JP7000102B2 - 研磨処理方法および研磨用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨処理方法および当該方法に用いられる研磨用組成物に関する。詳しくは、ニッケルを含む磁気ディスク基板の研磨処理方法および当該方法に用いられる研磨用組成物に関する。
従来、高精度な表面が要求される基板の製造プロセスには、研磨液を用いて該基板の原材料である研磨対象物を研磨する工程が含まれる。例えば、ニッケルリンめっきが施されたディスク基板(Ni-P基板)の製造においては、一般に、より研磨効率を重視した研磨(一次研磨)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨工程(仕上げ研磨工程)とが行われている。この種の研磨用組成物に関する従来技術として、特許文献1~7が挙げられる。特許文献8は、研磨後の洗浄工程で用いられる洗浄液に関する技術文献である。
特開平10-212534号公報 特開2002-327170号公報 特開2000-53948号公報 特開2002-294225号公報 特開2014-141667号公報 特開2001-131535号公報 特開2005-8875号公報 特開2000-100767号公報
近年、Ni-P基板等のディスク基板について、より高品位の表面が要求されるようになってきている。このため、より欠陥の少ない基板表面を実現可能な研磨用組成物が求められている。また、使用済みの研磨用組成物の廃液には、Niイオンが含まれることがあり、環境汚染防止等の観点からNiイオンは、廃液処理によって十分に除去することが必要とされる。そのため、廃液工程におけるNiイオンの除去性のよい研磨用組成物が求められている。
そこで本発明は、Niイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面において欠陥の数を効果的に低減し得る研磨処理方法を提供することを目的とする。関連する他の目的は、かかる研磨処理方法を実施するために適した研磨用組成物を提供することである。
本発明によると、ニッケルを含む磁気ディスク基板の研磨処理方法が提供される。この研磨処理方法は、砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む研磨用組成物を前記磁気ディスク基板に供給して研磨する工程(1)と、前記研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させて該キレート樹脂にニッケルを吸着させる工程(2)と、を含む。前記キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4から前記キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4を減じた値βpH4-αpH4が0.5よりも大きい。
上記の研磨処理方法によると、Niイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面においてスクラッチ等の欠陥の数を効果的に低減することができる。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記βpH4-αpH4が3以下である。上記の研磨処理方法によると、研磨後の表面において欠陥の数をより効果的に低減することができる。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記研磨促進剤の第1酸解離定数が2.5以下であり、前記キレート剤の第1酸解離定数が1.0超である。第1酸解離定数について上記値を有する研磨促進剤とキレート剤とを組み合わせて用いることにより、上述した効果がより良く発揮され得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記研磨用組成物中における前記キレート剤の含有量に対する前記研磨促進剤の含有量の比(研磨促進剤/キレート剤)が、モル比で1~8である。研磨促進剤とキレート剤とを上記モル比で含む研磨用組成物において、欠陥抑制効果およびNiイオン除去性向上効果が好適に発揮される。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記研磨用組成物における前記キレート剤の含有量が0.3質量%以下である。このようなキレート剤の含有量の範囲内であると、上述した効果がより良く発揮され得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記砥粒として、シリカ粒子を含む。ここで開示される研磨処理方法は、砥粒としてシリカ粒子を含む態様で好ましく実施され得る。
また、本発明によると、ニッケルを含む磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物が提供される。この組成物は、シリカ砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む。前記キレート剤は、pH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4が、イミノ二酢酸型キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数よりも0.5超小さい。上記研磨用組成物を用いることにより、ここに開示される研磨処理方法を好ましく実施することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される研磨処理方法は、シリカ砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む研磨用組成物を研磨対象物に供給して研磨する工程(研磨工程)と、研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させて該キレート樹脂にニッケルを吸着させる工程(廃液工程)と、をこの順で含む。以下、研磨対象物、研磨用組成物、研磨処理方法の順で説明する。
<研磨対象物>
ここに開示される研磨処理方法の研磨対象物は、ニッケルを含む磁気ディスク基板である。ニッケルを含む磁気ディスク基板は、少なくとも表面にニッケルを含む基板であれば特に限定されず、例えば、ニッケルを含む層が基材ディスクに支持された磁気ディスク基板等であり得る。ここに開示される研磨処理方法は、例えば、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板(Ni-P基板)に対して好ましく適用することができる。上記基材ディスクは、例えば、アルミニウム合金製、ガラス製、ガラス状カーボン製等であり得る。このような基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するNi-P基板が好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
<研磨用組成物>
(キレート剤)
ここに開示される研磨用組成物は、キレート剤を含む。ここでいうキレート剤とは、pH6~7の中性域においてNiイオンと配位結合して錯体(例えば錯イオン)を形成し得る化合物をいい、典型的にはpH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数が0(ゼロ)を上回るものあり得る。また、キレート剤は、後述する廃液工程で用いられるキレート樹脂よりも、pH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数が所定値以上小さい。すなわち、キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4からキレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4を減じた値βpH4-αpH4が0.5よりも大きい。
ここでみかけの安定度定数とは、錯体の安定度を示す指標であり、金属イオンM(ここでは二価のNiイオン)と配位子L(キレート剤)とから錯体MLを生成するときの平衡定数を用いて以下の式により表される。
みかけの安定度定数=Log10([ML]/[M][L])-Log10αLH

αLH:キレート剤の価数に応じて下記の式から算出
1価:αLH=1+[H]/Ka1
2価:αLH=1+[H]/Ka2+[H/Ka2×Ka1
3価:αLH=1+[H]/Ka3+[H/Ka3×Ka2+[H/Ka3×Ka2×Ka1
4価:αLH=1+[H]/Ka4+[H/Ka4×Ka3+[H/Ka4×Ka3×Ka2+[H/Ka4×Ka3×Ka2×Ka1
5価:αLH=1+[H]/Ka5+[H/Ka5×Ka4+[H/Ka5×Ka4×Ka3+[H/Ka5×Ka4×Ka3×Ka2+[H/Ka5×Ka4×Ka3×Ka2×Ka1

[M]:金属イオン濃度
[L]:配位子濃度
[ML]:錯体濃度
n:金属イオンと反応する配位子の数
[H]:水素イオン濃度
a1:第一解離定数 (=10-pka1
a2:第二解離定数 (=10-pka2
a3:第三解離定数 (=10-pka3
a4:第四解離定数 (=10-pka4
a5:第五解離定数 (=10-pka5
ここに開示される技術では、研磨用組成物に含まれるキレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4と、廃液処理工程で用いられるキレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4との関係が、次式:0.5<βpH4-αpH4;を満たす。このことにより、Niイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面においてスクラッチ等の欠陥の数を効果的に低減することができる。このような効果が得られる理由としては、例えば以下のように考えられる。
すなわち、研磨時に前記磁気ディスク基板から溶出してくるNiイオンは、水溶液中の水酸化物イオンと結合することで水酸化ニッケル(Ni(OH))として析出することがある。特に、研磨後のリンス時には、pHが中性域まで上昇するため、上記水酸化ニッケルの析出が起こりやすい。かかる析出物は、研磨後の表面にスクラッチ等の欠陥を生じさせ、面品位を低下させる要因になり得る。これに対して、上記キレート剤を含む研磨用組成物を用いた研磨では、キレート剤が優先的にNiイオンと錯イオンを形成することで、Niイオンと水酸化物イオンとの結合が阻止され、水酸化ニッケルの析出を効果的に抑制することができる。
ここで、水酸化ニッケルの析出を抑制するために、Niイオンに対するみかけの安定度定数が高いキレート剤を用いて錯体を形成しようとすると、その背反として、使用済みの研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させてニッケルを吸着させる廃液工程において、キレート剤と錯イオンを形成したNiイオンがキレート樹脂に吸着されず、該廃液からニッケルを十分に除去できない虞がある。
そのため、本研磨処理方法では、研磨用組成物にキレート剤を含有させつつ、該キレート剤のみかけの安定度定数をキレート樹脂のみかけの安定度定数よりも所定値小さくする(0.5<βpH4-αpH4)。このように、キレート樹脂とキレート剤とでみかけの安定度定数に適度な差を設け、研磨時にはキレート剤がNiイオンと錯イオンを形成し、かつ、廃液時にはキレート樹脂にNiイオンが吸着されるように、両者のキレート能の関係を適切に調整することにより、廃液工程におけるNiイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面において欠陥の数を効果的に低減することができる。したがって、本構成によれば、Niイオン除去性と面品位とを高いレベルで両立し得る研磨処理方法を提供することができる。ただし、この理由のみに限定解釈されるものではない。
キレート樹脂の上記みかけの安定度定数βpH4からキレート剤の上記みかけの安定度定数αpH4を減じた値は、0.5<βpH4-αpH4である。かかるみかけの安定度定数を有するキレート剤を含む研磨用組成物は、廃液工程においてNiイオンがキレート樹脂に吸着されやすい。したがって、ここに開示される技術の適用効果が適切に発揮され得る。Niイオン除去性等の観点から、βpH4-αpH4は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上である。いくつかの態様において、βpH4-αpH4は、1以上であってもよく、2以上であってもよい。βpH4-αpH4の上限は特に限定されないが、概ね3.8以下である。より高品位の表面を実現する等の観点から、βpH4-αpH4は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下である。いくつかの態様において、βpH4-αpH4は、2.5以下であってもよく、2.2以下であってもよい。
キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数は、キレート樹脂との間でみかけの安定度定数について前記関係を満たす限りにおいて特に限定されない。キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4は、例えば3.2以下であり得る。αpH4は、Niイオン除去性等の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2.9以下である。いくつかの態様において、αpH4は2.5以下であってもよく、2以下であってもよい。上記みかけの安定度定数の下限は特に限定されない。例えば、キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数は0(ゼロ)であってもよい。いくつかの態様において、αpH4は、例えば0.2以上、典型的には0.5以上(例えば1以上)であり得る。αpH4は1.5以上であってもよく、2以上であってもよい。
キレート剤のpH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数は、0(ゼロ)よりも大きければよく、特に限定されない。キレート剤のpH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH6は、通常、0.5以上であり得る。より高品位な表面を実現する等の観点から、αpH6は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上である。いくつかの態様において、αpH6は1.5以上であってもよく、2以上であってもよい。また、上記みかけの安定度定数αpH6は、通常、10以下であり、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下である。ここに開示される技術は、例えばキレート剤のpH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH6が1.2以上4.2以下である態様で好ましく実施され得る。
上記キレート剤において、αpH6は、αpH4より0.5以上大きいことが好ましく、0.8以上大きいことがより好ましく、1以上大きいことがさらに好ましい。また、αpH6からαpH4を減じた値(すなわち、αpH6-αpH4)は、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3以下である。例えば、αpH4-αpH6が2.5以下、典型的には2以下であってもよい。かかるみかけの安定度定数を有するキレート剤は、研磨時にはNiイオンと配位結合を形成し、かつ、廃液時にはNiイオンを解離しやすいため、本発明の目的に適したキレート剤として好適である。
ここに開示される技術におけるキレート剤としては、キレート樹脂との間でみかけの安定度定数について前記関係(0.5<βpH4-αpH4)を満たすものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、キレート剤は、分子構造内に1または2以上のヒドロキシル基を有するカルボン酸、スルホン酸(‐SOH)、ホスホン酸(‐PO)であり得る。カルボン酸は、モノカルボン酸、ポリカルボン酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等)のいずれであってもよいが、ジカルボン酸が好ましい。スルホン酸は、モノスルホン酸、ポリスルホン酸(ジスルホン酸、トリスルホン酸等)のいずれであってもよいが、ジスルホン酸が好ましい。ホスホン酸は、モノホスホン酸、ポリホスホン酸(ジホスホン酸、トリホスホン酸等)のいずれであってもよいが、ジホスホン酸が好ましい。キレート剤におけるヒドロキシル基の数は、例えば1~10であり、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~5である。キレート剤における炭素原子の数は1~20(好ましくは1~15、より好ましくは1~12、さらに好ましくは2~10(例えば2~6、典型的には2~4)である。キレート剤は、脂肪族、脂環式または芳香族のいずれであってもよい。
キレート剤の具体例としては、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、酢酸、ギ酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、フマル酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチレンコハク酸、グルコン酸、タルトロン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、オキサロ酢酸、シスチン等のカルボン酸;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等のホスホン酸;メタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等のスルホン酸;が挙げられる。これらのうちコハク酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸酢酸、ギ酸、グルタル酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)がより好ましく、なかでも好ましいものとしてコハク酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、リンゴ酸およびマロン酸が挙げられる。これら各種の材料を、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
キレート剤は、塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した酸の、金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩)、1級アミン塩(例えば、メチルアミン塩、エチルアミン塩等のアルカリアミン塩、モノエタノールアミン塩)、2級アミン塩(例えば、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩等のジアルカリアミン塩、ジエタノールアミン塩)、3級アミン塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のトリアルカリアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒を含む。砥粒は、例えばシリカ粒子であり得る。シリカ粒子は、公知の各種シリカ粒子のなかから適宜選択して使用することができる。そのような公知のシリカ粒子としては、コロイダルシリカ、乾式法シリカ等が挙げられる。ここでいう乾式法シリカの例には、四塩化ケイ素やトリクロロシラン等のシラン化合物を典型的には水素火炎中で燃焼させることで得られるシリカ(フュームドシリカ)や、金属シリコンと酸素の反応により生成するシリカが含まれる。また、コロイダルシリカの例には、Na、K等のアルカリ金属とSiOとを含有するケイ酸アルカリ含有液(例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム含有液)を原料または中間原料に用いて製造されるシリカや、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のアルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されるシリカ(アルコキシド法シリカ)が含まれる。
ここに開示される技術において、研磨用組成物中に含まれる砥粒は、一次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が会合した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態の砥粒と二次粒子の形態の砥粒とが混在していてもよいが、より好ましくは砥粒が一次粒子の形態で研磨用組成物に含まれる形態である。
上記砥粒の平均一次粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上、特に好ましくは10m以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。
なお、ここに開示される技術において、砥粒の平均一次粒子径は、BET法に基づいて求められる平均粒子径をいう。例えば、砥粒がシリカ砥粒(すなわちシリカ粒子からなる砥粒)の場合、シリカ砥粒の平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積S(m/g)から、D1(nm)=(6000/2.2)/Sの式により算出され得る。この式における2.2はシリカの比重の値である。
砥粒の平均二次粒子径は特に限定されないが、研磨レート等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果を得る観点から、平均二次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、18nm以上であることがより好ましい。また、保存安定性(例えば分散安定性)の観点から、砥粒の平均二次粒子径は、200nm以下が適当であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。砥粒の平均二次粒子径は、例えば、マイクロトラック・ベル社製動的光散乱式粒子径分布測定装置型式「UPA-UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。研磨用組成物を仕上げ研磨工程に使用する場合は球形に近い形状が好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、上記シリカ以外の材質からなる砥粒(以下、非シリカ砥粒ともいう。)を含有してもよい。そのような非シリカ砥粒は、無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子のいずれかであり得る。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α-アルミナ、α-アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α-アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。
上記非シリカ砥粒の含有量は、研磨用組成物に含まれる砥粒の全重量のうち、例えば30重量%以下とすることが適当であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
ここに開示される技術は、研磨用組成物に含まれる砥粒の全重量のうちシリカ粒子の合計割合が90重量%よりも大きい態様で好ましく実施され得る。上記シリカ粒子の割合は、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。なかでも、研磨用組成物に含まれる砥粒の100重量%がシリカ粒子である研磨用組成物が好ましい。
(水)
ここに開示される研磨組成物は、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。
ここに開示される研磨組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が0.5重量%~30重量%である形態で好ましく実施され得る。上記NVが1重量%~20重量%である形態がより好ましい。
(研磨促進剤)
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤を含む。研磨促進剤としては、特に制限はないが、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1~18程度、典型的には1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられる。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、プロピオン酸、グリコール酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
研磨レートの観点から好ましい研磨促進剤として、リン酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでもリン酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸が好ましい。
好ましい一態様では、研磨用組成物は、研磨促進剤として無機酸を含む。無機酸としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸などが挙げられる。なかでもリン酸、硝酸、硫酸が好ましく、リン酸が特に好ましい。無機酸を用いることにより、有機酸を用いる場合に比べて、研磨レートを向上させつつ、欠陥の数をより効果的に低減することができる。上記無機酸にさらに有機酸が組み合わせて用いられてもよい。ここで開示される技術は、無機酸と有機酸とが組み合わせて用いられる態様でも実施され得る。
上記酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨用組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩(例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩)を好ましく採用し得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムが好ましく、塩化カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウムを更に好ましく使用し得る。
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様において、酸(好ましくは無機酸)と、該酸とは異なる酸の塩(好ましくは無機酸の塩)とを組み合わせて用いることができる。
ここで開示される研磨用組成物の好ましい一態様では、研磨促進剤として、pH6~7の中性域においてNiイオンに対してキレート能を有しない非キレート性の酸が用いられる。すなわち、研磨促進剤のpH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数が0(ゼロ)である。このようにNiイオンに対してキレート能を有しない研磨促進剤と、前述したキレート剤とを組み合わせて用いることにより、ここに開示される技術の適用効果がより効果的に発揮され得る。
また好ましい一態様では、第1酸解離定数(pKa1、25℃)が2.5以下の研磨促進剤と、第1酸解離定数(pKa1、25℃)が1.0超のキレート剤とが組み合わせて用いられる。研磨促進剤のpKa1は、研磨効率等の観点から、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下である。研磨促進剤のpKa1の下限値は特に限定されないが、通常、-10以上であり、好ましくは-5以上、より好ましくは-3以上、さらに好ましくは0以上、特に好ましくは1以上である。ここに開示される技術は、pKa1が1以上2.5以下の研磨促進剤を含む態様で好ましく実施され得る。キレート剤のpKa1は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。キレート剤のpKa1の上限は特に限定されないが、通常、5以下であり、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。このように、pKa1が2.5以下の研磨促進剤と、それよりもpKa1が高いキレート剤とを組み合わせて用いることにより、欠陥抑制とNiイオン除去性との両立をより効率的に実現することができる。
研磨促進剤とキレート剤とを併用することによる効果をより良く発揮させる観点から、研磨用組成物中におけるキレート剤の含有量に対する研磨促進剤の含有量の比(研磨促進剤/キレート剤)は、モル比で1以上であり得る。上記モル比は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは4.5以上である。研磨促進剤とキレート剤とを特定のモル比となるように組み合わせて用いることにより、前述した効果がより好適に発揮され得る。いくつかの態様において、上記モル比は、例えば5以上であってもよく、典型的には5.2以上であってもよい。上記モル比の上限は特に限定されないが、通常は8以下が適当であり、好ましくは7.5以下、より好ましくは7以下である。ここに開示される技術は、研磨用組成物中におけるキレート剤の含有量に対する研磨促進剤の含有量の比(研磨促進剤/キレート剤)がモル比で1以上8以下(好ましくは5以上7以下)である態様で好ましく実施され得る。
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を含有する。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、塩基性化合物、界面活性剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩);等が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。ここでいう界面活性剤とは、1分子中に少なくとも一つ以上の親水部位(典型的には親水基)と一つ以上の疎水部位(典型的には疎水基)とを有する化合物をいう。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
(ポリマー)
ここに開示される研磨用組成物は、ポリマーを含有することができる。ここでいうポリマーとは、同一(単独重合体;ホモポリマー)もしくは相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する化合物をいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が500以上(好ましくは1000以上)の化合物であり得る。かかるポリマーは水溶性の高分子であることが好ましい。ポリマーを研磨用組成物に含有させることにより、研磨後の面精度が向上し得る。ポリマーの種類としては特に制限はなく、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。そのなかでもアニオン性ポリマーを含むことが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸系重合体、スルホン酸系重合体などが挙げられる。
ポリマーの具体例としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
(研磨液)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で磁気ディスク基板に供給されて、該磁気ディスク基板の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍~20倍(典型的には2倍~10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
研磨液におけるキレート剤の含有量は特に限定されない。キレート剤の含有量は、通常、0.05重量%以上が適当である。キレート剤の含有量は、高品位の表面を実現する等の観点から、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、例えば0.12重量%以上である。いくつかの態様において、キレート剤の含有量は、0.15重量%以上であってもよく、0.18重量%以上であってもよい。キレート剤の含有量は、通常、3重量%以下が適当であり、2重量%以下が好ましく、1重量%以下(例えば0.5重量%以下)がより好ましい。いくつかの態様において、キレート剤の含有量は、0.3重量%以下であってもよく、0.25重量%以下であってもよい。キレート剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
研磨液における砥粒の含有量(複数種類の砥粒を含む場合には、それらの合計含有量)は特に制限されないが、典型的には1重量%以上であり、2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や研磨の安定性の観点から、通常、上記含有量は、20重量%以下が適当であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。
研磨液における研磨促進剤の含有量は、特に限定されない。研磨促進剤の含有量は、通常、0.5重量%以上が適当であり、0.8重量%以上が好ましく、1重量%以上(例えば1重量%以上)がより好ましい。研磨促進剤の含有量が少なすぎると、研磨レートが不足しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。研磨促進剤の含有量は、通常、15重量%以下が適当であり、10重量%以下が好ましく、5重量%以下(例えば3重量%以下)がより好ましい。研磨促進剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
研磨液における酸化剤の含有量は、有効成分量基準で0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.4重量%である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨レートが低下するため、実用上好ましくない場合がある。また、酸化剤の含有量は、有効成分量基準で2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
研磨液が塩基性化合物を含む場合、その含有量は特に制限はないが、例えば0.1重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは0.8重量%以上である。また、上記含有量は、10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは5重量%以下、例えば2重量%以下である。
界面活性剤を含む態様の研磨液では、界面活性剤の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、1重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
研磨液がポリマーを含む場合、その含有量(複数のポリマーを含む態様では、それらの合計含有量)は特に制限はないが、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の磁気ディスク基板の表面平滑性等の観点から、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
(pH)
ここに開示される研磨液のpHは特に制限されない。研磨液のpHは、例えば、3以下とすることができ、2.8以下としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨液のpHは、2.6以下とすることができ、2.2以下とすることがより好ましい。研磨液のpHは、例えば2以下とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni-P基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨液に好ましく適用され得る。
(多剤型研磨用組成物)
なお、ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(典型的には、水以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。好ましい一態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むA液(典型的には、分散剤を含んでもよい砥粒分散液)と、砥粒以外の成分(例えば、キレート剤、研磨促進剤その他の添加剤)を含むB液とから構成されている。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、上記酸化剤(例えば過酸化水素)が水溶液(例えば過酸化水素水)の形態で供給される場合、当該水溶液は、多剤型研磨用組成物を構成するC液となり得る。
(用途)
ここに開示される研磨用組成物は、研磨後の表面において欠陥を高度に低減し得ることから、磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程(最終研磨工程)に特に好ましく使用され得る。この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程を備える研磨物の製造方法(例えば磁気ディスク基板の製造方法)および該方法により製造された磁気ディスク基板が提供され得る。なお、仕上げ研磨とは、目的物の製造プロセスにおける最後の研磨工程(すなわち、その工程の後にはさらなる研磨を行わない工程)を指す。
ここに開示される研磨用組成物は、また、仕上げ研磨よりも上流の研磨工程に用いられてもよい。ここで、仕上げ研磨よりも上流の研磨工程とは、粗研磨工程と仕上げ研磨工程との間の予備研磨工程を指す。予備研磨工程は、典型的には少なくとも1次研磨工程を含み、さらに2次、3次・・・等の研磨工程を含み得る。上記研磨用組成物は、いずれの研磨工程にも使用可能であり、これらの研磨工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、仕上げ研磨の直前に行われる研磨工程に用いられてもよい。
<研磨処理方法>
ここに開示される研磨処理方法は、研磨工程(例えば仕上げ研磨工程)と廃液処理工程とを含む。研磨工程は、シリカ砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して研磨する工程である。廃液処理工程は、使用済みの研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させて該キレート樹脂にニッケルを吸着させる工程である。
(研磨工程)
研磨工程では、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を研磨液として用意する。上記研磨液を用意することには、前記濃縮液に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
上記研磨は、片面研磨装置による研磨、両面研磨装置による研磨のいずれにも適用可能である。片面研磨装置では、セラミックプレートにワックスで研磨対象物を貼りつけたり、キャリアと呼ばれる保持具を用いて研磨対象物を保持し、研磨液を供給しながら研磨対象物の片面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させることにより研磨対象物の片面を研磨する。両面研磨装置では、キャリアと呼ばれる保持具を用いて研磨対象物を保持し、両面研磨装置の上定盤と下定盤との間に研磨対象物がキャリアとともに挟み込まれる。そして、研磨対象物の研磨面に研磨液を供給しつつ、上定盤と下定盤とを回転させることにより、研磨対象物の両面が同時に研磨される。
ここに開示される研磨工程で使用される研磨パッドは、特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、硬質発泡ポリウレタンタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
研磨の条件は、研磨対象物や、目標とする表面性状、研磨効率等に基づいて当業者の技術常識に基づき、適切に設定される。例えば、研磨効率等の観点から、研磨対象物の加工面積1cmあたりの研磨圧力は、好ましくは50g以上であり、より好ましくは100g以上である。また、負荷増大に伴う過度な発熱による研磨対象物表面の変質や砥粒の劣化を防ぐ観点から、通常は、加工面積1cmあたりの研磨圧力は1000g以下(例えば500g以下)であることが適当である。
定盤回転数は特に限定されないが、定盤回転数の増大によって、より高い研磨効率が得られる傾向にある。また、研磨対象物の破損や過度な発熱を防止する観点から、当業者の技術常識に基づき、適切に設定され得る。
研磨時における研磨液の供給量は特に限定されない。上記供給量は、研磨対象物表面に研磨液がムラなく全面に供給されるのに十分な量となるように設定することが望ましいが当業者の技術常識に基づき、適切に設定され得る。
研磨時間は特に限定されない。ここに開示される研磨処理方法によると、20分未満の研磨時間で磁気ディスク基板に対して高品位な表面を実現することができる。好ましい一態様では、10分未満(例えば1分~10分、典型的には5分未満)の研磨時間で、磁気ディスク基板に対して高品位な表面を実現することができる。
ここに開示される方法により研磨された研磨対象物は、典型的には研磨後に洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、公知、慣用のものを適宜選択して用いることができる。例えば、洗浄液は、塩基性化合物や界面活性剤を含んでいてもよい。塩基性化合物としては、前述した研磨用組成物に使用し得る材料として例示した塩基性化合物を使用可能である。界面活性剤としては、前述した研磨用組成物に使用し得る材料として例示した界面活性剤を使用可能である。洗浄液の温度は、特に制限されず、例えば10~80℃の範囲とすることが好ましく、20~60℃の範囲とすることがより好ましい。
好ましい一態様では、洗浄は、研磨の後に、洗浄機で行われる。洗浄液を供給しながらPVAスポンジなどにより研磨対象物の表面を擦ることにより行われる。
(廃液処理工程)
廃液処理工程では、研磨工程で使用された研磨液やリンス液を回収タンクに回収する。次いで、回収タンクに集められた使用済みの研磨液(すなわち研磨用組成物の廃液)をpH3~5(例えばpH4)に調整した後、高分子凝集剤等で凝集させ、固液分離させた上澄み液をキレート樹脂に接触させる。
ここでキレート樹脂とは、金属イオンと錯体を形成し得る官能基を導入した樹脂をいう。キレート樹脂の基材を構成する樹脂としては、金属キレート能を有する官能基を導入可能なものであれば特に制限されない。例えばセルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等を採用し得る。これらの各種の材料を、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
金属キレート能を有する官能基としては、例えばアミノカルボン酸類、アミン類、ヒドロキシルアミン類を含む基が挙げられる。アミノカルボン酸類としては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、イミノ酢酸、アミノ酢酸等が例示される。アミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ピロール、ポリビニルアミン等が例示される。ヒドロキシルアミン類としては、オキシム、アミドオキシム、オキシン(8-オキシキノリン)、グルカミン、ジヒドロキシエチルアミン、ヒドロキサム酸等が例示される。なかでも、イミノ二酢酸を含むキレート形成基を導入したイミノ二酢酸型キレート樹脂が好ましい。
キレート樹脂の形状は特に限定されない。例えば、繊維状、粒状、膜状のいずれであってもよいが、金属イオンの補足速度等の観点から、粒状が好ましい。
研磨用組成物の廃液とキレート樹脂との接触は、例えばキレート樹脂を充填したカラムに廃液を通液することにより行われる。ここで研磨用組成物の廃液には、磁気ディスク基板から溶出したNiイオンとキレート剤とが含まれている。キレート剤は、Niイオンと配位結合して錯イオンを形成している。ここに開示される技術では、キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数と、キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数とが前記関係(0.5<βpH4-αpH4)を満たすことにより、キレート樹脂はキレート剤よりもNiイオンと配位結合を形成しやすい。そのため、上記通液操作により、キレート剤と配位結合しているNiイオンがキレート剤から解離して、キレート樹脂と結合する(すなわちキレート樹脂に吸着される)ことでカラムを通過しない。これにより廃液に含まれるNiイオンが除去される。Niイオンが取り除かれた廃液は、必要に応じて再生処理や放水処理に供される。かかる廃液処理工程を経て研磨処理が完了する。
ここに開示される研磨処理方法は、前述した研磨用組成物を用いる研磨工程よりも前に行われる研磨工程(以下「工程(P)」ともいう。)をさらに含み得る。工程(P)を含む態様によると、研磨工程全体の所要時間を短縮して生産性を高める効果が実現され得る。工程(P)は、1種類の研磨用組成物を使用する1つの研磨工程であってもよく、2種以上の研磨用組成物を順次に使用して行われる2以上の研磨工程を含んでもよい。
工程(P)に使用する研磨用組成物(以下「研磨用組成物(P)」ともいう。)は特に限定されない。例えば、砥粒としては、前述した研磨用組成物に使用し得る材料として例示した砥粒を使用可能である。研磨用組成物(P)は、典型的には砥粒の他に水を含む。その他、研磨用組成物(P)には、上述した研磨用組成物と同様の成分(研磨促進剤、酸化剤、キレート剤、塩基性化合物、ポリマー、界面活性剤、各種添加剤等)を必要に応じて含有させることができる。特に限定するものではないが、研磨用組成物(P)のpHは、例えば3以下とすることができ、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.6以下、さらに好ましくは2.2以下である。好ましい一態様において、研磨用組成物(P)のpHを2以下とすることができる。
ここに開示される研磨処理方法は、前述した廃液工程において、研磨用組成物の廃液とキレート樹脂とを接触させる前に、凝集剤を添加して廃液中に含まれる成分の一部(例えば砥粒)を凝集・沈殿させて、固形成分と液状成分を分離する処理をさらに含んでもよい。また、上記廃液とキレート樹脂とを接触させた後、カラムを通過した液状成分中に含まれる物質(例えば有機物)の一部をバクテリア等により分解・除去する処理をさらに含んでもよい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<研磨用組成物の調製>
(例1)
砥粒と研磨促進剤とキレート剤と酸化剤と塩基性化合物と純水とを混合して、例1に係る研磨用組成物を調製した。砥粒としてはコロイダルシリカ(平均一次粒子径23nm)を使用した。研磨促進剤としてはリン酸を使用した。酸化剤としては過酸化水素水(H)を使用した。キレート剤としてはコハク酸を使用した。塩基性化合物としては水酸化カリウムを使用した。研磨用組成物における砥粒の含有量は5%、研磨促進剤の含有量は1%、酸化剤の含有量は0.6%、キレート剤の含有量は0.2%、キレート剤に対する研磨促進剤のモル比(研磨促進剤/キレート剤)は6.0とした。この研磨用組成物のpHは2.0であった。
(例2~13)
砥粒の種類、平均一次粒子径および含有量、研磨促進剤の含有量、酸化剤の含有量、キレート剤の種類および含有量、キレート剤に対する研磨促進剤のモル比およびpHを表1のように変更したこと以外は、例1と同じ手順で例2~13に係る研磨用組成物を調製した。
各例の研磨用組成物について、使用した砥粒の種類、平均一次粒子径および含有量、研磨促進剤の種類および含有量、酸化剤の種類および含有量、キレート剤の種類、含有量、pH6におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH6、pH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4、キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4からキレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4を減じた値βpH4-αpH4およびpHを表1に纏めて示す。表1中の「DTPA・5Na」はジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、「EDTA・2Na」はエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水和物)、「GLDA・4Na」はL-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、「EDTA・Fe・Na」はエチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウムを示している。なお、本例では、キレート樹脂のみかけの安定度定数βpH4は、イミノ二酢酸の値3.76を採用した。
Figure 0007000102000001
<ディスクの研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で、研磨対象物を研磨する標準研磨試験を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。ここでは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物(以下「Ni-P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
[研磨条件]
研磨装置:スピードファム株式会社製の両面研磨機、型式「9B-5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
研磨液の供給レート:110mL/分
研磨荷重:120g/cm
下定盤回転数:35rpm
研磨時間:研磨後の重量減が30mgになるよう、研磨時間を調整
上記研磨の直後に、研磨液に代えて純水を供給しながら研磨パッドにより磁気ディスク基板の表面を擦ることにより5秒間のリンスを行った。荷重は21g/cmに設定した。
<欠陥数評価>
洗浄後、研磨した基板の両面にある欠陥(スクラッチ)の数を下記測定条件で測定した。結果を表1の「欠陥」の欄に示す。ここでは例9の欠陥数を100としたときの相対値に換算して示している。
[スクラッチの測定条件]
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Rotation: 10000rpm
測定範囲:20‐45mm
Step size:4mm
Encoder multiplier:×32
検出チャンネル:P‐Sc channel
<Niイオン除去性評価>
各例の研磨用組成物について、砥粒を含まないこと以外は各例の組成物と同一組成であるケミカル液を用意した。このケミカル液に硫酸ニッケル水溶液を添加してNiイオンを含む仮想廃液を調製した。仮想廃液中のNiイオン濃度は500ppmとなるように調整した。この仮想廃液を、イミノ二酢酸型キレート樹脂250mLを充填したカラム(カラム容積2160cm)に送液速度300mL/分にて室温で通液した。そして、カラムを通過した処理液中のNiイオン濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(IPC-AES)により測定した。イミノ二酢酸型キレート樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製キレート樹脂CR11を使用した。結果を表1の「Niイオン濃度」欄に示す。
表1に示すように、βpH4-αpH4≦0.45であるキレート剤を含む研磨用組成物を用いた例5~7、10~13では、カラムを通過した処理液中のNiイオン濃度が0.2ppm以上となり、Niイオン除去性が不適であった。一方、キレート剤を含まない若しくはニッケルに対するキレート能を有しないグリコール酸を含む研磨用組成物を用いた例8、9では、カラムを通過した処理液中のNiイオン濃度は低かったものの、研磨後の欠陥数が増大傾向を示した。これに対して、0.5<βpH4-αpH4であるキレート剤を含む研磨用組成物を用いた例1~4では、例8、9に比べて研磨後の欠陥数が少なく、なおかつ、Niイオン除去性でも良好な結果が得られた。この結果から、0.5<βpH4-αpH4であるキレート剤を含む研磨用組成物によると、Niイオンの除去性を良好に維持しつつ、研磨後の表面において欠陥の数を効果的に低減し得ることが確認できた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (6)

  1. 砥粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含む研磨用組成物を、ニッケルを含む磁気ディスク基板に供給して研磨する工程(1)と;
    前記研磨用組成物の廃液をキレート樹脂に接触させて該キレート樹脂にニッケルを吸着させる工程(2)と;
    を含み、
    前記砥粒はシリカ粒子のみからなり、
    前記研磨促進剤は、無機酸および有機酸から選択される1種以上であり、前記無機酸は、リン酸、硫酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸およびクロム酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記酸化剤は、過酸化物、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、ならびに硫酸類からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数βpH4から前記キレート剤のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4を減じた値βpH4-αpH4が0.5よりも大きい、研磨処理方法。
  2. 前記βpH4-αpH4が3以下である、請求項1に記載の研磨処理方法。
  3. 前記研磨促進剤の第1酸解離定数が2.5以下であり、前記キレート剤の第1酸解離定数が1.0超である、請求項1または2に記載の研磨処理方法。
  4. 前記研磨用組成物中における前記キレート剤の含有量に対する前記研磨促進剤の含有量の比(研磨促進剤/キレート剤)が、モル比で1~8である、請求項1~3の何れか一つに記載の研磨処理方法。
  5. 前記研磨用組成物における前記キレート剤の含有量が、0.3質量%以下である、請求項1~4の何れか一つに記載の研磨処理方法。
  6. ニッケルを含む磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物であって、
    粒と研磨促進剤と酸化剤とキレート剤とを含み、
    前記砥粒はシリカ粒子のみからなり、
    前記研磨促進剤は、無機酸および有機酸から選択される1種以上であり、前記無機酸は、リン酸、硫酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸およびクロム酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記酸化剤は、過酸化物、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、ならびに硫酸類からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記キレート剤は、pH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数αpH4が、イミノ二酢酸型キレート樹脂のpH4におけるNiイオンに対するみかけの安定度定数よりも0.5超小さい、研磨用組成物。
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