JP6996019B1 - スパッタリングターゲット材、及びスパッタリングターゲット材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】主面における周縁部を除く全域で、局所的な不良領域が出現しておらず、膜質が均一な大径の圧電膜を有する圧電積層体を得る。【解決手段】直径が3インチ以上の主面を有する基板と、基板上に製膜され、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物からなる圧電膜と、を備え、圧電膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、圧電膜の主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている。【選択図】図1

Description

本開示は、圧電積層体、圧電積層体の製造方法、スパッタリングターゲット材、及びスパッタリングターゲット材の製造方法に関する。
圧電体は、センサ、アクチュエータ等の機能性電子部品に広く利用されている。圧電体として、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む圧電体が提案されており、このような圧電体を用いてスパッタリング法により製膜された圧電膜(KNN膜)を有する積層体(以下、圧電積層体)が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2011-146623号公報
特許文献1には、スパッタリング法を用いて基板上にKNN膜を製膜する際に用いられるターゲット材のプラズマに晒される面の磁場の強さや、KNN膜の下地となる膜の結晶の向きを制御することにより、KNN膜に対してX線回折測定を行った際における(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅を0.5°以上2.5°以下の範囲内にすることが開示されている。また、特許文献1には、KNN膜の膜質の面内均一性を向上させるために、基板を自公転させながらKNN膜をスパッタ製膜すること等も開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、量産で用いられるような直径3インチ以上の大径のターゲット材を用いて、スパッタリング法により、直径3インチ以上の大径の基板上にKNN膜を製膜した場合、KNN膜の主面内に、上記半値幅が上記範囲から外れる領域(不良領域)が局所的に出現することが判明した。すなわち、特許文献1に記載の技術では、KNN膜の主面内に膜質(膜特性)が局所的に劣化する領域が出現することが判明した。このことは、発明者等の鋭意研究によって初めて明らかとなった新規課題である。
本開示は、主面における周縁部を除く全域で、局所的な不良領域が出現しておらず、膜質が均一な大径の圧電膜を有する圧電積層体およびその関連技術を提供することを目的とする。
本開示の一態様によれば、
直径3インチ以上の主面を有する基板と、
前記基板上に製膜され、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物からなる圧電膜と、を備え、
前記圧電膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、前記圧電膜の主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている圧電積層体およびその関連技術が提供される。
本開示によれば、主面における周縁部を除く全域で、局所的な不良領域が出現しておらず、膜質が均一な大径の圧電膜を有する圧電積層体を得ることが可能となる。
本開示の一態様にかかる圧電積層体の断面構造の一例を示す図である。 本開示の一態様にかかる圧電積層体の断面構造の変形例を示す図である。 X線回折の測定点を示す圧電膜の主面の平面図である。 本開示の一態様にかかる圧電デバイスモジュールの概略構成の一例を示す図である。 本開示の一態様にかかるスパッタリングターゲット材の概略構成の一例を示す図である。 スパッタリングターゲット材を作製する際に用いられる成型装置の概略図、および処理室内の温度分布を示すグラフ図である。 本開示の一態様にかかる圧電デバイスモジュールの断面構造の変形例を示す図である。
<発明者等が得た知見>
スパッタリング法を用いて基板上に製膜されるKNN膜の膜質は、スパッタ製膜に用いられるターゲット材のプラズマに晒される面(以下、「スパッタ面」とも称する)における電磁場の強さや、KNN膜の下地となる膜(下地膜)の結晶の向き(結晶の配向)に強く影響を受けることが分かっている。KNN膜の膜質の面内均一性を向上させるために、基板を自公転させながらKNN膜をスパッタ製膜すること等も行われている。しかしながら、スパッタ面における電磁場の強さや下地膜の結晶の向きを調整(制御)したり、基板を自公転させながらスパッタ製膜を行ったりしたとしても、量産で用いられるような、直径3インチ以上の大径のスパッタ面を有するターゲット材を用い、直径3インチ以上の大径の基板上にKNN膜を製膜すると、KNN膜の主面内に、周囲に比べて膜質が局所的に劣る不良領域が、不可避的に出現してしまうという新規課題を、発明者等は発見した。なお、ここでいう不良領域とは、例えば、KNN膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅(以下、FWHM(001))の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まらない局所的な領域のことをいう。
発明者等は、上記課題について鋭意研究を行った。その結果、大径のスパッタ面を有するターゲット材では、スパッタ面内に、結晶の向きがランダムになっていない領域が局所的に存在しており、スパッタ製膜の際にそのような領域で異常放電が生じることが、基板上に製膜されるKNN膜の主面内に、上述の不良領域を出現させる要因となっていることを突き止めた。なお、「結晶の向きがランダムになっていない領域」は、結晶の無配向性が低下している領域とも称することができ、具体的には、スパッタ面に対してX線回折測定を行った際、(001)面からのX線回折ピークの強度に対する、(110)面からのX線回折ピーク強度の比率Rの値が、0.3以上5以下の範囲に収まっていない領域のことをいう。
発明者等は、「結晶の向きがランダムになっていない領域」がターゲット材のスパッタ面内に局所的に出現するメカニズムについて、鋭意研究を行った。KNNのターゲット材は、例えば、カリウム(K)の化合物からなる粉体、ナトリウム(Na)の化合物からなる粉体、及びニオブ(Nb)の化合物からなる粉体を所定の比率で混合した混合物を圧縮成型して成型体を作製し、得られた成型体を焼成することにより作製することができる。しかしながら、成型体を焼成する際、成型体の表面内(スパッタ面となる面内)の温度を均一とするよう温度調整を試みても、成型体の表面内の温度を完全に均一にすることは困難である。特に、直径3インチ以上のスパッタ面を有するターゲット材を作製する際には、成型体の表面内の温度を完全に均一にすることは現実的には非常に困難である。焼成時に成型体の表面内に所定の臨界値を超えた温度勾配(温度ムラ)があると、すなわち、成型体の表面内の温度が完全に均一でないと、温度勾配が大きい領域では、温度勾配が小さい領域に比べて、その温度勾配に沿って、成型体の表面における沿面方向に結晶(結晶粒)が成長しやすくなる。その結果、焼成後の成型体の表面(スパッタ面)を垂直方向上方から見たときに、沿面方向に大きく成長した結晶(例えば直径が30μmを超える結晶粒)が局所的に存在する領域が出現することとなってしまい、その領域においては、他の領域(直径30μm未満の結晶が多数集結してなる領域)に比べて、結晶の向きがランダムにならない(大きく成長した結晶の露出面に大きく影響を受ける)ことになってしまう。このようにして、ターゲット材のスパッタ面における結晶の無配向性が、局所的に低下してしまうのである。
発明者等は、ターゲット材のスパッタ面における結晶の無配向性が局所的に低下する現象を回避する手法について、鋭意研究を行った。その結果、成型体の焼成時に、成型体の厚さ方向に温度勾配を意図的に付けることで、成型体の表面内に温度ムラがある場合であっても、成型体の表面における沿面方向への結晶成長を抑制することができ、これにより、スパッタ面の結晶の無配向性の局所的な低下を回避できる、との知見を得るに至った。
本開示は、発明者等が得た上述の知見や課題に基づいてなされたものである。
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について図面を参照しながら説明する。
(1)圧電積層体の構成
図1に示すように、本態様にかかる圧電膜を有する積層体10(以下、圧電積層体10とも称する)は、基板1と、基板1上に設けられた下部電極膜2と、下部電極膜2上に設けられた圧電膜(圧電薄膜)3と、圧電膜3上に設けられた上部電極膜4と、を備えている。なお、本態様では、1枚の基板1上に1つの積層構造体(少なくとも、下部電極膜2と、圧電膜3と、上部電極膜4とを積層させて形成した構造体)が設けられている場合を例に説明する。
基板1は、直径が3インチ以上の主面を有している。基板1は平面視で円形の外形を有している。基板1の外形(基板1の主面の平面形状)は、円形の他、楕円形や四角形または多角形等の種々の形状とすることもできる。この場合、基板1は、内接円の直径が3インチ以上の主面を有していることが好ましい。基板1としては、熱酸化膜またはCVD(Chemical Vapor Deposition)酸化膜等の表面酸化膜(SiO膜)1bが形成された単結晶シリコン(Si)基板1a、すなわち、表面酸化膜を有するSi基板を好適に用いることができる。また、基板1としては、図2に示すように、その表面にSiO以外の絶縁性材料により形成された絶縁膜1dを有するSi基板1aを用いることもできる。また、基板1としては、表面にSi(100)面またはSi(111)面等が露出したSi基板1a、すなわち、表面酸化膜1bまたは絶縁膜1dを有さないSi基板を用いることもできる。また、基板1としては、SOI(Silicon On Insulator)基板、石英ガラス(SiO)基板、ガリウム砒素(GaAs)基板、サファイア(Al)基板、ステンレス(SUS)等の金属材料により形成された金属基板を用いることもできる。単結晶Si基板1aの厚さは例えば300μm以上1000μm以下、表面酸化膜1bの厚さは例えば1nm以上4000nm以下とすることができる。
下部電極膜2は、例えば、白金(Pt)を用いて製膜することができる。下部電極膜2は、多結晶膜である。以下、Ptを用いて製膜した多結晶膜をPt膜とも称する。Pt膜は、その(111)面が基板1の主面に対して平行である((111)面が基板1の主面に対して±5°以内の角度で傾斜している場合を含む)こと、すなわち、Pt膜は(111)面方位に配向していることが好ましい。Pt膜が(111)面方位に配向しているとは、X線回折(XRD)測定により得られたX線回折パターンにおいて(111)面に起因するピーク以外のピークが観察されないことを意味する。このように、下部電極膜2の主面(圧電膜3の下地となる面)は、Pt(111)面により構成されていることが好ましい。下部電極膜2は、スパッタリング法、蒸着法等を用いて製膜することができる。下部電極膜2は、Pt以外に、金(Au)、ルテニウム(Ru)、またはイリジウム(Ir)等の各種金属、これらを主成分とする合金、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO、略称:SRO)またはニッケル酸ランタン(LaNiO、略称:LNO)等の金属酸化物等を用いて製膜することもできる。下部電極膜2は、上記各種金属または金属酸化物等を用いて製膜した単層膜とすることができる。下部電極膜2は、Pt膜とPt膜上に設けられたSROからなる膜との積層体や、Pt膜とPt膜上に設けられたLNOからなる膜との積層体等であってもよい。なお、基板1と下部電極膜2との間には、これらの密着性を高めるため、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、酸化チタン(TiO)、ニッケル(Ni)、ルテニウム酸化物(RuO)、イリジウム酸化物(IrO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主成分とする密着層6が設けられていてもよい。密着層6は、スパッタリング法、蒸着法等の手法を用いて製膜することができる。下部電極膜2の厚さ(下部電極膜2が積層体である場合は、各層の合計厚さ)は例えば100nm以上400nm以下とすることができ、密着層6の厚さは例えば1nm以上200nm以下とすることができる。
圧電膜3は、例えば、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ニオブ(Nb)、および酸素(O)を含むアルカリニオブ酸化物からなる膜である。圧電膜3は、組成式(K1-xNa)NbOで表されるアルカリニオブ酸化物、すなわち、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)を用いて製膜することができる。上述の組成式中の係数x[=Na/(K+Na)]は、0<x<1、好ましくは0.4≦x≦0.7の範囲内とすることができる。圧電膜3は、KNNの多結晶膜(以下、KNN膜3とも称する)となる。KNNの結晶構造はペロブスカイト構造となる。すなわち、KNN膜3はペロブスカイト構造を有する。また、KNN膜3を構成する結晶群のうち半数以上の結晶が柱状構造を有していることが好ましい。なお、本明細書では、KNNの結晶系を正方晶系とみなすこととする。KNN膜3は、スパッタリング法等の手法を用いて製膜することができる。KNN膜3の厚さは例えば0.5μm以上5μm以下とすることができる。
KNN膜3は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、バナジウム(V)、インジウム(In)、Ta、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、Ti、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、Ni、アルミニウム(Al)、Si、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ガリウム(Ga)のいずれか一種以上の元素(ドーパント)を含有することができる。KNN膜3中におけるこれらの元素の濃度は、例えば5at%以下(上述の元素を複数含有している場合は合計濃度が5at%以下)とすることができる。
KNN膜3を構成する結晶は、基板1(基板1が例えば表面酸化膜1bまたは絶縁膜1d等を有するSi基板1aである場合はSi基板1a)の主面に対して(001)面方位に優先配向していることが好ましい。すなわち、KNN膜3の主面(上部電極膜4の下地となる面)は、主にKNN(001)面により構成されていることが好ましい。例えば、主面が主にPt(111)面により構成されているPt膜(下部電極膜2)上にKNN膜3を直接製膜することにより、主面が主にKNN(001)面により構成されたKNN膜3を容易に得ることができる。
本明細書において、KNN膜3を構成する結晶が(001)面方位に配向しているとは、KNN膜3を構成する結晶の(001)面が基板1の主面に対して平行または略平行であることを意味する。また、KNN膜3を構成する結晶が(001)面方位に優先配向しているとは、(001)面が基板1の主面に対して平行または略平行である結晶が多いことを意味する。例えば、KNN膜3を構成する結晶群のうち80%以上の結晶が基板1の主面に対して(001)面方位に配向していることが好ましい。すなわち、KNN膜3を構成する結晶の(001)面方位への配向率は例えば80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、本明細書における「配向率」とは、KNN膜3に対してXRD測定を行うことにより得られたX線回折パターン(2θ/θ)のピーク強度に基づいて、下記(数1)により算出した値である。
(数1)
配向率(%)={(001)ピーク強度/((001)ピーク強度+(110)ピーク強度)}×100
なお、上記(数1)における「(001)ピーク強度」とは、KNN膜3に対してXRD測定を行うことにより得られるX線回折パターンにおいて、KNN膜3を構成する結晶のうち(001)面方位に配向する結晶(すなわち、(001)面が基板1の主面に対して平行である結晶)に起因する回折ピークの強度であり、2θが20°以上23°以下の範囲内に現れるピークの強度である。なお、2θが20°以上23°以下の範囲内に複数のピークが現れる場合は、最も高いピークの強度である。また、上記(数1)における「(110)ピーク強度」とは、KNN膜3に対してXRD測定を行うことにより得られるX線回折パターンにおいて、KNN膜3を構成する結晶のうち(110)面方位に配向する結晶(すなわち、(110)面が基板1の主面に対して平行である結晶)に起因する回折ピークの強度であり、2θが30°以上33°以下の範囲内に現れるピークの強度である。なお、2θが30°以上33°以下の範囲内に複数のピークが現れる場合は、最も高いピークの強度である。
KNN膜3は、直径が3インチ以上の主面(上面)、すなわち大径の主面を有している。KNN膜3では、KNN膜3の主面内における周縁部を除く内側の全域で、局所的な不良領域が出現しておらず、膜質が均一である。具体的には、KNN膜3に対してXRD測定を行った際における(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM(001))の値が、KNN膜3の主面における周縁部を除く内側の全域で、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている。ここで、「KNN膜3の主面における周縁部を除く内側の全域において、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている」とは、図3に示すように、KNN膜3の主面において、縁から5mmの外周領域3aよりも内側の領域3b(縁から5mmの外周領域3aを除く領域)について、格子状に1cm間隔でXRD測定を行ったときの全点において、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっていることを意味する。なお、図3中に、FWHM(001)の測定点を●印で示す。また、以下では、「KNN膜3の主面における周縁部を除く内側の全域」を、「KNN膜3の主面全域」とも記載する。
KNN膜3の主面全域で、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっていることで、KNN膜3の膜特性を、KNN膜3の主面全域で均一(面内均一)にすることができる。これにより、1つの圧電積層体10から得た複数の後述の圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)間で、特性にバラツキが生じることを回避できる。その結果、圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)の歩留りや信頼性を向上させることができる。
上部電極膜4は、例えば、Pt、Au、Al、Cu等の各種金属またはこれらの合金を用いて製膜することができる。上部電極膜4は、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法、金属ペースト法等の手法を用いて製膜することができる。上部電極膜4は、下部電極膜2のようにKNN膜3の結晶構造に大きな影響を与えるものではない。そのため、上部電極膜4の材料、結晶構造、製膜手法は特に限定されない。なお、KNN膜3と上部電極膜4との間には、これらの密着性を高めるため、例えば、Ti、Ta、TiO、Ni、RuO、IrO等を主成分とする密着層が設けられていてもよい。上部電極膜4の厚さは例えば100nm以上5000nm以下、密着層を設ける場合には密着層の厚さは例えば1nm以上200nm以下とすることができる。
(2)圧電デバイスモジュールの構成
図4に、KNN膜3を有するデバイスモジュール30(以下、圧電デバイスモジュール30とも称する)の概略構成図を示す。上述の圧電積層体10を所定形状に成形することで、図4に示すような素子(デバイス)20(KNN膜3を有する素子20、以下、圧電素子20とも称する)が得られる。圧電デバイスモジュール30は、圧電素子20と、圧電素子20に接続される電圧印加手段11aまたは電圧検出手段11bと、を少なくとも備えている。電圧印加手段11aは、下部電極膜2と上部電極膜4との間に電圧を印加するための手段であり、電圧検出手段11bは、下部電極膜2と上部電極膜4との間に発生した電圧を検出するための手段である。電圧印加手段11a、電圧検出手段11bとしては、公知の種々の手段を用いることができる。
電圧印加手段11aを、圧電素子20の下部電極膜2と上部電極膜4との間に接続することで、圧電デバイスモジュール30をアクチュエータとして機能させることができる。電圧印加手段11aにより下部電極膜2と上部電極膜4との間に電圧を印加することで、KNN膜3を変形させることができる。この変形動作により、圧電デバイスモジュール30に接続された各種部材を作動させることができる。この場合、圧電デバイスモジュール30の用途としては、例えば、インクジェットプリンタ用のヘッド、スキャナー用のMEMSミラー、超音波発生装置用の振動子等が挙げられる。
電圧検出手段11bを、圧電素子20の下部電極膜2と上部電極膜4との間に接続することで、圧電デバイスモジュール30をセンサとして機能させることができる。KNN膜3が何らかの物理量の変化に伴って変形すると、その変形によって下部電極膜2と上部電極膜4との間に電圧が発生する。この電圧を電圧検出手段11bによって検出することで、KNN膜3に印加された物理量の大きさを測定することができる。この場合、圧電デバイスモジュール30の用途としては、例えば、角速度センサ、超音波センサ、圧カセンサ、加速度センサ等が挙げられる。
圧電デバイスモジュール30(圧電素子20)は、主面全域で、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっているKNN膜3を有する圧電積層体10から作製している。このため、1つの圧電積層体10から得た複数の圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)間で、特性にバラツキが生じることを回避できる。すなわち、1つの圧電積層体10から特性が均一な複数の圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)を得ることができる。
例えば、大径の基板1上に、密着層6としてのTi層(厚さ:2nm)、下部電極膜2としてのPt膜(厚さ:200nm)、KNN膜3(厚さ:2μm)、KNN膜3と上部電極膜4との間の密着性を高める密着層としてのRuO層(厚さ:30nm)、上部電極膜4としてのPt膜(厚さ:100nm)が、順に設けられた1つの圧電積層体10を加工することにより得た複数の圧電デバイスモジュール30において、下部電極膜2と上部電極膜4との間に-100kV/cmの電界を印加した際、全ての圧電デバイスモジュール30の圧電定数-e31を10C/m以上にできる。また例えば、上記複数の圧電デバイスモジュール30において、下部電極膜2と上部電極膜4との間に-150kV/cmの電界を印加した際、全ての圧電デバイスモジュール30のリーク電流密度を、1×10-5A/cm以下にできる。ここで、本明細書における「下部電極膜2と上部電極膜4との間に-100kV/cm又は-150kV/cmの電界を印加する」とは、上部電極膜4側をマイナス、下部電極膜2側をアースにして、上部電極膜4と下部電極膜2との間にKNN膜3の厚さ方向の上向き(下部電極膜2から上部電極膜4に向かう向き)に100kV/cm又は150kV/cmの電界が生じるように、上部電極膜4に対して負電圧を印加することを意味する。
このように、複数の圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)間で特性が均一になることで、圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)の歩留りや信頼性を向上させることができる。
(3)圧電積層体、圧電素子、圧電デバイスモジュールの製造方法
上述の圧電積層体10、圧電素子20、および圧電デバイスモジュール30の製造方法について説明する。
(密着層および下部電極膜の製膜)
まず、主面の直径が3インチ以上の大径の基板1を用意し、基板1のいずれかの主面上に、例えばスパッタリング法により密着層6(例えばTi層)および下部電極膜2(例えばPt膜)をこの順に製膜する。なお、いずれかの主面上に、密着層6や下部電極膜2が予め製膜された基板1を用意してもよい。
密着層6を設ける際の条件としては、下記の条件が例示される。
温度(基板温度):100℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下
放電パワー:1000W以上1500W以下、好ましくは1100W以上1300W以下
雰囲気:アルゴン(Ar)ガス雰囲気
雰囲気圧力:0.1Pa以上0.5Pa以下、好ましくは0.2Pa以上0.4Pa以下
時間:30秒以上3分以下、好ましくは45秒以上2分以下
下部電極膜2を製膜する際の条件としては、下記の条件が例示される。
温度(基板温度):100℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下
放電パワー:1000W以上1500W以下、好ましくは1100W以上1300W以下
雰囲気:Arガス雰囲気
雰囲気圧力:0.1Pa以上0.5Pa以下、好ましくは0.2Pa以上0.4Pa以下
時間:3分以上10分以下、好ましくは4分以上8分以下、より好ましくは5分以上6分
以下
(KNN膜の製膜)
密着層6および下部電極膜2の製膜が終了したら、続いて、下部電極膜2上に、例えばRFマグネトロンスパッタリング法等のスパッタリング法によりKNN膜3を製膜する。このとき、K、Na、Nb、及びOを含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなる後述のターゲット材100を用いる。ターゲット材100は、直径が3インチ以上であって周縁部を除く内側の全域において結晶の向きがランダムなスパッタ面101を有している。ターゲット材100の詳細については後述する。KNN膜3の組成比は、例えば、ターゲット材100の組成を制御することで調整可能である。
KNN膜3を製膜する際の条件としては、下記の条件が例示される。なお、製膜時間は、KNN膜3の厚さに応じて適宜設定することができる。
放電パワー:2000W以上2400W以下、好ましくは2100W以上2300W以下
雰囲気:Arガス+酸素(O)ガスの混合ガス雰囲気
雰囲気圧力:0.2Pa以上0.5Pa以下、好ましくは0.2Pa以上0.4Pa以下
ガスに対するArガスの分圧(Ar/O分圧比):30/1~20/1、好ましくは27/1~22/1
製膜温度:500℃以上700℃以下、好ましくは550℃以上650℃以下
製膜速度:0.5μm/hr以上2μm/hr以下、好ましくは0.5μm/hr以上1.5μm/hr以下
周縁部を除く内側の全域において結晶の向きがランダムなスパッタ面101を有する後述のターゲット材100を用い、上述の条件下でKNN膜3を製膜することにより、スパッタ製膜時にスパッタ面全域にわたり異常放電が生じることを回避できる。これにより、大径の基板1上(大径の基板1上に製膜された大径の下部電極膜2上)に大径のKNN膜3を製膜する場合であっても、KNN膜3の主面に局所的な不良領域が出現することを回避することができる。すなわち、主面全域で均一な膜質を有する大径のKNN膜3を得ることができる。具体的には、主面全域で、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることができる。
(上部電極膜の製膜)
KNN膜3の製膜が終了したら、KNN膜3上に、例えばスパッタリング法により、上部電極膜4を製膜する。上部電極膜4を製膜する際の条件は、上述の下部電極膜2を製膜する際の条件と同様の条件とすることができる。これにより、図1に示すような圧電積層体10が得られる。
(圧電素子および圧電デバイスモジュールの作製)
そして、得られた圧電積層体10をエッチング等により所定形状に成形する(所定パターンに微細加工を行う)。これにより、図4に示すような圧電素子20が得られ、圧電素子20に電圧印加手段11aまたは電圧検出手段11bを接続することで圧電デバイスモジュール30が得られる。エッチング方法としては、例えば、反応性イオンエッチング等のドライエッチング法、所定のエッチング液を用いたウェットエッチング法を用いることができる。
圧電積層体10をドライエッチングにより成形する場合、圧電積層体10(例えば上部電極膜4)上に、ドライエッチングに対するエッチングマスクとしてのフォトレジストパターンをフォトリソグラフィプロセス等により形成する。エッチングマスクとして、Cr膜、Ni膜、Pt膜、Ti膜等の貴金属膜(メタルマスク)をスパッタリング法により形成してもよい。そして、エッチングガスとしてハロゲン元素を含むガスを用いて圧電積層体10(上部電極膜4、KNN膜3等)に対してドライエッチングを行う。なお、ハロゲン元素には、塩素(Cl)、フッ素(F)等が含まれる。ハロゲン元素を含むガスとしては、BClガス、SiClガス、Clガス、CFガス、Cガス等を用いることができる。
圧電積層体10をウェットエッチングにより成形する場合、圧電積層体10(例えば上部電極膜4)上に、ウェットエッチングに対するエッチングマスクとしての酸化シリコン(SiO)膜等を形成する。そして、例えばキレート剤のアルカリ水溶液を含みフッ酸を含まないエッチング液中に圧電積層体10を浸漬させ、圧電積層体10(上部電極膜4、KNN膜3等)に対してウェットエッチングを行う。なお、キレート剤のアルカリ水溶液を含みフッ酸を含まないエッチング液としては、キレート剤としてのエチレンジアミン四酢酸と、アンモニア水と、過酸化水素水とを混合したエッチング液を用いることができる。
(4)ターゲット材の構成
以下、KNN膜3をスパッタ製膜する際に用いるスパッタリングターゲット材100の構成について、図5を参照しながら詳細に説明する。ターゲット材100は、例えば、In等の接着剤を介してバッキングプレートに固着された後、スパッタ面101にプラズマが照射されるようにスパッタリング装置に装着される。なお、上述のように、「スパッタ面」とは、ターゲット材100が有する面のうち、スパッタ製膜時にプラズマに晒されることとなる面(スパッタ製膜時にイオンが衝突する面)である。
図5は、本態様に係るターゲット材100の一例を示す概略構成図である。図5では、スパッタ面101が上になる向きでターゲット材100を図示している。
ターゲット材100は、K、Na、Nb、及びOを含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体、すなわちKNN焼結体により構成されている。ターゲット材100は、0<Na/(K+Na)<1、好ましくは、0.4≦Na/(K+Na)≦0.7の範囲内の組成を有している。ターゲット材100は、複数のKNNの結晶粒で構成されている。
ターゲット材100は、ドーパントとして、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaのいずれか一種以上の元素を含有していてもよい。ターゲット材100における上記元素の濃度は例えば5at%以下(複数種の元素を含有する場合は、合計濃度が5at%以下)とすることができる。
ターゲット材100は円形の外形を有している。すなわち、ターゲット材100は、平面視で円形のスパッタ面101を有している。スパッタ面101の直径は、例えば3インチ以上とすることができる。なお、ターゲット材100の外形(スパッタ面101の平面形状)は、円形の他、楕円形や四角形または多角形等の種々の形状とすることもできる。この場合、スパッタ面101の内接円の直径を例えば3インチ以上とすることができる。このように、ターゲット材100は、直径3インチ以上のスパッタ面101、すなわち大径のスパッタ面101を有している。
ターゲット材100は、スパッタ面101に対してXRD測定を行った際における、(001)ピーク強度に対する、(110)ピーク強度の比率R(=(110)ピーク強度/(001)ピーク強度)が、スパッタ面101における周縁部を除く内側の全域において、0.3以上5以下、好ましくは1.2以上5以下、より好ましくは1.2以上3以下の範囲内に収まるように構成されている。
なお、ここでいう「(001)ピーク強度」とは、スパッタ面101に対してXRD測定を行った際における(001)面からのX線回折ピーク強度、すなわち、スパッタ面101に対してXRD測定を行うことにより得られるX線回折パターンにおいて、ターゲット材100を構成する結晶のうち(001)面方位に配向する結晶に起因する回折ピークの強度であり、2θが20°以上23°以下の範囲内に現れるピークの強度である。なお、2θが20°以上23°以下の範囲内に複数のピークが現れる場合は、最も高いピークの強度である。また、ここでいう「(110)ピーク強度」とは、スパッタ面101に対してXRD測定を行った際における(110)面からのX線回折ピーク強度、すなわち、スパッタ面101に対してXRD測定を行うことにより得られるX線回折パターンにおいて、ターゲット材100を構成する結晶のうち(110)面方位に配向する結晶に起因する回折ピークの強度であり、2θが30°以上33°以下の範囲内に現れるピークの強度である。なお、2θが30°以上33°以下の範囲内に複数のピークが現れる場合は、最も高いピークの強度である。
また、「比率Rが、スパッタ面101の周縁部を除く内側の全域において、0.3以上5以下の範囲内に収まっている」とは、スパッタ面101のうち、縁から5mmの領域(周縁部)を除いた領域(縁から5mmの領域よりも内側の領域)について、格子状に1cm間隔でXRD測定を行ったときの全点(直径3インチのスパッタ面101である場合は37点)で、比率Rの値が0.3以上5以下であることを意味する。以下では、「スパッタ面101の周縁部を除く内側の全域」を、「スパッタ面全域」とも記載する。
このように、ターゲット材100では、大径のスパッタ面101であっても、局所的に結晶の向きがランダムになっていない領域、すなわち、結晶の無配向性が局所的に低下している領域がなく、スパッタ面全域で、結晶の向きがランダムになっている。好ましくは、ターゲット材100では、スパッタ面全域及びスパッタ面101に平行な任意の面の周縁部を除く全域(以下、「スパッタ面101に平行な面全域」とも称する)で、粒径が30μmを超える結晶粒が局所的に密集している領域が観察されない。さらに好ましくは、ターゲット材100では、スパッタ面全域及びスパッタ面101に平行な面全域で、粒径が30μmを超える結晶粒が観察されない。すなわち、ターゲット材100は、スパッタ面全域及びスパッタ面101に平行な面全域にわたって、粒径が例えば0.1μm以上30μm以下、好ましくは0.1μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下の結晶粒で構成されている。
このようなターゲット材100を用いて直径3インチ以上の基板1上にKNN膜3をスパッタ製膜することにより、スパッタ製膜時にスパッタ面全域にわたり異常放電が生じることを回避できる。その結果、主面全域において、FWHM(001)の値が0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることができる。
また、ターゲット材100の相対密度は、スパッタ面全域にわたって、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。なお、ここでいう相対密度(%)とは、(実測密度/KNNの理論密度)×100により算出した値である。なお、KNNの理論密度は、4.51g/cmである。また、ターゲット材100の抗折強度は、スパッタ面全域にわたって、10MPa以上、好ましくは30MPa以上、より好ましくは40MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上である。なお、ここでいう抗折強度とは、3点曲げ試験(JIS R1601:2008に準拠)にて測定した値である。このように、スパッタ面全域にわたって、相対密度が60%以上であったり、抗折強度が10MPa以上であったりすることで、ターゲット材100を用いたスパッタ製膜時に、スパッタ面全域にわたって異常放電が発生することを確実に回避することが可能となる。
また、ターゲット材100は高抵抗であることが好ましい。例えば、ターゲット材100の体積抵抗率が1000kΩcm以上であることが好ましい。これにより、良好な絶縁性を有するKNN膜3を得ることが可能となる。なお、体積抵抗率の上限値は特に限定されないが、例えば100MΩcm以下とすることができる。
(5)ターゲット材の製造方法
以下、スパッタ面全域において、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材100の製造方法について、図6を参照しながら詳細に説明する。
本態様におけるターゲット材100の作製シーケンスでは、
Kの化合物からなる粉体と、Naの化合物からなる粉体と、Nbの化合物からなる粉体と、を所定の比率で混合して混合物を得る処理(混合処理)と、
混合物に対して所定の圧力(荷重)を加えて成型加工して直径3インチ以上の成型体を得る処理(圧縮成型処理)と、
成型体の表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、表面から裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下、成型体を加熱して焼成して焼結体を得る処理(焼成処理)と、
を行う。なお、本態様では、圧縮成型処理と、焼成処理と、を同時に(一括で)行う場合について説明する。
また、混合処理を行った後、圧縮成型処理を行う前に、
焼成処理における加熱温度よりも低い温度で混合物を加熱して仮焼成する処理(仮焼成処理)と、
仮焼成後の混合物を粉砕する処理(粉砕処理)と、
をさらに行ってもよい。この場合、圧縮成型処理では、仮焼成後に粉砕した混合物に対して所定の圧力を加えることとなる。
また、焼成処理を行った後、焼結体を所定温度で加熱する処理(熱処理)をさらに行ってもよい。
(混合処理)
Kの化合物からなる粉体と、Naの化合物からなる粉体と、Nbの化合物からなる粉体と、を所定の比率で混合して混合物を得る。
具体的には、まず、Kの化合物からなる粉体と、Naの化合物からなる粉体と、Nbの化合物からなる粉体と、を用意する。
Kの化合物とは、Kの酸化物、Kの複合酸化物、および加熱することにより酸化物となるKの化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)からなる群より選択される少なくとも1つである。Kの化合物からなる粉体としては、例えば炭酸カリウム(KCO)粉末を用いることができる。
Naの化合物とは、Naの酸化物、Naの複合酸化物、および加熱することにより酸化物となるNaの化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)からなる群より選択される少なくとも1つである。Naの化合物からなる粉体としては、例えば炭酸ナトリウム(NaCO)粉末を用いることができる。
Nbの化合物とは、Nbの酸化物、Nbの複合酸化物、または加熱することにより酸化物となるNbの化合物からなる群より選択される少なくとも1つである。Nbの化合物からなる粉体としては、例えば酸化ニオブ(Nb)粉末を用いることができる。
また、所定のドーパントを含むターゲット材100を作製する場合は、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaのいずれか一種以上の元素の化合物からなる粉末を用意する。上記各元素の化合物の粉体とは、上記各元素の酸化物粉末、上記各元素の複合酸化物粉末、および加熱することにより酸化物となる上記各元素の化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)の粉末からなる群より選択される少なくとも1つである。
そして、ターゲット材100の組成が所定組成となるように、上記各粉体の混合比率を調整し、各粉体を秤量する。秤量は、大気中で行ってもよいが、ターゲット材100の組成比のズレの発生を回避する観点から、Arガスや窒素(N)ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。また、ターゲット材100の組成比のズレの発生を確実に回避する観点から、各粉体を充分に乾燥(脱水)した後に秤量を行うことが好ましい。
続いて、各粉体を、ボールミルやビーズミル等の混合器を用いて混合(湿式混合)する。混合を行う際の条件としては、下記の条件が例示される。
溶媒:エタノール等の有機溶媒または水
混合時間:5時間以上30時間以下、好ましくは10時間以上26時間以下
混合雰囲気:大気中
上述の条件下で混合を行うことにより、粉体が凝集することを回避できる。その結果、ターゲット材100の組成を、スパッタ面全域及びスパッタ面101に平行な面全域において均一にすることができる。
(仮焼成・粉砕処理)
混合処理が終了したら、混合処理で得た混合物を、後述の焼成処理における加熱温度よりも低い温度で加熱して仮焼成する(仮焼成処理)。
仮焼成を行う際の条件としては、下記の条件が例示される。
加熱温度:650℃以上1100℃以下、好ましくは700℃以上900℃以下、より好ましくは700℃以上800℃未満であって、後述の焼成処理における加熱温度よりも低い温度
加熱時間:1時間以上50時間以下、好ましくは5時間以上40時間以下、より好ましくは10時間以上35時間以下
仮焼成処理が終了したら、ボールミル等を用いて仮焼成後の混合物を粉砕しながら混合する(粉砕処理)。
粉砕を行う際の条件としては、下記の条件が例示される。
粉砕(混合)時間:3時間以上10時間以下、好ましくは5時間以上9時間以下
その他の条件は、上述の混合処理における条件と同様の条件とすることができる。
(圧縮成型処理・焼成処理)
仮焼成・粉砕処理が終了したら、例えば図6に示す成型装置200を用い、仮焼成後に粉砕・混合して得た混合物に対して所定の圧力を加えて成型加工(圧縮成型)して成型体を得る処理(圧縮成型処理)と、成型体を所定条件下で加熱して焼成して焼結体を得る処理(焼成処理)と、を同時に行う。すなわち、圧縮成型処理を行いつつ焼成処理を行うホットプレス焼結を行う。
図6に示す成型装置200は、SUS等からなり、処理室201が内部に構成されたチャンバ203を備えている。処理室201内には、混合物210が充填(収容)される治具(金型)208が設けられている。治具208は、グラファイト等の材料からなり、直径3インチ以上の成型体(焼結体)を形成可能なように構成されている。処理室201内には、治具208内に充填された混合物210に対して所定の圧力を加えることが可能なように構成された押圧手段217(例えば油圧プレス式の押圧手段217)が設けられている。また、処理室201の内部には、治具208内の混合物210を所望の温度に加熱するヒータ207が設けられている。ヒータ207は、処理室201の上部から下部に向かって上部ヒータ207a、中央ヒータ207b、下部ヒータ207cが順に分割して配置されるとともに、治具208の内側ゾーンを加熱する内側ヒータ207d、治具208の外側ゾーンを加熱する外側ヒータ207eが分割して配置された構成となっている。上部ヒータ207a、中央ヒータ207b、下部ヒータ207cのそれぞれは円筒形状であり、内側ヒータ207d、外側ヒータ207eのそれぞれはドーナツ形状であり、個別に温度制御が可能なように構成されている。また、処理室201の内部には、処理室201内の温度を測定する温度センサ209が設けられている。成型装置200が備える各部材は、コンピュータとして構成されたコントローラ280に接続されており、コントローラ280上で実行されるプログラムによって、後述する手順や条件が制御されるように構成されている。
圧縮成型処理・焼成処理は、上述の成型装置200を用い、例えば以下の手順で実施することができる。
まず、仮焼成後に粉砕・混合して得た混合物210を治具208に充填する。そして、押圧手段217により治具208内の混合物210に対して図6に白抜きの矢印で示すように押圧面に対して垂直方向に所定の圧力を加えて成型体を形成する。
圧縮成型を行う際の条件としては、下記の条件が例示される。
印加圧力(荷重):100kgf/cm以上500kgf/cm以下
加圧時間:1時間以上5時間以下、好ましくは2時間以上4時間以下
雰囲気:不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気
圧縮成型を行う際の荷重を100kgf/cm以上500kgf/cm以下とすることで、所定の機械的強度を有するターゲット材100を得つつ、治具208の破損を回避することができる。荷重が100kgf/cm未満であると、圧縮が不充分となり、その結果、機械的強度の低い焼結体となることがある。機械的強度が低いと、ターゲット材100の作製中にクラックが発生しやすくなり、歩留まりが低下することがある。また、このような焼結体からなるターゲット材100を用いた場合、KNN膜3の製膜中においてもターゲット材100にクラックが発生し、その結果、KNN膜3の結晶品質や膜厚等の諸物性が局所的に低下する場合がある。また、荷重が500kgf/cmを超えると、治具208が破損する可能性が高くなる。
また、上述の条件下で圧縮成型処理を行いつつ、成型体を所定条件下で加熱して焼成する。
焼成処理は、成型体(治具208内の混合物210)の表面内の温度(焼成温度)が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、成型体の表面から裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、成型体(混合物210)を、1時間以上5時間以下加熱して行う。このとき、処理室201内(成型体、混合物210)の温度が所望の温度分布となるように(例えば、処理室201内の温度分布が図6にグラフ図で示すような分布となるように)、温度センサ209が検出した温度に基づいてヒータ207a~207cの温度を制御しつつ、成型体の表面内の温度が均一になるように温度センサ209が検出した温度に基づいてヒータ207d,207eの温度を制御しながら、成型体(混合物210)を加熱する。なお、本明細書において、成型体の表面とは、ターゲット材100においてスパッタ面101となる面であり、成型体の裏面とは、成型体の表面とは反対側の面である。
焼成を行う際の条件としては、下記の条件が例示される。
焼成温度:800℃以上1150℃以下、好ましくは900℃以上1150℃以下、より好ましくは1000℃以上1150℃以下
温度勾配:成型体の表面から裏面へ向かう方向に10℃/mm以上、好ましくは、10℃/mm以上15℃/mm以下で上昇する勾配
焼成時間(加熱時間):1時間以上5時間以下、好ましくは2時間以上3時間以下
なお、加熱(焼成)の開始タイミングおよび終了タイミングは特に限定されない。加熱は、加圧開始と同時に開始してもよく、加圧開始よりも前に開始してもよく、加圧開始よりも後に開始してもよい。また、加熱は、加圧終了と同時に終了してもよく、加圧終了よりも前に終了してもよく、加圧終了よりも後に終了してもよい。
上述の条件下で圧縮成型・焼成を行うことにより、スパッタ面全域において結晶の向きがランダムな大径のターゲット材100を得ることができる。具体的には、スパッタ面101となる面全域において上記比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径の焼結体を得ることができる。その結果、スパッタ面全域において上記比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる。
特に、焼成時に成型体の表面から裏面に向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を意図的に付けることにより、スパッタ面全域において比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる。というのも、焼成時に上述の温度勾配を意図的に付けることにより、焼成時に成型体の表面内に所定の臨界値を超えた温度勾配(温度ムラ)が生じている場合であっても、成型体の表面内における温度勾配に沿って、成型体の表面における沿面方向(以下、単に「沿面方向」とも称する)に結晶が成長(固相成長)することを抑制できる。これにより、例えば、粒径が30μmを超える結晶粒が局所的に密集している領域の出現を回避することができる。また例えば、粒径が30μmを超える結晶粒の出現を回避することもできる。その結果、大径のスパッタ面101であっても、上記比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっていない領域が局所的に出現することを回避することができる。すなわち、スパッタ面101の結晶の無配向性の局所的な低下を回避できる。
また、焼成時に上述の温度勾配を意図的に付けることにより、沿面方向への結晶成長を抑制する効果が得られることから、スパッタ面全域及びスパッタ面101に平行な面全域において、粒径が30μmを超える結晶が観察されないターゲット材100を得ることもできる。すなわち、スパッタ面全域及びスパッタ面101に平行な面全域が、粒径が0.1μm以上30μm以下、好ましくは0.1μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下の結晶で構成されているターゲット材100を得ることもできる。
なお、上述の温度勾配が10℃/mm未満である場合、焼成時における沿面方向への結晶成長を抑制する上述の効果が得られにくくなる。
上述の温度勾配は、例えば15℃/mm以下とすることができる。これにより、表面と裏面との間で、結晶の配向が大きく異なることがない、すなわち、結晶の配向がほぼ同様であるターゲット材100を得ることができる。その結果、1つのターゲット材100を用いて作製した複数の圧電積層体10間で、KNN膜3の結晶品質等の諸物性や特性を均一にすることが可能となる。すなわち、圧電積層体10の作製中にラン・トゥ・ラン(run-to-run)でKNN膜3の諸物性や特性が変わってしまうことを回避することができる。その結果、圧電素子20や圧電デバイスモジュール30の歩留りや信頼性をさらに向上させることができる。
また、焼成時に、成型体の表面内の温度が均一(面内均一)になるように、すなわち、成型体の表面内に温度勾配ができるだけ生じないように温度センサ209が検出した温度に基づいてヒータ207d,207eの温度を制御しながら、成型体(混合物210)を加熱することにより、沿面方向への結晶成長を抑制する効果を確実に得ることができる。その結果、スパッタ面全域において比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を確実に得ることができる。
焼成温度を成型体の表面全面にわたって800℃以上1150℃以下にしたり、焼成時間を1時間以上5時間以下にしたりすることにより、沿面方向への結晶成長を抑制しつつ、充分な焼成(焼結)を行うことができる。その結果、スパッタ面全域において比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているとともに、充分な機械的強度を有するターゲット材100を得ることができる。
焼成温度が800℃未満である場合(焼成温度が成型体の表面全面にわたって800℃以上でない場合を含む)や、焼成時間が1時間未満である場合、焼成が不充分となり、その結果、機械的強度の低い焼結体となることがある。このため、ターゲット材100の作製中やKNN膜3の製膜中に、ターゲット材100にクラックが発生しやすくなる。
また、焼成温度が1150℃を超える場合や、焼成時間が5時間を超える場合、成型体の厚さ方向に所定の温度勾配を付けたとしても、沿面方向への結晶成長を抑制することができず、結晶が大きく成長してしまうことがある。その結果、スパッタ面101内に結晶の向きがランダムになっていない領域が局所的に出現することがある。
また、上述の条件下で圧縮成型・焼成を行うことにより、特に、焼成時に上述の温度勾配を意図的に付けることにより、スパッタ面全域にわたって、相対密度が60%以上であったり、抗折強度が10MPa以上であるターゲット材100を得ることも可能となる。
(熱処理)
圧縮成型処理・焼成処理が終了したら、上述の成型装置200を用い、得られた焼結体に対して所定の熱処理を行う。熱処理は、焼結体の表面(スパッタ面101となる面)内の温度が均一(面内均一)になるように、温度センサ209が検出した温度に基づいてヒータ207a~207eの温度を制御しながら行うことが好ましい。
熱処理の条件としては、以下の条件が例示される。
温度:600℃以上900℃以下、好ましくは700℃以上800℃以下
雰囲気:大気又は酸素含有雰囲気
時間:1時間以上20時間以下、好ましくは5時間以上15時間以下
焼成処理によって治具208に含まれる炭素(C)と混合物210中のOとが反応し、焼結体中に酸素欠損が生じていたとしても、上述の条件下で熱処理を行うことにより、焼結体中の欠損した酸素を補充することができる。その結果、より高抵抗なターゲット材100を得ることが可能となる。例えば、体積抵抗率が1000kΩcm以上であるターゲット材100を得ることが可能となる。
(仕上げ処理)
熱処理が終了したら、必要に応じて熱処理後の成型体の外形や厚さを調整したり、表面を研磨して表面状態を整えたりする。これにより、図5に示すようなターゲット材100が得られる。
(6)効果
本開示によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
(a)本態様に係るKNN膜3では、大径(直径3インチ以上)であっても、主面全域において局所的な不良領域が出現していない。すなわち、KNN膜3は、主面全域において、FWHM(001)の値が0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている。このため、KNN膜3は、主面全域で均一な膜質を有することとなり、KNN膜3の膜特性は、KNN膜3の主面全域で均一になる。その結果、1つの圧電積層体10を加工することにより得られる複数の圧電素子20、圧電デバイスモジュール30間で、特性にバラツキが生じることを回避できる。これにより、圧電素子20、圧電デバイスモジュール30の歩留りや信頼性を向上させることが可能となる。
(b)スパッタ面全域で比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材100を用いて、KNN膜3をスパッタ製膜することにより、スパッタ製膜時にスパッタ面全域にわたり異常放電が生じることを回避できる。その結果、大径の基板1上に大径のKNN膜3をスパッタ製膜した場合であっても、KNN膜3の主面全域に、局所的な不良領域の出現を回避することができる。すなわち、上述のターゲット材100を用いてKNN膜3を製膜することにより、主面全域でFWHM(001)の値が0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることができる。
ここで、スパッタ面の結晶の向き(結晶の配向性)の評価手法として、例えば、スパッタ面の中心1点と、半径1/2の点を90°間隔で4点と、外周縁から所定距離内側の点を90°間隔で4点と、の合計9点で、比率Rを算出して評価する手法も考えられる。しかしながら、この評価手法では、本態様に比べて評価点が少ないため、スパッタ面全域の結晶の向きを正確に評価できないことがある。特に、直径3インチ以上のスパッタ面を有する大径のターゲット材である場合、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっていない領域(結晶の向きがランダムになっていない領域)が局所的に出現しているにも関わらず、その領域を見出せないことがある。
これに対し、本態様に係るターゲット材100では、スパッタ面101の縁から5mmの領域である周縁部を除いた領域について、格子状に1cm間隔でXRD測定を行ったときの全点(例えば直径3インチのスパッタ面101で37点)で、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている。このようなターゲット材100を用いて大径の基板1上にKNN膜3をスパッタ製膜することにより、主面全域でFWHM(001)の値が0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることが可能となる。
(c)上述の焼成処理において、成型体の表面から裏面に向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で成型体を加熱することにより、沿面方向への結晶成長を抑制することができる。その結果、スパッタ面全域において、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる。
(d)上述の焼成処理において、焼成温度が成型体の表面全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、上述の温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下、成型体を加熱することにより、スパッタ面全域において、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているとともに、充分な機械的強度を有する大径のターゲット材100を得ることができる。
(7)変形例
本態様は、以下の変形例のように変形することができる。なお、以下の変形例の説明において、上述の態様と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上述の態様および以下の変形例は任意に組み合わせることができる。
(変形例1)
圧電積層体10は、下部電極膜2を備えていなくてもよい。すなわち、圧電積層体10は、大径の基板1と、基板1上に製膜された大径のKNN膜3と、KNN膜3上に製膜された上部電極膜4(電極膜)と、を備えて構成されていてもよい。
図7に、本変形例にかかる圧電積層体10を用いて作製した圧電デバイスモジュール30の概略構成図を示す。圧電デバイスモジュール30は、圧電積層体10を所定の形状に成形して得られる圧電素子20と、圧電素子20に接続される電圧印加手段11aおよび電圧検出手段11bと、を少なくとも備えて構成されている。本変形例では、圧電素子20は、電極膜を所定のパターンに成形することで形成されたパターン電極を有している。例えば、圧電素子20は、入力側の正負一対のパターン電極4pと、出力側の正負一対のパターン電極4pと、を有している。パターン電極4p,4pとしては、くし型電極(Inter Digital Transducer、略称:IDT)が例示される。
電圧印加手段11aをパターン電極4p間に接続し、電圧検出手段11bをパターン電極4p間に接続することで、圧電デバイスモジュール30を表面弾性波(Surface Acoustic Wave、略称:SAW)フィルタ等のフィルタデバイスとして機能させることができる。電圧印加手段11aによりパターン電極4p間に電圧を印加することで、KNN膜3にSAWを励起させることができる。励起させるSAWの周波数の調整は、例えばパターン電極4pのピッチを調整することで行うことができる。例えば、パターン電極4pとしてのIDTのピッチが短くなるほど、SAWの周波数は高くなり、上記ピッチが長くなるほど、SAWの周波数は低くなる。電圧印加手段11aにより励起され、KNN膜3を伝搬してパターン電極4pに到達したSAWのうち、パターン電極4pとしてのIDTのピッチ等に応じて定まる所定の周波数(周波数成分)を有するSAWにより、パターン電極4p間に電圧が発生する。この電圧を電圧検出手段11bによって検出することで、励起させたSAWのうち所定の周波数を有するSAWを抽出することができる。なお、ここでいう「所定の周波数」という用語は、所定の周波数だけでなく、中心周波数が所定の周波数である所定の周波数帯域を含み得る。
本変形例においても、スパッタ面全域で比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材100を用いて、KNN膜3をスパッタ製膜することにより、主面全域において、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることができる。
また、本変形例においても、大径のKNN膜3の主面全域で、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている。このため、KNN膜3の膜特性を、KNN膜3の主面全域で均一にすることができる。これにより、本変形例においても、1つの圧電積層体10から得た複数の圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)間で、特性にバラツキが生じることを回避できる。その結果、圧電素子20(圧電デバイスモジュール30)の歩留りや信頼性を向上させることができる。
(変形例2)
上述の態様では、ターゲット材100を作製する際の混合処理において、Kの化合物からなる粉体(例えばKCO粉末)と、Naの化合物からなる粉体(例えばNaCO粉末)と、Nbの化合物からなる粉体(例えばNb粉末)と、を所定の比率で混合させる場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、混合処理では、KおよびNbを含む化合物からなる粉体と、NaおよびNbを含む化合物からなる粉体と、を所定の比率で混合して混合物を得てもよい。
KおよびNbを含む化合物とは、KおよびNbを含む酸化物(複合酸化物)、および加熱することにより酸化物となるKおよびNbを含む化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)からなる群より選択される少なくとも1つである。KおよびNbを含む化合物の粉体としては、例えば、KNbO粉末を用いることができる。KNbO粉末は、例えば、Kの化合物(例えばKCO粉末)とNbの化合物(例えばNb粉末)とを混合して仮焼し、ボールミル等を用いて仮焼後の混合物を粉砕・混合することにより得ることができる。
NaおよびNbを含む化合物とは、NaおよびNbを含む酸化物(複合酸化物)、および加熱することにより酸化物となるNaおよびNbを含む化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)からなる群より選択される少なくとも1つである。NaおよびNbを含む化合物の粉体としては、例えば、NaNbO粉末を用いることができる。NaNbO粉末は、例えば、Naの化合物(例えばNaCO粉末)とNbの化合物(例えばNb粉末)とを混合して仮焼し、ボールミル等を用いて仮焼後の混合物を粉砕・混合することにより得ることができる。
この場合、KNbO粉末とNaNbO粉末との混合比率、KNbO粉末作製時のKの化合物とNbの化合物との混合比率、NaNbO粉末作製時のNaの化合物とNbの化合物との混合比率を調整することでターゲット材100の組成を制御することができる。
本変形例では、KNbO粉末作製時およびNaNbO粉末作製時の仮焼の条件は、上述の態様の仮焼成処理の条件と同様の条件とすることができ、混合の条件は、上述の態様の混合処理の条件と同様の条件とすることができる。
本変形例によっても、焼成処理において、成型体の表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下、成型体の表面から裏面に向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下、成型体を加熱することにより、スパッタ面全域で、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる。また、このターゲット材100を用いてKNN膜3をスパッタ製膜することにより、主面全域においてFWHM(001)の値が0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることができる。
(変形例3)
上述の態様や変形例では、混合処理や粉砕処理において、各粉体の混合方式が湿式混合である例について説明したが、これに限定されるものではない。混合処理における混合方式は乾式混合であってもよい。すなわち、混合処理において、アトライタ等の混合器を用いて各粉体を混合してもよい。
(変形例4)
上述の態様では、圧縮成型処理と焼成処理とを同時に行う例、すなわちホットプレス焼結を行う例について説明したが、これに限定されない。例えば、圧縮成型処理を行った後、焼成処理を行ってもよい。すなわち、例えば図6に示す成型装置200を用い、治具208内の混合物210に対して所定の圧力を加えて圧縮成型して成型体を得た後、成型体を所定条件下で加熱して焼成し、焼結体を得てもよい。
本変形例における圧縮成型処理の条件は、下記の条件が例示される。
温度:室温(25℃)以上、好ましくは25℃以上50℃以下
その他の条件は、上述の態様の圧縮成型処理と同様の条件とすることができる。
本変形例においても、焼成処理において、成型体の表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、成型体の表面から裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下、成型体を加熱する。本変形例における焼成処理のその他の条件は、上述の態様の焼成処理と同様の条件とすることができる。
本変形例によっても、上述の条件の焼成処理を行うことにより、スパッタ面全域で比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる。また、このターゲット材100を用いてKNN膜3をスパッタ製膜することにより、主面全域においてFWHM(001)の値が0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜3を得ることができる。
(変形例5)
上述の態様や変形例では、圧縮成型処理~熱処理までの一連の処理を1つの成型装置200内で行う例について説明したが、これに限定されない。圧縮成型処理、焼成処理、熱処理を、それぞれ、異なる装置で行ってもよく、これらの処理のうちの2つの処理を同一の装置で行い、他の処理を異なる装置で行ってもよい。
(変形例6)
上述の態様では、仮焼成処理、粉砕処理、熱処理を実施する例について説明したが、これに限定されない。これらの処理は必要に応じて実施すればよい。すなわち、スパッタ面全域で比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる限り、これらの処理を不実施としてもよい。
(変形例7)
上述の態様では、ヒータ207が、上部ヒータ207a、中央ヒータ207b、下部ヒータ207cが配置されるとともに、内側ヒータ207d、外側ヒータ207eが配置された構成である例について説明したが、これに限定されない。成型体の表面内の温度を全面にわたり800℃以上1150℃以下にするとともに、成型体の表面から裏面に向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で焼成処理を行うことができれば、ヒータ207の構成は特に限定されない。
(変形例8)
例えば、仮焼成処理、焼成処理、および熱処理の各処理における加熱は、複数回に分けて行ってもよい。本変形例によっても、スパッタ面全域で比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっている大径のターゲット材100を得ることができる。
(変形例9)
例えば、治具208は、回転軸を介して回転機構に接続され、回転自在に構成されていてもよい。そして、回転軸を介して回転機構により治具208を回転させつつ、上述の態様や変形例の熱処理、変形例4の焼成処理等を行ってもよい。これにより、成型体や焼結体を面内均一に加熱しやすくなり、ターゲット材100の諸物性等をスパッタ面全域において均一にすることが容易となる。
(変形例10)
例えば、下部電極膜2とKNN膜3との間、すなわちKNN膜3の直下に、KNN膜3を構成する結晶の配向を制御する配向制御層が設けられてもよい。なお、下部電極膜2を設けない場合は、基板1とKNN膜3との間に、配向制御層が設けられてもよい。配向制御層は、例えば、SRO、LNO、チタン酸ストロンチウム(SrTiO、略称:STO)等の金属酸化物であって、下部電極膜2を構成する材料とは異なる材料を用いて形成することができる。配向制御層を構成する結晶は、基板1の主面に対して(100)面に優先配向していることが好ましい。これにより、KNN膜3の配向率を例えば80%以上、好ましくは90%以上に容易かつ確実にすることができる。
(変形例11)
上述の態様では、1枚の基板1上に1つの積層構造体が形成された例について説明したが、これに限定されない。例えば、1枚の基板1上に複数の積層構造体が形成されていてもよい。この場合、複数の積層構造体のそれぞれが、下部電極膜2とKNN膜3と上部電極膜4とを有していることが好ましい。変形例1に係る態様の場合、複数の積層構造体のそれぞれが、KNN膜3と電極膜4とを有していることが好ましい。1つ以上の積層構造体が形成された基板1を圧電積層基板とも称する。
(変形例12)
例えば、上述の圧電積層体10を圧電素子20に成形する際、圧電積層体10(圧電素子20)を用いて作製した圧電デバイスモジュール30をセンサまたはアクチュエータ等の所望の用途に適用することができる限り、圧電積層体10から基板1を除去してもよい。
以下、上述の態様の効果を裏付ける実験結果について説明する。
(サンプル1,2)
サンプル1,2として、図6に示す成型装置200を用い、Mnを所定濃度で含む(K1-xNa)NbO焼結体からなる直径3インチのターゲット材を作製した。
サンプル1,2は、それぞれ、混合処理と、仮焼成・粉砕処理と、圧縮成型処理と、焼成処理と、熱処理とを行うことにより作製した。また、圧縮成型処理と焼成処理とを同時に(一括で)行った。混合処理では、Na/(K+Na)の値が0.55となるように、KCO粉末、NaCO粉末、Nb粉末を混合するとともに、Mnを所定濃度で含むように、MnO粉末を混合し、混合物を作製した。圧縮成型処理では、荷重を300kgf/cmとして成型体を作製した。焼成処理では、成型体の表面内の温度(焼成温度)が全面にわたり900℃であって、表面から裏面へ向かう方向に10℃/mmで上昇する温度勾配を有する条件下で、成型体を3時間加熱した。各処理におけるその他の条件は、上述の態様に記載の処理条件範囲内の所定の条件とした。
(サンプル3~8)
サンプル3~8では、焼成処理における成型体の表面から裏面へ向かう方向に上昇する温度勾配を、サンプル1から変更した。具体的には、サンプル3,4では、上記温度勾配を12℃/mmとし、サンプル5,6では、上記温度勾配を15℃/mmとし、サンプル7では、上記温度勾配を5℃/mmとし、サンプル8では、上記温度勾配を7℃/mmとした。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル9~13)
サンプル9~13では、焼成処理における焼成温度を、サンプル1から変更した。具体的には、サンプル9では、焼成温度を成型体の表面全面にわたって750℃とし、サンプル10では、焼成温度を成型体の表面全面にわたって800℃とし、サンプル11では、焼成温度を成型体の表面全面にわたって1000℃とし、サンプル12では、焼成温度を成型体の表面全面にわたって1150℃とし、サンプル13では、焼成温度を成型体の表面全面にわたって1200℃とした。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル14~17)
サンプル14~17では、圧縮成型処理における荷重を、サンプル1から変更した。具体的には、サンプル14では、荷重を100kgf/cmとし、サンプル15では、荷重を200kgf/cmとし、サンプル16では、荷重を400kgf/cmとし、サンプル17では、荷重を500kgf/cmとした。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル18~23)
サンプル18~23では、焼成処理において成型体を加熱する時間(焼成時間)を、サンプル1から変更した。具体的には、サンプル18では、焼成時間を0.5時間とし、サンプル19では、焼成時間を1時間とし、サンプル20では、焼成時間を2時間とし、サンプル21では、焼成時間を4時間とし、サンプル22では、焼成時間を5時間とし、サンプル23では、焼成時間を5.5時間とした。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル24)
サンプル24では、Mn等のドーパントを含まない(K1-xNa)NbO焼結体からなる直径3インチのターゲット材を作製した。具体的には、混合処理において、Na/(K+Na)の値が0.55となるように、KCO粉末、NaCO粉末、Nb粉末を混合し、MnO粉末を混合せずに混合物を作製した。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル25)
サンプル25では、圧縮成型処理を行った後、焼成処理を行った。すなわち、圧縮成型処理と熱処理とを別々に行った。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル26)
サンプル26では、圧縮成型処理と焼成処理とを別々に行った。その他は、サンプル24を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル27,28)
サンプル27,28では、(K1-xNa)NbO焼結体の組成、すなわち、ターゲット材の組成を、サンプル1から変更した。具体的には、サンプル27では、混合処理において、Na/(K+Na)の値が0.40となるように、KCO粉末、NaCO粉末、Nb粉末を混合した。サンプル28では、Na/(K+Na)の値が0.70となるように、KCO粉末、NaCO粉末、Nb粉末を混合して混合物を作製した。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル29~32)
サンプル29~32では、ドーパントとしてのCuを所定濃度で含む(K1-xNa)NbO焼結体からなる直径4インチのターゲット材を作製した。具体的には、サンプル29~32では、混合処理において、MnO粉末の代わりにCuO粉末を所定の割合で混合して混合物を作製した。また、サンプル30では、焼成処理における上述の温度勾配を12℃/mmとし、サンプル31では、上述の温度勾配を3℃/mmとし、サンプル32では、上述の温度勾配を8℃/mmとした。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
(サンプル33~36)
サンプル33~26では、Cuを所定濃度で含むとともにMnを所定濃度で含む(K1-xNa)NbO焼結体からなる直径6インチのターゲット材を作製した。具体的には、サンプル33~36では、混合処理において、CuO粉末およびMnO粉末をそれぞれ所定の割合で混合して混合物を作製した。また、サンプル34では、焼成処理における上述の温度勾配を14℃/mmとし、サンプル35では、上述の温度勾配を4℃/mmとし、サンプル36では、上述の温度勾配を9℃/mmとした。その他は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
<評価>
サンプル1~36のターゲット材について、割れ評価、比率Rの評価を行うとともに、各サンプルを用いてスパッタ製膜したKNN膜の評価を行った。
(割れ評価)
各サンプルについて、クラックの発生の有無を目視で評価した。その結果、サンプル9およびサンプル18にクラックが発生しており、サンプル9,18を除く他のサンプルには、クラックが発生していないことを確認した。このことから、焼成温度が800℃未満であったり、焼成時間が1時間未満であると、焼成が不充分となり、機械的強度の低い焼結体となることが確認できる。
(比率Rの評価)
クラックが発生していたサンプル9,18を除く他のサンプルのそれぞれについて、ターゲット材のスパッタ面に対してXRD測定を行い、(001)ピーク強度に対する(110)ピークの強度の比率Rを算出した。XRD測定は、スパッタ面の縁から5mmの領域を除いた領域について、格子状に1cm間隔で行った。すなわち、直径が3インチのサンプル(サンプル1~28)では37点でXRD測定を行い、直径が4インチのサンプル(サンプル29~32)では69点でXRD測定を行い、直径が6インチのサンプル(サンプル33~36)では147点でXRD測定を行った。また、比率Rは、XRD測定点の全点で算出した。算出結果を下記の表1に示す。なお、表1中の比率Rの評価において、「合格測定点」とは、比率Rが0.3以上5以下の範囲内である測定点の数であり、「合格率」とは、全測定点の数に対する、合格測定点の数の割合(=合格測定点の数/全測定点の数)である。
(KNN膜の評価)
クラックが発生していたサンプル9,18を除く他のサンプルを用い、下記の手順でKNN膜を製膜した。
サンプル1,3,5,7,8,10~17,19~28を用いたスパッタ製膜では、まず、基板として、直径が4インチであり、厚さが510μmであり、表面が(100)面方位であり、表面に厚さが200nmの熱酸化膜(SiO膜)が形成されたSi基板を用意した。そして、この基板上(熱酸化膜上)に、密着層としてのTi層(厚さ:2nm)、下部電極膜としてのPt膜(基板の主面に対して(111)面方位に配向、厚さ:200nm)、圧電膜として、直径が4インチのKNN膜(基板の表面に対して(001)面方位に優先配向、厚さ:2μm)を、順に、RFマグネトロンスパッタリング法により製膜した。
サンプル2,4,6,29~36を用いたスパッタ製膜では、まず、基板として、直径が6インチであり、厚さが610μmであり、表面が(100)面方位であり、表面に厚さが200nmの熱酸化膜(SiO膜)が形成されたSi基板を用意した。そして、この基板上(熱酸化膜上)に、密着層としてのTi層(厚さ:2nm)、下部電極膜としてのPt膜(基板の主面に対して(111)面方位に配向、厚さ:200nm)、圧電膜として、直径が6インチのKNN膜(基板の表面に対して(001)面方位に優先配向、厚さ:2μm)を、順に、RFマグネトロンスパッタリング法により製膜した。
Ti層を製膜する際の条件は、下記の通りとした。
温度(基板温度):300℃
放電パワー:1200W
雰囲気:Arガス雰囲気
雰囲気圧力:0.3Pa
製膜速度:30秒で2.5nm厚さのTi層が製膜される速度
Pt膜を製膜する際の条件は、下記の通りとした。
温度(基板温度):300℃
放電パワー:1200W
雰囲気:Arガス雰囲気
雰囲気圧力:0.3Pa
時間:5分
KNN膜を製膜する際のターゲット材としては、上記サンプル9,18以外の各サンプルを用いた。KNN膜を製膜する際の条件は、下記の通りとした。
放電パワー:2200W
雰囲気:Arガス+Oガスの混合ガス雰囲気
雰囲気圧力:0.3Pa
Ar/O分圧比:25/1
温度(基板温度):600℃
製膜速度:1μm/hr
そして、スパッタ製膜したKNN膜に対してXRD測定を行い、FWHM(001)の値を取得した。XRD測定は、KNN膜の主面(上面)の縁から5mmの領域を除いた領域について、格子状に1cm間隔で行った。すなわち、直径が4インチのKNN膜では69点でXRD測定を行い、直径が6インチのKNN膜では147点でXRD測定を行った。測定結果を下記の表1に示す。なお、表1中のKNN膜の評価において、「合格測定点」とは、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°の範囲内である測定点の数であり、「合格率」とは、全測定点の数に対する、合格測定点の数の割合(=合格測定点の数/全測定点の数)である。
Figure 0006996019000002
表1から、ドーパントとしてMn及びCuのうち少なくともいずれかを含むターゲット材、ドーパントを含まないターゲット材のいずれにおいても、成型体の表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、成型体の表面から裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、成型体を1時間以上5時間以下加熱して焼成処理(以下、「所定条件の焼成処理」とも称する)を行うことにより、スパッタ面全域で、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材を得ることができることが確認できる(サンプル1~6,10~12,19~22,24,29,30,33,34参照)。すなわち、上記条件下で焼成処理を行うことにより、スパッタ面全域で、結晶の向きがランダムなターゲット材を得ることができることが確認できる。
また、発明者等は、焼成処理における上記温度勾配が15℃/mm以下であれば、スパッタ面全域で、比率Rを0.3以上5以下の範囲内に収めつつ、ターゲット材のスパッタ面とスパッタ面とは反対側の面との間で結晶の配向をほぼ同様にできることを確認した。
また、表1から、焼成処理における上記温度勾配が10℃/mm未満である場合、比率Rの合格率が1未満となる、すなわち、スパッタ面全域で、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材が得られない場合があることが確認できる(サンプル7,8,31,32,35,36参照)。これは、焼成時における成型体表面の沿面方向への結晶成長を抑制する効果が得られにくくなるためと考えられる。
また、表1から、焼成温度が1150℃を超える場合や、焼成時間が5時間を超える場合、スパッタ面全域で、比率Rの合格率が1未満となる、すなわち、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材が得られない場合があることが確認できる(サンプル13,23参照)。これは、焼成温度が1150℃を超える場合や焼成時間が5時間を超える場合、上記温度勾配を有する条件下で焼成処理を行ったとしても、沿面方向への結晶成長を抑制することができなかったため、スパッタ面内に結晶の向きがランダムになっていない領域が局所的に生じたと考えられる。
また、表1から、圧縮成型処理における荷重が100kgf/cm以上500kgf/cm以下の範囲内であれば、クラックの発生を回避しつつ、スパッタ面全域で結晶の向きがランダムなターゲット材を得ることができることが確認できる(サンプル14~17参照)。また、発明者等は、圧縮成型処理における荷重が上記範囲内であれば、圧縮成型の際に用いる治具に破損がなかったことも確認した。
また、表1から、圧縮成型処理を行った後に焼成処理を行った場合であっても、所定の焼成処理を行うことにより、スパッタ面全域で、結晶の向きがランダムなターゲット材を得ることができることが確認できる(サンプル25,26参照)。
また、表1から、ターゲット材におけるKNNの組成によらずに、所定の焼成処理を行うことにより、スパッタ面全域で、結晶の向きがランダムなターゲット材を得ることができることが確認できる(サンプル27,28参照)。
また、表1から、スパッタ面全域で、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材を用いて、大径の基板上にKNN膜をスパッタ製膜することにより、主面全域において、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜を得ることができることが確認できる。さらにまた、表1から、スパッタ面全域で、比率Rが0.3以上5以下の範囲内に収まっているターゲット材を用いて、大径の基板上にKNN膜をスパッタ製膜した場合、合格率が1未満となる、すなわち、主面全域において、FWHM(001)の値が、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている大径のKNN膜が得られないことが確認できる。すなわち、KNN膜の主面内に、局所的な不良領域が出現していることが確認できる。
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本開示の一態様によれば、
直径が3インチ以上の主面を有する基板と、
前記基板上に製膜され、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物からなる圧電膜と、を備え、
前記圧電膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、前記圧電膜の主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている圧電積層体が提供される。
(付記2)
付記1に記載の積層体であって、好ましくは、
前記圧電膜は、ドーパントとして、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaのいずれか一種以上を含有する。
(付記3)
付記1または2に記載の積層体であって、好ましくは、
前記基板と前記圧電膜との間に下部電極膜が製膜されている。
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の積層体であって、好ましくは、
前記圧電膜上に上部電極膜が製膜されている。
(付記5)
本開示の他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材を用意する工程と、
直径が3インチ以上の主面を有する基板を用意する工程と、
前記スパッタリングターゲット材を用い、前記基板上に前記アルカリニオブ酸化物からなり、X線回折測定を行った際における(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている圧電膜を製膜する工程と、を有する
圧電積層体の製造方法が提供される。
(付記6)
本開示のさらに他の態様によれば、
直径が3インチ以上の主面を有する基板と、
前記基板上に製膜された下部電極膜と、
前記下部電極膜上に製膜され、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物からなる圧電膜と、
前記圧電膜上に製膜された上部電極膜と、を備え、
前記圧電膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、前記圧電膜の主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている圧電素子(圧電デバイスモジュール)が提供される。
(付記7)
本開示のさらに他の態様によれば、
直径が3インチ以上の主面を有する基板と、
前記基板上に製膜され、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物からなる圧電膜と、
前記圧電膜上に製膜された電極膜と、を備え、
前記圧電膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、前記圧電膜の主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている圧電素子(圧電デバイスモジュール)が提供される。
(付記8)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面(スパッタ面)の直径が3インチ以上であり、
前記プラズマに晒されることとなる面に対してX線回折測定を行った際における、(001)面からのX線回折ピークの強度に対する、(110)面からのX線回折ピークの強度の比率が、前記プラズマに晒されることとなる面における周縁部を除く内側の全域において、0.3以上5以下の範囲内に収まっているスパッタリングターゲット材が提供される。
(付記9)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
スパッタリング法による製膜処理を行う際のターゲット材として用いて、直径が3インチ以上の基板上に圧電膜を製膜した際に、
前記圧電膜に対してX線回折測定を行った際における、(001)面のX線ロッキングカーブの半値幅が、前記圧電膜の主面における周縁部を除く内側の全域において、0.5°以上2.5°以下の範囲内に収まっている前記圧電膜が得られる、スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記10)
付記8または9に記載のターゲット材であって、好ましくは、
ドーパントとして、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaのいずれか一種以上を含有する。
(付記11)
付記8~10のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面の全域及びこの面に平行な任意の面の全域で、粒径が30μmを超える結晶粒が密集している領域が観察されない。すなわち、スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面の全域およびこの面に平行な任意の面の全域が、粒径が0.1μm以上30μm以下、好ましくは0.1μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下の結晶粒で構成されている。
(付記12)
付記8~11のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面の全域にわたって、相対密度が60%以上である。
(付記13)
付記8~12のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面の全域にわたって、抗折強度が10MPa以上である。
(付記14)
付記8~13のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
体積抵抗率が1000kΩcm以上である。
(付記15)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
(a)カリウムの化合物からなる粉体と、ナトリウムの化合物からなる粉体と、ニオブの化合物からなる粉体と、を所定の比率で混合させて混合物を得る工程と、
(b)前記混合物に対して所定の圧力を加えて成型加工して直径が3インチ以上の成型体を得る工程と、
(c)前記成型体を、スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面(スパッタ面となる面)である表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、前記表面から前記表面とは反対側の面である裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下加熱して焼成して焼結体を得る工程と、
を行うことにより、前記プラズマに晒されることとなる面(スパッタ面)の直径が3インチ以上であるスパッタリングターゲット材を得る
スパッタリングターゲット材の製造方法が提供される。
(付記16)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
(a)カリウム及びニオブを含む化合物からなる粉体と、ナトリウム及びニオブを含む化合物からなる粉体と、を所定の比率で混合させて混合物を得る工程と、
(b)前記混合物に対して所定の圧力を加えて成型加工して直径が3インチ以上の成型体を得る工程と、
(c)前記成型体を、スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面(スパッタ面となる面)である表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、前記表面から前記表面とは反対側の面である裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下加熱して焼成して焼結体を得る工程と、
を行うことにより、前記プラズマに晒されることとなる面(スパッタ面)の直径が3インチ以上であるスパッタリングターゲット材を得る
スパッタリングターゲット材の製造方法が提供される。
(付記17)
付記15または16に記載の方法であって、好ましくは、
(b)と(c)とを同時に行う。すなわち、(b)を行いつつ(c)を行う。
(付記18)
付記15~17のいずれか1項に記載の方法であって、好ましくは、
(a)の後であって(b)の前に、
(d)前記混合物を(c)における前記成型体の加熱温度よりも低い温度で加熱して仮焼成する工程と、
(e)仮焼成後の前記混合物を粉砕する工程と、をさらに行い、
(b)では、仮焼成後に粉砕した前記混合物に対して所定の圧力を加えて成型加工して前記成型体を得る。
(付記19)
付記15~18のいずれか1項に記載の方法であって、好ましくは、
(c)の後に、
(f)前記焼結体を所定温度で加熱する工程をさらに行う。
1 基板
3 圧電膜(KNN膜)
10 圧電積層体
100 ターゲット材
101 スパッタ面

Claims (5)

  1. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
    スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面の直径が3インチ以上であり、
    前記プラズマに晒されることとなる面に対してX線回折測定を行った際における、(001)面からのX線回折ピークの強度に対する、(110)面からのX線回折ピークの強度の比率が、前記プラズマに晒されることとなる面における周縁部を除く内側の全域において、0.3以上5以下の範囲内に収まっているスパッタリングターゲット材。
  2. ドーパントとして、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaのいずれか一種以上を含有する請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
  3. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含み、ペロブスカイト構造のアルカリニオブ酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
    (a)カリウムの化合物からなる粉体と、ナトリウムの化合物からなる粉体と、ニオブの化合物からなる粉体と、を所定の比率で混合させて混合物を得る工程と、
    (b)前記混合物に対して所定の圧力を加えて成型加工して直径が3インチ以上の成型体を得る工程と、
    (c)前記成型体を、スパッタリング法による製膜処理を行う際にプラズマに晒されることとなる面である表面内の温度が全面にわたり800℃以上1150℃以下であって、前記表面から前記表面とは反対側の面である裏面へ向かう方向に10℃/mm以上で上昇する温度勾配を有する条件下で、1時間以上5時間以下加熱して焼成して焼結体を得る工程と、
    を行うことにより、前記プラズマに晒されることとなる面の直径が3インチ以上であるスパッタリングターゲット材を得る
    スパッタリングターゲット材の製造方法。
  4. (b)と(c)とを同時に行う請求項3に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  5. (a)の後であって(b)の前に、
    (d)前記混合物を(c)における前記成型体の加熱温度よりも低い温度で加熱して仮焼成する工程と、
    (e)仮焼成後の前記混合物を粉砕する工程と、をさらに行い、
    (b)では、仮焼成後に粉砕した前記混合物に対して所定の圧力を加えて成型加工して前記成型体を得る請求項3または4に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
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