以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図2から図5においても同じ)。スパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極14及び端子金具15を備えている。
絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミック製の部材であり、軸線Oに沿って貫通する軸孔が形成されている。本実施の形態では、軸孔が貫通して形成される絶縁体11の内周面12は、軸線Oと直交する断面の形状が円形である。絶縁体11の内周面12には、先端に向かって内径が次第に小さくなる後端向き面13が先端側に設けられている。
中心電極14は、軸線Oに沿って延びる棒状の部材であり、銅または銅を主成分とする芯材がニッケル又はニッケル基合金で覆われている。中心電極14は、絶縁体11の後端向き面13に係止され、先端が絶縁体11から露出する。中心電極14は芯材を省略しても良い。
端子金具15は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具15は、先端側が軸孔に挿入された状態で、絶縁体11の後端に固定されている。
絶縁体11の先端側の外周に主体金具16が加締め固定されている。主体金具16は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具16は、径方向の外側へ鍔状に張り出す座部17と、座部17よりも先端側の外周面に形成されたねじ部18とを備えている。主体金具16は、内燃機関(シリンダヘッド)のねじ穴(図示せず)にねじ部18を締結して固定される。
接地電極19は、主体金具16の先端に接合される金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。本実施の形態では、接地電極19は棒状に形成されており、先端側が屈曲し中心電極14と対向する。接地電極19は、中心電極14との間に火花ギャップを形成する。
導電体20は、放電時に発生する電波ノイズを抑えるための部材であり、絶縁体11の内周面12の内側の中心電極14と端子金具15との間に配置されている。導電体20は、中心電極14と導電体20との間に配置された第1導電性ガラス21を介して、中心電極14と電気的に接続される。本実施の形態では、導電体20は円柱状に形成されている。また、端子金具15と導電体20との間に配置された第2導電性ガラス22を介して、導電体20は端子金具15と電気的に接続されている。
導電体20としては、導電性酸化物の焼結体からなる抵抗体や磁性体などが挙げられる。抵抗体は、放電電流のうち電波ノイズの原因となる周波数帯の成分を吸収する。磁性体は、フェライトのインピーダンスや磁気損失等によって、放電電流のうち電波ノイズの原因となる周波数帯の成分を遮断または吸収する。磁性体を構成する導電性酸化物としては、例えばMn-Znフェライトが挙げられる。
抵抗体を構成する導電性酸化物としては、例えばMn,Co,Ni,Fe,Cr等の酸化物を配合して焼成された半導性の焼結体、一般式A2-XBXCuO4で表される金属酸化物や一般式CDO3で表される金属酸化物を含有する焼結体等が挙げられる。一般式の元素A及び元素Cは、IUPAC1990年勧告に基づく周期表の第3族元素から選択される1種または2種以上である。元素BはIUPAC1990年勧告に基づく周期表の第2族元素から選ばれたCa,Sr及びBaから選択される少なくとも1種または2種以上である。元素Dは遷移元素の1種または2種以上である。添え字xは0≦x<2を満たす。なお、添え字x=0は元素Bが含まれていないことを示す。
元素A及び元素Cとしては、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm及びYb等のランタノイド、Ac等のアクチノイド、Sc及びYが挙げられる。特に、元素AはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Y及びYbから選択される少なくとも1種が好ましく、La,Ce,Nd及びGdから選択される少なくとも1種がより好ましい。元素Cの一部をCa,Sr及びBa等の他の元素に置換できる。元素Dとしては、Cr,Mn,Fe,Ni,Al等が挙げられる。
一般式A2-XBXCuO4で表される金属酸化物としては、例えばLa2CuO4,YBa2Cu3O7,La1.85Ba0.15CuO4等が挙げられる。一般式CDO3で表される金属酸化物としては、YCrO3,YMnO3,La(Fe0.5Ni0.5)O3,(Nd0.7Ca0.3)(Mn0.4Al0.6)O3等が挙げられる。
導電体20は、抵抗値を調整するため、この導電性酸化物よりも体積抵抗率が高い物質を含有できる。この物質(絶縁粉末)としては、例えばAl2O3,Y2O3,ZrO2,ムライト、ステアタイト等の金属酸化物、Si3N4等の金属窒化物、B2O3-SiO2系、BaO-B2O3系、SiO2-B2O3-CaO-BaO系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-B2O3-Li2O系およびSiO2-B2O3-Li2O-BaO系等のガラスが挙げられる。これらの物質は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
導電体20は、例えば、秤量された出発原料を混合し仮焼成した後、仮焼成後の粉末を粉砕し、必要に応じて絶縁性の物質(絶縁粉末)を混合した後、成形・焼成して得られる焼結体である。焼結体は、必要に応じて外形加工が施される。
第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22は、絶縁性のガラス粉末および金属粉末を含む混合物を焼成したものが用いられる。第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22に含まれるガラスは、B2O3-SiO2系、BaO-B2O3系、SiO2-B2O3-CaO-BaO系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-B2O3-Li2O系およびSiO2-B2O3-Li2O-BaO系等が挙げられる。
第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22に含まれる金属は、例えばZn,Sb,Sn,Ag,Ni,Fe及びCuが挙げられる。第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22は、無定形カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、SiC,TiC,TiN,WC及びZrC等の導電材料、ZnO,TiO2等の半導性の無機化合物粉末、絶縁性粉末等を含有しても良い。
図2は図1の一部(導電体20の付近)を拡大して示したスパークプラグ10の軸線Oを含む断面図である。図2は導電体20の軸線方向の中間部分の図示が省略されている(図3から図5においても同じ)。
図2に示すようにスパークプラグ10は、導電体20の軸線方向の先端側の端面20aと第1導電性ガラス21との間に第1緩衝層23が配置されている。第1緩衝層23は、第1導電性ガラス21と導電体20の端面20aとに接触する。第1緩衝層23によって導電体20と第1導電性ガラス21とは離間する。また、導電体20の軸線方向の後端側の端面20bと第2導電性ガラス22との間に第2緩衝層24が配置されている。第2緩衝層24は導電体20の端面20bと第2導電性ガラス22とに接触する。第2緩衝層24によって導電体20と第2導電性ガラス22とは離間する。なお、本実施形態では、第1緩衝層23及び第2緩衝層24は、絶縁体11の内周面12に接触している。
第1緩衝層23及び第2緩衝層24は、金属と導電性酸化物とを含む混合物または金属からなる。第1緩衝層23や第2緩衝層24に含まれる金属としては、例えばCu,Ni,Co,Pt,Rh,Pd等が挙げられる。第1緩衝層23や第2緩衝層24に含まれる導電性酸化物としては、導電体20に含まれる導電性酸化物と同じものが例示される。
第1緩衝層23や第2緩衝層24は、本実施形態では、金属からなる板材を用いて形成される。しかし、これに限られるものではない。例えば第1緩衝層23や第2緩衝層24は、金属と導電性酸化物とを含む混合物からなる板材、金属粉末と導電性酸化物の粉末とを含む混合物の堆積物、金属粉末の堆積物などから適宜形成できる。
第1導電性ガラス21は、第1緩衝層23及び絶縁体11の内周面12に接触する。第1導電性ガラス21が絶縁体11の内周面12に接触することにより、スパークプラグ10が装着された内燃機関(図示せず)の燃焼室の燃焼ガスが、絶縁体11の軸孔から漏洩しないようにできる。
導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス25が配置されている。絶縁性ガラス25は、第1緩衝層23、第2緩衝層24、導電体20及び絶縁体11に接触する。絶縁性ガラス25は、第1緩衝層23及び第2緩衝層24によって第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22の各々と離間する。導電体20と絶縁体11との間に絶縁性ガラス25が介在することにより、振動によって導電体20が破損しないようにできる。また、絶縁性ガラス25は、導電体20だけでなく第1緩衝層23及び第2緩衝層24に接触しているため、これらの一体性を高めることができる。これにより、第1緩衝層23や第2緩衝層24が導電体20から剥離し難くできる。
絶縁性ガラス25の材料としては、融点が絶縁体11の融点よりも低いもの、例えばB2O3-SiO2系、BaO-B2O3系、SiO2-B2O3-CaO-BaO系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-B2O3-Li2O系およびSiO2-B2O3-Li2O-BaO系などが挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。絶縁性ガラス25は、アルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の無機化合物を含有しても良い。
絶縁性ガラス25は第1緩衝層23と第2緩衝層24との間に介在する。絶縁性ガラス25の体積抵抗率は、導電体20の体積抵抗率よりも高いので、絶縁性ガラス25を介して第1緩衝層23と第2緩衝層24との間が短絡しないようにできる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス21と第1緩衝層23との界面26の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス22と第2緩衝層24との界面27の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4よりも長い。
スパークプラグ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11の軸孔に中心電極14を挿入し、中心電極14を後端向き面13で係止する。次に、第1導電性ガラス21の原料粉末を軸孔から入れて、中心電極14の周りに充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、中心電極14の周りに充填した第1導電性ガラス21の原料粉末を予備圧縮する。次いで、第1導電性ガラス21の原料粉末の上に、第1緩衝層23を形成するための金属製の板材を配置する。
次に、絶縁性ガラス25の材料でできたガラス管の中に導電体20(焼結体)を入れたものを軸孔に挿入し、第1緩衝層23のための板材の上に置く。導電体20及びガラス管の上に、第2緩衝層24を形成するための金属製の板材を置いた後、その上に、第2導電性ガラス22の原料粉末をペレット状に成形した成形体を置く。絶縁体11を炉内に移送し、例えば第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22の原料粉末や絶縁性ガラス25の材料に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱する。
加熱後、絶縁体11の軸孔に端子金具15を挿入し、端子金具15の先端によって第2導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22の原料粉末および絶縁性ガラス25の材料を軸方向へ圧縮する。この結果、それらが圧縮・焼結され、絶縁体11の内部に第1導電性ガラス21、第1緩衝層23、導電体20、絶縁性ガラス25、第2緩衝層24及び第2導電性ガラス22が一体化される。
次に絶縁体11を炉外へ移送し、絶縁体11の外周に主体金具16を組み付ける。接地電極19を主体金具16に接合した後、接地電極19の先端が中心電極14と対向するように接地電極19を屈曲して、スパークプラグ10を得る。
この製造方法において、導電体20を入れたガラス管を軸孔に挿入する代わりに、導電体20(焼結体)を軸孔に入れた後、導電体20の周りに絶縁性ガラス25の原料粉末を充填することは当然可能である。金属粉末等の堆積物によって第1緩衝層23や第2緩衝層24を形成する場合には、第1導電性ガラス21や第2導電性ガラス22と同様に、それらの原料粉末を軸孔に充填したり原料粉末の成形体を軸孔に挿入したりする。さらに、第2導電性ガラス22の原料粉末の成形体を軸孔に挿入する代わりに、第2導電性ガラス22の原料粉末を軸孔に充填することは当然可能である。
スパークプラグ10によれば、導電体20は、金属と導電性酸化物との混合物または金属からなる第1緩衝層23及び第2緩衝層24に接触し、第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス24と離間する。そのため、第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22に含まれる金属(粉末や粒子)が導電体20に接触する場合に比べ、第1緩衝層23及び第2緩衝層24に含まれる導電性物質(金属や導電性酸化物)と導電体20との接触面積を大きくできる。第1緩衝層23及び第2緩衝層24はそれぞれ第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス24に含まれる金属(粉末や粒子)といわゆる点接触して導通するが、この導通は第1緩衝層23及び第2緩衝層24を形成する金属によってもなされる。その結果、第1緩衝層23と第1導電性ガラス21との間、第2緩衝層24と第2導電性ガラス22との間で、それぞれオーミック接触またはオーミック接触に近い接触を実現できる。
これにより、第1緩衝層23と導電体20との間の接触抵抗、第2緩衝層24と導電体20との間の接触抵抗、第1緩衝層23と第1導電性ガラス21との間の接触抵抗、及び、第2緩衝層24と第2導電性ガラス22との間の接触抵抗を低減できる。よって、放電時にこれらの界面に電界が集中するのを緩和できる。さらに、導電体20は導電性酸化物の焼結体からなるので、酸化による導電体20の劣化を防止できる。その結果、スパークプラグ10の耐久性を向上できる。
界面26の軸線Oに直交する方向の長さL1及び界面27の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oに直交する方向の長さL2,L4よりも長いので、第1導電性ガラス21と第1緩衝層23との接触面積(界面26の面積)及び第2導電性ガラス22と第2緩衝層24との接触面積(界面27の面積)を、絶縁体11の内周面12の内側においてより大きくできる。即ち、界面26の軸線Oに直交する方向の長さL1が導電体20の端面20aの軸線Oに直交する方向の長さL2と等しい場合に比べて、界面26の面積を大きくできる。界面27の軸線Oに直交する方向の長さL3が導電体20の端面20bの軸線Oに直交する方向の長さL4と等しい場合に比べて、界面27の面積を大きくできる。その結果、界面26,27の抵抗を低減できるので、界面26,27の電界集中を緩和し、耐久性をさらに向上できる。
第1緩衝層23は導電体20の先端側のみに配置され、第2緩衝層24は導電体20の後端側のみに配置されるので、第1緩衝層23及び第2緩衝層24は導電体20の側面20cに接触しないで端面20a,20bにそれぞれ接触する。これにより、導電体20の抵抗値を、第1緩衝層23及び第2緩衝層24が接触する導電体20の端面20a,20bの面積、及び、端面20a,20b間の長さに依存させることができる。その結果、第1緩衝層23や第2緩衝層24の一部が導電体20の側面20cに回り込んで第1緩衝層23と第2緩衝層24との間の距離にばらつきが生じることによる、導電体20の電気特性のばらつきを抑制できる。
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、第1導電性ガラス21及び第2導電性ガラス22が絶縁性ガラス25と離間する場合について説明した。これに対し第2実施形態では、第1導電性ガラス31及び第2導電性ガラス32が絶縁性ガラス35に接触する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施形態におけるスパークプラグ30の一部(導電体20の付近)を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。スパークプラグ30は、第1実施形態のスパークプラグ10の一部を図3に示す部分に代えたものである。
図3に示すようにスパークプラグ30は、導電体20の端面20aと第1導電性ガラス31との間に第1緩衝層33が配置されている。導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス35が配置されている。第1緩衝層33は第1導電性ガラス21、導電体20の端面20a及び絶縁性ガラス35に接触する。第1緩衝層33によって導電体20と第1導電性ガラス31とは離間する。また、導電体20の端面20bと第2導電性ガラス32との間に第2緩衝層34が配置されている。第2緩衝層34は第2導電性ガラス32、導電体20の端面20b及び絶縁性ガラス35に接触する。第2緩衝層34によって導電体20と第2導電性ガラス32とは離間する。
第1緩衝層33及び第2緩衝層34は、例えばめっき、焼き付け塗膜、物理蒸着、化学蒸着等によって、導電体20の端面20a,20bに形成される。これらの処理によって導電体20と第1緩衝層33及び第2緩衝層34とが一体化されるので、第1導電性ガラス31等を絶縁体11に一体化するときに、第1実施形態で説明したような、第1緩衝層23や第2緩衝層24を形成するための板材等を導電体20とは別に絶縁体11の軸孔に挿入する作業を省略できる。
なお、第1導電性ガラス31と絶縁性ガラス35との界面の形状、及び、第2導電性ガラス32と絶縁性ガラス35との界面の形状は、第1導電性ガラス31等を絶縁体11に一体化するときの端子金具15による軸方向の荷重の大きさ、絶縁体11を加熱する温度、絶縁性ガラス35の軸線方向の長さ等によって適宜設定できる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス31と第1緩衝層33との界面36の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス32と第2緩衝層34との界面37の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4とほぼ等しい。これにより第2実施形態では、第1実施形態で説明したL1=L3>L2=L4による作用効果を除く、第1実施形態と同様の作用効果を実現できる。
図4を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、第1緩衝層23,33及び第2緩衝層24,34が導電体20の端面20a,20bに接触し側面20cに接触しない場合について説明した。これに対し第3実施形態では、第1緩衝層43及び第2緩衝層44が、導電体20の端面20a,20b及び側面20cに接触する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第3実施形態におけるスパークプラグ40の一部(導電体20の付近)を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。スパークプラグ40は、第1実施形態のスパークプラグ10の一部を図4に示す部分に代えたものである。
図4に示すようにスパークプラグ40は、導電体20の端面20aと第1導電性ガラス41との間に第1緩衝層43が配置されている。導電体20の側面20cと絶縁体11の内周面12との間に絶縁性ガラス45が配置されている。第1緩衝層43は第1導電性ガラス41、導電体20の端面20a及び側面20c並びに絶縁性ガラス45に接触する。第1緩衝層43によって導電体20と第1導電性ガラス41とは離間する。
また、導電体20の端面20bと第2導電性ガラス42との間に第2緩衝層44が配置されている。第2緩衝層44は第2導電性ガラス42、導電体20の端面20b及び側面20c並びに絶縁性ガラス45に接触する。第2緩衝層44によって導電体20と第2導電性ガラス42とは離間する。
スパークプラグ40の第1緩衝層43及び第2緩衝層44は、例えばめっき、塗膜の焼き付け、物理蒸着、化学蒸着等によって、導電体20の端面20a,20bに形成される。また、第1緩衝層43及び第2緩衝層44は、金属からなる板材、金属と導電性酸化物とを含む混合物からなる板材等によって形成することもできる。板材を用いて第1緩衝層43及び第2緩衝層44を形成する場合、第1緩衝層43及び第2緩衝層44の縁が屈曲した形状は、第1導電性ガラス41等を絶縁体11に一体化するときの端子金具15による軸方向の荷重の大きさ、絶縁体11を加熱する温度、絶縁性ガラス45の軸線方向の長さ等によって適宜設定できる。
本実施形態では、軸線Oを含む断面において、第1導電性ガラス41と第1緩衝層43との界面46の軸線Oに直交する方向の長さL1、及び、第2導電性ガラス42と第2緩衝層44との界面47の軸線Oに直交する方向の長さL3は、導電体20の端面20a,20bの軸線Oの直交する方向の長さL2,L4よりも長い。
第3実施形態では、導電体20の端面20a,20b及び側面20cに第1緩衝層43及び第2緩衝層44が接触するので、緩衝層が導電体20の端面20a,20bのみに接触する場合に比べ、第1緩衝層43と導電体20との接触面積、及び、第2緩衝層44と導電体20との接触面積を大きくできる。これにより、導電体20の側面20cに緩衝層が接触する分だけ、第1緩衝層43と導電体20との界面の抵抗、及び、第2緩衝層44と導電体20との界面の抵抗を低減できる。よって、第1緩衝層43と導電体20との界面、及び、第2緩衝層44と導電体20との界面の電界集中を緩和し、耐久性をさらに向上できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
第1実施形態から第3実施形態におけるスパークプラグのサンプルを作成して放電試験を行った。表1に、サンプル1~11の形態、導電体を構成する導電性酸化物の化学式、第1緩衝層および第2緩衝層を構成する物質、及び、放電試験の判定を一覧にして示す。
なお、サンプル1~11は、緩衝層の有無、導電体および緩衝層の材質の違いによる特性を評価するため、それらの違い以外の、導電体の寸法、第1導電性ガラス、第2導電性ガラス及び絶縁性ガラスの材質、スパークプラグの各部の寸法や形状等は一定にした。
サンプル1~7は第1実施形態におけるスパークプラグのサンプルである。サンプル1,2,4~7の第1緩衝層および第2緩衝層は、それぞれ同じ種類の金属製の板材によって形成された。サンプル3の第1緩衝層および第2緩衝層は、金属(Pt)と導電性酸化物(La2CuO4)との混合物からなる板材によって形成された。サンプル8は第2実施形態におけるスパークプラグのサンプルである。サンプル8の第1緩衝層および第2緩衝層は、Cuめっきにより形成された。サンプル9は第3実施形態におけるスパークプラグのサンプルである。サンプル9の第1緩衝層および第2緩衝層は、Cu製の板材によって形成された。
サンプル10,11は比較例である。比較例におけるスパークプラグ50は、サンプル1~9と異なり、第1緩衝層および第2緩衝層が省略されている。図5は比較例におけるスパークプラグ50(サンプル10,11)の一部を拡大して示した軸線Oを含む断面図である。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5に示すようにスパークプラグ50は、絶縁体11の内周面12の内側に導電体20、第1導電性ガラス51、第2導電性ガラス52及び絶縁性ガラス53が配置されている。第1導電性ガラス51は導電体20の端面20a及び絶縁性ガラス53に接触し、第2導電性ガラス52は導電体20の端面20b及び絶縁性ガラス53に接触する。
1~11の各サンプルについて、端子金具15と中心電極14との間に5Vの直流電圧を加えて抵抗値を測定し、予め測定した抵抗温度特性を用いて、そのときの測定値を20℃のときの抵抗値に補正した。このときの抵抗値は各サンプルとも1kΩであった。
次いで、各サンプルを425℃の環境下におき、放電電圧を45kVに設定し、1秒間に100回の割合で400時間、中心電極14と接地電極19との間に火花を飛ばす試験を行った。試験後、1時間放置し、試験前と同様にして抵抗値を測定し、そのときの測定値を20℃のときの抵抗値に補正した。試験前後の抵抗値の変化率が±10%未満のサンプルはA、その変化率が±10%以上±20%未満のサンプルはB、その変化率が±20%以上±30%未満のサンプルはC、その変化率が±30%以上のサンプルはDと判定した。結果は表1に記した。
表1に示すようにサンプル1~9(実施例)は判定がA又はBであったのに対し、サンプル10,11(比較例)は判定がDであった。判定がCのサンプルは無かった。導電体と第1導電性ガラスとの間に第1緩衝層が介在し、導電体と第2導電性ガラスとの間に第2緩衝層が介在するサンプル1~9は、導電性ガラスと導電体との間に緩衝層が介在しない比較例に比べ、試験前後の抵抗変化率を小さくすることができた。サンプル1~9は、導電体と導電性ガラスとの界面の電界集中を抑制できたからであると推察される。
特にサンプル1~3,5,8,9は、サンプル4,6,7に比べ、さらに試験前後の抵抗変化率を小さくすることができた。サンプル1~3,5,8,9は、サンプル4,6,7と異なり、第1緩衝層および第2緩衝層が、導電体が含有する金属元素と同じ金属元素を1種以上含有する。これにより、第1緩衝層や第2緩衝層と導電体との相互作用を生じ難くすることができ、抵抗変化率をより小さくすることができたと推察される。
以上、実施形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらに何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
実施例では、第1緩衝層および第2緩衝層をそれぞれ同一種類の部材で形成したサンプルについて説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1緩衝層および第2緩衝層の材質や第1緩衝層および第2緩衝層の作り方を異ならせることは当然可能である。
実施形態では、導電体20が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。導電体20は絶縁体11の内周面12の内側に配置できる大きさ及び形状であれば良いので、例えば直方体状に形成された導電体20を採用することは当然可能である。
実施形態では、中心電極14の先端に接地電極19が対向するスパークプラグ10,30,40について説明したが、スパークプラグの構造は必ずしもこれに限られるものではない。スパークプラグの他の構造としては、例えば、中心電極14の側面に接地電極19が対向するスパークプラグ、主体金具16に複数の接地電極19を接合した多極のスパークプラグが挙げられる。