JP7001520B2 - コンクリート型枠装置及びコンクリート打設方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネルの地山壁面に一次覆工のコンクリートを打設する際に用いるコンクリート型枠装置及びコンクリート打設方法に関する。
一次覆工はトンネルの掘進サイクル(掘削→ずり処理(ずり出し)→鋼製支保工→吹付けコンクリート)のうち鋼製支保工及び吹付けコンクリートの工程を総称した工程をいい、その施工に際して旧来、露出した地山壁面に対してコンクリートを直接吹付ける工法が広く用いられていた。ただし、この工法ではコンクリート材の跳ね返りによる材料ロスが大きく、品質のばらつきも大きくなり、また、粉塵による作業環境の悪化が不可避であるため、一次覆工をコンクリート吹付けとするのではなく、型枠を用いた流し込み式もくしは吹き込み式(型枠内でコンクリートを吹付ける方式)とすることが望ましいと考えられていた。このため従来、例えば移動式型枠を用いて地山壁面との間にコンクリートを流し込む施工方法の先行技術が提案されている(特許文献1参照。)。
特開平6-66096号公報
上記の先行技術は、地山壁面に対してコンクリートのみを打設していく構造を想定しており、標準的なNATM(New Australian Tunneling Method)工法で不可欠な鋼製支保工の存在を考慮していない。このため先行技術は、現行のNATM工法を用いたトンネル構造には適合しない。仮に適合できたとしても、先行技術によるコンクリートの流し込みに際しては、既設の箇所(打設済みのコンクリート)と新たに露出した地山壁面のそれぞれに対して直接、仮設ガイドレールを設置して移動式型枠を支持させる必要がある。したがって、最初の仮設ガイドレールの設置だけでなく、掘進にともなう仮設ガイドレールの撤去と移動及び再設置の繰り返しという余計な工数が増え、使用する資材も多くなるという欠点がある。
そこで本発明は、トンネルの一次覆工に要する余計な工数や資材の増加を防止する技術の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を提供する。
本発明は、掘削→ずり処理(ずり出し)→鋼製支保工→吹付けコンクリートの各工程からなる掘進サイクルを繰り返すNATM工法に好適なコンクリート型枠装置である。本発明の主な解決手段は、NATM工法において不可欠な鋼製支保工そのものを型枠本体の支持及びガイドに活用したことである。本発明のコンクリート型枠装置は「型枠本体」、「支持機構」及び「可動機構」を備える。
今回の掘進サイクルにおいて掘削及びずり処理の工程後、一次覆工では鋼製支保工を新設するが、このとき、前回の掘進サイクルで既設された鋼製支保工と今回新設の鋼製支保工との間を一次覆工領域として、これを板状の「型枠本体」により地山壁面に対向して面状に覆う。「支持機構」は、新設の鋼製支保工の内空側フランジを掘進方向側及び掘進方向反対側の両側二辺で把持しつつ、前回の掘進サイクルで既設の鋼製支保工の内空側フランジについては掘進方向側一辺で把持することで、型枠本体を新設・既設両方の鋼製支保工に支持させる。ここで支持機構は、新設の鋼製支保工は両側二辺のフランジを掴むことができるのに対し、既設の鋼製支保工は掘進方向反対側のフランジが既設のコンクリートで埋まっており、掘進方向側のフランジ一辺でしか掴めないため、新設・既設両方の鋼製支保工間では非対称に型枠本体を支持することになるが、新設側のフランジ二辺を両側から把持する際の反力が型枠本体を通じて既設側のフランジ一辺の把持にも作用し、結果として両側で安定的に型枠本体を支持させることが可能である。
本発明のコンクリート打設方法は、上記のように型枠本体を新設・既設両方の鋼製支保工で安定的に支持させておき、地山壁面との間にコンクリートを流し込んで打設するものである。コンクリートの圧(重量)が型枠本体にかかっても、支持機構の把持力がこれを充分に受け止めた状態でコンクリートを良好に硬化させる。「可動機構」は、支持機構で把持した内空側フランジを案内部材として鋼製支保工の周方向(地山壁面の周方向)に型枠本体を移動可能とする。したがって、流し込んだコンクリートの硬化に合わせて型枠本体を周方向に移動させていくことで、今回の一次覆工領域内に順次コンクリートを打設することができる。
好ましくは、本発明の方法は、今回の掘進サイクルの一次覆工において掘進方向に両側対称構造の2台のコンクリート型枠装置を用いることができる。この場合、トンネル幅方向で片側又は両側の新設・既設両方の鋼製支保工の下端位置からコンクリートの打設を開始し、打設したコンクリートの硬化に合わせて型枠本体を各鋼製支保工の下端位置から頂点方向に移動させつつ順次コンクリートを打設していき、型枠本体が頂点位置に到達すると打設を終了し、打設したコンクリートの頂点閉合で一次覆工が完了すると次の掘進サイクルに移行する。
これにより、標準的なNATM工法で必然的に用いられる鋼製支保工を各掘進サイクルにおける状態そのままに活用してコンクリート型枠装置を自己支持するだけでなく、その移動までもが可能となることから、コンクリート吹付け作業を廃して今回の掘進サイクルにおける一次覆工を完了させることができる。また、他に特有の仮設材や治具等を必要とせず、施工コストや工数の負担を軽減することができる。
本発明によれば、トンネルの一次覆工に要する余計な工数や資材の増加を防止することができる。
一実施形態のコンクリート型枠装置の構造を示す概要図(正面図)である。 図1のコンクリート型枠装置の平面図である。 図1のコンクリート型枠装置の側面図である。 コンクリート型枠装置の設置手順を示す連続図(1/2)である。 コンクリート型枠装置の設置手順を示す連続図(2/2)である。 コンクリート型枠装置を用いたコンクリートの打設手順を示した図である。 コンクリート型枠装置を用いたコンクリートの打設手順を示した図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1から図3は、一実施形態のコンクリート型枠装置10の構造を示す概要図であり、各図では、コンクリート型枠装置10がトンネル工事現場での使用形態で示されている。このうち図1がトンネルの内空側から壁面をみた図であり、図1をコンクリート型枠装置10の正面図とすると、図2はその平面図、図3はその右側面図となる。
図1中の矢印で示す掘進方向に今回の掘進サイクルで掘削、ずり処理の各工程が行われた後、一次覆工で新設の鋼製支保工HNが設置されると、新設・既設両方の鋼製支保工HE,HNの間が今回の一次覆工領域FAとなる。鋼製支保工HE,HNは例えばH形鋼であり、既設の鋼製支保工HEは、そのウエブWBの掘進方向反対側までが前回の掘進サイクルで一次覆工が完了したときの既設コンクリートCEで埋まっており、今回の掘進サイクルでは、既設の鋼製支保工HEの掘進方向側と新設の鋼製支保工HNの掘進方向反対側の各ウエブWB間に新設コンクリートCNを打設する。以下、図1~図3を適宜参照してコンクリート型枠装置10の構造を説明する。
〔型枠本体〕
コンクリート型枠装置10は、例えば矩形板状をなす型枠本体12を備えている。型枠本体12は、今回の掘進サイクルで新たに露出された地山壁面TWに対向し、これを面状に覆うように配置されている。すなわち、型枠本体12は、既設の鋼製支保工HEと新設の鋼製支保工HNとの設置間隔より大きい幅寸法を有しており、幅方向の両端は、既設及び新設の内空側フランジFIから掘進方向反対側及び掘進方向側へそれぞれ張り出している。なお、型枠本体12の縦寸法については適宜とすることができる。また、型枠本体12は平板状のものだけでなく、鋼製支保工HE,HN等の曲がりに沿った曲面板状としてもよい。
〔支持機構〕
コンクリート型枠装置10による型枠本体12の支持は、既設及び新設の鋼製支保工HE,HNを利用して行われている。具体的には、コンクリート型枠装置10は図1の配置でみて鋼製支保工HNの掘進方向側に2つの固定ローラ14を備える他、鋼製支保工HNの掘進方向反対側及び鋼製支保工HEの掘進方向側で一対をなす2つの可動ローラ16,18を備えており、これらローラ14,16,18で新設・既設両方の内空側フランジFIを把持し、これに掴まるようにして自己支持することができる。また、これらローラ14,16,18は、いずれも型枠本体12に取り付けられており、周面が型枠本体12の表面(対向面)から地山壁面TWに向けて大径となるテーパ状に形成されている(図2、図3等参照)。したがって、各ローラ14,16,18を小径側の周面で内空側フランジFIに接触させた状態にすると、テーパ状の周面が内空側フランジFIに対する引っ掛かりとして作用することで、上記の自己支持を可能とする。以下、各ローラ14,16,18について説明する。
〔固定ローラ〕
2つの固定ローラ14は、型枠本体12に対して軸20が固定されており、軸20は型枠本体12の面に対して垂直である。これら固定ローラ14は、それぞれの軸20を中心に回転自在に支持されており、また、2つの固定ローラ14は、型枠本体12の掘進方向側縁部に沿って2箇所に分かれて配置されている(図1、図3等参照)。このうち1つの固定ローラ14は、図1、図3の使用形態でみて型枠本体12の下端近くに配置されており、もう1つの固定ローラ14は上端から中段寄りに配置されている。これにより、2つの固定ローラ14は、新設の鋼製支保工HNの内空側フランジFIの掘進方向側一辺を2箇所で把持することができる。
〔可動ローラ〕
掘進方向で一対をなす2つの可動ローラ16,18は、型枠本体12に対して軸20が移動可能に支持されている。具体的には、型枠本体12には掘進方向に延びる長孔22が形成されており、可動ローラ16,18の各軸20は、それぞれ対応する位置の長孔22内にて両方向に移動可能である。このうち、鋼製支保工HEに当接する可動ローラ16は、既設の鋼製支保工HEの内空側フランジFIに対して掘進方向側から接近又は離隔するように移動することができる。また、鋼製支保工HNに当接する可動ローラ18については、新設の鋼製支保工HNに対して掘進方向反対側から接近又は離隔するように移動することができる。
〔駆動源〕
各可動ローラ16,18の移動は、エアシリンダ24を駆動源として行われる。すなわち、使用形態でみて型枠本体12の内空側の面には一対のエアシリンダ24が設置されており、各エアシリンダ24がロッドを伸縮させることで、各可動ローラ16,18を型枠本体12の面に沿って軸20ごと往復移動させる。各エアシリンダ24は、ロッドを収縮させることで各可動ローラ16,18を内空側フランジFIから離隔させる一方、ロッドを伸長させることで各可動ローラ16,18の周面を内空側フランジFIに近接させ、さらに押し付ける力を発生する。このときの押し付け力は、鋼製支保工HN側では2つの固定ローラ14と可動ローラ18とで内空側フランジFIの二辺を両側から3箇所で掴まえるようにして把持する力を発生させる。一方の鋼製支保工HE側では、可動ローラ18を内空側フランジFIに押し付けた状態を維持することで、鋼製支保工HE側で生じた把持する力の反力を鋼製支保工HN側にも伝達し、鋼製支保工HE側一辺を1箇所でも充分に把持する力を生じさせる。これにより、各固定ローラ14及び可動ローラ16,18が掘進方向に非対称な配置(4箇所)であっても、コンクリート型枠装置10全体を安定的に自己支持させることができるのである。
なお、各エアシリンダ24には、図示しない空圧配管や圧搾空気の供給源、ソレノイドバルブ、コントローラ等が接続されており、コンクリート型枠装置10の使用者等によって各エアシリンダ24の駆動が制御されている。
〔可動機構〕
コンクリート型枠装置10は、例えば図1、図3に示されているように、新設・既設両方の鋼製支保工HE,HNの内空側フランジFIに沿って周方向に移動可能であり、コンクリート型枠装置10の移動経路上に今回の一次覆工で新設コンクリートCNが打設されていく。
〔移動用ローラ〕
上記のような移動を可能とするため、コンクリート型枠装置10は4つの移動用ローラ26を備えており、各移動用ローラ26は、型枠本体12の開口27を通じて内空側フランジFIのフランジ面FSに周面を接触させている。4つの移動用ローラ26の配置は、例えば型枠本体12の四隅に設定されており、このような配置に合わせて4つの開口27が型枠本体12に形成されている。また、各移動用ローラ26は平面ローラであり、これらは2本の駆動軸28に2個ずつ、上下に分かれて支持されている。なお、各移動用ローラ26は、例えば図示しない軸受け部材を介して型枠本体12に支持されている。
〔動力源〕
上下2本の駆動軸28は、それぞれ両端位置で移動用ローラ26を支持する他、中央位置で動力伝達機構30に連結されている。動力伝達機構30は、例えば傘歯車を用いて回転方向を90°変換して伝達可能である。動力伝達機構30もまた上下2つに分かれて設置されており、これらは別の主駆動軸32で相互に連結されている。主駆動軸32は型枠本体12の面に沿って縦方向に延び、その中央位置に従動歯車(符号なし)が介挿されている。従動歯車には駆動ベルト34が掛け回されており、これが駆動モータ36の駆動歯車(符号なし)にも掛け回されている。駆動モータ36は型枠本体12に支持されており、図示しない出力軸を介して駆動歯車を回転させる動力を発生する。駆動モータ36は、その回転を上記の主駆動軸32から動力伝達機構30、駆動軸32を通じて4つの移動用ローラ26に伝達し、各移動用ローラ26をコンクリート型枠装置10の移動方向に回転させる。
〔可動機構と支持機構との協働〕
ここで、上記の固定ローラ14及び可動ローラ16,18による把持力は、結果として型枠本体12を内空側フランジFIのフランジ面FSに対して押し付ける方向にも作用している。したがって、固定ローラ14及び可動ローラ16,18が内空側フランジFIを把持すると、各移動用ローラ26は、周面を内空側フランジFIのフランジ面FSに対して押し付けた状態となる。またこのことは、固定ローラ14及び可動ローラ16,18が各移動用ローラ26との間にて、内空側フランジFIを厚み方向に把持していることも意味する。
したがって、各移動用ローラ26の回転は、そのまま内空側フランジFIのフランジ面FSに対する推進力となる。これにより型枠本体12、つまりコンクリート型枠装置10全体が内空側フランジFIのフランジ面FSを走行面として自走することができる。そして、このとき固定ローラ14及び可動ローラ16,18は、鋼製支保工HE,HNの内空側フランジFIで型枠本体12を支持するだけでなく、この支持状態を維持したまま各ローラ14,16,18の周面が内空側フランジFIを把持しつつ従動回転し、型枠本体12を内空側フランジFIに沿って移動可能とする。なお、コンクリート型枠装置10は駆動モータ36を備えていなくてもよく、この場合、重機等の外部駆動源を用いて型枠本体12に外力を加えればよい。
〔補助構成〕
図1では図示を省略しているが、コンクリート型枠装置10は、その他の補助的な構成として4つのエアシリンダ38及び支持フレーム40を備えている(図2、図3参照。)。支持フレーム40は、例えば角筒形断面の形鋼を縦2本及び横2本の井形(H型)に組みあわせた構造であり、縦2本の形鋼がそれぞれ上下端部でエアシリンダ38を2本ずつ保持している。支持フレーム40の中央位置にはアタッチメント42が設けられており、このアタッチメント42には、例えば図示しない重機等のアームを着脱可能となっている。
また、型枠本体12の内空側の面にはサブフレーム44が設置されており、このサブフレーム44は、型枠本体12の幅方向で両側に分かれて2箇所に配置されている。各サブフレーム44は、型枠本体12の内空側の面上を縦方向に延びるリブ形状をなしており、上下端の部位は移動用ローラ26の外側を覆うようにして山形状に突出している。
なお、エアシリンダ38の保持は固定のものと可動のものとがあり、図3でみて例えば下側2本のエアシリンダ38が支持フレーム40に対して固定であるとすると、上側2本のエアシリンダ38は支持フレーム40に対してロッドを上下方向に揺動可能に保持されている。そして、各エアシリンダ38のロッド先端部が各サブフレーム44の上下端の部位にピン接合されている。これにより、図3でみて支持フレーム40と型枠本体12との間には、上下のエアシリンダ38のロッド先端部と各サブフレーム44とのピン接合と、上側のエアシリンダ38と支持フレーム40との揺動可能な保持とによるリンク機構が構成されている。
また、4本のエアシリンダ38は個別にロッドを伸縮可能であり、これらエアシリンダ38には、図示しない空圧配管や圧搾空気の供給源、ソレノイドバルブ、コントローラ等が接続されており、コンクリート型枠装置10の使用者等によって各エアシリンダ38のロッド伸縮が制御されている。
支持フレーム40は、そのアタッチメント42を通じてコンクリート型枠装置10全体を重機等で補助的に支持する場合に用いることができる。このとき、コンクリート型枠装置10全体を支持フレーム40で支持していても、エアシリンダ38のロッド伸縮を個別に調整することにより、各移動用ローラ26の相対的な位置を内空側フランジFIのフランジ面FSの曲がりに対して柔軟に追随させることができる。また、支持フレーム40を介してコンクリート型枠装置10全体を補助的に支持することができるため、鋼製支保工HE,HNからの万一の脱落を防止することができる。
〔コンクリート打設方法〕
次に、本実施形態のコンクリート型枠装置10を用いたコンクリート打設方法について説明する。
〔コンクリート型枠装置10の設置〕
図4及び図5は、コンクリート型枠装置10の設置手順を示す連続図である。以下、手順に沿って説明する。
図4に示されているように、今回の掘進サイクルで掘削及びずり処理を実施し、鋼製支保工HEを新設した状態でコンクリート型枠装置10を施工場所に搬入し、型枠本体12を新たに露出した地山壁面TW(一次覆工領域FA)に対向させる。このとき、掘進方向で両側一対のエアシリンダ24のロッドを収縮させ、特に鋼製支保工HN側で固定ローラ14と可動ローラ18との最小間隔を内空側フランジFIの幅よりも大きく広げておく。また、固定ローラ14の前端面が内空側フランジFIのフランジ面FSにぶつからない位置までコンクリート型枠装置10全体を掘進方向側にずらしておく。
次に、図5に示されているように型枠本体12全体を内空側フランジFIのフランジ面FSに近接させ、2つの固定ローラ14が内空側フランジFIの掘進方向側一辺を掴めるように全体を位置合わせする。このとき、掘進方向側のエアシリンダ24のロッドは収縮したままとし、可動ローラ18を未だ内空側フランジFIに干渉しない位置に保持しておく。
上記の位置合わせ後、両側一対のエアシリンダ24を駆動してロッドを伸長させる。これにより、可動ローラ16,18がそれぞれの周面で内空側フランジFIに接した状態となる。このとき、鋼製支保工HN側ではエアシリンダ24の駆動力で固定ローラ14と可動ローラ18が内空側フランジFIを掘進方向側及び掘進方向反対側の二辺で挟み付けるようにして把持する力を生じる。一方の鋼製支保工HE側では、可動ローラ16が内空側フランジFIの掘進方向側一辺のみに対して周面を押し付けており、両側では非対称となっているが、上記のように鋼製支保工HE側で内空側フランジFIを把持する力の反力が型枠本体12を通じて鋼製支保工HN側にも作用し、安定的にコンクリート型枠装置10全体が新設・既設両方の鋼製支保工HE,HNに掴まって自己支持した状態となる。また、各移動用ローラ26については、上記の把持する力で周面をフランジ面FSに対して押し付けた状態となる。
〔コンクリート流し込み〕
図6及び図7は、コンクリート型枠装置10を用いたコンクリートの打設手順を示した図である。今回の一次覆工領域FAからみて掘進方向反対側には、前回以前の掘進サイクルで完成された一次覆工での既設コンクリートCE及び既設の鋼製支保工HEが施工済みである。今回の掘進サイクルでは、掘進方向側を掘削及びずり処理した後、鋼製支保工HNを新設し、前回既設の鋼製支保工HEとの間の一次覆工領域FAにコンクリート型枠装置10を用いてコンクリートを打設する。図6にはトンネル底面からある程度離れた位置にコンクリート型枠装置10が示されているが、コンクリート打設は、図7に示すように、コンクリート型枠装置10を鋼製支保工HE,HNの下端位置(地面上)に配置した状態で開始する。
すなわち、鋼製支保工HE,HNの下端位置にコンクリート型枠装置10を配置し、上記のように自己支持させた状態で地山壁面TWとの間に上方からコンクリートを流し込む(図6中の灰色矢印)。流し込んだコンクリートの硬化に合わせてコンクリート型枠装置10を鋼製支保工HE,HNの周方向(図6中の黒矢印に示すトンネル頂点方向)に移動させていき、順次コンクリートを流し込んで打設していく。打設・硬化したコンクリートが今回の一次覆工で新設するコンクリートCNとなる。このとき、一対の可動ローラ16,18は流し込み方向でみて上流側の位置にあるため、コンクリート型枠装置10を移動させていく限りにおいては、流し込んだコンクリートに埋まってしまうことはない。なお、固定ローラ14については当接するフランジが掘進方向側であるため、そもそもコンクリートには埋まらない。なお、掘進サイクルの初回は既設となる鋼製支保工HEが未設置であるが、その場合は掘進方向に2本並べた鋼製支保工の掘進方向反対側を既設の鋼製支保工HEとすればよい。
〔トンネル両側での施工〕
図7に示されているように、上記の一次覆工をトンネル幅方向の両側又は片側から開始する。すなわち、一次覆工の工程では2台のコンクリート型枠装置10をトンネル内に搬入する。このとき2台のコンクリート型枠装置10は、両側対称の構造とする(図1でみて左右対称のものを2台)。そして、2台のコンクリート型枠装置10に両側で鋼製支保工HE,HNの内空側フランジFIを掴ませ、その曲がりに沿って下端(脚部)位置から頂点に向かって移動(図7中の矢印)させながらコンクリートを打設する方法とする。なお、両側からコンクリート打設を並行して行わず、片側ずつコンクリートを打設してもよい。このようにして順次コンクリートを打設していき、下端位置からスタートして頂点に達すると打設を終了する。そして、打設したコンクリートの頂点閉合(※ここではトンネル断面内で円周方向に一次覆工の構造が頂点位置で閉じる意味)で一次覆工(コンクリート支保)が完成すると、次の掘進サイクルに移行する。なお、適宜必要な場合はロックボルトの施工も行う。
以上のように、本実施形態のコンクリート型枠装置10及びコンクリート打設方法によれば、以下の有用性を得ることができる。
(1)2つの可動ローラ16,18は、それぞれがエアシリンダ24の駆動で横方向に移動し、内空側フランジFIに対してアジャストさせることができる。したがって、トンネル工事現場によって鋼製支保工HE,HNのフランジ幅が異なる場合でも、各現場での調整作業がきわめて容易であり、汎用性に優れたコンクリート型枠装置10とすることができる。
(2)固定ローラ14及び可動ローラ16,18による把持は、掘進方向の両側では非対称となっており、単一のローラ14,16,18だけに着目した場合は内空側フランジFIに対して片側支持のようにもみえるが、型枠本体12や支持フレーム40を介して個々のローラ14,16,18間で反力を取り合うことにより、全体として安定的にコンクリート型枠装置10を自己支持することが可能となる。このため、標準的なNATM工法に不可欠な鋼製支保工HE,HNの他に仮設材を用いることなく、流し込みによるコンクリート打設が可能となる。
(3)また、鋼製支保工HE,HNに対して自己支持するだけでなく、それらのフランジ面FSを走行面として4つの移動用ローラ26による自走も可能である。このため、上述した先行技術(特許文献1)のように、打設したコンクリートそのものを走行面として自走する必要がなく、打設したコンクリートに余計な負荷を掛けることがない。また、打設したコンクリートが走行面として耐え得る硬さであるかをその都度考慮することなく、単純に流し込み後のコンクリートの硬化に合わせてコンクリート型枠装置10を移動させることができ、効率よく一次覆工を完成させることができる。
(4)また、支持フレーム40及びエアシリンダ38を用いた各移動用ローラ26の相対位置の立体的な調整により、鋼製支保工HE,HNの曲がりにも柔軟に追随してコンクリート型枠装置10を移動させることができる。
(5)アタッチメント42に重機等のアームを接続し、コンクリート型枠装置10全体を支持フレーム40部分で支持することにより、万一の鋼製支保工HE,HNからの脱落を防止することができる。また、駆動モータ36を備えなくとも、重機等のアームの外力でコンクリート型枠装置10を移動させることができる。
(6)従来デメリットが多く顕在していたコンクリート吹付け作業を廃することができるだけでなく、流し込み方式を採用するにしても、面倒な型枠設置作業にはトンネル支保構造体である鋼製支保工HE,HNを活用しているため、他に特有の仮設材や治具などを必要とせず、コストや時間等の実施負担を小さくすることができる。
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施可能である。例えば、一実施形態では固定ローラ14を2箇所に設けているが、3箇所以上に設けてもよい。
また、一実施形態ではエアシリンダ24,38を用いているが、これらに油圧シリンダや電磁アクチュエータ、直動モータ等を用いてもよい。
移動用ローラ26の駆動は、駆動モータ36を用いた動力伝達機構30以外で行ってもよい。
その他、例に挙げた各種構成部品や設備品はいずれも一例であり、適宜に数量や大きさ、形状を変形可能であるし、本発明はインバートを設けたトンネルにも適用可能である。
10 コンクリート型枠装置
12 型枠本体
14 固定ローラ
16 可動ローラ
18 可動ローラ
20 軸
24 エアシリンダ
26 移動用ローラ
28 駆動軸
30 動力伝達機構
32 主駆動軸
36 駆動モータ
38 エアシリンダ
40 支持フレーム
42 アタッチメント
FI 内空側フランジ
FS フランジ面
HE 鋼製支保工(既設)
HN 鋼製支保工(新設)

Claims (7)

  1. 掘削、ずり処理、並びに総称が一次覆工である鋼製支保工及び吹付けコンクリートの各工程からなる掘進サイクルを繰り返して掘進されるトンネル内で、一次覆工のコンクリート打設に用いられるコンクリート型枠装置であって、
    今回の掘進サイクルで鋼製支保工の新設後にコンクリートが打設される一次覆工領域をトンネルの地山壁面に対向して面状に覆う型枠本体と、
    前記新設の鋼製支保工の内空側フランジを掘進方向側及び掘進方向反対側の両側二辺で把持しつつ、前回の掘進サイクルで既設の鋼製支保工の内空側フランジについては掘進方向側一辺で把持することで前記型枠本体を前記各鋼製支保工に支持させる支持機構と、
    前記支持機構により把持した前記内空側フランジを案内部材として前記鋼製支保工の周方向に前記型枠本体を移動可能とする可動機構と
    を備えたコンクリート型枠装置。
  2. 請求項1に記載のコンクリート型枠装置において、
    前記支持機構は、
    前記型枠本体に軸が固定され、前記型枠本体から地山壁面に向けて大径となるテーパ状の周面にて前記新設の鋼製支保工の内空側フランジの掘進方向側一辺を複数箇所で把持する複数の固定ローラと、
    前記型枠本体の面に沿って軸が移動可能に設けられ、前記型枠本体から地山壁面に向けて大径となるテーパ状の周面にて前記新設の鋼製支保工の内空側フランジの掘進方向反対側一辺を把持する第1可動ローラと、
    前記型枠本体の面に沿って軸が移動可能に支持され、前記型枠本体から地山壁面に向けて大径となるテーパ状の周面にて前記既設の鋼製支保工の内空側フランジの掘進方向側一辺を把持する第2可動ローラと、
    前記第1可動ローラ及び前記第2可動ローラをそれぞれの把持対象となる前記内空側フランジに押し付ける力を発生する駆動源と
    を有することを特徴とするコンクリート型枠装置。
  3. 請求項2に記載のコンクリート型枠装置において、
    前記可動機構は、
    前記型枠本体の複数箇所に形成された各開口を通じて前記各鋼製支保工の内空側フランジ面に周面を接触させ、前記型枠本体の移動方向に回転可能な複数の移動用ローラを有し、
    所定の動力源を用いて前記移動用ローラを回転させるか、もしくは前記型枠本体に外力を加えることで、前記移動用ローラの回転とともに前記固定ローラ、前記第1可動ローラ及び前記第2可動ローラがそれぞれ軸回りに回転することで前記支持機構による支持を維持しつつ、前記各鋼製支保工の内空側フランジに沿って周方向に前記型枠本体を移動可能とすることを特徴とするコンクリート型枠装置。
  4. 請求項2又は3に記載のコンクリート型枠装置において、
    前記第1可動ローラ及び前記第2可動ローラは、
    前記型枠本体と地山壁面との間へのコンクリートの流し込み方向で上流側となる位置に設けられていることを特徴とするコンクリート型枠装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のコンクリート型枠装置において、
    前記型枠本体を複数箇所でトンネル内空側から保持し、個別にロッドを伸縮させることで前記型枠本体と前記各鋼製支保工の内空側フランジとの相対位置を調整可能な複数の伸縮型アクチュエータと、
    複数の前記伸縮型アクチュエータを介して前記型枠本体をトンネル内空側から支持可能とする支持フレームと
    をさらに備えたコンクリート型枠装置。
  6. 掘削、ずり処理、並びに総称が一次覆工である鋼製支保工及び吹付けコンクリートの各工程からなる掘進サイクルを繰り返して掘進するトンネル内で、一次覆工のコンクリートを打設するコンクリート打設方法であって、
    今回の掘進サイクルで鋼製支保工を新設後にコンクリートを打設する一次覆工領域をトンネルの地山壁面に対向する型枠本体で面状に覆い、
    前記新設の鋼製支保工の内空側フランジを掘進方向側及び掘進方向反対側の両側二辺で把持しつつ、前回の掘進サイクルで既設の鋼製支保工の内空側フランジについては掘進方向側一辺で把持することで前記型枠本体を前記各鋼製支保工に対して非対称に支持させた状態とし、
    把持した前記内空側フランジを案内部材として前記鋼製支保工の周方向に前記型枠本体を移動させつつ、今回の掘進サイクルで行う一次覆工のコンクリートを前記型枠本体と地山壁面との間に順次打設するコンクリート打設方法。
  7. 請求項6に記載のコンクリート打設方法において、
    トンネル幅方向で両側又は片側の前記各鋼製支保工の下端位置に前記型枠本体を配置してコンクリートの打設を開始し、
    打設したコンクリートの硬化に合わせてそれぞれ前記型枠本体を前記各鋼製支保工の下端位置から頂点方向に移動させつつ順次コンクリートを打設していき、
    前記型枠本体が頂点位置に到達すると打設を終了し、打設したコンクリートの頂点閉合で一次覆工が完了すると次の掘進サイクルに移行するコンクリート打設方法。
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