JP7000101B2 - シリカ分散液、研磨スラリーおよび研磨スラリー調製用キット - Google Patents
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Description
吸着指数α=[(W0-W1)/W0]×100;
により算出される吸着指数αが5以下であることによって特徴づけられる。
(A)非共有電子対を有する窒素原子を含む;および
(B)上記窒素原子とそのα位原子との間、または上記α位原子とβ位原子との間にπ結合を有する;
を満たす構造部分を有する化合物を好ましく使用し得る。ここに開示される技術は、上記条件(A),(B)を満たす有機防腐剤を用いて好適に実施され得る。
(吸着指数α)
この明細書により開示されるシリカ分散液は、シリカ粒子と有機防腐剤と水とを含む。上記シリカ分散液の吸着指数αは5以下である。ここで、吸着指数αは、上記シリカ分散液に含まれる上記有機防腐剤の炭素重量W0と、上記シリカ分散液に遠心分離処理を施して上記シリカ粒子を沈降させた上澄みに含まれる上記有機防腐剤の炭素重量W1とから、次式:
吸着指数α=[(W0-W1)/W0]×100;
により算出される。上記遠心分離処理は、室温(20~30℃、例えば25℃)において、シリカ粒子を沈降させることが可能な条件で行うことができ、例えば後述する実施例に記載の条件で行うことができる。上記上澄みに含まれる有機防腐剤の炭素重量W1は、例えば、該上澄みの全有機炭素量(TOC)を測定し、その測定結果に基づいて求めることができる。また、シリカ分散液に含まれる前記有機防腐剤の炭素重量W0は、該シリカ分散液に含まれる有機防腐剤と同種の有機防腐剤を等濃度で純水に混合して防腐剤希釈水溶液を調製し、同様にTOCを測定し、その測定値に基づいて求めることができる。W1およびW0は、具体的には次式により算出することができる。
W0=[TOC0×Vs]
Vs=Ws/ρs
Vu=Vs-(Wsilica/ρsilica)
TOC1:シリカ分散液の上澄みについて測定されたTOC(mg/l)
TOC0:シリカ分散液の防腐剤と同濃度となるよう希釈された防腐剤希釈水溶液のTOC(mg/l)
Vu:シリカ分散液の上澄みの体積(ml)
Vs:シリカ分散液の体積(ml)
Ws:シリカ分散液の質量(g)
ρs:シリカ分散液の密度(g/ml)
Wsilica:シリカの質量(g)
ρsilica:シリカの密度(典型的には2.2g/mlを用いる。)
シリカ粒子の種類や性状等は特に限定されず、使用目的や使用態様等に応じて、該シリカ粒子を含むシリカ分散液において所望の吸着指数αが得られるように適宜選択することができる。なお、ここでシリカ粒子とは、シリカを主成分とする粒子をいい、実質的にシリカからなる粒子のほか、例えば、該粒子の90重量%以上、95重量%以上、または98重量%以上がシリカからなる粒子を包含し得る。
シリカ分散液に含有させる有機防腐剤の種類は特に限定されず、防腐効果を発揮し得ることが知られている各種の有機防腐剤のなかから、シリカ分散液の吸着指数αを5以下とし得る材料を選択して用いることができる。ここでいう有機防腐剤の非限定的な例には、イミダゾール系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、ハロアセチレン系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、フェニルウレア系化合物、トリアジン系化合物、キノロン系化合物、四級アンモニウム塩系化合物等が含まれ得る。例えば、イミダゾール系化合物およびグアニジン系化合物からなる群から選択される一種または二種以上の化合物を用いることができる。イミダゾール系化合物の例としては、ベンゾイミダゾール、チアベンダゾール、フベリダゾール、メベンダゾール、アルベンダゾール、フェンベンダゾール、フルベンダゾール、オクスフェンダゾール、オキシベンダゾール、パーベンダゾール、カンベンダゾール、ルクサベンダゾール、リコベンダゾール等の、ベンゾイミダゾール系化合物が挙げられる。グアニジン系化合物の例としては、ポリヘキサメチレンビグアニジン等のポリアルキレンビグアニジン、ポリヘキサメチレングアニジン等のポリアルキレングアニジン、1,6-ジ-(4’-クロロフェニルジグアニド)-ヘキサン、ドデシルグアニジン、これらの塩、等が挙げられる。上記塩は、例えば、塩酸塩やリン酸塩等であり得る。有機防腐剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
(A)非共有電子対を有する窒素原子を含む;および
(B)上記窒素原子とそのα位原子との間、または上記α位原子とβ位原子との間にπ結合を有する;
を満たす構造部分を有する化合物を好ましく使用し得る。かかる構造部分を有する有機防腐剤によると、吸着指数αの値が小さく、良好な防腐性を示し、かつ研磨性能と両立しうる研磨スラリーの構成成分としての利用に適したシリカ分散液、例えば、有機防腐剤の使用に起因する研磨レートの低下や清浄性悪化、研磨スラリーの調製過程におけるシリカ粒子の凝集起因の欠陥を生じにくいシリカ分散液が得られやすい。
一般に、上記窒素原子上の非共有電子対は、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基との水素結合の形成に寄与し得る。上述のように窒素原子上の非共有電子対を非局在化し得る構造の有機防腐剤によると、有機防腐剤のシリカ粒子への吸着性が弱まり、吸着指数αの低いシリカ分散液が得られやすくなる。このことによって、シリカ分散液中の有機防腐剤を効果的に利用することで良好な防腐性を示し、かつ研磨性能と両立しうる研磨スラリーの構成成分としての利用に適したシリカ分散液が実現されるものと考えられる。ただし、本発明はこのメカニズムに限定されるものではない。
ここに開示されるシリカ分散液は、該シリカ分散液に含まれるシリカ粒子の表面積1m2当たりの有機防腐剤吸着量(以下「表面積当たり吸着量」ともいう。)が、例えば10μg未満であり得る。上記表面積当たり吸着量は、シリカ分散液に含まれる有機防腐剤の炭素重量W0、該シリカ分散液に含まれるシリカ粒子の表面積、および該シリカ分散液の吸着指数αに基づいて算出することができる。いくつかの態様において、上記表面積当たり吸着量は、例えば5μg/m2以下であってよく、2μg/m2以下でもよく、1μg/m2以下でもよい。表面積当たり吸着量が少ないことは、有機防腐剤の使用に起因する研磨レートの低下を抑制する観点から有利となり得る。また、表面積当たり吸着量の抑制により、酸の混合等のpH変化に対する耐性が増し、シリカ粒子の凝集防止性が向上する傾向にある。表面積当たり吸着量の下限は特に制限されず、実質的に0μg/m2でもよい。
シリカ分散液に含まれる水としては、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水、逆浸透圧水、濾過水、工業用水等を利用することができ、例えばイオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく使用し得る。イオン交換水は、典型的には脱イオン水であり得る。
シリカ分散液のpHは、特に制限されず、該シリカ分散液の用途等に応じて選択し得る。上記シリカ分散液のpHは、例えば2.0~12.5の範囲から選択し得る。いくつかの態様において、シリカ分散液のpHは、例えば5.0以上であってよく、7.0以上であってもよく、8.0以上であってもよく、9.0以上であってもよい。シリカ分散液のpHが高くなると、該シリカ分散液の分散安定性が向上する傾向にある。また、シリカ粒子の溶解を防ぐ観点から、シリカ分散液のpHは、通常、12.0以下であることが適当であり、11.0以下であることが好ましく、10.5以下であってもよく、例えば10.0以下であってもよい。シリカ分散液のpHは、必要に応じてpH調整剤を添加することにより調整することができる。pH調整剤としては、後述する研磨スラリーに用いられ得るものとして例示されている塩基性化合物や酸を、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、上記pH調整剤としては、水酸化カリウム等の無機の塩基性化合物を好ましく採用し得る。
なお、ここに開示される技術において、シリカ分散液のpHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の液に入れて測定することにより把握することができる。標準緩衝液は、例えば、フタル酸塩pH緩衝液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液:pH10.01(25℃)である。
ここに開示されるシリカ分散液は、研磨スラリーの調製に好ましく用いられ得る。上記シリカ分散液を用いて調製される研磨スラリーは、該シリカ分散液を構成成分として含む研磨スラリーとして把握され得る。かかる研磨スラリーは、シリカ分散液に由来する成分として、あるいはシリカ分散液に対して新たに混合される成分として、例えば、以下に例示する成分の1種または2種以上を必要に応じて含有し得る。
研磨スラリーには、研磨促進剤として酸を含有させることができる。酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨スラリーには、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
研磨スラリーには、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、添加によりpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩;等が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
ここに開示される研磨スラリーは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、水溶性高分子、分散剤、キレート剤等の、研磨スラリーに使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、およびこれらの塩等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸;およびこれらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型、アルキルアミンオキシド型等が挙げられる。
研磨スラリーのpHは、特に制限されない。上記pHは、例えば、12.0以下であってよく、10.0以下でもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨スラリーのpHは、例えば7.0以下であってよく、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下であり、3.0以下であってもよい。また、研磨装置に与える損傷を抑制する等の観点から研磨スラリーのpHは、例えば0.5以上であってよく、1.0以上でもよい。いくつかの態様において、研磨スラリーのpHは、例えば0.5~3.0の範囲であってよく、1.0~2.0の範囲でもよく、1.0~1.8の範囲でもよい。研磨対象物に供給される研磨スラリー(ワーキングスラリー)において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、ニッケルリン基板の研磨に用いられる研磨スラリーに好ましく適用され得る。特に、ニッケルリン基板の一次研磨用の研磨スラリーに好ましく適用され得る。
また、ガラス磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨スラリーのpHは、例えば1.5以上であってよく、2.0以上でもよく、2.5以上でもよい。上記研磨スラリーのpHは、例えば1.5~5.5程度であってよく、2.5~4.3程度でもよく、2.5~4.0程度でもよい。特に、ガラス磁気ディスク基板の一次研磨用の研磨スラリーに好ましく適用され得る。
なお、ここに開示される技術において、研磨スラリーのpHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の液に入れて測定することにより把握することができる。標準緩衝液は、例えば、蓚酸塩pH緩衝液:pH1.68(25℃)、フタル酸塩pH緩衝液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液:pH6.86(25℃)である。
<シリカ分散液の調製>
(実施例1)
水中にBET径50nmのシリカ粒子(コロイダルシリカ)を25重量%の濃度で含み、さらに有機防腐剤としてのチアベンダゾールを0.0035重量%の濃度で含むシリカ分散液を調製した。
(実施例2~4および比較例1~7)
シリカ分散液に含有させる有機防腐剤の種類と濃度を表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、実施例2~4および比較例1~7に係るシリカ分散液を調製した。
なお、実施例1~4および比較例1~7に係るシリカ分散液のpHは、いずれも、水酸化カリウム(KOH)を用いて約9.0に調整した。
また、各例に係るシリカ分散液の有機防腐剤濃度は以下の方法で設定した。具体的には、有機防腐剤を任意の濃度で加えた純水10mLに、フザリウム属の菌液を、1×104CFU/mLとなるように接種し、室温で15時間静置した後、その0.1mLを採取して駒田培地に塗布し、30℃で3日間培養し、コロニーが観察されない濃度とした。
(吸着指数αの測定)
各例に係るシリカ分散液の吸着指数αを、以下の手順で測定し、結果を表1に示した。
すなわち、各例に係るシリカ分散液から100mL以上の所定体積(ここでは約30mLとした。)を分取し、25℃における体積と重量を記録した。このシリカ分散液に対し、ベックマン・コールター社製の遠心分離器、型式「Avanti HP-30I」により、ローター「JA-30.50」を使用して、26,000rpmで60分、温度25℃の条件で遠心分離処理を行うことにより、シリカ粒子を沈降させた。その上澄みを採取し、島津製作所社製の全有機体炭素計(燃焼触媒酸化方式、型式「TOC-5000A」)を用いて、上記上澄みの全有機炭素量(TOC)を測定した。その結果から上記上澄みに含まれる有機防腐剤の炭素重量W1を求めた。また、シリカ分散液に含まれる有機防腐剤と同種の有機防腐剤を等濃度で純水に混合して防腐剤希釈水溶液を調製し、同様にTOCを測定し、その測定値に基づいて炭素重量W0を求めた。具体的には、次式に基づいて炭素重量W0および炭素重量W1を求めた。
W0=[TOC0×Vs]
Vs=Ws/ρs
Vu=Vs-(Wsilica/ρsilica)
TOC1:シリカ分散液の上澄みについて測定されたTOC(mg/l)
TOC0:シリカ分散液の防腐剤と同濃度となるよう希釈された防腐剤希釈水溶液のTOC(mg/l)
Vu:シリカ分散液の上澄みの体積(ml)
Vs:シリカ分散液の体積(ml)
Ws:シリカ分散液の質量(g)
ρs:シリカ分散液の密度(g/ml)
Wsilica:シリカの質量(g)
ρsilica:シリカの密度(ここでは2.2g/mlを用いた。)
吸着指数α=[(W0-W1)/W0]×100;
有機防腐剤吸着量[μg/m2]=[(α/100)*(Ca/100)*106]/[Sa*(Cs/100)]
各例に係るシリカ分散液に対し、上記吸着指数αの測定と同じ条件で遠心分離処理を行い、上澄みを採取した。この上澄み10mLに、フザリウム属の菌液を、1×104CFU/mLとなるように接種し、室温で15時間静置した後、その0.1mLを採取して駒田培地に塗布し、30℃で3日間培養した。その結果、コロニーが観察されなかった場合は「防腐性良好」と評価し、表1に「G」(Good)と表示した。コロニーが観察された場合には「防腐性に乏しい」と評価し、表1に「P」(Poor)と表示した。
各例に係るシリカ分散液を、リン酸、過酸化水素、および希釈用の水と混合して、上記シリカ分散液中における濃度の0.176倍の濃度(すなわち4.4重量%)のシリカ粒子と、上記シリカ分散液中における濃度の0.176倍の濃度(例えば、実施例1では0.000616重量%)の有機防腐剤と、1重量%のリン酸と、1重量%の過酸化水素と、を含む研磨スラリーを調製した。各例に係る研磨スラリーのpHは、いずれも1.3~1.8の範囲にあった。
上記研磨スラリーを用いて、下記の条件で、研磨対象物の研磨を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。上記基板は、直径3.5インチ、外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型、厚さは1.75mmであり、上記ニッケルリンめっき層の比重は約7.9であり、該ニッケルリンめっき層の研磨前における表面粗さRaは130Åであった。上記表面粗さRaは、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定したニッケルリンめっき層の算術平均粗さである。
研磨装置:システム精工社製の両面研磨機、型式「9.5B-5P」
研磨パッド:FILWEL社製のポリウレタンパッド、商品名「CR200」、溝あり
研磨対象物の投入枚数:15枚(3枚/キャリア ×5キャリア)
研磨スラリーの供給レート:135mL/分
研磨荷重:120g/cm2
上定盤回転数:27rpm
下定盤回転数:36rpm
サンギヤ(太陽ギヤ)回転数:8rpm
研磨時間:5分
研磨レート[μm/min]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の面積[cm2]×ニッケルリンめっき層の密度[g/cm3]×研磨時間[min])×104
得られた値を、実施例1の研磨レートを100とする相対値(相対研磨レート)に換算し、上記相対研磨レートが90以上110以下である場合は「A」、上記相対研磨レートが80以上90未満である場合は「B」、上記相対研磨レートが80未満である場合は「C」と評価した。結果を表1に示した。
<シリカ分散液の調製>
(実施例5)
BET径91nmのシリカ粒子(コロイダルシリカ)を用いた他は実施例1と同様にして、実施例5に係るシリカ分散液を調製した。
(実施例6)
シリカ粒子の濃度を15重量%に変更した他は実施例1と同様にして、実施例6に係るシリカ分散液を調製した。
なお、実施例5,6に係るシリカ分散液のpHは、いずれも、水酸化カリウム(KOH)を用いて約9.0に調整した。
実験例1と同様にして、実施例5,6に係るシリカ分散液の吸着指数αを測定し、上澄みの防腐性を評価した。
Claims (7)
- シリカ粒子と、有機防腐剤と、水と、を含むシリカ分散液であって、
前記シリカ分散液に含まれる前記有機防腐剤の炭素重量W0と、前記シリカ分散液に遠心分離処理を施して前記シリカ粒子を沈降させた上澄みに含まれる前記有機防腐剤の炭素重量W1とから、次式:
吸着指数α=[(W0-W1)/W0]×100;
により算出される吸着指数αが5以下であり、
前記有機防腐剤として、以下の条件:
非共有電子対を有する窒素原子を含む;および
前記窒素原子とそのα位原子との間、または前記α位原子とβ位原子との間にπ結合を有する;
を満たす構造部分を有する化合物を含み、
前記シリカ粒子の濃度は5重量%以上であり、
前記有機防腐剤の濃度は0.5重量%以下である、シリカ分散液。 - 前記シリカ粒子の濃度が20重量%以上であり、前記シリカ分散液のpHが2.0~12.0である、請求項1に記載のシリカ分散液。
- 前記有機防腐剤の前記シリカ粒子への吸着量は、該シリカ粒子の表面積1m2当たり5μg以下である、請求項1または2に記載のシリカ分散液。
- 前記有機防腐剤の濃度が0.1重量%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシリカ分散液。
- 前記シリカ粒子のBET径が10nm以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリカ分散液。
- 酸と混合して研磨スラリーを調製するために用いられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のシリカ分散液。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載のシリカ分散液からなる第一組成物と、
少なくとも酸を含む第二組成物と、
を含み、
前記第一組成物と前記第二組成物とは互いに分けて保管されている、研磨スラリー調製用キット。
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