JP6999891B2 - 凍結乾燥助剤、及びそれを用いた凍結乾燥加工食品組成物の調製方法 - Google Patents
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Description
(I-1)アルファ化米粉を有効成分とする凍結乾燥助剤。
(I-2)デキストリンを含まない(I-1)記載の凍結乾燥助剤。
(I-3)アルファ化米粉からなる凍結乾燥助剤。
(I-4)アルファ化米粉末が、モード径が50~100μmの粒度を有するものである(I-1)~(I-3)のいずれかに記載する凍結乾燥助剤。
(I-5)Brix が10%以上、好ましくはBrix値が 10~40%の液状または半液状の可食性組成物を凍結乾燥するために使用される、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する凍結乾燥助剤。
(I-6)上記液状または半液状の可食性組成物が、可食性植物の可食物の搾汁、ペースト、または抽出物である、(I-5)に記載する凍結乾燥助剤。
(I-7)上記可食性植物が果物または野菜である、(I-5)または(I-6)に記載する凍結乾燥助剤。
(II-1)Brix値が10%以上、好ましくはBrix値が10~40%の液状または半液状の可食性組成物を、(I-1)~(I-7)のいずれかに記載する凍結乾燥助剤の存在下で凍結乾燥する工程を有する、凍結乾燥加工食品の調製方法。
(II-2)凍結乾燥工程後に、凍結乾燥物を粉砕する工程を有する、(II-1)に記載する凍結乾燥加工食品組成物の調製方法。
(II-3)上記液状または半液状の可食性組成物が、可食性植物の可食部の搾汁、ペースト、または抽出物である、(II-1)または(II-2)に記載する調製方法。
(II-4)上記可食性植物が果物または野菜である、(II-3)に記載する調製方法。
本発明の凍結乾燥助剤は、アルファ化米粉を有効成分とすることを特徴とする。好ましくはアルファ化米粉を有効成分とし、デキストリンを含まないことを特徴とする。より好ましくはアルファ化米粉を有効成分とし、デキストリンを始めとする従来公知の凍結乾燥助剤(例えば、シクロデキストリン、マルトデキストリン、可溶性デンプン、乳糖、粉飴、コンスターチ、結晶セルロースなどが挙げられる)を含まないことを特徴とする。さらに好ましくはアルファ化米粉からなることを特徴とする。その形状は、液状または半液状の可食性組成物への分散性及び溶解性から、粉末状または顆粒状である。なお、アルファ化米粉をそのまま凍結乾燥助剤として用いる場合、アルファ化米粉の形状がそのまま凍結乾燥助剤の形状になる。
・250mgのアルファ化米粉を、遠沈管に量りとり、蒸留水50mlを加え、60℃水浴中で30分撹拌する。
・3200rpm、30分、室温下で遠心分離する。
・沈殿部分の重量を測定し、1gの米粉が吸収した水の量として算出する。具体的には、沈殿部分の重量から遠沈管に量りとったアルファ化米粉の重量250mgを差し引くことで米粉が吸収した水分量を算出し、米粉1g当たりが吸収した水分量に換算した。
本発明は凍結乾燥加工食品組成物の調製方法に関し、当該方法は下記(1)の凍結乾燥工程、または下記(1)の凍結乾燥工程及び(2)の粉砕工程を有する。
(1)Brix値が10%以上の液状または半液状の可食性組成物を、上記(I)で説明した本発明の凍結乾燥助剤の存在下で凍結乾燥して凍結乾燥物を取得する工程、
(2)上記(1)の工程で調製した凍結乾燥物を粉砕する工程。
当該凍結乾燥工程は、Brix値が10%以上の液状または半液状の可食性組成物を、前述する本発明の凍結乾燥助剤の存在下で凍結乾燥することを特徴とする。
当該工程は、上記凍結乾燥工程で得られた凍結乾燥物を破砕(粉砕)して、粉末状の可食性組成物、言い換えれば粉末状の凍結乾燥加工食品組成物を調製する工程である。
乾燥助剤(アルファ化米粉、デキストリン)の添加が凍結乾燥条件に与える影響を調べるため、ショ糖濃度0質量%(Brix値0%)~40質量%(Brix値40%)およびペクチン0質量%~1質量%を含む水溶液を用いて凍結乾燥試験を行った。
・モード径:100μm
・水分含量:6.0質量%
・冷時粘度:25mPa・s(5%, 30℃, 30rpm, 60sec、B型粘度計)
・膨潤度:8.0
・pH:7.23。
具体的にはモデル系試験として、ショ糖濃度0、10、15、30、及び40質量%の水溶液それぞれについて、乾燥助剤無添加区、並びに乾燥助剤としてデキストリン添加区(10質量%)、およびアルファ化米粉添加区(10質量%)を設定した。凍結乾燥機の乾燥中の棚温度は-10、0、10、20℃の4区を設定した。さらに果実搾汁等を乾燥する場合を想定し、ペクチン(GENU[登録商標]LMペクチン、LM104AS、三晶株式会社)0、0.5、および1.0質量%添加区を設定した。乾燥試験は直径9cmのプラスチックシャーレを用いて、ショ糖濃度、ペクチン濃度および乾燥助剤濃度に応じて水分量が27.5ml/シャーレとなるよう被験試料を分注し、-35℃フリーザーで凍結した。
ペクチン無添加区の結果を表1に示す。乾燥助剤無添加区をコントロールと表記した。アルファ化米粉添加区では棚温度-10℃~20℃まで、すべてのショ糖濃度区(0~40質量%)で均一な乾燥が可能だった。無添加区(コントロール)およびデキストリン添加区ではショ糖濃度の上昇、また、棚温度を上昇に伴って乾燥不良となった。結果は省略するが、ペクチン添加区はペクチン濃度0.5質量%添加区および1質量%添加区ともに下記表1に示すペクチン無添加区と同様の結果となった。
実験例1から、ショ糖溶液の凍結乾燥において、デキストリン添加区およびアルファ化米粉添加区では蒸発潜熱を補うための棚温度を乾燥助剤無添加区より高く保持しても凍結乾燥が可能であり、アルファ化米粉添加区ではさらに高温でも良好な乾燥が可能であることが示された。そこで、ショ糖濃度が同一で乾燥助剤無添加区、デキストリン添加区、アルファ化米粉添加区それぞれの棚温度を-10℃、0℃、および20℃に設定した場合の乾燥に要した時間を測定した。
具体的にはモデル系試験として、ショ糖濃度20質量%の水溶液について、乾燥助剤無添加区(コントロール)、並びに乾燥助剤としてデキストリン添加区(10質量%)、およびアルファ化米粉添加区(10質量%)を設定した。なお、デキストリン及びアルファ化米粉は、実験例1で使用したものを同様に使用した。
乾燥助剤と棚温度が乾燥時間に与える影響を表2に示す。乾燥助剤無添加区をコントロールと表記した。
すもも(ソルダム)の生(果肉部)をペースト状にして、下記の方法により凍結乾燥した粉末(凍結乾燥助剤なし、凍結乾燥助剤としてアルファ化米粉[5質量%]、またはデキストリン[5質量%]を配合)について、Brix値、総ポリフェノール量、及びアスコルビン酸の含有量を測定した。
1.すももを洗浄してふたつに割り、種を取り出しておく。
2.アスコルビン酸を最終濃度が0.5質量%となるように添加し、ブレンダー及びミキサーを用いてペースト化する。
3.これを、凍結乾燥助剤添加なし(無添加区)、デキストリン添加区、及びアルファ米粉添加区の3つの試験区に分け、各試験区毎にシャーレに分注し、デキストリン添加区及びアルファ米粉添加区には、それぞれデキストリン(和光純薬工業製)及びアルファ化米粉(180~200メッシュ、モード径50~80μm)を、最終濃度が5質量%となるように添加し、十分に混合する。
4.これを-20℃で一晩凍結する。
5.凍結した各試料(シャーレ入り)を、真空凍結乾燥機(日本テクノサービス製FD-10BM)に入れ、-30℃~20℃まで段階的に温度を上げて乾燥させる。
6.乾燥試料が出来たら取り出し、ブレンダーを用いて粉末状にする。なお、粉末化は、温度条件18~22℃、湿度条件90%以下で行う。
(a)Brix測定法
アスコルビン酸を添加しないすももペーストについて、これを適宜純水で希釈して、(株)アタゴ製のデジタル糖度計PR-101にて測定した。
1.乾燥粉末1g(生果ペーストにあっては10g)、2%メタリン酸溶液20mlを乳鉢に取り、石英砂を加えて磨砕する
2.固形物を含む全量を2%メタリン酸溶液で50mlに定容する。
3.遠沈管に移し、8,000rpm、5分、室温下で遠心分離する。
4.上清をフィルタ濾過して得られた濾液を、還元型アスコルビン酸試料とする。
5.上清5mlにDTT溶液(DTT200mgを66mM KH2PO428ml、66mM Na2HPO4 12mlの混合液に溶解)1ml、中和液((NaOH 2.86g、KH2PO4 3.27g、Na2HPO4 4.54gを蒸留水100mlに溶解)1mlを加え混合した後、10分間放置。
6.フィルタ濾過して得られた濾液を、酸化型アスコルビン酸試料とする。
移動相:1質量% メタリン酸
流速:1ml/min
試料注入量:10μl
検出器:UV 242nm
カラム:Inertsil 120A(GL science製) 4.5×250mm
カラム温度:40℃。
1.被験試料1~5gを測りとり、熱水50mLを加え、80℃以上の水浴中で60分間熱水抽出する。
2.冷後、メスフラスコで100mLにメスアップする。
3.濾紙(5A)で濾過する(最初の20mLは廃液とする)。濾液を試料溶液とする。
4.試料溶液5mLに2倍希釈したフォーリンチオカルト試薬5mL加え、室温で3分間放置する。
5.10質量%の炭酸ナトリウム溶液5mL加え、室温で60分間放置後、3000回転/分、5分間遠心する。
6.上清を吸光度700nmで測定する。
結果を表3に示す。
可食性組成物を乾燥助剤を使用せずに凍結乾燥し、粉砕した場合、乾燥助剤としてアルファ化米粉またはデキストリンを使用して凍結乾燥し、粉砕した場合のそれぞれについて、得られた乾燥粉末の流動性及び付着性を評価した。
濃縮還元ブドウ果汁(セブンプレミアムグレープ果汁100、Brix約12%)を可食性組成物として用いた。アルファ化米粉またはデキストリンを乾燥助剤としてそれぞれ20%(w/v)添加した試験区(アルファ化米粉添加区、デキストリン添加区)、および対照区として乾燥助剤を加えない試験区(乾燥助剤無添加区、つまり果汁の乾燥粉末)を設けた。なお、アルファ化米粉及びデキストリンは実験例1で使用したものを同様に使用した。先の実験例に示した通り、可溶性成分濃度が高い液体を真空凍結乾燥する場合、コラプス現象を抑えるため、乾燥助剤に応じた棚温度を維持する必要があるため、アルファ化米粉添加区では0℃、デキストリン添加区では-20℃で凍結乾燥(トラップ温度-40℃)を行った。乾燥助剤無添加区は同条件では乾燥が困難であるため、東京理科機械製FDU-2110を用いて、サンプル温度成り行き、トラップ温度-80℃の条件下で乾燥した。
(a) 安息角による流動性(凝集性)の評価
各乾燥粉末(乾燥助剤無添加区、アルファ化米粉添加区、デキストリン添加区)の安息角は底面限界法で測定した。すなわち、ブレンダーで粉砕した粉末をふるい(目空き0.5mm)に移し、開口径10mmの三角すいを通して直径6cmの円形台に積み上げた。三角すいから受け台までは5cmとした。受け台円周部分から粉末がこぼれ落ちるまで積み上げたのち、停止安息角を測定した。また対照のため乾燥助剤(アルファ化米粉、デキストリン)自体の安息角も同時測定した。
(株)山電製レオメータRE2-3305Cを用いて、各乾燥粉末の付着性およびその経時変化を評価した。6cmプラスチックシャーレに約2gの各乾燥粉末(乾燥助剤無添加区[果汁粉末]、アルファ化米粉添加区、デキストリン添加区、アルファ化米粉そのもの、デキストリンそのもの)をとり、表面をならしたものを被験試料とした。レオメータのプランジャを(テフロン製直径3cm、乾燥助剤無添加区については直径1.6cm)を10N(乾燥助剤無添加区については1.6N)で粉末表面に押しつけ、手動操作で応力緩和を相殺しながら1分間維持したのち、引張り応力を測定した。プランジャの移動速度は0.1mm/secとし、横軸を歪率(%)としてプロットした。プランジャと被験試料が完全に離れたときの引張り応力を基線とし、基線からマイナス方向に振れた範囲の面積を付着力(N/m2)として算出した(図1)。被験試料はフタを開放して放置し、30分~3時間後に再度測定した。測定は25℃、相対湿度35~40%の条件下で行った。
(a)に示したように、停止安息角で評価した流動性(凝集性)について、アルファ化米粉は、デキストリンと比較して明確な優位性は示せなかった。しかし、限界安息角と停止安息角の差異が大きいものはフィーダーでの詰まりなどを引き起こすなど、粉体としての取扱が困難となる場合がある。乾燥助剤としてアルファ化米粉を用いて調製した乾燥粉末は、デキストリンを使用する場合と比較して、その差異が小さいため、ハンドリングのしやすさ(取り扱い易さ)やその向上を期待することができる。同様に吸湿性及び付着性も粉体のハンドリングに影響を与えるが、吸湿性はデキストリン添加区、アルファ化米粉添加区で大きな差異は認められない一方で、デキストリン添加区は吸湿にともなって付着性が早期に非常に高くなるのに対して、アルファ化米粉添加区では吸湿が付着性に与える影響が小さい。一般に可溶性成分濃度が高い可食性組成物の乾燥粉末は、吸湿にともない器具や機器等への付着性が強くなるため取り扱い難く、空気(外気)への暴露は最小限に抑えたり、湿度を調整する必要があるが、アルファ化米粉を乾燥助剤として使用すると、吸湿したとしても付着性が抑えられた取り扱いやすい乾燥粉末を製造することができる。
Claims (6)
- アルファ化米粉を有効成分とする凍結乾燥助剤
(但し、デンプンが糊化された米に麹を配合し、麹発酵させることによってデンプンの一部が糖化されたフリーズドライジャム用添加剤を除く。)。 - デキストリンを含まない、請求項1記載の凍結乾燥助剤。
- Brix値が10%以上の液状または半液状の可食性組成物を凍結乾燥するために使用される請求項1または2に記載する凍結乾燥助剤。
- Brix値が10%以上の液状または半液状の可食性組成物を、請求項1乃至3のいずれか1項に記載する凍結乾燥助剤の存在下で凍結乾燥する工程を有する、凍結乾燥加工食品組成物の調製方法。
- 凍結乾燥工程後に、凍結乾燥物を粉砕する工程を有する、請求項4に記載する凍結乾燥加工食品組成物の調製方法。
- 上記液状または半液状の可食性組成物が、可食性植物の可食部の搾汁、ペースト、または抽出液である、請求項4乃至5のいずれかに記載する調製方法。
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