JP6998182B2 - 表面保護フィルム、これを用いた積層体、表面保護フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
更に、本発明の表面保護フィルムは、位相差フィルム等の光学フィルムの表面を保護するのに特に適する。尚、本発明において「位相差フィルム」は面内位相差(Re)が0である偏光子保護フィルムを含む。
しかしながら表面保護フィルムの磨硝子状の面が粗くなり過ぎると、光学フィルム/表面保護フィルムの積層体を巻き取って保管している間に、光学フィルムに「オレンジピール」と呼ばれるみかんの皮のような欠点を発生させることがあった。これは表面保護フィルムの磨硝子状の面の凹凸により、光学フィルムが変形することに起因するものと思われる。
しかしながら充填剤の粒子径を十分に小さくしても、ニップロールを製造する際に空気やコンタミと呼ばれる異物が混入することがあり、ニップロール表面の凹みの全てを小さくすることはできず、打痕欠点の問題を解決することはできなかった。
そこで本発明者らは中間層を結晶化温度の高いエチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成することとした。そして該手段により、表面保護フィルムへのニップロール表面の凹みの転写が抑制されることを見出した。
また前記中間層が、表面保護フィルムを形成する他の樹脂層より厚いことを特徴とする前記表面保護フィルムが提供される。
また前記エチレン系樹脂(A)が、メタロセン系触媒により重合された樹脂であることを特徴とする前記表面保護フィルムが提供される。
また前記エチレン系樹脂(A)が、密度930kg/m3以上であることを特徴とする前記表面保護フィルムが提供される。
また前記樹脂組成物が、前記エチレン系樹脂(A)とは異なる低密度ポリエチレン(B)を副成分として含むことを特徴とする前記表面保護フィルムが提供される。
また粘着層用樹脂組成物と中間層用樹脂組成物と背面層用樹脂組成物とをT型ダイスから共押出し、冷却ロールとニップロールとにより挟持する表面保護フィルムの製造方法において、前記中間層用樹脂組成物が結晶化温度105℃以上のエチレン系樹脂(A)を主成分とすることを特徴とする表面保護フィルムの製造方法が提供される。
尚、中間層が厚い程、表面保護フィルムへの凹みの転写は抑制される。
また前記結晶化温度105℃以上のエチレン系樹脂が、密度930kg/m3以上であると表面保護フィルムの剛性が高まり、該フィルムを搬送したり、光学フィルムと貼り合わせたりし易くなる。
また中間層を形成する樹脂組成物が低密度ポリエチレンを含むと、製膜時に溶融状態の樹脂がネックインしたり、ドローレゾナンスを発生したりし難く、安定した製膜が可能となる。
中間層を形成する樹脂組成物が結晶化温度105℃以上のエチレン系樹脂を主成分とする表面保護フィルムは、各層を構成する樹脂組成物を共押出した後に、冷却ロールとニップロールとにより挟持する方法により製造すると、本発明の効果を特に発揮することができる。
また本発明において、「主成分とする」とは、樹脂組成物を構成する樹脂成分のうち、構成比率が50重量%以上であることを意味するものである。主成分と副成分の重量割合について特に記載がない場合、主成分となる樹脂は好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
以下、粘着層、中間層、背面層を順に備える表面保護フィルムについて詳説するが、本発明の表面保護フィルムは必要に応じ、各層の間に他の層を配することもできる。
粘着層は、表面保護フィルムを被着体に貼り合わせる際に、被着体と接する層である。該粘着層には、表面保護フィルムが貼合された被着体を保管・運搬等する間に、表面保護フィルムが被着体から浮き上がったり剥れたりすることのない適度な粘着性が求められる。また該粘着層には、表面保護フィルムを被着体から剥離する際に、被着体の表面を汚染しない適度な剥離性も求められる。
尚、非晶性のオレフィン系樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。
本発明では表面保護フィルムへのニップロール表面の凹みの転写が抑制されるように、中間層用の樹脂組成物の主成分を、(1)エチレン系樹脂で、尚且つ(2)結晶化温度が高い樹脂、具体的には後述するDSCにおいて観測される結晶化温度が105℃以上の樹脂とした。
主成分を(1)エチレン系樹脂とすることにより、中間層用樹脂組成物の押出温度を下げることが可能となる。中間層用樹脂組成物の押出温度が低いと、該樹脂組成物は少ない放熱(冷却)で結晶化温度に達することができる。またニップロールの表面が、溶融樹脂により温められ、設定温度より高くなることも抑制できる。
更に主成分として(2)結晶化温度が高い樹脂を採用することにより、中間層用樹脂組成物は比較的高温の状態から結晶化を開始する。
尚、エチレン系樹脂の中には、酸化防止剤や中和剤等の添加剤が多く配合されているものや、酸化防止剤や中和剤等の添加剤がブリードアウトし易いもの等がある。このような樹脂を使用した表面保護フィルムは、これらの添加剤がフィルム表面にブリードアウトし、フィルム表面が汚れたものとなりやすい。しかしながらメタロセン触媒により重合されたエチレン系樹脂、特にメタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィン共重合体は、これらの添加剤の配合量が少なく、またブリードアウトもし難い為、フィルムの表面を清浄に保つことができる。尚、各種添加剤が添加されていないメタロセン触媒によるエチレン系重合体が、該エチレン系樹脂(A)として特に適する。
エチレン系樹脂(A)と低密度ポリエチレン(B)の配合割合は重量比で50~100:50~0であるが、70~98:30~2が好ましく、特に80~95:20~5が好ましい。また該低密度ポリエチレン(B)も、エチレン系樹脂(A)と同様に、比較的結晶化温度が高いものを選択することが望ましく、具体的には結晶化温度が90℃以上、更には92℃以上のものを選択することが望ましい。
背面層は、表面保護フィルムを被着体に貼り合わせたときに、被着体と反対側の最外層となる層である。背面層を形成する樹脂組成物は特に限定されないが、中間層との接着性を考慮すると、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のエチレン系樹脂や、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂を主成分とすることが好ましい。また加工温度を、粘着層や中間層と近づける為には、エチレン系樹脂を主成分として採用するとよい。尚、背面層用樹脂組成物として、中間層用樹脂組成物と同じものを採用することもできる。
本発明ではDSCを、以下の要領で行った。
試料は23℃50%RHの恒温恒湿室で1日以上保管したものを用い、10mg秤量して使用する。昇温速度10℃/分で30℃から230℃まで昇温(1st)し、次いで降温速度10℃/分で230℃から0℃まで降温し、更に昇温速度10℃/分で0℃から230℃まで再昇温(2nd)する。
結晶融解熱量は再昇温(2nd)に観測される結晶融解ピークから求める。また結晶化熱量は降温時に観測される結晶化ピークから求める。結晶化温度も降温時に観測される結晶化ピークから求める。結晶化ピークが複数ある場合は、最も大きい結晶化ピークから結晶化温度を求める。尚、DSC曲線から熱量を求める際のベースラインの調整はJIS K7122-1987に準拠して行う。
本発明の表面保護フィルムは、各層用の樹脂組成物を一度に環状のダイスから押出すインフレーション共押出法、T型ダイスから押出すTダイ共押出法等の共押出法、各樹脂組成物を別々に製膜した後、ドライラミネート法、熱ラミネート法等により積層する方法、サンドラミネート法やタンデムラミネート法等の押出ラミネート法等により積層する方法等、従来公知の方法により製造することができる。
しかしながら、生産性を考慮すると共押出法を採用することが望ましく、粘着層や背面層の表面形状をコントロールする為には、Tダイ共押出法によりダイスから溶融状態の樹脂を押出し、次いで該樹脂を冷却ロールとニップロールでニップすることが望ましい。このとき、粘着層用の樹脂組成物が冷却ロールに、背面層用の樹脂組成物がニップロールに接触することが望ましい。冷却ロールを鏡面の金属ロールとし、ニップロールを微粒子が配合されたゴムを表面に配するものとすることにより、得られる表面保護フィルムは、粘着面が平滑で、背面が微細な表面粗さとなる。
表面保護フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、被着体が位相差フィルムである場合は10~100μm、特に20~50μmが一般的である。
[凸状周期欠点高さ]
表面保護フィルムを製膜し、これを一旦ロール状に巻き取ったのち、フィルムを繰り出し、非接触式表面粗さ測定機により、ニップロールの凹みに起因する凸状周期欠点の高さを測定する。
[結晶化温度]
前述したDSCに沿って測定する。
[ドローレゾナンス現象]
製膜時にエアギャップを目視で確認し、ドローレゾナンス現象(溶融状態の樹脂の厚みが周期的に変動する現象)の発生の有無を確認する。
粘着層を形成する樹脂組成物としてエチレン-αオレフィン共重合体-1(結晶化温度101.1℃ 結晶化熱量88.5J/g)を用いた。中間層を形成する樹脂組成物として、エチレン-αオレフィン共重合体-2(結晶化温度112.2℃ 結晶化熱量178.4J/g)と低密度ポリエチレン-1(結晶化温度91.0℃)とを、90:10の重量割合でブレンドしたものを用いた。また背面層を形成する樹脂組成物として、上記低密度ポリエチレン-1を用いた。
各樹脂組成物を別々の押出機に供給し、T型ダイスから共押出し、溶融状態の樹脂を冷却ロールとニップロールとで挟持して厚さ30μmの表面保護フィルムを製造した。尚、各層の厚さ比率(粘着層:中間層:背面層)は1:4:1とした。また冷却ロールは、鏡面の金属ロールを、ニップロールは微細な粒子を含むゴムが表面に配され、更に粒子の脱落に由来する凹みがあるロールを採用した。
各表面保護フィルムの中間層を形成する樹脂組成物を表1に記す。中間層を形成する樹脂組成物以外は、実施例1と同様にして本発明の表面保護フィルムを得た。
PE-α-2:エチレン-αオレフィン共重合体-2(結晶化温度112.2℃ 結晶化熱量178.4J/g)
PE-α-3:エチレン-αオレフィン共重合体-3(結晶化温度109.8℃ 結晶化熱量173.7J/g)
LDPE-1:低密度ポリエチレン-1(結晶化温度91.0℃)
LDPE-2:低密度ポリエチレン-2(結晶化温度92.4℃)
HDPE:高密度ポリエチレン(結晶化温度111.5℃)
各層を構成する樹脂組成物を表2に記す。比較例1については、中間層を形成する樹脂組成物を変更した以外は、実施例1と同様にして比較の為の表面保護フィルムを得た。
また中間層がプロピレン系樹脂から成る比較例2~5は、T型ダイスから押出す際の中間層の押出温度を、実施例1よりも30℃程度高くして製膜した。また中間層、背面層を形成する樹脂組成物を表2のように変更した。その他は実施例1と同様にして比較の為の表面保護フィルムを得た。
実施例2の凸状周期欠点部分の測定結果を図2、比較例2の凸状周期欠点部分の測定結果を図3に記す。実施例2の表面保護フィルムの方が、比較例2のフィルムよりも、凸状周期欠点が小さかった。また比較例2の表面保護フィルムは、凸状周期欠点の周縁に谷(矢印部分)が形成されており、表面保護フィルムの粘着層表面には瘤が形成されていた。
また実施例2の凸状周期欠点のない部分の測定結果を図4に、比較例2の凸状周期欠点のない部分の測定結果を図5に記す。実施例2の表面保護フィルムのRzが6.8μmで、比較例2のフィルムのRzは7.1μmであった。同じニップロールにより成形したにもかかわらず、実施例2の表面保護フィルムの方が比較例2のフィルムよりも、凹凸が小さかった。
T型ダイスから押出す際の中間層の温度を実施例1と同等まで下げ、その他は比較例2と同様にして比較の為の表面保護フィルムを得た。しかしながら表面保護フィルム背面の表面形状を改善することはできなかった。比較例6の表面保護フィルムの背面層の表面形状は、比較例2と同等の粗さであった。
Claims (7)
- 粘着層、中間層、背面層を順に備える表面保護フィルムにおいて、前記中間層が結晶化温度105℃以上のエチレン系樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物から形成され、
前記エチレン系樹脂(A)が、メタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィン共重合体であることを特徴とする表面保護フィルム。 - 前記中間層が、表面保護フィルムを形成する他の樹脂層より厚いことを特徴とする請求項1記載の表面保護フィルム。
- 背面層が、低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1または2記載の表面保護フィルム。
- 前記エチレン系樹脂(A)が、密度930kg/m3以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
- 前記樹脂組成物が、前記エチレン系樹脂(A)とは異なる低密度ポリエチレン(B)を副成分として含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
- 位相差フィルムの表面に請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表面保護フィルムが貼合されたことを特徴とする積層体。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表面保護フィルムの製造方法において、粘着層用樹脂組成物と中間層用樹脂組成物と背面層用樹脂組成物とをT型ダイスから共押出し、冷却ロールとニップロールとにより挟持することを特徴とする表面保護フィルムの製造方法。
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