JP7000102B2 - 研磨処理方法および研磨用組成物 - Google Patents
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Description
上記の研磨処理方法によると、Niイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面においてスクラッチ等の欠陥の数を効果的に低減することができる。
ここに開示される研磨処理方法の研磨対象物は、ニッケルを含む磁気ディスク基板である。ニッケルを含む磁気ディスク基板は、少なくとも表面にニッケルを含む基板であれば特に限定されず、例えば、ニッケルを含む層が基材ディスクに支持された磁気ディスク基板等であり得る。ここに開示される研磨処理方法は、例えば、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板(Ni-P基板)に対して好ましく適用することができる。上記基材ディスクは、例えば、アルミニウム合金製、ガラス製、ガラス状カーボン製等であり得る。このような基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するNi-P基板が好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
(キレート剤)
ここに開示される研磨用組成物は、キレート剤を含む。ここでいうキレート剤とは、pH6~7の中性域においてNiイオンと配位結合して錯体(例えば錯イオン)を形成し得る化合物をいい、典型的にはpH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数が0(ゼロ)を上回るものあり得る。また、キレート剤は、後述する廃液工程で用いられるキレート樹脂よりも、pH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数が所定値以上小さい。すなわち、キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4からキレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4を減じた値βpH4-αpH4が0.5よりも大きい。
みかけの安定度定数=Log10([MLn]/[M][L]n)-Log10αLH
αLH:キレート剤の価数に応じて下記の式から算出
1価:αLH=1+[H+]/Ka1
2価:αLH=1+[H+]/Ka2+[H+]2/Ka2×Ka1
3価:αLH=1+[H+]/Ka3+[H+]2/Ka3×Ka2+[H+]3/Ka3×Ka2×Ka1
4価:αLH=1+[H+]/Ka4+[H+]2/Ka4×Ka3+[H+]3/Ka4×Ka3×Ka2+[H+]4/Ka4×Ka3×Ka2×Ka1
5価:αLH=1+[H+]/Ka5+[H+]2/Ka5×Ka4+[H+]3/Ka5×Ka4×Ka3+[H+]4/Ka5×Ka4×Ka3×Ka2+[H+]5/Ka5×Ka4×Ka3×Ka2×Ka1
[M]:金属イオン濃度
[L]:配位子濃度
[MLn]:錯体濃度
n:金属イオンと反応する配位子の数
[H+]:水素イオン濃度
Ka1:第一解離定数 (=10-pka1)
Ka2:第二解離定数 (=10-pka2)
Ka3:第三解離定数 (=10-pka3)
Ka4:第四解離定数 (=10-pka4)
Ka5:第五解離定数 (=10-pka5)
ここで、水酸化ニッケルの析出を抑制するために、Niイオンに対するみかけの安定度定数が高いキレート剤を用いて錯体を形成しようとすると、その背反として、使用済みの研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させてニッケルを吸着させる廃液工程において、キレート剤と錯イオンを形成したNiイオンがキレート樹脂に吸着されず、該廃液からニッケルを十分に除去できない虞がある。
そのため、本研磨処理方法では、研磨用組成物にキレート剤を含有させつつ、該キレート剤のみかけの安定度定数をキレート樹脂のみかけの安定度定数よりも所定値小さくする(0.5<βpH4-αpH4)。このように、キレート樹脂とキレート剤とでみかけの安定度定数に適度な差を設け、研磨時にはキレート剤がNiイオンと錯イオンを形成し、かつ、廃液時にはキレート樹脂にNiイオンが吸着されるように、両者のキレート能の関係を適切に調整することにより、廃液工程におけるNiイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面において欠陥の数を効果的に低減することができる。したがって、本構成によれば、Niイオン除去性と面品位とを高いレベルで両立し得る研磨処理方法を提供することができる。ただし、この理由のみに限定解釈されるものではない。
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒を含む。砥粒は、例えばシリカ粒子であり得る。シリカ粒子は、公知の各種シリカ粒子のなかから適宜選択して使用することができる。そのような公知のシリカ粒子としては、コロイダルシリカ、乾式法シリカ等が挙げられる。ここでいう乾式法シリカの例には、四塩化ケイ素やトリクロロシラン等のシラン化合物を典型的には水素火炎中で燃焼させることで得られるシリカ(フュームドシリカ)や、金属シリコンと酸素の反応により生成するシリカが含まれる。また、コロイダルシリカの例には、Na、K等のアルカリ金属とSiO2とを含有するケイ酸アルカリ含有液(例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム含有液)を原料または中間原料に用いて製造されるシリカや、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のアルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されるシリカ(アルコキシド法シリカ)が含まれる。
ここに開示される技術は、研磨用組成物に含まれる砥粒の全重量のうちシリカ粒子の合計割合が90重量%よりも大きい態様で好ましく実施され得る。上記シリカ粒子の割合は、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。なかでも、研磨用組成物に含まれる砥粒の100重量%がシリカ粒子である研磨用組成物が好ましい。
ここに開示される研磨組成物は、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤を含む。研磨促進剤としては、特に制限はないが、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1~18程度、典型的には1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられる。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を含有する。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、塩基性化合物、界面活性剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩);等が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、ポリマーを含有することができる。ここでいうポリマーとは、同一(単独重合体;ホモポリマー)もしくは相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する化合物をいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が500以上(好ましくは1000以上)の化合物であり得る。かかるポリマーは水溶性の高分子であることが好ましい。ポリマーを研磨用組成物に含有させることにより、研磨後の面精度が向上し得る。ポリマーの種類としては特に制限はなく、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。そのなかでもアニオン性ポリマーを含むことが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸系重合体、スルホン酸系重合体などが挙げられる。
ポリマーの具体例としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で磁気ディスク基板に供給されて、該磁気ディスク基板の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍~20倍(典型的には2倍~10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
ここに開示される研磨液のpHは特に制限されない。研磨液のpHは、例えば、3以下とすることができ、2.8以下としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨液のpHは、2.6以下とすることができ、2.2以下とすることがより好ましい。研磨液のpHは、例えば2以下とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni-P基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨液に好ましく適用され得る。
なお、ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(典型的には、水以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。好ましい一態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むA液(典型的には、分散剤を含んでもよい砥粒分散液)と、砥粒以外の成分(例えば、キレート剤、研磨促進剤その他の添加剤)を含むB液とから構成されている。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、上記酸化剤(例えば過酸化水素)が水溶液(例えば過酸化水素水)の形態で供給される場合、当該水溶液は、多剤型研磨用組成物を構成するC液となり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、研磨後の表面において欠陥を高度に低減し得ることから、磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程(最終研磨工程)に特に好ましく使用され得る。この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程を備える研磨物の製造方法(例えば磁気ディスク基板の製造方法)および該方法により製造された磁気ディスク基板が提供され得る。なお、仕上げ研磨とは、目的物の製造プロセスにおける最後の研磨工程(すなわち、その工程の後にはさらなる研磨を行わない工程)を指す。
ここに開示される研磨処理方法は、研磨工程(例えば仕上げ研磨工程)と廃液処理工程とを含む。研磨工程は、シリカ砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して研磨する工程である。廃液処理工程は、使用済みの研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させて該キレート樹脂にニッケルを吸着させる工程である。
研磨工程では、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を研磨液として用意する。上記研磨液を用意することには、前記濃縮液に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。
廃液処理工程では、研磨工程で使用された研磨液やリンス液を回収タンクに回収する。次いで、回収タンクに集められた使用済みの研磨液(すなわち研磨用組成物の廃液)をpH3~5(例えばpH4)に調整した後、高分子凝集剤等で凝集させ、固液分離させた上澄み液をキレート樹脂に接触させる。
(例1)
砥粒と研磨促進剤とキレート剤と酸化剤と塩基性化合物と純水とを混合して、例1に係る研磨用組成物を調製した。砥粒としてはコロイダルシリカ(平均一次粒子径23nm)を使用した。研磨促進剤としてはリン酸を使用した。酸化剤としては過酸化水素水(H2O2)を使用した。キレート剤としてはコハク酸を使用した。塩基性化合物としては水酸化カリウムを使用した。研磨用組成物における砥粒の含有量は5%、研磨促進剤の含有量は1%、酸化剤の含有量は0.6%、キレート剤の含有量は0.2%、キレート剤に対する研磨促進剤のモル比(研磨促進剤/キレート剤)は6.0とした。この研磨用組成物のpHは2.0であった。
砥粒の種類、平均一次粒子径および含有量、研磨促進剤の含有量、酸化剤の含有量、キレート剤の種類および含有量、キレート剤に対する研磨促進剤のモル比およびpHを表1のように変更したこと以外は、例1と同じ手順で例2~13に係る研磨用組成物を調製した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で、研磨対象物を研磨する標準研磨試験を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。ここでは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物(以下「Ni-P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
研磨装置:スピードファム株式会社製の両面研磨機、型式「9B-5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
研磨液の供給レート:110mL/分
研磨荷重:120g/cm2
下定盤回転数:35rpm
研磨時間:研磨後の重量減が30mgになるよう、研磨時間を調整
洗浄後、研磨した基板の両面にある欠陥(スクラッチ)の数を下記測定条件で測定した。結果を表1の「欠陥」の欄に示す。ここでは例9の欠陥数を100としたときの相対値に換算して示している。
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Rotation: 10000rpm
測定範囲:20‐45mm
Step size:4mm
Encoder multiplier:×32
検出チャンネル:P‐Sc channel
各例の研磨用組成物について、砥粒を含まないこと以外は各例の組成物と同一組成であるケミカル液を用意した。このケミカル液に硫酸ニッケル水溶液を添加してNiイオンを含む仮想廃液を調製した。仮想廃液中のNiイオン濃度は500ppmとなるように調整した。この仮想廃液を、イミノ二酢酸型キレート樹脂250mLを充填したカラム(カラム容積2160cm3)に送液速度300mL/分にて室温で通液した。そして、カラムを通過した処理液中のNiイオン濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(IPC-AES)により測定した。イミノ二酢酸型キレート樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製キレート樹脂CR11を使用した。結果を表1の「Niイオン濃度」欄に示す。
Claims (6)
- 砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む研磨用組成物を、ニッケルを含む磁気ディスク基板に供給して研磨する工程(1)と;
前記研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させて該キレート樹脂にニッケルを吸着させる工程(2)と;
を含み、
前記砥粒はシリカ粒子のみからなり、
前記研磨促進剤は、無機酸および有機酸から選択される1種以上であり、前記無機酸は、リン酸、硫酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸およびクロム酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記酸化剤は、過酸化物、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、ならびに硫酸類からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4から前記キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4を減じた値βpH4-αpH4が0.5よりも大きい、研磨処理方法。 - 前記βpH4-αpH4が3以下である、請求項1に記載の研磨処理方法。
- 前記研磨促進剤の第1酸解離定数が2.5以下であり、前記キレート剤の第1酸解離定数が1.0超である、請求項1または2に記載の研磨処理方法。
- 前記研磨用組成物中における前記キレート剤の含有量に対する前記研磨促進剤の含有量の比(研磨促進剤/キレート剤)が、モル比で1~8である、請求項1~3の何れか一つに記載の研磨処理方法。
- 前記研磨用組成物における前記キレート剤の含有量が、0.3質量%以下である、請求項1~4の何れか一つに記載の研磨処理方法。
- ニッケルを含む磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物であって、
砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含み、
前記砥粒はシリカ粒子のみからなり、
前記研磨促進剤は、無機酸および有機酸から選択される1種以上であり、前記無機酸は、リン酸、硫酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸およびクロム酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記酸化剤は、過酸化物、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、ならびに硫酸類からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記キレート剤は、pH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4が、イミノ二酢酸型キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数よりも0.5超小さい、研磨用組成物。
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