JP2019172853A - 砥粒分散液、研磨用組成物キットおよび磁気ディスク基板の研磨方法 - Google Patents

砥粒分散液、研磨用組成物キットおよび磁気ディスク基板の研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】研磨後の表面に存在する微細スクラッチの数を効果的に低減し得る砥粒分散液を提供する。【解決手段】ここで提供される砥粒分散液は、砥粒と分散媒とを含む。上記砥粒は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む。BET法により測定される前記砥粒の平均一次粒子径は、1nm以上50nm以下である。上記砥粒分散液は、pHが10以上12以下である。上記砥粒分散液は、濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、砥粒分散液、研磨用組成物キットおよび磁気ディスク基板の研磨方法に関する。
従来、金属や半金属、非金属、その酸化物等の材料表面に対して、研磨用組成物を用いた研磨加工が行われている。例えば、高精度な表面が要求される研磨物の製造プロセスにおいては、一般に、より研磨効率を重視した研磨(一次研磨)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨工程(仕上げ研磨工程)とが行われている。ニッケルリンめっきが施されたディスク基板(Ni−P基板)を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する従来技術として、特許文献1が挙げられる。
特許第4781693号公報
近年、Ni−P基板等のディスク基板その他の基板について、より高品位の表面が要求されるようになってきており、かかる要求に対応し得る研磨用組成物の検討が種々行われている。例えば特許文献1には、研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカ表面のシラノール基密度を制御することにより、研磨後の基板のナノスクラッチを低減できる技術が記載されている。しかし、このような技術によっても研磨後の表面品質に関する近年の要求レベルには充分に対応できない場合があった。
そこで本発明は、研磨後の表面に存在する微細スクラッチ(研磨傷)の数を効果的に低減し得る砥粒分散液および研磨用組成物キットを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、かかる砥粒分散液および研磨用組成物キットを用いたディスク基板の研磨方法を提供することである。
本発明によると、砥粒と分散媒とを含む砥粒分散液が提供される。前記砥粒は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む。BET法により測定される前記砥粒の平均一次粒子径は、1nm以上50nm以下である。前記砥粒分散液は、pHが10以上12以下である。そして、上記砥粒分散液は、以下の(1)、(2)の濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y−X)が、25g以下である。なお、以下の濾過試験は、水の濾過速度が15mL/min・cm、空気の濾過速度が4L/min・cm、有効濾過面積9.6cmのポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて行われる。上記砥粒分散液を用いて製造された研磨用組成物によると、研磨後の表面において微細スクラッチの数を効果的に低減することができる。
[濾過試験]
(1)前記分散媒を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製し、該調製から30分後に前記試験液Sを前記フィルタに−0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Xを測定する。
(2)前記分散媒および水酸化カリウム水溶液を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製し、該調製から30分後に前記試験液Tを前記フィルタに−0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定する。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記濾過通液量の差分(Y−X)が、10g以下である。このような濾過通液量の差分(Y−X)の値であると、上述した効果がより良く発揮され得る。
この明細書によると、また、研磨用組成物を製造するために用いられる研磨用組成物キットが提供される。この研磨用組成物キットは、ここに開示されるいずれかの砥粒分散液からなるA液と、分散媒を含むB液とを備える。かかる研磨用組成物キットを用いることにより、研磨後の表面において微細スクラッチの数を効果的に低減し得る研磨用組成物を好適に製造することができる。
この明細書によると、さらに、研磨用組成物の製造方法が提供される。この製造方法は、ここに開示されるいずれかの砥粒分散液からなるA液を用意することと、分散媒を含むB液を用意することと、前記A液と前記B液とを混合することと、を包含する。この製造方法によると、微細スクラッチが高度に抑制された高品質の表面を実現し得る、研磨用組成物を製造することができる。
この明細書によると、また、磁気ディスク基板の研磨方法が提供される。その研磨方法は、ここに開示される研磨用組成物キットを用いて製造された研磨用組成物、もしくは、ここに開示される製造方法により製造された研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して該磁気ディスク基板を研磨することを含む。この研磨方法によると、微細スクラッチが高度に抑制された高品質の表面を実現することができる。ここに開示される研磨用組成物は、特に、磁気ディスク基板の最終研磨工程(仕上げ研磨工程)に好適である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において「微細スクラッチ」とは、深さが1nm以上10nm未満、幅が5nm以上100nm未満、長さが100nm以上1μm未満の基板表面の微細な傷をいい、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)観察によって検出することができる。
<砥粒分散液>
(濾過通液量)
ここに開示される砥粒分散液は、砥粒と分散媒とを含有する。砥粒は、少なくともケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む。上記砥粒分散液のpHは、10以上12以下である。そして、上記砥粒分散液は、以下の(1)、(2)の濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下である。なお、以下の濾過試験は、水の濾過速度が15mL/min・cm、空気の濾過速度が4L/min・cm、有効濾過面積9.6cmのポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて行われる。
[濾過試験]
(1)分散媒を用いて砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、砥粒を3重量%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製し、該調製から30分後に前記試験液Sを前記フィルタに−0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Xを測定する。
(2)分散媒および水酸化カリウム水溶液を用いて砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、砥粒を3重量%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製し、該調製から30分後に前記試験液Tを前記フィルタに−0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定する。
なお、上記濾過試験において、分散媒を用いて砥粒分散液を希釈するとは、該砥粒分散液に分散媒を加えることをいう。また、分散媒を用いて砥粒分散液を濃縮するとは、該砥粒分散液に含まれる分散媒の一部を揮発等の手段により除去することをいう。したがって、分散媒を用いて砥粒分散液を希釈または希釈するとは、該砥粒分散液に含まれる分散媒の量を増加する(希釈する)か、または減少させる(濃縮する)ことをいう。
また、上記濾過試験に用いるフィルタに関し、上記水の濾過速度[mL/min・cm]とは、0.10μmのメンブレンフィルタで濾過した25℃蒸留水を−0.069MPaの減圧下で濾過し、その流量を1cm当たり毎分のmL(ミリリットル)数で表したものである。また、上記濾過試験に用いるフィルタに関し、上記空気の濾過速度とは、25℃の空気を差圧0.069MPaの条件下で濾過し、その流量を1cm当たり毎分のL(リットル)数で表したものである。
ここに開示される砥粒分散液は、上記濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下である。このことにより、上記砥粒分散液を含む研磨用組成物を用いた研磨において、研磨後表面の微細スクラッチの数を効果的に低減することができる。このような効果が得られる理由は、特に限定的に解釈されるものではないが、以下のように考えられる。すなわち、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む砥粒分散液には、コロイダルシリカの原料に由来する活性ケイ酸(典型的にはケイ酸アルカリの未反応物)が不可避的に含まれる。かかる活性ケイ酸は、砥粒の粒子間に入り込んでボンドの働きをすることで、砥粒の凝集を促進させる。かかる砥粒の凝集は、微細スクラッチを増加させる要因となり得る。pHが10以上12以下となるように調製された砥粒分散液において、濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下であることは、フィルタを閉塞するような粗粒子が少ないこと、延いては活性ケイ酸に起因する凝集粒が少ないことを表している。このような砥粒分散液では活性ケイ酸を起点とする新たな凝集も起こりにくいため、該砥粒分散液を含む研磨用組成物によると微細スクラッチが効果的に低減されるものと考えられる。
上記濾過通液量の差分(Y−X)は、好ましくは20g以下、より好ましくは15g以下、さらに好ましくは10g以下である。所定値以下の濾過通液量の差分(Y−X)を有する砥粒分散液は、活性ケイ酸に起因する凝集粒が少なく、活性ケイ酸を起点とする新たな凝集が起こりにくい。したがって、ここに開示される技術の適用効果が適切に発揮され得る。いくつかの態様において、上記差分(Y−X)は、5g以下であってもよく、3g以下であってもよい。上記差分(Y−X)の下限は特に限定されない。例えば上記差分(Y−X)は0(ゼロ)であり得る。すなわち、濾過通液量Xと濾過通液量Yとが同じ値であってもよい。ここに開示される技術は、例えば砥粒分散液における濾過通液量の差分(Y−X)が0g以上10g以下(例えば0.05g以上5g以下)である態様で好ましく実施され得る。
上記砥粒分散液における濾過通液量X(すなわち、前記吸引濾過試験(1)で得られる濾過通液量X)は、濾過通液量の差分(Y−X)が前記関係を満たす限りにおいて特に限定されず、例えば100g以上であり得る。濾過通液量Xは、スクラッチをより良く低減する等の観点からは、通常は120g以上、好ましくは140g以上、より好ましくは160g以上、さらに好ましくは180g以上であり得る。濾過通液量Xの上限は、濾過通液量Yの値以下であればよく特に限定されない。実用上の観点から、濾過通液量Xは、上述したいずれかの下限値以上であってかつ250g以下であり得る。ここに開示される技術は、例えば砥粒分散液における濾過通液量Xが100g以上220g以下(好ましくは170g以上200g以下)である態様で実施され得る。
pH12.5における濾過通液量Y(すなわち、前記吸引濾過試験(2)で得られる濾過通液量Y)は、濾過通液量の差分(Y−X)が前記関係を満たす限りにおいて特に限定されず、例えば125g以上であり得る。濾過通液量Yは、例えば150g以上、典型的には190g以上であってもよい。濾過通液量Yの上限は特に限定されない。濾過通液量Yは、通常は300g以下、好ましくは280g以下、より好ましくは250g以下、さらに好ましくは220g以下であり得る。ここに開示される技術は、例えばpH12.5における濾過通液量Yが150g以上220g以下(好ましくは180g以上200g以下)である態様で実施され得る。
(砥粒)
ここに開示される砥粒分散液は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む砥粒を含有する。ここで「ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ」とは、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液(例えばケイ酸ナトリウム含有液)を用いて製造されたコロイダルシリカ(以下、「シリカS」とも表記する。)をいう。例えば、珪砂をアルカリ溶液中で溶解処理して得られたケイ酸アルカリ溶液を希釈した後、イオン交換処理により脱アルカリした活性ケイ酸の核形成および粒子成長を少なくとも経て製造されるコロイダルシリカが挙げられる。上記砥粒分散液は、シリカSの1種を単独で含んでいてもよく、2種以上(例えば、粒子径、粒子形状等が異なる2種以上)のシリカSを組み合わせて含んでいてもよい。シリカSは、上述のように、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液を用いて製造されたものである。そのため、シリカSを含む砥粒分散液は、上記ケイ酸アルカリ含有液に由来するアルカリ金属(例えば、Na,K,Li等のアルカリ金属)を含み得る。シリカSを含む分散液は、典型的にはNaを含み得る。
ここに開示される砥粒分散液に含まれる砥粒は、一次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態の砥粒と二次粒子の形態の砥粒とが混在していてもよい。
ここに開示される砥粒分散液において、砥粒の平均一次粒子径は1nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。研磨効率等の観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、特に好ましくは15nm以上である。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは35nm以下である。いくつかの態様において、上記平均一次粒子径は、例えば30nm以下としてもよく、典型的には25nm以下(例えば20nm以下)としてもよい。
なお、ここに開示される技術において、砥粒の平均一次粒子径とは、BET法に基づいて求められる平均粒子径をいう。砥粒の平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積(m/g)から、平均一次粒子径[nm]=6000/(真密度[g/cm]×比表面積[m/g])の式により算出され得る。例えば、砥粒がシリカ粒子の場合、平均一次粒子径[nm]=2727/比表面積[m/g]により、平均一次粒子径(比表面積換算粒子径)を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
砥粒の平均二次粒子径は特に限定されないが、研磨レート等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果を得る観点から、平均二次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、18nm以上であることがより好ましい。また、保存安定性(例えば分散安定性)の観点から、砥粒の平均二次粒子径は、200nm以下が適当であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。砥粒の平均二次粒子径は、例えば、マイクロトラック・ベル社製動的光散乱式粒子径分布測定装置型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
砥粒分散液における砥粒の含有量は特に制限されないが、砥粒分散液の総重量に対して、通常、6重量%以上であることが適当であり、好ましくは15重量%以上である。いくつかの態様において、砥粒の含有量は、例えば20重量%以上であってもよく、典型的には25重量%以上であってもよい。また、上記含有量の上限は、粘度の増大を抑制する等の観点から、60重量%以下、例えば55重量%以下、典型的には50重量%以下とするのが適当である。いくつかの態様において、砥粒の含有量は、例えば45重量%以下であってもよく、典型的には40重量%以下であってもよい。
(分散媒)
ここに開示される砥粒分散液は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる分散媒を含有する。分散媒としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等の水を好ましく用いることができる。砥粒分散液は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、砥粒分散液に含まれる分散媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
(pH調整剤)
砥粒分散液は、必要に応じて、pH調整剤を含んでもよい。pH調整剤としては、特に限定されず、pH調整能を有する公知の化合物を用いることができる。例えば、後述の研磨用組成物に任意に含まれる酸や塩基性化合物と同様の化合物を用いることができる。
(pH)
上記砥粒分散液におけるpHは、概ね10.0以上である。砥粒分散液における凝集粒を少なくする等の観点から、砥粒分散液のpHは、好ましくは10.2以上、より好ましくは10.5以上である。いくつかの態様において、上記pHは、例えば10.8以上としてもよく、11.0以上(例えば11.5以上)としてもよい。また、砥粒に与える損傷を抑制する等の観点から、砥粒分散液のpHは、通常、12.0以下である。砥粒分散液のpHは、好ましくは11.8以下、さらに好ましくは11.6以下である。いくつかの態様において、上記pHは、例えば11.4以下としてもよく、11.2以下(例えば11.0以下)としてもよい。ここに開示される技術は、例えば研磨用組成物におけるpHが10.5以上12.0以下である態様で好ましく実施され得る。なお、ここに開示される技術において、pHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて測定することにより把握することができる。標準緩衝液は、例えば、フタル酸塩pH緩衝液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液:pH10.01(25℃)である。
ここに開示される砥粒分散液は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む砥粒と分散媒とを含有する砥粒含有液を用意し、該砥粒分散液に、フィルタ処理、イオン交換処理、pH調整等から選択される一または二以上の処理を必要に応じて適用することによって、シリカの分散安定性を高めるためpHが10以上12以下の範囲となるように調製されたものであり得る。
上記砥粒含有液は、自ら製造することにより用意してもよく、市販品を入手することで用意してもよい。かかる砥粒含有液のpHは、典型的には12未満であり、例えばpH8以上12以下であり得る。
上記フィルタ処理においては、砥粒含有液がフィルタによって濾過される。使用するフィルタのメディア形状は特に限定されず、種々の構造、形状、機能を有するフィルタを適宜採用することができる。具体例としては、濾過性に優れるプリーツ型やデプス型、デプスプリーツ型、メンブレン型、吸着型のフィルタを採用することが好ましい。なかでも、メンブレン型のフィルタがより好ましい。フィルタの形状は特に限定されず、袋状のバッグ式であってもよく、中空円筒状のカートリッジ式であってもよい。カートリッジ式フィルタは、ガスケットタイプであってもよく、Oリングタイプであってもよい。濾過の条件(例えば濾過差圧、濾過速度)については、この分野の技術常識に基づき、目標品質や生産効率等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、定格濾過精度が1μm未満(例えば、0.01〜0.8μm)のフィルタであって、平均繊維径が1μm未満のフィルタ繊維から構成されたフィルタを好ましく用いることができる。濾過の方法は特に限定されず、例えば、常圧で行う自然濾過の他、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の濾過方法を適宜採用することができる。
ここで、上記濾過後の砥粒含有液に含まれる砥粒の粒子径は、前述した濾過通液量の差分(Y−X)≦25gを実現するという観点から一つの重要なファクターである。すなわち、上記濾過は、濾過後の砥粒含有液中に含まれる砥粒の特定粒子径範囲の粒子数が所定値以下となるように行うことが望ましい。好ましい一態様では、濾過後の砥粒含有液は、砥粒の含有量が砥粒含有液の総重量に対して30重量%と換算したときに、粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数が1cm当たり25,000,000個以下である。上記砥粒の粒子数は、好ましくは20,000,000個以下、より好ましくは18,000,000個以下、さらに好ましくは15,000,000個以下である。ここに開示される砥粒分散液は、このように特定粒子径範囲の粒子数が低減された砥粒含有液を用いて好ましく調製され得る。なお、砥粒の含有量が砥粒含有液の総重量に対して30重量%と換算したときに、粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数は、後述する実施例の記載の方法で測定され得る。
上記濾過後の砥粒含有液の好適例として、砥粒の平均一次粒子径が1nm以上50nm以下であり、かつ、粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数が1cm当たり25,000,000個以下であるもの;砥粒の平均一次粒子径が5nm以上40nm以下であり、かつ、粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数が1cm当たり20,000,000個以下であるもの;砥粒の平均一次粒子径が10nm以上30nm以下であり、かつ、粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数が1cm当たり15,000,000個以下であるもの;等が挙げられる。
<研磨用組成物>
ここに開示される研磨用組成物は、上述した砥粒分散液を用いて製造されるものである。そのため、上記研磨用組成物は、上記砥粒分散液に由来するシリカSを含有する。上記研磨用組成物はまた、上記シリカSに加えて、その他の砥粒をさらに含むものであってもよい。その他の砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。シリカS以外の砥粒としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも使用可能である。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、セリア粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、酸化クロム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。シリカS以外の砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカS以外の砥粒は、前記砥粒分散液に含まれていてもよく、研磨用組成物の製造時に前記砥粒分散液以外の形態で混合されてもよい。
シリカS以外の砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましい。上記砥粒はシリカ粒子であってもよい。シリカS以外のシリカ粒子(シリカNS)の例としては、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液を用いる方法以外の方法により製造されたコロイダルシリカ(例えば、アルコキシド法コロイダルシリカ)、乾式法シリカ(例えばフュームドシリカ)等が挙げられる。
特に限定するものではないが、研磨用組成物に含まれる砥粒に占めるシリカSの割合は、典型的には50重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。ここに開示される技術は、砥粒が実質的にシリカSから構成される態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される研磨用組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量が0.5重量%〜30重量%である形態で好ましく実施され得る。上記固形分含量が1重量%〜20重量%である形態がより好ましい。
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含む態様で好ましく実施され得る。好適に使用され得る酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1〜10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
研磨レートの観点から好ましい酸として、リン酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでも硝酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸が好ましい。
研磨用組成物中に酸を含む場合、その含有量は特に限定されない。酸の含有量は、通常、0.1重量%以上が適当であり、0.5重量%以上が好ましく、0.8重量%以上(例えば1.2重量%以上)がより好ましい。酸の含有量が少なすぎると、研磨レートが不足しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。酸の含有量は、通常、15重量%以下が適当であり、10重量%以下が好ましく、5重量%以下(例えば3重量%以下)がより好ましい。酸の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨用組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩(例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩)を好ましく採用し得る。例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム等を好ましく使用し得る。
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様において、酸(好ましくは無機酸)と、該酸とは異なる酸の塩(好ましくは無機酸の塩)とを組み合わせて用いることができる。
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、有効成分量基準で0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.4重量%以上である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨レートが低下するため、実用上好ましくない場合がある。また、研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、有効成分量基準で2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩);等が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、ポリマー、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni−P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、ポリマーを含有することができる。ここでいうポリマーとは、同一(単独重合体;ホモポリマー)もしくは相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する化合物をいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が500以上(好ましくは1000以上)の化合物であり得る。かかるポリマーは水溶性の高分子であることが好ましい。ポリマーを研磨用組成物に含有させることにより、研磨後の面精度が向上し得る。ポリマーの種類としては特に制限はなく、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。そのなかでもアニオン性ポリマーを含むことが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸系重合体、スルホン酸系重合体などが挙げられる。
ポリマーの具体例としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸またはその塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリマーの含有量(複数のポリマーを含む態様では、それらの合計含有量)は、特に制限されないが、例えば0.0001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の表面平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。ここでいう界面活性剤とは、1分子中に少なくとも一つ以上の親水部位(典型的には親水基)と一つ以上の疎水部位(典型的には疎水基)とを有する化合物をいう。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとして、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
(研磨液)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍〜15倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍〜10倍程度の濃縮倍率が適当である。
研磨液における砥粒の含有量(複数種類の砥粒を含む場合には、それらの合計含有量)は特に制限されないが、典型的には1重量%以上であり、2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や研磨の安定性の観点から、通常、上記含有量は、20重量%以下が適当であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。
(pH)
ここに開示される研磨液のpHは、特に制限されない。研磨液のpHは、例えば、3.0以下とすることができ、2.8以下としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨液のpHは、2.6以下とすることができ、2.4以下とすることがより好ましく、2.2以下とすることがさらに好ましい。研磨液のpHは、例えば2.0以下とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni−P基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨液に好ましく適用され得る。特に限定するものではないが、研磨液の取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、研磨液のpHは、概ね0.5以上であり得る。
(用途)
ここに開示される技術の適用対象は特に限定されない。ここに開示される技術によれば、研磨後の微細スクラッチを高度に低減可能な研磨用組成物を提供し得る。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、磁気ディスク基板、シリコンウェーハ(例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハ)等の半導体基板、レンズや反射ミラー等の光学材料等のように、高精度な表面が要求される各種研磨対象物の研磨に好ましく使用され得る。なかでも磁気ディスク基板を研磨する用途に好適である。ここでいう磁気ディスク基板の例には、Ni−P基板(アルミニウム合金製等の基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板をいう。)やガラス磁気ディスク基板が含まれる。このような磁気ディスク基板を研磨する用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。Ni−P基板への適用が特に好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨後の表面において微細スクラッチを高度に低減し得ることから、研磨対象物のファイナルポリシング工程(最終研磨工程)に特に好ましく使用され得る。この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いたファイナルポリシング工程を備える研磨物の製造方法(例えば磁気ディスク基板の製造方法)および該方法により製造された磁気ディスク基板が提供され得る。なお、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。
ここに開示される研磨用組成物は、また、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程に用いられてもよい。ここで、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程とは、粗研磨工程と最終研磨工程との間の予備研磨工程を指す。予備研磨工程は、典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。上記研磨用組成物は、いずれのポリシング工程にも使用可能であり、これらのポリシング工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、ファイナルポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
<研磨用組成物キット>
ここに開示される研磨用組成物は、前述した砥粒分散液からなるA液と、分散媒を含むB液とを備える研磨用組成物キットを用いて製造され得る。好ましい一態様に係る研磨用組成物キットは、砥粒分散液からなるA液と、砥粒以外の成分(例えば、酸、ポリマーその他の添加剤)を含むB液とから構成されている。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、前記酸化剤(例えば過酸化水素)が水溶液(例えば過酸化水素水)の形態で供給される場合、当該水溶液は、研磨用組成物を構成するC液となり得る。
典型的には、研磨用組成物は、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物キットを構成する各液(A液、B液)を混合して製造することができる。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。好ましい一態様では、分散媒にB液を添加して攪拌混合し、次いで酸化剤を含むC液を添加して攪拌混合し、その後、前記砥粒分散液からなるA液を添加して攪拌混合することが好ましい。
<研磨プロセス>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物(典型的には研磨対象基板)を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
上述のような研磨工程は、基板(例えば磁気ディスク基板、典型的にはNi−P基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む基板の製造方法および研磨方法が提供される。
ここに開示される磁気ディスク基板製造方法は、前述した研磨用組成物を用いるポリシング工程よりも前に行われる上流のポリシング工程(以下「工程(P)」ともいう。)をさらに含み得る。工程(P)を含む態様によると、ポリシング工程全体の所要時間を短縮して生産性を高める効果が実現され得る。工程(P)は、1種類の研磨用組成物を使用する1つのポリシング工程であってもよく、2種以上の研磨用組成物を順次に使用して行われる2以上のポリシング工程を含んでもよい。
工程(P)に使用する研磨用組成物(以下「研磨用組成物(P)」ともいう。)は特に限定されない。例えば、砥粒としては、前述した研磨用組成物に使用し得る材料として例示した砥粒を使用可能である。研磨用組成物がシリカ粒子を含む場合、該シリカ粒子は、前述した研磨用組成物に含まれるシリカ粒子と同一であってもよく、異なってもよい。研磨用組成物(P)に含まれるシリカ粒子と、前述した研磨用組成物に含まれるシリカ粒子との相違は、例えば、粒子径、粒子形状、密度その他の特性の1または2以上における相違であり得る。
研磨用組成物(P)は、典型的には砥粒の他に水を含む。その他、研磨用組成物(P)には、上述した研磨用組成物と同様の成分(酸、酸化剤、塩基性化合物、ポリマー、界面活性剤、各種添加剤等)を必要に応じて含有させることができる。特に限定するものではないが、研磨用組成物(P)のpHは、例えば3以下とすることができ、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.6以下、さらに好ましくは2.4以下である。好ましい一態様において、研磨用組成物(P)のpHを2.0以下とすることができる。特に限定するものではないが、研磨液の取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、研磨液のpHは、概ね0.5以上であり得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
(例1)
<砥粒分散液(A液)の調製>
砥粒として、ケイ酸ナトリウム含有液に由来するコロイダルシリカ(平均一次粒子径15nm)を含有する水溶液(砥粒含有液)を用意し、特開2015−71659号公報に記載の平均繊維経が1μm未満の繊維から構成されたフィルタ繊維層を有するフィルタで濾過した。濾過後の砥粒含有液はpHが約9であったため、水酸化カリウムを用いてpHを10.5に調整した。このようにして本例に係る砥粒分散液を調製し、これをA液とした。すなわち、本例に係るA液は、上記で調製された砥粒分散液からなる。コロイダルシリカの含有量は、砥粒分散液(A液)の総重量に対して30%であった。
(例2〜10)
砥粒含有液の濾過に用いるフィルタの種類、組み合わせ数および目開きのサイズを変更したこと、および、濾過後の砥粒含有液(pHは約9である。)から調製される砥粒分散液のpH値を表1に示す値に変更したこと以外は例1と同様にして、例2〜10に係るA液を調製した。ここで、例2、3、7、10では、上記砥粒含有液の濾過に際して、特開2015−71659号公報に記載の平均繊維経が1μm未満の繊維から構成されたフィルタ繊維層を有するフィルタを用いた。例2、3、8〜10では、濾過後の砥粒含有液から砥粒分散液を調製するためのpH調整剤として、水酸化カリウムを使用した。例4、5では上記pH調整剤として塩酸を使用した。例6、7においては、濾過後の濾過後の砥粒含有液のpH調整は行わなかった。
<LPCの測定>
上記濾過後かつpH調整前における各例のA液について、砥粒の含有量が砥粒含有液の総重量に対して30%と換算したときの、砥粒含有液中における粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数を測定した。
砥粒の含有量が砥粒含有液の総重量に対して30%と換算したときの、A液中における粒子径が0.2μm以上0.3μm未満である砥粒の粒子数は、希釈したA液の、A液中の砥粒の粒子径分布(砥粒含有液単位体積当たりの上記粒子径範囲の粒子数)を測定することによって求めた。
ここで、上記調製した各A液中の砥粒の粒子径分布(A液単位体積当たりの上記粒子径範囲の粒子数)は、以下の装置および条件にて測定した。まず、A液を、砥粒の含有量が15%となるよう、水で希釈を行った。次いで、希釈したA液中の砥粒の粒子径分布(A液単位体積当たりの上記粒子径範囲の粒子数)を測定した。測定は、以下の測定装置および測定条件により行った。
[測定機および測定条件]
測定機:個数カウント方式粒度分布計(PSS社製、AccuSizer FX nano)
測定条件:
・Data correction time: 60 sec
・Automatic Sample Dilution target: < 2500 count/sec
・Sample flow rate: 15 ml/min
・Stir speed factor: 2700
そして、得られた測定値(個/cm)をN(個/cm)とし、測定に用いた希釈したA液の濃度をd(重量%)として、砥粒の含有量がA液の総重量に対して30%と換算したときの、0.2μm以上0.3μm未満の粒子径範囲における砥粒の粒子数N30(個/cm)を、下記式1により算出した。結果を表1の[LPC]欄に示す。
30(個/cm)=N(個/cm)×30(重量%)/d(重量%) ・・・(式1)
<濾過通液量の測定>
各例のA液について、濾過試験を行って濾過通液量の差分(Y−X)を算出した。具体的には、純水を用いてA液を希釈することによって、砥粒を3%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製した。この濾過用試験液Sの調製から30分後に、水の濾過速度が15mL/min・cm、空気の濾過速度が4L/min・cm、有効濾過面積9.6cmのポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて、−0.01MPaの減圧条件下で上記試験液Sを濾過し、該フィルタが閉塞する(すなわち濾液が排出されなくなる)までの濾過通液量(重量)Xを測定した。また、純水および10%水酸化カリウム水溶液を用いてA液を希釈することにより、砥粒を3%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製した。この濾過用試験液Tの調製から30分後に、上記フィルタを用いて−0.01MPaの減圧条件下で上記試験液Tを濾過し、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定した。そして、濾過通液量Yから濾過通液量Xを減じた値(Y−X)を算出した。フィルタとしては、ADVANTEC社製の減圧濾過用フィルタフォルダKG−47に、ADVANTEC社製の直径47mmの円盤状のポリカーボネート製メンブレンフィルタK020A−047A(孔径0.20μm、孔密度3×10[孔数/cm]、質量1.1mg/cm、厚さ10μm)を挟み込んだものを使用した。また、減圧は、アルバック社製の電動アスピレータMDA−015を用いて行った。結果を表1に示す。
<B液の調製>
酸としてのリン酸と、塩基性化合物としての水酸化カリウムと、水とを混合してB液を調製した。
<研磨用組成物の調製>
上記調製したA液とB液とからなる研磨用組成物キットを用いて研磨用組成物を調製した。具体的には、水にB液を加えて混合した後、この液に過酸化水素水を加えて混合した。その後、この液にA液を混合することで、各例に係る研磨用組成物を調製した。研磨用組成物における砥粒の含有量は6%、リン酸の含有量は1%、過酸化水素水の含有量は0.6%とした。各例に係る研磨用組成物のpHは2.5であった。
<ディスクの研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で、研磨対象物の研磨を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。ここでは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物(以下「Ni−P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
[研磨条件]
研磨装置:スピードファム株式会社製の両面研磨機、型式「9B−5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
Ni−P基板の投入枚数:20枚(2枚/キャリア ×5キャリア)×2バッチ
研磨液の供給レート:130mL/分
研磨荷重:120g/cm
下定盤回転数:25rpm
[微細スクラッチ]
上記研磨した基板のなかから計6枚(3枚/1バッチ)を無作為に選択し、各基板の両面にある微細スクラッチ数を下記測定条件で測定し、6枚(計12面)の微細スクラッチ数の合計を12で除して基板片面あたりの微細スクラッチ数(本/面)を算出した。そして、例10の微細スクラッチ数を100%としたときの各例のスクラッチ数の相対値を評価した。結果を表1の「微細スクラッチ」の欄に示す。
[微細スクラッチの測定条件]
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA7100G
Spindle speed: 10000 rpm
測定範囲:20‐45nm
Step size:4 mm
Encoder multiplier:×16
検出チャンネル:P‐Sc channel
Figure 2019172853
表1に示されるように、pHが10以上12以下であり、かつ、濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下である砥粒分散液を使用した例1〜例3では、前記差分(Y−X)が25gを上回る例4、5、7〜10および砥粒分散液のpHが10を下回る例6に比べて、微細スクラッチ数でより良好な結果が得られた。この結果から、pHが10以上12以下であり、前記濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下である砥粒分散液を用いた研磨用組成物によると、微細スクラッチ数が少ない高品質な研磨後の表面を実現し得ることが確かめられた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (5)

  1. 砥粒と分散媒とを含む砥粒分散液であって、
    前記砥粒は、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含み、
    BET法により測定される前記砥粒の平均一次粒子径が1nm以上50nm以下であり、
    pHが10以上12以下であり、
    水の濾過速度が15mL/min・cm、空気の濾過速度が4L/min・cm、有効濾過面積9.6cmのポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いて下記(1)、(2)の濾過試験により算出される濾過通液量の差分(Y−X)が25g以下である、砥粒分散液。
    [濾過試験]
    (1)前記分散媒を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含む濾過用試験液Sを調製し、該調製から30分後に前記試験液Sを前記フィルタに−0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Xを測定する。
    (2)前記分散媒および水酸化カリウム水溶液を用いて前記砥粒分散液を希釈または濃縮することによって、前記砥粒を3重量%の含有量で含みかつpHが12.5に調整された濾過用試験液Tを調製し、該調製から30分後に前記試験液Tを前記フィルタに−0.01MPaの減圧条件下で通液させて、該フィルタが閉塞するまでの濾過通液量(重量)Yを測定する。
  2. 前記濾過通液量の差分(Y−X)が10g以下である、請求項1に記載の砥粒分散液。
  3. 請求項1または2に記載の砥粒分散液からなるA液を用意すること;
    分散媒を含むB液を用意すること;および、
    前記A液と前記B液とを混合すること;
    を包含する、研磨用組成物の製造方法。
  4. 研磨用組成物を製造するために用いられる研磨用組成物キットであって、
    請求項1または2に記載の砥粒分散液からなるA液と、
    分散媒を含むB液と
    を備える、研磨用組成物キット。
  5. 請求項3に記載の製造方法により製造された研磨用組成物、もしくは請求項4に記載の研磨用組成物キットを用いて製造された研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して該磁気ディスク基板を研磨することを含む、磁気ディスク基板の研磨方法。
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