JP7240123B2 - 研磨用組成物、研磨用組成物調製用キットおよび磁気ディスク基板の製造方法 - Google Patents
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Description
ここに開示される研磨用組成物は、磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程に用いられる。本明細書において「仕上げ研磨工程」とは、研磨用組成物を用いて行われる研磨工程のうち最後に(すなわち、最も下流側に)配置される研磨工程をいう。したがって、ここに開示される研磨用組成物は、磁気ディスク基板の研磨で用いられる複数種類の研磨用組成物のうち、最も下流側で用いられる種類の研磨用組成物として把握され得る。以下、ここに開示される研磨用組成物の成分を説明する。
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒が水に分散した砥粒分散液を含有しており、この砥粒はシリカ粒子を含有している。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されないが、コロイダルシリカ(例えば、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ等)、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。表面改質としては、例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾が挙げられる。ここに開示される技術における砥粒は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。なお、ここでシリカ粒子とは、典型的には該粒子の95重量%以上、例えば98重量%以上がシリカである粒子をいい、シリカからなる粒子(すなわち、100重量%がシリカである粒子)であり得る。
1.14≦(D95/Dmode)<1.3 (1)
上記最頻径(Dmode)は、砥粒の個数基準における粒度分布で最も頻度の高い粒子径(粒度分布の最大ピークにおける粒子径)である。また、95%累積径(D95)は、上記砥粒の粒度分布において、小径側から1nm刻みでカウントした際の累積個数が95%となる点に相当する粒子径である。このD95がDmodeに対して大きくなりすぎると、研磨パットからの圧力が分散されにくくなり、大粒径側の粒子を介した局所的な圧力集中が生じ、仕上げ研磨工程後の基板表面に加工痕が形成されやすくなる。この観点に基づいて、ここに開示される研磨用組成物では、Dmodeに対するD95の比(D95/Dmode)が1.3未満に設定されている。これによって、大粒径側の粒子を介した局所的な圧力集中を防止し、研磨パットからの圧力を好適に分散しながら仕上げ研磨工程を行うことができるため、研磨後の基板表面における加工痕を軽減できる。また、研磨パットからの圧力をより好適に分散するという観点から、D95/Dmodeは、1.27以下が好ましく、1.25以下がより好ましく、1.23以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。一方で、D95/Dmodeが大きくなるにつれて、研磨レートが向上する傾向がある。ここに開示される研磨用組成物は、上述した加工痕の軽減と研磨レートの向上とを両立させるために、D95/Dmodeが1.14以上に設定されている。また、D95/Dmodeは、1.15以上であってもよく、1.16以上であってもよく、1.17以上であってもよく、1.18以上であってもよい。
なお、砥粒分散液のD95/Dmodeが上記の関係式(1)を満たす砥粒を得るための手段の一つとして、複数種類の砥粒を用意して各々の砥粒のD95とDmodeを測定した後、測定結果に応じて、これらの砥粒を単独で又は混合して使用するという方法が挙げられる。これによって、ここに開示される研磨用組成物を容易に得ることができる。
また、D95も同様に、Dmodeとの関係が上記関係式(1)を満たしていれば特に限定されない。例えば、D95の下限は、1.2nm以上であってもよく、6nm以上であってもよく、12nm以上であってもよく、18nm以上であってもよく、24nm以上であってもよい。また、D95の上限は、例えば120nm以下であってもよく、84nm以下であってもよく、60nm以下であってもよく、48nm以下であってもよく、36nm以下であってもよい。
なお、良好な面品質を得やすくするという観点からは、上記D95を35nm以下にすることが好ましく、33nm以下にすることがより好ましく、31nm以下にすることがさらに好ましい。また、研磨レートを向上させるという観点からは、上記D95を26nm以上にすることが好ましく、27nm以上にすることがより好ましく、28nm以上にすることがさらに好ましい。
(D95-D90)≦2nm (2)
90%累積径(D90)は、上記粒度分布において小径側から1nm刻みでカウントした際の累積個数が90%となる点に相当する粒子径である。このD90とD95との差を2nm以下にすることによって、D95で示される大粒径側の粒子を介した局所的な圧力をD90で示される粒子で緩和しやすくなるため、加工痕がより形成されにくくなる。ここに開示される研磨用組成物は、D95-D90が1nm以下である態様でも好ましく実施され得る。なお、D95-D90の下限は、原理上0である。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上述のような砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。イオン交換水は、典型的には脱イオン水であり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、酸、酸化剤、塩基性化合物、水溶性高分子、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含んでいてもよい。使用され得る酸は、特に制限はなく、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。有機酸としては、例えば、炭素原子数が1~18程度、典型的には1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を含んでいてもよい。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩;等が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、水溶性高分子を含有することが好ましい。ここでいう水溶性高分子とは、同一(単独重合体;ホモポリマー)もしくは相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する水溶性のポリマーをいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が500以上(好ましくは1000以上)の化合物であり得る。水溶性高分子を研磨用組成物に含有させることにより、研磨後の面精度が向上し得る。水溶性高分子として用いられるポリマーの種類としては特に制限はなく、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。そのなかでもアニオン性ポリマーを含むことが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸系重合体、スルホン酸系重合体などが挙げられる。
ポリマーの具体例としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;ポリスチレンスルホン酸系化合物;その他、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。ここでいう界面活性剤とは、1分子中に少なくとも一つ以上の親水部位(典型的には親水基)と一つ以上の疎水部位(典型的には疎水基)とを有する化合物をいう。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍~20倍(典型的には2倍~10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
ここに開示される研磨液のpHは特に制限されない。研磨液のpHは、例えば、12.0以下(典型的には0.5~12.0)とすることができ、10.0以下(典型的には0.5~10.0)としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨液のpHは、7.0以下(例えば0.5~7.0)とすることができ、5.0以下(典型的には1.0~5.0)とすることがより好ましく、4.0以下(例えば1.0~4.0)とすることがさらに好ましい。研磨液のpHは、例えば3.0以下(典型的には1.0~3.0)とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni-P基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨液に好ましく適用され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物(典型的には研磨対象基板)を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
ここに開示される技術の研磨対象物である磁気ディスク基板の例には、Ni-P基板(アルミニウム合金製等の基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板をいう。)やガラス磁気ディスク基板が含まれる。このような磁気ディスク基板を研磨する用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。なかでもNi-P基板はシリカ粒子による加工痕が形成されやすいため、ここに開示される技術を特に好ましく適用することができる。
なお、ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。このような研磨用組成物調製用キットは、例えば、該研磨用組成物の構成成分(典型的には、水以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。好ましい一態様に係る研磨用組成物調製用キットは、砥粒を含むA液(典型的には、砥粒を水に分散させた砥粒分散液)と、砥粒以外の成分を含むB液(例えば、酸、水溶性高分子その他の添加剤を含むケミカル液)とから構成されている。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤等がさらに混合され得る。そして、上記砥粒分散液を備えた研磨用組成物調製用キットの場合、砥粒分散液が上記関係式(1)を満たしていると好ましい。かかるキットを用いて調製された研磨用組成物を用いて仕上げ研磨工程を行うことによって、研磨後の基板表面における加工痕を軽減できるため、微小欠陥を精度よく検出しやすくなる。なお、本態様に係る研磨用組成物調製用キットは、少なくとも関係式(1)を満たす砥粒分散液を備えていればよく、他の剤は特に限定されない。すなわち、本態様に係るキットは、3つ以上の剤から構成されていてもよく、砥粒分散液以外の剤の成分も特に限定されない。
(実施例1~3および比較例1~5)
砥粒と水とを含むA液(砥粒分散液)を用意した。次に、水溶性高分子としてのポリスチレンスルホン酸系重合体(Mw:500000)と、リン酸と、31%過酸化水素水と、脱イオン水とを混合して、砥粒を6重量%、ポリスチレンスルホン酸系共重合体を0.004重量%、リン酸を1.5重量%、31%過酸化水素水を0.4重量%の割合で含む研磨用組成物を調製した。各例に係る研磨用組成物のpHは、水酸化カリウム(KOH)にて2.5に調整した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用し、下記の条件で研磨対象物の研磨を行った後に、リンス、洗浄、乾燥を行った。なお、研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を施したアルミニウム基板を使用した。ここでは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物(以下「Ni-P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
(研磨条件)
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨機、型式「9B-5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
研磨対象基板の投入枚数:10枚(2枚/キャリア×5キャリア)
研磨液の供給レート:130mL/分
次の計算式に基づいて各例の研磨における研磨レートを算出した。なお、以下の計算式における「基板片面の面積」は66cm2とし、ニッケルリンめっき層の密度は7.9g/cm3とした。また、本測定では、各例において、10枚の基板の研磨レートを算出し、算出結果の平均値を求めた。当該平均値を表1の「研磨レート(μm/min)」の欄に示す。
研磨レート[μm/min]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板片面の面積[cm2]×ニッケルリンめっき層の密度[g/cm3]×研磨時間[min])×104
研磨後の基板表面に生じたスクラッチ数を測定した。スクラッチ数は、以下の条件に従って測定した。なお、本測定では、6枚の基板の表裏(合計12面)のスクラッチ数を測定し、測定結果の平均値を求めた。当該平均値を表1の「スクラッチ(個/面)」の欄に示す。
(測定条件)
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Spindle Speed:10000rpm
測定範囲:17000~47000μm
Step Size:4μm
Encoder multiplier:×32
検出チャンネル:P-Sc channel
研磨後の基板の表面粗さRaを測定した。表面粗さRaは、以下の条件に従って測定した。なお、本測定では、2枚の基板に対し、基板の内周縁と外周縁との中央部分を90度違いで2箇所ずつ測定した。そして、この2枚×4箇所の表面粗さRaの平均値(中心線平均粗さRa)を求めた。当該平均値を表1の「平均粗さRa(Å)」の欄に示す。
(測定条件)
測定装置:Veeco社製AFM D3100 NanoScope V
Mode:Tapping mode
測定範囲:1μm角
Sample line:512×512
Scan rate:1.0Hz
Cantilever:NCHV
研磨後の基板の散乱光強度差ΔSIを測定した。研磨後の基板表面に加工痕が形成されていると、この散乱光強度差ΔSIが大きくなる。本測定では、まず、5枚の基板の表裏(合計10面)を下記の条件でスキャンして散乱光像を取得した。
(測定条件)
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Spindle Speed:10000rpm
測定範囲:17000~47000μm
Step Size:4μm
Encoder multiplier:×16
検出チャンネル:P-Sc channel
散乱光強度差ΔSI=SI1-SI2
SI1:散乱光強度が最も強い座標の散乱光強度の平均値
SI2:散乱光強度が最も低い座標の散乱光強度の平均値
Claims (8)
- 磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程に用いられる研磨用組成物であって、
砥粒が水に分散した砥粒分散液を含有し、
前記砥粒はシリカ粒子を含有し、
前記砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と小径側からの95%累積径(D95)との関係が以下の関係式:
1.14≦(D95/Dmode)<1.3;
を満たし、
前記個数基準における粒度分布の前記95%累積径(D 95 )と小径側からの90%累積径(D 90 )との関係が以下の関係式:
(D 95 -D 90 )≦2nm;
を満たす、研磨用組成物。 - さらに酸化剤を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
- さらに水溶性高分子を含む、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
- 前記水溶性高分子の含有量は0.0001重量%以上0.004重量%以下である、請求項3に記載の研磨用組成物。
- 前記95%累積径(D95)は28nm以上31nm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 前記磁気ディスク基板は、表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板である、請求項1から5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を調製するための研磨用組成物調製用キットであって、
互いに分けて保管される複数の剤を備え、
前記複数の剤の一つは、砥粒が水に分散した砥粒分散液であり、
前記砥粒はシリカ粒子を含有し、
前記砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と小径側からの95%累積径(D95)との関係が以下の関係式:
1.14≦(D95/Dmode)<1.3;
を満たし、
前記個数基準における粒度分布の前記95%累積径(D 95 )と小径側からの90%累積径(D 90 )との関係が以下の関係式:
(D 95 -D 90 )≦2nm;
を満たす、研磨用組成物調製用キット。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法。
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Title |
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坂下 攝,色材技術者のための"粉体技術の基礎"第1章 粉粒体の物理的性質,J. Jpa. Soc. Colour Mater.,日本,2005年,78 [4],168-184 |
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