JP6988002B2 - 超音波内視鏡用バルーン、これを備えた超音波内視鏡及びその製造方法 - Google Patents
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Description
内視鏡挿入部へのバルーンの取り付けは、バルーンの両端に形成した肉厚のビード部を、内視鏡挿入部に設けた溝に嵌め込むことにより行われる。また、バルーンの構成材料としては、天然ゴム、合成エラストマー等の種々の弾性部材の使用が検討されている(例えば特許文献1)。
これらのアレルギーの発症リスクを抑えるには、合成エラストマーを構成材料とするバルーンに切り替える必要がある。しかし、本発明者らが合成エラストマーにより形成したバルーンについて検討を重ねたところ、合成エラストマーにより形成したバルーンは天然ゴム製のものと比較して機械的物性に劣る傾向があり、例えば、内視鏡挿入部への装着の際、あるいはバルーン内部空間に水を充填した際などに、バルーンが破れやすい傾向にあることがわかってきた。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
〔1〕
合成エラストマーにより形成された超音波内視鏡用バルーンであって、
上記バルーンのビード部の幅Wと、上記バルーンを固定するために超音波内視鏡挿入部に設けられたビード部取り付け溝の幅Xとの関係を1.1≦W/X≦2.5とし、かつ、
上記バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yと、上記超音波内視鏡挿入部の上記ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係を0.30≦Y/Z≦0.55として用いる、超音波内視鏡用バルーン。
〔2〕
上記合成エラストマーが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種である、〔1〕に記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔3〕
上記合成エラストマーがオレフィン系エラストマーの少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔4〕
上記合成エラストマーがイソプレンゴムを含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔5〕
上記超音波内視鏡用バルーンが少なくとも外側表面にコーティング層を有する、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔6〕
上記コーティング層が、上記超音波内視鏡用バルーンを形成する合成エラストマーとは異なる合成エラストマーにより形成されている、〔5〕に記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔7〕
上記コーティング層の形成に用いる合成エラストマーが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種である、〔6〕に記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔8〕
上記コーティング層の形成に用いる合成エラストマーが、ポリウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種である、〔6〕又は〔7〕に記載の超音波内視鏡用バルーン。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の超音波内視鏡用バルーンを備えた超音波内視鏡。
〔10〕
内視鏡挿入部の超音波送受信部を覆ってバルーンが装着された超音波内視鏡の製造方法であって、下記(a)及び(b)を満たす関係にあるバルーンと超音波内視鏡とを用意し、この超音波内視鏡の挿入部に上記バルーンを装着することを含む、バルーン付超音波内視鏡の製造方法:
(a)上記バルーンのビード部の外径Wと、上記バルーンを固定するために超音波内視鏡挿入部に設けられたビード部取り付け溝の幅Xとの関係が、1.1≦W/X≦2.5;
(b)上記バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yと、上記超音波内視鏡挿入部の上記ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係が、0.30≦Y/Z≦0.55。
本発明の超音波内視鏡用バルーン(以下、単に「本発明のバルーン」とも称す。)は、超音波内視鏡の挿入部に配された超音波送受信部を覆って装着され、その状態でバルーン内部空間に水などの液状物質が充填され、超音波送受信時における超音波の減衰を抑制するための部材である。
超音波送受信部11には、電気信号と超音波とを相互に変換する超音波トランデューサ14が配されている。超音波トランデューサ14は、例えば、円柱状の挿入部3の中心軸のまわりに、円周方向に並んで複数の素子が配設されたラジアル走査型の形態とすることができる。
図2に示すビード部取り付け溝12a、12bの幅(図2中のX)が、本発明で規定する「幅X」であり、図2に示すビード部取り付け溝12a及び12bの各溝において、溝の壁面の最上部により囲まれた部分の外径(図2中のZ)が、本発明で規定する「外径Z」である。「溝の壁面の最上部」は、図2に示すように、ビード部取り付け溝の形成のために、先端部3cの表面からビード部取り付け溝の底部に向けて落ち込みが開始する部分である。
幅Xは、ビード部取り付け溝の2つの側面が互いに平行に形成されている部分における、2つの側面間の距離を意味する。少なくともビード部取り付け溝の2つの側面が互いに平行に形成されている部分には、バルーンのビード部が嵌め込まれることになる。
なお、先端部3cの断面は通常は円形であり、したがってビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分(ビード部取り付け溝の壁面最上部に沿って先端部3cを切断した断面)も通常は円形である。ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分が円形でない場合には、「外径Z」は円相当径を意味する。この「円相当径」は、ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の面積に相当する、真円の直径を意味する。
本発明で規定する「ビード部の幅W」及び「バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Y」を図4に示す。ここで、ビード部は、内視鏡挿入部に設けられたビード部取り付け溝において、2つの側面が互いに平行に形成されている部分に挿入される。これら2つの側面に対して垂直方向に対応するビード部の最大幅が、ビード部の幅Wである。また、内径Yは、バルーンを円筒状にして自立させた状態(バルーンの孔の中心軸方向を横方向として静置した状態を意味する。以下同様。)における、バルーンのビード部により囲まれた孔の内径を意味する。バルーンのビード部により囲まれた孔が円形でない場合には、内径Yは円相当径とする。この「円相当径」は、バルーンのビード部により囲まれた孔の面積に相当する、真円の直径を意味する。
(a1)バルーンのビード部の幅Wと、バルーンを固定するために内視鏡挿入部に設けられたビード部取り付け溝の幅Xとの関係が、1.1≦W/X≦2.5。
(b1)バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yと、超音波内視鏡挿入部のビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係が、0.30≦Y/Z≦0.55。
また、上記(a1)及び(b1)は、バルーンの一端のビード部と、それが挿入される先端部3cのビード部取り付け溝との関係、及び、バルーンの他端のビード部と、それが挿入される先端部3cの別のビード部取り付け溝との関係である。例えば、バルーンの一端のビード部の幅と他端のビード部の幅が異なっていたり、バルーンの一端のビード部により形成される孔の大きさと他端のビード部により形成される孔の大きさが異なっていたりする場合には、各ビード部と、各ビード部に対応するビード部取り付け溝との関係において、上記(a1)及び(b1)を満たすことを意味する。また、例えば、一端のビード部内(又は他端のビード部内)において、ビード部の幅Wが均一ではなく、ばらつきがある場合には、一端のビード部(又は他端のビード部)のすべての部分の幅Wと、このビード部の取り付け溝の幅Xとの関係が上記(a1)を満たす。また、例えば、先端部3cのビード部取り付け溝内において、その幅Xにばらつきがある場合には、先端部3cのビード部取り付け溝のすべての部分における溝の幅Xが、この溝に挿入されるビード部の幅Wとの関係で上記(a1)を満たす。また、例えば、一端のビード部内(又は他端のビード部内)において、ビード部の幅Wが均一ではなく、かつ、このビード部が挿入されるビード部取り付け溝内において、その幅Xにもばらつきがある場合には、一端のビード部(又は他端のビード部)のすべての部分の幅Wと、このビード部が挿入されるビード部取り付け溝のすべての部分における溝の幅Xが、上記(a1)を満たす。
上記(a1)と(b1)において、幅Wと幅Xの単位は同じであり(例えばいずれの単位もmm)、内径Yと外径Zの単位も同じである(例えばいずれの単位もmm)。
上記関係を満たすことにより、バルーン内部空間に管路13を通して液を充填した際に、バルーンが外れにくく、かつ、バルーンを破れにくくすることができる。
上記のビード部の幅Wと、ビード部取り付け溝の幅Xとの関係は、1.6≦W/X≦2.4を満たすことが好ましく、1.65≦W/X≦2.3を満たすことがより好ましく、1.7≦W/X≦2.3を満たすことがさらに好ましい。
また、バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yの大きさは、超音波内視鏡挿入部のビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係が上記を満たせば特に制限はなく、例えば、1〜8mmとすることが好ましく、2.5〜6.5mmとすることも好ましく、3.5〜5.5mmとすることがより好ましい。
本発明のバルーンの長さは、目的に応じて適宜に設定されるものである。例えば、バルーンを自立させた状態において、一端のビード部から他端のビード部までの長さ(バルーンの中心軸方向の長さ)を10〜100mmとすることができ、10〜50mmが好ましく、20〜40mmがさらに好ましい。バルーンの中心軸方向の長さは、2つのビード部取り付け溝の間隔よりも長くすることが好ましい。
なかでも本発明のバルーンの形成に用いる合成エラストマーは、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種であることが好ましい。これらのエラストマーの好ましい例について以下に説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
スチレン系エラストマーは、ハードセグメントがポリスチレン構造を有するエラストマーである。スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
オレフィン系エラストマーはポリオレフィン構造からなる、架橋又は非架橋構造のエラストマーである。オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、1−ブテン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−α−オレフィン−エチレン共重合体、イソプレンゴム(IR)、シス−1,4−ポリブタジエン(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ポリプロピレンの中にエチレン−プロピレンゴムを分散させたエラストマー、ポリプロピレンの中にエチレン−プロピレン−ジエンゴムを分散させたエラストマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
塩化ビニル系エラストマーは、ハードセグメントがポリ塩化ビニル構造を有するエラストマーである。塩化ビニル系エラストマーとしては、例えば、高重合度のポリ塩化ビニルが挙げられる。また、部分架橋のポリ塩化ビニルを用いることにより、架橋部がハードセグメント、直鎖部がソフトセグメントとして機能するエラストマーが挙げられる。
本発明のバルーンの形成に、塩化ビニル系エラストマーの1種又は2種以上を用いることができる。
ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメントがポリエステル構造を有するエラストマーである。例えば、特開平11−92636号公報などに記載された高融点ポリエステルセグメント(ハードセグメント)と分子量400〜6,000程度の低融点ポリマーセグメント(ソフトセグメント)とからなるブロックコポリマーを用いることができる。高融点ポリエステルセグメントとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を挙げることができる。また、低融点ポリマーセグメントとしては、例えば、ガラス転移温度が−70℃の非晶性ポリエーテル、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等を挙げることができる。
本発明のバルーンの形成にポリエステル系エラストマーの1種又は2種以上を用いることができる。
ポリウレタン系エラストマーは、ハードセグメントがポリウレタン構造を有するエラストマーである。ポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、低分子のグリコール及びジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールおよびジイソシアネートからなるソフトセグメントとの構造単位を含むエラストマーなどが挙げられる。
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−ヘキシレン・ネオペンチレンアジペート)などが挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500以上10,000未満が好ましい。
低分子のグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48以上〜500未満が好ましい。
本発明のバルーンの形成にポリウレタン系エラストマーの1種又は2種以上を用いることができる。
ポリアミド系エラストマーは、ハードセグメントがポリアミド構造を有するエラストマーである。例えば、ハードセグメントがポリアミドであり、ソフトセグメントがポリエーテルやポリエステルを用いたマルチブロックコポリマーを挙げることができる。ハードセグメントとしては、例えば、ポリアミド6,66,610,11,12等が挙げられる。ソフトセグメントにおけるポリエーテルは、ポリエチレングリコール、ジオールポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられ、ポリエステルは、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(ブチレン−1,4−アジペート)グリコール等が挙げられる。
本発明のバルーンの形成にポリアミド系エラストマーの1種又は2種以上を用いることができる。
シリコーン系エラストマーとしては、オルガノポリシロキサン構造を有するエラストマーである。オルガノポリシロキサンに架橋構造を導入したものであり、例えば、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、及びポリジフェニルシロキサン系のエラストマーが知られている。シリコーン系エラストマーの市販品の具体例としては、KEシリーズ(信越化学工業社製)、SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(いずれも東レダウコーニングシリコーン社製)などが挙げられる。
本発明のバルーンの形成にシリコーン系エラストマーの1種又は2種以上を用いることができる。
フッ素系エラストマーは、ハードセグメントがフッ素樹脂で形成されたエラストマーである。フッ素系エラストマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフロライド、ポリビニルフロライド、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。
本発明のバルーンの形成にフッ素系エラストマーの1種又は2種以上を用いることができる。
例えば、所望のサイズと形状を有する金型を準備し、この金型を、バルーン形成に用いるポリマーの分散液又は溶液に浸漬し、金型表面にポリマーを付着させる。次いで付着したポリマーを乾燥させ、ビード部の幅、及びビード部により囲まれた孔の内径が目的の大きさとなるように、金型に付着したポリマーを端から巻き上げる。その後、ポリマーを金型から外し、必要により水等で洗浄し、乾燥させ、あるいは架橋反応を行って、目的のバルーンを得ることができる。バルーンのビード部の幅と、ビード部により囲まれた孔の内径は、マイクロスコープ等により観察し、決定することができる。
なお、バルーンの形成材料として熱可塑性エラストマーを用いる場合には、押出し成形、ブロー成形等により、ビード部の幅、及びビード部により囲まれた孔の内径を目的の大きさとしたバルーンを得ることもできる。
本発明の超音波内視鏡は、本発明のバルーンを備えた超音波内視鏡である。本発明の超音波内視鏡を構成するバルーンの構成と、バルーン以外の構成(すなわち超音波内視鏡本体の構成)は、上述した通りである。
本発明の超音波内視鏡は、バルーンが装着された状態でもよく、また、バルーン装着前の超音波内視鏡と、バルーンとがより分けられていてもよい。すなわち、バルーン装着前の超音波内視鏡と未使用のバルーンとがより分けられた形態(超音波内視鏡とバルーンのセット)も、本発明の超音波内視鏡に包含される。
超音波内視鏡の挿入部(先端部)へのバルーンの装着方法は特に制限されない。例えば、筒状の治具の中心軸とバルーンの孔の中心軸をおよそ一致させて、治具の孔内にバルーンを入れる。バルーンのビード部の一端を手で広げながら、広げたビード部を治具の外側表面へと折り返して、このビード部を治具の外側表面に設けられた溝に固定し、バルーンの孔の一端が治具の筒の大きさに広げられた状態とする。次いで、この広げられたバルーンの孔内に超音波内視鏡の挿入部(先端部)を挿入し、治具の外側表面の溝に固定されていたビード部を内視鏡挿入部(先端部)のビード部取り付け溝(先端部に設けられた2つのビード部取り付け溝のうち、アングル部側に設けられたビード部取り付け溝)へと移動させる。こうしてビード部の一端を内視鏡挿入部に固定する。その後、治具を取り外し、送水してバルーン内部に水を充填し、もう一方のビード部を手で広げてバルーン内部空間に空気が入らないようにしながら、手で広げたビード部を内視鏡挿入部のもう一方のビード部取り付け溝に固定する。こうして超音波内視鏡の挿入部(先端部)にバルーンを装着することができる。
内視鏡挿入部の超音波送受信部を覆ってバルーンが装着された超音波内視鏡の製造方法であって、下記(a)及び(b)を満たす関係にあるバルーンと超音波内視鏡とを用意し、この超音波内視鏡に上記バルーンを装着することを含む、バルーン付超音波内視鏡の製造方法:
(a)上記バルーンのビード部の外径Wと、上記バルーンを固定するために超音波内視鏡挿入部に設けられた溝の幅Xとの関係が、1.1≦W/X≦2.5(好ましくは1.6≦W/X≦2.4、より好ましくは1.65≦W/X≦2.3);
(b)上記バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yと、上記超音波内視鏡挿入部の上記ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係が、0.30≦Y/Z≦0.55(好ましくは0.37≦Y/Z≦0.55、より好ましくは0.38≦Y/Z≦0.55、さらに好ましくは0.40≦Y/Z≦0.55)。
図3及び4に示す形状のバルーンを作製した。
図3及び4に示すバルーンの形状に対応した形状の金型を、ポリイソプレンラテックス分散液(加硫剤含む)中に浸漬し、金型表面にポリイソプレンラテックスを付着させた。次いで、付着したポリイソプレンラテックスを金型上で乾燥させた。バルーン端をカットして、ビード部の幅、及びビード部により囲まれた孔の内径が表1記載の通りとなるように、金型に付着したポリイソプレンを端から巻き上げてビード部を形成した。バルーン両端の2つのビード部の形状とサイズは同じにした。また、ビード部の断面は図4に示す通り円形とした。その後、ポリマーを金型から外し、水で洗浄し、140℃で加硫させることにより、イソプレンゴムにより形成された表1に示すバルーンを得た。得られたバルーンは、自立させた状態において、バルーンの中心軸方向の長さが25mmであった。
バルーンを形成するエラストマーを表1に示す通りに変更し、表1に示すバルーンを得た。実施例10〜19のバルーンは、自立させた状態において、バルーンの中心軸方向の長さはいずれも25mmとした。
ここで、実施例11及び実施例12については、バルーン形成エラストマーを成形可能な流動性が得られる温度まで昇温し、金型に射出成型してバルーンを得た。
また、実施例18及び実施例19については、バルーン形成エラストマーをブロー成型することによりバルーンを作製した。
また、実施例10、実施例13、実施例14、実施例15、実施例16及び実施例17については、バルーン形成エラストマーが溶解する溶媒に溶解させ、その溶液に金型を浸漬させ引き揚げた後、溶媒を乾燥させることによりバルーンを作製した。
<超音波内視鏡挿入部に装着されたバルーンの強度試験>
バルーンを上記スコープに装着し、バルーン内部空間に管路を通して100mL/minの流速で送水した。この送水の開始からバルーンが破れるまでの時間を測定した。試験に用いたバルーンと同じ形状及びサイズのバルーンを、天然ゴムを用いて調製し、基準品とした。バルーン強度の評価は下記評価基準に基づき行った。なお、バルーンをスコープに装着した段階ではバルーンに破れは生じておらず、下記試験例における送水によりはじめて破れが生じた。また、バルーンの破れは、いずれの場合もビード部では生じておらず、ビード部の近傍で生じていた。
A:基準品に対し、バルーンが破れるまでの時間が1.8倍以上
B:基準品に対し、バルーンが破れるまでの時間が1.6倍以上1.8倍未満
C:基準品に対し、バルーンが破れるまでの時間が1.4倍以上1.6倍未満
D:基準品に対し、バルーンが破れるまでの時間が1.2倍以上1.4倍未満
E:基準品に対し、バルーンが破れるまでの時間が1.0倍以上1.2倍未満
F:基準品に対し、バルーンが破れるまでの時間が1.0倍未満
結果を下表に示す。
IR:イソプレンゴム(商品名:カリフレックスTM IR−401、クレイトン社製)
BR:ブタジエンゴム(商品名:UBEPOL BR150B、宇部興産社製)
SEPS:スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(商品名:セプトン4077、クラレ社製)
SEBS:スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(商品名:セプトン8076、クラレ社製)
CR:クロロプレンゴム(商品名:M−30、デンカ社製)
IIR:ブチルゴム(商品名:Butyl365、日本ブチル社製)
PP−EPM:ポリプロピレンの中にエチレン−プロピレンゴムを分散させたエラストマー(商品名:サーモランZ103N、三菱ケミカル社製)
PP−EPDM:ポリプロピレンの中にエチレン−プロピレン−ジエンゴムを分散させたエラストマー(商品名:サーモランQT70HG、三菱ケミカル社製)
PUR:ポリウレタン系エラストマー(商品名:ミラクトランE580、日本ミラクトン社製)
Si:シリコーン系エラストマー(商品名:KE−103、信越化学工業社製)LSN201(藤倉ゴム工業社製)
F:フッ素系エラストマー(商品名:ダイエルサーモプラスチック T−530、ダイキン工業社製)
また、[内径Y]/[外径Z]が小さすぎるとバルーンは破れやすく(比較例3)、逆に大きすぎると、バルーンが破れる前に内視鏡挿入部から外れてしまい、バルーン強度を評価することができなかった(比較例4)。
これに対し、内視鏡挿入部との関係が本発明の規定を満たすバルーンは、いずれも内視鏡挿入部に十分に固定することができ、またこれらのバルーンは水圧に対して丈夫で破れにくかった(実施例1〜19)。
実施例3と同様にしてバルーンを作製した。このバルーンに、下表に示すコーティング用エラストマーを溶解してなる溶液に浸漬した。次いで乾燥し、バルーンの外表面に、バルーンの形成材料とは異なるエラストマーによるコーティングを施した。
<バルーン同士の接着抑制試験>
実施例3及び20〜22のバルーンについて、バルーン同士の接着性を下記方法により試験し、コーティング層による接着抑制作用を調べた。
<接着性試験方法>
同じバルーン10個をアルミラミジップの袋にランダムに入れ、次いでアルミラミジップの上から3kgの荷重をかけて1晩静置した。その後、アルミラミジップからバルーンを取り出し、バルーン同士の接着の有無を目視で調べた。具体的には、バルーンを一つ持ち上げた場合に、接していたバルーンが引っ付いてこない場合は接着「無」、接していたバルーンも一緒に持ち上げられた場合を接着「有」とした。
結果を下表に示す。なお、表2中の略称は表1と同じ意味である。
3 挿入部
3a 可撓管
3b アングル部
3c 先端部
5 本体操作部
6 ユニバーサルコード
11 超音波送受信部
12a、12b ビード部取り付け溝
X ビード部取り付け溝の幅
13 管路
14 超音波トランデューサ
Z ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径
20 バルーン
20A バルーン内部空間
21a、21b ビード部
W バルーンのビード部の幅
Y バルーンのビード部により囲まれた孔の内径
Claims (14)
- 合成エラストマーにより形成された超音波内視鏡用バルーンであって、
前記バルーンのビード部の幅Wと、前記バルーンを固定するために超音波内視鏡挿入部に設けられたビード部取り付け溝の幅Xとの関係を1.6≦W/X≦2.4とし、かつ、
前記バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yと、前記超音波内視鏡挿入部の前記ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係を0.37≦Y/Z≦0.55として用いる、超音波内視鏡用バルーン。 - 前記幅Wと前記幅Xとの関係を1.7≦W/X≦2.3とし、前記内径Yと前記外径Zとの関係を0.38≦Y/Z≦0.55として用いる、請求項1に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記合成エラストマーが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記合成エラストマーがオレフィン系エラストマーの少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記合成エラストマーがイソプレンゴムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記超音波内視鏡用バルーンが少なくとも外側表面にコーティング層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記コーティング層が、前記超音波内視鏡用バルーンを形成する合成エラストマーとは異なる合成エラストマーにより形成されている、請求項6に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記コーティング層の形成に用いる合成エラストマーが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種である、請求項7に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記コーティング層の形成に用いる合成エラストマーが、ポリウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びフッ素系エラストマーの少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 前記超音波内視鏡用バルーンが筒状であり、中心軸方向の両端にビード部を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の超音波内視鏡用バルーン。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の超音波内視鏡用バルーンを備えた超音波内視鏡。
- 内視鏡挿入部の超音波送受信部を覆ってバルーンが装着された超音波内視鏡の製造方法であって、下記(a)及び(b)を満たす関係にあるバルーンと超音波内視鏡とを用意し、該超音波内視鏡の挿入部に該バルーンを装着することを含む、バルーン付超音波内視鏡の製造方法:
(a)前記バルーンのビード部の外径Wと、前記バルーンを固定するために超音波内視鏡挿入部に設けられたビード部取り付け溝の幅Xとの関係が、1.6≦W/X≦2.4;
(b)前記バルーンのビード部により囲まれた孔の内径Yと、前記超音波内視鏡挿入部の前記ビード部取り付け溝の壁面最上部により囲まれた部分の外径Zとの関係が、0.37≦Y/Z≦0.55。 - 前記(a)において、前記幅Wと前記幅Xとの関係が1.7≦W/X≦2.3であり、前記(b)において、前記内径Yと前記外径Zとの関係が0.38≦Y/Z≦0.55である、請求項12に記載のバルーン付超音波内視鏡の製造方法。
- 前記バルーンが筒状であり、中心軸方向の両端にビード部を有する、請求項12又は13に記載のバルーン付超音波内視鏡の製造方法。
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