つぎに、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システムを説明する。
図1は、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システム(SOFC)を示す全体構成図である。
図1に示すように、固体酸化物形燃料電池システム(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のモジュールケース8が内蔵されている。この密閉空間であるモジュールケース8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガス(以下では適宜「発電用空気」又は「空気」と呼ぶ。)とにより発電反応を行う燃料電池セルスタック14が配置されている。本実施形態においては、燃料電池セルスタック14は、複数の燃料電池セル16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のモジュールケース8の発電室10の上方には、燃焼部としての燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の空気とが燃焼し、排気ガス(言い換えると燃焼ガス)を生成するようになっている。さらに、モジュールケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質部である改質器120が配置され、残余ガスの燃焼熱によって改質器120を改質反応が可能な温度となるように加熱している。
さらに、ハウジング6内においてモジュールケース8の上方には、蒸発器140が断熱材7内に設けられている。蒸発器140は、供給された水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって、水を蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気と原燃料ガスとの混合ガス(以下では「燃料ガス」と呼ぶこともある。)をモジュールケース8内の改質器120に供給する。
また、モジュールケース8の側面には原燃料ガスから硫黄成分を除去するための水添脱硫器36が設けられている。この水添脱硫器36は、モジュールケース8の熱により内蔵された触媒を所定温度に加熱し、原燃料ガスと改質器120から供給された水素ガスとを反応させることにより、原燃料ガス中の硫黄成分を除去する水素化脱硫方式の脱硫器である。
つぎに、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気を遮断する電磁弁42と、発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、発電室に供給される発電用空気を加熱するヒータ48とを備えている。このヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
なお、本実施形態では、燃料電池システム1の起動時において、まず、各燃料電池セル16の上端で燃料ガスを燃焼させ、上方に配置された改質器120を加熱し、その後、改質器120内において水蒸気改質反応のみが生じるSR工程が実行され、燃料電池セルスタック14を発電反応が可能な温度まで昇温させている。また、燃料電池システムの起動時に、燃焼運転の後、改質器120内において部分酸化改質反応(POX)のみが生じるPOX工程から、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)が混在したオートサーマル改質反応(ATR)が生じるATR工程を経て、水蒸気改質反応のみが生じるSR工程が行われるように構成してもよいし、POX工程を省略してATR工程からSR工程に移行されるように構成してもよい。なお、改質器120内において、部分酸化改質反応を発生させる構成では、改質器120に改質用の空気を供給する改質用空気流量調整ユニット(図示せず)を設ける必要がある。
つぎに、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
つぎに、図2及び図3を参照して、本実施形態による燃料電池システム1に備えられている燃料電池モジュールの構造について説明する。
図2は、固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2は、断熱材7で覆われたモジュールケース8の内部に設けられた燃料電池セルスタック14及び改質器120を有すると共に、モジュールケース8の外部で且つ断熱材7内に設けられた蒸発器140を有する。
まず、モジュールケース8は、図2に示すように、略矩形の天板8a,底板8c,これらの長手方向(図2の左右方向)に延びる辺同士を連結する対向する一対の側板8b(図3)からなる筒状体と、この筒状体の長手方向の両端部の2つの対向する開口部を塞ぎ、天板8a及び底板8cの幅方向(図3の左右方向)に延びる辺同士を連結する閉鎖側板8d,8eからなる。
モジュールケース8は、空気通路カバー160によって天板8a及び側板8bが覆われている。空気通路カバー160は、天板160aと、対向する一対の側板160bとを有する(図3)。天板160aの略中央部分には、排気管171が貫通されている。天板160aと天板8aとの間、及び、側板160bと側板8bとの間は、所定の距離だけ離間した状態となっている。これにより、モジュールケース8の外側と断熱材7との間、具体的にはモジュールケース8の天板8a及び側板8bと、空気通路カバー160の天板160a及び側板160bとの間には、酸化剤ガス供給通路としての空気通路161a,161bが形成されている(図3)。
モジュールケース8の側板8bの下部には、複数の貫通孔である吹出口8fが設けられている。発電用空気は、空気通路カバー160の天板160aのうち、モジュールケース8の閉鎖側板8e側の略中央部に設けられた発電用空気導入管74から流路方向調整部164を介して空気通路161a内に供給される(図2参照)。そして、発電用空気は、空気通路161a,161bを通って、吹出口8fから燃料電池セルスタック14に向けて発電室10内に噴射される(図3参照)。
また、空気通路161a,161bの内部には、熱交換促進部材としてのプレートフィン162,163が設けられている(図3参照)。プレートフィン162は、モジュールケース8の天板8aと空気通路カバー160の天板160aの間で長手方向及び幅方向に延びるように水平方向に設けられ、プレートフィン163は、モジュールケース8の側板8bと空気通路カバー160の側板160bとの間であって、且つ、燃料電池セル16よりも上方の位置に長手方向及び鉛直方向に延びるように設けられている。
空気通路161a,161bを流れる発電用空気は、特にプレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の内側のモジュールケース8内(具体的には天板8a,側板8bに沿って設けられた排気通路)を通過する排気ガスとの間で熱交換を行い、加熱されることとなる。このようなことから、空気通路161a,161bにおいてプレートフィン162,163が設けられた部分は、熱交換器(熱交換部)として機能する。
つぎに、蒸発器140は、モジュールケース8の天板8a上で水平方向に延びるように固定されている。また、蒸発器140とモジュールケース8との間には、これらの隙間を埋めるように断熱材7の一部分7aが配置されている(図2及び図3参照)。
具体的には、蒸発器140は、長手方向(図2の左右方向)の一側端側に、水及び原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい)を供給する燃料供給配管63と、排気ガスを排出するための排気ガス排出管82(図3参照)とが連結され、長手方向の他側端側に、排気管171の上端部が連結されている。排気管171は、空気通路カバー160の天板160aに形成された開口部を貫通して下方へ延び、モジュールケース8の天板8a上に形成された排気口に連結されている。
また、蒸発器140は、図2及び図3に示すように、上面視で略矩形の蒸発器ケース141を有している。この蒸発器ケース141は、2つの高さの低い有底矩形筒状の上側ケース142と下側ケース143とを、これらの間に中間板144を挟んだ状態で接合して形成されている。
したがって、蒸発器ケース141は、上下方向に二層構造となっており、下層部分には、排気管171から供給された排気ガスが通過する排気通路部140Aが形成され、上層部分には、燃料供給配管63から供給された水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発部140Bと、蒸発部140Bで生成された水蒸気と燃料供給配管63から供給された原燃料ガスとを混合させる混合部140Cが設けられている。
図2及び図3に示すように、蒸発部140B及び混合部140Cは、複数の連通孔(スリット)が形成された仕切り板145により蒸発器140を仕切った空間にて形成されている。また、蒸発部140B内には、アルミナボール(図示せず)が充填されている。
また、排気通路部140Aは、同様に複数の連通孔を有する2つの仕切り板146,147により排気ガスの上流側から下流側にかけて3つの空間に仕切られている。そして、2番目の空間に燃焼触媒(図示せず)が充填されている。すなわち、本実施形態において蒸発器140は、上下方向の二層構造のうちの下層構造に燃焼触媒器を含んでいる。
このような蒸発器140では、蒸発部140B内の水と排気通路部140Aを通過する排気ガスとの間で熱交換が行われ、排気ガスの熱により蒸発部140B内の水が蒸発して、水蒸気が生成されることとなる。また、混合部140C内の混合ガスと排気通路部140Aを通過する排気ガスとの間で熱交換が行われ、排気ガスの熱により混合ガスが昇温されることとなる。また、蒸発器140の周囲には、棒状の加熱ヒーター149(図2、図3)が、その三辺を取り囲むように配置されている。この加熱ヒーター149は、固体酸化物形燃料電池システム1の起動工程や、停止工程中に通電されることにより、蒸発部140Bを周囲から加熱し、蒸発部140B内での水蒸気の生成を促進するように構成されている。なお、この加熱ヒーター149は、省略することもできる。
さらに、図2に示すように、混合部140Cには、改質器120に混合ガスを供給するための混合ガス供給管112が接続されている。この混合ガス供給管112は、排気管171の内部を通過するように配置されており、一端が中間板144に形成された開口に連結され、他端が改質器120の天面に形成された混合ガス供給口に連結されている。混合ガス供給管112は、排気通路部140A内,排気管171内を通過してモジュールケース8内まで鉛直下方に延び、そこで略90°屈曲されて天板8aに沿って水平方向に延びた後、下方へ略90°屈曲されて改質器120に連結されている。
つぎに、改質器120は、燃焼室18の上方でモジュールケース8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置され、天板8aに対して固定されている。改質器120は、上面視で外形略矩形であるが、中央部に貫通孔が形成された環状構造体であり、上側ケース121と下側ケース122とが接合された筐体を有している。この貫通孔は、天板8aに形成された排気口111と上面視で重なるように位置し、好ましくは、貫通孔の中央位置に排気口111が形成される。
改質器120の長手方向の一端側(モジュールケース8の閉鎖側板8e側)では、上側ケース121に設けられた混合ガス供給口に混合ガス供給管112が連結されており、他端側(閉鎖側板8d側)では、燃料ガス供給管64が下側ケース122に、水添脱硫器36まで延びる水添脱硫器用水素取出管65が上側ケース121にそれぞれ連結されている。したがって、改質器120は、混合ガス供給管112から混合ガス(つまり水蒸気が混合された原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい))を受け取り、内部で混合ガスを改質し、燃料ガス供給管64及び水添脱硫器用水素取出管65から改質後のガス(即ち、燃料ガス)を排出するように構成されている。
改質器120は、その内部空間が2つの仕切り板123a,123bによって3つの空間に仕切られることにより、改質器120内に、混合ガス供給管112からの混合ガスを受入れる混合ガス受入部120Aと、混合ガスを改質するための改質触媒(図示せず)が充填された改質部120Bと、改質部120Bを通過したガスを排出するガス排出部120Cと、が形成されている(図2参照)。改質部120Bは、仕切り板123a,123bに挟まれた空間であり、この空間に改質触媒が保持されている。混合ガス及び改質後の燃料ガスは、仕切り板123a,123bに設けられた複数の連通孔(スリット)を通って移動可能となっている。また、改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
混合ガス受入部120Aには、蒸発器140から混合ガス供給管112を介して供給された混合ガスが混合ガス供給口を通して噴出される。この混合ガスは、混合ガス受入部120A内で拡張されて噴出速度が低下し、仕切り板123aを通過して改質部120Bに供給される。
改質部120Bでは、低速で移動する混合ガスが改質触媒により燃料ガスに改質され、この燃料ガスが仕切り板123bを通過してガス排出部120Cに供給される。
ガス排出部120Cでは、燃料ガスが燃料ガス供給管64、及び、水添脱硫器用水素取出管65へ排出される。
また、図2に示すように、水添脱硫器36は、モジュールケース8の側方の、断熱材7の中に埋め込まれている。水添脱硫器36の内部に収容された脱硫触媒(図示せず)は、モジュールケース8からの熱を受けて所定の温度に加熱され、触媒として作用する。水添脱硫器36には、燃料供給源30から原燃料ガスが供給されると共に、改質器120において改質された水素ガスを豊富に含む燃料ガスが、水添脱硫器用水素取出管65を介して供給される。原燃料ガスに含まれる硫黄成分は、水添脱硫器用水素取出管65を介して供給された燃料ガスに含まれる水素ガスと反応して水素化脱硫される。
水添脱硫器36により硫黄成分が除去された原燃料ガスは、燃料供給配管63を介して蒸発器140に導入され、蒸発器140において生成された水蒸気と共に改質器120に流入する。改質器120においては、原燃料ガスが水蒸気改質され、水素ガスを豊富に含む燃料ガスに改質される。改質された燃料ガスの多くは燃料ガス供給管64を介して燃料電池セルスタック14に供給され、発電に使用される。改質された燃料ガスの一部は、水添脱硫器用水素取出管65を介して水添脱硫器36に還流する。なお、水添脱硫器36は、内部に収容された脱硫触媒(図示せず)が十分に加熱されていない状態や、水添脱硫器用水素取出管65を介して十分な水素ガスが供給されていない状態では十分な脱硫作用を行うことができない。
燃料ガス供給通路としての燃料ガス供給管64は、モジュールケース8内を閉鎖側板8dに沿って下方へ延び、底板8c付近で略90°屈曲されて水平方向に延びて、燃料電池セルスタック14の下方に形成されたマニホールド66内へ入り、更にマニホールド66内で逆側の閉鎖側板8e付近まで水平方向に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔が形成されており、この燃料供給孔から、燃料ガスがマニホールド66内に供給される。このマニホールド66の上方には、燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セル16内に供給される。また、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
また、改質器120は、モジュールケース8の側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されている。
つぎに、図4及び図5を参照して、燃料電池セル16について説明する。
図4は、本発明の実施形態による燃料電池セルスタックを構成する燃料電池セルを示す図である。図5は、燃料電池セル端部の拡大断面図である。
図4に示すように、燃料電池セル16は、燃料電池セル本体84と、この燃料電池セル本体84の両端部にそれぞれ接続された接続電極部であるキャップ86とを備えている。
図5に示すように、支持体として導電支持体を有する場合の燃料電池セル本体84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部にガス通路である燃料ガス流路88を形成する円筒形の燃料極層である内側電極層90と、内側電極層90の外周に設けられた円筒形の固体電解質層である電解質層94と、電解質層94の外周に設けられた円筒形の空気極(酸化剤ガス極)層である外側電極層92と、を備えている。この内側電極層90は、燃料電池セル本体84を構成する支持体として機能すると共に、内部に燃料ガスが流れるガス通路を構成する多孔質体である。内側電極層90は燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。本実施形態では、内側電極層90は、Ni/YSZからなる。
なお、支持体として多孔質の絶縁性支持体を用いることもでき、この場合においては、絶縁性支持体の外側に、内側電極層として燃料極層を形成する。
電解質層94は、内側電極層90の外周面に沿って全周にわたって形成されており、下端は内側電極層90の下端よりも上方で終端し、上端は内側電極層90の上端よりも下方で終端している。電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成することができる。本実施形態においては、Sr及びMgをドープしたランタンガレートであるLSGMにより電解質層94が形成されている。
外側電極層92は、電解質層94の外周面に沿って全周にわたって形成されており、下端は電解質層94の下端よりも上方で終端し、上端は電解質層94の上端よりも下方で終端している。外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に、キャップ86について説明するが、燃料電池セル本体84の上端側と下端側に取り付けられたキャップ86は、同一構造であるため、ここでは、燃料電池セル本体84の下端側に取り付けられたキャップ86について具体的に説明する。
キャップ86は、燃料電池セル本体84の上下端部をそれぞれ包囲するように設けられ、燃料電池セル本体84の内側電極層90と電気的に接続され、内側電極層90を外部に引き出す接続電極として機能する。図5に示すように、燃料電池セル本体84の下端に設けられたキャップ86は、円筒状の第1円筒部86aと、第1円筒部86aの上端から外方に向かって延びる円環状の円環部86bと、円環部86bの外周から上方に向かって延びる第2円筒部86cとを有する。キャップ86の第1円筒部86aの中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。燃料ガス流路98は、キャップ86の中心から燃料電池セル本体84の軸線方向に延びるように設けられた細長い管路である。
キャップ86は、フェライト系ステンレス又はオーステナイト系ステンレスからなる本体の内周面及び外周面にクロム酸化物(本実施形態では、Cr2O3)がコーティングされ、さらに、外周面には、MnCo2O4がコーティングされている。加えて、コーティングされたMnCo2O4層の外周面にはAg集電膜が設けられている。なお、本実施形態では、Ag集電膜は、キャップ86の外周面全体にわたって設けられているが、一部のみに設けてもよい。
キャップ86の第2円筒部86cの内側と、燃料電池セル本体84の内側電極層90の端部外周面との間の空間には銀ペースト95が配置されている。燃料電池セル16の組み立て後に焼成することにより、銀ペースト95が焼結され、内側電極層90とキャップ86が、電気的、機械的に結合される。なお、上記のように、内側電極層90には導電材料であるニッケルが含まれているので、キャップ86は、焼結された銀ペースト95を介して、内側電極層90全体と電気的に接続される。また、キャップ86の第2円筒部86cの内周面と、電解質層94の下端部外周面との間には、ガラス材料からなるガラスシール96が設けられている。このガラスシール96により、キャップ86と内側電極層90との間の空間は、燃料電池セル16の外部の空間に対して気密密封されている。
つぎに、図6を参照して、本発明の実施形態による燃料電池セルスタック14について説明する。
図6は、本実施形態による燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図6に示すように、燃料電池セルスタック14は、格子状に配列された128本の燃料電池セル16を備え、これらの燃料電池セル16は、16本ずつ8列に並べて配置されている。
各燃料電池セル16は、下端側が金属製の長方形の下支持板68により支持されている。この下支持板68は、マニホールド66の天井面を構成し、各燃料電池セル16の燃料ガス流路88に燃料ガスを流入させるための貫通穴が形成されている。また、各燃料電池セル16の下端側のキャップ86と下支持板68の間には、概ね円筒形のセラミック製のスペーサ100が配置されており、キャップ86と下支持板68の間を離間させることで絶縁性を確保している。
さらに、各燃料電池セル16には、1つの燃料電池セル16を隣接する燃料電池セル16と電気的に接続する集電部材102が取り付けられている。この集電部材102は、燃料極である内側電極層90と電気的に接続されたキャップ86と、隣接する燃料電池セル16の空気極である外側電極層92の外周面と、を接続するように配置される。また、各集電部材102は、各燃料電池セル16の上端部及び下端部に取り付けられているため、1つの燃料電池セル16と隣接する燃料電池セル16は、2つの集電部材102により電気的に接続されることになる(これら2つの集電部材102は並列)。このように、各集電部材102により、燃料電池セルスタック14を構成する全ての燃料電池セル16は、電気的に直列に接続される。なお、各燃料電池セル16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に集電部材102が接触することにより、集電部材102は空気極全体と電気的に接続される。
次に図7により本実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システムを示すブロック図である。
図7に示すように、固体酸化物型燃料電池システム1は、コントローラである制御部210を備え、この制御部210には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置212、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置214、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置216が接続されている。
また、制御部210には、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)が内蔵されており、これらにより、各センサからの入力信号に基づいて、補機ユニット4、インバータ54等が制御される。なお、この報知装置216は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部210には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ220は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ222は、本来排気ガス排出管82(図3)等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ224は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ226は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ228は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
点火用空気流量センサ230は、改質器120に供給される点火用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ232は、改質器120に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ234は、改質器120に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ236は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ238は、改質器120の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ240は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ242は、燃料電池セルスタック14の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル16自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ244は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ246は、排気管171の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ248は、改質器120の温度を検出するためのものであり、改質器120の入口温度と出口温度から改質器120の温度を算出する。
外気温度センサ250は、固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、コントローラである制御部210に送られ、制御部210は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
つぎに、図2及び図3を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システム1に備えられた燃料電池モジュール2の作用を説明する。
図2に示すように、水及び原燃料ガス(燃料ガス)は、蒸発器140の長手方向の一端側に連結された燃料供給配管63から蒸発器140の上層に設けられた蒸発部140B内に供給される。蒸発部140Bに供給された水は、蒸発器140の下層に設けられた排気通路部140Aを流れる排気ガスにより加熱され水蒸気となる。この水蒸気と、燃料供給配管63から供給された原燃料ガスとが、蒸発部140B内を下流方向に流れて行き、混合部140C内で混合される。混合部140C内の混合ガスは、下層の排気通路部140Aを流れる排気ガスにより加熱される。
混合部140C内で形成された混合ガス(燃料ガス)は、混合ガス供給管112を通って、モジュールケース8内の改質器120に供給される。混合ガス供給管112は、排気通路部140A,排気管171を順に通過しているため、これらの通路を流れる排気ガスにより、混合ガス供給管112内の混合ガスは更に加熱される。
混合ガスは、改質器120内の混合ガス受入部120A内に流入し、ここから仕切り板123aを通過して改質部120Bに流入する。混合ガスは、改質部120Bにおいて改質されて燃料ガスとなる。こうして生成された燃料ガスは、仕切り板123bを通過して、ガス排出部120Cに流入する。
さらに、燃料ガスは、ガス排出部120Cから燃料ガス供給管64と水添脱硫器用水素取出管65とに分岐する。そして、燃料ガス供給管64に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給管64の水平部64aに設けられた燃料供給孔64bからマニホールド66内に供給され、マニホールド66から各燃料電池セル16内に供給される。
また、図2及び図3に示すように、発電用空気は、発電用空気導入管74から空気通路161aに供給される。発電用空気は、空気通路161a,161b内において、プレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の下部のモジュールケース8内に形成された排気通路を通過する排気ガスとの間で効率的な熱交換を行い、加熱されることとなる。この後、発電用空気は、モジュールケース8の側板8bの下部に設けられた複数の吹出口8fから燃料電池セルスタック14の下部側面に向けて両側から発電室10内に噴射される。この加熱された発電用空気により、各燃料電池セル16の下部が加熱される。
また、発電室10内で発電に利用されなかった燃料ガスは、各燃料電池セル16の上端から流出し、燃焼室18で燃焼されて排気ガス(燃焼ガス)となり、モジュールケース8内を上昇していく。その後、排気ガスは、モジュールケース8の天板8aの中央に形成された排気口111から流出する。
そして、排気口111から流出した排気ガスは、モジュールケース8の外部に設けられた排気管171を通過して蒸発器140の排気通路部140Aに流入し、排気通路部140Aを通過した後、蒸発器140から排気ガス排出管82へ排出される。排気ガスは、蒸発器140の排気通路部140Aを流れる際に、上述したように、蒸発器140の混合部140C内の混合ガス及び蒸発部140B内の水と熱交換を行う。
次に、図8を参照して、固体酸化物型燃料電池システム1の起動工程における制御を説明する。
図8は、起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。なお、図8の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
図8に示す起動工程は、コントローラである制御部210により実行される。制御部210は、常温の状態にある燃料電池セルスタック14の温度を発電が可能な温度まで上昇させる起動工程を実行する。この起動工程の終了後、燃料電池セルスタック14から電力が取り出され、固体酸化物形燃料電池システム1の外部の機器に電力を供給する発電工程が実行される。また、本実施形態においては、起動工程には、後述する燃焼工程、SR1工程、SR2工程、及びSR2工程が含まれている。
まず、図8の時刻t0において、発電用空気、点火用空気及び水の供給が開始される(プリパージ工程)。具体的には、制御部210が、発電用の酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これを作動させる。上述したように、発電用空気は、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に導入され、空気通路161a,161b、吹出口8fを経て発電室10内に流入する。また、制御部210は、点火用の酸化剤ガス供給装置である点火用空気流量調整ユニット(図示せず)に信号を送って、これを作動させる。燃料電池モジュール2内に導入された点火用空気は、改質器120、マニホールド66を経て、各燃料電池セル16の内部に流入し、その上端から流出する。
また、制御部210は、水供給装置である水流量調整ユニット28に信号を送って、これを作動させる。水流量調整ユニット28から圧送される純水は、燃料供給配管63を通って蒸発器140に到達する。少なくとも時刻t0から所定時間(水充填期間:t0〜t1)の間に、水流量調整ユニット28から燃料供給配管63を通って、少量の水が蒸発器140内に配置される。なお、時刻t0においては、まだ燃料が供給されていないため、改質器120内において改質反応は発生しない。本実施形態においては、図8の時刻t0において開始される発電用空気の供給量は約50L/minであり、点火用空気の供給量は約4.8L/minであり、水の供給量は2.5cc/minである。
次いで、図8の時刻t0から所定時間後の時刻t1において、燃料の供給が開始され、供給された燃料への点火が行われる。具体的には、制御部210が、燃料供給装置である燃料流量調整ユニット38に信号を送って、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t1において開始される燃料の供給量は約4.0L/minである。燃料電池モジュール2内に導入された燃料は、改質器120、マニホールド66を経て、各燃料電池セル16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t1においては、まだ改質器120の温度が低温であるため、改質器120内において改質反応は発生しない。
点火を行う際には、制御部210が、点火手段である点火装置83(図2)に信号を送り、各燃料電池セル16の上端から流出する燃料に点火する。
また、時刻t1において、少量の水が蒸発器140内に配置されているため、制御部210は、水の供給量を2.06cc/minに低減する。これにより、点火工程中に少量の水が蒸発器140へ向けて供給され始める。
時刻t2において、制御部210は、燃焼室温度センサ244により、燃焼室18の温度が所定温度上昇したことにより、点火が完了したことを確認する。そして、点火工程から燃焼工程に移行する。燃焼工程では、発電に使用されずに残った残余の燃料(この時点では発電反応は発生しないため、供給された燃料の全量)の燃焼熱によって、改質器120の昇温が図られる。
点火が終了すると、制御部210は、時刻t2において、点火用空気の供給を停止する(供給量0.0L/min)。
また、時刻t2において、制御部210は、燃料の供給量を3.14L/minに低減し、発電用空気の供給量を約70L/minに増加する。なお、水の供給量は2.06cc/minに維持され、起動工程中において少なくとも点火直後から燃焼工程の間は最低値に維持される。
燃焼工程において、供給された燃料は、各燃料電池セル16の上端から流出し、ここで燃焼される。この燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器120を加熱する。蒸発器140の温度が上昇することにより、オフガスの燃焼開始後短時間で水蒸気を生成することが可能になる。
このようにして、燃焼工程中に改質器120の温度が上昇し、時刻t3において、燃焼工程から第1の水蒸気改質反応工程(SR1工程)へ移行される。このSR1工程では、蒸発器140を経て改質器120に流入した燃料及び水蒸気による水蒸気改質反応が発生する。この水蒸気改質反応は、次式(1)に示す吸熱反応である。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (1)
また、時刻t3において、第1の水蒸気改質反応工程(SR1工程)が開始されると、水の消費量が増大するため、制御部110は、燃料及び発電用空気の供給量を維持したまま、水供給量のみを3.82cc/minに増加する。
なお、図8に示すタイムチャートでは、時刻t3における改質器温度は約250℃である。この改質器温度は、改質器温度センサ248(図7)により検出されている温度であり、改質器120の平均的な温度である。実際には、時刻t3において、改質器120は部分的には水蒸気改質反応を発生する温度に達している。
なお、本実施形態では、起動工程において、燃焼工程に続いてSR工程(SR1工程,SR2工程及びSR3工程)が行われるように構成されている。本実施形態のSR工程は、改質用の空気を導入せずに、SR反応を発生させることを意図したものである。
次に、改質器温度センサ248による検出温度が約450℃に到達すると、図8の時刻t4において、第1の水蒸気改質反応工程(SR1工程)から第2の水蒸気改質反応工程(SR2工程)に移行される。時刻t4において、発電用空気供給量が59L/minに低減され、水供給量が5.0cc/minに更に増加される。また、燃料供給量は従前の値が維持される。これにより、SR2工程では、SR1工程よりも水蒸気と炭素のモル比であるS/Cが増加される。
さらに、図8の時刻t5において、発電室温度センサ242による検出温度が約550℃に到達すると、第2の水蒸気改質反応工程(SR2工程)から第3の水蒸気改質反応工程(SR3工程)に移行される。これに伴い、燃料供給量が2.02L/minに低減され、発電用空気供給量が47L/minに更に低減され、水供給量が4.75cc/minに低減される。これにより、SR3工程では、SR2工程よりも水蒸気と炭素のモル比S/Cが更に増加され、水蒸気改質反応に適した値に設定される。
さらに、SR3工程を所定時間実行した後、発電室温度センサ242による検出温度が約600℃に到達すると、燃料電池セルスタック14は、発電が可能な状態となるので、「発電工程」に移行する。発電工程においては、燃料電池セルスタック14からインバータ54(図7)に電力が取り出され、外部の機器に電力が出力される。また、発電工程においては、制御部210は、燃料電池モジュール2に対して要求された出力電力に応じて、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量を変更する。なお、本実施形態においては、発電工程中における水蒸気と炭素のモル比S/Cは約2.5程度に設定され、発電室10内の温度は約550℃〜750℃の間で推移する。
次に、図9を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システム1の停止工程を説明する。
図9は、停止工程における燃料電池セルスタック14の温度、及び燃料等の各供給量の一例を示すタイムチャートである。なお、図9の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
まず、図9の時刻t301において停止操作が行われると、制御部210(図7)は停止工程を実行し、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しが停止される。これにより発電電流はゼロまで低下する。なお、図9の時刻t301以前は発電工程が実行されており、発電工程においては、燃料電池モジュール2から所要量の電流が取り出されていると共に、この発電電流に応じた量の原燃料ガス、発電用空気(酸化剤ガス)、及び水が燃料電池モジュール2に供給されている。また、発電工程中においては、燃料電池セルスタック14の温度は、発電反応が可能な温度である600℃程度に維持され、改質器120に供給される水蒸気量と原燃料ガス中の炭素量のモル比であるS/Cは2.5程度に維持されている。
次いで、時刻t301において停止工程が開始されると、燃料電池モジュール2への発電用空気(但し、停止工程中は発電は行われない)の供給量は発電工程中よりも多くされ、原燃料ガス及び水の供給量は発電工程中よりも少なくされる。図9に示す例では、発電用空気の供給量は70L/minに増加され、原燃料ガスの供給量は0.45L/minに低下され、水の供給量も1.05cc/minに低下される。このように、本実施形態における停止工程は、燃料電池モジュール2からの電力の取り出し(発電)の停止後も、原燃料ガス及び改質用の水の供給を継続しながら燃料電池セルスタック14の温度を低下させる、所謂焚き下ろしによる停止工程である。なお、時刻t301において停止工程が開始されると、原燃料ガス及び水の供給量は夫々低下されるが、供給量が低下された後もS/Cは2.5程度に維持される。
また、発電工程中や、停止工程開始直後においては、モジュールケース8内の温度が高いため、排気ガスの温度も高く、この排気ガスの熱により蒸発部140Bを十分に加熱して、必要な水蒸気を生成することができる。これに対し、停止工程開始から或る程度時間が経過すると、モジュールケース8内の温度が低下するので、排気ガスの温度も低くなり、排気ガスの熱だけでは蒸発部140Bにおいて十分な量の水蒸気を生成することが困難となる。このような場合には、蒸発器140の周囲に配置された加熱ヒーター149(図2、図3)に適宜通電して蒸発器140を加熱し、所要量の水蒸気が得られるようにする。
さらに、停止工程中においては、所定量の原燃料ガス及び水蒸気の供給が継続され、これらは改質器120を介して各燃料電池セル16の燃料極側に供給される。ここで、停止工程の初期においては改質器120の温度が十分に高いため、改質器120内では水蒸気改質反応が発生し、水蒸気改質された燃料ガスが各燃料電池セル16に供給される。これに対して、停止工程の終期においては、改質器120の温度が低下しているため、改質器120内では十分な水蒸気改質反応が発生せず、原燃料ガスを、水素ガスを豊富に含む燃料ガスに改質することが困難になる。なお、改質された燃料ガス、未改質の原燃料ガスの何れが供給された場合においても、各燃料電池セル16内側の燃料極側を還元雰囲気に維持し、燃料極の酸化を防止することは可能である。
また、上述したように、発電工程中においては、燃料電池セル16の燃料極で発電に使用されずに残った残余燃料ガスは、燃料電池セル16の上端から流出し、そこで燃焼される。この燃焼室18における残余燃料の燃焼によりモジュールケース8内が加熱される。次いで、停止工程が開始されると、原燃料ガスの供給量が減少されるので、各燃料電池セル16の上端から流出する残余の燃料(停止工程中においては燃料電池セル16で発電が行われないため、供給した燃料の全量)が減少する。また、停止工程においては、各燃料電池セル16の空気極側に供給される空気の流量が増加される。これにより、時刻t301において停止工程が開始されると、モジュールケース8内の温度が低下すると共に、図9に示すように燃料電池セルスタック14や改質器120の温度も低下する。
ここで、図2に示すように、燃料供給源30から供給された原燃料ガスは、水添脱硫器36を経て硫黄成分が除去されたものが改質器120に導入されている。一方、水添脱硫器36には、改質器120において改質された水素ガスを豊富に含む燃料ガスの一部が導入され、導入された水素ガスと原燃料ガスに含まれる硫黄成分を反応させることにより硫黄成分が除去され、硫黄成分が除去された原燃料ガスが改質器120に送り込まれる。ところが、停止工程の進行に伴い改質器120の温度が低下すると、改質器120において水素ガスを生成することが困難になり、水添脱硫器36において硫黄成分を除去することも困難になる。また、水添脱硫器36は、モジュールケース8に隣接して配置されており、水添脱硫器36に収容されている脱硫触媒(図示せず)は、モジュールケース8の熱により、触媒作用が可能な温度に加熱されている。このため、停止工程の進行に伴いモジュールケース8の温度が低下すると、水添脱硫器36の脱硫触媒(図示せず)が触媒作用を維持することが困難になる。
このため、本実施形態においては、図9に示すように、燃料電池セルスタック14の温度(発電室温度センサ242による検出温度)が約200℃まで低下した時刻t302において、原燃料ガスの供給が停止される。即ち、制御部210は、停止工程中において、改質器120の温度が低下して、水素ガスが生成不能な温度帯域に入る前に、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、原燃料ガスの供給を停止させる。これにより、水添脱硫器36において硫黄成分が十分に除去されていない原燃料ガスが燃料電池セルスタック14に供給され、硫黄成分により各燃料電池セル16の燃料極が劣化されるのを防止することができる。なお、本実施形態においては、停止工程中に燃料電池セルスタック14の温度が約200℃に低下した時点では、改質器120の温度も約200℃程度であり、改質器120の温度が約200℃以下に低下すると水添脱硫器36に十分な量の水素ガスを供給することができなくなる。
このように、本実施形態においては、時刻t301において停止工程が開始された後、時刻t302において燃料電池セルスタック14の温度が約200℃に低下するまでの間が、燃料ガスの供給圧力により各燃料電池セル16の燃料極側の圧力が高く維持される燃料ガス保圧期間である。燃料ガス保圧期間においては、各燃料電池セル16の燃料極側の圧力が高く維持されるので、燃料極側への酸化剤ガスの逆流が防止される。この燃料ガス保圧期間内においては、改質器120において水添脱硫に必要な水素ガスを生成することが可能であり、原燃料ガス中の硫黄成分は、水添脱硫器36において十分に除去され、各燃料電池セル16の燃料極に実質的に影響しない。
さらに、水流量調整ユニット28による蒸発器140への水の供給は、時刻t302において原燃料ガスの供給が停止された後も継続される。蒸発器140の蒸発部140Bに供給された水は、そこで蒸発されて体積膨張する。この体積膨張による圧力上昇は、蒸発器140の下流側の改質器120、燃料ガス供給管64、及びマニホールド66を介して各燃料電池セル16の燃料極側に及び、燃料極側の圧力が高く維持される。これにより、各燃料電池セル16の燃料極側への酸化剤ガスの逆流が防止される。
なお、停止工程の進行と共に、モジュールケース8内の温度は低下し、蒸発器140の温度も低下する。このため、蒸発器140に供給された水も次第に蒸発しにくくなる。蒸発器140の温度が低下し、必要量の水蒸気が生成できない場合には、加熱ヒーター149(図2、図3)に通電して、蒸発器140を加熱しても良い。
次いで、制御部210は、燃料電池セルスタック14の温度が約150℃に低下した時刻t303において、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給を停止させる。燃料電池セルスタック14の温度が150℃程度まで低下した状態においては、燃料極の雰囲気酸化、及び電気化学的酸化は実質的に発生せず、各燃料電池セル16の劣化は十分に抑制される。また、本実施形態においては、燃料電池セルスタック14の温度が150℃程度まで低下した状態では、蒸発器140の温度は100℃以上に維持されており、供給された水を十分に蒸発させることができる。このため、蒸発されない水が蒸発器140の蒸発部140Bに残留することはない。また、好ましくは、燃料電池セル16の温度が約100℃以上、約200℃以下の状態にあるとき、水の供給を停止させる。
このように、本実施形態においては、時刻t302において原燃料ガスの供給が停止された後、燃料電池セルスタック14の温度が150℃程度に低下する時刻t303までの間は、水の蒸発による体積膨張圧力により各燃料電池セル16の燃料極側の圧力が高く維持される水蒸気保圧期間である。水蒸気保圧期間においては、蒸発した水蒸気の圧力により各燃料電池セル16の燃料極側の圧力が高く維持されるので、燃料極側への酸化剤ガスの逆流が防止される。
また、時刻t303において水の供給を停止させた後も、発電用空気の供給は継続され、時刻t303から所定時間経過後の時刻t304において、制御部210は発電用空気流量調整ユニット45に信号を送り、これを停止させる。これにより、停止工程が終了する。このように、水の供給を停止させた後、発電用空気の供給を継続することにより、各燃料電池セル16の燃料極側に供給され、その上端から空気極側に流出した水蒸気を、モジュールケース8から排出することができ、モジュールケース8内での結露を防止することができる。
本発明の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、制御部210は、停止工程(図9の時刻t301〜)中において、改質器120の温度が水素ガスを生成不能な温度帯域では原燃料ガスの供給を停止させる(図9の時刻t302)ので、水添脱硫器36に十分な水素を供給することができない状態での原燃料ガスの供給が回避される。これにより、原燃料ガスに含まれる硫黄成分による燃料極の劣化を十分に抑制することができる。さらに、本発明によれば、改質器120が水素ガスを生成不能な温度帯域に入り、原燃料ガスの供給が停止された後も水の供給が継続されるので、生成された水蒸気により燃料電池セル16の燃料極側の圧力を高く維持することができ、燃料電池セルの雰囲気酸化及び電気化学的酸化を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、停止工程中において、蒸発部140Bの温度が水蒸気を生成可能な状態で、水流量調整ユニット28による水の供給が停止されるので、蒸発されない水が蒸発部蒸発部140Bに残留するのを防止することができる。これにより、蒸発部140Bに残留した水が次回の起動工程を不安定にするのを防止することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、停止工程中において、燃料電池セル16の温度が約150℃であるとき水の供給が停止(図9の時刻t303)されるので、燃料電池セル16に供給されていた水蒸気が、燃料電池セル16の燃料極側で結露するのを防止することができ、燃料極の水蒸気酸化を防止することができる。
また、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、水の供給が停止(図9の時刻t303)された後も酸化剤ガスの供給が継続される(図9の時刻t304まで)ので、空気極側に流出した水蒸気を速やかにモジュールケース8から排出することができ、モジュールケース8内における結露を防止することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、蒸発部140Bを加熱する加熱ヒーター149(図2、3)を備えているので、原燃料ガスの供給が停止された後も、蒸発部140Bにおいて十分な水蒸気を生成することができる。これにより、停止工程の終期まで確実に水蒸気の供給を継続することができ、燃料極の酸化を十分に抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した本発明の実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、燃料電池セルスタック14の温度(発電室温度センサ242による検出温度)が約200℃まで低下したとき原燃料ガスの供給を停止していたが、改質器120の温度を検出し、これに基づいて水素ガスが生成不能な温度帯域を判断して、原燃料ガスの供給を停止させても良い。或いは、停止工程開始後、改質器120の温度が水素ガスを生成不能な温度帯域に入るまでの時間を予め求めておき、停止工程開始後の経過時間に基づいて原燃料ガスの供給を停止させるように本発明を構成することもできる。
また、上述した実施形態においては、蒸発器140はモジュールケース8の外部に配置され、モジュールケース8から流出する排気ガスの熱により加熱されていたが、変形例として、蒸発器140をモジュールケース8内に配置することもできる。この場合には、蒸発器140を燃焼室18の上方に配置するのが良く、蒸発器140を、残余の燃料ガスの燃焼熱で直接加熱することができる。ここで、燃料電池セルスタック14の上端近傍には、起動工程において燃料電池セル16の上端から流出する燃料ガスに着火するための着火用ヒーターとして点火装置83(図2)が配置されている。蒸発器140を燃焼室18の上方に配置する場合には、蒸発器140を点火装置83の上方に配置するのが良い。このように点火装置83を配置しておくことにより、点火装置83を、停止工程中において蒸発器140を加熱するための加熱ヒーターとして兼用にすることができる。