JP2022056706A - 研磨用組成物 - Google Patents

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Yusuke Makino
貴治 大山
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Abstract

【課題】Ni-P基板の仕上げ研磨に用いられて研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減することのできる研磨用組成物を提供すること。【解決手段】提供されるNi-P基板仕上げ研磨用組成物は、砥粒と、酸と、水とを含み、添加剤Aをさらに含む。上記添加剤Aは、分子内に85重量%以下のオキシエチレン単位を含むノニオン性界面活性剤である。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨用組成物に関し、詳しくはニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる磁気ディスク基板研磨用組成物に関する。
従来、高精度な表面が要求される磁気ディスク基板の製造プロセスには、研磨液を用いて該基板の原材料である研磨対象物(研磨対象基板)を研磨する工程が含まれる。例えば、ニッケルリンめっきが施されたディスク基板(以下、Ni-P基板ともいう。)の製造においては、一般に、より研磨効率を重視した研磨(一次研磨)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨(仕上げ研磨)とが行われる。磁気ディスク基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する技術文献として特許文献1が挙げられる。
特開2007-092064号公報
Ni-P基板の仕上げ研磨に用いられる研磨用組成物には、該研磨用組成物による研磨によって研磨対象基板の表面に発生する欠陥(例えばスクラッチ)が少ないことが求められる。上記欠陥の低減に関し、特許文献1には、磁気ディスク基板研磨用組成物にアゾール類およびその誘導体から選ばれる化合物を含有させることによってスクラッチを低減することが記載されている。しかし、特許文献1に記載された技術は、アゾール類およびその誘導体から選ばれる化合物が研磨対象基板の表面に保護膜を形成することでスクラッチ低減作用を発揮するという技術思想に基づくことから(特許文献1の段落0021)、スクラッチ低減作用の発現に伴って研磨レートが低下しがちである。仕上げ研磨における研磨レートが低下すると、目標とする表面精度が達成されるまでに要する研磨時間が長くなりやすい。したがって、磁気ディスク基板の仕上げ研磨において、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減する技術が提供されれば有用である。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、Ni-P基板の仕上げ研磨に用いられて、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減することのできる研磨用組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、そのような研磨用組成物を用いて磁気ディスク基板を製造する方法を提供することである。
この明細書によると、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒と、酸と、水とを含み、添加剤Aをさらに含む。上記添加剤Aは、分子内に85重量%以下のオキシエチレン単位を含むノニオン性界面活性剤である。かかる構成の研磨用組成物によると、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチ(凸凹欠陥)を低減することができる。以下、オキシエチレン単位(CHCHO単位)を「OE単位」と表記することがある。
いくつかの好ましい態様において、上記添加剤Aは、オキシエチレン単位と炭化水素基とがエーテル結合またはエステル結合で結合した構造を有する化合物である。かかる構造の添加剤Aを含む研磨用組成物によると、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減する効果が好ましく発揮され得る。
好ましくは、上記添加剤Aは、炭素原子数が8~20の鎖状炭化水素基を1つまたは2つ有する化合物である。かかる構造の添加剤Aを含む研磨用組成物によると、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減する効果が好ましく発揮され得る。
好ましくは、上記添加剤Aは、OE単位を25単位以下有する化合物である。かかる構造の添加剤Aを含む研磨用組成物によると、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減する効果が好ましく発揮され得る。
いくつかの態様に係る研磨用組成物において、上記添加剤Aの含有量は、0.1mM未満である。上記範囲の添加剤Aの濃度において、スクラッチを低減し、かつ研磨レートの低下を抑制する効果が好ましく発揮され得る。
いくつかの態様に係る研磨用組成物は、pHが3.0未満である。かかるpH環境下において、ここに開示される技術を適用することによる効果は好ましく発揮され得る。
上記砥粒としては、平均一次粒子径が1nm以上50nm以下のものを好ましく採用し得る。かかる砥粒を含む研磨用組成物を用いて仕上げ研磨を行うことにより、高い表面品位を効率よく達成し得る。
上記砥粒としては、シリカ粒子を好ましく採用し得る。砥粒としてシリカ粒子を含む研磨用組成物において、ここに開示される技術による効果は好ましく発揮され得る。
また、この明細書によると、磁気ディスク基板の製造方法が提供される。その製造方法は、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いて、ニッケルリンめっき層を有する研磨対象基板を仕上げ研磨する工程を含む。かかる製造方法によると、スクラッチが少ない高品位な表面を有する磁気ディスク基板(Ni-P基板)を効率よく製造し得る。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<研磨用組成物>
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒を含有する。砥粒は、研磨対象基板の表面を機械的に研磨する働きを有する。砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α-アルミナ、α-アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α-アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。砥粒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、後述する平均一次粒子径や平均アスペクト比等の物性値の1または2以上が所望の範囲となるように、2種以上の砥粒を適宜組み合わせて使用し得る。
ここに開示される技術における砥粒の好適例としてシリカ粒子が挙げられる。上記シリカ粒子は、シリカを主成分とする各種のシリカ粒子であり得る。ここで、シリカを主成分とするシリカ粒子とは、該粒子の90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上がシリカである粒子をいう。ここに開示される技術における砥粒は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。例えば、砥粒の平均一次粒子径や平均アスペクト比等の物性値の1または2以上が所望の範囲となるように、2種以上のシリカ粒子を適宜組み合わせて使用し得る。
シリカ粒子の例としては、特に限定されないが、コロイダルシリカ(例えば、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ等)、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。表面改質されたシリカ粒子であってもよい。上記表面改質は、例えば官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾であり得る。
ここに開示される技術における砥粒として用いられ得るシリカ粒子の一好適例として、コロイダルシリカが挙げられる。なかでも、ケイ酸ソーダ法シリカやアルコキシド法シリカのように、水相での粒子成長を経て合成されたコロイダルシリカの使用が好ましい。この種のコロイダルシリカによると、高い研磨レートと良好な面精度とが好適に達成され得る。砥粒としてシリカ粒子を用いる場合、該砥粒に含まれるコロイダルシリカは、1種であってもよく、製造条件および/または物性の異なる2種以上であってもよい。また、上記砥粒は、1種または2種以上のコロイダルシリカからなる構成であってもよく、コロイダルシリカと、他のシリカ粒子(すなわち、コロイダルシリカ以外のシリカ粒子)とを組み合わせて含む構成であってもよい。好ましい一態様では、研磨用組成物に含まれる砥粒が、コロイダルシリカ(例えば、ケイ酸ソーダ法シリカ)を単独で含む。コロイダルシリカを単独で用いることにより、高い研磨レートを保ちつつ、より良好な面精度(例えば、スクラッチ数の低減された表面)が実現され得る。
ここに開示される技術において、砥粒(例えば、コロイダルシリカ等のシリカ粒子)の粒子形状は特に限定されず、例えば球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形の具体例としては、ピーナッツ形状、繭形状、突起付き形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。ピーナッツ形状は、例えば落花生の殻の形状であり得る。突起付き形状は、例えば金平糖形状であり得る。ここに開示される研磨用組成物において、球形に近い形状の砥粒を使用することが好ましい。
ここに開示される技術において、砥粒(例えばシリカ粒子)の平均一次粒子径は特に限定されず、例えば1nm以上であり得る。上記平均一次粒子径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、例えば15nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。また、より面精度の高い表面を得る観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは35nm以下である。いくつかの態様において、上記平均一次粒子径は、例えば30nm以下であってよく、25nm以下でもよく、20nm以下でもよい。
なお、本明細書において平均一次粒子径とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、平均一次粒子径(nm)=6000/(真密度(g/cm)×BET値(m/g))の式により算出される粒子径(BET粒子径)をいう。上記比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
特に限定するものではないが、砥粒の個数基準の累積粒度分布における粒子全体の平均アスペクト比は、原理上1.0以上であり、研磨能率の観点から例えば1.02以上であってよく、1.05以上であってもよく、1.08以上であってもよい。また、面精度を効率よく高めやすくする観点から、上記粒子全体の平均アスペクト比は、1.30以下であることが適当である。粒子全体の平均アスペクト比の低減によって、該粒子が転がり移動しやすくなるため加工が安定し、スクラッチがより好ましく低減され得る。上記粒子全体の平均アスペクト比は、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.20以下であり、1.15以下でもよい。ここで、砥粒の個数基準の累積粒度分布における粒子全体の平均アスペクト比とは、該砥粒を構成する個々の粒子の長径/短径比の平均値、すなわち個数平均アスペクト比をいう。以下、特記しない場合、本明細書において平均アスペクト比とは、上記個数平均アスペクト比を意味するものとする。
いくつかの態様において、砥粒のD0-5粒子の平均アスペクト比は、原理上1.0以上であり、その下限値は特に限定されないが、例えば1.05以上であり、1.08以上であってもよい。ここでD0-5粒子とは、砥粒の個数基準の累積粒度分布(小径側からの累積個数分布)において、小径側からの累積が0~5%の範囲内に該当する粒子径を有する粒子のことをいう。上記累積個数分布は、典型的には、横軸を粒子径とし、縦軸を累積個数(%)とするグラフにおいて、累積0%および粒子径の小径側の端(左下)から右上に延びて、累積100%および粒子径の大径側の端(右上)に到達する曲線によって表される。D0-5粒子は、小径側から個数基準で5%を占める小径粒子である。スクラッチをより良く低減する等の観点から、いくつかの態様において、D0-5粒子の平均アスペクト比は、通常1.25以下であることが適当である。一般的に、全体として比較的球形度の高い粒子であっても小径側には形状が球形から歪んだ異形粒子を含むことがある。そうすると、小径の異形粒子が球形粒子に対する楔(くさび)の役割を果たすことで、粒子全体としては球形度が高くても局所的に粒子が転がりにくくなり、研磨後の表面にスクラッチが生じることがあり得る。D0-5粒子の平均アスペクト比の低減によって、上記楔となり得る小径の粒子がより球形に近い形状となる。球形度の高い小径粒子は、研磨時において上記楔になりにくいため、局所的に粒子が転がりにくくなる事象が生じにくくなる。このことが添加剤Aの使用による効果と相俟って、スクラッチがより好ましく低減され得る。D0-5粒子の平均アスペクト比は、好ましくは1.24以下、より好ましくは1.23以下、さらに好ましくは1.22以下である。
砥粒の個数平均アスペクト比は、例えば次の方法で測定される。すなわち、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM、日立ハイテクノロジーズ社製STEM HD-2700)を用いて、測定対象の砥粒に含まれるTEMにて観察可能な所定個数の(典型的には1000個以上の)粒子を、1視野内に100個程度観察可能な倍率(例えば200000倍~400000倍)で撮影し、TEM画像を取得する。そして、各粒子画像に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出する。また、各粒子の画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出する。測定対象とする砥粒の累積粒度分布は、当該砥粒を構成する個々の粒子について上記で算出された粒子径を横軸に、累積個数(%)を縦軸にプロットすることにより求められる。そして、上記累積粒度分布において小径側からの累積が0~5%の範囲内に該当する粒子径を有する個々の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、D0-5粒子の平均アスペクト比を求めることができる。また、上記累積粒度分布における粒子全体(すなわち、上記所定個数の粒子)のアスペクト比を算術平均することにより、全粒子の平均アスペクト比を求めることができる。上記平均アスペクト比は、例えばマウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。
なお、上記所定個数、すなわち粒子毎のアスペクト比を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、1000個以上とすることが適当であり、1500個以上とすることが好ましい。上記所定個数の上限は特に制限されない。測定効率の観点から、上記所定個数は、例えば5000個以下であってよく、2500個以下でもよい。
ここに開示される研磨用組成物における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.5重量%以上であり、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましい。上記含有量は、複数種類の砥粒を含む場合には、それらの合計含有量である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や砥粒の分散安定性の観点から、上記含有量は、通常、25重量%以下であることが適当であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、例えば8重量%以下である。
ここに開示される研磨用組成物において、該研磨用組成物に含まれる固形分に占める砥粒の含有量は、特に限定されない。上記砥粒の含有量は、本発明による効果を発揮しやすくする観点から、上記固形分全体の10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上であり、30重量%以上でもよく、40重量%以上でもよく、50重量%以上、60重量%以上、80重量%以上、90重量%以上または99重量%以上でもよい。また、特に限定するものではないが、いくつかの態様において、砥粒の含有量は、上記固形分全体の98重量%以下であってよく、95重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよい。なお、本明細書において研磨用組成物に含まれる固形分とは、砥粒(例えばシリカ粒子)の有し得る結合水が除去されない程度の温度、例えば60℃で、研磨用組成物から水分を蒸発させた後の残留分すなわち不揮発分をいう。
ここに開示される研磨用組成物は、アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。アルミナ粒子としては、例えばα-アルミナ粒子が挙げられる。かかる研磨用組成物によると、アルミナ粒子の使用に起因する品質低下が防止される。ここでいう品質低下としては、例えば、スクラッチや窪みの発生、アルミナの残留、砥粒の突き刺さり欠陥等が挙げられる。なお、本明細書において、所定の砥粒、例えばアルミナ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうち当該砥粒の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下であることをいう。アルミナ粒子の割合が0重量%である研磨用組成物、すなわちアルミナ粒子を含まない研磨用組成物が特に好ましい。また、ここに開示される研磨用組成物は、α-アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、シリカ粒子以外の粒子、すなわち非シリカ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。ここで、非シリカ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうち非シリカ粒子の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒として実質的にシリカ粒子のみを含む態様で好ましく実施され得る。ここで、実質的にシリカ粒子のみを含むとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうちシリカ粒子の割合が99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上、さらに好ましくは99.9重量%以上であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、酸を含む。酸は、研磨対象基板を化学的に研磨する働きをする。酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸、亜硝酸等が挙げられる。
有機酸の例としては、有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン、アミノ酸等が挙げられる。これらの有機酸に含まれる炭素原子数は、典型的には1~18程度であり、例えば1~10程度であることが好ましい。
有機酸の具体例としては、マロン酸、クエン酸、イソクエン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アジピン酸、シュウ酸、吉草酸、エナント酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ニコチン酸やピコリン酸等のピリジンカルボン酸、等の有機カルボン酸;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸;エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸、10-カンファースルホン酸、タウリン等の有機スルホン酸;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン等のアミノ酸;等が挙げられる。
研磨効率の観点から好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸等が例示される。なかでも好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸が挙げられる。
研磨用組成物中における酸(複数種類の酸を含有する研磨用組成物では、それらの合計)の濃度[重量%]は、特に限定されない。酸の濃度は、通常、0.1重量%以上が適当であり、0.5重量%以上が好ましく、0.8重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、1.2重量%以上でもよい。酸の濃度を高くすることで、実用的な研磨速度が得られやすい傾向がある。研磨用組成物における酸の濃度は、通常、15重量%以下が適当であり、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下でもよい。酸の含有量を制限することにより、研磨対象物(Ni-P基板)の面精度は向上しやすい。
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物に含有させ得る塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
いくつかの態様において、上記塩として、無機酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の無機酸塩を好ましく採用し得る。例えば、上述したアルカリ金属リン酸塩やアルカリ金属リン酸水素塩の他、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等を好ましく使用し得る。なかでも好ましい例として、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。アルカリ金属リン酸水素塩が特に好ましい。
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上(例えば2種または3種)を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、酸と、該酸とは異なる酸の塩とを組み合わせて用いることができる。上記酸は、好ましくは無機酸である。上記酸の塩は、好ましくは無機酸の塩である。
塩の濃度は特に限定されず、例えば0.01重量%以上10重量%以下であり得る。より高い使用効果を得る観点から、いくつかの態様において、塩の濃度は、例えば0.05重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.2重量%以上でもよい。塩の濃度は、通常、5重量%以下とすることが適当であり、2重量%以下でもよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下でもよい。
(水)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。上記イオン交換水は、例えば脱イオン水であり得る。
(添加剤A)
ここに開示される研磨用組成物は、添加剤Aを含む。上記添加剤Aは、分子内に85重量%以下のオキシエチレン(OE)単位を含むノニオン性界面活性剤である。かかる添加剤Aの使用により、研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減することができる。添加剤Aは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような効果が得られる理由は、例えば以下のように考えられる。添加剤Aは、その分子中に特定量のOE単位を含む構造を有することで砥粒(例えばシリカ粒子)に対して適度な吸着性を示し、これにより砥粒の分散安定性を高め、かつ砥粒同士の接触の妨げとなり、砥粒の凝集による粗大粒子の生成を抑制することによって、Ni-P基板の仕上げ研磨においてスクラッチの低減に寄与し得る。このように、添加剤Aは、主に砥粒に吸着することによってその効果を発揮するため、研磨レートの低下を抑制しつつスクラッチを低減し得ると考えられる。なお、上記のメカニズムは、実験結果に基づく本発明者らの考察であり、ここに開示される技術は上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。
添加剤AにおけるOE単位の含有量WOE(重量%)は、下記式(1):
OE=MOE/M×100 (1)
に基づいて算出することができる。上記式(1)中、MOEは、OE単位(CHCHO)の分子量に、添加剤Aの1分子内に含まれるOE単位数を乗じた値である。Mは、添加剤Aの分子量である。OE単位(CHCHO)の分子量および添加剤Aの分子量としては、化学式から算出される分子量が採用される。
OEは、85重量%以下の範囲で、添加剤Aの使用効果が得られるように適宜設定され得る。研磨レートの維持性を高める観点から、WOEは、例えば84重量%以下であってよく、83重量%以下でもよく、83重量%未満でもよく、80重量%以下でもよい。スクラッチ低減と研磨レートの低下抑制とをバランスよく両立する観点から、いくつかの態様において、WOEは、例えば70重量%以下であってよく、60重量%以下でもよく、50重量%以下でもよい。また、WOEは、添加剤Aの砥粒への吸着性の観点から、1重量%以上であることが適当であり、5重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよい。
添加剤Aの1分子あたりのOE単位数は、上述したいずれかのOE単位含有量を満たし、かつ適切な効果が得られるように適宜選択することができ、特定の範囲に限定されない。添加剤AのOE単位数は、例えば1~60の範囲から選択し得る。いくつかの態様において、上記OE単位数は、分散安定性等を考慮して、例えば40以下であってよく、30以下または30未満でもよく、27以下でもよく、25以下でもよく、23以下でもよく、21以下でもよい。また、添加剤Aの砥粒への吸着性等の観点から、上記OE単位数は、2以上であることが適当であり、3以上でもよく、4以上でもよく、5以上でもよい。なお、上記OE単位数とは、OE単位数の異なる混合物においては平均OE数を意味する。
添加剤Aとしては、1つ以上の疎水部と、1つ以上の親水部とを有しており、少なくとも1つの親水部にOE単位を含む化合物を用いることができる。取扱い容易性の観点から、常温(例えば25℃程度)で液状を呈する添加剤Aを好ましく採用し得る。
上記疎水部は、例えば炭化水素基であってもよく、炭素および水素以外の原子(リン、窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を含む基であってもよい。2以上の疎水部を有する添加剤Aにおいて、それらの疎水部は、同一であってもよく、異なっていてもよい。いくつかの好ましい態様では、上記疎水部は炭化水素基を含む。上記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、アリール基やアルキルアリール基等のように芳香環を含む炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、炭素-炭素二重結合等の不飽和結合を含む不飽和炭化水素基であってもよく、また、鎖状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。鎖状炭化水素基は、直鎖状および分岐状のいずれであってもよい。疎水部を構成する炭化水素基の好適例として、アルキル基およびアルケニル基が挙げられる。
添加剤Aの有する疎水部の数や、1つの疎水部(例えば炭化水素基)に含まれる炭素原子数は、適当なOE単位含有量が実現されるように選択することができる。疎水部としての効果を適切に発揮しやすくする観点から、1つの疎水部あたりの炭素原子数は、6以上であることが適当であり、8以上でもよく、10以上でもよく、12以上でもよく、14以上でもよく、16以上でもよい。また、添加剤Aの分散安定性等の観点から、1つの疎水部あたりの炭素原子数は、例えば24以下であってもよく、22以下でもよく、20以下でもよい。2つ以上の疎水部を有する添加剤Aにおいて、それらの疎水部の合計炭素原子数は、例えば50以下であってよく、45以下でもよく、40以下でもよい。添加剤Aの有する疎水部の数は、分散安定性等の観点から、1~3であることが好ましく、1つまたは2つであることがより好ましい。
添加剤Aが分子内に有する親水部の数は、例えば1~8(好ましくは1~6)程度であり得る。そのうち少なくとも1つはOE単位を含む親水部である。凝集防止効果を適切に発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、OE単位を含む親水部の数は、添加剤Aの1分子あたり、1~6であることが適当であり、1~4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
OE単位を含む親水部において、該OE単位は2以上連続していることが好ましい。すなわち、2以上のOE単位の繰り返し構造であるポリオキシエチレン(POE)鎖を含む親水部を有する添加剤Aが好ましい。添加剤Aは、OE単位を含む親水部(例えば、POE鎖を含む親水部)を2つ以上、例えば2~6(好ましくは2~3)程度有していてもよい。POE鎖を含む親水部を有する添加剤Aにおいて、該POE鎖におけるOE単位の繰り返し数は、凝集防止効果を適切に発揮しやすくする観点から、例えば40以下であってよく、30以下または30未満でもよく、27以下でもよく、25以下でもよく、23以下でもよく、21以下でもよい。また、添加剤Aの砥粒への吸着性等の観点から、上記OE単位の繰り返し数は、3以上でもよく、4以上でもよく、5以上でもよい。POE鎖を含む親水部を2以上有する添加剤Aでは、それらの親水部に含まれるOE単位の合計数が上記繰り返し数を満たすことが好ましい。
OE単位を含む親水部の他の例として、OE単位に加えてOE単位以外のオキシアルキレン単位(例えば、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位)とを含む親水部が挙げられる。この場合、かかる親水部に含まれるOE単位以外のオキシアルキレン単位の数は、OE単位の数より少ない(例えば、OE単位の数の1/2以下、1/5以下または1/10以下である)ことが好ましい。
また、添加剤Aは、OE単位を含む親水部に加えて、OE単位を含まない親水部を有していてもよい。そのような親水部の例としては、水酸基、アミド基、炭素原子数1~2のアルカノール基等が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、添加剤Aは、疎水部(例えば炭化水素基)とOE単位を含む親水部とがエーテル結合またはエステル結合を介して連結した構造を有し得る。そのような構造を有する添加剤Aの例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルケニルエステル等であって、ただしOE単位含有量が上述した所定量以下であるものが挙げられる。
添加剤Aの好ましい具体例としては、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンジオレート等であって、ただしOE単位含有量が上述した所定量以下であるものが挙げられる。
添加剤Aの分子量は、該添加剤Aの種類によって異なり得るため、特定の範囲に限定されない。研磨レートの低下を抑えつつスクラッチを低減する効果を適切に発揮しやすくする観点から、添加剤Aの分子量は、例えば200以上4000未満の範囲から選択し得る。いくつかの態様において、添加剤Aの分子量は、例えば300以上であってもよく、350以上でもよく、400以上でもよく、450以上でもよく、また3000以下であってもよく、2000以下でもよく、1400以下でもよく、1200以下でもよい。なお、添加剤Aの分子量は、化学式から算出される分子量であり得る。メーカー等により分子量の公称値が開示されている場合は、その公称値を用いることができる。
添加剤Aの使用量は、該添加剤Aの使用効果(研磨レートの低下を抑制しつつスクラッチを低減する効果)が適切に発揮されるように設定することができ、特定の範囲に限定されない。研磨用組成物における添加剤Aの含有量(複数種類の添加剤Aを含有する場合には、その合計量)は、例えば0.001mM以上(すなわち、0.001モル/L以上)であってよく、0.005mM以上でもよい。スクラッチ低減効果をより高める観点から、いくつかの態様において、添加剤Aの含有量は、0.01mM以上とすることが適当であり、0.02mM以上がより好ましく、0.03mM以上がさらに好ましい。また、添加剤Aの含有量は、例えば1.0mM以下とすることができ、0.7mM以下としてもよい。研磨レートの低下抑制の観点から、いくつかの態様において、添加剤Aの含有量は、0.5mM未満とすることが適当であり、0.2mM未満とすることが好ましく、0.15mM未満でもよく、0.1mM未満でもよく、0.08mM未満でもよい。
研磨用組成物における添加剤Aの含有量(複数種類の添加剤Aを含有する場合には、それらの合計量)は、例えば0.0001重量%以上または0.0003重量%以上とすることができる。スクラッチ低減効果を高める観点から、好ましい含有量は、0.0005重量%以上であり、例えば0.001重量%以上とすることができる。研磨レートの低下抑制の観点から、研磨用組成物における添加剤Aの含有量は、0.1重量%未満とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満であり、0.05重量%未満でもよく、0.03重量%未満でもよく、0.01重量%未満でもよい。
ここに開示される研磨用組成物において、該組成物に含まれる砥粒100重量部に対する添加剤Aの含有量は、例えば0.001重量部以上であってよく、0.003重量部以上とすることが好ましく、スクラッチ低減効果をより高める観点から0.005重量部以上でもよい。また、研磨レートの低下抑制の観点から、砥粒100重量部に対する添加剤Aの含有量は、10重量部以下とすることが適当であり、好ましくは5重量部未満、より好ましくは2重量部未満、さらに好ましくは1重量部未満であり、0.8重量部未満でもよく、0.5重量部未満でもよく、0.3重量部未満でもよい。
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物が酸化剤を含む場合、該研磨用組成物における酸化剤の含有量は、研磨対象物を酸化する速度、ひいては加工性を考慮して、有効成分量基準で0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であり、0.2重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよい。また、研磨対象物の面精度を高める観点から、研磨用組成物における酸化剤の含有量は、有効成分量基準で5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
(水溶性高分子)
ここに開示される研磨用組成物には、任意成分として水溶性高分子を含有させることができる。水溶性高分子は、研磨中の基板を保護し、スクラッチの発生を抑制する機能を発揮し得る。ここでいう水溶性高分子は、重量平均分子量(Mw)が凡そ2000以上、典型的には4000以上の化合物である。水溶性高分子は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。水溶性高分子の例としては、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー(ただし、添加剤Aに該当するものを除く。)、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。水溶性高分子の例としては、スルホン酸系ポリマー、ポリアクリル酸およびその塩、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンとポリアクリル酸および/または酢酸ビニルとの共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサンおよびその塩、等が挙げられるが、これらに限定されない。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
研磨用組成物の分散安定性の観点から、いくつかの態様において、アニオン性ポリマーを好ましく採用し得る。アニオン性ポリマーの一好適例として、スルホン酸系重合体が挙げられる。ここに開示される研磨用組成物に含まれる水溶性高分子のうちスルホン酸系重合体の割合は、例えば50重量%以上100重量%以下であってよく、好ましくは70重量%以上100重量%以下、より好ましくは90重量%以上100重量%以下であり、95重量%以上100重量%以下でもよく、99重量%以上100重量%以下でもよい。水溶性高分子として、1種または2種以上のスルホン酸系重合体のみを使用してもよい。
ここで、スルホン酸系重合体とは、該スルホン酸系重合体を構成する繰返し単位として、スルホン酸基を有する繰返し単位Xを少なくとも1種類含む重合体をいう。繰返し単位Xは、一分子中に少なくとも一つのスルホン酸基を有する単量体(モノマー)に由来する繰返し単位であり得る。スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸等が挙げられる。スルホン酸系重合体は、上記繰返し単位Xを2種類以上含んでいてもよい。スルホン酸系重合体は、スルホン酸基を有しない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。スルホン酸基を有しない繰返し単位は、スルホン酸以外のアニオン性官能基を有する繰返し単位であってもよく、アニオン性官能基を有しない繰返し単位であってもよい。
スルホン酸以外のアニオン性官能基を有する繰返し単位の一例として、カルボキシ基を有する繰返し単位Yが挙げられる。繰返し単位Yは、例えば、(メタ)アクリル酸に由来する繰返し単位であり得る。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の一方または両方を包含する概念である。ここに開示される研磨用組成物は、スルホン酸系重合体として、(メタ)アクリル酸に由来するカルボキシ基含有繰返し単位Yと繰返し単位Xとを含む(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体を含んでいてもよい。上記(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体の例としては、(メタ)アクリル酸/イソプレンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イソプレンスルホン酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体は、スルホン酸基を有さず、かつ(メタ)アクリル酸単量体由来ではない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。
スルホン酸系重合体の他の例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;等が挙げられる。
いくつかの態様において、カルボキシ基を有する繰返し単位Yを含まないスルホン酸系重合体を好ましく採用し得る。繰返し単位Y不含有のスルホン酸系重合体と添加剤Aとを組み合わせて含む研磨用組成物によると、研磨による欠陥(典型的にはスクラッチ)の発生が抑制されやすい。繰返し単位Y不含有のスルホン酸系重合体は、スルホン酸基およびカルボキシ基を有しない繰返し単位(例えば、アニオン性官能基を有しない繰返し単位)をさらに含んでいてもよい。
スルホン酸系重合体の一好適例として、該重合体の分子構造に含まれる全繰返し単位のモル数に占めるスルホン酸基含有繰返し単位Xのモル数の割合(モル比)が95%以上である重合体が挙げられる。例えば、実質的に繰返し単位Xからなるスルホン酸系重合体を水溶性高分子として使用し得る。かかるスルホン酸系重合体において、上記繰返し単位Xのモル比は、例えば98%以上であってよく、99.5%以上でもよく、99.9%以上でもよい。ここに開示される研磨用組成物のいくつかの態様において、上記水溶性高分子として、繰返し単位Xのモル比が100%であるスルホン酸系重合体、すなわちスルホン酸基を有する繰返し単位Xのみからなるスルホン酸系重合体を好ましく採用し得る。そのようなスルホン酸系重合体の例として、ここに開示されるスルホン酸基含有単量体のいずれか1種からなる単独重合体や、2種以上のスルホン酸基含有単量体からなる共重合体が挙げられる。上記単独重合体の例として、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸等が例示される。なかでもポリスチレンスルホン酸、すなわちスチレンスルホン酸の単独重合体(ホモポリマー)が好ましい。
スルホン酸系重合体は、中和された塩の形態で用いられてもよい。中和された塩としては、Na、K等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。欠陥低減の観点から、Na塩以外の塩(例えばカリウム塩)の形態、Na塩を陽イオン交換した形態、または未中和の形態のスルホン酸系重合体を好ましく採用し得る。
水溶性高分子(例えばスルホン酸系重合体)のMwは、例えば2000以上であってよく、2500以上でもよい。基板表面の保護性を高めて欠陥の発生を抑制する観点から、いくつかの態様において、水溶性高分子のMwは、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上であり、7000以上でもよく、9000以上でもよい。水溶性高分子のMwの上限は特に制限されないが、例えば150万以下であってよく、100万以下でもよく、50万以下でもよく、30万以下でもよく、20万以下でもよく、10万以下でもよく、7万以下でもよく、5万以下でもよく、3万以下でもよい。なお、水溶性高分子のMwとしては、GPCにより求められる重量平均分子量(水系、ポリエチレングリコール換算)を採用することができる。
研磨用組成物における水溶性高分子(好ましくは、スルホン酸系重合体)の濃度[重量%]は、特に限定されない。上記濃度は、例えば0.0001重量%以上であり得る。研磨中における基板の保護効果を高める観点から、上記濃度は、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上であり、0.002重量%以上でもよく、0.0025重量%以上でもよく、0.003重量%以上でもよい。また、研磨中における基板の保護性と研磨後の基板からの洗浄除去性とを好適に両立しやすくする観点から、水溶性高分子の濃度は、通常、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下であり、0.07重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよい。
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、pH調整等の目的で、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウム等の第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミン等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、添加剤A以外の界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。上記添加剤A以外の界面活性剤は、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性のいずれでもよい。上記防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられるが、これらに制限されない。あるいは、ここに開示される研磨用組成物は、組成の単純化等の目的で、上記で例示した公知の添加剤のいずれか1種または2種以上を使用しない組成であってもよい。
また、ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、所望により、アゾール類およびその誘導体(以下、包括的にアゾール類ともいう。)からなる群から選択される一種または二種以上の化合物を含んでいてもよい。アゾール類の例としてはトリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピロール、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン等が挙げられ、なかでも1H-ベンゾトリアゾールや1,2,4-トリアゾール等のベンゾトリアゾール類が好ましい。ここに開示される技術によると、添加剤Aの使用により、添加剤Aを使用しない場合と概ね同等以上の研磨レートを発揮しつつスクラッチを低減し得ることから、添加剤Aとアゾール類とを適切に組み合わせて用いることにより、研磨レートの低下抑制とスクラッチ低減とをより高いレベルでバランスよく両立し得る。
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されず、例えば0.5~6.5の範囲から選択し得る。研磨効率等の観点から、研磨用組成物のpHは、例えば4.0以下、好ましくは3.7以下、より好ましくは3.5以下であり、3.2以下でもよく、3.0以下でもよく、さらに好ましくは3.0未満であり、2.5以下でもよく、2.2以下でもよい。また、研磨用組成物のpHは、例えば1.0以上とすることができ、研磨後の基板表面の荒れを抑制する観点から、1.0より高くすることが適当であり、1.2以上とすることができ、1.4以上とすることが好ましく、より好ましくは1.5以上(例えば1.5超)であり、1.7以上でもよく、1.8以上でもよく、1.9以上でもよい。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。ここに開示される技術は、研磨用組成物のpHが1.0以上4.0以下(例えば1.5以上3.0未満)である態様で好ましく実施され得る。上述したpHは、Ni-P基板の仕上げ研磨用の研磨用組成物において特に好ましく適用され得る。
なお、ここに開示される技術において、研磨用組成物のpHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて測定することにより把握することができる。標準液は、例えば、シュウ酸塩pH標準液:pH1.68(25℃)、フタル酸塩pH標準液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH標準液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH標準液:pH10.01(25℃)である。
<濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物(ここではNi-P基板)に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物(濃縮液)は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で1.5倍~20倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、例えば2倍~10倍程度の濃縮倍率が適当である。かかる濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨用組成物(研磨液)を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
<多剤型研磨用組成物>
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(例えば水以外の成分)のうち一部の成分を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。好ましい一態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むパートA(典型的には、該砥粒の分散媒をさらに含む分散液)と、砥粒以外の成分の少なくとも一部(例えば、酸、添加剤A等)を含むパートBとを含んで構成されている。これらは、例えば使用前は分けて保管されており、使用時に混合して一液の研磨用組成物が調製され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤や、希釈用の水等がさらに混合され得る。
<研磨プロセス>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(ここではNi-P基板)の仕上げ研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。
その後、研磨対象物を洗浄する。例えば、研磨対象物をアルカリ性洗浄液で洗浄するアルカリ洗浄工程を実施する。アルカリ洗浄工程は、典型的には、研磨対象物の少なくとも研磨対象面にアルカリ性洗浄液を接触させることを含む。例えば、研磨対象物をアルカリ性洗浄液に浸漬することにより、研磨対象面にアルカリ性洗浄液を接触させることができる。上記アルカリ性洗浄液に浸漬した研磨対象物に超音波を付与する超音波処理を行ってもよい。上記超音波の付与に加えて、あるいは上記超音波の付与に代えて、ポリビニルアルコール製スポンジ、不織布、ナイロンブラシ等を用いるスクラブ洗浄を行ってもよい。
アルカリ洗浄工程に使用するアルカリ性洗浄液のpHは、例えば7.5以上であってよく、洗浄性向上の観点から、好ましくは8.0以上であり、より好ましくはpH8.5以上、例えば8.8以上である。また、洗浄による基板表面の荒れを防ぐ観点から、上記アルカリ性洗浄液のpHは、通常、11以下が適当であり、10以下が好ましく、9.5以下がより好ましい。アルカリ性洗浄液としては、上述した塩基性化合物の1種または2種以上を含む水溶液を用いることができる。なかでもアルカリ金属水酸化物の水溶液が好ましく、例えば水酸化カリウム水溶液を好ましく使用し得る。アルカリ洗浄工程は、市販のアルカリ洗浄液を用いて行ってもよい。
なお、研磨液を用いて行う研磨の終了後、アルカリ洗浄工程に移行する前に、研磨対象物を非アルカリ性のリンス液で洗浄してもよい。リンス液としては、純水やイオン交換水等の水や、酸性水溶液(例えば、研磨液から砥粒を除いた組成の水溶液)を用いることができる。
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板(Ni-P基板)の仕上げ研磨に用いられて、該Ni-P基板の表面のスクラッチ欠陥を効果的に低減し得る。上記Ni-P基板は、典型的には、基材の表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板である。上記基材の材質は、例えば、アルミニウム合金、ガラス、ガラス状カーボン等であり得る。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、アルミニウム合金製の基材上にニッケルリンめっき層を有するNi-P基板の仕上げ研磨に好ましく用いられ得る。
この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いた仕上げ研磨(ファイナルポリシング)工程と、上記仕上げ研磨工程に先立って行われる予備研磨工程と、を備えるNi-P基板の製造方法および該方法により製造されたNi-P基板が提供され得る。ここで、仕上げ研磨とは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。上記Ni-P基板製造方法は、上記仕上げ研磨工程後に行われる洗浄工程(例えばアルカリ洗浄工程)や、上記予備研磨工程に先立って行われる粗研磨工程をさらに含み得る。なお、予備研磨工程は、典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。これらのポリシング工程においては、ここに開示される研磨用組成物とは異なる組成の研磨用組成物を用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、上流の工程により表面粗さ20Å以下に調整された磁気ディスク基板(例えばNi-P基板)の研磨に好ましく用いられ得る。ここで表面粗さとは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))という。表面粗さ10Å以下に調整されたNi-P基板の研磨への適用が特に好ましい。これにより、高品位の表面を有するNi-P基板を生産性よく製造し得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において、使用量や含有量を表す「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<研磨用組成物の調製>
(例1)
砥粒(4.9%)、酸(1.5%)、OE単位数20のポリオキシエチレン(POE)ステアリルエーテル(0.05mM、0.006%)、過酸化水素(0.4%)および脱イオン水を含み、水酸化カリウムでpH2.0に調整された研磨用組成物を調製した。砥粒としては、平均一次粒子径18nmのコロイダルシリカを使用した。酸としては、リン酸(オルトリン酸)を使用した。上記POEステアリルエーテルは、炭素原子数18のアルキル基とポリオキシエチレン鎖とがエーテル結合した構造を有する、OE単位の含有量77%(分子量1150)のノニオン性界面活性剤である。
(例2~7,9,10)
例1で使用したPOEステアリルエーテルの代わりに、表1に示す種類および含有量のノニオン性界面活性剤を使用した他は、例1と同様にして各例に係る研磨用組成物を調製した。各添加剤のOE単位含有量、OE単位数、ポリオキシエチレン鎖に結合している炭化水素基の炭素原子数および分子量は、表1に示すとおりである。なお、表1に示す炭素原子数は、2以上の疎水部を有する添加剤(例2)ではそれらの合計数である。
(例8)
POEステアリルエーテルを使用しなかった他は、例1と同様にして本例に係る研磨用組成物を調製した。
(例11)
例1で使用したPOEステアリルエーテルの代わりに、分子量1000ポリエチレングリコール(OE単位数23)を使用した他は、例1と同様にして各例に係る研磨用組成物を調製した。
(例12)
例1で使用したPOEステアリルエーテルの代わりに1H-ベンゾトリアゾールを使用し、その含有量を0.01mMとした他は、例1と同様にして本例に係る研磨用組成物を調製した。
<Ni-P基板の研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で研磨対象基板の研磨を行った。研磨対象基板としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板(Ni-P基板)を、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
(研磨条件)
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨機の両面研磨機、型式「9B-5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
研磨対象基板の投入枚数:10枚((2枚/キャリア)×5キャリア×1バッチ)
研磨液の供給レート:130mL/分
研磨荷重:120g/cm
下定盤回転数:20rpm
研磨時間:5分
<洗浄>
研磨後のNi-P基板を純水に浸漬して周波数170kHzで超音波処理を行い、続いてアルカリ性洗浄液(スピードファム(株)から入手可能な洗浄液「CSC-102B」を体積基準で200倍に希釈したもの)に浸漬し、周波数170kHzの超音波を付与しながらポリビニルアルコール製スポンジによるスクラブ洗浄を行った。次いで上記基板を純水に浸漬して周波数950kHzで超音波処理を行った後、イソプロピルアルコール雰囲気中に引き上げて乾燥させた。
<研磨レート>
各例に係る研磨用組成物により研磨し、洗浄を行って得られた基板の中から計6枚(3枚/1バッチ)を無作為に選択し、各基板の研磨による基板の重量減少量を測定することにより研磨レートを算出し、これを平均することにより各例の研磨レートとした。具体的には、研磨レートは、次の計算式に基づいて求めた。
研磨レート[μm/分]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の片面面積[cm]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm]×研磨時間[分])×10
ここで、基板の片面面積は66cm、ニッケルリンめっきの密度は7.9g/cmとして計算した。得られた値を、例8の値を100%とする相対値に換算して、表1の「研磨レート 相対値」の欄に示した。
上記相対値に基づいて、添加剤の使用による研磨レートへの影響を以下の3水準で判定した。結果を表1の「研磨レート 判定」の欄に示した。
E:相対値が105%以上(優れた研磨レート低下抑制能)。
G:相対値が95%以上105%未満(良好な研磨レート低下抑制能)。
P:相対値が95%未満(研磨レート低下抑制能に乏しい)。
<スクラッチ評価>
各例に係る研磨用組成物により研磨し、洗浄を行って得られた基板の中から計5枚を無作為に選択し、各基板の両面にあるスクラッチを下記条件で検出した。5枚(計10面)のスクラッチ数の合計を10で除して基板片面あたりのスクラッチ数(本/面)を算出した。このようにして求めたスクラッチ数を、例8のスクラッチ数を100とする相対値に換算して表1の「スクラッチ 相対値」の欄に示した。
(スクラッチ検出条件)
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA7100
Spindle speed:10000rpm
測定範囲:17000-47000μm
Step size:4μm
Encoder multiplier:×16
検出チャンネル:P-Sc channel
上記相対値に基づいて、添加剤の使用によるスクラッチ低減効果の程度を以下の3水準で判定した。結果を表1の「スクラッチ 判定」の欄に示した。
E:相対値が65%未満(優れたスクラッチ低減能)。
G:相対値が65%以上80%未満(良好なスクラッチ低減能)。
P:相対値が80%以上(スクラッチ低減能に乏しい)。
Figure 2022056706000001
表1に示されるように、添加剤Aに該当する添加剤を含む例1~7の研磨用組成物によると、該添加剤を含まない例8の研磨用組成物との対比において、研磨レートを低下させることなくスクラッチを低減することができた。一方、添加剤Aに該当する添加剤の代わりに添加剤Aに該当しない添加剤のみを用いた例9~12の研磨用組成物では、研磨レートの低下を抑制しつつスクラッチを低減する効果は得られなかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、上述した各態様を適宜組み合わせたものも、本出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。

Claims (10)

  1. ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる研磨用組成物であって、
    砥粒と、酸と、水とを含み、添加剤Aをさらに含み、
    前記添加剤Aは、分子内に85重量%以下のオキシエチレン単位を含むノニオン性界面活性剤である、研磨用組成物。
  2. 前記添加剤Aは、オキシエチレン単位と炭化水素基とがエーテル結合またはエステル結合で結合した構造を有する化合物である、請求項1に記載の研磨用組成物。
  3. 前記添加剤Aは、炭素原子数が8~20の鎖状炭化水素基を1つまたは2つ有する化合物である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
  4. 前記添加剤Aは、オキシエチレン単位を25単位以下有する化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  5. 前記添加剤Aの含有量は、0.1mM未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  6. pHが3.0未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  7. 前記砥粒の平均一次粒子径は1nm以上50nm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  8. 前記砥粒はシリカ粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  9. さらに酸化剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象基板を仕上げ研磨する工程を含む、磁気ディスク基板製造方法。
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