以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図2から図7においても同じ)。スパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極14及び端子金具15を備えている。
絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミック製の部材であり、軸線Oに沿って貫通する軸孔が形成されている。本実施の形態では、軸孔が貫通して形成される絶縁体11の内周面12は、軸線Oと直交する断面の形状が円形である。絶縁体11の内周面12には、先端に向かって内径が次第に小さくなる後端向き面13が先端側に設けられている。
中心電極14は、軸線Oに沿って延びる棒状の部材であり、銅または銅を主成分とする芯材がニッケル又はニッケル基合金で覆われている。中心電極14は、絶縁体11の後端向き面13に係止され、先端が絶縁体11から露出する。中心電極14は芯材を省略しても良い。
端子金具15は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具15は、先端側が軸孔に挿入された状態で、絶縁体11の後端に固定されている。
絶縁体11の先端側の外周に主体金具16が加締め固定されている。主体金具16は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具16は、径方向の外側へ鍔状に張り出す座部17と、座部17よりも先端側の外周面に形成されたねじ部18とを備えている。主体金具16は、内燃機関(シリンダヘッド)のねじ穴(図示せず)にねじ部18を締結して固定される。
接地電極19は、主体金具16の先端に接合される金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。本実施の形態では、接地電極19は棒状に形成されており、先端側が屈曲し中心電極14と対向する。接地電極19は、中心電極14との間に火花ギャップを形成する。
導電体20は、放電時に発生する電波ノイズを抑えるための部材であり、絶縁体11の内周面12の内側の中心電極14と端子金具15との間に配置されている。導電体20は、中心電極14と導電体20との間に配置された第1導電性ガラス24を介して、中心電極14と電気的に接続される。本実施の形態では、導電体20は円柱状に形成されている。また、端子金具15と導電体20との間に配置された第2導電性ガラス25を介して、導電体20は端子金具15と電気的に接続されている。
図2は図1の一部(導電体20の付近)を拡大して示したスパークプラグ10の軸線Oを含む断面図である。図2は導電体20の軸線方向の中間部分の図示が省略されている(図3から図7においても同じ)。
図2に示すように導電体20は、主相21、主相21の先端側に接触する第1相22、主相21の後端側に接触する第2相23を備えている。主相21、第1相22及び第2相23は、それぞれ導電性酸化物の焼結体からなる。導電体20は、焼成によって主相21、第1相22及び第2相23を一体化した単一物が好ましいが、主相21、第1相22及び第2相23の各焼結体を互いに接触させた集合物でも良い。本実施形態の導電体20は、焼成によって主相21、第1相22及び第2相23が一体化された焼結体である。
導電体20としては、抵抗体や磁性体などが挙げられる。抵抗体は、放電電流のうち電波ノイズの原因となる周波数帯の成分を吸収する。磁性体は、フェライトのインピーダンスや磁気損失等によって、放電電流のうち電波ノイズの原因となる周波数帯の成分を遮断または吸収する。磁性体を構成する導電性酸化物としては、例えばMn-Znフェライトが挙げられる。
抵抗体を構成する導電性酸化物としては、例えばMn,Co,Ni,Fe,Cr等の酸化物を配合して焼成された半導性の焼結体、一般式A2-XBXCuO4で表される複合酸化物や一般式CDO3で表される複合酸化物を含有する焼結体等が挙げられる。一般式の元素A及び元素Cは、IUPAC1990年勧告に基づく周期表の第3族元素から選択される1種または2種以上である。元素BはIUPAC1990年勧告に基づく周期表の第2族元素から選ばれたCa,Sr及びBaから選択される少なくとも1種または2種以上である。元素Dは遷移元素の1種または2種以上である。添え字xは0≦x<2を満たす。なお、添え字x=0は元素Bが含まれていないことを示す。
元素A及び元素Cとしては、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm及びYb等のランタノイド、Ac等のアクチノイド、Sc及びYが挙げられる。特に、元素AはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Y及びYbから選択される少なくとも1種が好ましく、La,Ce,Nd及びGdから選択される少なくとも1種がより好ましい。元素Cの一部をCa,Sr及びBa等の他の元素に置換できる。元素Dとしては、Cr,Mn,Fe,Ni,Al等が挙げられる。
一般式A2-XBXCuO4で表される複合酸化物としては、例えばLa2CuO4,YBa2Cu3O7,La1.85Ba0.15CuO4等が挙げられる。一般式CDO3で表される複合酸化物としては、YCrO3,YMnO3,La(Fe0.5Ni0.5)O3,(Nd0.7Ca0.3)(Mn0.4Al0.6)O3等が挙げられる。
導電体20は、抵抗値を調整するため、この導電性酸化物よりも体積抵抗率が高い物質を含有できる。この物質(絶縁粉末)としては、例えばAl2O3,Y2O3,ZrO2,ムライト、ステアタイト等の金属酸化物、Si3N4等の金属窒化物、B2O3-SiO2系、BaO-B2O3系、SiO2-B2O3-CaO-BaO系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-B2O3-Li2O系およびSiO2-B2O3-Li2O-BaO系等のガラスが挙げられる。これらの物質は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
抵抗体としての導電体20の抵抗値は、例えば0.1kΩ~30kΩであることが好ましく、1kΩ~20kΩであることがさらに好ましい。第1相22及び第2相23の20℃における体積抵抗率は、主相21の20℃における堆積抵抗率よりも低く設定される。好ましくは、第1相22の20℃における体積抵抗率および第2相23の20℃における体積抵抗率は1.0×10-1Ω・m以下に設定される。
導電体20は、例えば主相21、第1相22及び第2相23毎に秤量された出発原料を混合し各々を仮焼成した後、仮焼成後の粉末を粉砕し、必要に応じて絶縁性の物質(絶縁粉末)を混合した後、第1相22、主相21、第2相23の順に各原料粉末を重ねて成形・焼成して得られる焼結体である。焼結体は、必要に応じて外形加工が施される。
導電体20の別の製造方法としては、例えば主相21の原料粉末を成形・焼成して焼結体を得た後、必要に応じて外形加工を施す。次いで、主相21の焼結体の片方の端面に第1相22の原料粉末を含むペーストを塗布し、もう片方の端面に第2相23の原料粉末を含むペーストを塗布し、焼き付ける方法が挙げられる。
第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25は、絶縁性のガラス粉末および金属粉末を含む混合物を焼成したものが用いられる。第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25に含まれるガラスは、B2O3-SiO2系、BaO-B2O3系、SiO2-B2O3-CaO-BaO系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-B2O3-Li2O系およびSiO2-B2O3-Li2O-BaO系等が挙げられる。
第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25に含まれる金属は、例えばZn,Sb,Sn,Ag,Ni,Fe及びCuが挙げられる。第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25は、無定形カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、SiC,TiC,TiN,WC及びZrC等の導電材料、ZnO,TiO2等の半導性の無機化合物粉末、絶縁性粉末等を含有しても良い。
導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス26が配置されている。絶縁性ガラス26は、第1導電性ガラス24と第2導電性ガラス25との間に介在する。絶縁性ガラス26の体積抵抗率は、導電体20の体積抵抗率よりも高いので、絶縁性ガラス26を介して第1導電性ガラス24と第2導電性ガラス25との間が短絡しないようにできる。導電体20と絶縁体11との間に絶縁性ガラス26が介在することにより、振動によって導電体20が破損しないようにできる。
絶縁性ガラス26の材料としては、融点が絶縁体11の融点よりも低いもの、例えばB2O3-SiO2系、BaO-B2O3系、SiO2-B2O3-CaO-BaO系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-B2O3-Li2O系およびSiO2-B2O3-Li2O-BaO系などが挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。絶縁性ガラス26は、アルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の無機化合物を含有しても良い。
スパークプラグ10は、導電体20の軸線方向の先端側の端面20a(第1相22)に第1導電性ガラス24が接触し、導電体20の後端側の端面20b(第2相23)に第2導電性ガラス25が接触する。第1相22は主相21と第1導電性ガラス24とを離間し、第2相23は主相21と第2導電性ガラス25とを離間する。第1相22の軸線方向の厚さT1の最小値および第2相23の軸線方向の厚さT2の最小値は、それぞれ5μm以上である。厚さT1,T2の最大値は5mm以下である。厚さT1,T2は、SEM等の顕微鏡を用いてスパークプラグ10の軸線Oを含む断面を観察して、最も薄い部分の厚さ(最小値)及び最も厚い部分の厚さ(最大値)が測定される。
具体的には、スパークプラグ10の軸線Oを交線とするような略垂直に交わる2つの仮想平面に沿ってスパークプラグ10を4分割し、得られる断面をSEM等の顕微鏡で観察する。上述の方法で製造される第1相22及び第2相23は、厚さをほぼ均一にできる。従って、断面で観測される第1相22及び第2相23の厚さの最小値および最大値は、厚さT1,T2の最小値および最大値と推定される。
スパークプラグ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11の軸孔に中心電極14を挿入し、中心電極14を後端向き面13で係止する。次に、第1導電性ガラス24の原料粉末を軸孔から入れて、中心電極14の周りに充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、中心電極14の周りに充填した第1導電性ガラス24の原料粉末を予備圧縮する。
次に、絶縁性ガラス26の材料でできたガラス管の中に導電体20(焼結体)を入れたものを、第1相22を下にして軸孔に挿入し、第1導電性ガラス24の原料粉末の上に置く。次いで、導電体20及びガラス管の上に、第2導電性ガラス25の原料粉末をペレット状に成形した成形体を置く。絶縁体11を炉内に移送し、例えば第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25の原料粉末や絶縁性ガラス26の材料に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱する。
加熱後、絶縁体11の軸孔に端子金具15を挿入し、端子金具15の先端によって第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25の原料粉末および絶縁性ガラス26の材料を軸方向へ圧縮する。この結果、それらが圧縮・焼結され、絶縁体11の内部に第1導電性ガラス24、導電体20、絶縁性ガラス26及び第2導電性ガラス25が一体化される。
次に絶縁体11を炉外へ移送し、絶縁体11の外周に主体金具16を組み付ける。接地電極19を主体金具16に接合した後、接地電極19の先端が中心電極14と対向するように接地電極19を屈曲して、スパークプラグ10を得る。
この製造方法において、導電体20を入れたガラス管を軸孔に挿入する代わりに、導電体20(焼結体)を軸孔に入れた後、導電体20の周りに絶縁性ガラス26の原料粉末を充填することは当然可能である。さらに、第2導電性ガラス25の原料粉末の成形体を軸孔に挿入する代わりに、第2導電性ガラス25の原料粉末を軸孔に充填することは当然可能である。
スパークプラグ10によれば、導電性酸化物からなる主相21は、導電性酸化物からなる第1相22及び第2相23に接触し、第1導電性ガラス24及び第2導電性ガラス25と離間する。第1相22及び第2相23の体積抵抗率は主相21の体積抵抗率よりも低い。これにより、第1相22の体積抵抗率と、第1相22に接する第1導電性ガラス24に含まれる金属の体積抵抗率との差を小さくできる。第2相23の体積抵抗率と、第2相23に接する第2導電性ガラス25に含まれる金属の体積抵抗率との差を小さくできる。第1導電性ガラス24に含まれる金属と第1相22との間、第2導電性ガラス25に含まれる金属と第2相23との間で、それぞれオーミック接触またはオーミック接触に近い接触を実現できる。
これにより、第1相22と第1導電性ガラス24との間の接触抵抗、及び、第2相23と第2導電性ガラス25との間の接触抵抗を低減できる。よって、放電時にこれらの界面に電界が集中するのを緩和できる。さらに、主相21、第1相22及び第2相23はそれぞれ導電性酸化物の焼結体からなるので、酸化による劣化を防止できる。その結果、スパークプラグ10の耐久性を向上できる。なお、主相21によって導電体20に必要な特性は確保できる。
導電性ガラスに含まれる金属と導電体20に含まれる導電性酸化物との関係によるが、第1導電性ガラス24と第1相22との界面や第2導電性ガラス25と第2相23との界面のショットキー障壁が高くなることがある。しかし、第1相22の20℃における体積抵抗率および第2相23の20℃における体積抵抗率が1.0×10-1Ω・m以下なので、ショットキー障壁ができても空乏層幅を小さくすることができ、界面に電流を流れ易くできる。これにより、第1導電性ガラス24と第1相22との間、及び、第2導電性ガラス25と第2相23との間の接触抵抗をさらに低減し、これらの界面の電界集中を抑制し易くできる。
第1相22及び第2相23の厚さT1,T2の最小値は5μm以上なので、焼結に伴う物質移動が生じても、第1相22及び第2相23の特性をそれぞれ確保し易くできる。その結果、第1相22及び第2相23による接触抵抗の低減効果を発現し易くできる。また、厚さT1,T2の最大値は5mm以下なので、相対的に主相21を長くすることができる。その結果、電波ノイズを抑制するための主相21の電気特性を発現し易くできる。
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、導電体20の第1相22が第1導電性ガラス24に接触し、第2相23が第2導電性ガラス25に接触する場合について説明した。これに対し第2実施形態では、第1相22と第1導電性ガラス31との間に第1緩衝層33が介在し、第2相23と第2導電性ガラス32との間に第2緩衝層34が介在する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施形態におけるスパークプラグ30の一部(導電体20の付近)を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。スパークプラグ30は、第1実施形態のスパークプラグ10の一部を図3に示す部分に代えたものである。
スパークプラグ30は、導電体20の先端側の端面20aと第1導電性ガラス31との間に第1緩衝層33が配置されている。第1緩衝層33は、第1導電性ガラス31と第1相22とに接触する。第1緩衝層33によって導電体20と第1導電性ガラス31とは離間する。また、導電体20の後端側の端面20bと第2導電性ガラス32との間に第2緩衝層34が配置されている。第2緩衝層34は第2相23と第2導電性ガラス32とに接触する。第2緩衝層34によって導電体20と第2導電性ガラス32とは離間する。なお、本実施形態では、第1緩衝層33及び第2緩衝層34は、絶縁体11の内周面12にも接触している。
絶縁体11の内周面12と導電体20の側面20cとの間に絶縁性ガラス35が配置されている。第1緩衝層33及び第2緩衝層34によって第1導電性ガラス31及び第2導電性ガラス32は絶縁性ガラス35と離間する。
第1緩衝層33及び第2緩衝層34は、金属と導電性酸化物とを含む混合物または金属からなる。第1緩衝層33や第2緩衝層34に含まれる金属としては、例えばCu,Ni,Co,Pt,Rh,Pd等が挙げられる。第1緩衝層33や第2緩衝層34に含まれる導電性酸化物としては、導電体20に含まれる導電性酸化物と同じものが例示される。
第1緩衝層33や第2緩衝層34は、本実施形態では、金属からなる板材を用いて形成される。しかし、これに限られるものではない。例えば第1緩衝層33や第2緩衝層34は、金属と導電性酸化物とを含む混合物からなる板材、金属粉末と導電性酸化物の粉末とを含む混合物の堆積物、金属粉末の堆積物などから適宜形成できる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス31と第1緩衝層33との界面36の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス32と第2緩衝層34との界面37の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4よりも長い。
スパークプラグ30は、例えば第1実施形態で説明した方法と同様に製造される。但し、第1導電性ガラス31の原料粉末の上に、第1緩衝層33を形成するための金属製の板材を配置する。また、導電体20及びガラス管の上に、第2緩衝層34を形成するための金属製の板材を置いた後、その上に、第2導電性ガラス32の原料粉末をペレット状に成形した成形体を置く。なお、金属粉末等の堆積物によって第1緩衝層33や第2緩衝層34を形成する場合には、板材を軸孔に配置するのに代えて、第1導電性ガラス31や第2導電性ガラス32と同様に、それらの原料粉末を軸孔に充填したり原料粉末の成形体を軸孔に挿入したりする。
スパークプラグ30によれば、導電体20の第1相22は第1導電性ガラス31と離間し、第1緩衝層33は第1相22及び第1導電性ガラス31に接触する。また、導電体20の第2相23は第2導電性ガラス32と離間し、第2緩衝層34は第2相23及び第2導電性ガラス32に接触する。そのため、第1導電性ガラス31や第2導電性ガラス32に含まれる金属(粉末や粒子)が第1相22や第2相23に接触する場合に比べ、第1緩衝層33や第2緩衝層34に含まれる導電性物質(金属や導電性酸化物)と第1相22や第2相23との接触面積を大きくできる。第1緩衝層33及び第2緩衝層34はそれぞれ第1導電性ガラス31及び第2導電性ガラス32に接触して導通するが、この導通は第1緩衝層33及び第2緩衝層34に含まれる金属によってもなされる。その結果、第1緩衝層33と第1導電性ガラス31との間、第2緩衝層34と第2導電性ガラス32との間で、それぞれオーミック接触またはオーミック接触に近い接触を実現できる。
これにより、第1緩衝層33と第1相22との間の接触抵抗、第2緩衝層34と第2相23との間の接触抵抗、第1緩衝層33と第1導電性ガラス31との間の接触抵抗、及び、第2緩衝層34と第2導電性ガラス32との間の接触抵抗をさらに低減できる。よって、放電時にこれらの界面に電界が集中するのをさらに緩和できる。その結果、スパークプラグ30の耐久性をさらに向上できる。
絶縁体11の内周面12と導電体20の側面20cとの間に絶縁性ガラス35が配置されているので、絶縁体11の内周面12の内側の導電体20の移動を抑制できる。これにより、導電体20の端面20aと第1緩衝層33との接触、及び、導電体20の端面20bと第2緩衝層34との接触を強固にできる。よって、導電体20の端面20aと第1緩衝層33との間の接触抵抗、及び、導電体20の端面20bと第2緩衝層34との間の接触抵抗の振動等による上昇を抑制できる。
なお、図3に示すように、絶縁性ガラス35を導電体20だけでなく第1緩衝層33及び第2緩衝層34に接触させると、これらの一体性を一層高めることができる。これにより、導電体20の端面20aと第1緩衝層33との接触、及び、導電体20の端面20bと第2緩衝層34との接触をさらに強固にできる。
界面36の軸線Oに直交する方向の長さL1及び界面37の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oに直交する方向の長さL2,L4よりも長いので、第1導電性ガラス31と第1緩衝層33との接触面積(界面36の面積)及び第2導電性ガラス32と第2緩衝層34との接触面積(界面37の面積)を、絶縁体11の内周面12の内側においてより大きくできる。即ち、界面36の軸線Oに直交する方向の長さL1が導電体20の端面20aの軸線Oに直交する方向の長さL2と等しい場合に比べて、界面36の面積を大きくできる。界面37の軸線Oに直交する方向の長さL3が導電体20の端面20bの軸線Oに直交する方向の長さL4と等しい場合に比べて、界面37の面積を大きくできる。その結果、界面36,37の抵抗を低減できるので、界面36,37の電界集中を緩和し、耐久性をさらに向上できる。
第1緩衝層33は導電体20の先端側のみに配置され、第2緩衝層34は導電体20の後端側のみに配置されるので、第1緩衝層33及び第2緩衝層34は導電体20の側面20cに接触しないで端面20a,20bにそれぞれ接触する。これにより、導電体20の抵抗値を、第1緩衝層33及び第2緩衝層34が接触する導電体20の端面20a,20bの面積、及び、端面20a,20b間の長さに依存させることができる。その結果、第1緩衝層33や第2緩衝層34の一部が主相21の側面20cに回り込んで第1緩衝層33と第2緩衝層34との間の距離にばらつきが生じることによる、導電体20の電気特性のばらつきを抑制できる。
図4を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施形態では、第1導電性ガラス31及び第2導電性ガラス32が絶縁性ガラス35と離間する場合について説明した。これに対し第3実施形態では、第1導電性ガラス41及び第2導電性ガラス42が絶縁性ガラス45に接触する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第3実施形態におけるスパークプラグ40の一部(導電体20の付近)を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。スパークプラグ40は、第1実施形態のスパークプラグ10の一部を図4に示す部分に代えたものである。
図4に示すようにスパークプラグ40は、導電体20の第1相22に接触する第1緩衝層43が配置されている。導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス45が配置されている。第1導電性ガラス41は第1緩衝層43及び絶縁性ガラス45に接触する。第1緩衝層43によって導電体20と第1導電性ガラス41とは離間する。第2緩衝層44は導電体20の第2相23に接触する。第2導電性ガラス42は第2緩衝層44及び絶縁性ガラス45に接触する。第2緩衝層44によって導電体20と第2導電性ガラス42とは離間する。
第1緩衝層43及び第2緩衝層44は、例えばめっき、焼き付け塗膜、物理蒸着、化学蒸着等によって、導電体20の端面20a,20bに形成される。これらの処理によって導電体20と第1緩衝層43及び第2緩衝層44とが一体化されるので、第1導電性ガラス41等を絶縁体11に一体化するときに、第2実施形態で説明したような、第1緩衝層33や第2緩衝層34を形成するための板材等を導電体20とは別に絶縁体11の軸孔に挿入する作業を省略できる。
なお、第1導電性ガラス41と絶縁性ガラス45との界面の形状、及び、第2導電性ガラス42と絶縁性ガラス45との界面の形状は、第1導電性ガラス41等を絶縁体11に一体化するときの端子金具15による軸方向の荷重の大きさ、絶縁体11を加熱する温度、絶縁性ガラス45の軸線方向の長さ等によって適宜設定できる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス41と第1緩衝層43との界面46の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス42と第2緩衝層44との界面47の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4とほぼ等しい。これにより第3実施形態では、第2実施形態で説明したL1=L3>L2=L4による作用効果を除く、第2実施形態と同様の作用効果を実現できる。
図5を参照して第4実施の形態について説明する。第2実施形態および第3実施形態では、第1緩衝層33,43及び第2緩衝層34,44が導電体20の端面20a,20bに接触し側面20cに接触しない場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第1緩衝層53及び第2緩衝層54が、導電体20の端面20a,20b及び側面20cに接触する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第4実施形態におけるスパークプラグ50の一部(導電体20の付近)を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。スパークプラグ50は、第1実施形態のスパークプラグ10の一部を図5に示す部分に代えたものである。
図5に示すようにスパークプラグ50は、導電体20の端面20a及び側面20cに接触する第1緩衝層53が配置されている。導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス55が配置されている。第1導電性ガラス51は第1緩衝層53及び絶縁性ガラス55に接触する。第1緩衝層53によって導電体20と第1導電性ガラス51とは離間する。第2緩衝層54は導電体20の端面20b及び側面20cに接触する。第2導電性ガラス52は第2緩衝層54及び絶縁性ガラス55に接触する。第2緩衝層54によって導電体20と第2導電性ガラス52とは離間する。なお、図5では第1緩衝層53及び第2緩衝層54と絶縁体11の内周面12とは離間しているが、これらは接触していても良い。
スパークプラグ50の第1緩衝層53及び第2緩衝層54は、例えばめっき、塗膜の焼き付け、物理蒸着、化学蒸着等によって、導電体20の端面20a,20bに形成される。また、第1緩衝層53及び第2緩衝層54は、金属からなる板材、金属と導電性酸化物とを含む混合物からなる板材等によって形成することもできる。板材を用いて第1緩衝層53及び第2緩衝層54を形成する場合、第1緩衝層53及び第2緩衝層54の縁が屈曲した形状は、第1導電性ガラス51等を絶縁体11に一体化するときの端子金具15による軸方向の荷重の大きさ、絶縁体11を加熱する温度、絶縁性ガラス55の軸線方向の長さ等によって適宜設定できる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス51と第1緩衝層53との界面56の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス52と第2緩衝層54との界面57の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4よりも長い。
第4実施形態では、導電体20の端面20a,20b及び側面20cに第1緩衝層53及び第2緩衝層54が接触するので、緩衝層が導電体20の端面20a,20bのみに接触する場合に比べ、第1緩衝層53と導電体20との接触面積、及び、第2緩衝層54と導電体20との接触面積を大きくできる。これにより、導電体20の側面20cに緩衝層が接触する分だけ、第1緩衝層53と導電体20との界面の抵抗、及び、第2緩衝層54と導電体20との界面の抵抗を低減できる。よって、第1緩衝層53と導電体20との界面、及び、第2緩衝層54と導電体20との界面の電界集中を緩和し、耐久性をさらに向上できる。
図6を参照して第5実施の形態について説明する。第2実施形態から第4実施形態では、第1導電性ガラス31,41,51及び第2導電性ガラス32,42,52が導電体20と離間する場合について説明した。これに対し第5実施形態では、第1導電性ガラス61及び第2導電性ガラス62は主相21と離間するが、第1導電性ガラス61及び第2導電性ガラス62が第1相22及び第2相23にそれぞれ接触する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第5実施形態におけるスパークプラグ60の一部(導電体20の付近)を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。スパークプラグ60は、第1実施形態のスパークプラグ10の一部を図6に示す部分に代えたものである。
図6に示すようにスパークプラグ60は、導電体20の第1相22に接触する第1緩衝層63が配置されている。導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス65が配置されている。第1導電性ガラス61は第1緩衝層63、第1相22及び絶縁性ガラス65に接触し、主相21と第1導電性ガラス61とは離間する。第2緩衝層64は導電体20の第2相23に接触する。第2導電性ガラス62は第2緩衝層64、第2相23及び絶縁性ガラス65に接触し、主相21と第2導電性ガラス62とは離間する。
第1緩衝層63及び第2緩衝層64は、例えばめっき、焼き付け塗膜、物理蒸着、化学蒸着等によって、導電体20の端面20a,20bに形成される。第1導電性ガラス61と絶縁性ガラス65との界面の形状、及び、第2導電性ガラス62と絶縁性ガラス65との界面の形状は、第1導電性ガラス61等を絶縁体11に一体化するときの端子金具15による軸方向の荷重の大きさ、絶縁体11を加熱する温度、絶縁性ガラス65の軸線方向の長さ等によって適宜設定できる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス61と第1緩衝層63との界面66の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス62と第2緩衝層64との界面67の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4とほぼ等しい。これにより第5実施形態では、第2実施形態で説明したL1=L3>L2=L4による作用効果を除く、第2実施形態と同様の作用効果を実現できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
第1実施形態および第2実施形態におけるスパークプラグのサンプルを作成して放電試験を行った。表1及び表2に、サンプル1~13の形態、導電体(主相、第1相および第2相)を構成する導電性酸化物の化学式、各導電性酸化物の20℃における体積抵抗率、第1相および第2相の厚さT1,T2の最小値、第1緩衝層および第2緩衝層を構成する物質、及び、放電試験の判定を一覧にして示す。
なお、サンプル1~13は、緩衝層の有無、導電体および緩衝層の材質の違いによる特性を評価するため、それらの違い以外の、導電体の寸法、第1導電性ガラス、第2導電性ガラス及び絶縁性ガラスの材質、スパークプラグの各部の寸法や形状等は一定にした。
サンプル1~5,8~10は、導電体を製造するときに、第1相、主相および第2相の各原料粉末を重ねて成形し焼結体を得た。サンプル6,7,11は、導電体を製造するときに、主相の焼結体を得た後、第1相22の原料粉末を含むペースト及び第2相の原料粉末を含むペーストを焼結体(主相)の端面にそれぞれ塗布し、焼き付けて焼結体を得た。
サンプル1,3~11は第1実施形態におけるスパークプラグのサンプルである。サンプル2は第2実施形態におけるスパークプラグのサンプルである。サンプル2の第1緩衝層および第2緩衝層は、Pt製の板材によって形成された。
サンプル1~8の主相、第1相および第2相、サンプル10,11の第1相および第2相、サンプル12の主相は、それぞれ複合酸化物からなる。サンプル9の主相、第1相および第2相、並びに、サンプル10,11,13の主相は、複合酸化物と絶縁粉末(Y2O3)との混合物からなる。サンプル9,10,11,13の混合物における括弧内の数値は、複合酸化物と絶縁粉末との体積の割合である。サンプル1~11は、主相が、第1相が含有する金属元素と同じ金属元素を1種以上含有し、第2相が含有する金属元素と同じ金属元素を1種以上含有する。
サンプル12,13は比較例である。比較例におけるスパークプラグ70は、サンプル1~11と異なり、導電体の第1相および第2相が省略されている。図7は比較例におけるスパークプラグ70(サンプル12,13)の一部を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7に示すようにスパークプラグ70は、絶縁体11の内周面12の内側に導電体71、第1導電性ガラス72、第2導電性ガラス73及び絶縁性ガラス74が配置されている。第1導電性ガラス72は導電体71の端面71a及び絶縁性ガラス74に接触し、第2導電性ガラス73は導電体71の端面71b及び絶縁性ガラス74に接触する。
1~13の各サンプルについて、端子金具15と中心電極14との間に5Vの直流電圧を加えて抵抗値を測定し、予め測定した抵抗温度特性を用いて、そのときの測定値を20℃のときの抵抗値に補正した。このときの抵抗値は各サンプルとも1kΩであった。
次いで、各サンプルを425℃の環境下におき、放電電圧を45kVに設定し、1秒間に100回の割合で500時間、中心電極14と接地電極19との間に火花を飛ばす試験を行った。試験後、1時間放置し、試験前と同様にして抵抗値を測定し、そのときの測定値を20℃のときの抵抗値に補正した。試験前後の抵抗値の変化率が±10%未満のサンプルはA、その変化率が±10%以上±20%未満のサンプルはB、その変化率が±20%以上±30%未満のサンプルはC、その変化率が±30%以上のサンプルはDと判定した。結果は表2に記した。
表2に示すようにサンプル1~11(実施例)は判定がA~Cであったのに対し、サンプル12,13(比較例)は判定がDであった。主相と第1導電性ガラスとの間に第1相が介在し、主相と第2導電性ガラスとの間に第2相が介在するサンプル1~11は、第1相および第2相が存在しない比較例に比べ、試験前後の抵抗変化率を小さくすることができた。サンプル1~11は、導電体と導電性ガラスとの界面の電界集中を緩和できたからであると推察される。
特にサンプル1,3,6,9,10,11は、サンプル4,5,7,8に比べ、さらに試験前後の抵抗変化率を小さくすることができた。サンプル1,3,6,9,10,11は、サンプル4,8と異なり、主相、第1相および第2相が、構成元素が同じ複合酸化物の焼結体であった。これらのサンプルは第1相や第2相と主相との相互作用をさらに生じ難くすることができ、抵抗変化率をより小さくすることができたと推察される。
サンプル1,3,6,9,10は、サンプル5と異なり、第1相の体積抵抗率および第2相の体積抵抗率が1.0×10-1Ω・m以下であった。これらのサンプルは、第1相と第1導電性ガラスとの間の接触抵抗、及び、第2相と第2導電性ガラスとの間の接触抵抗をさらに小さくすることができ、抵抗変化率をより小さくすることができたと推察される。
サンプル1,3,6,9,10,11は、サンプル7と異なり、第1相および第2相の厚さT1,T2の最小値は5μm以上であった。これらのサンプルは、焼結に伴う物質移動が生じても第1相および第2相の特性をそれぞれ確保できたので、第1相と第1導電性ガラスとの間の接触抵抗、及び、第2相と第2導電性ガラスとの間の接触抵抗をさらに小さくすることができ、抵抗変化率をより小さくすることができたと推察される。
サンプル2は、サンプル1,3,6,9,10,11に比べ、さらに試験前後の抵抗変化率を小さくすることができた。サンプル2は、第1相に第1緩衝層を接触させ、第2相に第2導電性ガラスを接触させることにより、第1相と第1導電性ガラスとの界面、及び、第2相と第2導電性ガラスとの界面の電界集中をさらに緩和できたからであると推察される。
以上、実施形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらに何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
実施例では、第1緩衝層および第2緩衝層をそれぞれ同一種類の部材で形成したサンプルについて説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1緩衝層および第2緩衝層の材質や第1緩衝層および第2緩衝層の作り方を異ならせることは当然可能である。
実施形態では、導電体20が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。導電体20は絶縁体11の内周面12の内側に配置できる大きさ及び形状であれば良いので、例えば直方体状に形成された導電体20を採用することは当然可能である。
実施形態では、絶縁体11の内周面12と導電体20との間に絶縁性ガラス26,35,45,55,65が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。絶縁体11の内周面12と導電体20との隙間の大きさを管理して、絶縁性ガラスを省略することは当然可能である。
実施形態では、中心電極14の先端に接地電極19が対向するスパークプラグ10,30,40について説明したが、スパークプラグの構造は必ずしもこれに限られるものではない。スパークプラグの他の構造としては、例えば、中心電極14の側面に接地電極19が対向するスパークプラグ、主体金具16に複数の接地電極19を接合した多極のスパークプラグが挙げられる。