JP6990164B2 - 硬化性オルガノポリシロキサン組成物 - Google Patents

硬化性オルガノポリシロキサン組成物 Download PDF

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Description

本発明は硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物の硬化物で封止された半導体装置に関する。
今日までに、縮合硬化性オルガノポリシロキサンは接着剤、防水防湿コーティング材、電気絶縁膜、建築用シーリング材などの用途に広く利用されている。また、近年では、その高い耐熱性と耐光性などの観点から、光ダイオード(LED)の封止材としての利用が注目されている。しかしながら、縮合硬化性オルガノポリシロキサンは、付加硬化性オルガノポリシロキサンに比べて反応性が低く、生産性に乏しい。また、反応性を向上させるために多量の縮合触媒を用いると、シリコーン樹脂の劣化も加速してしまうため、シリコーン樹脂本来の高い耐熱性や耐光性を発揮できないという問題がある。また、縮合触媒自体が色を帯びていたり、劣化により色を呈するようになったりするため、硬化物の耐熱性が重要な分野には不適な縮合触媒も多い。
縮合硬化性オルガノポリシロキサンの改良、実用化についてはこれまでに様々な試みが行われている。例えば、特許文献1では1分子内にシラノール基を2個以上有するオルガノポリシロキサンと1分子内に2個以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンにアルミニウムや亜鉛の金属触媒に加え、リン酸エステルやホウ素化合物の縮合触媒を加えることによって硬化速度の向上を図りながら、樹脂の劣化を最小限にしようとしている。また、特許文献2のように、テトラアルコキシシランまたはトリアルコキシシランの部分加水分解物と両末端シラノール基含有直鎖状オルガノポリシロキサンに揮発性のアミン触媒を加えて硬化させることで、硬化物中に残存する触媒を低減させる試みも行われている。さらには、特許文献3のように、あらかじめ縮合性オルガノポリシロキサンを高分子量化しておくことで、少ない反応回数でゲル化を達成させる試みもなされている。
しかし、上記特許文献に記載の縮合硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、硬化物に高い耐熱性及び耐光性を要求される分野での適用には未だ満足できるものではなかった。例えば、特許文献1に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、硬化物中に触媒が多量に存在するため耐熱性及び耐光性が劣り、また、組成物中に過剰なアルコキシ基が含有されていることから硬化時に反応副生成物によるガスが発生し、ボイドの原因となる。特許文献2の樹脂組成物は、アミン触媒が低温下においても縮合作用を示すため粘度変化が大きく、保存安定性及びハンドリング性に問題がある。また、厚い硬化物とする場合にはアミン触媒が十分に揮発せず、残存したアミン触媒が熱により劣化し、硬化物が茶色に変色するという問題がある。特許文献3に記載の組成物では、縮合性ポリオルガノシロキサンを高分子量化させているため、組成物の粘度が高くなるため、凹部に流し込んだ後に硬化させる用途においては不適である。
特開2011-219729号公報 特開2016-8246号公報 特開2007-119569号公報
本発明は、上記事情に鑑み、透明性、硬化性、耐熱性及び耐光性に優れた硬化性有機ケイ素樹脂組成物を提供することを目的とする。また該組成物で半導体素子を封止した半導体装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討し、下記式(1)
Figure 0006990164000001
で示されるシロキサン単位を特定量含み、且つ特定の分子量分布を有する硬化性オルガノポリシロキサンと塩基性触媒とを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、優れた硬化性を有し、且つ高い耐熱性及び耐光性を有する硬化物を与えることができることを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、下記(A)成分及び(B)成分を含む、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
(A)下記式(1)
Figure 0006990164000002
(上記式中、Rは互いに独立に、炭素数1~10の1価炭化水素基であり、Rは、シリレン基またはシロキサン結合を有してよい炭素数6~50の2価芳香族基である)
で示されるシロキサン単位を、全シロキサン単位の合計100mol%に対して10mol%以上で有し、且つ、RSiO3/2単位を10~90mol%で有するオルガノポリシロキサンであって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量2,000~100,000を有し、且つ、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比が1.5以上であることを特徴とし、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を0.001~2mol/100gの範囲の量で有し、ケイ素原子に結合した水酸基を0mol/100g以上1.0mol/100g以下の範囲の量で有する、前記オルガノポリシロキサン、及び
(B)塩基性触媒 触媒量。
更に本発明は、該硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を備える半導体装置を提供する。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は優れた硬化性を有し、且つ優れた耐熱性及び耐光性を有する硬化物を与えることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)硬化性オルガノポリシロキサン]
(A)硬化性オルガノポリシロキサンは、下記式(1)
Figure 0006990164000003
で示されるシロキサン単位を、全シロキサン単位の合計100mol%に対して10mol%以上で有し、且つ、RSiO3/2単位を10~90mol%で有する。また、任意でSiO4/2単位を0~50mol%、(RSiO2/2単位を0~70mol%、並びに(RSiO1/2単位を0~30mol%で有する。
なお、該オルガノポリシロキサンの構造は特に制限されるものでないが、好ましくはラダー構造またはレジン構造(三次元架橋構造)を有し、特に好ましくはレジン構造を有するオルガノポリシロキサンが良い。
上記式(1)で示されるシロキサン単位の量は前記(A)成分が有する全シロキサン単位の合計モル数(合計100mol%)に対して10mol%以上であり、好ましくは10~90mol%であり、より好ましくは20~80mol%である。上記式中、Rは、互いに独立に、炭素数1~10、好ましくは1~6の1価炭化水素基であり、Rは、シリレン基またはシロキサン結合を有してよい、炭素数6~50の2価芳香族基である。
としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、及びオクテニル基等のアルケニル基等が挙げられ、上記炭化水素基の一部または全部をハロゲン原子などで置換してもよい。上記の中でも、メチル基、及びフェニル基が好ましい。
としては、フェニレン基、及びビフェニレン基等のアリーレン基、アルキルアリーレン基、ジメチルシリレン基等のジオルガノシリレン基、(RSiO2/2単位で示されるシロキサン結合を有する基(Rは上述の通り)、及び下記式
Figure 0006990164000004
Figure 0006990164000005
Figure 0006990164000006
Figure 0006990164000007
(上記式中、Rは前記と同じ)
で示されるようなケイ素原子を含むシリレン基またはシロキサン結合を有する基が例示される。中でも、シリレン基が好ましい。
また、該オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量2,000~100,000を有し、好ましくは3,000~50,000を有する。分子量が上記下限値未満では、得られる組成物が硬化しない恐れがある。また分子量が上記上限値超では組成物のポットライフが悪化する恐れがある。
該オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)の値が1.5以上であることを特徴とする。好ましくはMw/Mn=1.6~2.5である。Mw/Mnが上記値未満であるポリシロキサンは、ポリシロキサンの合成段階で分子内縮合が進んでおり、安定なかご型構造を有する。このような安定なかご型構造を有するポリシロキサンはさらなる重合を起こし難いため、得られる組成物の硬化性が悪化する。これに対し、Mw/Mnが1.5以上であるオルガノポリシロキサンは活性な反応点を有するため、後述する塩基性触媒により分子間での反応が進み、即座に硬化することができる。
なお、本発明において重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量である。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5重量%のTHF溶液)
上記分子量分布を有するオルガノポリシロキサンは、好ましくは、GPC測定にて得られる分子量分布曲線において、2個以上、好ましくは2~5個の極大値が在り、少なくとも1つの極大値が分子量5,000以上、好ましくは5,500~50,000の間にあり、少なくとも1つの極大値が分子量Mw3,000以下、好ましくは1,600~2,800の間にあるのがよい。さらには、前記(A)オルガノポリシロキサンの分子量分布曲線において、分子量5,000以上の位置に極大値を有するピーク(高分子量側にあるピークという)の面積と、分子量3,000以下の位置に極大値を有するピーク(低分子量側にあるピークという)の面積との比が5:95~90:10であり、好ましくは20:80~70:30であるのが好ましい。但し、高分子量側にあるピークと低分子量側にあるピークとが隣接して重なっている場合には、二つのピークの間の谷(値が最小となる地点(極小値の点))からベースラインに対して引いた垂線にて区切られた面積にて、上記比を算出する。分子量分布が上記を満たさないと、得られる組成物の硬化性が悪化する恐れがある。
上記分子量分布曲線において分子量3,000~5,000の間に極大値を有するピークを有していてもよい。極大値が3個以上ある場合には、最も大きい分子量を有する極大値が5,000以上にあり、最も小さい分子量を有する極大値が3,000以下にあればよい。尚、極大値を3,000~5,000の間に有するピークがある場合であり、高分子量側にあるピークと併せて求められる重量平均分子量が5,000以上になる場合は、該ピークの面積は高分子量側のピークとしてピーク面積に加えることができる。
前記(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を0.001~2mol/100gの範囲の量で有し、ケイ素原子に結合した水酸基を0mol/100g以上1.0mol/100g以下の範囲の量で有する。本発明においてケイ素原子に結合した水酸基量及びアルコキシ基量は、H-NMR及び29Si-NMRによって測定される値である。
ケイ素原子に結合した水酸基の量は、好ましくは0.8mol/100g以下であり、より好ましくは0.1mol/100g以下である。水酸基の下限値は特に制限されず0mol/100gであってもよいが、好ましくは0.0001mol/100g以上であるのがよい。ケイ素原子に結合した水酸基の量が上記上限値超では硬化時にボイドが発生する恐れがある。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基の量は、好ましくは0.02~1.5mol/100gであり、より好ましくは0.6mol/100g以下である。ケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が上記上限値超では硬化時にボイドが発生する恐れがある。また、上記下限値未満では基材と硬化物との接着性が低下する恐れがある。
該オルガノポリシロキサンの性状は25℃で固体、半固体、又は液体のいずれであってもよい。
本発明のオルガノポリシロキサンは、上記式(1)で表す構造の他に、RSiO3/2単位を必須に有する。RSiO3/2単位(T単位)の数が、前記(A)成分の全シロキサン単位の合計モル数(合計100mol%)に対して10~90mol%、好ましくは10~80mol%、より好ましくは30~80mol%である。T単位を有さないと組成物の硬化性が劣る恐れがある。また、任意でSiO4/2単位、(RSiO2/2単位、又は(RSiO1/2単位を有する(Rは上述の通りである)。該単位の含有割合は、SiO4/2単位(Q単位)の数は、0~20mol%であり、好ましくは0~10mol%であればよい。(RSiO2/2単位(D単位)の数は0~70mol%、好ましくは0~50mol%であればよく、(RSiO1/2単位(M単位)の数は、0~30mol%、好ましくは0~20mol%であり、より好ましくは0mol%であるのがよい。
本発明のオルガノポリシロキサンは、上記した各シロキサン単位源となる有機ケイ素化合物を脱水素反応、縮合反応、又は平衡化反応等することにより製造することができる。製造方法は従来公知の方法に従えばよく、反応触媒としては塩基性触媒及び酸性触媒が挙げられるが、上述した分子量分布を有するオルガノポリシロキサンを得るためには酸性触媒を使用するのが好ましい。塩基性触媒を使用すると、シロキサンの合成段階で分子内縮合が十分に進んでしまい、オルガノポリシロキサンは安定なかご型構造を有する。このようなオルガノポリシロキサンは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.5以下になる。また、上述した通り、該安定なかご型構造を有するポリシロキサンはさらなる重合を起こし難いため、得られる組成物の硬化性が悪化する恐れがある。
SiO3/2単位(T単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるオルガノトリクロロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物、又はこれらの縮合反応物、またはホウ素触媒により脱水素反応可能なHSiO2/2単位を含有する有機ケイ素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。

Figure 0006990164000008
SiO2/2単位(D単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるジオルガノジクロロシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0006990164000009
Figure 0006990164000010
(上記式中、nは0~100の整数、mは0~100の整数である。)

Figure 0006990164000011
SiO1/2単位(M単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0006990164000012
SiO4/2単位を得るための材料としては、例えば、ケイ酸ソーダ、テトラアルコキシシラン、またはその縮合反応物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
式(1)で示される単位を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表される1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン等の有機ケイ素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0006990164000013
Figure 0006990164000014
[(B)塩基性触媒]
(B)成分は塩基性触媒であり、オルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合した水酸基における縮合反応もしくはオルガノポリシロキサンの平衡重合反応を促進するために機能する。塩基性触媒は、シロキサンの縮合反応に用いられる従来公知の触媒であればよい。
該塩基性触媒としては、例えば、アミン化合物やケイ酸塩、ジルコニウム、チタン、錫、リチウム、バリウム、亜鉛及び鉄等の金属化合物が挙げられる。アミン化合物の例としては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、ネオペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロプロピルアミン、及びシクロヘキシルアミン等の1級アルキルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、メチルイソブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、及びメチルペンチルアミン等の2級アルキルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N-エチルジプロピルアミン、トリブチルアミン、及びトリヘキシルアミン等の3級アルキルアミン、シラザン、ポリシラザン等が挙げられ、金属化合物の例としては鉛、錫、亜鉛、鉄、ジルコニウム、チタン、セリウム、カルシウム及びバリウムのアルコキシド又はカルボン酸錯体、例えばジイソプロポキシバリウム、ケイ酸リチウム塩、ケイ酸ナトリウム塩、ケイ酸カリウム塩等のアルカリ金属のケイ酸塩等が挙げられる。中でも、ジ-n-ブチルアミン、N-エチルジプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、シラザン、ポリシラザン等のアミン化合物や、錫、亜鉛、ジルコニウム、カルシウムのアルコキシド又はカルボン酸錯体、ケイ酸リチウム塩、ケイ酸ナトリウム塩、及びケイ酸カリウム塩等のアルカリ金属のケイ酸塩等の金属化合物が好ましい。
塩基性触媒の量は反応を進行させるための触媒量であればよい。例えば(A)成分100質量部に対して0.001~5質量部であることが好ましく、0.005~3質量部であることがより好ましい。触媒の量が多すぎると得られる硬化物は耐熱性や耐光性に劣る恐れがある。
[(C)直鎖状オルガノポリシロキサン]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、さらに(C)成分として、直鎖状オルガノポリシロキサンを含有してもよい。(C)成分の量は(A)成分100質量部に対して50質量部以下であるのがよく、好ましくは1~50質量部であり、より好ましくは1~30質量部である。
(C)成分は、好ましくは両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンであるのがよい。該直鎖状のオルガノポリシロキサンは、好ましくは下記式(2)で表される。
Figure 0006990164000015
(式中、kは1~10,000の整数であり、Rは互いに独立に、炭素数1~10の1価炭化水素基であり、Rは互いに独立に、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10の1価炭化水素基から選ばれる基または水素原子である)
上記式中、Rは、互いに独立に、炭素原子数1~10の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等の飽和脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基、ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、及び9-デセニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基等の芳香族炭化水素基、これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化1価炭化水素基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、及びプロピル基等の炭素原子数1~5の飽和炭化水素基、及びフェニル基が好ましい。RはRで挙げた置換基の他に、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。これらの中では、水酸基、メトキシ基、メチル基およびフェニル基が好ましい。
(C)成分としては、例えば下記式で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
Figure 0006990164000016
(式中、s、t、uは0~10,000の整数であり、ただしs+t+uは1~10,000である)
[(D)環状オルガノポリシロキサン]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、さらに(D)環状オルガノポリシロキサンを含有しても良い。該オルガノポリシロキサンとして好ましくは、下記式(3)で示される有機ケイ素化合物である。
Figure 0006990164000017
(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1~10の1価脂肪族炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、p、q、及びrは、互いに独立に0~4の整数であり、但し、p+q+r=3又は4である)
好ましくは下記式(4)で表される環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
Figure 0006990164000018
(ここでp、q、rは上記の通りである)
上記環状オルガノポリシロキサンは常温で液体もしくは固体であるが、化合物が固体の場合であっても上記塩基性触媒に記載したアミン化合物やジルコニウム、チタン、錫、亜鉛及び鉄等の金属化合物と反応させることで容易に開環し、液状の開環重合体を得ることができる。また、式(3)で示される環状オルガノポリシロキサンは、(A)成分と混合した後、50℃~200℃の温度で加熱及び混合することによって液状化するため、容易に混合することができる。
環状オルガノポリシロキサンの量は、(A)成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、0.2~20質量部であることがより好ましい。
[(E)蛍光体]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、更に(E)蛍光体を含有してもよい。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は耐熱耐光性に優れるため、蛍光体を含有する場合であっても、従来のように蛍光特性が著しく低下する恐れがない。
蛍光体は、特に制限されるものでなく、従来公知の蛍光体を使用すればよい。例えば、半導体素子、特に窒化物系半導体を発光層とする半導体発光ダイオードからの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであることが好ましい。このような蛍光体としては、例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属硫化物蛍光体、アルカリ土類金属チオガレート蛍光体、アルカリ土類金属窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体蛍光体、Ca-Al-Si-O-N系オキシ窒化物ガラス蛍光体等から選ばれる1種以上であることが好ましい。
蛍光体は、平均粒径10nm以上を有することが好ましく、より好ましくは10nm~10μm、更に好ましくは10nm~1μmを有するのがよい。上記平均粒径は、シーラスレーザー測定装置などのレーザー光回折法による粒度分布測定で測定される。蛍光体の配合量は、蛍光体以外の成分、例えば(A)成分100質量部に対して、0.1~2,000質量部が好ましく、より好ましくは0.1~100質量部である。
他の成分
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記の(A)~(E)成分以外に、必要に応じて、接着付与剤やその他の添加剤を配合することができる。
接着付与剤は公知のものであればよいが、例えば、フェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン等や、及びそれらのオリゴマー等が挙げられる。なお、これらの接着付与剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。接着付与剤の量は、上記の(A)成分100質量部に対し、0.01~10質量部、特に0.05~5質量部となる量であるのが好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、シリカ、グラスファイバー、ヒュームドシリカ等の補強性無機充填材、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等の非補強性無機充填材、二酸化ケイ素(シリカ:SiO)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe)、四酸化三鉄(Fe)、酸化鉛(PbO)、酸化すず(SnO)、酸化セリウム(Ce3、CeO)、酸化カルシウム(CaO)、四酸化三マンガン(Mn)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)などのナノフィラーが挙げられる。添加剤の量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜調整されればよい。例えば、上記の(A)成分100質量部に対し、600質量部以下、好ましくは1~600質量部、より好ましくは10~400質量部の量であることができる。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は常温(25℃)で液状または固体である。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱して硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60~200℃とすることができる。用途に応じて、所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。
なお、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、150℃において、液状である組成物がゲル化するまでの時間が300秒未満であるのが好ましく、30~240秒がより好ましい。ゲル化時間が300秒未満であれば、硬化性に優れ、コンプレッションモールドやトランスファーモールド用の成形材料として好適である。尚、本発明において「ゲル化」とは固体ではないが流動性を有さない状態になることであり、「ゲル化するまでの時間」とは、液状の組成物が流動性を失うまでの時間である。また、本発明の樹脂組成物は上述の通り常温では液状又は固体であるが、固体の組成物も150℃では液状となる。従って、室温で固体の組成物において「150℃において、液状である組成物がゲル化するまでの時間」とは、150℃において一旦液状となった後にゲル化する(流動性を失う)までの時間を意味する。150℃300秒にてゲル化しない場合、もしくはゲル化が不十分な場合には、成形条件にて樹脂強度がきわめて弱くなり、成形が終わって金型から剥がされる際に金型から受けるストレスによって破れてしまうおそれがある。150℃300秒にてゲル化する組成物であれば、成形条件で適度な樹脂強度を有することができ、金型から離形するストレスに耐えることができるため好ましい。
また、前記樹脂組成物の150℃×1時間における揮発成分量は10重量%以下が好ましく、0.01~5重量%がより好ましい。揮発成分量が10重量%以下であれば、硬化時にボイドが発生せず、硬化収縮も抑えられるため好ましい。尚、揮発成分量(%)とは、加熱前における組成物の重量に対する加熱後における組成物の重量減少率(%)である。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、機械特性、耐クラック性、及び耐熱性に優れた硬化物を与える。好ましくは本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して、厚さ1mmの硬化物としたときに、波長400~800nmの全光線透過率、特には波長450nmにおける光透過率が70%以上を有するのがよく、より好ましくは80%以上を有するのがよい。なお、本発明において全光線透過率とは、JIS K 7361-1:1999に記載の方法によって測定した値であり、450nmにおける光透過率は、前記規格の方法を準用し、日立製分光光度計U-4100を用いて測定した値である。
また、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、屈折率1.40~1.70、好ましくは1.45~1.56を有する硬化物を与えることができる。本発明における屈折率とは、JIS K 7142:2008に準拠して測定される25℃における屈折率であり、アッベ型屈折率計により測定することができる。
上記のような透過率かつ屈折率を有する硬化物は、透明性に優れるため、LEDの封止材などの光学用途に特に好適に用いることができる。
<半導体装置>
また、本発明は、上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して成る硬化物で半導体素子が封止された半導体装置を提供する。
上述のように本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、透明性及び耐熱性に優れる。そのため、発光半導体装置のレンズ用素材、保護コート剤、モールド剤等に好適であり、特に青色LED、白色LED、紫外LED等のLED素子封止用として有用なものである。また、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は耐熱性に優れるため、シリケート系蛍光体や量子ドット蛍光体を添加して波長変換フィルム用素材として使用する際にも、高湿下での長期信頼性が確保でき、耐湿性、長期演色性が良好な発光半導体装置を提供することができる。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物でLED等の発光半導体素子を封止する場合は、例えば熱可塑性樹脂からなるプレモールドパッケージに搭載されたLED素子上に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、LED素子上で組成物を硬化させることにより、LED素子を硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で封止することができる。また、組成物をトルエンやキシレン等の有機溶媒に溶解させて調製したワニスの状態で、LED素子上に塗布することができる。有機溶媒の量は従来公知の製造方法に従い適宜調整されればよい。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、その優れた透明性、耐熱性、耐紫外線性、耐クラック性、長期信頼性等の特性から、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の光学用途に最適な素材である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、部は質量部を示し、粘度は25℃における値である。下記においてMeはメチル基、Phはフェニル基を示し、Mwは重量平均分子量を示す。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質として測定された値である。詳細な条件は上述した通り。
[実施例1]
(A)成分として、PhSiO3/2単位50mol%、PhMeSiO2/2単位30mol%、及び下記式(5)
Figure 0006990164000019
で示されるシロキサン単位20mol%からなるラダー構造のフェニルメチルポリシロキサン(但し、該ポリシロキサンの全置換基の一部は水酸基又はアルコキシ基である。以下同様。)を100部、及び(B)成分として、ケイ酸リチウムを(A)成分100部に対して1質量部となる量を混合することによって、硬化性オルガノポリシロキサン組成物1を得た。
上記オルガノポリシロキサン(A)は重量平均分子量(Mw)5,400を有し、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比が1.7である。ケイ素原子に結合した水酸基量0.1mol/100g、及びメトキシ基量0.6mol/100gである。また、GPC測定にて得られた分子量分布曲線において2つの極大値を有するピークを有し、高分子量側にあるピーク極大値の分子量は9,900であり、低分子量側にあるピーク極大値の分子量は1,600であり、高分子量側に在るピークの面積と低分子量側にあるピークの面積比が46:54である。
[実施例2]
実施例1における(A)成分を、MeSiO3/2単位40mol%、PhSiO3/2単位40mol%、PhSiO2/2単位10mol%、及び下記式(5)
Figure 0006990164000020
で示されるシロキサン単位10mol%からなるレジン構造のフェニルメチルポリシロキサンに替えた他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物2を得た。
上記オルガノポリシロキサン(A)は、重量平均分子量Mw=2,000を有し、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比が1.5であり、GPC測定にて得られた分子量分布曲線において2つの極大値を有するピークを有し、高分子量側にあるピーク極大値の分子量が5,400であり、低分子量側にあるピーク極大値の分子量が1,300であり、高分子量側に在るピークの面積と低分子量側に在るピークの面積の比が5:95であり、ケイ素原子に結合した水酸基量0.02mol/100g、メトキシ基量0.3mol/100g、イソプロポキシ基量0.01mol/100gである。
[実施例3]
(A)成分を、MeSiO3/2単位30mol%及び下記式(5)
Figure 0006990164000021
で示されるシロキサン単位70mol%からなるラダー構造のフェニルメチルポリシロキサンを100部及び(B)ジイソプロポキシバリウムを0.05部を混合することによって、硬化性オルガノポリシロキサン組成物3を得た。
上記オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量Mw=98,000であり、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比2.0を有する。GPC測定にて得られた分子量分布曲線において3つの極大値を有するピークを有し、高分子量側にある二つのピークの極大値の分子量が順に200,400および8,700であり、低分子量側にあるピーク極大値の分子量が1,600であり、高分子量側に在るピークの面積と低分子量側に在るピークの面積の比が90:10であり、ケイ素原子に結合した水酸基量0.02mol/100g、メトキシ基量0.3mol/100g、イソプロポキシ基量0.01mol/100gである。
[実施例4]
実施例1の組成にさらに(C)成分として、下記式(6)
Figure 0006990164000022
で示される直鎖状オルガノポリシロキサンを(A)成分100部に対して50部となる量を添加した他は、実施例1を繰り返して、硬化性オルガノポリシロキサン組成物4を得た。
[実施例5]
実施例1の組成にさらに(D)成分として、下記式(7)
Figure 0006990164000023
で示される有機ケイ素化合物を(A)成分100部に対して20部となる量添加した他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物5を得た。
[実施例6]
MeSiO3/2単位40mol%、PhSiO3/2単位30mol%、
及び下記式(5)
Figure 0006990164000024
で示されるシロキサン単位30mol%からなるラダー構造のフェニルメチルポリシロキサンに替えた他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物6を得た。
上記フェニルメチルポリシロキサンは、重量平均分子量Mw=9,500を有し、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比1.5を有する。さらに、分子量分布に2つの極大値を有し、高分子量側のピーク極大値の分子量が20,200であり、低分子量側のピーク極大値の分子量が2,600であり、高分子量のものと低分子量のものの面積比が50:50であり、ケイ素原子に結合した水酸基量0.01mol/100g、メトキシ基量0.0005mol/100gである。
[比較例1]
実施例1における(A)成分を、MeSiO3/2単位50mol%、PhSiO3/2単位20mol%、及びPhSiO2/2単位30mol%からなるレジン構造のフェニルメチルポリシロキサンに替えた他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物7を得た。
上記フェニルメチルポリシロキサンは重量平均分子量Mw=5,000を有し、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比1.5を有する。また、GPC測定にて得られた分子量分布曲線において2つの極大値を有するピークを有し、高分子量側にあるピーク極大値の分子量が6,900であり、低分子量側にあるピーク極大値の分子量が2,600であり、高分子量側に在るピークの面積と低分子量側に在るピークの面積の比が41:59であり、ケイ素原子に結合した水酸基量0.9mol/100g、メトキシ基量0.003mol/100g。
[比較例2]
実施例1における(A)成分を、PhSiO3/2単位92mol%、
及び下記式(5)
Figure 0006990164000025
で示されるシロキサン単位8mol%からなるレジン構造のフェニルメチルポリシロキサンに替えた他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物8を得た。
上記フェニルメチルポリシロキサンは、重量平均分子量Mw=4,200を有し、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比1.5を有する。また、GPC測定にて得られた分子量分布曲線において2つの極大値を有するピークを有し、高分子量側にあるピーク極大値の分子量が5,900であり、低分子量側にあるピーク極大値の分子量が1,600であり、高分子量側に在るピークの面積と低分子量側に在るピークの面積の比が52:48であり、ケイ素原子に結合した水酸基量0.1mol/100g、メトキシ基量1.6mol/100gである。
[比較例3]
実施例1における(A)成分を、MePhSiO2/2単位50mol%、
及び下記式(5)
Figure 0006990164000026
で示されるシロキサン単位50mol%からなる直鎖状のフェニルメチルポリシロキサンに替えた他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物9を得た。
該フェニルメチルポリシロキサンは、重量平均分子量Mw=18,200を有し、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比1.3を有する。
また、GPC測定にて得られた分子量分布曲線において1つの極大値を有するピークを有し、ケイ素原子に結合した水酸基量0.01mol/100g、メトキシ基量0.02mol/100gである。
[比較例4]
実施例1における(A)成分を、PhSiO3/2単位75mol%、
及び下記式(5)
Figure 0006990164000027
で示されるシロキサン単位25mol%からなるレジン構造のフェニルメチルポリシロキサンに替えた他は、実施例1を繰り返して硬化性オルガノポリシロキサン組成物10を得た。
該フェニルメチルポリシロキサンは、重量平均分子量Mw=2,800であり、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比1.3を有する。
また、GPC測定にて得られた分子量分布曲線において2つの極大値を有するピークを有し、Mwが5,000以上であるピークを有さず、2つの極大値の分子量は順に3,000および1,600であり、ケイ素原子に結合した水酸基量0.1mol/100g、メトキシ基量1.6mol/100gである。
上記実施例及び比較例で製造した硬化性オルガノポリシロキサン組成物1~10及び各組成物から得られる硬化物について、下記の方法に従い物性を評価した。結果を表1及び2に示す。
(1)外観
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物(厚さ1mm)の色と透明性を目視にて確認した。
(2)性状
硬化前の各組成物の流動性を確認した。100mlのガラス瓶に50gの組成物を入れ、ガラスビンを横に倒して25℃で10分間静置した。その間に組成物が流れ出せば液状であると判断した。
(3)屈折率
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた厚さ0.5mmの硬化物の589nm、25℃における屈折率を、JIS K 7142:2008に準拠して、アッベ型屈折率計により測定した。
(4)硬さ(タイプD)
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の硬さを、JIS K 6249:2003に準拠して、デュロメータD硬度計を用いて測定した。
(5)切断時伸び及び引張強さ
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の切断時伸び及び引張強さを、JIS K 6249:2003に準拠して測定した。
(6)耐熱性(光透過率保持率)及び耐クラック性
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物(厚さ1mm)の波長450nmにおける光透過率を、日立製分光光度計U-4100を用いて23℃で測定した(初期透過率)。次いで、この硬化物を250℃で1,000時間熱処理した後、同様に光透過率を測定して、初期透過率(100%)に対する熱処理後の光透過率を求めた。また熱処理後の硬化物におけるクラックの有無を目視で確認し、クラックのないものを○、クラックが発生したものを×とした。
(7)不揮発性
各組成物1.0gを、アルミシャーレに添加し150℃1時間の条件で熱処理を行った。熱処理後の硬化物の重量を測定し、熱処理前の重量(100%)に対する熱処理後の重量(%)を表1及び2に記載する。
(8)接着性
各組成物0.25gを、面積180mmの銀メッキ板に底面積が45mmとなるように成形し、150℃で4時間硬化させた後、ミクロスパチュラを用いて硬化物を破壊し、銀板から剥ぎ取る際に、凝集破壊した部分の割合と剥離した部分との割合とを求めた。接着性を以下の基準に基づき判定した。
(判定基準)
凝集破壊の割合が80%以上である:接着性が良好である(○)
凝集破壊の割合が50%以上80%未満である:接着性は概ね良好である(△)
凝集破壊の割合が50%未満である:接着性が不良である(×)
(9)表面タック性による埃の付着
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の表面における埃の付着の有無を目視にて確認した。
(10)硬化性(ゲル化)
各組成物1.0gを、TOWA社製成形機FFT-1030を用いて、150℃×300秒の条件で成形し、上記成形条件においてガラスエポキシ基板上に樹脂の成形物が形成できるか確認した。下記基準に基づいて成形性を評価した。
(判定基準)
○:剥離や樹脂破れなく、正常に成形ができた(十分にゲル化した)
×:剥離や樹脂破れが発生(ゲル化不十分)
Figure 0006990164000028
Figure 0006990164000029
表2に示す通り、-O1/2Si(R-R-Si(R1/2-で示される単位を有さない比較例1の組成物は、樹脂強度に劣り、硬化性に劣り、熱処理にてクラックが発生し、揮発成分も多かった。-O1/2Si(R-R-Si(R1/2-で示される単位が10mol%を下回る比較例2の組成物は、硬化性に劣り、熱処理にてクラックが発生した。RSiO3/2単位を含まず、また重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの値が1.5未満であるオルガノポリシロキサンを(A)成分に替えて含有した比較例3の組成物は、樹脂が硬化しなかった。重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの値が1.5未満であるオルガノポリシロキサンを(A)成分に替えて含有した比較例4の組成物は、硬化が遅く、硬化時にボイドが発生し、樹脂が脆くなった。
これに対し、表1に示す通り、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は無色透明であり、硬化性に優れ、該組成物から得られる硬化物は、十分な硬さ、切断時伸び、引張強さと、良好な屈折率、耐熱性、耐クラック性、接着性を有し、且つ、表面タック性による埃の付着がない。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は速やかに硬化して硬化物を与えることができ、得られる硬化物は、高い透明性、耐熱性、機械特性、耐クラック性、及び接着性を有することができる。また、本発明の組成物であれば表面タック性が抑制された硬化物を与えることができる。従って、半導体素子封止用組成物として好適に使用することができ、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。

Claims (8)

  1. 下記(A)成分及び(B)成分を含む、硬化性オルガノポリシロキサン組成物
    (A)下記式(1)
    Figure 0006990164000030
    (上記式中、Rは互いに独立に、炭素数1~10の1価炭化水素基であり、Rは、シリレン基またはシロキサン結合を有してよい炭素数6~50の2価芳香族基である)
    で示されるシロキサン単位を、全シロキサン単位の合計100mol%に対して10mol%以上で有し、且つ、RSiO3/2単位を10~90mol%で有するオルガノポリシロキサンであって、
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量2,000~100,000を有し、且つ、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比が1.5以上であることを特徴とし、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を0.001~2mol/100gの範囲の量で有し、ケイ素原子に結合した水酸基を0mol/100g以上1.0mol/100g以下の範囲の量で有する、前記オルガノポリシロキサン、及び
    (B)塩基性触媒 触媒量。
  2. さらに(C)下記式(2)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンを前記(A)成分100質量部に対して50質量部以下の量で含有する、請求項記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物
    Figure 0006990164000031
    (式中、kは1~10,000の整数であり、Rは互いに独立に、炭素数1~10の1価炭化水素基であり、Rは互いに独立に、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、及び炭素数1~10の1価炭化水素基から選ばれる基、または水素原子である)。
  3. さらに(D)下記式(3)
    Figure 0006990164000032
    (式中、Rは、互いに独立に、炭素数1~10の1価脂肪族炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数6~10の1価芳香族炭化水素基であり、p、q、及びrは、互いに独立に0~4の整数であり、但し、p+q+r=3又は4である)
    で表される有機ケイ素化合物を(A)成分100質量部に対して0.1~30質量部で含有する、請求項1または2記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  4. 上記(A)オルガノポリシロキサンのGPC測定にて得られる分子量分布曲線において、2個以上の極大値が在り、少なくとも1つの極大値が分子量5,000以上にあり、少なくとも1つの極大値が分子量3,000以下にある、請求項1~のいずれか1項記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  5. 前記(A)オルガノポリシロキサンの分子量分布曲線において、分子量5,000以上の位置に極大値を有するピークの面積と、分子量3,000以下の位置に極大値を有するピークの面積との比が5:95~90:10である(但し、ピークが重なっている場合には、当該二つのピークの間の極小値の地点からベースラインに対して引いた垂線にて区切られた面積の比である)、請求項記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  6. 150℃において、液状の組成物がゲル化するまでの時間が300秒未満である、請求項1~のいずれか1項記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  7. 150℃×1時間の加熱における重量減少率が、加熱前の組成物の重量に対して10重量%以下である、請求項1~のいずれか1項記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  8. 請求項1~のいずれか1項記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して成る硬化物を備える半導体装置。
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