本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
縦方向と、前記縦方向に交差する横方向と、を有し、排泄物を吸収する吸収性本体と、前記吸収性本体の長手方向の一端側が接合され、着用する際に着用者の腹側に位置する腹側胴回り部と、前記吸収性本体の前記長手方向の他端側が接合され、着用する際に前記着用者の背側に位置する背側胴回り部と、前記吸収性本体の非肌側に設けられた外層シートと、を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、前記横方向における前記吸収性本体の両側にはそれぞれ、前記長手方向に沿った防漏壁が設けられており、前記防漏壁は、少なくとも前記縦方向において前記外層シートの前記横方向の長さが最小となる位置に、厚さ方向の一方側の面同士が接合された接合部を有し、前記縦方向において前記接合部よりも上側の領域に、前記厚さ方向の面同士が接合されていない非接合部を有し、前記吸収性本体を前記外層シートに接合する本体接合部を有し、少なくとも前記最小となる位置における前記本体接合部の前記横方向の幅は、前記本体接合部の前記長手方向の両端位置おける前記本体接合部の前記横方向の幅よりも狭く、前記防漏壁のうち、前記接合部の非肌側の部分、及び、前記接合部が設けられている部分よりも前記非肌側に位置する部分の少なくともいずれかに、前記長手方向に沿った弾性部材を有する、ことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、着用時において、着用者の股下付近において外層シートを接合している本体接合部の幅が狭くなっているため、外層シートの剛性によって防漏壁の起立が妨げられるという問題が生じにくい。また、起立した防漏壁は、接合部若しくは接合部の非肌側に設けられた弾性部材を基点として横方向の内側に折れ曲がるため、当該基点以外の部分では折れ曲がりにくく、起立途中で防漏壁が倒れてしまうことが抑制される。そして、当該折れ曲がりの基点にて横方向内側に折れ曲がった防漏壁が、さらに横方向外側に折り返されて重ねられることにより平面(天面部)が形成され、その平面が着用者の肌にピタッとフィットすることにより、おむつ1着用時におけるフィット性を向上させることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記弾性部材は、前記接合部の非肌側であって、厚さ方向において前記接合部と重複する位置に設けられている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、着用時において、弾性部材による収縮力が接合部を介して防漏壁の平面部(天面部)に作用しやすくなり、防漏壁が面形状を維持した状態で着用者の肌にフィットしやすくなる。また、接合部が形成されている領域では当該接合部が防漏壁の折れ曲がりの基点となり、非接合部が形成されている領域では、弾性部材が防漏壁の折れ曲がりの基点となることから、弾性部材と接合部との位置が近い程、折れ曲がり基点の位置がずれにくくなり、天面部の面形状をより維持しやすくなる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記外層シートの前記横方向の長さ及び前記防漏壁の前記横方向の長さが最大となるように、前記外層シート及び前記防漏壁を前記横方向の外側へ伸長させたとき、前記最小となる位置では、前記横方向において前記吸収性本体の最外端からの前記外層シートの外側端までの突出量が、前記最外端から前記防漏壁の前記接合部までの突出量よりも少ない、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、着用時において、着用者の鼠蹊部付近で外層シート(バックシート)の突出部分が防漏壁の起立高さよりも高い位置に達してしまうことが抑制される。これにより、防漏壁上端に形成される平面部(天面部)と着用者の肌との間に防漏壁が挟まって隙間が生じ排泄物が漏出したり、フィット性が悪化したりする問題が生じにくくなる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部は、前記横方向において、前記防漏壁の内側端から所定距離だけ外側に離間して設けられている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、着用時において、着用者の肌に押し付けられる防漏壁の横方向内側端に所謂ドライエッジが形成されるので、該内側端の肌触りがソフトになり、良好なフィット性を実現することができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記防漏壁には、前記長手方向に伸縮する弾性部材が前記横方向に並んで複数設けられており、前記横方向において、前記接合部よりも外側に配置された前記弾性部材の数は、前記接合部よりも内側に配置された前記弾性部材の数よりも多い、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、防漏壁のうち、接合部よりも横方向外側の剛性が低い領域に弾性部材を多く配置することにより、当該領域が着用者の凹凸に応じた曲面を形成しやすくなり、着用者の肌に対するフィット性が向上する。また、複数の弾性部材を設けることで、防漏壁に作用する収縮力(圧力)が一か所に集中しにくくなり、パンツ型使い捨ておむつの付け心地が悪化するのを抑制できる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記吸収性本体の肌側に配置された内層シートを有し、前記内層シートの前記横方向の外側端部は、前記横方向の内側に折り返されており、少なくとも一部の領域において、前記外側端部と前記防漏壁とが厚さ方向に重ねて接合されている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、防漏壁と内層シート(トップシート)とが厚さ方向に重ねられた状態で一体となって起立するようになる。したがって、防漏壁の起立部分に積層されている資材の枚数が増加し、該起立部分の強度が高くなる。これにより、防漏壁の起立部分が途中で折れ曲がったり倒れたりしにくくなり、おむつ着用時のフィット性をより向上させることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記防漏壁と前記吸収性本体との間に、前記長手方向に沿った防漏フィルムを有し、少なくとも一部の領域において、前記防漏フィルムと前記防漏壁とが厚さ方向に重ねて接合されている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、防漏壁と防漏フィルムとが厚さ方向に重ねられた状態で一体となって起立するようになる。したがって、防漏壁の起立部分に積層されている資材の枚数が増加し、該起立部分の強度が高くなる。また、防漏フィルムが設けられることによって防漏壁の起立部分の耐水性が向上する。これにより、防漏壁の起立部分がより折れ曲がりにくくなると共に、液漏れの発生等を抑制しやすくなる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記吸収性本体は、液吸収性の吸収体を有し、前記吸収体は、前記長手方向における前記吸収体の両端部の間に括れ部を有し、前記吸収性本体の前記横方向の両側に設けられた一対の前記接合部は、前記厚さ方向においてそれぞれ前記吸収体と重複しておらず、前記横方向において、一対の前記接合部の間隔は、前記吸収体の前記長手方向の両端部における長さよりも短い、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、吸収体の括れ部内の領域に接合部が形成されることにより、当該領域において接合部によって防漏壁が折り重ねられ、防漏壁の起立高さが高くなり過ぎないようにすることができる。また、接合部が吸収体と重複していないことにより、着用時において剛性の高い接合部が着用者の身体(肌側)に押し付けられにくくなり、おむつ着用時における肌触りの悪化を抑制できる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記吸収性本体は、液吸収性の吸収体を有し、前記長手方向の背側には、前記横方向に伸縮する脚回り弾性部材が配置されており、前記脚回り弾性部材は、前記横方向の中央部において、前記吸収体と厚さ方向に重複するように前記横方向に沿って配置された直線部と、前記直線部の前記横方向の両側から前記横方向の外側かつ前記長手方向の背側に湾曲して配置された湾曲部と、を備え、前記防漏壁と前記脚回り弾性部材とは、平面視したときに前記厚さ方向に交差する部分を有する、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、脚回り弾性部材の湾曲部の伸縮力によって防漏壁が斜め上方に引っ張り上げられることにより、吸収性物品を着用する際に防漏壁が起立しやすくなる。また、防漏壁が引っ張られることにより、吸収性本体が拡幅されやすくなる。これにより、吸収性物品着用時における脚回りのフィット性が向上する。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記脚回り弾性部材において、前記直線部の伸長倍率よりも前記湾曲部の伸長倍率の方が大きい、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、横方向の中央部において吸収体と重複する直線部の伸長倍率を低くすることによって、吸収体が横方向に過度に収縮することを抑制することができる。また、おむつ着用時に着用者の臀部に当接する湾曲部の伸長倍率を高くすることによって、収縮力を強くして位置ずれを生じにくくすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記吸収性本体よりも肌側に配置された内層シートと前記防漏壁の前記縦方向の上端部とを背側において接合する背側エンド接合部を有し、前記本体接合部は、前記吸収性本体の前記縦方向の上端部と前記外層シートとを背側において接合する本体背側上端接合部を有し、前記縦方向において、前記本体背側上端接合部は、前記背側エンド接合部の少なくとも一部と重複しており、前記本体背側上端接合部の下端位置が前記背側エンド接合部の下端位置と同じ、若しくは、前記本体背側上端接合部の下端位置が前記背側エンド接合部の下端位置よりも下側にある、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、吸収性本体の背側上端部において本体背側上端接合部と背側エンド接合部とが重複することによって剛性が高くなった部位に対して防漏壁弾性部材による収縮力がダイレクトに作用することにより、該背側上端部が着用者の肌側により引っ張られやすくなる。したがって、吸収性本体の背側上端部におけるフィット性が向上する。また、吸収性本体の背側上端部と着用者の肌との間に隙間が形成されにくくなるため、背側上端部から排泄物が漏出することを抑制しやすくなる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記背側エンド接合部の前記下端位置において、前記弾性部材が前記防漏壁の長手方向に沿って伸長した状態で配置されている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、背側エンド接合部の下端に対して防漏壁弾性部材による収縮力が途切れることなく作用するようになる。したがって、背側エンド接合部を介して吸収性本体背側の上端領域が着用者の肌側にしっかりと引っ張られやすくなり、吸収性本体背側上端領域におけるフィット性をより向上させることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記吸収性本体よりも肌側に配置された内層シートと前記防漏壁の前記縦方向の上端部とを腹側において接合する腹側エンド接合部を有し、前記本体接合部は、前記吸収性本体の前記縦方向の上端部と前記外層シートとを腹側において接合する本体腹側上端接合部を有し、前記縦方向において、前記本体腹側上端接合部は、前記腹側エンド接合部の少なくとも一部と重複しており、前記本体腹側上端接合部の下端位置が前記腹側エンド接合部の下端位置と同じ、若しくは、前記本体腹側上端接合部の下端位置が前記腹側エンド接合部の下端位置よりも下側にある、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、吸収性本体の腹側上端部において本体腹側上端接合部と腹側エンド接合部とが重複することによって剛性が高くなった部位に対して防漏壁弾性部材による収縮力がダイレクトに作用することにより、該腹側上端部が着用者の肌側により引っ張られやすくなる。したがって、吸収性本体の腹側上端部におけるフィット性が向上する。また、吸収性本体の腹側上端部と着用者の肌との間に隙間が形成されにくくなるため、腹側上端部から排泄物が漏出することを抑制しやすくなる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記腹側エンド接合部の前記下端位置において、前記弾性部材が前記防漏壁の長手方向に沿って伸長した状態で配置されている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、腹側エンド接合部の下端に対して防漏壁弾性部材による収縮力が途切れることなく作用するようになる。したがって、腹側エンド接合部を介して吸収性本体腹側の上端領域が着用者の肌側にしっかりと引っ張られやすくなり、吸収性本体腹側上端領域におけるフィット性をより向上させることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記防漏壁には、前記長手方向に伸縮する前記弾性部材が前記横方向に並んで複数設けられており、前記接合部よりも前記横方向の外側の領域における前記弾性部材の応力の和は、前記接合部及び前記接合部よりも前記横方向の内側の領域における前記弾性部材の応力の和よりも小さい、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、防漏壁の横方向内側の領域では長手方向に沿ってより大きな収縮力が作用するため、着用者の肌にピタッとフィットしやすくなり、排泄物の横漏れを効果的に抑制することができる。一方、防漏壁の横方向外側の領域では長手方向に沿った収縮力が弱いため、内側の領域と比較して変形しやすく、着用者の身体の凹凸に応じて面でフィットしやすくなる。これにより、臀部のように凹凸の大きな領域であっても、排泄物の横漏れを抑制しつつ、防漏壁全体のフィット性をより高めることができる
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記縦方向の所定位置において前記横方向に沿って設けられ、前記パンツ型使い捨ておむつを前記縦方向に折り畳む際の折り畳み基点となる折り畳み線を有し、前記縦方向において、前記折り畳み線と前記接合部とが重複部を有していない、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、縦方向に折り畳まれた際に、防漏壁の接合部(折り込み部が形成されている部分)に折り癖が付きくい。また、折り畳み線に沿って横方向に折り癖が形成されることから、防漏壁は横方向に対して折れ曲がりにくくなる。これにより、防漏壁のうち接合部が形成されている部分では平面形状が維持されやすくなる。したがって、おむつ着用時において、防漏壁のうち接合部が形成されている部分(折り込み部)が着用者の身体にピタッとフィットしやすくなる。
===第1実施形態===
<おむつ1の基本構成>
本実施形態で扱う吸収性物品の一例として、パンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)の基本的な構成について説明する。図1は、展開且つ伸長状態であるおむつ1の平面図である。図2は、おむつ1を腹側から見た概略斜視図である。図3Aは、図1中のA-A概略断面図であり、図3Bは、図1A中のB-B概略断面図であり、図3Cは、図1A中のC-C概略断面図である。なお、図1における「伸長状態」とは、製品(おむつ1)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述するバックシート30等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態のことを言う。
このおむつ1は、図2のパンツ型状態において、互いに直交する三方向として縦方向と横方向と前後方向とを有している。そして、以下では、このパンツ型状態における縦方向の一方側及び他方側のことを、それぞれ「胴回り開口側」及び「股下側」とも言い、また、前後方向の前側及び後側のことを、それぞれ「腹側」及び「背側」とも言う。
一方、図1の展開状態においては、おむつ1は、互いに直交する三方向として長手方向と幅方向とを有している。そして、以下では、この展開状態における長手方向の一方側及び他方側のことを、それぞれ「腹側」及び「背側」とも言う。なお、展開状態における上記の幅方向は、パンツ型状態における上記の横方向と同じ方向である。そのため、以下では、幅方向のことを「横方向」とも言う。また、展開状態の長手方向は、パンツ型状態の縦方向に沿った方向である。また、図3に示すように、縦方向(長手方向)及び横方向(幅方向)と直交する方向を「厚さ方向」とし、着用対象者の肌と当接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
また、おむつ1は、図1に示すように、長手方向において腹側胴回り部3と、背側胴回り部4と、股下部5とを有する。腹側胴回り部3は、おむつ1の着用時において着用者の腹側に位置する部分である。背側胴回り部4は、おむつ1の着用時において着用者の背側に位置する部分である。そして、腹側胴回り部3と背側胴回り部4との間に股下部5が設けられる。
本実施形態のおむつ1は、吸収性本体10と、トップシート20と、バックシート30と、防漏壁50と、を有する。そして、図1の展開状態から、吸収性本体10の長手方向(縦方向)の所定位置CL10を折り位置として同吸収性本体10が二つ折りされるとともに、この二つ折りの状態において互いに対向する腹側胴回り部3及び背側胴回り部4が腹側サイドエッジ部3es及び背側サイドエッジ部4esにて溶着等で接合されると、これら胴回り部3,4同士が環状に繋がって、これにより、図2に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ1となる。
吸収性本体10は、尿等の排泄物を吸収する機能を有し、図1に示されるように平面視略長方形をなし、その長手方向をおむつ1の縦方向に沿わせつつ横方向の中央に配置されている。なお、「平面視」とは、製品をパッケージから取り出した後、サイドエッジ部3es,4esの接合(係止)を切り、皺がなくなる程度まで各部材を展開させた状態で見た場合をいう。例えば、吸収性本体10を伸長させてボード等に貼りつけて固定した状態を見た場合をいう。吸収性本体10は、液吸収性の吸収体(吸収性コア)11と、同吸収体11の外周面を被覆するコアラップシート12と、を有する。また、吸収性本体10の横方向の両側には、防漏壁50が設けられている。防漏壁50の詳細については後で説明する。
吸収体11は、パルプ繊維等の液体吸収性繊維を所定形状に成形したものであり、その内部には高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が混入されている。本実施形態において、吸収体11は平面視略砂時計形状であり、長手方向の中央部が横方向の内側に凹んだ括れ部11cを有している。すなわち、吸収体11は、吸収体11の長手方向の両端部11ea,11ebよりも横方向の寸法が小さい括れ部11cを、長手方向の両端部11ea,11ebの間の位置に有している。コアラップシート12は、吸収体11の外周面を被覆する液透過性のシート部材であり、ティッシュペーパーや不織布等を使用可能である。
トップシート20は、吸収性本体10の厚さ方向の肌側面に配置され、おむつ1の着用時に着用者の肌と当接する液透過性のシート部材(内層シート)である。本実施形態のトップシート20は、例えば、エアスルー不織布やスパンボンド不織布等によって形成される。
バックシート30は、吸収性本体10の厚さ方向の非肌側に配置され、おむつ1の外層を構成するシート部材(外層シート)である。本実施形態において、バックシート30は、バックフィルム31と、上側外層シート32及び下側外層シート33とを有する。バックフィルム31は、吸収性本体10の非肌側に配置された液不透過性かつ透湿性のシート部材であり、例えば樹脂フィルムによって形成される。バックフィルム31が設けられることによって、吸収性本体10によって吸収された尿等の水分が着用者の衣服側に移動(浸透)することが抑制される。
バックシート30と吸収性本体10とは、本体接合部80によって互いに接合されている。図4は、本体接合部80について説明する概略平面図である。同図4において、本体接合部80は、吸収性本体10とバックシート30との間の右斜め上向きの斜線で示される領域にホットメルト接着剤等の接着剤を設けることによって形成されている。本体接合部80は、長手方向において折り込み接合部61(折り込み接合部61の詳細は後で説明する)が形成されている領域の一部で、横方向の幅が短くなっている。具体的には、本体接合部80の長手方向両端部の位置における幅W80eよりも、その間の位置における幅W80cの方が狭くなっている(W80e>W80c)。少なくとも、縦方向において外層シート32の横方向の長さが最小となる位置(図1のC-C断面の位置)において、幅W80cが幅W80eよりも狭くなっている。そして、この幅(W80c)が狭くなっている部分では、本体接合部80と折り込み接合部61とが厚さ方向において重複していない。この理由については後で説明する。
なお、ここで言う幅W80(W80e及びW80c)とは、長手方向の所定位置における、本体接合部80の横方向の一方側の端から他方側の端までの長さのことである。また、本体接合部80は、図4のように長手方向に沿った帯状(長方形)の接合領域が横方向に複数並んで配置されることによって形成されていても良い。その場合、横方向に隣り合う2つの帯状領域の間に接着剤が設けられていない部分(すなわち隙間)が形成されていても良い。
上側外層シート32及び下側外層シート33は、厚さ方向に重ねられつつバックフィルム31の非肌側に配置される柔軟なシート状部材であり、例えばスパンボンド不織布等によって形成される。上側外層シート32及び下側外層シート33は、少なくとも腹側胴回り部3及び背側胴回り部4において共に同じ形状であり、全体としては図1に示されるような略砂時計形状を有している。すなわち、バックシート30は、腹側胴回り部3と背側胴回り部4との間で長手方向の中央部(股下部5)が横方向の内方に凹んだ括れ部30cを有している。
また、上側外層シート32及び下側外層シート33の厚さ方向の間には、糸ゴム等の弾性部材が設けられている。本実施形態では、図1に示されるように、おむつ1の腹側胴回り部3(腹側サイドエッジ部3es,3esの間の領域)において、複数の腹側胴回り弾性部材35aが所定の伸長倍率で横方向に伸長された状態で上側外層シート32と下側外層シート33との間に挟まれて接合されている。この腹側胴回り弾性部材35aによって、おむつ1の腹側胴回り部3に横方向の伸縮性が付与される。同様に、おむつ1の背側胴回り部4(背側サイドエッジ部4es,4esの間の領域)において、複数の背側胴回り弾性部材35bが所定の伸長倍率で横方向に伸長された状態で上側外層シート32と下側外層シート33との間に接合されている。この背側胴回り弾性部材35bによって、おむつ1の背側胴回り部4に横方向の伸縮性が付与される。
なお、弾性部材の「伸長倍率」とは、弾性部材(糸ゴム)の自然長を1としたときの伸び度合いを示したものであり、例えば伸長倍率が1.2の場合、弾性部材は自然長から0.2だけ伸張していることになる。
また、背側胴回り部4には複数の背側脚回り弾性部材35lgが設けられている。背側脚回り弾性部材35lgは、背側胴回り部4の長手方向の内側の領域(吸収体11の長手方向の中央寄りの位置)から括れ部30cに沿って湾曲して配置されている。具体的に言えば、背側脚回り弾性部材35lgは、図1に示されるように、横方向の中央部(吸収体11が配置されている領域)において横方向に沿って配置された直線部35lgsと、直線部35lgsの横方向の両側から、横方向の外側に向かって斜め上方に湾曲して配置された湾曲部35lgcと、を有する。そして、直線部35lgsと湾曲部35lgcとは、それぞれ異なる伸長倍率で伸長された状態で上側外層シート32と下側外層シート33との間に接合されている。
本実施形態では、直線部35lgsにおける伸長倍率が背側胴回り弾性部材35bの伸長倍率よりも低くなるように背側脚回り弾性部材35lgが配置されている。直線部35lgsは、横方向の中央部において吸収体11(吸収性本体10)と重複する部分を有していることから、伸長倍率を低くすることによって、吸収体11が横方向に過度に収縮することを抑制することができる。なお、直線部35lgsの横方向の位置によって伸長倍率が異なっていても良い。例えば、直線部35lgsのうち横方向中央部における伸長倍率が横方向両端部における伸長倍率より低くなっていても良い。これにより、直線部35lgsにおける応力に勾配が生じ、フィット性を損なうことなく吸収体11の収縮を抑制することができる。
一方、湾曲部35lgcにおける伸長倍率は、背側胴回り弾性部材35bの伸長倍率よりも高くなるように配置されている。湾曲部35lgcは、おむつ1の背側において括れ部30cに沿って配置されているが、この領域は、おむつ1の着用時に着用者の臀部に当接し、着用者が脚を動かすことによって位置ずれが生じやすい部分である。そこで、湾曲部35lgcの伸長倍率を高くすることによって、収縮力を強くして位置ずれを生じにくくしている。また、脚回り開口LHの近隣においてバックシート30の収縮量が大きくなるため、バックシート30が着用者の臀部の丸みに沿った形状に変形しやすくなり、フィット性を高めることができる。なお、直線部35lgsと同様に、湾曲部35lgcの横方向で伸長倍率が異なっていても良い。例えば、湾曲部35lgcにおいて、横方向の内側よりも外側の方が伸長倍率を高くしても良い。
<防漏壁50について>
次に、防漏壁50について説明する。防漏壁50は、吸収性本体10の横方向両側において、吸収性本体10の長手方向(おむつ1の縦方向)に沿って配置され、おむつ1の着用時には吸収性本体10の側端部から起立して、排泄物がおむつ1の外側に漏出(横漏れ)するのを抑制する。図5は、展開且つ伸長状態である防漏壁50の平面図である。図6は、図3Cの領域Dについて拡大して表す概略断面図である。なお、図6では説明の便宜上厚さ方向における縮尺を変形して表している。
防漏壁50は、図5に示されるような矩形状のシート部材50sを、長手方向(縦方向)に沿った折り曲げ線f1~f3にて横方向に折り畳むことによって形成される。防漏壁50を形成するシート部材50sとしては、例えば不織布等、柔軟性を有するシート部材を使用することができる。また、防漏壁50には、長手方向に伸縮可能な糸ゴム等の防漏壁弾性部材55が複数設けられている。図5の例では、それぞれ長手方向に沿った6本の防漏壁弾性部材551~556が横方向の外側から内側に向かって並んで配置されている。防漏壁弾性部材551~556はそれぞれ長手方向に所定の伸長倍率で伸長された状態で防漏壁50に接合されている。この防漏壁弾性部材55によって防漏壁50に長手方向に沿った伸縮性が付与され、おむつ1着用時に防漏壁50を起立させる。
防漏壁弾性部材55は、図1及び図5において破線で示された範囲において伸縮性を発現している。なお、図1及び図5において破線で示された範囲よりも長手方向(縦方向)の外側の領域に伸縮性を発現していない防漏壁弾性部材55が存在していても良い。また、防漏壁弾性部材55の数量やその配置は図5に示される限りではなく、おむつ1の使用に応じて適宜変更可能である。
図5に示される展開状態において、防漏壁50(シート部材50s)の横方向の内側端部50eiは、厚さ方向において吸収性本体10と防漏フィルム31(バックシート30)との間に接合・固定されている。一方、防漏壁50(シート部材50s)の横方向の外側端部50eоは吸収性本体10の横方向外側に張り出している。この状態で、外側端部50eоが折り曲げ線f1を基点として横方向の内側に折り曲げられ、防漏壁弾性部材551~556を間に挟んだ状態でシート部材50s同士が厚さ方向に重ねられ、互いに接合される。なお、横方向に複数並んで設けられている防漏壁弾性部材55のうち、最も外側の弾性部材(図5では防漏壁弾性部材551)は、折り曲げ線f1の横方向位置に揃えて配置されている。
続いて、シート部材50sが折り曲げ線f2を基点として厚さ方向の非肌側かつ横方向の内側に折り曲げられる。折り曲げ線f2の横方向位置は、防漏壁弾性部材555の横方向位置とほぼ同じ位置である。続いて、シート部材50sが折り曲げ線f3を基点として厚さ方向の肌側かつ横方向の内側に折り曲げられる。これにより、図3及び図6に示されるような略S字状に折り曲げられた防漏壁50が形成される。なお、図6の場合、折り曲げ線f3の位置が防漏壁50を起立させる際の基部50rpとなる。
防漏壁50は、シート部材50sが横方向の一方側から他方側へ折り返されることにより、厚さ方向の最も肌側に天面部51が形成されている。天面部51は、折り曲げ線f1と折り曲げ線f2との間において横方向に所定の幅を有する領域であり、該天面部51には、防漏壁弾性部材551~555が設けられている。また、天面部51の厚さ方向の非肌側には下面部52が形成されている。下面部52は、折り曲げ線f2と折り曲げ線f3との間において横方向に所定の幅を有する領域であり、該下面部52には、防漏壁弾性部材555~556が設けられている。なお、防漏壁弾性部材555は上述したように横方向について折り曲げ線f2とほぼ同じ位置に配置されていることから、天面部51及び下面部52の両方に設けられているものとする。
そして、防漏壁50では、天面部51及び下面部52の一部の領域が折り込み接合部61を介して厚さ方向に接合されている。すなわち、折り込み接合部61によって防漏壁50(シート部材50s)の厚さ方向の一方側の面同士が接合されている。以下、防漏壁50において折り込み接合部61が形成されている部分よりも横方向の内側の領域を折り込み部53とも呼ぶ。本実施形態では、天面部51(下面部52)の横方向内側の領域に、図6の斜線部で示される折り込み接合部61が設けられ、折り込み部53が形成されている。なお、折り込み接合部61はホットメルト接着剤等の接着剤を用いた接着手段や、エンボス加工等の圧着手段を用いて形成されている。なお、折り込み接合部61は図6の様に折り込み部53の横方向の全体に亘って形成されている必要はなく、例えば、横方向の内側端(図6で折り曲げ線f2の位置)において折り込み接合部61が形成されていなくても良い。言い換えると、折り込み接合部61が、防漏壁50の天面部の横方向内側端から所定の距離だけ離間して形成されているのであっても良い。
一方、折り込み接合部61が設けられていない横方向外側の領域では、天面部51と下面部52とが接合されておらず、両者は厚さ方向に離脱可能である。以下、天面部51のうち、折り込み接合部61が設けられている部分よりも横方向の外側を単層部54とも呼ぶ。なお、ここで言う「単層」とは、天面部51のみからなる層であることを意味し、天面部51自体は図6のような複層構造であっても良い。
折り込み接合部61の長手方向の外側の領域には、折り込み接合部61が設けられていない。すなわち、防漏壁50のうちの、長手方向において折り込み接合部61よりも一方側の領域及び他方側の領域では、防漏壁50(シート部材50s)の厚さ方向の一方側の面同士が接合されていない非接合部62を有する。この非接合部62では、図3Bに示されるように防漏壁50の天面部51及び下面部52が接合されていないため、折り込み部53は形成されておらず、天面部51の横方向の全領域が単層部となる。なお、図1では折り込み接合部61の長手方向の両外側に非接合部62が設けられているが、長手方向の一方側にのみ非接合部62が設けられているのであっても良い。
また、防漏壁50の長手方向の両端部には、エンド接合部63が設けられている。エンド接合部63では、図3Aの斜線部で示されるように、防漏壁50の天面部51と下面部52とが接合されると共に、下面部52とトップシート20とが接合されている。これにより、防漏壁50の長手方向の端部において天面部51及び下面部52がトップシート20の肌側面に固定される。なお、図1に示されるように、エンド接合部63は折り込み接合部61よりも横方向の外側に配置されており、これにより、天面部51の横方向外側端部が捲り上がってしまうことが抑制される。
<おむつ1着用時における防漏壁50の機能>
本実施形態のおむつ1では、防漏壁50を上述した略S字状の折り曲げ構造(図6参照)とすることで、排泄が行われた場合であっても着用者に不快感を与えにくくしつつ、股間部に隙間が生じることを抑制することができる。図7は、排泄が行われる前のおむつ1の着用状態について説明する図である。図8は、排泄が行われた後のおむつ1の着用状態について説明する図である。なお、図7及び図は、長手方向において外層シート32の横方向の長さが最小となる位置(図1のC-C断面位置)での、おむつ1着用時の断面状態について表している。
図7に示されるおむつ1の着用状態では、防漏壁50のうち、肌側に配置された天面部51が着用者の身体と当接する。すなわち、天面部51の全体が着用者の身体に対して面接触するように配置される。天面部51のうち折り込み部53は、天面部51と下面部52とが積層された状態で折り込み接合部61によって接合されていることにより剛性が高くなっている。そのため、折り込み部53に防漏壁弾性部材555及び556による収縮力が作用すると、該折り込み部53は面形状を維持したまま、着用者の身体にしっかりと押し当てられる。このとき一対の防漏壁50の横方向の間隔(横方向における折り込み部53,53の間の距離)をW50とする。一方、天面部51のうち、折り込み接合部61よりも横方向外側の単層部54には、折り込み接合部61よりも横方向内側よりも多くの防漏壁弾性部材551~554が設けられている。この単層部54は、折り込み部53よりも剛性が低いため自由に変形しやすい。そのため、単層部54に配置された防漏壁弾性部材551~554による収縮力が作用すると、該単層部54は身体の凹凸に応じた曲面を形成しながら着用者の肌側に押し当てられる。また、複数の防漏壁弾性部材551~554によって、単層部54が捲れてしまうこと等が効果的に抑制される。
これにより、防漏壁50の天面部51の全体を着用者の身体に面でピタッとフィットさせることができる。また、天面部51が着用者の身体と面接触しているため、複数の防漏壁弾性部材551~556による収縮力が分散されて天面部51全体として着用者の肌に作用する面圧を大きくしている。したがって、複数の防漏壁弾性部材551~556(例えば糸ゴム)による収縮力が着用者の肌に対して個々に作用するような場合と比較して、局所的に圧力が高くなることが抑制され、おむつ1の付け心地が悪化するのを抑え、かつ、着用者の肌を傷つけにくくなる。
なお、本実施形態では、折り込み部53のうち、下面部52に少なくとも1本の防漏壁弾性部材556が設けられている(図6参照)。該防漏壁弾性部材556が収縮することにより下面部52と天面部51とが同時に着用者の肌側に押し上げられるため、折り込み部53が面形状を維持した状態で着用者の肌と当接(面接触)しやすくなる。
また、図4で説明したように、長手方向において外層シート32の横方向の長さが最小となる位置では、吸収性本体10とバックシート30とを接合している本体接合部80の横方向における幅W80cが狭く、該本体接合部80は横方向において折り込み接合部61よりも内側に形成されている。したがって、吸収性本体10とバックシート30とは、横方向の両端部において互いに接合されず、防漏壁50の起立基部50rpもバックシート30と接合されていない。これにより、おむつ1着用時に起立基部50rpの剛性が過度に高くなることが抑制され、起立基部50rpの折れ曲がり変形が妨げられにくくなる。つまり、着用者の股下に当たる領域において起立基部50rpを変形しやすくすることによって、防漏壁50を自然に起立させやすくしている。
一方、長手方向の両端部では本体接合部80の横方向における幅W80eが広く、厚さ方向において本体接合部80と折り込み接合部61とが重複する部分を有している。この領域は胴回り開口に近い領域であり、股下側と比べて防漏壁50を高く起立させる必要性が低い。そのため、起立基部50rpとバックシート30とが接合されていても問題は生じにくく、逆に起立基部50rpの剛性を高くすることで防漏壁50の強度を高めることができる。さらに、幅W80eが広いことにより、おむつ1着用時等において、腹側胴回り部3や背側胴回り部4(バックシート30)が横方向に引っ張られる際に、バックシート30に連動して吸収性本体10が横方向に拡幅されやすくなり、吸収性本体10が着用者の身体を広く覆うことができるようになる。
図7の状態で、おむつ1に排泄が行われると、吸収体11が尿等を吸収して重量が重くなり、下方側に垂れ下がるように移動しようとする。しかし、本実施形態のおむつ1では、折り込み部53及び単層部54に設けられた複数の弾性部材の収縮力によって天面部51を上方側(着用者の肌側)に押し上げる力が生じており、吸収体11の重量増加によって防漏壁50が下側に引っ張られる力に対する抗力となる。また、天面部51が着用者の肌と面接触していることから、接触面における摩擦が大きく、該天面部51の位置ずれが生じにくい。したがって、一対の防漏壁50の横方向の間隔W50は排泄の前後で変動しにくい。これらのことから、図8のように防漏壁50の天面部51が着用者の肌に当接した状態が維持されやすく、おむつ1の脚回り部に隙間が生じる等の問題が生じにくくなる。
また、吸収体11の垂れ下がりは、防漏壁50の起立部分が高いほど生じやすくなる。すなわち、図8に示されるように、吸収体11の横方向外側端部から防漏壁50が着用者の肌と当接する部分までの距離L2が長いほど、吸収体11が下方側に垂れ下がりやすくなる。これに関して、おむつ1の防漏壁50では、折り込み接合部61の横方向外側端部を基点として防漏壁50が横方向内側に折れ曲がり、さらに防漏壁弾性部材555の位置(折り曲げ線f2)で横方向外側に折り返され、折り込み部53が形成されている。この折り込み部53によって防漏壁50の一部が折り重ねられることによって、防漏壁50の起立部分の距離L2が長くなり過ぎることが抑制され、吸収体11が下方側に大きく垂れ下がることが抑制され、着用者に不快感を与えにくくすることができる。
なお、折り込み接合部61(折り込み部53)は、図1に示されるように、長手方向において吸収体11の括れ部11cの領域中に形成されている。言い換えると、横方向の両側に形成されている一対の折り込み接合部61は、厚さ方向において吸収体11とそれぞれ重複しておらず、かつ、横方向における一対の折り込み接合部61の間隔は、横方向における吸収体11の縦方向両端部の長さ(幅)よりも狭い。吸収体11のうち括れ部11cが形成されている領域では吸収体11の横方向端部から防漏壁50の起立基部50rpまでの距離が長くなるため(図6参照)、その分吸収体11の垂れ下がりが生じやすくなる。そこで、当該領域において防漏壁50に折り込み接合部61を設け、折り込み部53にて防漏壁50を折り重ねることにより、距離L2をなるべく短くして吸収体11の垂れ下がりを効果的に抑制できるようにしている。さらに、折り込み接合部61が、厚さ方向において吸収体11と重複しないように形成されることにより、防漏壁50のうち折り込み接合部61によって剛性が高くなった部分が、吸収体11によって着用者の身体(肌側)に押し付けられてしまうことが抑制される。これにより、おむつ1着用時における肌触りの悪化を抑制できる。
続いて、防漏壁50のうち非接合部62が設けられている部分の、おむつ1着用時における状態について説明する。図9は、おむつ1着用時における非接合部62の状態について説明する断面図である。同図9では、長手方向において非接合部62が設けられている位置(例えば、図1のB-B断面位置)での、おむつ1着用時の断面状態について表している。
図8の状態では、起立基部50rpから起立した防漏壁50が、折り込み接合部61を折れ曲がりの基点として横方向の内側に折れ曲がり、折り込み部53が形成されていた。一方、図9の状態では、防漏壁50に折り込み接合部61が設けられていない。この場合、起立基部50rpから起立した防漏壁50は、起立基部50rpから最も近い位置に配置されている防漏壁弾性部材556を折れ曲がりの基点として横方向の内側に折れ曲がる。そして防漏壁弾性部材555が配置されている位置(折り曲げ線f2)にて横方向外側に折り曲げられることにより、天面部51が形成される。これにより、折り込み接合部61が設けられていない領域において、図8の場合と同様の天面部51を維持することができる。このように、おむつ1の胴回り開口付近では折り込み接合部61を設けないことによって、防漏壁50の剛性が高くなり過ぎないようにしつつ、防漏壁50を着用者の身体に面でフィットさせることができる。
また、防漏壁50の折れ曲がり変形の基点として防漏壁弾性部材556が配置されていることにより、防漏壁50が他の部分では折れ曲がりにくくなり、防漏壁50が起立途中の意図せぬ場所で折れ曲がって倒れてしまったり、へたりこんでしまったりすることが抑制される。つまり、防漏壁弾性部材556の配置を調整することによって防漏壁50が折れ曲がる位置をコントロールしやすくなる。さらに、折り込み部53と同様に防漏壁50の一部が折り重ねられた状態も維持されるため、防漏壁50の起立部分の距離L3が図8のL2と比較して過度に長くなることが抑制され、おむつ1着用時における垂れ下がり等の問題も生じにくい。
このように、おむつ1では、防漏壁50のうち折り込み接合部61が形成されている位置若しくはそれに近い位置に防漏壁弾性部材556が設けられている。言い換えると、おむつ1の着用時において、防漏壁50のうち折り込み接合部61の非肌側の部分、及び、折り込み接合部61が設けられている部分よりも非肌側に位置する部分の少なくともいずれかに、長手方向に沿った防漏壁弾性部材556が配置されている。これにより、接合部61が形成されていない領域においても防漏壁50に折れ曲がりの基点が形成されやすくなり、天面部51を自然に形成することができるようになる。
ここで、比較例として、防漏壁50に防漏壁弾性部材556に相当する弾性部材が設けられていない場合について説明する。図10A及び図10Bは、比較例のおむつ着用状態について説明する断面図である。図10Aは、図8に対応する図であり、折り込み接合部61が形成されている断面における防漏壁50の状態を表している。図10Bは、図9に対応する図であり、非接合部62が形成されている断面における防漏壁50の状態を表している。
図10Aでは、防漏壁50が折り込み接合部61を基点として折れ曲がることによって、折り込み部53や天面部51が形成されており、外観上は図8で示される状態と大きな違いはない。そのため、防漏壁50の起立部分の距離L4は図8の距離L2とほぼ同じ長さになる。
一方、図10Bでは、折り込み接合部61が形成されておらず、また防漏壁弾性部材556が設けられていないため、防漏壁50が横方向内側に折れ曲がる際の基点が存在しない。そのため、防漏壁50は起立基部50rpから起立して、そのまま防漏壁弾性部材555が配置されている位置(折り曲げ線f2)にて横方向外側に折れ曲がり、折り込み部53は形成されない。折り込み部53が形成されない場合、防漏壁弾性部材555のみの収縮力によって天面部51の横方向内側端を支持することが難しく、天面部51の平面形状が維持されにくくなり、防漏壁50を着用者の身体に面でフィットさせることが難しくなる。
また、図10Bの場合、防漏壁弾性部材555の収縮力が吸収体11の重量増加によって防漏壁50が下側に引っ張られる力に抗しきれなくなり、防漏壁50の横方向の間隔W50´が図10の場合と比較して狭くなってしまうおそれがある(W50>W50´)。この場合、着用者の身体に対する防漏壁50の当接位置が横方向中央寄りに移動して臀部が露出しやすくなり、着用者に不快感を生じさせやすくなる。また、防漏壁50は、折り込み部53によって折り重ねられることなく起立するため、起立部分の距離L5が図10Aの距離L4(L2)と比較して長くなり、おむつ1着用時において吸収体11が大きく垂れ下がり、フィット性が悪化するおそれがある。そして、このように防漏壁50の起立部分の距離L5が長くなると、防漏壁50に意図していない折れ曲がりや変形が生じる可能性が高くなる。
また、防漏壁50の長手方向(縦方向)について考える場合、折り込み接合部61と非接合部62との境界位置において防漏壁50の形状が図10Aの状態から図10Bの状態へ急激に変化するおそれがある。このような急激な形状変化が生じると、防漏壁50の天面部51の平面形状が崩れやすくなり、おむつ1着用時におけるフィット性が大きく悪化する。
これに対して、本実施形態のおむつ1であれば、防漏壁50の所定の部分に防漏壁弾性部材556が設けられていることにより、折り込み接合部61が形成されていない領域(非接合部62が形成されている領域)であっても、折り込み部53と同様に防漏壁50を折り重ね変形させることができる。したがって、折り込み接合部61が形成されている部分と折り込み接合部61が形成されていない部分(非接合部62)とで、防漏壁50の急激な形状変化が小さくなる(図8及び図9参照)。これにより、長手方向の大部分の領域で防漏壁50の天面部51が安定して維持されやすくなり、良好なフィット性が担保される。
なお、防漏壁弾性部材556は、厚さ方向について、折り込み接合部61と重複する位置、すなわち、おむつ1着用時における折り込み接合部61の非肌側に配置されていることがより望ましい。折り込み接合部61と防漏壁弾性部材556とが重複した位置に配置されていれば、防漏壁弾性部材556の収縮力が折り込み接合部61を介して折り込み部53の広範囲に作用しやすくなり、折り込み部53(天面部51)が面形状を維持した状態で着用者の肌にフィットしやすくなる。また、図9で説明したように、非接合部62が形成されている領域においては、防漏壁弾性部材556が防漏壁50の折れ曲がりの基点となることから、折り込み接合部61と防漏壁弾性部材556との位置が近い程、防漏壁50の折れ曲がり位置も近くなる。したがって、長手方向における折り込み接合部61と非接合部62との境界部で、防漏壁50が横方向内側に折れ曲がる基点となる位置がずれにくく、天面部51の面形状がより維持されやすくなる。
また、本実施形態のおむつ1では、着用時において防漏壁50が起立する高さ(例えば図8のL2)が或る高さ以上に確保されるようにして排泄物の横漏れを抑制しやすくしている。具体的には、縦方向(長手方向)において、バックシート30の横方向の長さ(幅)が最小となる位置で、防漏壁50の横方向の長さが最大となるように防漏壁50を横方向の外側へ伸長させたときに、吸収性本体10の横方向の外側端10esから折り込み接合部61までの横方向における突出量Ws50が、バックシート30の横方向の長さが最大となるようにバックシート30を横方向の外側へ伸長させたときに、吸収性本体10の最も外側の端10esからバックシート30の横方向の外側端30esまでの横方向における突出量Ws30よりも大きくなるようにしている。なお、「縦方向においてバックシート30の横方向の長さ(幅)が最小となる位置」とは、おむつ1着用時において着用者の鼠蹊部に当たる位置であり、図1のC-C断面に該当する位置である。また、防漏壁50及びバックシート30を「横方向の長さが最大となるように伸張させた状態」とは、防漏壁50及びバックシート30等を横方向に皺なく伸長させることにより、各部材の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態のことを言う。
図11は、防漏壁50及びバックシート30を横方向の長さが最大となるように伸張させたときの状態について表すおむつ1の概略断面図である。同図11は、図6について防漏壁50及びバックシート30を横方向の外側に伸長させた状態を表している。図11に示されるように、防漏壁50が吸収性本体10の横方向の外側端10esから折り込み接合部61まで横方向外側に突出している部分の長さ(突出量)Ws50は、バックシート30が横方向外側に突出している部分の長さ(突出量)Ws30よりも大きくなっている(Ws50>Ws30)。これにより、おむつ1着用時において、着用者の鼠蹊部付近でバックシート30の突出部分が脚回り開口LH側に巻き込まれるような場合であっても、当該バックシート30の突出部分が防漏壁50の起立高さよりも高い位置に達してしまうことが抑制される。つまり、防漏壁50の天面部51と着用者の肌の間にバックシート30が挟まって隙間が生じ、その隙間から排泄物が漏出したり、防漏壁50が着用者の肌に面でフィットしにくくなったりすることが抑制される。
なお、本実施形態のおむつ1では、長手方向についてバックシート30の横方向の長さ(幅)が最小となる位置において、バックシート30の横方向の外側端30esが吸収性本体10の横方向の外側端10esよりも横方向の内側に位置している(図1、図11参照)。したがって、図11では、バックシート30の横方向への突出量Ws30がマイナスとなる。もちろん、バックシート30の横方向の外側端30esが吸収性本体10の横方向の外側端10esよりも横方向の外側に位置していても良く、その場合であっても、上述した(Ws50>Ws30)の関係が成立していれば良い。
本実施形態の防漏壁50には、折れ曲がり基点となる防漏壁弾性部材556が設けられているため、Ws50が長くなったとしても(防漏壁50が高くなったとしても)、おむつ1着用時において防漏壁50の起立部分が途中で折れ曲がって倒れてしまう等の問題が生じにくい。逆に言うと、本実施形態のおむつ1では、防漏壁50のうち折り込み接合部61の非肌側の部分、及び、折り込み接合部61が設けられている部分よりも非肌側に位置する部分の少なくともいずれかに、防漏壁弾性部材556が配置されていることにより、図10で説明した比較例のように防漏壁弾性部材556が配置されていない場合と比較して、防漏壁50を高くする(Ws50を長くする)ことが可能となる。
また、図6に示されるように、折り込み接合部61が、防漏壁50の天面部51の横方向内側端から所定の距離だけ離間して設けられていることにより、防漏壁50の内側端(図6の折り曲げ線f2の部分)に所謂ドライエッジが形成される。これにより、おむつ1着用時において防漏壁50の内側端の肌触りがソフトになり、良好なフィット性を実現しやすくなる。特に、本実施形態の防漏壁50は、折り込み部53(天面部51)が着用者の肌に平面で押し付けられることになるため、当該折り込み部53の端部にドライエッジを設けることにより、平面のエッジにおける剛性が低くなり、おむつ1を着用する際の不快感を着用者に生じさせにくくすることができる。
<変形例>
おむつ1は以下のように変形することもできる。図12は、おむつ1の変形例について説明する概略断面図である。同図12は、おむつ1の変形例について、縦方向(長手方向)においてバックシート30の横方向の長さ(幅)が最小となる位置、すなわち、図1のC-C断面に相当する位置の断面を表すものである。
図12に示されるように、おむつ1の変形例では、トップシート20の横方向の外側端部20esが防漏壁50に沿って横方向の内側に折り返され、折り返された端部20esと防漏壁50の下面部52とが接着剤等によって接合されている。防漏壁50とトップシート20とが互いに接合されていることにより、おむつ1の着用時において防漏壁50が起立する際に、横方向の外側端部20esを含むトップシート20の一部が、防漏壁50と一体となって起立するようになる。つまり、防漏壁50の起立部分に積層される資材の枚数が増加して、当該起立部分の強度が高くなる。これにより、防漏壁50の起立部分が途中で折れ曲がったり倒れたりしにくくなり、おむつ1着用時のフィット性をより向上させることができる。
なお、防漏壁50とトップシート20とを接合する際には、図12のようにトップシート20の横方向の外側端部20esと防漏壁弾性部材556とが、厚さ方向において重複していない位置において接合することが望ましい。図9で説明したように、防漏壁弾性部材556は、おむつ1の着用時において防漏壁50の折れ曲がりの基点となる部分であるため、この部分の剛性が高くなると、防漏壁50の折れ曲がり変形が阻害されやすくなり、天面部51が面形状を維持しにくくなるおそれがあるからである。
また、おむつ1の変形例では、防漏壁50と吸収性本体10との間に、防漏フィルム70が設けられている。防漏フィルム70は液不透過性のシート部材であり、長手方向に沿って防漏壁50が起立している部分と厚さ方向に重なるように配置され、接着剤等によって互いに接合されている。防漏フィルム70が設けられることにより、防漏壁50の起立部分に積層される資材の枚数がさらに増加し、防漏壁50の起立部分の強度をより高くすることができる。また、防漏壁50の起立部分の横方向内側面が液不透過性になることから、排泄物が防漏壁50に染み込みにくくなり、防漏壁50の耐水性が向上する。したがって、防漏壁50の起立部分がより折れ曲がりにくくなると共に、液漏れの発生等を効果的に抑制することが可能となる。
===第2実施形態===
第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ2(以下、「おむつ2」とも呼ぶ)は、エンド接合部63及び本体接合部80の構成が、第1実施形態のおむつ1と異なる。おむつ2のその他の構成についてはおむつ1とほぼ同等であるため、詳細な説明は省略する。図13は、展開且つ伸長状態のおむつ2について、エンド接合部63及び本体接合部80の配置について説明する図である。
図13のおむつ2で、バックシート30と吸収性本体10とを接合している本体接合部80(斜線部で表されている)は長手方向に3つの領域に分かれており、それぞれの領域を本体腹側上端接合部80f、本体背側上端接合部80b、本体中央接合部80cとする。本体腹側上端接合部80fは、吸収性本体10の長手方向における腹側端部(縦方向における腹側上端部)をバックシート30と接合している。本体背側上端接合部80bは、吸収性本体10の長手方向における背側端部(縦方向における背側上端部)をバックシート30と接合している。本体中央接合部80cは、吸収性本体10の長手方向における中央部(股下部5)をバックシート30と接合している。
また、おむつ2で、防漏壁50とトップシート20(内層シート)とを接合するエンド接合部63(黒塗り部で表されている)のうち、長手方向における腹側端部(縦方向における腹側上端部)を腹側エンド接合部63f、長手方向における背側端部(縦方向における背側上端部)を背側エンド接合部63b、とする。
図13に示されるように、本体背側上端接合部80bの縦方向における上端80beu(長手方向の背側端)と、背側エンド接合部63bの縦方向における上端63beu(長手方向の背側端)とは、共に吸収性本体10の縦方向における上端に位置している。一方、本体背側上端接合部80bの縦方向における下端80bed(長手方向の内側端)は、背側エンド接合部63bの縦方向における下端63bed(長手方向の内側端)よりも縦方向の下側に位置している。つまり、おむつ2では、本体背側上端接合部80bと背側エンド接合部63bとが縦方向(長手方向)において重複して配置されている。
なお、図13では、背側エンド接合部63bの全ての領域が本体背側上端接合部80bと重複しているが、必ずしも全ての領域が重複している必要は無く、少なくとも一部が重複していれば良い。また、本体背側上端接合部80bの下端80bedと背側エンド接合部63bの下端80fedとが縦方向において同じ位置であっても良い。すなわち、おむつ2においては、本体背側上端接合部80bの下端80bedの位置が、縦方向において背側エンド接合部63bの下端63bedの位置よりも上側とならない配置であれば良い。本体腹側上端接合部80fと腹側エンド接合部63fとの関係についても同様である(図13参照)。
おむつ2の防漏壁50には、おむつ1と同様に横方向に並んだ複数の防漏壁弾性部材55(図6及び図13の551~556)が配置されている。各々の防漏壁弾性部材55は、図13の破線で示された範囲において長手方向(縦方向)に伸長された状態で防漏壁50に接合されている。つまり、おむつ2の長手方向において、少なくとも腹側エンド接合部63fの内側端(縦方向における下端63fed)と背側エンド接合部63bの内側端(縦方向における下端63bed)との間において、防漏壁弾性部材551~556が長手方向に沿って伸長した状態で配置されている。これにより、当該領域では防漏壁弾性部材551~555による伸縮性が発現している。
防漏壁弾性部材551~556はそれぞれ所定の伸長倍率で伸長した状態で防漏壁50に接合されている。おむつ2では、防漏壁50の折り込み接合部61よりも横方向の外側の領域に配置されている防漏壁弾性部材551~554の伸長倍率は約2.0倍である。また、防漏壁弾性部材551~554の繊維径は約470D(デニール)である。一方、横方向において折り込み接合部61と重複して配置されている防漏壁弾性部材556及び折り込み接合部61よりも横方向の内側に配置されている防漏壁弾性部材555の伸長倍率は約3.0倍である。また、防漏壁弾性部材555,556の繊維径は約940D(デニール)である。
その結果、おむつ2では、防漏壁50の折り込み接合部61よりも横方向の外側の領域における防漏壁弾性部材551~554の応力の和は、防漏壁50の折り込み接合部61及び折り込み接合部61よりも横方向の内側の領域における防漏壁弾性部材555,556の応力の和よりも小さくなっている。
なお、「応力の和」は、例えば以下の試験を行うことによって測定することができる。まず防漏壁50を長手方向に引っ張り、表面に皺ができない程度まで伸長させる。この状態で、防漏壁50及び防漏壁弾性部材551~554を長手方向における所定の長さle1で切り出して試験片とする。試験片は伸長した状態で切断されるため、防漏壁弾性部材551~554が収縮する際のばらつきや残留応力等の影響によって試験片ごとに差が生じないように、試験片を所定時間(例えば、1日程度)放置する。放置した後で、収縮した状態の試験片の長手方向における長さle2を測定する。その後、試験片の長手方向端部の所定位置を引っ張り試験器のチャックで固定し、収縮した分の長さ(すなわち、le1-le2)だけ試験片を引っ張った際の応力値を測定する。これによりにより、「応力の和」が得られる。
なお、上記の関係(防漏壁50の折り込み接合部61よりも横方向の外側の領域における防漏壁弾性部材55の応力の和<防漏壁50の折り込み接合部61及び折り込み接合部61よりも横方向の内側の領域における防漏壁弾性部材55の和)を満たしていれば、防漏壁弾性部材55の配置や数量、伸長倍率や繊維径は自在に変更することが可能である。
<おむつ2の特性>
このような構成を有することにより、おむつ2は、その着用時において特有の効果を有する。図14は、パンツ型に形成されたおむつ2を横方向から見た場合の概略断面図である。
パンツ型のおむつ2において、防漏壁50は、防漏壁弾性部材551~556の伸縮力によって腹側エンド接合部63fと背側エンド接合部63bとの間で収縮しつつ、図14のように着用者の肌側に立ち上がる。このとき、腹側エンド接合部63fの下端63fedには防漏壁弾性部材551~556による収縮力F1が作用し、吸収性本体10が当該部位において前後方向の内側(前側から後側)に引っ張られる。同様に、背側エンド接合部63bの下端63bedには防漏壁弾性部材551~556による収縮力F2が作用し、吸収性本体10が当該部位において前後方向の内側(後側から前側)に引っ張られる。
一般的なパンツ型おむつでは、着用者がおむつを着用した状態で仰向けの姿勢で寝ていた場合に、吸収性本体で吸収しきれなかった排泄物が、着用者の背側において吸収性本体の上端からおむつの外側に漏出してしまうおそれがある。
これに対して、おむつ2では、吸収性本体10の背側上端部が収縮力F2によって前後方向の内側(すなわち、着用者の肌側)に引っ張られることにより、当該背側上端部が着用者の身体にフィットしやすくなる。すなわち、吸収性本体10の背側上端部と着用者の肌との間に隙間等が形成されにくくなり、吸収性本体10の背側上端部から排泄物が漏出することを抑制しやすくなる。
そして、おむつ2では、背側エンド接合部63bの下端63bedが、本体背側上端接合部80bの下端80bedよりも縦方向の上側に位置している。つまり縦方向において背側エンド接合部63bの下端63bedと重複する位置では、吸収性本体10とバックシート30とが本体腹側上端接合部80fを介して積層された状態で接合されていることになる。したがって、下端63bedにおける剛性が高くなっている。
仮に、防漏壁弾性部材551~556による収縮力F2が作用する部位の剛性が低かったとすると、吸収性本体10を着用者の肌側に引っ張る力が分散しやすく、吸収性本体10と着用者の肌との間に隙間ができたり皺が形成されたりして、排泄物の漏出を抑制することは難しい。これに対して第2実施形態のおむつ2では、収縮力F2が作用する部位の剛性が高いため、収縮力F2が吸収性本体10を着用者の肌側に引っ張る力としてダイレクトに作用しやすくなる。これにより、吸収性本体10の背側上端部におけるフィット性がより高くなり、背側上端部における排泄物の漏出を効果的に抑制することができる。
さらに、おむつ2では、背側エンド接合部63bの下端63bedにおいて、防漏壁弾性部材551~556が防漏壁50の長手方向に沿って伸長した状態で配置されている。言い換えると、防漏壁弾性部材551~556による収縮力F2が該下端63bedに対して途切れることなく直接作用している。したがって、防漏壁弾性部材551~556による収縮力が途中で途切れているような場合と比較して、防漏壁50が着用者の肌側に引っ張られやすくなっている。つまり、防漏壁弾性部材551~556による収縮力F2が、背側エンド接合部63bの下端63bedを介して吸収性本体10に直接作用することによって、該吸収性本体10が着用者の肌側にしっかりと引っ張られるようになり、吸収性本体10の背側上端部におけるフィット性をより向上させることができる。
なお、図13に示されるおむつ2の構成であれば、腹側においても背側と同等の効果を得ることができる。すなわち、吸収性本体10の腹側上端部におけるフィット性が向上し、当該腹側上端部と着用者の腹部との間に隙間が生じにくくなる。これにより、着用者がおむつ2を着用した状態でうつ伏せの姿勢で寝ていた場合であっても、着用者の効果的に抑制することができる。
また、おむつ2では、着用時における防漏壁50のフィット性が向上している。上述したように、おむつ2では、防漏壁50の折り込み接合部61よりも横方向の外側の領域(図6における単層部54に相当する領域)に配置されている防漏壁弾性部材55(551~554)の応力の和が、防漏壁50の折り込み接合部61及び折り込み接合部61よりも横方向の内側の領域(図6における折り込み部53に相当する領域)に配置されている防漏壁弾性部材55(555,556)の応力の和よりも小さい。したがって、おむつ2の着用時において、折り込み部53では長手方向に沿ってより大きな収縮力が作用するため、該折り込み部53が着用者の肌にピタッとフィットしやすくなり、排泄物の横漏れを効果的に抑制することができる。
一方、単層部54では長手方向に沿った収縮力が折り込み部53よりも弱いため、折り込み部53と比較して長手方向にわずかに弛みが生じ、3次元的に変形しやすい状態となっている。したがって、単層部54は着用者の身体の凹凸に応じて面でフィットしやすくなる。
特に、おむつ2では、防漏壁弾性部材55による収縮力F2が背側エンド接合部63bの下端63bedに作用しており、かつ、下端63bedは本体背側上端接合部80bの下端80bedよりも縦方向の高い位置にある(図13及び図14参照)。この場合、防漏壁50は、第1実施形態のおむつ1等と比較して縦方向のより高い位置において着用者の肌側に立ち上がり、その分、着用者の身体のより広い範囲と接触しやすいことから、着用者の身体の凹凸にあわせてより柔軟に変形可能であることが要求される。これに対して、おむつ2の防漏壁50では、単層部54が変形しやすくなっているため、身体の凹凸に対しても良好なフィット性を実現することができる。特に、臀部のような大きな凹凸を有する曲面にも自然にフィットしやすくなる。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
(弾性部材について)
上述の実施形態では、胴回り弾性部材や防漏壁弾性部材として、糸ゴムを用いる例について説明されていたが、これらの弾性部材は所謂糸ゴム等の線状弾性部材に限られるものではない。例えば、所定の幅を有する平面状(帯状の)弾性部材が用いられても良い。また、防漏壁やバックシートを構成するシート部材を、伸縮性を有するシート部材(例えば伸縮性不織布)とすることで、糸ゴム等の弾性部材を別途設ける必要のない構成としても良い。
(おむつの折り畳みについて)
上述のおむつ1及びおむつ2は、梱包時や収納時において、縦方向に2つ折りにして畳むことでコンパクトな形状にすることができる。図15は、折り畳み状態のおむつ1(おむつ2)について説明する概略断面図である。
おむつ1(おむつ2)には、縦方向の所定位置において横方向に沿った折り畳み線FLが設けられており、当該折り畳み線FLを折り畳み基点としてパンツ型形状のおむつ1(おむつ2)を図15のように縦方向に二つ折りにして畳むことができる。図1では、腹側胴回り部3及び背側胴回り部4中の所定位置に、一対の折り畳み線FL,FLが網掛け線で表示されている。この折り畳み線FLは、おむつ1(おむつ2)において縦方向の上端(長手方向の腹側端及び背側端)から所定距離Lhだけ離れた位置に、横方向に沿って設けられている。なお、所定距離Lhはパンツ型形状のおむつ1(おむつ2)の縦方向における長さの約1/2の長さである(図1、図2参照)。
折り畳み線FLは、縦方向(長手方向)において一部が吸収性本体10の吸収体11と重複する位置に配置されている。したがって、おむつ1を折り畳む際に剛性の高い吸収体11が容易に折れ曲がり、かつ、折り曲げられた状態が維持されやすくするために、おむつ1には折り畳み線FLに沿った折り癖が付けられている。具体的には、おむつ1の製造工程において、製品状態(パンツ型形状)のおむつ1を折り畳み線FLにて折り曲げた後、折り畳み線FLの位置で厚さ方向に局所的なプレス加工を施す等の処理が行われ、しっかりと折り癖が付けられる。これにより、折り畳まれたおむつ1が自然に元の形状に戻ってしまうことが抑制され、コンパクトにパッケージングしやすくなる。
このとき、折り畳み線FLは、縦方向(長手方向)において防漏壁50の折り込み接合部61(すなわち折り込み部53)と重複しないように形成される。すなわち、おむつ1(おむつ2)で、折り畳み線FLと接合部61とは縦方向において重複部を有していない(図1及び図15参照)。したがって、おむつ1(おむつ2)が折り畳まれた状態であっても、防漏壁50のうち折り込み接合部61(折り込み部53)が形成されている位置では天面部51に折り癖が付けられない。つまり、折り込み接合部61が形成されている位置において、防漏壁50の天面部51は長手方向及び幅方向に対して平面形状を維持しやすく、おむつ1の着用時において天面部51が着用者の身体にピタッとフィットする効果は失われにくい。なお、図15においては、長手方向の中央位置CL10にて吸収体11及び防漏壁50(接合部61)が折り曲げられているが、該中央位置CL10では折り畳み線FLのような折り癖が付けられていないため、おむつ1着用時において防漏壁50の天面部51は平面形状を維持しやすい。
また、このような構成であれば、縦方向において防漏壁50の非接合部62と折り畳み線FLとが重複する。すなわち、防漏壁50の非接合部62のいずれかの領域に折り癖が付けられる。この場合、折り癖が付けられた位置では、非接合部62が縦方向(長手方向)に折れ曲がりやすくなる。一方、非接合部62が横方向(幅方向)に沿ってプレスされることにより、該非接合部62は横方向に対しては折れ曲がり難くなる。そして、長手方向において腹側及び背側の折り畳み線FL,FLとの間の領域(図1の股下部5に相当する領域)では、上述のプレスによる力以外に防漏壁50を横方向に折り曲げる力は作用し難いことから、股下部5の領域において防漏壁50の天面部51は平面形状をより維持しやすくなる。