2の内部の冷却材を上方に誘導し易くすることができる。
(4)図2Aに示すように、フォロアガイド9は、炉心2の下方で十字型制御棒5のフォロア部5Bの側面を支持する十字型制御棒案内管22と、十字型制御棒案内管22を下から支持する制御棒案内管支持部23と、を有している。沸騰水型軽水炉100は、フォロア部5Bの下端が十字型制御棒案内管22の底部に突き当たる位置までしか、十字型制御棒5を下方に可動することができないように、十字型制御棒5の移動範囲を規定することができる。このような沸騰水型軽水炉100は、十字型制御棒5を挿入し過ぎることにより、十字型制御棒5が炉心2を突き抜けて、十字型制御棒5の制御材充填部5Aが原子炉圧力容器1の底に落下する事故の発生を防止することができる。
(5)図4C及び図4Eに示すように、十字型制御棒5は、上面視で中心部から四方に突出する4つのブレードシース25を有している。それぞれのブレードシース25の内部には、複数本の充填管26が直列に並べて配置されている。それぞれの充填管26の内部には、十字型制御棒5の制御材充填部5Aでは中性子吸収材が充填されているとともに、十字型制御棒5のフォロア部5Bではフォロア材が充填されている。このような沸騰水型軽水炉100は、製作時において、充填管26に充填する2種類の物質を使い分けることで、制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有する十字型制御棒5を比較的容易に実現することができる。
以上の通り、本実施形態1に係る沸騰水型軽水炉100によれば、炉心流量を制御するためのポンプをなくして圧力容器周りや炉心近傍の構造を単純化することと、スペクトルシフト運転を良好に行うこととを両立させることができる。
[実施形態2]
本実施形態2では、制御棒ガイド8の構造を変更した沸騰水型軽水炉100Aを提供する。以下、図5及び図6を参照して、本実施形態2に係る沸騰水型軽水炉100Aの構成につき説明する。図5は、本実施形態2に係る沸騰水型軽水炉100Aの炉心2付近の構成図である。図6は、沸騰水型軽水炉100Aの制御棒ガイド8付近の構成図である。
図5に示すように、本実施形態2に係る沸騰水型軽水炉100Aは、実施形態1の沸騰水型軽水炉100(図2A参照)と比較すると、制御棒ガイド8付近の構成要素として、長尺チャンネルボックス32Aの代わりに、一般に標準的に用いられている通常長さのチャンネルボックス32を用いるとともに、炉心2の上方に複数個の制御棒支持筒19を設けている点で相違している。
図6に示すように、沸騰水型軽水炉100Aは、炉心2から上方に引き抜かれた状態の十字型制御棒5を支持することができるように、制御棒ガイド8として、複数の制御棒支持筒19と、制御棒支持筒19を支持する複数の支持筒位置決めビーム20と、これらの周囲を覆うチムニ円筒18と、を有する構造になっている。沸騰水型軽水炉100Aは、制御棒支持筒19にチムニ機能と制御棒支持機能とを持たせている。
図5に示すように、制御棒支持筒19は、チャンネルボックス32の上端から正方形燃料集合体16の約2倍の高さまでをカバーする筒である。制御棒支持筒19は、チャンネルボックス32の上方に配置されている。制御棒支持筒19は、チムニ円筒18の内部に、十字型制御棒5の側面を支持するように正方格子状に配置されている。
支持筒位置決めビーム20は、チムニ円筒18の内部に設置された梁部材である。支持筒位置決めビーム20は、正方格子状に設置されており、制御棒支持筒19の少なくとも上下端を支持するように複数個所に設置される。
支持筒位置決めビーム20の端部は、チムニ円筒18の内壁に溶接されている。これにより、支持筒位置決めビーム20は、チムニ円筒18の内部における位置が固定されている。このような支持筒位置決めビーム20は、制御棒支持筒19を安定して支持することができる。
各支持筒位置決めビーム20は、他の支持筒位置決めビーム20と交差するように配置されている。支持筒位置決めビーム20同士の交差部分は、嵌め合い構造になっており、溶接されている。各支持筒位置決めビーム20は、十字型制御棒5を安定して支持するために、例えば、制御棒支持筒19の中ほどの高さの位置に配置されている。
沸騰水型軽水炉100Aは、このような支持筒位置決めビーム20を有することにより、制御棒支持筒19間の距離を適切に保持することができる。そして、沸騰水型軽水炉100Aは、炉心2から上方に引き抜かれた十字型制御棒5を、制御棒支持筒19の間隙で支持することができる。
沸騰水型軽水炉100Aでは、運転時に炉心2の内部で発生した気液二相流の大部分は、制御棒支持筒19の内部を通って重力気水分離空間13(図1参照)に到達するように、流れる。
なお、本実施形態2では、炉心2に装荷されている正方形燃料集合体16の交換は、制御棒ガイド8(制御棒支持筒19、支持筒位置決めビーム20、及びチムニ円筒18)を取り外してから行われる。
このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、実施形態1の沸騰水型軽水炉100(図2A参照)と同様のチムニ機能を得ることができる。例えば、沸騰水型軽水炉100Aは、4メートルの通常長さのチャンネルボックス32を用いることにより、その倍の8メートルの長さの長尺チャンネルボックス32Aを用いなくても良好なチムニ機能を得ることができる。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、一般に標準的に用いられている通常長さのチャンネルボックス32を用いるため、部品の共通化を図ることができ、製造の容易性を向上させることができる。その結果、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、実施形態1の沸騰水型軽水炉100(図2A参照)よりも製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、複数(例えば4つ)のチャンネルボックス32の上に制御棒支持筒19を配置することで、チムニ効果と制御棒支持効果とを得ることができる。本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、チャンネルボックス32の約2倍の大きさの辺長を有する大型の制御棒支持筒19を用いることにより、制御棒支持効果を得るために必要な鋼材の物量を低減することができる。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、圧力容器の近傍に再循環ポンプや配管等を設置したり、又は、原子炉内蔵型の再循環ポンプ(インターナルポンプ)を圧力容器内(炉心近傍)に設置したりする必要がないため、圧力容器周りや炉心近傍の構造を単純化するができる。また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、十字型制御棒5が制御材充填部5Aとフォロア部5Bとの2つの領域を有しているため、スペクトルシフト運転を良好に行うことができる。したがって、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Aは、実施形態1の沸騰水型軽水炉100(図2A参照)と同様に、炉心流量を制御するためのポンプをなくして圧力容器周りや炉心近傍の構造を単純化することと、スペクトルシフト運転を良好に行うこととを両立させることができる。
[実施形態3]
本実施形態3では、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aに対して、集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)が変更された沸騰水型軽水炉100Bを提供する。以下、図7Aを参照して、本実施形態3に係る沸騰水型軽水炉100Bの構成につき説明する。図7Aは、本実施形態3に係る沸騰水型軽水炉100Bの炉心2付近の構成図である。
図7Aに示すように、本実施形態3に係る沸騰水型軽水炉100Bは、実施形態1の沸騰水型軽水炉100(図3参照)と比較すると、制御棒が無い側の集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)24Bが制御棒挿入側の集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)24Aよりも狭く(小さく)なっている点で相違している。なお、図7Aに示すチャンネルボックス間ギャップ構成を有する燃料格子はD格子と呼ばれる。
このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100Bは、以下の効果を得ることができ、その結果、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100A以上のスペクトルシフト効果を得ることができる。
ところで、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aは、十字型制御棒5のフォロア部5Bを炉心2に挿入することで、炉心2の冷却材/燃料体積比を減少させて、燃料の反応度を下げるとともに、ウラン238をプルトニウム239に転換して燃料経済性を向上させている。
また、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aでは、制御棒ガイド8の上下方向の長さに対して、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の制御材充填部5Aの突出量(突出部分の長さ)がチムニの長さとして加わる。これにより、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aは、冷却材の自然循環流量を増加させて、チャンネルボックス32A(又は32)の内部のボイド率を減少させることで、チャンネルボックス32A(又は32)の内部の冷却材量を増加させている。
また、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aは、十字型制御棒5のフォロア部5Bを挿抜することにより、チャンネルボックス32A(又は32)の内部の冷却材量を増加させるように、制御棒挿入側の集合体間ギャップ24Aのギャップ水量を制御することができる。しかしながら、制御棒が挿入されない側の集合体間ギャップ24Bの冷却材は、蒸気を含まない未飽和水であるため、ボイド率を変えることができない。したがって、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aは、十字型制御棒5のフォロア部5Bを挿抜するだけでは、制御棒が挿入されない側の集合体間ギャップ24Bのギャップ水量を制御することができない。
これに対して、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Bは、制御棒が無い側の集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)24Bが制御棒挿入側の集合体間ギャップ(チャンネルボックス間距離)24Aよりも狭く(小さく)なっているため、制御棒が挿入されない側の集合体間ギャップ24Bのギャップ水量を減少させることができる。このような沸騰水型軽水炉100Bは、制御することができない領域の冷却材量を減少させることができる。
このことは、例えば、制御することができる領域の冷却材量を「Mc」とし、制御することができない領域の冷却材量を「Mnc」とし、冷却材の全体量(Mc+Mnc)に占める制御することができる領域の冷却材量の関係が(Mc/(Mc+Mnc))の関係にある場合において、分母の「Mnc」を低減することで、分母に占める分子の「Mc」の割合を相対的に増大させることを意味する。
このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100Bは、炉心2の中性子スペクトルの制御範囲を増加させることができる。そのため、沸騰水型軽水炉100Bは、実施形態1及び実施形態2の沸騰水型軽水炉100,100Aよりも、スペクトルシフト効果を増加させることができ、さらに燃料経済性を向上させることができる。
なお、本実施形態のD格子と同程度のスペクトルシフト効果を得る別の方法として、沸騰水型軽水炉100Bは、図7Bに示すような炉心構成を用いることもできる。図7Bは、変形例に係る沸騰水型軽水炉100Bの炉心2付近の構成図である。図7Bに示すチャンネルボックスは、それぞれの正方形燃料集合体16に対して、4本の十字型制御棒5で全ての側面を覆う形状になっており、制御できない領域の冷却材(Mnc)が存在しない。なお、図7Bに示すチャンネルボックス間ギャップ構成を有する燃料格子はK格子と呼ばれる。
[実施形態4]
本実施形態4では、他の実施形態1乃至実施形態3の沸騰水型軽水炉100,100A,100Bに対して、十字型制御棒5の構成を変更した沸騰水型軽水炉100Cを提供する。以下、図8を参照して、本実施形態4に係る沸騰水型軽水炉100Cの構成につき説明する。図8は、本実施形態4に係る沸騰水型軽水炉100Cの十字型制御棒5の構成図である。
図8に示すように、本実施形態4に係る沸騰水型軽水炉100Cは、他の実施形態の沸騰水型軽水炉100,100A,100Bと比較すると、十字型制御棒5のフォロア部5Bの内部構造が異なっている点で相違している。
図4Eに示すように、他の実施形態の沸騰水型軽水炉100,100A,100Bでは、十字型制御棒5のフォロア部5Bは、ブレードシース25の内部に充填管26が設けられており、その充填管26の内部にフォロア材28が充填された構成になっている。
これに対して、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cでは、十字型制御棒5のフォロア部5Bは、ブレードシース25の内部に充填管26が設けられておらず、ブレードシース25の内部にフォロア材28が充填された構成になっている。
なお、本実施形態において、沸騰水型軽水炉100Cの制御材充填部5Aの内部構造は、図4Cに示すものと同じである。したがって、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cの制御材充填部5Aは、ブレードシース25の内部に充填管26が設けられており、その充填管26の内部に中性子吸収材27が充填された構成になっている。
中性子吸収材27は、中性子を吸収すると発熱する。そのため、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、制御材充填部5Aでは、ブレードシース25の内部(ブレードシース25と充填管26との間隙)に冷却材を流すことで、制御材充填部5Aに充填された中性子吸収材27を冷却する。
これに対して、フォロア材28は、中性子吸収材27よりも中性子吸収性能の低い材料(中性子との反応断面積が小さい材料)である。このようなフォロア材28の発生熱量は、中性子吸収材27の発生熱量よりも小さい。そのため、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、フォロア部5Bでは、ブレードシース25の内部に冷却材を流さなくても、ブレードシース25の外側を流れる冷却材で、フォロア部5Bに充填されたフォロア材28を十分に冷却することができる。
そこで、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、フォロア部5Bのブレードシース25の内部にフォロア材28を隙間なく充填する構造になっている。本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、フォロア部5Bのブレードシース25の内部にフォロア材28が隙間なく充填されるため、他の実施形態の沸騰水型軽水炉100,100A,100Bと比較すると、ブレードシース25と充填管26との間隙を流れる冷却材を排除することができる。このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、他の実施形態の沸騰水型軽水炉100,100A,100Bよりも冷却材/燃料体積比をさらに減少させることができ、その結果、より大きなスペクトルシフト効果を得ることができる。
このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、例えば、過酷事故時の水素を吸収する能力を有する酸化銅(CuO)をフォロア材28として用いた場合に、CuO装荷量を増加させることで水素処理能力を高めることができる。また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、フォロア部5Bのブレードシース25の内部にフォロア材28が隙間なく充填されるため、十字型制御棒5の重量を増加させることができる。これにより、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、緊急時の制御棒スクラムにおいて、十字型制御棒5の落下速度を上昇させることができ、十字型制御棒5を効率よく炉心2に挿入することができる。そのため、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Cは、他の実施形態の沸騰水型軽水炉100,100A,100Bよりも安全性を向上させることができる。
[実施形態5]
本実施形態5では、他の実施形態1乃至実施形態4の沸騰水型軽水炉100,100A,100B,100Cよりもシュラウド4と燃料棒ガイド8の上下方向長さ(高さ)を長く(高く)した沸騰水型軽水炉100Dを提供する。以下、図9を参照して、本実施形態5に係る沸騰水型軽水炉100Dの構成につき説明する。図9は、本実施形態5に係る沸騰水型軽水炉100Dの全体構成図である。
図9に示すように、本実施形態に係る沸騰水型軽水炉100Dでは、炉心2の径方向の外側に、円筒形状のシュラウド4が配置されている。本実施形態では、シュラウド4は、炉心2の上端から上方に、十字型制御棒5の制御材充填部5Aの軸方向長さよりも大きな値で突出するとともに、炉心2の下端から下方に、十字型制御棒5のフォロア部5Bの軸方向長さよりも大きな値で突出している。
また、本実施形態に係る沸騰水型軽水炉100Dでは、燃料棒ガイド8(例えば、チャンネルボックス32Aのガイド部132B(図2A参照))は、炉心2の上端から上方に、十字型制御棒5の制御材充填部5Aの軸方向長さよりも大きな値で突出している。
図9に示す例では、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dでは、炉心2の上端よりも上方に突き出したシュラウド4の突出量は、炉心2の軸方向長さの約1.5倍の長さになっている。また、炉心2の上端よりも上方に突き出した燃料棒ガイド8の突出量は、炉心2の軸方向長さの約1.5倍の長さになっている。なお、シュラウド4と燃料棒ガイド8の突出量は、約1.5倍の長さに限定されるものではなく、例えば、炉心2の軸方向長さの約1.0~2.0倍の長さであってもよい。
本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、実施形態1の沸騰水型軽水炉100と同様に、十字型制御棒5を運転サイクル末期時位置31に配置して、炉心2から十字型制御棒5のフォロア部5Bを完全に引き抜くことで、チャンネルボックス32A間の冷却材量を増加させることができる。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、十字型制御棒5を炉停止時位置29から運転サイクル末期時位置31まで引き抜いていくことで、制御棒ガイド8の領域に加えて、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の制御材充填部5Aによって形成される流路が新たなチムニ領域として機能する。そのため、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、冷却材の自然循環流量を増加させて、炉心2のボイド率を減少させることができる。これにより、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、運転サイクル末期の冷却材/燃料体積比を増加させて、良好なスペクトルシフト効果を得ることができる。ただし、冷却材量増加効果はシュラウド4と燃料棒ガイド8の長さが炉心2の軸方向長さの2倍に近づくほど低減する。
また、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、制御棒ガイド8の長さ(高さ)が炉心2の高さより長いことにより、制御棒ガイド8の上端よりも上方に突き出した十字型制御棒5の突出量を実施形態1の沸騰水型軽水炉100よりも小さくすることができる。このような本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、制御棒ガイド8によって実施形態1の沸騰水型軽水炉100よりも広い面積で十字型制御棒5を支持することができる。そのため、本実施形態の沸騰水型軽水炉100Dは、シュラウド4の内部を流れる気液二相流による流動振動から十字型制御棒5を保護することができ、十字型制御棒5の破損リスクを低減することができる。
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。