JP7066480B2 - 砥粒分散液、研磨用組成物キットおよび磁気ディスク基板の研磨方法 - Google Patents
砥粒分散液、研磨用組成物キットおよび磁気ディスク基板の研磨方法 Download PDFInfo
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Description
[濾過試験]
(1)前記分散媒を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製し、該調製から30分後に前記試験液Sを前記フィルタに-0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Xを測定する。
(2)前記分散媒および水酸化カリウム水溶液を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製し、該調製から30分後に前記試験液Tを前記フィルタに-0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定する。
(濾過通液量)
ここに開示される砥粒分散液は、砥粒と分散媒とを含有する。砥粒は、少なくともケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む。上記砥粒分散液のpHは、10以上12以下である。そして、上記砥粒分散液は、以下の(1)、(2)の濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y-X)が25g以下である。なお、以下の濾過試験は、水の濾過速度が15mL/min・cm2、空気の濾過速度が4L/min・cm2、有効濾過面積9.6cm2のポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて行われる。
[濾過試験]
(1)分散媒を用いて砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、砥粒を3重量%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製し、該調製から30分後に前記試験液Sを前記フィルタに-0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Xを測定する。
(2)分散媒および水酸化カリウム水溶液を用いて砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、砥粒を3重量%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製し、該調製から30分後に前記試験液Tを前記フィルタに-0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定する。
ここに開示される砥粒分散液は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む砥粒を含有する。ここで「ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ」とは、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液(例えばケイ酸ナトリウム含有液)を用いて製造されたコロイダルシリカ(以下、「シリカS」とも表記する。)をいう。例えば、珪砂をアルカリ溶液中で溶解処理して得られたケイ酸アルカリ溶液を希釈した後、イオン交換処理により脱アルカリした活性ケイ酸の核形成および粒子成長を少なくとも経て製造されるコロイダルシリカが挙げられる。上記砥粒分散液は、シリカSの1種を単独で含んでいてもよく、2種以上(例えば、粒子径、粒子形状等が異なる2種以上)のシリカSを組み合わせて含んでいてもよい。シリカSは、上述のように、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液を用いて製造されたものである。そのため、シリカSを含む砥粒分散液は、上記ケイ酸アルカリ含有液に由来するアルカリ金属(例えば、Na,K,Li等のアルカリ金属)を含み得る。シリカSを含む分散液は、典型的にはNaを含み得る。
ここに開示される砥粒分散液は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる分散媒を含有する。分散媒としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等の水を好ましく用いることができる。砥粒分散液は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、砥粒分散液に含まれる分散媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99~100体積%)が水であることがより好ましい。
砥粒分散液は、必要に応じて、pH調整剤を含んでもよい。pH調整剤としては、特に限定されず、pH調整能を有する公知の化合物を用いることができる。例えば、後述の研磨用組成物に任意に含まれる酸や塩基性化合物と同様の化合物を用いることができる。
上記砥粒分散液におけるpHは、概ね10.0以上である。砥粒分散液における凝集粒を少なくする等の観点から、砥粒分散液のpHは、好ましくは10.2以上、より好ましくは10.5以上である。いくつかの態様において、上記pHは、例えば10.8以上としてもよく、11.0以上(例えば11.5以上)としてもよい。また、砥粒に与える損傷を抑制する等の観点から、砥粒分散液のpHは、通常、12.0以下である。砥粒分散液のpHは、好ましくは11.8以下、さらに好ましくは11.6以下である。いくつかの態様において、上記pHは、例えば11.4以下としてもよく、11.2以下(例えば11.0以下)としてもよい。ここに開示される技術は、例えば研磨用組成物におけるpHが10.5以上12.0以下である態様で好ましく実施され得る。なお、ここに開示される技術において、pHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて測定することにより把握することができる。標準緩衝液は、例えば、フタル酸塩pH緩衝液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液:pH10.01(25℃)である。
ここに開示される研磨用組成物は、上述した砥粒分散液を用いて製造されるものである。そのため、上記研磨用組成物は、上記砥粒分散液に由来するシリカSを含有する。上記研磨用組成物はまた、上記シリカSに加えて、その他の砥粒をさらに含むものであってもよい。その他の砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。シリカS以外の砥粒としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも使用可能である。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、セリア粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、酸化クロム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。シリカS以外の砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカS以外の砥粒は、前記砥粒分散液に含まれていてもよく、研磨用組成物の製造時に前記砥粒分散液以外の形態で混合されてもよい。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含む態様で好ましく実施され得る。好適に使用され得る酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩);等が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、ポリマー、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
ポリマーの具体例としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸またはその塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~15倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍~10倍程度の濃縮倍率が適当である。
ここに開示される研磨液のpHは、特に制限されない。研磨液のpHは、例えば、3.0以下とすることができ、2.8以下としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨液のpHは、2.6以下とすることができ、2.4以下とすることがより好ましく、2.2以下とすることがさらに好ましい。研磨液のpHは、例えば2.0以下とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni-P基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨液に好ましく適用され得る。特に限定するものではないが、研磨液の取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、研磨液のpHは、概ね0.5以上であり得る。
ここに開示される技術の適用対象は特に限定されない。ここに開示される技術によれば、研磨後の微細スクラッチを高度に低減可能な研磨用組成物を提供し得る。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、磁気ディスク基板、シリコンウェーハ(例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハ)等の半導体基板、レンズや反射ミラー等の光学材料等のように、高精度な表面が要求される各種研磨対象物の研磨に好ましく使用され得る。なかでも磁気ディスク基板を研磨する用途に好適である。ここでいう磁気ディスク基板の例には、Ni-P基板(アルミニウム合金製等の基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板をいう。)やガラス磁気ディスク基板が含まれる。このような磁気ディスク基板を研磨する用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。Ni-P基板への適用が特に好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、前述した砥粒分散液からなるA液と、分散媒を含むB液とを備える研磨用組成物キットを用いて製造され得る。好ましい一態様に係る研磨用組成物キットは、砥粒分散液からなるA液と、砥粒以外の成分(例えば、酸、ポリマーその他の添加剤)を含むB液とから構成されている。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、前記酸化剤(例えば過酸化水素)が水溶液(例えば過酸化水素水)の形態で供給される場合、当該水溶液は、研磨用組成物を構成するC液となり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物(典型的には研磨対象基板)を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
<砥粒分散液(A液)の調製>
砥粒として、ケイ酸ナトリウム含有液に由来するコロイダルシリカ(平均一次粒子径15nm)を含有する水溶液(砥粒含有液)を用意し、特開2015-71659号公報に記載の平均繊維経が1μm未満の繊維から構成されたフィルタ繊維層を有するフィルタで濾過した。濾過後の砥粒含有液はpHが約9であったため、水酸化カリウムを用いてpHを10.5に調整した。このようにして本例に係る砥粒分散液を調製し、これをA液とした。すなわち、本例に係るA液は、上記で調製された砥粒分散液からなる。コロイダルシリカの含有量は、砥粒分散液(A液)の総重量に対して30%であった。
砥粒含有液の濾過に用いるフィルタの種類、組み合わせ数および目開きのサイズを変更したこと、および、濾過後の砥粒含有液(pHは約9である。)から調製される砥粒分散液のpH値を表1に示す値に変更したこと以外は例1と同様にして、例2~10に係るA液を調製した。ここで、例2、3、7、10では、上記砥粒含有液の濾過に際して、特開2015-71659号公報に記載の平均繊維経が1μm未満の繊維から構成されたフィルタ繊維層を有するフィルタを用いた。例2、3、8~10では、濾過後の砥粒含有液から砥粒分散液を調製するためのpH調整剤として、水酸化カリウムを使用した。例4、5では上記pH調整剤として塩酸を使用した。例6、7においては、濾過後の濾過後の砥粒含有液のpH調整は行わなかった。
上記濾過後かつpH調整前における各例のA液について、砥粒の含有量が砥粒含有液の総重量に対して30%と換算したときの、砥粒含有液中における粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数を測定した。
砥粒の含有量が砥粒含有液の総重量に対して30%と換算したときの、A液中における粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数は、希釈したA液の、A液中の砥粒の粒子径分布(砥粒含有液単位体積当たりの上記粒子径範囲の粒子数)を測定することによって求めた。
ここで、上記調製した各A液中の砥粒の粒子径分布(A液単位体積当たりの上記粒子径範囲の粒子数)は、以下の装置および条件にて測定した。まず、A液を、砥粒の含有量が15%となるよう、水で希釈を行った。次いで、希釈したA液中の砥粒の粒子径分布(A液単位体積当たりの上記粒子径範囲の粒子数)を測定した。測定は、以下の測定装置および測定条件により行った。
測定機:個数カウント方式粒度分布計(PSS社製、AccuSizer FX nano)
測定条件:
・Data correction time: 60 sec
・Automatic Sample Dilution target: < 2500 count/sec
・Sample flow rate: 15 ml/min
・Stir speed factor: 2700
N30(個/cm3)=N(個/cm3)×30(重量%)/d(重量%) ・・・(式1)
各例のA液について、濾過試験を行って濾過通液量の差分(Y-X)を算出した。具体的には、純水を用いてA液を希釈することによって、砥粒を3%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製した。この濾過用試験液Sの調製から30分後に、水の濾過速度が15mL/min・cm2、空気の濾過速度が4L/min・cm2、有効濾過面積9.6cm2のポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて、-0.01MPaの減圧条件下で上記試験液Sを濾過し、該フィルタが閉塞する(すなわち濾液が排出されなくなる)までの濾過通液量(重量)Xを測定した。また、純水および10%水酸化カリウム水溶液を用いてA液を希釈することにより、砥粒を3%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製した。この濾過用試験液Tの調製から30分後に、上記フィルタを用いて-0.01MPaの減圧条件下で上記試験液Tを濾過し、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定した。そして、濾過通液量Yから濾過通液量Xを減じた値(Y-X)を算出した。フィルタとしては、ADVANTEC社製の減圧濾過用フィルタフォルダKG-47に、ADVANTEC社製の直径47mmの円盤状のポリカーボネート製メンブレンフィルタK020A-047A(孔径0.20μm、孔密度3×108[孔数/cm2]、質量1.1mg/cm2、厚さ10μm)を挟み込んだものを使用した。また、減圧は、アルバック社製の電動アスピレータMDA-015を用いて行った。結果を表1に示す。
酸としてのリン酸と、塩基性化合物としての水酸化カリウムと、水とを混合してB液を調製した。
上記調製したA液とB液とからなる研磨用組成物キットを用いて研磨用組成物を調製した。具体的には、水にB液を加えて混合した後、この液に過酸化水素水を加えて混合した。その後、この液にA液を混合することで、各例に係る研磨用組成物を調製した。研磨用組成物における砥粒の含有量は6%、リン酸の含有量は1%、過酸化水素水の含有量は0.6%とした。各例に係る研磨用組成物のpHは2.5であった。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で、研磨対象物の研磨を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。ここでは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物(以下「Ni-P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
研磨装置:スピードファム株式会社製の両面研磨機、型式「9B-5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
Ni-P基板の投入枚数:20枚(2枚/キャリア ×5キャリア)×2バッチ
研磨液の供給レート:130mL/分
研磨荷重:120g/cm2
下定盤回転数:25rpm
上記研磨した基板のなかから計6枚(3枚/1バッチ)を無作為に選択し、各基板の両面にある微細スクラッチ数を下記測定条件で測定し、6枚(計12面)の微細スクラッチ数の合計を12で除して基板片面あたりの微細スクラッチ数(本/面)を算出した。そして、例10の微細スクラッチ数を100%としたときの各例のスクラッチ数の相対値を評価した。結果を表1の「微細スクラッチ」の欄に示す。
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA7100G
Spindle speed: 10000 rpm
測定範囲:20‐45nm
Step size:4 mm
Encoder multiplier:×16
検出チャンネル:P‐Sc channel
Claims (5)
- 砥粒と分散媒とを含む砥粒分散液であって、
前記砥粒は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含み、
BET法により測定される前記砥粒の平均一次粒子径が1nm以上50nm以下であり、
前記砥粒分散液は、pHが10以上12以下であり、
前記砥粒分散液は、水の濾過速度が15mL/min・cm2、空気の濾過速度が4L/min・cm2、有効濾過面積9.6cm2のポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて下記(1)、(2)の濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y-X)が25g以下であり、前記砥粒分散液は、前記砥粒と前記分散媒とを含みpHが8以上12以下の砥粒含有液から得られ、前記砥粒含有液は、前記砥粒の含有量が該砥粒含有液の総重量に対して30重量%と換算したときに、粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である該砥粒の粒子数が1cm 3 当たり25,000,000個以下である、砥粒分散液。
[濾過試験]
(1)前記分散媒を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製し、該調製から30分後に前記試験液Sを前記フィルタに-0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Xを測定する。
(2)前記分散媒および水酸化カリウム水溶液を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製し、該調製から30分後に前記試験液Tを前記フィルタに-0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定する。 - 前記濾過通液量の差分(Y-X)が10g以下である、請求項1に記載の砥粒分散液。
- 請求項1または2に記載の砥粒分散液からなるA液を用意すること;
分散媒を含むB液を用意すること;および、
前記A液と前記B液とを混合すること;
を包含する、研磨用組成物の製造方法。 - 研磨用組成物を製造するために用いられる研磨用組成物キットであって、
請求項1または2に記載の砥粒分散液からなるA液と、
分散媒を含むB液と
を備える、研磨用組成物キット。 - 請求項3に記載の製造方法により製造された研磨用組成物、もしくは請求項4に記載の研磨用組成物キットを用いて製造された研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して該磁気ディスク基板を研磨することを含む、磁気ディスク基板の研磨方法。
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