JP6994379B2 - 歯科用金属腐食抑制用組成物、歯科用金属腐食抑制剤及び歯科用金属腐食防止方法 - Google Patents

歯科用金属腐食抑制用組成物、歯科用金属腐食抑制剤及び歯科用金属腐食防止方法 Download PDF

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Description

本発明は、歯科用金属腐食抑制用組成物、歯科用金属腐食抑制剤及び歯科用金属腐食防止方法に関する。
う蝕予防・歯質強化を目的として、歯へのフッ素塗布剤が開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献1~3参照)。歯科医院で、歯科医がフッ素塗布に用いるフッ素濃度は、通常、9,000ppm以上の高濃度である。
特開平11-116451号公報
L.W.Ripa、An evaluation of the use of professional(operator-applied)topical fluorides、J. Dent.Res.、Vol.69、1990、p786-796 日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会編、「フッ化物局所応用実施マニュアル第2章」、インターネット<URL:https://www.shaho.co.jp/shaho/shop/usr_data/sample/16350-sample.pdf> 厚生労働省編、「フッ化物歯面塗布」、インターネット<URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-008.html>
フッ素による処理は、う蝕予防や歯質の強化に有効である。しかしながら、歯科医の現場で、フッ素による処理、特に高濃度のフッ素による処理を行う場合、インプラント、義歯、充填物等に用いられる歯科用金属(主に、チタン含有金属)の腐食発生・進行を促進する場合がある。
したがって、フッ素による処理を行う際、歯科用金属の腐食を抑制し得る技術が望まれている。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、ピロリドンカルボン酸又はその金属塩、或いは、ピロリドンカルボン酸又はその金属塩とアミノ酸を併用した組成物を、歯科用金属部に接触(塗布等)させてから、歯へのフッ素処理を施すと、歯科用金属の腐食発生・進行を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔11〕を提供する。
〔1〕(A)成分:ピロリドンカルボン酸又はその塩、を有する歯科用金属腐食抑制用組成物。
〔2〕前記(A)成分の含有量が、3~20質量%である上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕(A)成分:ピロリドンカルボン酸又はその塩と、(B)成分:アミノ酸又はその塩と、を有する歯科用金属腐食抑制用組成物。
〔4〕前記(B)成分が、酸性アミノ酸又はその塩である上記〔3〕に記載の組成物。
〔5〕前記(A)成分の含有量が、1~20質量%であり、前記(B)成分の含有量が、0.1~10質量%である、上記〔3〕又は〔4〕に記載の組成物。
〔6〕前記(A)成分と前記(B)成分の含有割合((A)成分/(B)成分)が、0.5~50である上記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕フッ素塗布の前処理用である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物を含有する歯科用金属腐食抑制剤。
〔9〕歯へのフッ素塗布を受ける者が装着する歯科用金属に、予め上記〔8〕に記載の歯科用金属腐食抑制剤を接触させる前処理を行う、歯科用金属腐食防止方法。
〔10〕前記前処理が、歯科用金属を装着した状態、あるいは取り外した状態で、予め上記〔8〕に記載の歯科用金属腐食抑制剤を接触させる処理である、上記〔9〕に記載の方法。
〔11〕前記フッ素処理のフッ素濃度が9,000ppm以上である上記〔9〕又は〔10〕に記載の方法。
本発明によれば、フッ素による処理を行う際、歯科用金属の腐食を抑制し得る歯科用金属腐食抑制用組成物を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書中、別途記載がない限り、各成分の含有量は、歯科用金属腐食抑制用組成物又は歯科用金属腐食抑制剤の調製に用いる各成分の配合量である。
[1.歯科用金属腐食抑制用組成物]
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物の一実施形態は、(A)成分:ピロリドンカルボン酸又はその塩を有する。また、本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物の他の実施形態は、(A)成分:ピロリドンカルボン酸又はその塩と、(B)成分:アミノ酸又はその塩と、を有する。
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、(A)成分を有することで、フッ素による処理の際、歯科用金属の腐食抑制を達成し得る。また、(A)成分と(B)成分とを併用することで、歯科用金属の腐食抑制を向上し得る。
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、(A)成分、又は(A)成分と(B)成分を併用する組成物が、チタン含有する歯科用金属の腐食発生・進行を抑制できるという未知の属性を発見し、その属性により組成物を歯科用金属の腐食抑制という新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく、いわゆる用途発明である。
以下、各成分の詳細を記す。
[1-1.(A)成分]
(A)成分は、ピロリドンカルボン酸又はその塩である。ピロリドンカルボン酸の構造式を下記式(1)に示す。
Figure 0006994379000001
ピロリドンカルボン酸は、海草・小麦粉、サトウキビから抽出されたグルタミン酸を脱水することで生成され、上記式(1)で表される構造を有する。ピロリドンカルボン酸に、ナトリウムイオンを結合させたものをPCAソーダという。PCAソーダになることで酸化安定性が向上し、安定性が高くなる。また、皮膚角質層の水分保持物質であるNMF(天然保湿因子)の構成要素でもある。
ピロリドンカルボン酸の塩としては、例えば、酸付加塩、塩基付加塩及びアミノ酸塩が挙げられる。より詳細には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、銅塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;リシン塩、アルギニン塩、ヒスチジン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。これらの塩の中でも、水溶性の塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩やカリウム塩がさらに好ましい。
ピロリドンカルボン酸又はその塩の製法は、特に制限されない。ピロリドンカルボン酸の塩の製法としては、例えば、海藻、サトウキビ等の生物から、又は小麦粉等の加工品から抽出されたグルタミン酸を脱水してピロリドンカルボン酸を得て、これに金属イオン(例えば、ナトリウムイオン)を結合させる方法が挙げられる。
ピロリドンカルボン酸又はその塩は、市販品を用いてもよい。ピロリドンカルボン酸の市販品としては、味の素社製の「AJIDEW A-100(登録商標)」が挙げられる。ピロリドンカルボン酸の塩として、例えば、ピロリドンカルボン酸ナトリウムの市販品としては、味の素社製の「AJIDEW-N-50、PCAソーダ(AI=100%水溶液)」が挙げられる。
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物における(A)成分の含有量は、実施形態によって好ましい数値が異なる。
一実施形態において、(A)成分の含有量の下限値は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、その上限値は、使用性を損なわないという観点から、20質量%以下が好ましい。(A)成分の含有量が3質量%以上であると、歯科用金属の腐食抑制効果を十分確認し得る。
(A)成分の含有量の一実施態様としては、組成物全量に対して、3~20質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。
他の実施形態において、(B)成分と併用する場合は、(A)成分の含有量の下限値は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、その上限値は、使用性を損なわないという観点から、20質量%以下が好ましい。(A)成分の含有量が1質量%以上であると、歯科用金属の腐食抑制効果を十分確認し得る。
(A)成分の含有量の他の実施態様としては、組成物全量に対して、1~20質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
[1-2.(B)成分]
(B)成分は、アミノ酸又はその塩である。アミノ酸としては特に限定されるものではなく、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;リジン等の塩基性アミノ酸;セリン等の中性アミノ酸が挙げられる。中でも、(B)成分は、グルタミン酸、アスパラギン酸である酸性アミノ酸又はその塩であることが好ましい。
アミノ酸は、L-体であってもよく、D-体であってもよく、両方の光学異性体を任意の比率で混合したものであってもよい。
塩としては薬学上許容される塩であればよい。例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロピルアルコールアミン塩、ジイソプロピルアルコールアミン塩、トリイソプロピルアルコールアミン塩等のアルカノールアミン塩が挙げられる。
(B)成分は、動物、植物等の天然物由来のものであってもよく、化学的に合成されたものであってもよく、市販品であってもよい。グルタミン酸の塩の市販品としては、和光純薬工業社製の「L-グルタミン酸ナトリウム」が挙げられる。アスパラギン酸の塩の市販品としては、ナカライテスク社製の「L-アスパラギン酸ナトリウム」が挙げられる。リジンの市販品としては、和光純薬工業社製の「L-リジン」が挙げられる。セリンの市販品としては、和光純薬工業社製の「L-セリン」が挙げられる。
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物における(B)成分の含有量は特に制限されない。(B)成分の含有量の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、その上限値は、使用性を損なわないという観点から、10質量%以下が好ましい。(B)成分の含有量が0.1質量%以上であると、(A)成分との併用により歯科用金属の腐食抑制効果を十分確認し得る。
(B)成分の含有量の他の実施態様としては、組成物全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
(A)成分と(B)成分の含有割合((A)成分/(B)成分)は、特に制限されない。含有割合((A)成分/(B)成分)の下限値は、通常、0.5以上であり、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。また、その上限値は、50以下が好ましく、20以下がより好ましい。
(A)成分と(B)成分の含有割合((A)成分/(B)成分)としては、通常、0.5~50であり、1~20が好ましく、3~20がより好ましく、5~20がさらに好ましい。含有割合((A)成分/(B)成分)がこの範囲内にあることで、歯科用金属の腐食抑制効果を十分確認し得る。
[1-3.任意成分]
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、金属腐食効果、使用性を損なわない範囲で、必要な任意成分を配合し得る。
任意成分としては、湿潤剤、薬用成分、溶剤、界面活性剤、増粘剤、甘味剤、防腐剤、香料等が挙げられる。以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の組成物に配合可能な成分はこれらに限定されるものではない。
[湿潤剤]
湿潤剤としては、例えば、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール等の糖アルコール;グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
歯科用金属腐食抑制用組成物が湿潤剤を有する場合、その含有量は、使用性の観点から、組成物全量に対して、1質量%以上が好ましく、2~20質量%がより好ましい。
[薬用成分]
薬用成分としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、クロロヘキシジン、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤;縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤;トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩、ε-アミノカプロン酸、オウバクエキス等の抗炎症剤;ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤;アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ビタミンC、塩化リゾチーム、グリチルレチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム等の収斂剤;塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等の知覚過敏抑制剤が挙げられる。
歯科用金属腐食抑制用組成物が薬用成分を含有する場合、その含有量は、それぞれの薬用成分について薬剤学的に許容できる範囲で適宜設定すればよい。
[溶剤]
溶剤としては、例えば、水、エタノールが挙げられる。但し、エタノールは歯科用金属への為害性の観点から無配合が好ましい。
歯科用金属腐食抑制用組成物が水を含有する場合、その含有量は、組成物全量に対して、通常、60質量%以上である。
[界面活性剤]
界面活性剤としては、アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム、N-メチル-N-アシルアラニンナトリウム等のN-アシルアミノ酸塩;α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等のα-オレフィンスルホン酸塩;アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等のアニオン界面活性剤;ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、脂肪酸ポリグリセリド等のノニオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインや、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
歯科用金属腐食抑制用組成物が界面活性剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量に対して、通常、10質量%以下であり、0.01~5質量%が好ましい。
[増粘剤]
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース系粘結剤;キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールが挙げられる。
なお、増粘剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
歯科用金属腐食抑制用組成物が増粘剤を含有する場合、その含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で定めることができる。例えば、組成物全量に対して、通常、2~20質量%である。
[甘味剤]
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジンヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p-メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン、パラチノース、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、アラビトール、エリスリトールが挙げられる。
なお、甘味剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
歯科用金属腐食抑制用組成物が甘味剤を含有する場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
[防腐剤]
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
防腐剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
歯科用金属腐食抑制用組成物が防腐剤を含有する場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
[香料]
香料としては、例えば、ペパーミント、スペアミント等の精油、レモン、ストロベリー等のフルーツ系のエッセンス;l-メントール、カルボン、オイゲノール、アネトール、リナロール、リモネン、オシメン、シネオール、n-デシルアルコール、シトロネロール、ワニリン、α-テルピネロール、サチリル酸メチル、チモール、ローズマリー油、セージ油、シソ油、レモン油、オレンジ油が挙げられる。
[pH]
pHとしては、歯科用金属への為害性の観点から、5~9が好ましい。pHは、必要に応じてpH調整剤を使用して調整し得る。pH調整剤としては、リン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、リンゴ酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩、乳酸、塩酸、酢酸、硝酸、水酸化カリウム等が挙げられる。
歯科用金属腐食抑制用組成物がpH調整剤を含有する場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
[1-4.前処理]
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、フッ素処理する前に歯科用金属に接触させ、その後、歯へのフッ素塗布を行う前処理用であることが好ましい。接触の方法は、刷毛等の塗布用具を用いた塗布、スプレーによる塗布、或いは滴下による塗布等、いずれの方法であってもよい。また、組成物に浸した布や脱脂綿を接触させて塗布してもよい。さらに、本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、歯科用金属を装着した状態、あるいは取り外した状態で歯科用金属と接触させることができる。
なお、本明細書にいう「歯科用金属」とは、義歯、インプラント、歯の金属充填物、矯正具の金属部等の総称をいう。
[1-5.フッ素処理]
本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物で前処理を行った後、歯牙にフッ素を適用し、う蝕予防や歯質の強化処理を行うことができる。フッ素処理濃度としては特に制限はないが、フッ素濃度として、好ましくは9000~50000ppmのフッ素処理用組成物を用いて、歯牙の処置を行うことができる。
なお、フッ素処理用組成物としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用し得る。
[2.歯科用金属腐食抑制剤]
本発明の歯科用金属腐食抑制剤は、上記の組成物を含有する。そのため、フッ素による処理を行う際、歯科用金属の腐食を抑制し得る。
[2-1.剤形]
歯科用金属腐食抑制剤の剤形及び形状は特に制限されない。例えば、液体(溶液、乳液、懸濁液、シロップ等)、半固体(ジェル、クリーム、ペースト等)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体、ソフトカプセル剤等)が挙げられる。好ましくは、液体、半固体である。
固体の剤形の歯科用金属腐食抑制剤としては、例えば、トローチ、グミ、ガム、が挙げられる。半固体の剤形の歯科用金属腐食抑制剤としては、例えば、ジェル状が挙げられる。液体の剤形の歯科用金属腐食抑制剤としては、例えば、洗口剤、液体歯磨剤、口中清涼剤(スプレー等)、浸漬剤が挙げられる。これらのうち、液体、ジェル、軟膏であることが好ましい。
[3.歯科用金属腐食防止方法]
本発明の歯科用金属腐食防止方法は、歯科用金属に、上記に記載の歯科用金属腐食抑制剤を接触させる前処理方法である。
本発明の方法によれば、歯科用金属の腐食を防止し得るため、口腔内の衛生状況を改善し得る。
歯科用金属と歯科用金属腐食抑制剤の接触方法は、歯科用金属を装着した状態で、あるいは取り外せる場合は取り外してもよく、刷毛等の塗布用具を用いた塗布、スプレーによる塗布、或いは滴下による塗布、浸漬等、いずれの方法であってもよい。また、抑制剤に浸した布や脱脂綿を歯科用金属と接触させて塗布してもよい。
フッ素処理のフッ素濃度は、9,000ppm以上が好ましい。かかる高濃度でのフッ素処理であれば、歯科用金属腐食抑制剤が一層効果的に働き、本発明の腐食防止方法の効果に資する。なお、フッ素濃度の上限値は、通常、50,000ppm以下である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、評価方法を下記に記す。
[腐食抑制効果]
表面粗さ(μm)を測定済みの歯科用金属モデル(チタン合金試験片20mm×30mm×5mm)を、歯科用金属腐食抑制用組成物又は比較サンプルの各薬液50mLに20秒間浸漬処置した。その後、歯科用金属モデルを45,000ppm又は10,000ppmのフッ素溶液(pH5.5)にて、37℃で6時間浸漬した。浸漬後、金属モデルの表面粗さ(μm)を測定し、下記式から腐食抑制率を算出した。算出した腐食抑制率の数値を用いて、下記判定基準により、歯科用金属の腐食発生・進行の抑制効果を評価した。
(式):
腐食抑制率(%)
=(薬液浸漬前の表面粗さ-薬液浸漬後の表面粗さ)/薬液浸漬前の表面粗さ×100
[腐食抑制効果の判定基準]
A:70%以上
B:50%以上70%未満
C:30%以上50%未満
D:30%未満
[表面粗さ(μm)]
キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「VK-X100」を用いて、金属モデルの任意の3ラインに対する線粗さ(Ra)を算出し、その平均値を表面粗さとした。
(実施例1:歯科用金属腐食抑制用組成物の薬液調製方法)
精製水に、(A)成分:ピロリドンカルボン酸ナトリウムを溶解させた後、別途、プロピレングリコール、グリセリンを分散させた液を加え、スターラーにて攪拌した。その後、クエン酸、クエン酸ナトリウムを加えて攪拌し、歯科用金属腐食抑制用組成物の薬液を調製した。
調製した歯科用金属腐食抑制用組成物について、上記手順に従って、腐食抑制効果及びその評価を行った。評価結果を表1及び2に併せて記す。
(実施例2~20及び比較例1~3:歯科用金属腐食抑制用組成物又は比較サンプルの薬液調製方法)
配合処方を表1及び表2に記載の処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして歯科用金属腐食抑制用組成物又は比較サンプルの薬液を調製した。なお、(B)成分は、(A)成分と同時に精製水に溶解した。
調製した薬液を用いて、腐食抑制効果及びその効果を併せて表1及び表2に記す。
なお、実施例及び比較例で用いた各成分の詳細を記す。
(A)成分:ピロリドンカルボン酸ナトリウム(「AJIDEW-N-50」、(味の素社製))
(B)成分:グルタミン酸(「L-グルタミン酸ナトリウム」、和光純薬工業社製)
アスパラギン酸(「L-アスパラギン酸ナトリウム」、ナカライテスク社製)
リジン(「L-リジン」、和光純薬工業社製)
セリン(「L-セリン」、和光純薬工業社製)
その他の成分は化粧品原料基準規格品を用いた。
Figure 0006994379000002
Figure 0006994379000003
表1及び表2から明らかなように、(A)成分を有する本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、腐食抑制率が30%以上であった(実施例1~5参照)。特に含有量が10~20質量%の場合、70%以上の腐食抑制率であった(実施例3~5参照)。また、(A)成分と(B)成分を有する本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、腐食抑制率が30%以上であった(実施例6~12参照)。特に、同一量の(A)成分で比較すると、(B)成分を併用することで、腐食抑制率が向上していることがわかる(実施例1と実施例8、実施例2と実施例9、実施例3と実施例10、実施例4と実施例11、実施例5と実施例12参照)。
(B)成分として、グルタミン酸ナトリウムの代わりに他の酸性アミノ酸塩であるアスパラギン酸ナトリウムを用いた場合、腐食抑制率にほぼ変更がないことがわかる(実施例9と実施例13参照)。一方で、グルタミン酸ナトリウムの代わりに、塩基性アミノ酸や中性アミノ酸を用いた場合、腐食抑制率が若干低減した(実施例9と実施例14,15参照)。このことから、(A)成分と(B)成分を併用する場合、(B)成分は酸性アミノ酸又はその塩が好ましいことがわかる。
また、(B)成分の含有量を変更した場合、(B)成分が0.1%と少なくても配合効果は得られるが、(B)成分が増加すると金属腐食抑制率が高くなる傾向が認められた。特に1%以上で顕著な効果が得られた(実施例2と9、16~18参照)。
また、フッ素溶液の濃度が低い場合、腐食抑制率が向上した(実施例3と実施例19、実施例9と実施例20参照)。これに対して、(A)成分を含まない場合、腐食抑制率は観測されなかった(比較例1~3参照)。
以上のことから、本発明の歯科用金属腐食抑制用組成物は、フッ素による処理を行う際、歯科用金属の腐食を抑制し得ることがわかり、すでに齲蝕等の歯科治療を施している方を対象とするフッ素処置を行うのにきわめて有用である。
以下の処方例を評価したところ、下記の評価方法による使用性の良さは非常に良かった。
[使用性の良さ]
歯科用金属モデル(チタン合金試験片20mm×30mm×5mm)を薬液50mLに20秒間浸漬させた後、口に含んだ際の苦味や異味のなさについて、判定士5名が下記の評点基準で判定した。5名の評点基準の平均値を求め、下記評価基準に従って評価した。
使用性のよさ(苦味や異味のなさ)の評点基準:
4点:非常に良い
3点:良い
2点:あまり良くない
1点:非常に良くない
評価基準:
非常に良い:3.5点以上
良い:3.0点以上3.5点未満
あまり良くない:2.0以上3.0点未満
非常に良くない:2.0点未満
(処方例)
成分 %
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 5
L-グルタミン酸ナトリウム 1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
塩化セチルピリジニウム 0.05
プロピレングリコール 5
グリセリン 5
キシリット 4
サッカリンナトリウム 0.01
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
パラオキシ安息香酸プロピル 0.05
メントール 0.1
香料 0.2
精製水 バランス
合計 100

Claims (8)

  1. (A)成分:ピロリドンカルボン酸又はその塩し、
    前記(A)成分の含有量が、3~20質量%である、
    歯へのフッ素塗布の際の歯科用金属の前処理用組成物であって、
    前記歯科用金属がチタンを含有する、
    組成物。
  2. (A)成分:ピロリドンカルボン酸又はその塩と、
    (B)成分:アミノ酸又はその塩とし、
    前記(A)成分の含有量が、1~20質量%であり、
    前記(B)成分の含有量が、0.1~10質量%であり、
    歯へのフッ素塗布の際の歯科用金属の前処理用組成物であって、
    前記歯科用金属がチタンを含有する、組成物。
  3. 前記(B)成分が、酸性アミノ酸又はその塩である請求項に記載の組成物。
  4. 前記(A)成分と前記(B)成分の含有割合((A)成分/(B)成分)が、0.5~50である請求項2又は3に記載の組成物。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の組成物を含有する歯科用金属腐食抑制剤。
  6. 歯へのフッ素塗布を受ける者が装着する歯科用金属に、予め請求項に記載の歯科用金属腐食抑制剤を接触させる前処理を行う、歯科用金属腐食防止方法。
  7. 前記前処理が、歯科用金属を装着した状態、あるいは取り外した状態で、予め請求項に記載の歯科用金属腐食抑制剤を接触させる処理である、請求項に記載の方法。
  8. 前記フッ素塗布におけるフッ素濃度が9,000ppm以上である請求項又はに記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
日口腔インプラント誌,2021年09月,第30巻第3号,p.156-163
日口腔インプラント誌,2021年09月,第30巻第3号,p.164-173

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