(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。便宜上、図1における上下方向を「上下方向」と称する。
図1を参照すると、第1実施形態に係る緩衝器1は、ソレノイド91を有する減衰力調整機構31がシリンダ2内のピストンケース21(ピストン)に内蔵された、いわゆる、ピストン内蔵型の減衰力調整式緩衝器1(以下「緩衝器1」と称する)である。緩衝器1は、シリンダ2の外側に外筒3を設けた複筒構造をなし、シリンダ2と外筒3との間にリザーバ4が形成される。シリンダ2内には、ピストンバルブ5(ピストン)が摺動可能に嵌装される。ピストンバルブ5は、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとに区画する。ピストンバルブ5は、上端がシリンダ上室2Aに開口する伸び側通路19と、下端がシリンダ下室2Bに開口する縮み側通路20と、を有する。
シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを区画するベースバルブ7が設けられる。ベースバルブ7には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを連通させる通路8,9が設けられる。通路8には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への油液(作動流体)の流通のみが許容される逆止弁10が設けられる。通路9には、シリンダ下室2B側の油液の圧力が設定圧力に達することで開弁し、シリンダ下室2B側の圧力(油液)をリザーバ4側へ逃がすディスクバルブ11が設けられる。なお、作動流体として、シリンダ2内には油液が封入され、リザーバ4内には油液およびガスが封入される。また、外筒3の下端にはボトムキャップ12が接合され、ボトムキャップ12には取付部材13が接合される。
ピストンバルブ5は、ピストンケース21を介してピストンロッド6に連結される。ピストンケース21は、ピストンロッド6の下端(一端)に連結される略円筒形のケース本体22と、ケース本体22の下端を閉塞させるケース底部23と、ケース底部23の下端から軸方向(下方向)へ延びてピストンバルブ5が装着される軸部24と、を有する。ケース底部23と軸部24とは一部品であり、ケース本体22とケース底部23とはねじ部18によって一体化される。なお、ピストンロッド6の上端側(他端側)は、シリンダ上室2Aを通過し、さらにシリンダ2および外筒3の上端部に装着されたロッドガイド14およびオイルシール15に挿通されてシリンダ2の外部へ延出される。また、外筒3の上端部はキャップ16によってカバーされ、外筒3の外周にはばね受部材17が取り付けられる。
図2を参照すると、緩衝器1は、ピストンロッド6の軸方向への移動に伴うシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの間の油液の流れを制御して減衰力特性を調節する減衰力調整機構31を備える。減衰力調整機構31は、ピストンバルブ5の下端に設けられるメインバルブ32を有する。メインバルブ32は、ピストンバルブ5が伸び側へ移動したときのシリンダ上室2Aからシリンダ下室2Bへの油液の流れを規制することで減衰力を発生させる減衰弁33と、減衰弁33に対して閉弁方向へ内圧を作用させる背圧室34と、シリンダ上室2Aから背圧室34へ油液を導入させる背圧室導入通路35と、を有する。
減衰弁33は、ディスクバルブによって構成され、軸孔にピストンケース21の軸部24が挿通される。減衰弁33の内側周縁部は、ピストンバルブ5の内側周縁部とパイロットケース36の軸部36Aとによって挟持される。減衰弁33の下面には、環状のパッキン37(シート部)が設けられる。パッキン37は、パイロットケース36の環状壁部38の内周面に摺動可能に当接される。これにより、減衰弁33とパイロットケース36との間に環状の背圧室34が形成される。減衰弁33は、ピストンバルブ5の伸び側通路19の下端開口を被うようにして、外側周縁部がピストンバルブ5の下端に着座される。そして、ピストンバルブ5の上端に形成されて径方向へ延びる通路27(切欠き)、伸び側通路19、および減衰弁33の開弁により形成される流路によって、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通させる第1通路が構成される。
パイロットケース36は、パイロットケース36を上下方向へ貫通する複数個の通路41を有する。パイロットケース36の下端には、ディスクバルブ39が設けられる。ディスクバルブ39は、軸孔にピストンケース21の軸部24が挿通され、パイロットケース36の通路41の下端開口を被うようにして、外側周縁部がパイロットケース36の下端に形成された環状のシート部40に着座される。そして、背圧室34の圧力がディスクバルブ39のセット荷重に達すると、ディスクバルブ39が開弁される。ディスクバルブ39の開弁により、背圧室34の圧力(油液)がシリンダ下室2Bへ逃がされる。なお、ディスクバルブ39の内側周縁部は、パイロットケース36の軸部36Aとワッシャ42との間で挟持される。
ピストンバルブ5の上端には、ディスクバルブ43が設けられる。ディスクバルブ43は、軸孔にピストンケース21の軸部24が挿通され、内側周縁部がピストンバルブ5の内側周縁部と弁座部材25の内側周縁部とによって挟持される。ディスクバルブ43は、ピストンバルブ5の上端に形成された環状凹部44を被うようにして、外側周縁部がピストンケース5の上端に形成された環状のシート部45に着座される。弁座部材25は、軸孔にピストンケース21の軸部24が挿通され、ピストンケース21のケース底部23の下端面に形成された環状凹部を被うようにして、上端面がケース底部23の下端面に当接される。これにより、ピストンケース21のケース底部23と弁座部材25との間には、環状通路50が形成される。なお、ピストンバルブ5の環状凹部44には、縮み側通路20の上端が開口される。
弁座部材25の下端には、ディスクバルブ47が設けられる。ディスクバルブ47は、軸孔にピストンケース21の軸部24が挿通され、内側周縁部がディスク48と弁座部材25の内側周縁部との間で挟持される。ディスクバルブ47は、弁座部材25の下端の外側周縁部に形成された環状のシート部49Aとシート部49Aの内側に形成された環状のシート部49Bとに着座される。弁座部材25とピストンケース21のケース底部23との間に形成される環状通路50は、弁座部材25を軸方向(上下方向)へ貫通する通路25A、ピストンケース21の軸部24の外周面に形成されて軸方向へ延びる通路28、およびパイロットケース36の軸部36Aに形成された通路46を介して、背圧室34に連通される。なお、軸孔に軸部24が挿通される各部品は、軸部24の下端部に装着されたナット26を締め付けることで生じる軸力により、ピストンケース21のケース底部23に固定される。
ピストンケース21のケース底部23には、ケース底部23を軸線方向(上下方向)へ貫通する複数本(図2に「2本」のみ表示)の通路51が設けられる。通路51は、下端が環状通路50に開口し、上端がケース底部23の環状の側壁の内側に形成された室52に開口される。ピストンケース21の底面(室52の底面)には弁座55が形成され、弁座55には第1弁体53の下端に形成された環状のシート部54が着座される。そして、弁座55に第1弁体53のシート部54が着座されることにより、第1弁体53とケース底部23との間に第1弁室56が形成される。第1弁室56は、軸部24に形成された通路57(軸孔)を介してシリンダ下室2Bに連通される。
そして、通路57、第1弁室56、第1弁体53の開弁により形成される流路、室52、通路51、環状通路50、通路25A、およびディスクバルブ47の開弁により形成される流路によって、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通させる第2通路が構成される。換言すると、第2通路は、ディスクバルブ47の開弁/閉弁によって連通/遮断される。第2通路は、ピストンバルブ5(ピストンロッド6)が縮み側へ移動され、さらに第1弁室56の圧力がセット荷重に達して第1弁体53が開弁されることにより、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの間を連通させる。また、室52は、通路51、環状通路50、通路67、および軸部24に形成された通路28を介して背圧室34に連通される。
第1弁体53は、大径部58と小径部59とを有する段付円柱形に形成される。第1弁体53の小径部59は、後述するコア93の磁性部96の下部内周面に摺動可能に嵌装される。第1弁体53には、上端が開口するボア63が形成される。ボア63には、ニードル型の第2弁体65が収容される。第2弁体65は、ボア63の底面に開口する第2弁室69の開口周縁部に形成された弁座64に着座される。第1弁体53および第2弁体65のセット荷重は、ソレノイド91に対する制御電流を調節することによって可変される。そして、第1弁体53、第2弁体65、ならびにソレノイド91の推力により第1弁体53および第2弁体65のセット荷重を可変させるアクチュエータによって、サブバルブ68が構成される。
第1弁体53には、ボア63の底面中央に開口する第2弁室69、大径部58を径方向(図2における左右方向)へ延びて第2弁室69を室52に連通させる通路70、および第2弁体65の開弁時に第2弁室69をシリンダ下室2Bに連通させる通路71が形成される。第2弁体65は、上端側の外側周縁部にフランジ部72が形成される。フランジ部72の外周面は、ボア63の内周面に摺動可能に嵌合される。フランジ部72とボア63の底面との間には、第2弁体65を第1弁体53に対して上方向へ付勢させる圧縮コイルばね73が介装される。第2弁体65には、第2弁体65の上端中央に開口する凹部74が形成される。凹部74の底部中央には、作動ピン75の軸部77の半球形の下端を受ける内円錐面76が形成される。
作動ピン75は、下端が第2弁体65の内円錐面76で受けられる軸部77と、下半分が半球形に形成される基部79と、基部79の上端中央に形成される凸部78と、を有する。作動ピン75の基部79の半球面は、後述するソレノイド91の可動子80に形成された内円錐面81によって受けられる。内円錐面81は、可動子80の上端に開口する大径孔部82の下端と可動子80の下端に開口する小径孔部83の上端とに接続される。可動子80の小径孔部83には、作動ピン75の軸部77が挿通される。作動ピン75は、基部79の外側周縁部とばね受部材84との間に介装された圧縮コイルばね85の付勢力によって、基部79の半球面が可動子80の内円錐面81に着座される。
第1弁体53には、圧縮コイルばね85のばね力が作動ピン75および第2弁体65を介して伝達される。これにより、第1弁体53は、ソレノイド91のコア93に対して下方向へ付勢される。ばね受部材84は、段付軸形状をなし、大径軸部153、小径軸部154、および大径軸部153と小径軸部154との間に形成されて圧縮コイルばね85の上端を受けるフランジ部155を有する。ばね受部材84は、大径軸部153が圧縮コイルばね85の上端部内側に挿入され、小径軸部154がコア93の磁性部95に装着されたリング部材30に嵌合される。
第2弁体65は、作動ピン75の軸部77に外装された圧縮コイルばね86のばね力により可動子80に対して下方向へ付勢される。圧縮コイルばね86は、第2弁体65の凹部74の底面と可動子80の下端面(小径孔部83の下端側開口周縁部)との間に介装される。なお、コア93(磁性部96)の内側であって第2弁体65と可動子80との間の空間88は、第2弁体65のフランジ部72に形成された通路89を介して第1弁体53のボア63に連通される。
なお、ピストンロッド6の下端とピストンケース21のケース本体22の軸部29とは、ねじ部66によって連結される。また、可動子80の大径孔部82は、ばね受部材84の軸孔156、リング部材30の軸孔の内側の空間、磁性部95を軸方向に貫通する通路158、磁性部95のばね受部とコイルキャップ98との間の空間157、コイルキャップ98に形成された通路147、コイルキャップ98のカバー99に形成された通路148、カバー99とケース本体22の蓋部150との間に形成される環状通路149、およびケース本体22の蓋部150に形成された通路151、を介してシリンダ上室2Aに連通される。これにより、組立時に残留したピストンケース21内のエアを排出させるエア抜き通路が形成される。
ソレノイド91は、通電により磁力を発生するコイル92(電気手段)と、コイル92の内周側に設けられるコア93と、コア93の内周側を軸方向(図2における「上下方向」)へ移動可能な可動子80と、を備える。コア93には、軸方向に沿って上から順に、磁性部95、非磁性部97、磁性部96が配置される。換言すると、コア93は、上下に配置された磁性部95,96を、非磁性部97を介して結合させることで構成される。磁性部95と非磁性部97とは、磁性部95の下端部を非磁性部97に圧入させ、磁性部95と非磁性部97との間を周方向に沿ってろう付けすることで接合される。他方、磁性部96と非磁性部97とは、非磁性部97の下端部を磁性部96に圧入させ、非磁性部97と磁性部96との間を周方向に沿ってろう付けすることで接合される。
可動子80は、コア93の非磁性部97の内周面との間に一定の摺動クリアランスが形成される大径部61と、コア93の磁性部96の内周面との間に摺動クリアランスよりも大きい一定のクリアランスが形成される小径部62と、を有する。これにより、可動子80の小径部62と、コア93の磁性部96の内周面との、非接触状態が保たれる。そして、ソレノイド91におけるコア93と可動子80との間の磁束の受け渡しは、磁性部96から可動子80の小径部62へ、および可動子80のテーパ部60から磁性部95へ行われる。なお、コイル92に対する通電方向が逆の場合、コア93と可動子80との間の磁束の受け渡し方向も逆になる。
次に、第1実施形態に係る緩衝器1のハーネスバー101を説明する。
図3に示されるように、第1実施形態では、ソレノイド91のコイル92(電気手段)の端部に設けられた端子102A,102Bと、車体側から延びる外部ハーネス103の端子104A,104Bとの間が、ハーネスバー101を介して導体結合される。外部ハーネス103の端子104A,104Bは、ピストンロッド6の中空部106(図6参照)の他端近傍に嵌着されるコネクタ105によって保持される。図6に示されるように、ピストンロッド6の中空部106の他端側(コイル92側とは反対側)は、ピストンロッド6の中空部106の開口部に装着されたグロメット107(図4参照)によってシールされる。なお、コイル92の端子102A,102Bおよび外部ハーネス103の端子104A,104Bは、オス型ターミナル(接点)である。
図3に示されるように、ハーネスバー101は、ケーブル109、ケーブル109の一端に取り付けられたコネクタ110、およびケーブル109の他端に取り付けられたコネクタ111を有する。ケーブル109は、導体109A,109Bを電気絶縁樹脂によって被覆した2本のリード線からなる、いわゆる、2芯ケーブルである。導体109A,109Bの一端には、コネクタ110に固定される端子112A,112Bが圧着接合される。他方、導体109A,109Bの他端には、コネクタ111に固定される端子113A,113Bが圧着接合される。なお、コネクタ110側の端子112A,112Bおよびコネクタ111側の端子113A,113Bは、メス型ターミナル(接点)である。
ハーネスバー101は、ピストンロッド6の中空部106(軸孔)に挿通されるストレート状のパイプ115を有する。パイプ115は、合成樹脂を材料とし、リード線よりも高い剛性、具体的には、ピストンロッド6の中空部106に挿通させるときに撓むことがない程度の剛性を持たせている。図4に示されるように、パイプ115には、パイプ115の全長にわたって軸方向へ延びる割部116が形成される。そして、パイプ115の割部116を僅かに拡げるようにすることで、パイプ115の内部に半径方向(軸方向に対して垂直な方向)からケーブル109を挿入させることができる。なお、パイプ115の割部116の軸方向中央には、ケーブル109の挿入を容易にするための凹部117および凸部118が形成される。
図5に示されるように、パイプ115の一端(図5における下端)には、一対の連結部119,120が対向するようにして設けられる。連結部119,120は、パイプ115の一端面121から軸方向へ延びる。他方、コネクタ110の外周面110Aの他端側(コイル92側とは反対側)には、パイプ115の連結部119,120を受け入れる平面状の切欠部122,123が形成される。そして、パイプ115の連結部119,120をコネクタ110の切欠部122,123に差し込み、パイプ115の一端面121にコネクタ110の他端面124を突き当て、さらに連結部119,129に形成された係止孔119A,120Aに、切欠部122,123に形成された凸部122A,123Aを嵌合させる。これにより、コネクタ110がパイプ115の一端に連結される(図4参照)。
図4、図5を参照すると、ハーネスバー101の一端のコネクタ110は、アダプタ125を介してコイル92(電気手段)に接続される。アダプタ125は、他端面127Aにコネクタ110の一端面128が突き当てられる円筒部127を有する。アダプタ125の円筒部127の一端側(図5における下側、コイル92側)には、コイル92の略直方体の端子台126を跨ぐようにして(図2参照)端子台126に嵌合される嵌合部129が形成される。アダプタ125の円筒部127の他端側(図5における上側)には、コネクタ110をアダプタ125に対して、延いてはコネクタ110をコイル92に対してハーネスバー101の軸線(以下「軸線」と称する)の回りに位置決めさせる回り止め部130が形成される。
回り止め部130は、外側面(図5における右側面)が円筒部127の外周面と面一で曲面に形成され、内側面(図5における左側面)が軸線に平行な平面に形成される。そして、回り止め部130の内側面を、コネクタ110の外周面110Aの一端側に形成された平面状の切欠部131に当接させることにより、コネクタ110をアダプタ125に対して、延いてはコネクタ110をコイル92に対して軸線回りに位置決めさせることができる。また、コネクタ110の側壁に形成された開口部132にストッパ133を装着することにより、コネクタ110に端子112A,112B(図3参照)が固定される。
パイプ115の他端(図5における上端)には、一対の連結部135,136が対向するように設けられる。連結部135,136は、パイプ115の他端面137から軸方向へ延びる。他方、コネクタ111の外周面111Aの一端側(図5における下側、コイル92側)には、パイプ115の連結部135,136を受け入れる平面状の切欠部138,139が形成される。そして、パイプ115の連結部135,136をコネクタ111の切欠部138,139に差し込み、パイプ115の他端面137にコネクタ111の一端面140を突き当て、さらに連結部135,136に形成された係止孔135A,136Aに、切欠部138,139に形成された凸部138A,139Aを嵌合させることにより、コネクタ111がパイプ115の他端に連結される。
ハーネスバー101の他端のコネクタ111は、外部ハーネス103のコネクタ105に接続される。コネクタ105の一端側には、外部ハーネス103のコネクタ105をハーネスバー101のコネクタ111に対して軸線回りに位置決めさせる回り止め部141が形成される。回り止め部141は、内側面(図5における左側面)が軸線に平行な平面に形成される。そして、回り止め部141の内側面(図5における右側面)を、コネクタ111の外周面111Aの他端側に形成された平面上の切欠部142に当接させることにより、コネクタ105をコネクタ111に対して、延いてはコネクタ105をハーネスバー101に対して軸線回りに位置決めさせることができる。
なお、コネクタ111の側壁に形成された開口部143にストッパ144(図4参照)を装着することにより、コネクタ111に端子113A,114B(図3参照)が固定される。また、コネクタ105の側壁に形成された開口部145にストッパ146(図4参照)を装着することにより、コネクタ105に端子104A,104B(図3参照)が固定される。
次に、第1実施形態の作動を説明する。
ここで、緩衝器1は、車両のサスペンション装置のばね上、ばね下間に取り付けられる。車両に振動が発生すると、緩衝器1は、ピストンロッド6のストロークに対して、油液(作動流体)の流れを制御することで減衰力を発生させる。このとき、減衰力調整機構31は、ピストンロッド6の伸び行程時(以下「伸び行程時」と称する)には、メインバルブ32の背圧(背圧室34の圧力)を可変させて減衰弁33の開弁圧を変化させることで減衰力を調節する。他方、ピストンロッド6の縮み行程時(以下「縮み行程時」と称する)には、ソレノイド91の推力を制御して第1弁体53のセット荷重(開弁圧)を変化させることで減衰力を調節する。
そして、伸び行程時には、シリンダ2内のピストンバルブ5(ピストン)の移動によってシリンダ上室2A側の油液(作動流体)が加圧されると、第2弁体65の閉弁時、すなわち、第2弁体65が第1弁体53の弁座64に着座されているとき、背圧室34の上流側は、通路46、通路28、通路67、およびディスクバルブ47に形成された背圧室導入通路35を介してシリンダ上室2Aに連通される。これにより、加圧されたシリンダ上室2A側の油液は、背圧室導入通路35、通路67、通路28、および通路46を介して背圧室34に導入される。
他方、背圧室34の下流側は、通路46、通路28、通路67、環状通路50、通路51、室52、および通路70を介して第2弁室69に連通される。これにより、ソレノイド91の推力(制御電流)を制御して背圧室34の圧力、すなわち、メインバルブ32の背圧を可変させることにより、減衰弁33のセット荷重(開弁圧)が調節される。ここで、第2弁室69の圧力が第2弁体65のセット荷重に達することで第2弁体65が開弁されると、背圧室34に連通する第2弁室69は、第1弁体53の通路71、第1弁室56、および通路57を介してシリンダ下室2Bに連通される。
なお、メインバルブ32の開弁前には、伸び側通路19を介して減衰弁33に形成されたオリフィス33Aを通過する油液によるオリフィス特性の減衰力が得られる。一方、メインバルブ32の開弁後には、前述した第1通路を流通する油液による、減衰弁33のバルブ特性の減衰力が得られる。ピストンロッド6がシリンダ2内から退出した分の油液は、リザーバ4から、ベースバルブ7の逆止弁10を開弁させることでシリンダ下室2Bへ流通する。また、伸び行程時における第1弁体53は、第1弁室56が通路57を介してシリンダ下室2Bに連通されることから、開弁されない。
また、縮み行程時には、シリンダ2内のピストンバルブ5(ピストン)の移動によってシリンダ下室2B側の油液(作動流体)が加圧されることにより、シリンダ下室2B側の油液は、縮み側通路20を通過してディスクバルブ43を開弁させることで第2通路を連通させ、シリンダ上室2Aへ流通する。このとき、ディスクバルブ43によるバルブ特性の減衰力が得られる。なお、ピストンロッド6がシリンダ2内に進入した分の油液は、シリンダ下室2B内の圧力がベースバルブ7のディスクバルブ11の開弁圧力に達すると、ディスクバルブ11が開弁してリザーバ4へ流通する。
そして、縮み行程時には、ソレノイド91の推力(制御電流)を制御して第1弁体53のセット荷重(開弁圧)を可変させることにより、ソレノイド91の推力に抗して第1弁体53が開弁されると、シリンダ下室2B側の油液は、通路57、室52、通路51、および環状通路50を流れ、さらに背圧室導入通路35が形成されたディスクバルブ47を開弁させてシリンダ上室2Aへ流通する。このとき、ディスクバルブ47によるバルブ特性の減衰力が得られる。なお、縮み行程時には、第1弁体53と第2弁体65とが一体で移動する。
次に、コイル92(電気手段)の端子台126(端部)に設けられた端子102A,102B(接点)と、外部ハーネス103のコネクタ105の端子104A,104B(接点)との間を、導体109A,109Bを内蔵した棒状のハーネスバー101を介して導体結合させる工程を説明する。なお、ケーブル109は、一端(コイル92側)にコネクタ110が装着され、他端(外部ハーネス103側)にコネクタ111が装着されている。コネクタ110には端子112A,112Bが固定され、コネクタ111には端子113A,113Bが固定される。便宜上、コネクタ110,111が装着されたケーブル109をハーネス108と称する。
ここで、ハーネスバー101の組立工程を説明する。なお、ハーネスバー101の組立工程は、緩衝器1の製造ラインに含まれない予備工程である。すなわち、緩衝器1の製造ラインには、組み立てられた一部品としてハーネスバー101が供給される。ハーネスバー101のを組み立てるには、まず、パイプ115の連結部119,120の係止孔119A,120Aに、ハーネス108のコネクタ110の凸部122A,123Aを嵌合させることにより、ハーネス108のコネクタ110をパイプ115の一端に連結させる。このとき、パイプ115の連結部119,120を撓ませて押し拡げることにより、コネクタ110をパイプ115に対して横方向(軸方向に対する垂直方向)へ移動させることで、コネクタ110をパイプ115に連結させることができる。
同様に、パイプ115の連結部135,136の係止孔135A,136Aに、ハーネス108のコネクタ111の凸部138A,139Aを嵌合させることにより、ハーネス108のコネクタ111をパイプ115の他端に連結させる。このとき、パイプ115の連結部135,136を撓ませて押し拡げることにより、コネクタ111をパイプ115に対して横方向へ移動させることで、コネクタ111をパイプ115に連結させることができる。
次に、コネクタ110,111間のケーブル109を、パイプ115の割部116を押し拡げるようにしてパイプ115の内部へ挿入する。これにより、ハーネスバー101(図4参照)が完成する。なお、パイプ115の両端にコネクタ110,111を連結させる工程と、ケーブル109をパイプ115の内部に挿入させる工程とは、順序を入れ替えることができる。
次に、図6の(A)に示されるように、ピストンロッド6が連結されたピストンケース21のケース本体22に、ソレノイド91を組み付ける。この状態で、コイル92の端子102A,102Bは、ケース本体22の軸部29の中空部(軸孔)に位置される。次に、図6の(B)に示されるように、予め組み立てられた一部品としてのハーネスバー101を、ピストンロッド6の他端側開口から一端側へ向かって、ピストンロッド6の中空部106内へ挿通させるとともに、ハーネスバー101のコネクタ110の端子112A,112B(コネクタの接点)を、コイル92の端子102A,102B(電気手段の接点)に導体接続させる。
なお、予め、ハーネスバー101のコネクタ110、あるいはコイル92の端子台126に、コイル92に対応する型のアダプタ125を装着させておく。例えば、コイル92の端子台126にアダプタ125が予め装着されていた場合、コネクタ110とコイル92との導体接続時に、アダプタ125の回り止め部130をコネクタ110の切欠部131に係合させることにより、コネクタ110をアダプタ125に対して、延いてはハーネスバー101をコイル92に対して軸線回りに位置決めさせることができ、当該導体接続後には、コネクタ110をアダプタ125に対して、延いてはハーネスバー101をコイル92に対して回り止めすることができる。
次に、図6の(C)に示されるように、外部ハーネス103のコネクタ105をピストンロッド6の他端側開口から中空部106内に挿入させ、外部ハーネス103のコネクタ105を、ピストンロッド6の中空部106の他端側に位置するハーネスバー101のコネクタ111に接続させる。これにより、外部ハーネス103の端子104A,104B(接点)が、ハーネスバー101を介して、コイル92の端子102A,102B(電気手段の接点)に導体接続される。
そして、ハーネスバー101のコネクタ111と、外部ハーネス103のコネクタ105との接続時に、コネクタ105の回り止め部141をコネクタ111の切欠部142に係合させることにより、コネクタ105をコネクタ111に対して、延いてはコネクタ105をハーネスバー101に対して軸線回りに位置決めさせることができ、コネクタ105とコネクタ111との接続後には、ピストンロッド6の近傍(他端開口部)に位置するコネクタ105をコネクタ111に対して回り止めすることができる。なお、外部ハーネス103に装着されたグロメット107をピストンロッド6の中空部106の他端開口部に嵌合させることにより、ピストンロッド6の中空部106を外部に対してシールする。
以下に、第1実施形態の作用効果を示す。
第1実施形態の緩衝器(1)は、作動流体が封入されたシリンダ(2)と、該シリンダ(2)内に摺動可能に嵌装されたピストン(5)と、一端がピストン(5)に連結され、他端がシリンダ(2)の外部に延出された中空のピストンロッド(6)と、ピストン(5)の移動に伴う作動流体の流れを制御することで減衰力特性を調整する減衰力調整機構(31)と、該減衰力調整機構(31)の減衰力を調整するためにピストン(5)側に設けられた電気手段(92)と、ピストンロッド(6)の中空部(106)に挿通されて一端が電気手段(92)に接続される導体(109A,109B)と、を備えた緩衝器(1)であって、ピストンロッド(6)の他端部には、導体を固定させるコネクタ(105)が設けられ、電気手段(92)の端部に設けられた接点(102A,102B)とコネクタ(105)の接点(104A,104B)との間を、リード線よりも高い剛性を有し、導体を内蔵した棒状のハーネスバー(101)を介して導体結合させた。
よって、第1実施形態では、製造工程で、高い剛性を有するハーネスバーをピストンロッドの中空部に挿通させることにより、ピストンロッドの中空部に導体を簡単に挿通させることができるので、緩衝器の組立工程を大幅に合理化することが可能である。また、ハーネスバーが棒状であるので、リード線をピストンロッドの中空部に挿通させる従来工程と比較して、部品の管理および取り扱いが容易であり、組立工程の信頼性を向上させることができる。
さらに、ハーネスバーに剛性を持たせたので、ピストンロッドの中空部にリード線を挿通させる従来の緩衝器と比較して、ピストンロッドの中空部の内径を小さく設計することができる。これにより、ピストンロッドの外径を小さくすることが可能であり、緩衝器を小型化(小径化)することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図7、図8を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一または相当の構成要素については、同一の名称および符号を付与するとともに詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、ハーネスバー101の一端のコネクタ110とコイル92(電気手段)の端子102A,102B(接点)とを接続し、ハーネスバー101の他端のコネクタ111と外部ハーネス103のコネクタ105とを接続することにより、コイル92(電気手段)の端子102A,102B(接点)とコネクタ105に固定された外部ハーネス103の端子104A,104B(接点)とを導体接続させた。
これに対し、第2実施形態では、ハーネスバー161の一端の端子112A,112B(接点)とコイル92(電気手段)の端子102A,102B(接点)との接触圧力(以下「ハーネスバー161の一端側の接触圧力」と称する)、およびハーネスバー161の他端の端子113A,113B(接点)とコネクタ105に固定された端子104A,104B(接点)との接触圧力(以下「ハーネスバー161の他端側の接触圧力」と称する)を、導体からなる圧縮コイルばね162(以下「ばね導体162」と称する)のばね力によって軸方向に作用させたものである。
なお、第2実施形態において、ハーネスバー161の一端側の接触圧力を作用させる機構と、ハーネスバー161の他端側の接触圧力を作用させる機構とは基本構造が同一である。ここでは、ハーネスバー161の他端側の接触圧力を作用させる機構のみを説明し、ハーネスバー161の一端側の接触圧力を作用させる機構を省略することで、明細書を簡潔に記載する。
図7に示されるように、ハーネスバー161は、平行に配置された2本の導体109A,109Bを合成樹脂からなる絶縁部163によって被うことにより形成される。換言すると、絶縁部163は、導体109A,109Bを一体成形することで形成される。絶縁部163の他端面163Aには、凹部164が形成される。導体109A,109Bの端部、換言すると、導体109A,109Bにおける凹部164の底面164Aから突出する部分には、ばね導体162を圧入によって固定させるばね受部165が形成される。図7の(B)に示されるように、ばね導体162は、ばね受部165に圧入された一端側が絶縁部163の凹部164に収容され、他端側が絶縁部163の他端面163Aから突出するようにして軸方向へ延びる。
他方、図8に示されるように、ピストンロッド6の中空部106(軸孔)の他端には、コネクタ105を嵌合させる大径孔部166が形成される。コネクタ105は、大径孔部166の環状溝に装着されたストッパ167によってピストンロッド6に対する抜けが防止されるとともに、大径孔部166の環状溝に装着されたOリング168によって大径孔部166の内周面に対してシールされる。コネクタ105の一端面169には、コネクタ105に固定された端子104A,104Bの先端部を平坦に成形した接点170A,170Bを露出させる。同様に、コイル92(電気手段)の端子102A,102Bは、先端部(接点)が平坦に成形されている。
なお、第2実施形態において、コネクタ105の接点170A,170Bは、車両側コネクタ(図示省略)の接点に直接結合される。また、図8の(B)に示されるように、コネクタ105の回り止め部141を、ハーネスバー161の絶縁部163に形成された切欠部171に係合させることにより、コネクタ105をハーネスバー161に対して軸線回りに位置決めさせることができる。
第2実施形態では、ピストンロッド6の中空部106にハーネスバー161を挿通させることにより、ハーネスバー161の一端の端子112A,112B(接点)と、コイル92(電気手段)の端子102A,102B(接点)とが接続され、端子112A,112Bと端子102A,102Bとの間には、ばね導体162のばね力による接触圧力が作用する。なお、ハーネスバー161とコイル92(アダプタ125)との回転方向の位置合わせ機構は、第1実施形態と同一である。
ピストンロッド6の中空部106にハーネスバー161を挿通させた後、ピストンロッド6の中空部106の他端の大径孔部166にコネクタ105を嵌着させる。これにより、ハーネスバー161の他端の端子113A,113B(接点)と、コネクタ105の端子104A,104B(接点)とが接続され、端子113A,113Bと端子104A,104Bとの間には、ばね導体162のばね力による接触圧力が作用する。なお、ハーネスバー161とコネクタ105との回転方向の位置合わせは、コネクタ105の回り止め部141をハーネスバー161の絶縁部163の切欠部171に係合させることにより行われる。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。また、第2実施形態では、第1実施形態のようなケーブル109をパイプ115に挿入させる工程がないので、予備工程を合理化することができる。さらに、第2実施形態では、第1実施形態のハーネスバー101に使用されていたコネクタ110,111を省くことができる。換言すると、オス型端子とメス型端子とを結合させる必要がなく、ばね導体162のばね力によってハーネスバー162の両端の接触圧力を軸方向に作用させることができるので、組立工程をより合理化させることが可能である。
なお、第2実施形態では、ばね導体162に圧縮コイルばねを使用したが、例えば、圧縮コイルばねの代わりに板ばねを使用して、ハーネスバー162の両端の接触圧力を軸直角方向に作用させてもよい。この場合、受け側の接点、すなわち、コイル92(電気手段)の端子102A,102Bおよびコネクタ105の端子104A,104Bの先端部の形状を、ばね導体162を軸直角方向へ弾性変形させるように形成する。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図9を参照して説明する。なお、第1、第2実施形態と同一または相当の構成要素については、同一の名称および符号を付与するとともに詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、ハーネスバー161の絶縁部163の両端に形成した切欠部171(図7の(A)および図8の(B)参照)を利用して、ハーネスバー161をコイル92(電気手段)およびコネクタ105に対して回転方向に位置決めさせた。
これに対し、第3実施形態では、導体109Aを被う絶縁部175と導体109Bを被う絶縁部176との間に形成した軸方向の段差174を利用して、ハーネスバー173をコイル92(電気手段)およびコネクタ105に対して回転方向に位置決めさせるように構成した。そして、コイル92(アダプタ125)およびコネクタ105には、当該ハーネスバー173の段差174に対応させた段差(図示省略)が形成される。
第3実施形態では、ハーネスバー173の両端の隣接する導体109A,199Bに固定されたばね導体162(接点)を軸方向にずらすことができるので、第2実施形態と比較して隣接する接点間が接触し難くなり、当該接点間の絶縁が確保される。
(第4実施形態)
次に、第3実施形態を図10を参照して説明する。なお、第1ないし第3実施形態と同一または相当の構成要素については、同一の名称および符号を付与するとともに詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、ハーネスバー161の絶縁部163の両端に形成した切欠部171を利用して、ハーネスバー161をコイル92(電気手段)およびコネクタ105に対して回転方向に位置決めさせ、第3実施形態では、導体109Aを被う絶縁部175と導体109Bを被う絶縁部176との間に形成した軸方向の段差174を利用して、ハーネスバー173をコイル92(電気手段)およびコネクタ105に対して回転方向に位置決めさせるように構成した。
これに対し、第4実施形態では、ハーネスバー177とコイル92(電気手段)およびコネクタ105との間の回転方向の位置決めを不要とした。ハーネスバー177は、導体109Aの両端部、すなわち、ばね受部165およびその近傍が、絶縁部178(ハーネスバー177)の軸線近傍に位置している。絶縁部178の両端面179,180の中央には凹部181A,181Bが形成され、凹部181A,181Bの底面から、導体109Aの両端の各ばね受部165に固定されたばね導体162(一方の接点)の先端部を突出させる。なお、導体109Aの両端部間は、絶縁部178の軸線に対して半径方向(図10における左方向)へずれされて配置されている。
他方、ハーネスバー177は、導体109Bの両端部、すなわち、ばね受部165およびその近傍が、絶縁部178(ハーネスバー177)の軸線に対して半径方向(図10における右方向)へ一定距離だけ離間されて配置されている。導体109Bの両端のばね受部165に固定された各ばね導体162(他方の接点)は、先端部が絶縁部178の各端面179,180から突出されている。なお、導体109Bの両端部間は、絶縁部178の軸線寄りにずらされて配置されている。
そして、ハーネスバー177の導体109Bの接点に対応するコイル92(電気手段)およびコネクタ105の他方の接点を、導体109Aの接点に対応するコイル92およびコネクタ105の一方の接点を中心とするリング状に形成する。これにより、第4実施形態では、ハーネスバー177とコイル92およびコネクタ105との軸線回りの位置合わせが不要であり、組立作業をより合理化させることができる。