JP2022155732A - 研磨用組成物および磁気ディスク基板の製造方法 - Google Patents

研磨用組成物および磁気ディスク基板の製造方法 Download PDF

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貴治 大山
Takaharu Oyama
恵 谷口
Megumi Taniguchi
陽介 ▲高▼水
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Abstract

【課題】Ni-P基板の研磨に用いられて、実用的な加工性を維持しながら、研磨中に基板と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗を低減することのできる研磨用組成物を提供すること。【解決手段】ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、水とを含む。この研磨用組成物は、さらに添加剤Aを含む。前記添加剤Aは、炭素数が4~12の炭化水素基、および1単位以上4単位以下のオキシエチレン単位を有する(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸である。そして、前記添加剤Aの含有量は0.1重量%未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨用組成物および磁気ディスク基板の製造方法に関する。
従来、高精度な表面が要求される基板の製造プロセスには、研磨液を用いて該基板の原材料である研磨対象基板を研磨する工程が含まれる。例えば、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板(以下、Ni-P基板ともいう。)の製造においては、一般に、より研磨効率を重視した研磨(一次研磨)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨(仕上げ研磨)とが行われている。Ni-P基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する技術文献として、特許文献1が挙げられる。
特開2001-89749号公報
Ni-P基板の研磨は、通常、キャリアに保持された状態の研磨対象物(Ni-P基板)に研磨パッドを押し付けて、研磨対象物と研磨パッドとの間に研磨液を供給し、研磨対象物と研磨パッドとを研磨対象物の面方向に沿って相対的に移動(例えば回転移動)させることによって行われる。キャリアは、研磨中、研磨対象物である基板の側面(端面)を保持する。特に限定されるものではないが、キャリアは、通常、ホールと称される保持孔を有する研磨対象物よりも薄厚に構成された部材であり、上記保持孔内に研磨対象物は配置される。上記キャリアは、研磨中、研磨対象物が研磨パッドから受ける作用に対する反作用力(当該研磨対象物が面方向に移動しようとする力)を、保持孔の側面で受けている。
ところで、近年、Ni-P基板の薄板化にともない、キャリアの薄板化が進んでいる。キャリアが薄板化すると、その剛性が低下し、作用する力に対して変形しやすくなる。キャリアが変形すると、例えば変形したキャリアの一部が研磨パッドに突き刺さるなど研磨パッドに作用し、例えば研磨パッドに傷を発生させる原因となり得る。このような研磨パッド傷は、研磨対象物の表面品質に影響するため、研磨パッドの交換等が必要となり、望ましくない。
上記キャリアにかかる反作用力は、研磨パッドと研磨対象物との間にかかる研磨抵抗(摩擦力)が大きくなると、それに比例して大きくなる。特に、砥粒としてコロイダルシリカを含む研磨液を用いる研磨では、砥粒の微細化によって研磨パッドと基板が密着し易くなることで、研磨パッド-研磨対象物間の摩擦力が大きくなりがちであり、キャリアにかかる負荷も大きくなる傾向がある。かかる研磨において、研磨中に研磨対象物と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗を低減できれば、キャリアにかかる負荷が緩和され、キャリアの変形を防止または抑制することができ、パッド傷発生を防止できると期待される。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、Ni-P基板の研磨に用いられ、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、水とを含む組成において、実用的な加工性を維持しながら、研磨中に基板と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗を低減できる研磨用組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、そのような研磨用組成物を用いて磁気ディスク基板を製造する方法を提供することである。
本明細書によると、ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、水とを含む。この研磨用組成物は、さらに添加剤Aを含む。前記添加剤Aは、炭素数が4~12のアルキル基、および1単位以上4単位以下のオキシエチレン単位を有する(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸である。そして、前記添加剤Aの含有量は0.1重量%未満である。
砥粒としてコロイダルシリカを含む研磨用組成物に上記添加剤Aを添加することで、Ni-P基板の研磨において、コロイダルシリカ砥粒および酸を含むことによる実用的な加工性を維持しながら、研磨中に基板と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗(基板-パッド間の研磨抵抗)を低減することができる。
いくつかの態様において、さらに酸化剤が含まれる。酸化剤を含むことにより、良好な加工性が得られやすい。
いくつかの態様に係る研磨用組成物は、pHが1~4の範囲内である。かかるpH環境下において、ここに開示される技術による効果は好ましく実現される。
いくつかの態様において、透過型電子顕微鏡観察に基づく前記コロイダルシリカの平均アスペクト比は1.0以上1.2以下である。コロイダルシリカの平均アスペクト比を1.0以上1.2以下とすることで、研磨中にコロイダルシリカが転がりやすくなり、研磨抵抗が低減されるため、加工が安定し、研磨後、高い表面品位を実現しやすい。かかる構成の研磨用組成物は、研磨後に高い表面品位が要求される研磨工程(例えば、仕上げ研磨工程)に好ましく使用され得る。
上記コロイダルシリカとしては、平均一次粒子径が1nm以上50nm以下のものを好ましく採用し得る。上記範囲の平均一次粒子径を有するコロイダルシリカを含む構成によると、研磨後、高い表面品位を実現しやすい。かかる構成の研磨用組成物は、研磨後に高い表面品位が要求される研磨工程(例えば、仕上げ研磨工程)に好ましく使用され得る。
いくつかの態様に係る研磨用組成物は、仕上げ研磨工程で用いられる。ここに開示される研磨用組成物は、コロイダルシリカ砥粒を含むので、研磨後に高い表面品位が要求される仕上げ研磨に特に好適である。ここに開示される研磨用組成物は、Ni-P基板の仕上げ研磨において、実用的な加工性を維持しながら、基板-パッド間の研磨抵抗を低減することができる。
また、この明細書によると、磁気ディスク基板の製造方法が提供される。この製造方法は、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いて研磨対象基板を研磨する工程を含む。かかる製造方法によると、磁気ディスク基板(Ni-P基板)を効率よく製造することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<研磨用組成物>
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒としてコロイダルシリカを含む。コロイダルシリカは、Ni-P基板の表面を機械的に研磨する働きを有する。コロイダルシリカとしては、例えば、ケイ酸ソーダ法シリカやアルコキシド法シリカのように、水相での粒子成長を経て合成されたコロイダルシリカの使用が好ましい。この種のコロイダルシリカを含むシリカ砥粒によると、高い研磨レートと良好な面精度とが好適に達成され得る。ここに開示されるシリカ砥粒がコロイダルシリカを含む場合、該シリカ砥粒に含まれるコロイダルシリカは、1種であってもよく、製造条件および/または物性の異なる2種以上であってもよい。コロイダルシリカは、表面改質されていてもよい。表面改質としては、例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾が挙げられる。いくつかの好ましい態様では、研磨用組成物に含まれる砥粒が、コロイダルシリカを単独で含む。コロイダルシリカを単独で用いることにより、高い研磨レートを保ちつつ、より良好な面精度(例えばスクラッチ数の低減された表面)が実現され得る。
コロイダルシリカの平均一次粒子径は特に限定されない。いくつかの態様において、BET法により測定されるコロイダルシリカの平均一次粒子径は1nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。加工性等の観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上、特に好ましくは10nm以上である。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、上記平均一次粒子径は、例えば100nm未満であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは35nm以下である。いくつかの好ましい態様において、上記平均一次粒子径は、例えば30nm以下としてもよく、例えば25nm以下(例えば20nm以下)としてもよい。
なお、ここに開示される技術において、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、BET法に基づいて求められる平均粒子径をいう。コロイダルシリカの平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積(BET値)から、D1(nm)=(6000/(真密度(g/cm)×BET値(m/g))の式により算出される。上記比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。後述の実施例についても同様である。
コロイダルシリカのTEM(Transmission Electron Microscope)観察に基づく個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は、特に限定されず、研磨レート等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い加工性を得る観点から、個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は、15nm以上であることがより好ましい。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、コロイダルシリカのD50は、200nm以下が適当であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは40nm以下(例えば30nm以下)である。
コロイダルシリカのTEM観察に基づく個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は、次の方法から求めることができる。まず、測定対象のコロイダルシリカを水に分散させたコロイダルシリカ分散液を用意する。そして、透過型電子顕微鏡(TEM、日立ハイテクノロジーズ社製STEM HD-2700)を用いて、測定対象のコロイダルシリカに含まれるTEMにて観察可能な所定個数(1000個以上)の粒子を、1視野内に100個程度観察可能な倍率(例えば200000倍~400000倍)で撮影し、TEM画像を取得する。そして、取得したTEM画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出する。当該コロイダルシリカを構成する個々の粒子について上記算出された粒子径を横軸に、累積個数(%)を縦軸にプロットすることにより、TEM観察に基づく個数基準の粒度分布は求められる。上記50%累積径(D50)は、上記粒度分布において累積個数が50%となる点に相当する粒子径である。上記粒度分布は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。後述の実施例についても同様である。
なお、上記所定個数、すなわち粒子毎の粒子径を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、1000個以上とすることが適当であり、1500個以上とすることが好ましい。上記所定個数の上限は特に制限されない。測定効率の観点から、上記所定個数は、例えば5000個以下であってよく、2500個以下でもよい。
コロイダルシリカの粒子形状は特に限定されず、例えば球形であってもよく、非球形であってもよい。ここに開示される研磨用組成物をNi-P基板の仕上げ研磨工程に使用する場合は、球形に近い形状が好ましい。
特に限定するものではないが、コロイダルシリカの平均アスペクト比は、原理上1.0以上であり、研磨能率の観点から、例えば1.03以上であってもよく、1.06以上でもよく、1.08以上でもよい。また、面精度を効率よく高めやすくする観点から、いくつかの態様において、上記平均アスペクト比は、1.30以下であることが適当である。コロイダルシリカの平均アスペクト比の低減によって、コロイダルシリカが転がり移動しやすくなるため、研磨抵抗が低減されることで加工が安定し、スクラッチがより好ましく低減され得る。そのような観点から、コロイダルシリカの平均アスペクト比は、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.18以下(例えば1.15以下)である。ここで、コロイダルシリカの平均アスペクト比とは、該コロイダルシリカを構成する個々の粒子の長径/短径比の平均値、すなわち個数平均アスペクト比をいう。以下、特記しない場合、本明細書において平均アスペクト比とは、上記個数平均アスペクト比を意味するものとする。
コロイダルシリカの平均アスペクト比は、TEM観察に基づき測定される。具体的には、上記TEM観察に基づく個数基準の粒度分布を得る際、取得したTEM画像から、各粒子画像に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出する。そして、上記所定個数の粒子のアスペクト比から、個数平均アスペクト比を算術平均することにより、全粒子の平均アスペクト比を求めることができる。上記各アスペクト比は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。後述の実施例についても同様である。
なお、上記所定個数、すなわち粒子毎のアスペクト比を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、1000個以上とすることが適当であり、1500個以上とすることが好ましい。上記所定個数の上限は特に制限されない。測定効率の観点から、上記所定個数は、例えば5000個以下であってよく、2500個以下でもよい。
研磨用組成物におけるコロイダルシリカの含有量は特に制限されず、例えば0.1重量%以上であり、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。上記含有量は、複数種類のコロイダルシリカを含む場合には、それらの合計含有量である。コロイダルシリカの含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や砥粒の分散安定性の観点から、上記含有量は、25重量%以下が適当であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、例えば8重量%以下である。
いくつかの好ましい態様では、研磨用組成物は、砥粒として実質的にコロイダルシリカのみを含むものであり得る。ここで、実質的にコロイダルシリカのみを含むとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうちコロイダルシリカの割合が99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上、さらに好ましくは99.9重量%以上であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、上記コロイダルシリカ以外のシリカ粒子(例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ等)を含有してもよい。また、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、非シリカ粒子を含有してもよい。非シリカ粒子としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも利用可能である。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α-アルミナ、α-アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α-アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。なお、上記コロイダルシリカ以外の粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。
ここに開示される研磨用組成物は、アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。アルミナ粒子としては、例えばα-アルミナ粒子が挙げられる。かかる研磨用組成物によると、アルミナ粒子の使用に起因する品質低下が防止される。ここでいう品質低下としては、例えば、スクラッチや窪みの発生、アルミナの残留、砥粒の突き刺さり欠陥等が挙げられる。なお、本明細書において、所定の砥粒、例えばアルミナ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうち当該砥粒の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下であることをいう。アルミナ粒子の割合が0重量%である研磨用組成物、すなわちアルミナ粒子を含まない研磨用組成物が特に好ましい。また、ここに開示される研磨用組成物は、α-アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、酸を含む。酸は、Ni-P基板を化学的に研磨する働きをする。酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸、亜硝酸等が挙げられる。
有機酸の例としては、有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン、アミノ酸等が挙げられる。これらの有機酸に含まれる炭素数は、例えば1~18程度であり、例えば1~10程度であることが好ましい。
有機酸の具体例としては、マロン酸、クエン酸、イソクエン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アジピン酸、シュウ酸、吉草酸、エナント酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ニコチン酸やピコリン酸等のピリジンカルボン酸、等の有機カルボン酸;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸;エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸、10-カンファースルホン酸、タウリン等の有機スルホン酸;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン等のアミノ酸;等が挙げられる。
研磨効率の観点から好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸等が例示される。なかでも好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸が挙げられる。
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物に含有させ得る塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
いくつかの態様において、上記塩として、無機酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の無機酸塩を好ましく採用し得る。例えば、上述したアルカリ金属リン酸塩やアルカリ金属リン酸水素塩の他、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等を好ましく使用し得る。なかでも好ましい例として、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。アルカリ金属リン酸水素塩が特に好ましい。
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上(例えば2種または3種)を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、酸と、該酸とは異なる酸の塩とを組み合わせて用いることができる。上記酸は、好ましくは無機酸である。上記酸の塩は、好ましくは無機酸の塩である。
研磨用組成物における酸のモル濃度(複数種類の酸を含む場合には、それらの合計モル濃度)は特に限定されず、0.01mol/L以上が適当であり、0.05mol/L以上が好ましく、0.08mol/L以上がより好ましく、例えば0.12mol/L以上である。酸のモル濃度を増加することで、実用的な研磨レートが得られやすい傾向がある。酸のモル濃度は、2mol/L以下が適当であり、1mol/L以下が好ましく、0.5mol/L以下がより好ましく、例えば0.3mol/L以下である。酸のモル濃度を制限することにより、研磨対象物の面精度は向上しやすい。
(水)
ここに開示される研磨用組成物は、水を含む。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。上記イオン交換水は、脱イオン水であり得る。
(添加剤A)
ここに開示される研磨用組成物は、添加剤Aを含む。上記添加剤Aは、炭素数が4~12のアルキル基、および1単位以上4単位以下のオキシエチレン単位(以下、「OE単位」ともいう。)を含む(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸である。そして、研磨用組成物中の添加剤Aの含有量は0.1重量%未満である。添加剤Aは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。研磨用組成物が複数種類の添加剤Aを含有する場合には、その合計量が上記含有量となる。添加剤Aを含む研磨用組成物を用いることにより、Ni-P基板の研磨において、実用的な加工性を維持しながら、研磨中の基板-パッド間の研磨抵抗(摩擦)を低減することができる。上記のような効果が得られる理由は、例えば以下のように考えられる。添加剤Aは、その分子中に特定範囲の炭素数のアルキル基を有することで研磨パッドに対して適度な吸着性を示し、これによって基板-研磨パッド間の研磨抵抗が低下すると考えられる。また、添加剤Aは、その分子中に特定単位数のOE単位を含むことで適度な水溶性を有し、コロイダルシリカに対して適度な吸着性を示し、コロイダルシリカと研磨対象基板との間の研磨抵抗の低減にも作用していると考えられる。このように、添加剤Aは、おもに研磨パッドやコロイダルシリカに作用(適度に吸着)することによって、実用的な加工性を維持しながら、研磨中の基板-パッド間の研磨抵抗低減に寄与していると考えられる。なお、上記のメカニズムは、実験結果に基づく本発明者らの考察であり、ここに開示される技術は上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。
添加剤Aは、上記の作用機能から、摩擦低減剤または研磨抵抗低減剤ということができる。ここで、摩擦低減剤および研磨抵抗低減剤は、当該添加剤を添加した研磨用組成物が、当該添加剤を添加しない他は同一組成の研磨用組成物と比べて、後述の実施例で評価される研磨抵抗90未満(相対値基準)を実現する添加剤をいうものとする。
添加剤Aとしてのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、リン酸(オルトリン酸、HPO)における1つまたは2つのOH基(リン原子に直接結合したOH基)の水素原子が、有機基に置換した化合物であり、リン酸由来のOH基を1つまたは2つ有している。上記有機基は、アルキル基、および、オキシエチレン単位を含む(ポリ)オキシエチレン鎖を有している。ここで、OE単位とは、次の化学式(1):-CH-CH-O-;により表される構造部分である。また、上記アルキル基と上記(ポリ)オキシエチレン鎖とは、エーテル結合している。すなわち、上記有機基の構造は、次の化学式(2):R-O-(CH-CH-O)n-;で表され得る。上記式(2)のうち、Rはアルキル基である。nは1以上4以下を満たす実数(例えば1,2,3、4)である。(CH-CH-O)nは、1単位のOE単位からなる構造であってもよく、2単位以上のOE単位の繰り返し構造であってもよい。なお、添加剤Aは、該添加剤Aの塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、添加剤Aの金属塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
添加剤Aにおける上記アルキル基の炭素数は、加工性維持と研磨抵抗低減とを両立するよう、必要な場合、OE単位数との関係を考慮して、4~12の範囲内で適切に設定され得る。上記炭素数は、6以上でもよく、8以上でもよく、10以上でもよい。また、上記炭素数は、10以下でもよく、8以下でもよく、6以下でもよい。上記アルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。上記アルキル基の具体例としては、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)等が挙げられる。
なお、添加剤Aがリン酸由来の2つのOH基の水素原子が有機基に置換された構造を有する場合(典型的にはリン酸ジエステルの場合)、上記炭素数およびOE単位数は、一分子内の合計数をいうものとする。
研磨用組成物に含まれる添加剤Aの量は0.1重量%未満である。このように制限された添加剤A量とすることにより、研磨用組成物中でのコロイダルシリカの凝集が防止または抑制され、研磨用組成物の調製がしやすく、また所期の研磨性能が発揮されやすい。添加剤Aの添加効果(典型的には研磨抵抗低減効果)を効果的に発現させる観点から、研磨用組成物中の添加剤Aの含有量は、例えば0.0001重量%以上であり、0.0003重量%以上とすることができる。いくつかの好ましい態様において、上記添加剤Aの含有量は、0.0005重量%以上であり、より好ましくは0.001重量%以上、さらに好ましくは0.003重量%以上であり、0.005重量%以上であってもよく、0.01重量%以上でもよく、0.03重量%以上でもよい。また、研磨用組成物中の添加剤Aの含有量は、例えば0.08重量%以下とすることができ、0.06重量%以下であってもよく、0.04重量%以下でもよく、0.02重量%以下(例えば0.01重量%未満)でもよい。添加剤Aの使用量を制限することにより、加工性が維持されやすく、また、研磨用組成物は分散安定性に優れる傾向がある。
ここに開示される研磨用組成物に含まれる添加剤Aの量は、当該研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカとの相対的関係によっても特定され得る。研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカ100重量部に対する添加剤Aの含有量は、例えば0.001重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上であり、さらに好ましくは0.05重量部以上であり、0.1重量部以上であってもよく、0.3重量部以上でもよく、0.5重量部以上でもよい。コロイダルシリカ量に対して添加剤Aの量が多くなるほど、添加剤Aのコロイダルシリカへの作用が好適に発揮され、基板-研磨パッド間の研磨抵抗が低減すると考えられる。また、コロイダルシリカ100重量部に対する添加剤Aの含有量は、凡そ10重量部以下とすることが適当であり、好ましくは8重量部未満、より好ましくは5重量部未満、さらに好ましくは3重量部未満であり、1重量部以下であってもよく、0.5重量部以下でもよく、0.3重量部未満でもよい。コロイダルシリカに対する添加剤Aの使用量を制限することにより、コロイダルシリカによる加工性が発揮されやすく、また、コロイダルシリカの凝集が生じにくく、研磨用組成物は良好な分散安定性を有するものとなりやすい。
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物が酸化剤を含む場合、該研磨用組成物における酸化剤の含有量は、研磨対象物を酸化する速度、ひいては加工性を考慮して、有効成分量基準で0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であり、0.2重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよい。また、研磨対象物の面精度を高める観点から、研磨用組成物における酸化剤の含有量は、有効成分量基準で5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
(水溶性高分子)
ここに開示される研磨用組成物には、任意成分として水溶性高分子を含有させることができる。水溶性高分子は、研磨中の基板を保護し、基板表面の欠陥(例えばスクラッチ)の発生を抑制する機能を発揮し得る。ここでいう水溶性高分子は、重量平均分子量(Mw)が凡そ2000以上、典型的には4000以上の化合物である。水溶性高分子は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。水溶性高分子の例としては、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。水溶性高分子の例としては、スルホン酸系ポリマー、ポリアクリル酸およびその塩、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンとポリアクリル酸および/または酢酸ビニルとの共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサンおよびその塩、等が挙げられるが、これらに限定されない。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
研磨用組成物の分散安定性の観点から、いくつかの態様において、アニオン性ポリマーを好ましく採用し得る。アニオン性ポリマーの一好適例として、スルホン酸系重合体が挙げられる。ここに開示される研磨用組成物に含まれる水溶性高分子のうちスルホン酸系重合体の割合は、例えば50重量%以上100重量%以下であってよく、好ましくは70重量%以上100重量%以下、より好ましくは90重量%以上100重量%以下であり、95重量%以上100重量%以下でもよく、99重量%以上100重量%以下でもよい。水溶性高分子として、1種または2種以上のスルホン酸系重合体のみを使用してもよい。
ここで、スルホン酸系重合体とは、該スルホン酸系重合体を構成する繰返し単位として、スルホン酸基を有する繰返し単位Xを少なくとも1種類含む重合体をいう。繰返し単位Xは、一分子中に少なくとも一つのスルホン酸基を有する単量体(モノマー)に由来する繰返し単位であり得る。スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸等が挙げられる。スルホン酸系重合体は、上記繰返し単位Xを2種類以上含んでいてもよい。スルホン酸系重合体は、スルホン酸基を有しない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。スルホン酸基を有しない繰返し単位は、スルホン酸以外のアニオン性官能基を有する繰返し単位であってもよく、アニオン性官能基を有しない繰返し単位であってもよい。
スルホン酸以外のアニオン性官能基を有する繰返し単位の一例として、カルボキシ基を有する繰返し単位Yが挙げられる。繰返し単位Yは、例えば、(メタ)アクリル酸に由来する繰返し単位であり得る。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の一方または両方を包含する概念である。ここに開示される研磨用組成物は、スルホン酸系重合体として、(メタ)アクリル酸に由来するカルボキシ基含有繰返し単位Yと繰返し単位Xとを含む(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体を含んでいてもよい。上記(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体の例としては、(メタ)アクリル酸/イソプレンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イソプレンスルホン酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体は、スルホン酸基を有さず、かつ(メタ)アクリル酸単量体由来ではない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。
スルホン酸系重合体の他の例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;等が挙げられる。
いくつかの態様において、カルボキシ基を有する繰返し単位Yを含まないスルホン酸系重合体を好ましく採用し得る。繰返し単位Y不含有のスルホン酸系重合体と添加剤Aとを組み合わせて含む研磨用組成物によると、研磨による欠陥(典型的にはスクラッチ)の発生が抑制されやすい。繰返し単位Y不含有のスルホン酸系重合体は、スルホン酸基およびカルボキシ基を有しない繰返し単位(例えば、アニオン性官能基を有しない繰返し単位)をさらに含んでいてもよい。
スルホン酸系重合体の一好適例として、該重合体の分子構造に含まれる全繰返し単位のモル数に占めるスルホン酸基含有繰返し単位Xのモル数の割合(モル比)が95%以上である重合体が挙げられる。例えば、実質的に繰返し単位Xからなるスルホン酸系重合体を水溶性高分子として使用し得る。かかるスルホン酸系重合体において、上記繰返し単位Xのモル比は、例えば98%以上であってよく、99.5%以上でもよく、99.9%以上でもよい。ここに開示される研磨用組成物のいくつかの態様において、上記水溶性高分子として、繰返し単位Xのモル比が100%であるスルホン酸系重合体、すなわちスルホン酸基を有する繰返し単位Xのみからなるスルホン酸系重合体を好ましく採用し得る。そのようなスルホン酸系重合体の例として、ここに開示されるスルホン酸基含有単量体のいずれか1種からなる単独重合体や、2種以上のスルホン酸基含有単量体からなる共重合体が挙げられる。上記単独重合体の例として、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸等が例示される。なかでもポリスチレンスルホン酸、すなわちスチレンスルホン酸の単独重合体(ホモポリマー)が好ましい。
スルホン酸系重合体は、中和された塩の形態で用いられてもよい。中和された塩としては、Na、K等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。欠陥低減の観点から、Na塩以外の塩(例えばカリウム塩)の形態、Na塩を陽イオン交換した形態、または未中和の形態のスルホン酸系重合体を好ましく採用し得る。
水溶性高分子(例えばスルホン酸系重合体)のMwは、例えば2000以上であってよく、2500以上でもよい。基板表面の保護性を高めて欠陥の発生を抑制する観点から、いくつかの態様において、水溶性高分子のMwは、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上であり、7000以上でもよく、9000以上でもよい。水溶性高分子のMwの上限は特に制限されないが、例えば150万以下であってよく、100万以下でもよく、50万以下でもよく、30万以下でもよく、20万以下でもよく、10万以下でもよく、7万以下でもよく、5万以下でもよく、3万以下でもよい。なお、水溶性高分子のMwとしては、GPCにより求められる重量平均分子量(水系、ポリエチレングリコール換算)を採用することができる。
研磨用組成物における水溶性高分子(好ましくは、スルホン酸系重合体)の濃度[重量%]は、特に限定されない。上記濃度は、例えば0.0001重量%以上であり得る。研磨中における基板の保護効果を高める観点から、上記濃度は、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上であり、0.002重量%以上でもよく、0.0025重量%以上でもよく、0.003重量%以上でもよい。また、研磨中における基板の保護性と研磨後の基板からの洗浄除去性とを好適に両立しやすくする観点から、水溶性高分子の濃度は、通常、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下であり、0.07重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよい。
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、pH調整等の目的で、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウム等の第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミン等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.0005重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、1重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
(pH)
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されず、例えば0.5~6.5の範囲から選択し得る。研磨効率等の観点から、研磨用組成物のpHは、例えば4.0以下であり、好ましくは3.7以下、より好ましくは3.5以下であり、3.2以下でもよく、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.2以下でもよい。また、研磨用組成物のpHは、例えば1.0以上とすることができ、1.0より高くすることが適当であり、研磨後の基板表面の荒れを抑制する観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上(例えば1.5超)であり、1.7以上でもよい。ここに開示される技術は、研磨用組成物のpHが1.0以上4.0以下(例えば1.5以上3.7以下)である態様で好ましく実施され得る。上述したpHは、Ni-P基板の仕上げ研磨用の研磨用組成物において特に好ましく適用され得る。
なお、ここに開示される技術において、研磨用組成物のpHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて測定することにより把握することができる。標準液は、例えば、シュウ酸塩pH標準液:pH1.68(25℃)、フタル酸塩pH標準液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH標準液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH標準液:pH10.01(25℃)である。
<濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物(濃縮液)は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で1.5倍~20倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、例えば2倍~10倍程度の濃縮倍率が適当である。かかる濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨用組成物(研磨液)を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
<多剤型研磨用組成物>
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(例えば水以外の成分)のうち一部の成分を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。いくつかの好ましい態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むパートA(例えば該砥粒の分散媒をさらに含む分散液)と、砥粒以外の成分の少なくとも一部(例えば、酸、添加剤A等)を含むパートBとを含んで構成されている。これらは、例えば使用前は分けて保管されており、使用時に混合して一液の研磨用組成物が調製され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤や、希釈用の水等がさらに混合され得る。
<研磨プロセス>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(ここではNi-P基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。例えば、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。
使用し得る研磨パッドは特に限定されない。例えば、硬質発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。スウェードタイプの研磨パッド(典型的にはポリウレタン製研磨パッド)は、加工性に優れ、また基板表面の高品質化を実現しやすい。なお、ここに開示される技術で用いられる研磨パッドは砥粒を含まない。
スウェードタイプの研磨パッドは、バフパッドであってもよく、表面をバフ加工していないノンバフ状態にある研磨パッド(いわゆるノンバフパッド)であってもよい。ここで、「バフ加工」とは、砥石等を利用して表面を荒削りする処理であって、典型的には、研磨パッドの表層部分を除去してポアの開口径や開口率を調整する処理のことをいう。
特に限定するものではないが、研磨パッドとしてノンバフパッドを使用する場合、研磨対象基板(研磨対象物)の研磨の前に、パッドドレッシング処理と、ダミー研磨とを行い、該研磨パッドの研磨面を所望の状態に調整することがある。ここで、パッドドレッシング処理は、パッドコンディショナー(パッドドレッサー)を用いて研磨パッドの表層を削り取る処理であり、処理後の研磨パッドの表面には、ポアや毛羽立った部分が存在し得る。このような表面の研磨パッドに対してダミー基板(典型的には、研磨対象基板の同種の基板)を用いた研磨を行うことで、上記パッドドレッシング処理後の研磨パッドの表面状態が、続く研磨対象基板の研磨に適した状態となるように調整される。一方で、このように表面状態が整えられた研磨パッドは、バフパッドに比べ平滑なパッド表面となり、かつポア径も小さい(例えば20μm程度)ことから、研磨対象基板と吸着しやすくなっている。そのため、基板-研磨パッド間の研磨抵抗は、このような研磨パッドの使用において、高くなりやすい傾向がある。このような研磨パッド(典型的にはノンバフパッド)を用いた研磨対象基板(Ni-P基板)の研磨において、ここに開示される研磨用組成物を用いることによる研磨抵抗低減効果は、効果的に発揮され得る。
また、ここに開示される研磨方法では、研磨対象物は、キャリアによって保持された状態で研磨装置にセットされ、研磨が実施される。キャリアは、研磨中、研磨対象物である基板の側面を保持するものであり、特に限定されるものではないが、通常、ホールと称される保持孔を有する部材であり、上記保持孔内に研磨対象物が配置されて、研磨が行われる。
キャリアの材質は特に限定されず、例えば、アラミド樹脂やポリカーボネート樹脂等の樹脂材料、繊維強化プラスチック(FRP)等の複合樹脂材料、これらを組み合わせた複合材が用いられる。かかる複合材としては、アラミド不織布にエポキシ樹脂を含浸させたアラミド積層板のキャリアが挙げられる。ここに開示される技術は、アラミド樹脂等の樹脂製キャリアを用いる態様に好適である。樹脂製キャリアを用いる態様において、ここに開示される技術による研磨抵抗低減効果に基づき、当該研磨抵抗を原因とするキャリアの変形を防止または抑制し得る。
また、キャリアは、通常、研磨対象物よりも薄厚に構成されている。キャリアの厚みは、研磨対象物等に応じて適当な厚みを有するものが用いられ、特定の範囲に限定されない。キャリアの厚みは、例えば1.5mm以下であり、通常は1mm以下であり、0.7mm以下程度であってもよく、0.5mm以下程度でもよい。このような厚さを有するキャリアは、研磨時にかかる負荷が大きくなると変形しやすいところ、ここに開示される技術を適用することにより、研磨抵抗が低減され、キャリアにかかる負荷が緩和され、当該負荷による変形を防止または抑制することができる。キャリアの厚みの下限値は、0.1mm以上(例えば0.2mm以上)程度であり得る。
上記のように研磨対象物を研磨した後、研磨対象物を洗浄する。例えば、研磨対象物をアルカリ性洗浄液で洗浄するアルカリ洗浄工程を実施する。アルカリ洗浄工程は、例えば、研磨対象物の少なくとも研磨対象面にアルカリ性洗浄液を接触させることを含む。例えば、研磨対象物をアルカリ性洗浄液に浸漬することにより、研磨対象面にアルカリ性洗浄液を接触させることができる。上記アルカリ性洗浄液に浸漬した研磨対象物に超音波を付与する超音波処理を行ってもよい。上記超音波の付与に加えて、あるいは上記超音波の付与に代えて、ポリビニルアルコール製スポンジ、不織布、ナイロンブラシ等を用いるスクラブ洗浄を行ってもよい。
アルカリ洗浄工程に使用するアルカリ性洗浄液のpHは、例えば7.5以上であってよく、洗浄性向上の観点から、好ましくは8.0以上であり、より好ましくはpH8.5以上、例えば8.8以上である。また、洗浄による基板表面の荒れを防ぐ観点から、上記アルカリ性洗浄液のpHは、11以下が適当であり、10以下が好ましく、9.5以下がより好ましい。アルカリ性洗浄液としては、上述した塩基性化合物の1種または2種以上を含む水溶液を用いることができる。なかでもアルカリ金属水酸化物の水溶液が好ましく、例えば水酸化カリウム水溶液を好ましく使用し得る。アルカリ洗浄工程は、市販のアルカリ洗浄液を用いて行ってもよい。
なお、研磨液を用いて行う研磨の終了後、アルカリ洗浄工程に移行する前に、研磨対象物を非アルカリ性のリンス液で洗浄してもよい。リンス液としては、純水やイオン交換水等の水や、酸性水溶液(例えば、研磨液から砥粒を除いた組成の水溶液)を用いることができる。
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板(Ni-P基板)の研磨に用いられる。上記Ni-P基板は、基材の表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板である。上記基材の材質は、例えば、アルミニウム合金、ガラス、ガラス状カーボン等であり得る。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、アルミニウム合金製の基材上にニッケルリンめっき層を有するNi-P基板の研磨に好ましく用いられ得る。
この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いた研磨工程と、該研磨工程後に行われるアルカリ洗浄工程と、を備えるNi-P基板の製造方法および該方法により製造されたNi-P基板が提供され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、Ni-P基板のファイナルポリシング工程(仕上げ研磨工程)に特に好ましく使用され得る。この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いたファイナルポリシング工程と、該ファイナルポリシング工程後に行われるアルカリ洗浄工程と、を備えるNi-P基板の製造方法および該方法により製造されたNi-P基板が提供され得る。なお、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。上記基板の製造方法は、上記研磨工程の前に行われる粗研磨工程や予備研磨工程をさらに含み得る。
ここに開示される研磨用組成物は、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程に用いられてもよい。ここで、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程とは、粗研磨工程と最終研磨工程との間の予備研磨工程を指す。予備研磨工程は、少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。上記研磨用組成物は、いずれのポリシング工程にも使用可能であり、これらのポリシング工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、ファイナルポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、上流の工程により表面粗さ20Å以下に調整されたNi-P基板の研磨に好ましく用いられ得る。ここで表面粗さとは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))という。表面粗さ10Å以下に調整されたNi-P基板の研磨への適用が特に好ましい。これにより、高品位の表面を有するNi-P基板を生産性よく製造し得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において、使用量や含有量を表す「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<研磨用組成物の調製>
(実施例1)
砥粒としてのコロイダルシリカ(5重量%)、酸(0.15mol/L)、炭素数が4のアルキル基およびオキシアルキレン単位を1単位含むオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(0.05重量%)、過酸化水素(0.4重量%)および脱イオン水を含み、水酸化カリウムでpH2.0に調整された研磨用組成物を調製した。コロイダルシリカの平均一次粒子径は18nmであり、TEM観察に基づく個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は24nmであった。また、コロイダルシリカの平均アスペクト比は1.11であった。
(実施例2~8、比較例2~6)
実施例1で使用したオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の代わりに、表1に示すアルキル基の炭素数、OE単位数、および含有量の(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸を使用した他は実施例1と同様にして、各例に係る研磨用組成物を調製した。なお、比較例5で使用したポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、リン酸ジエステル構造を有しており、この例について表1に示すアルキル基の炭素数およびOE単位数は、一分子内の合計数である。また、比較例3,5で使用したポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、ナトリウム塩の形態で添加した。比較例3,5の添加剤含有量はNa塩としての含有量である。
(比較例1)
オキシエチレンアルキルエーテルリン酸を使用しなかった他は実施例1と同様にして本例に係る研磨用組成物を調製した。
(比較例7~14)
実施例1で使用したオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の代わりに、添加剤として表1に示す種類および含有量の化合物を使用した他は実施例1と同様にして各例に係る研磨用組成物を調製した。なお、表1では、添加剤として使用した化合物におけるアルキル基の炭素数およびOE単位数を適宜示している。
<Ni-P基板の研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で研磨対象基板の研磨を行った。研磨対象基板としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板(Ni-P基板)を、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.75mmであった。
(研磨条件)
研磨装置:CETR社製の卓上研磨機、型式「CP-4」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ(フジボウ社製)
研磨荷重:131g/cm
研磨定盤回転数:70rpm
ヘッド回転数:70rpm
研磨液の供給レート:13mL/分
研磨時間:300秒
なお、基板は、ヘッド部分に貼り付けられたキャリア(厚み1.5mm)に固定した。
<洗浄>
研磨後のNi-P基板を純水に浸漬して周波数170kHzで超音波処理を行い、続いてアルカリ性洗浄液(スピードファム(株)から入手可能な洗浄液「CSC-102B」を体積基準で200倍に希釈したもの)に浸漬し、周波数170kHzの超音波を付与しながらポリビニルアルコール製スポンジによるスクラブ洗浄を行った。次いで上記基板を純水に浸漬して周波数950kHzで超音波処理を行った後、イソプロピルアルコール雰囲気中に引き上げて乾燥させた。
<研磨レート>
各例に係る研磨用組成物により研磨し、洗浄を行って得られた基板につき、研磨による基板の重量減少量を測定することにより研磨レートを算出し、これを平均することにより各例の研磨レートとした。具体的には、研磨レートは、次の計算式に基づいて求めた。
研磨レート[μm/分]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の片面面積[cm]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm]×研磨時間[分])×10
ここで、基板の片面面積は66cm、ニッケルリンめっきの密度は7.9g/cmとして計算した。得られた値を、比較例1の値を100とする相対値に換算して、表1の「研磨レート」の「相対値」の欄に示した。
得られた相対値から、加工性(研磨レート)を以下の2水準で判定した。結果を表1の「研磨レート」の「判定」の欄に示した。
A(Acceptable):相対値80以上(実用的な加工性を有する)
P(Poor):相対値80未満
<研磨抵抗の測定>
各例に係る研磨用組成物を用いた研磨中の研磨対象基板と研磨パッドとの間の研磨抵抗を研磨装置から取得した。具体的には、研磨対象基板を保持するヘッドに対してX軸方向(水平方向)にかかる力Fxを、研磨対象基板と研磨パッドとの間の研磨抵抗とし、研磨開始180秒後から研磨終了(300秒)までの120秒間の力Fxの平均値を研磨抵抗として測定した。そして、得られた値を、比較例1の値を100とする相対値に換算して、表1の「研磨抵抗」の「相対値」の欄に示した。
得られた研磨抵抗の相対値につき、研磨抵抗低減効果の程度を以下の2水準で判定した。結果を表1の「研磨抵抗」の「判定」の欄に示した。
E(Excellent):相対値90未満
P(Poor):相対値90以上
Figure 2022155732000001
表1に示されるように、Ni-P基板の研磨において、コロイダルシリカ砥粒と、酸と、水とを含む研磨用組成物に、添加剤として、炭素数が4~12のアルキル基、および1単位以上4単位以下のオキシエチレン単位を有する(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸(添加剤A)を0.1%未満の割合で添加した実施例1~8では、上記添加剤を含まない比較例1の研磨用組成物と比較して、実用的な加工性を維持しながら、基板と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗が有意に低下した。一方、添加剤Aに該当しない添加剤を用いた比較例2~5,7~14では、研磨抵抗低減効果が得られないか、その添加効果は乏しかった。また、添加剤Aの含有量が0.1%以上であった比較例6の研磨用組成物は、凝集による相分離のため研磨を実施できなかった。表1の「研磨抵抗」の欄、および「研磨レート」の欄に記載の「-」は、研磨不可のための不実施を示している。
上記の結果から、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、水とを含み、さらに、炭素数が4~12のアルキル基、および1単位以上4単位以下のオキシエチレン単位を有する(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸を0.1重量%未満の割合で含む研磨用組成物によると、Ni-P基板の研磨において、実用的な加工性を維持しながら、研磨中に基板と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗を低減できることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (7)

  1. ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物であって、
    砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、水とを含み、
    さらに添加剤Aを含み、
    前記添加剤Aは、炭素数が4~12のアルキル基、および1単位以上4単位以下のオキシエチレン単位を含む(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸であり、
    前記添加剤Aの含有量は0.1重量%未満である、研磨用組成物。
  2. さらに酸化剤を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
  3. pHが1~4の範囲内である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
  4. 前記コロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡観察に基づく平均アスペクト比が1.0以上1.2以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  5. 前記コロイダルシリカの平均一次粒子径は1nm以上50nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  6. 仕上げ研磨工程で用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象基板を研磨する工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法。
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