以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置、スキャン計画設定支援装置について説明する。
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線管装置と、X線管装置に印加するための管電圧を発生する高電圧発生部と、X線検出器と、被検体を載置する寝台装置と、X線管装置とX線検出器とを被検体の周囲を回転自在に支持する回転機構と、X線検出器の出力から発生される投影データを記憶する記憶部とを有する。この投影データに基づいてボリュームデータを再構成処理部で再構成する。このボリュームデータから断面画像を断面画像発生処理部で発生する。投影データからは投影像発生処理部で投影像(投影画像ともいう)を発生する。
断面画像と投影像とを含むスキャン計画画面をスキャン計画処理部で構築する。投影像上にはスキャン範囲を表す補助枠線が重ねられる。スキャン計画画面は表示部に表示される。操作者は操作部を操作して投影像上で補助枠線を移動/拡大縮小する。制御部は、高電圧発生部、寝台装置、回転機構を制御して、スキャン計画画面上で設定されたスキャン計画に従って本スキャンが実行される。断面画像は例えばアキシャル画像、コロナル画像、サジタル画像及びオブリーク画像等である。例えば、補助枠線の移動/拡大縮小の操作に追従してスキャン範囲のスキャン開始位置とスキャン終了位置とついてそれぞれアキシャル画像が発生される。
被検体をボリュームスキャンにより収集したボリュームデータをスキャン計画に用いることにより、任意の投影像、任意位置の例えばアキシャル画像を視認することができ、スキャン範囲等の設定精度が向上し、設定操作の利便性も向上する。
本実施形態では、本スキャン前において、ヘリカルスキャンやボリュームスキャン等を行って得られるボリュームデータを用いてスキャン計画を実施することにより、設定精度、設定操作の利便性を向上することが可能になる。この際、kVスイッチングによるDual Energyなどを用いた複数エネルギーにてボリュームデータを収集してもよい。これにより、得られる情報量を従来の一方向又は二方向から撮影した投影像(位置決め用画像)のそれに比べて大幅に増加させることができ、本スキャンのスキャン計画立案に十分な情報を与えることができる。またスキャン範囲中の被検体の対象臓器などの範囲や位置を正確に把握出来るのに加え、スキャンしたい対象臓器に対して自動的にスキャン範囲を設定することも可能になる。3次元情報を得ることで被検体の各組織の吸収量もわかるため、必要であって過度ではない適正な管電流(mA)を精度よく選択することも可能となる。
スキャン計画段階で本スキャンのスキャン位置や範囲等の設定(プリセット)の精度を向上し、それによりスカウトスキャン(位置決めスキャンともいう)から本スキャン、そして画像読影に至る検査全体のワークフローを改善でき、検査スループットの向上も可能になる。
図1は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管装置101とX線検出器103とが1体として回転軸を中心として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管装置101のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの断層像データを再構成するには、被検体の周囲1周、約360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ビュー角分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式にも本発明を適用可能である。また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよいが、ここでは、前者の間接変換形として説明する。また、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本発明では、従来からの一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であっても、多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
本実施形態のX線コンピュータ断層撮影装置は、ガントリ100を有する。ガントリ100は、円環状の回転フレーム102を有する。回転フレーム102は、架台駆動部107とともに回転機構を構成する。回転フレーム102は、架台駆動部107により駆動され回転軸RAを中心に回転する。回転フレーム102には、X線管装置101とX線検出器103とが対向搭載されている。スキャンに際してはX線管装置101とX線検出器103との間に寝台装置111の天板に載置された被検体が挿入される。天板は寝台装置111内に装備された図示しない駆動部によりその長手方向に沿って前後に移動される。
X線管装置101は、高電圧発生装置109からスリップリング108を経由して管電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受け、X線を発生する。X線検出器103は、被検体を透過したX線を検出し、入射X線の線量を反映した電気信号を出力する複数のX線検出素子を有する。複数のX線検出素子は、例えば320列×912チャンネルで配列されている。
データ収集回路104は、X線検出器103から出力される信号を収集し、ディジタル信号(純生データと呼ばれる)に変換する。データ収集回路104には非接触データ伝送装置105を経由して前処理装置106に接続される。前処理装置106は、純生データに対して感度補正、対数変換等の処理をほどこし、投影データを発生する。投影データは記憶装置112に記憶される。
ここで、ガントリ100においては、図1に示すように、X線管装置101とX線検出器103との間に、ボウタイフィルタ131と、コリメータ132とを備える。ボウタイフィルタ131は、X線管装置101から曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ボウタイフィルタ131は、X線管装置101から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管装置101から曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ボウタイフィルタ131は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。コリメータ132は、ボウタイフィルタ131によってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
スキャン制御部110は、X線コンピュータ断層撮影装置の全体制御を行う。例えば、スキャン制御部110は、後述するスキャン計画情報に従ってスキャンを実行するために、架台駆動部107、高電圧発生装置109、寝台装置111の各動作を制御する。具体的には、スキャン制御部は、被検体に対して第1のスキャン(位置決めスキャン)及び第2のスキャン(本スキャン)を実行するための各動作を制御する。また、スキャン制御部110は、入力装置115を介して入力される各種指示に基づく動作や、表示装置116に対する各種情報(例えば、スキャン計画支援画面など)の表示処理を制御する。また、スキャン制御部110は、X線コンピュータ断層撮影装置に含まれる各部を制御することで、各部によって実行される各種処理を制御する。
画像再構成部117は、従来の2次元の位置決め用画像の撮影と同程度の低線量X線によるスキャニングで収集する投影データに基づいて画像データを比較的低ノイズで再構成するために設けられる。画像再構成部117による再構成手法は、ノイズ低減に適用性の比較的高い任意の手法が用いられる。例えば、逐次近似法を応用した画像再構成法(逐次近似法応用画像再構成法)が用いられる。ここでは、画像再構成部117は、逐次近似法応用画像再構成法によりボリュームデータを再構成するものとして以下記載するが、上記の通り逐次近似法応用画像再構成法に限定されるものではない。
画像再構成部117は、逐次近似応用再構成法によるアルゴリズムにより、記憶装置112に記憶された投影データに基づいて画像データ、ここではボリュームデータを再構成する。ボリュームデータは記憶装置112に記憶される。逐次近似応用再構成処理は、本スキャン前にそのスキャン計画に用いる位置決め用画像(断層像データ、ボリュームデータ)の再構成では必須に適用されるが、本スキャンにより収集する投影データに基づいて画像データ(断層像データ、ボリュームデータ)の再構成には後述する再構成処理部118が装備する他方式の再構成処理と選択的に適用される。
逐次近似応用再構成法は、逐次近似法を応用したものである。逐次近似法とは、周知の通り、投影データに対する実測値と計算値の差を比較し、補正を繰り返しながら画像を再構成していく方法である。逐次近似応用再構成法は、逐次近似法の画像再構成サイクルの中で、投影データ上のノイズを落とす処理と、画像データ内でノイズを落とす処理を追加した方法である。逐次近似応用再構成法のアルゴリズムは、収集した投影データに対し、統計学的ノイズモデルとスキャナーモデルを用いてノイズを低減する。さらにアナトミカルモデルを用いて、画像再構成ドメインの中で、どれがノイズでどれが本当の投影データかを見極めてノイズ成分のみを抽出し、この作業を繰り返すことでノイズを高精度に除去、低減する。逐次近似応用再構成法は、低線量撮影と低ノイズ高画質とを両立させた再構成法である。
再構成処理部118は、ビューアングルが360°又は180°+ファン角の範囲内の投影データに基づいて、画像再構成部117における逐次近似応用画像再構成法とは異なる例えばフェルドカンプ法、又はコーンビーム再構成法によりボリュームデータを再構成する。フェルドカンプ法は、コーンビームのように再構成面に対して投影レイが交差する場合の再構成法であり、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法である。コーンビーム再構成法は、フェルドカンプ法よりもコーン角エラーが抑えられる方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正する再構成法である。ボリュームデータは記憶装置112に記憶される。
位置決めスキャンで収集した投影データからボリュームデータを再構成するにはノイズ低減に適用性の高い例えば逐次近似応用再構成法が適用され、一方、本スキャンで収集した投影データからボリュームデータを再構成するには、位置決めスキャンとは異なる例えば逐次近似応用再構成法、フェルドカンプ法、コーンビーム再構成法が任意に選択される。
表示装置116は、主に、ボリュームデータから発生された画像を表示し、またスキャンエキスパートシステム120により構築されるスキャン計画画面を表示するために設けられる。入力装置115は、操作者の指示を入力するためにキーボード、マウス等から構成される。
3次元画像処理部121は、記憶装置112に記憶されるボリュームデータからボリュームレンダリング処理により3次元画像のデータを発生する機能、断面変換処理(MPR処理)によりボリュームデータからアキシャル/サジタル/コロナル又は任意のオブリーク断面に関する断面画像のデータを発生する機能を有する。投影像発生処理部122は、記憶装置112に記憶されている投影データから位置決め用画像としての投影像のデータを発生する。例えばスキャン計画画面上で、0°、45°、90°から任意のビューアングルが選択的に指定されると、スキャンエキスパートシステム120の制御により当該ビューアングルにX線管装置101が位置するときに収集された投影データが記憶装置112から読み出される。投影像発生処理部122は、読み出された同じビューアングルの投影データをそれぞれの天板位置に従って配列し、一枚に合成することにより、投影像、つまり従来同等の位置決め用画像のデータを発生する。
部位抽出処理部123は、記憶装置112に記憶されるボリュームデータから臓器領域を抽出する。例えば部位抽出処理部123は、スキャンエキスパートシステム120から検査依頼情報に含まれる検査対象臓器コードを受け、その検査対象臓器に適用される閾値に従ってボリュームデータからその臓器領域を抽出する。閾値処理に限定されず、標準的なアナトミカルモデルとのマッチング処理により臓器のセグメンテーションを行うことで臓器領域を同定するものであってもよい。抽出された臓器領域の情報はスキャンエキスパートシステム120に供給される。スキャンエキスパートシステム120は、抽出された臓器領域を囲む範囲にスキャン範囲を初期的に設定する。なお、3次元画像、断面画像、位置決め用画像を閾値処理の対象として臓器領域を抽出することも任意である。
スキャンエキスパートシステム120は、ユーザによるスキャン計画の設定を支援するために、検査依頼情報に含まれる検査目的及び検査対象臓器、被検体の年齢や性別等に対して好適な複数のスキャン計画候補を選択し、それらのスキャン計画候補のリストを検査依頼内容とともにスキャン計画画面を構築する。スキャンエキスパートシステム120は、抽出された臓器領域を囲むスキャン範囲を初期的に設定するとともに、スキャン範囲を表す補助枠線を形成する。スキャン計画画面には、断面画像と位置決め用画像が含まれる。スキャン範囲を表す補助枠線は、スキャン計画画面の位置決め用画像上に重ねられる。なおスキャン範囲を表す補助枠線は抽出された臓器領域を包含する大きさに初期的に設定されるが、ユーザによる入力装置115のドラッグ等の操作に従って任意にその大きさ、位置が変更される。これにより、従来不可能であった3次元的なスキャン計画を実施できる。スキャンエキスパートシステム120は、補助枠線で表されるスキャン範囲のスキャン開始位置を規定する位置情報とスキャン終了位置を規定する位置情報とを3次元画像処理部121に供給する。3次元画像処理部121の断面変換機能は、ボリュームデータからスキャン開始位置において、回転軸(体軸にほぼ一致)に直交する断面のアキシャル画像を発生し、同様にボリュームデータからスキャン終了位置において回転軸(体軸にほぼ一致)に直交する断面のアキシャル画像を発生する。これらアキシャル画像はスキャン計画画面の位置決め用画像とともに表示される。
またスキャンエキスパートシステム120は、スキャン計画候補内の管電流(mA)等をボリュームデータから高精度に同定できる被検体の体厚、検査対象臓器の大きさ等に応じた推奨値を計算する。管電流(mA)の推奨値もユーザによる入力装置115の操作に従って任意に変更されることができる。その他、管電圧、スライス厚、再構成関数等がスキャン計画画面上で指定される。スキャンエキスパートシステム120は、確定されたスキャン計画に従ってスキャン計画情報を発生する。スキャン計画情報はスキャン制御部110に送られ、スキャン制御部110の制御下でスキャン計画情報に従って本スキャンが実行される。
図2には本実施形態によるスキャン計画段階の低線量のスカウトスキャンから本スキャンを経て最終的に画像表示に至るCT検査全体の処理手順を示している。スキャン計画段階ではまずスキャン制御部110の制御により、被検体の胸部全体、腹部全体、上半身全体など比較的広範囲に対して、本スキャンよりも低線量でヘリカルスキャン方式又はノンヘリカルスキャン方式によりスカウトスキャンが実行される。ノンヘリカルスキャン方式の場合、1周分の投影データを収集するその都度、天板がコーン広がり角に応じた距離を移動し、その位置で1周分の投影データを収集し、そのような動作が繰り返される。スカウトスキャンにより360°分の投影データが収集される(S11)。このスカウトスキャンにより収集された投影データに基づいて画像再構成部117によりボリュームデータが再構成される(S12)。ボリュームデータは記憶装置112に記憶される。
スカウトスキャンで収集された全周分の投影データのうち、X線管装置101が0°、45°、90°から入力装置115を介して任意に選択された角度で収集された投影データが記憶装置112から投影像発生処理部122に読み出される。読み出された投影データは天板位置(体軸方向の位置)に従って配列され、一枚に合成される。それにより図7に例示するように一方向から見た位置決め用画像(投影像)のデータが発生される(S13)。初期的には0°の位置決め用画像が生成され、図5に例示するようにスキャン計画画面に表示される(S14)。他の45°又は90°の投影方向が入力装置115を介して選択されたとき(S15)、行程S13にリターンされ、当該選択された他の45°又は90°の位置決め用画像が生成され、その表示に切り換えられる(S15)。
図3にはスカウトスキャンがヘリカルスキャンで行われた場合の位置決め用画像(投影像)の合成について示し、図4にはスカウトスキャンがノンヘリカルスキャンで行われた場合の位置決め用画像の合成について示している。本実施形態ではスキャンにより全周分の投影データが収集されるから、任意方向で位置決め用画像を生成することができる。ここでは投影方向を0°、45°、90°のいずれかを選択すると例示したが、これは任意の角度を設定できることを含んでいる。
ボリュームデータから部位抽出処理部123により検査対象臓器の領域が抽出される。この抽出された検査対象臓器領域を取り囲むように、回転軸を中心軸とした円柱形状のスキャン領域がスキャンエキスパートシステム120により初期的に設定される。このスキャン領域のスキャン開始位置とスキャン終了位置に係る情報がスキャンエキスパートシステム120から3次元画像処理部121に供給される。3次元画像処理部121ではスキャン領域のスキャン開始位置に関する断面のアキシャル画像が発生され、スキャン終了位置に関するアキシャル画像が発生される(S16)。これらアキシャル画像は図5に示すようにスキャン計画画面に表示される(S17)。なお、アキシャル画像に限定されることはなく、他の任意断面の画像であってもよく、さらに1断面に限定されず多断面(MPR)が画像を表示するものであってもよい。
スキャン計画画面の位置決め用画像上に重ねられたスキャン範囲を表す補助枠線が、ユーザによる入力装置115のドラッグ等の操作に従ってその大きさ、位置が変更されたとき(S18)、スキャンエキスパートシステム120は、画面上の補助枠線の位置や大きさを変更すると共に、変更されたスキャン範囲のスキャン開始位置を規定する位置情報とスキャン終了位置を規定する位置情報とを3次元画像処理部121に即時に供給する。その変更されたスキャン開始位置のアキシャル画像と、スキャン終了位置のアキシャル画像とがボリュームデータから3次元画像処理部121により発生され(S16)、表示される(S17)。このように補助枠線を移動し、拡大/縮小するとそれに追従して、それに伴って変更されたスキャン範囲によるスキャン開始位置のアキシャル画像とスキャン終了位置のアキシャル画像とが発生され、表示される。ユーザはスキャン範囲の設定、調整にあたって、スキャン開始位置とスキャン終了位置とをそれぞれアキシャル画像で確認することができる。
図5、図6にはスキャンエキスパートシステム120により構築されるスキャン計画支援画面を示している。スキャン計画支援画面にはスキャン計画におけるスキャン条件が数値で示される。スキャン開始時間、休止時間、スキャン開始位置、スキャン終了位置、スキャンモード、スキャン数、管電圧(kV)、管電流(mA)、スキャン範囲(C−FOV)、再構成範囲(D−FOV)、スキャン速度(合計時間)、撮影スライス厚、移動範囲、スキャン後移動量などの推奨値が個々に数値で表され、ユーザは任意に変更することができる。またスキャン計画支援画面には位置決め用画像、この例では正面方向(0°)の位置決め用画像が表示される。3種類の「位置決め用画像方向選択ボタン」を選択的に押し、任意の角度を入力することにより他の方向から見た位置決め用画像に表示を切り換えることができる。
上述したように位置決め用画像にはスキャン範囲を規定する矩形の補助枠線が重ねられる。矩形の補助枠線にはスキャン開始線とスキャン終了線とが相互に区別できるように線態様や表示色を違えて併記されている。補助枠線が示すスキャン範囲は数値で表されたスキャン範囲(C−FOV)にもちろん一致している。一方を修正すると他方が連動して自動修正される。なお再構成範囲はスキャン範囲と同範囲に設定されることが多く、従ってスキャン範囲の補助枠線は再構成範囲を規定する再構成範囲補助線を兼用しているが、スキャン範囲補助枠線と再構成範囲補助枠線とを別々に表示するようにしてもよい。
スキャン範囲を規定する補助枠線に対応するそのスキャン開始位置とスキャン終了位置それぞれのアキシャル画像が選択的に表示される。「スキャン開始位置表示選択ボタン」が押されると、図5に示すように、スキャン開始位置のアキシャル画像が表示され、「スキャン終了位置表示選択ボタン」が押されると、図6に示すように、スキャン終了位置のアキシャル画像が表示され、ユーザは任意に切り替えることができる。もちろんスキャン開始位置とスキャン終了位置それぞれのアキシャル画像を同時表示するようにしてもよい。
上述した例では、位置決め用画像に重ねられたスキャン範囲補助枠線、又は、再構成補助枠線によってスキャン開始位置及びスキャン終了位置、又は再構成開始位置及び再構成終了位置が設定される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、断面画像を位置決め用画像にドラッグ&ドロップすることで設定される場合であってもよい。以下、図6のアキシャル画像を用いた一例を説明する。例えば、ユーザは、アキシャル画像を体軸方向に切り替えながら観察して、スキャン開始位置に対応するアキシャル画像を決定する。そして、ユーザは、決定したアキシャル画像を位置決め用画像にドラッグ&ドロップすることで、スキャン開始位置を設定する。さらに、ユーザは、アキシャル画像を体軸方向に切り替えながら観察して、スキャン終了位置に対応するアキシャル画像を決定する。そして、ユーザは、決定したアキシャル画像を位置決め用画像にドラッグ&ドロップすることで、スキャン終了位置を設定する。
ここで、スキャンエキスパートシステム120は、ドラッグ&ドロップされたアキシャル画像の体軸方向における位置と、寝台に対する被検体の配置情報とに基づいて、ドラッグ&ドロップされたアキシャル画像に対応する位置が開始位置であるか、或いは、終了位置であるのかを判定することができる。或いは、スキャンエキスパートシステム120は、標準的なアナトミカルモデルとのマッチング処理により同定された臓器の情報に基づいて、ドラッグ&ドロップされたアキシャル画像に対応する位置が開始位置であるか、或いは、終了位置であるのかを判定することができる。すなわち、スキャンエキスパートシステム120は、ドラッグ&ドロップされたアキシャル画像がいずれの臓器の画像であるかを判定して、開始位置であるか、或いは、終了位置であるのかを判定する。
また、スキャンエキスパートシステム120は、アキシャル画像がドラッグ&ドロップされた位置に基づいて、開始位置であるか、或いは、終了位置であるかを判定することができる。例えば、スキャンエキスパートシステム120は、ドラッグ&ドロップされた位置が、位置決め用画像の上部である場合に開始位置であると判定し、位置決め用画像の下部である場合に終了位置であると判定する。
なお、これらアキシャル画像、位置決め用画像には、部位抽出処理部123で抽出された臓器領域全体がカラー半透明で重ねられ、または抽出された臓器領域の外縁がカラーで重ねられる。造影検査を実施する場合、任意血管の断面にROIを設定し、造影剤が流入してきたタイミングで撮影を開始するためのPrep撮影がある。従来任意断面を改めて撮影する必要があるが、ボリュームデータがすでに存在するため改めて収集する必要がない。
このように抽出した臓器領域に対してスキャン範囲が自動設定され、その結果をアキシャル画像、位置決め用画像上で確認しながら必要に応じてスキャン範囲補助枠線を操作し、最終的に高精度にスキャン範囲の大きさや位置を決定することができる(S19)。さらにスキャンエキスパートシステム120により、ボリュームデータから抽出した対象臓器や被検体の方向ごとの厚み、体軸に沿った厚み変化を高精度に同定できるので、管電流(mA)の最適値、その変調方向を決定することができる(S20)。
スキャン計画が確定すると、スキャンエキスパートシステム120により、確定されたスキャン計画に従ってスキャン計画情報が発生され、そのスキャン計画情報に従ってスキャン制御部110の制御下で本スキャンが実行される(S21)。
本スキャンにより収集された投影データに基づいて例えばコーンビーム再構成法によりボリュームデータが再構成され、3次元画像処理部121により3次元画像が生成され表示装置116に表示される(S22)。
従来では、図8に示すように、X線管を回転させず、通常0°方向に固定したままX線をばく射すると同時に寝台をZ方向に動かすことでスキャン範囲を決めるための位置決め用画像を撮影している。スキャン計画に際しては当該一方向の位置決め用画像、せいぜい2方向の位置決め用画像からスキャン範囲等を設定しているにすぎない。本実施形態では通常のスキャンと同様にX線管を回転させながら360°方向の投影データを収集し、得られた全周方向の投影データを用いて3次元画像を発生して対象臓器等の3次元構造を確認し、任意の位置や方向で断面画像を発生でき、さらに位置決め用画像(投影像)の方向を自由に変更することができ、またCT値のボリュームデータが得られるので検査対象などの臓器領域を閾値処理で簡易に抽出して、スキャン範囲を自動で初期設定することができ、さらにスキャン開始位置のアキシャル画像、スキャン終了位置のアキシャル画像を確認でき、しかもスキャン範囲の位置や大きさを変更するとそれに追従して、変更されたスキャン開始位置のアキシャル画像、変更されたスキャン終了位置のアキシャル画像を確認できるので、スキャン範囲等の設定精度、設定操作の利便性を向上することができる。
以下、上述したX線コンピュータ断層撮影装置によるいくつかの実施形態について説明する。ここで、以下の実施形態では、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された投影画像を用いてスキャン範囲を設定する場合の実施形態と、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された断面画像を用いてスキャン範囲を設定する場合の実施形態を順に説明する。なお、以下で説明する実施形態はあくまでも一例であり、本願に係るX線コンピュータ断層撮影装置の実施形態はこれに限定されるものではない。
まず、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された投影画像を用いてスキャン範囲を設定する場合のいくつかの実施形態を説明する。上述した実施形態では、投影画像(位置決め用画像)上に重ねられた補助枠線の大きさや、位置が変更されることによって本スキャンのスキャン範囲が設定される例について説明したが、表示された投影画像や補助枠線の向きを変更することによってスキャン範囲を設定することも可能である。
具体的には、入力装置115は、第1のスキャン(位置決めスキャン)により取得された投影データに基づいて生成された投影画像の表示に対する操作を受け付ける。スキャンエキスパートシステム120は、入力装置115によって受け付けられた操作に応じた投影画像を表示させる。スキャン制御部110は、スキャンエキスパートシステム120によって表示された投影画像において、第2のスキャンのスキャン範囲に含まれた領域のスキャンを実行するように制御する。ここで、入力装置115は、例えば、投影画像全体における投影方向、又は、投影画像に設定された第2のスキャン(本スキャン)のスキャン範囲における投影方向を変化させるための操作を受け付ける。以下、図9A〜図11を用いて上述した実施形態について説明する。
図9A及び図9Bは本実施形態に係るスキャン範囲における投影方向を変化させる一例を説明するための図である。ここで、図9Aにおいては、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画支援画面の一領域を示す。図9Aに示すように、スキャンエキスパートシステム120が位置決め用画像と断面画像とを含むスキャン計画支援画面を構築して、構築されたスキャン計画支援画面が表示装置116に表示されると、操作者は、入力装置115を操作して本スキャンのスキャン範囲を設定する。
ここで、操作者は、図9Aの(A)に示す位置決め用画像に重ねられたスキャン範囲補助枠線の向きを変化させる(スキャン範囲補助枠線をスイングさせる)ように入力装置115を操作することで、図9Aの(B)に示すように、スキャン範囲補助枠線内の位置決め用画像の向きを変化させて本スキャンのスキャン範囲を設定する。例えば、図9Aの(A)に示すように、ガントリ100内に被検体が斜めに挿入されて位置決め用画像がスキャンされた場合に、操作者は、入力装置115を操作してスキャン範囲補助枠線の向きを変化させることで、図9Aの(B)に示すように、スキャン範囲補助枠線内の被検体の向きをまっすぐにさせる。
すなわち、操作者は、スキャン範囲補助枠線内に本スキャンの対象となる領域が含まれるように向きを変化させることで、本スキャンで被検体の所望の領域をスキャンさせるように設定する。以下、上記した処理の詳細について図9Bを用いて説明する。図9Bは、図9Aにおけるスキャン範囲設定の詳細について示す。図9Aに示すように、ガントリ100内に被検体が斜めに挿入されて位置決め用画像がスキャンされると、被検体S1とスキャン範囲補助枠線との位置関係は、図9Bの(A)に示すような位置関係となる。すなわち、スキャン範囲補助枠線に対して被検体S1が斜めの状態となる。
そこで、操作者は、入力装置115を操作して図9Bの(A)の矢印の方向にスキャン範囲補助枠線をスイングさせることで、図9Bの(B)に示すようにスキャン範囲補助枠線内に本スキャンの対象となる所望の領域を入れる。これにより、図9Bの(C)に示すように、被検体S1においてスキャン範囲補助枠線を含む領域が本スキャンのスキャン範囲として設定される。このように、操作者はスキャン範囲補助枠線を任意の方向にスイングさせることで、本スキャンにおいて所望の領域がスキャンされるようにスキャン範囲を設定することができる。以下、各部の処理について説明する。例えば、入力装置115がスキャン範囲補助枠線をスイングさせる操作を受け付けると、スキャンエキスパートシステム120は、入力装置115によって受け付けられたスキャン範囲補助枠線のスイングの情報に基づいて、スキャン範囲補助枠線のスイング後の位置情報を投影像発生処理部122及び3次元画像処理部121に供給する。
投影像発生処理部122は、スイング後のスキャン範囲補助枠線の位置情報に基づいて、スキャン補助枠線内に対応する投影画像を生成して、スキャンエキスパートシステム120に供給する。また、3次元画像処理部121は、スイング後のスキャン範囲補助枠線の位置情報に基づいて、対応する断面画像を生成して、スキャンエキスパートシステム120に供給する。例えば、3次元画像処理部121は、スイング後のスキャン範囲補助枠線のスキャン開始位置のアキシャル画像と、スキャン終了位置のアキシャル画像とをボリュームデータから生成してスキャンエキスパートシステム120に供給する。
スキャンエキスパートシステム120は、投影像発生処理部122から供給された投影画像及び3次元画像処理部121から供給された断面画像を含むスキャン計画支援画面を構築して、表示装置116に表示させる。例えば、スキャンエキスパートシステム120は、図9Aの(B)に示すようなスキャン計画支援画面を構築する。そして、スキャン制御部110は、スキャン範囲補助枠線内の領域を含むように本スキャンのスキャン範囲を設定する。
次に、投影画像全体における投影方向を変化させる場合について説明する。図10A及び図10Bは、本実施形態に係る投影画像全体における投影方向を変化させる一例を説明するための図である。図10Aにおいては、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画支援画面の一領域を示す。例えば、図10Aに示すように、スキャンエキスパートシステム120によって構築されたスキャン計画支援画面が表示装置116に表示されると、操作者は、図10Aの(A)に示す位置決め用画像の向きを変化させる(位置決め用画像をスイングさせる)ように入力装置115を操作することで、図10Aの(B)に示すように、スキャン範囲補助枠線内に本スキャンの対象となる領域を入れ、本スキャンのスキャン範囲を設定する。例えば、図10Aの(A)に示すように、ガントリ100内に被検体が斜めに挿入されて位置決め用画像がスキャンされた場合に、操作者は、入力装置115を操作して位置決め用画像の向きを変化させることで、図10Aの(B)に示すように、被検体の向きをまっすぐにさせる。
すなわち、操作者は、スキャン範囲補助枠線内に本スキャンの対象となる領域が含まれるように位置決め用画像の向きを変化させることで、本スキャンで被検体の所望の領域をスキャンさせるように設定する。以下、上記した処理の詳細について図10Bを用いて説明する。図10Bは、図10Aにおけるスキャン範囲設定の詳細について示す。図10Aに示すように、ガントリ100内に被検体が斜めに挿入されて位置決め用画像がスキャンされると、被検体S1とスキャン範囲補助枠線との位置関係は、図10Bの(A)に示すような位置関係となる。
そこで、操作者は、入力装置115を操作して図10Bの(A)の矢印の方向に位置決め用画像をスイングさせることで、図10Bの(B)に示すようにスキャン範囲補助枠線内に本スキャンの対象となる所望の領域を入れる。これにより、スキャン範囲補助枠線内に入った領域がスキャン範囲として設定される。ここで、スキャン範囲の設定は、図10Bの(C)に示すように、スイングによって位置決め用画像の向きが変化した分だけ、被検体S1に対するスキャン範囲補助枠線の向きを変化させることで実行される。すなわち、位置決め用画像がスイングされた分だけ逆方向にスキャン範囲補助枠線をスイングさせることで、被検体S1においてスキャン範囲補助枠線を含む領域が本スキャンのスキャン範囲として設定される。このように、操作者は位置決め用画像を任意の方向にスイングさせることで、本スキャンにおいて所望の領域がスキャンされるようにスキャン範囲を設定することができる。
以下、各部の処理について説明する。例えば、入力装置115が位置決め用画像をスイングさせる操作を受け付けると、スキャンエキスパートシステム120は、入力装置115によって受け付けられた位置決め用画像のスイングの情報に基づいて、位置決め用画像のスイング後の位置情報を投影像発生処理部122及び3次元画像処理部121に供給する。
投影像発生処理部122は、スイング後の位置決め用画像の位置情報に基づいて、対応する投影画像を生成して、スキャンエキスパートシステム120に供給する。また、3次元画像処理部121は、位置決め用画像がスイングされた後のスキャン範囲補助枠線の位置に対応する断面画像を生成して、スキャンエキスパートシステム120に供給する。例えば、3次元画像処理部121は、位置決め用画像がスイングされた後の位置決め用画像において、スキャン範囲補助枠線のスキャン開始位置に対応するアキシャル画像と、スキャン終了位置に対応するアキシャル画像とをボリュームデータから生成してスキャンエキスパートシステム120に供給する。
スキャンエキスパートシステム120は、投影像発生処理部122から供給された投影画像及び3次元画像処理部121から供給された断面画像を含むスキャン計画支援画面を構築して、表示装置116に表示させる。例えば、スキャンエキスパートシステム120は、図10Aの(B)に示すようなスキャン計画支援画面を構築する。そして、スキャン制御部110は、スキャン範囲補助枠線内の領域を含むように本スキャンのスキャン範囲を設定する。
上述したように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置においては、投影画像や補助枠線がスイングされることによって本スキャンのスキャン範囲が設定される。ここで、本実施形態に係る投影画像や補助枠線のスイングは、上述した例に限られず、任意の方向に行うことができる。図11は本実施形態に係る投影画像や補助枠線のスイングを説明するための図である。例えば、本実施形態に係る投影画像や補助枠線のスイングは、図11の(A)に示すように、被検体S1に対する位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線の向きを任意の方向に変化させることである。一例を挙げると、スイングは、位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線における点P1を中心とし、点P1において直交する3軸をそれぞれ回転軸として回転させることである。
すなわち、入力装置115は、図11の(A)に示すような回転操作を受け付け、スキャン制御部110は、図11の(B)に示すように、位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線の回転操作後のスキャン範囲補助枠線に含まれる領域を本スキャンのスキャン範囲として設定する。なお、上述した位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線のスイングは、上述したスキャン範囲補助枠線の大きさや、位置が変更された後に実行される場合であってもよく、或いは、スキャン範囲補助枠線の大きさや、位置が変更される前に実行される場合であってもよい。すなわち、位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線のスイング、スキャン範囲補助枠線の大きさの変更、及び位置の変更は、適宜組み合わせて実行することができる。
上述した実施形態では、位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線の回転操作後のスキャン範囲補助枠線に含まれる領域を本スキャンのスキャン範囲として設定する場合について説明した。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、位置決め用画像又はスキャン範囲補助枠線の回転操作後の角度を位置決め用画像の投影方向としてプリセットすることができる。例えば、スキャンエキスパートシステム120は、ボリュームデータに対する回転操作後の角度を位置決め用画像の投影方向として設定する。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、スキャン計画支援画像の中にプリセットボタンを構築する。例えば、エキスパートシステム120は、図5に示す位置決め用画像方向選択ボタンとして、プリセットボタンを構築する。これにより、ユーザは、回転操作によって設定した角度を容易に再現することができる。
上述した実施形態では、投影画像(位置決め用画像)に含まれる領域に対してスキャン範囲を設定する場合について説明した。しかしながら、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決めスキャンによってスキャンされていない領域に対する本スキャンのスキャン範囲の設定を行うことも可能である。図12は本実施形態に係るスキャン範囲設定の一例を説明するための図である。図12においては、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画支援画面の一領域を示す。例えば、図12の(A)に示すように、スキャンエキスパートシステム120によって構築されたスキャン計画支援画面が表示装置116に表示されると、操作者は、入力装置115を操作してスキャン範囲補助枠線を拡大することで本スキャンのスキャン範囲を設定する。
ここで、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、図12の(B)に示すように、位置決め用画像の範囲を超えた領域までスキャン範囲補助枠線が拡大されることで、位置決めスキャンによってスキャンされていない領域に対する本スキャンのスキャン範囲の設定が行われる。具体的には、スキャン制御部110は、第1のスキャン(位置決めスキャン)により取得された投影データに基づいて生成された投影画像の領域を超えた未スキャン領域に第2のスキャン(本スキャン)のスキャン範囲が設定された場合に、被検体における未スキャン領域に対応する領域を、当該未スキャン領域に対応する仮想患者画像から取得し、取得した領域を含めたスキャン範囲のスキャンを実行するように制御する。すなわち、スキャン制御部110は、位置決めスキャンによってスキャンされていない領域に関する情報を、予め準備された仮想患者画像から取得して、スキャン範囲を設定する。
ここで、予め準備される仮想患者画像について説明する。仮想患者画像は、年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格などに関わるパラメータに関する複数の組み合わせにそれぞれ対応する複数のデータであり、記憶装置112によって記憶される。仮想患者画像は、対応する上記パラメータの組み合わせに応じた標準的な体格等を有する人体について、実際にX線で撮影した画像として予め用意される。人体には、パターン認識等の画像処理により、形態的特徴等に基づいて画像から比較的容易に抽出できる多数の解剖学的特徴点がある。これら多数の解剖学的特徴点の身体における位置や配置は、年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格等に従っておおよそ決まっている。各仮想患者画像に対してこれら多数の解剖学的特徴点が予め検出され、位置データがそれぞれの解剖学的特徴の識別コードとともに仮想患者画像のデータに付帯又は関連付けされて記憶される。
スキャンエキスパートシステム120は、被検体情報から年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの項目を抽出し、抽出した項目に従って記憶装置112に記憶されている複数の仮想患者画像から一の仮想患者画像を選択する。スキャン制御部110は、位置決めスキャンによってスキャンされていない領域に関する情報を、スキャンエキスパートシステム120によって選択された仮想患者画像から取得してスキャン範囲を設定する。ここで、スキャン範囲が設定される前に、位置決め用画像における解剖学的特徴点と仮想患者画像における解剖学的特徴点が照合されて、画像間の位置合わせが実行される。
具体的には、まず、部位抽出処理部123が、形態的特徴などに基づくパターン認識等の画像処理によって、位置決め用画像から複数の解剖学的特徴点を抽出する。そして、部位抽出処理部123は、抽出した各解剖学的特徴点の位置データと、それぞれの解剖学的特徴の識別コードとを内部の記憶部に保持する。そして、部位抽出処理部123は、識別コードに基づいて、位置決め用画像の解剖学的特徴点と仮想患者画像上の複数の解剖学的特徴点との間で位置照合及び対応付けを実行する。具体的には、部位抽出処理部123は、位置決め用画像から抽出した解剖学的特徴点の識別コートと同じ識別コードが対応づけられた仮想患者画像上の解剖学的特徴点との照合を行う。以下、解剖学的特徴点の照合について説明する。
図13は本実施形態に係る解剖学的特徴点の一例を示す図である。例えば、図13に示すように、解剖学的特徴点は画像上に点在し、各点に解剖学的特徴の識別コード(例えば、図中の「ABDO34.L」や「ABDO32.R」など)が割り当てられる。上述したように、仮想患者画像における解剖学的特徴点は、予め検出されて識別コードが付与される。部位抽出処理部123は、位置決め用画像が収集されると、形態的特徴などに基づくパターン認識等の画像処理によって、複数の解剖学的特徴点を抽出し、抽出した各解剖学的特徴点に識別コードを付与する。部位抽出処理部123は、これら解剖学的特徴点の識別コードに従って、各解剖学的特徴点を照合する。
図14は本実施形態に係る解剖学的特徴点の照合の一例を説明するための図である。例えば、部位抽出処理部123は、図14に示すように、仮想患者画像上の複数の解剖学的特徴点ALV01―ALVnに対して、位置決め用画像から抽出した複数の解剖学的特徴点ALC01―ALCnを照合する。ここで、仮想患者画像上の複数の解剖学的特徴点ALV01―ALVnと位置決め用画像から抽出した複数の解剖学的特徴点ALC01―ALCnとは、それぞれ同じ識別コードが関連づけられている。
このように、仮想患者画像上の複数の解剖学的特徴点と位置決め用画像上の複数の解剖学的特徴点との照合を行うことにより、例えば、仮想患者画像上に設定されたスキャン範囲と同じ解剖学的範囲を表す位置決め用画像上のスキャン範囲を設定することができる。一例を挙げると、図14に示すように、仮想患者画像上に指定されたスキャン範囲SRVに含まれる複数の解剖学的特徴点ALV01―ALVnが特定され、複数の解剖学的特徴点ALV01―ALVnに対応する位置決め画像上の複数の解剖学的特徴点ALC01―ALCnを含むように、スキャン範囲SRVがスキャン範囲SRCに変換される。
ここで、部位抽出処理部123は、上述したスキャン範囲の変換を行うために、仮想患者画像における座標と位置決め用画像における座標とを変換するための座標変換行列を算出する。例えば、部位抽出処理部123は、仮想患者画像における座標を位置決め用画像における座標(すなわち、ガントリ100のスキャン空間内の座標)に変換する座標変換行列を算出する。なお、位置決め用画像における座標を仮想患者画像における座標に変換する座標変換行列を算出する場合であってもよい。
図15は本実施形態に係る座標変換行列の一例を説明するための図である。ここで、図15においては、仮想患者画像上に設定されたスキャン領域SRVを位置決め用画像上の対応する領域であるスキャン領域SRCに変換する場合を示す。例えば、部位抽出処理部123は、図15に示すように、仮想患者画像と位置決め用画像とで解剖学的に同じ解剖学的特徴点(ALV01、ALC01)、(ALV02、ALC02)、(ALV03、ALC03)の間の位置ズレの合計「LS」を最小化するように、座標変換行列「H」を求める。すなわち、部位抽出処理部123は、以下の式における「LS」が最小となる座標変換行列「H」を算出する。
LS = ((X1,Y1,Z1)-H(x1,y1,z1))
+((X2,Y2,Z2)-H(x2,y2,z2))
+((X3,Y3,Z3)-H(x3,y3,z3))
部位抽出処理部123は、被検体ごとに上記した座標変換行列を算出して、スキャン制御部110に供給する。スキャン制御部123は、部位抽出処理部123から受け付けた座標変換行列を用いることで、仮想患者画像上に設定されたスキャン範囲の座標を、位置決め用画像における座標(ガントリ100のスキャン空間内の座標)に変換することで、本スキャンのスキャン範囲を設定する。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、位置決めスキャンにより取得された投影データに基づいて生成された投影画像の領域を超えた未スキャン領域に本スキャンのスキャン範囲が設定された場合に、本スキャンのスキャン範囲のおける未スキャン領域に対応する領域に、当該未スキャン領域に対応する仮想患者画像を表示させる。
例えば、スキャンエキスパートシステム120は、図12の(B)に示すように、スキャン計画画面上でスキャン範囲補助枠線が位置決め用画像の領域を超えて設定される場合に、位置決めスキャンによってデータが取得されていない領域に対して仮想患者画像を表示させる。なお、表示される仮想患者画像は、位置決め用画像に含まれる解剖学的特徴点に基づいて、位置決め用画像に含まれる部位、或いは、隣接する部位が推定され、推定された部位を含む画像が用いられる。
このように、位置決めスキャンにおいてスキャンされていない領域に対して仮想患者画像を表示させ、表示させた仮想患者画像に対してスキャン範囲が設定されると、スキャン制御部110は、仮想患者画像に含まれる解剖学的特徴点の座標に対して座標変換行列をかけることで位置決め用画像における座標(ガントリ100のスキャン空間内の座標)に変換し、変換した座標を含むように本スキャンのスキャン範囲を設定する。
上述した例では、スキャン範囲補助枠線を位置決め用画像のX軸方向に対して変更させる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、任意の方向に設定することができる。図16は本実施形態に係るスキャン範囲設定の一例を説明するための図である。図16においては、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画支援画面の一領域を示す。例えば、図16の(A)に示すように、スキャンエキスパートシステム120によって構築されたスキャン計画支援画面が表示装置116に表示されると、操作者は、スキャン範囲補助枠線の幅をY軸方向に変化させるように入力装置115を操作することで、図16の(B)に示すように本スキャンのスキャン範囲を設定する。
このように、操作者によってY軸方向のスキャン範囲が変更されると、スキャンエキスパートシステム120は、図16の(B)に示すように、アキシャル画像をスキャン範囲変更後のサイズのアキシャル画像に変更する。すなわち、スキャンエキスパートシステム120は、入力装置115がY軸方向のスキャン範囲の変更を受け付けると、受け付けた範囲の情報を画像再構成部118に通知する。画像再構成部118は、通知された範囲を再構成範囲(D−FOV)として、位置決めスキャンによって収集された投影データからボリュームデータを再構成して3次元再構成処理部121に供給する。3次元再構成処理部121は、画像再構成部118から供給されたボリュームデータを用いて任意の位置(例えば、スキャン開始線又はスキャン終了線)に対応する断面画像を生成して、スキャンエキスパートシステム120に供給する。
スキャン制御部110は、操作者によってY軸方向のスキャン範囲が変更されると、変更後のスキャン範囲を含むように本スキャンを実行させる。ここで、スキャン制御部110は、変更後のスキャン範囲に応じて、C−FOVのサイズを変更する。例えば、スキャン制御部110は、スキャン範囲のY軸方向の変更に応じて、ボウタイフィルタ131や、コリメータ132を制御することで、C−FOVのサイズを位置決めスキャン時の「400mm」から「320mm」に変更する。これにより、拡大された画像を高精細に表示することができる。
以上、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された投影画像を用いてスキャン範囲を設定する場合の実施形態について説明した。次に、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された断面画像を用いてスキャン範囲を設定する場合の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、断面画像としてアキシャル画像を用いる場合を例に挙げて説明するが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、コロナル画像或いはサジタル画像を用いる場合であってもよい。
投影画像を用いてスキャン範囲を設定する場合、本願のX線コンピュータ断層撮影装置においては、スキャンエキスパートシステム120が、第1のスキャン(位置決めスキャン)により取得された投影データに基づいて生成された断面画像群のうち所望の断面画像を指定し、当該指定された断面画像に基づいて第2のスキャン(本スキャン)のスキャン範囲のうち少なくとも一方の端部を設定する。具体的には、入力装置115が、第1のスキャンにより取得された投影データに基づいて生成された断面画像の表示位置に対する操作を受け付ける。そして、スキャンエキスパートシステム120が、入力装置115によって受け付けられた操作に応じて表示位置が変更された断面画像に基づいて第2のスキャンのスキャン範囲のうち少なくとも一方の端部を設定する。
すなわち、操作者が、断面画像に対するスキャン範囲の設定操作を行うように入力装置115を操作することで、エキスパートスキャンシステム120は、設定された情報をスキャン制御部110に通知して、スキャン範囲を設定させる。ここで、入力装置115は、断面画像の断面位置及び断面角度のうち少なくとも一方を変化させるための操作を受け付ける。以下、図17及び図18を用いて、断面画像を用いたスキャン範囲の設定について説明する。図17及び図18は本実施形態に係る断面画像を用いたスキャン範囲の設定の一例を説明するための図である。ここで、図17においては、断面画像の断面位置を変化させることでスキャン範囲を設定する場合について示す。また、図18においては、断面画像の断面角度を変化させることでスキャン範囲を設定する場合について示す。また、図17及び図18においては、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画支援画面の一領域を示す。
例えば、位置決めスキャンによって位置決め用画像が収集されると、スキャンエキスパートシステム120は、図17の(A)に示すように、位置決めスキャンによって収集された投影データから生成された投影画像(位置決め用画像)と、投影データから再構成されたボリュームデータから生成されたアキシャル画像とを含むスキャン計画画面を構築する。そして、スキャン制御部110が表示装置116にスキャン計画画面を表示させると、操作者は、まず、画面内に配置されたボタン「Axial画像でスキャン範囲を設定」を押下する。これによりアキシャル画像でのスキャン範囲の設定が可能になる。
そして、操作者は、入力装置115を介してアキシャル画面を操作して、スキャン範囲を設定する。例えば、操作者は、アキシャル画像上でマウスなどを操作することで、アキシャル画像の断面位置を変化させ、所望の位置でボタン「スキャン開始位置」を押下することで、ボタンを押下した時点での断面画像の断面位置をスキャン範囲の開始位置に設定する。そして、操作者は、断面位置をさらに変化させ、例えば、図17の(B)に示す断面位置でボタン「スキャン終了位置」を押下することで、スキャン範囲の終了位置を設定する。このように、入力装置115を介してスキャン範囲が設定されると、スキャンエキスパートシステム120は、設定された情報をスキャン制御部110に通知する。スキャン制御部110は、通知されたスキャン範囲の情報に基づいて、本スキャンのスキャン範囲を設定して、本スキャンを実行させる。
また、例えば、位置決めスキャン時に被検体がガントリ100内に斜めに挿入され、図18の(A)に示すような位置決め用スキャンが表示された場合、操作者は、まず、上記と同様にボタン「Axial画像でスキャン範囲を設定」を押下することで、アキシャル画像でのスキャン範囲の設定を可能にする。そして、操作者は、アキシャル画像上でマウスやボタンなどを操作することで、アキシャル画像の断面角度を変化させ、所望の位置でボタン「スキャン開始位置」を押下することで、ボタンを押下した時点での断面画像の断面位置をスキャン範囲の開始位置に設定する。例えば、操作者は、入力装置115を操作して、X−Y平面、或いは、X−Z平面に対する断面画像の角度を調整することで、図18の(A)に示す斜めのアキシャル画像を図18の(B)に示す左右対称なアキシャル画像に変更する。そして、操作者は、ボタン「スキャン開始位置」を押下することで、スキャン範囲の開始位置を設定する。さらに、操作者は、角度を調整した後、上記した操作と同様に、マウスなどを操作してアキシャル画像の断面位置を変化させてボタン「スキャン終了位置」を押下することで、スキャン範囲の終了位置を設定する。
このように、入力装置115を介してスキャン範囲が設定されると、スキャンエキスパートシステム120は、設定された情報をスキャン制御部110に通知する。スキャン制御部110は、通知されたスキャン範囲の情報に基づいて、本スキャンのスキャン範囲を設定して、本スキャンを実行させる。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、図18の(B)に示すように、アキシャル画像の断面角度が変更されると、投影画像(位置決め用画像)上のアキシャル画像に対応する位置に断面画像位置を示す線を表示させることも可能である。
なお、上述した例では、アキシャル画像の断面角度を操作者が変更させる場合を例に挙げて説明したが、部位抽出処理部123のよって抽出された解剖学的特徴点に基づいて、スキャンエキスパートシステム120が自動で実行する場合であってもよい。かかる場合には、スキャンエキスパートシステム120は、部位抽出処理部123が抽出した解剖学的特徴点に基づいて、アキシャル画像に含まれる被検体部位が左右対称となるように断面角度を調整する。
また、断面画像を用いたスキャン範囲の設定としては、スライス厚の変更に伴って設定させることも可能である。例えば、操作者が、スライス厚が「0.5mm」で実行された位置決めスキャンのアキシャル画像を観察しながら、所望のスライス厚として「10.0mm」を設定した場合に、スキャン制御部110は、スライス厚「10.0mm」の画像をスキャンするためのマージン部分を含めた範囲をスキャン範囲として設定する。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、例えば、投影画像(位置決め画像)上にマージン部分を表示させるようにすることも可能である。
また、アキシャル画像を観察しながら、部位ごとに画像の中心を設定することも可能である。図19は本実施形態に係る部位ごとの中心位置の変更の一例を説明するための図である。例えば、図19に示すように、操作者は、スキャン計画画面に表示されたアキシャル画像を観察しながら、胸部と腹部にそれぞれ画像の中心位置を設定することができる。例えば、胸部と腹部とでは、天板から体の中心位置までの距離が異なるため、胸部に合せて中心位置を決めた場合、腹部の中心位置が画像の上部になってしまう場合がある。そこで、アキシャル画像の断面位置を変えながら、画像の中心位置をそれぞれ設定する。これにより、本スキャン後に表示されるアキシャル画像が、設定された中心位置に基づいて表示させることができる。
また、本実施形態においては、部位ごとに断面を設定することで、スキャン範囲を設定することも可能である。図20は本実施形態に係る部位ごとの断面に応じたスキャン範囲の設定を説明するための図である。例えば、図20に示すように、心臓の断面を観察する場合には、心臓の長軸L1に直交する断面画像が用いられることが多い。そこで、本願のX線コンピュータ断層撮影装置は、部位ごとに所望の断面の情報を受け付けて、受け付けた断面を含む範囲をスキャン範囲として設定する。
具体的には、まず、スキャンエキスパートシステム120が位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された断面画像をスキャン計画画面に表示させ、入力装置115が断面画像の位置及び角度を変更する操作と、スキャン開始位置とスキャン終了位置とを受け付けて、受け付けた断面画像の情報(例えば、位置及び角度変更した後の断面画像の座標情報など)をスキャンエキスパートシステム120に通知する。スキャンエキスパートシステム120は、入力装置115から受け付けた断面画像の情報をスキャン制御部110に通知する。
ここで、スキャン制御部110は、スキャンエキスパートシステム120から受け付けた断面画像の情報に含まれる座標情報に基づいて、設定された断面画像を含むようにスキャン範囲を設定して、本スキャンを実行する。なお、入力装置115は、操作者から部位情報を受け付けることで、さらにスキャン範囲を絞ることも可能である。例えば、上記した例において、入力装置115が部位情報「心臓」を受け付けることで、スキャン制御部110は、心臓を含む範囲をスキャン範囲として設定する。なお、部位情報の入力は、アキシャル画像上で指定する場合であってもよく、文字入力される場合であってもよい。文字入力される場合には、スキャン制御部110は、部位抽出処理部123によって抽出された解剖学的特徴点に基づいて、心臓の位置(座標)を取得し、取得した位置を含むようにスキャン範囲を設定する。
そして、スキャン制御部110は、本スキャンを実行させた後、本スキャンによって収集された投影データに基づく断面画像を設定された断面で表示するようにスキャンエキスパートシステム120を制御する。なお、Y軸方向のスキャン範囲が変更される場合には、スキャン制御部110は、変更後のスキャン範囲に応じて、ボウタイフィルタ131や、コリメータ132を制御することで、C−FOVのサイズを変更する。
上述したように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された投影画像を用いてスキャン範囲を設定したり、位置決めスキャンによって収集された投影データに基づいて生成された断面画像を用いてスキャン範囲を設定したりすることができる。ここで、上述した実施形態では、それぞれ別々に実施する場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、投影画像を用いたスキャン範囲の設定と断面画像を用いたスキャン範囲の設定とを組み合わせて実施される場合であってもよい。
具体的には、スキャンエキスパートシステム120によって構築されたスキャン計画画面に含まれる投影画像及び断面画像をそれぞれ動かしながら観察して、所望のスキャン範囲を設定する場合であってもよい。上述したように、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画画面の投影画像と断面画像とは連動する。例えば、投影画像やスキャン範囲補助枠線をスイングして、スキャン開始位置などを設定すると、それに応じた断面画像が表示される。或いは、断面画像の角度や位置などを変更すると、投影画像における対応した位置に断面画像位置の情報が表示される。
従って、操作者は、両方の画像を観察して、画像を動かしながらスキャン範囲を設定することができる。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、投影画像及び断面画像をそれぞれ異なる平面で表示させるとともに、第2のスキャンのスキャン範囲のうち少なくとも一方の端部の位置を投影画像及び断面画像上にそれぞれ対応付けて表示させる。図21は本実施形態に係るスキャン計画画面の一例を示す図である。図21においては、スキャンエキスパートシステム120によって構築されるスキャン計画支援画面の一領域を示す。
例えば、スキャンエキスパートシステム120は、図21に示すように、投影画像と断面画像とをそれぞれ異なる平面で表示させる。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、図21に示すように、スキャン範囲を設定するための線L2及びL3を両方の画像の対応する位置にそれぞれ表示させる。操作者は、入力装置115を操作して、投影画像或いは断面画像上に示されたL2及びL3を移動させてスキャン範囲を設定する。ここで、スキャンエキスパートシステム120は、一方の画像上で線L2或いは線3が移動されると、他方の画像における対応する線を移動に応じた位置に移動させる。
このように、投影画像と断面画像とを用いてスキャン範囲を設定することができるが、表示される画像は、それぞれ異なる平面の画像である。例えば、一方がアキシャル画像である場合には、他方はコロナル画像又はサジタル画像であり、一方がコロナル画像である場合には、他方はアキシャル画像又はサジタル画像であり、一方がサジタル画像である場合には、他方はアキシャル画像又はコロナル画像である。なお、上述した例では、投影画像と断面画像とを用いる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、断層画像と断層画像とを用いる場合であってもよい。
また、上述した実施形態では、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)が設定される場合を例に挙げて説明したが、スキャン範囲の一方に端部(スキャン開始位置又はスキャン終了位置)のみが設定される場合であってもよい。例えば、スキャン終了位置が予め決まっている場合には、スキャン開始位置のみが設定されてもよい。逆に、スキャン開始位置が予め決まっている場合には、スキャン終了位置のみが設定されてもよい。
また、例えば、スキャン開始位置のみが設定され、本スキャンを実行し、部位抽出処理部123による解剖学的特徴点の抽出をリアルタイムに実行して、所定の位置までスキャンされた場合に本スキャンが終了するように設定することも可能である。
ここで、上述したX線コンピュータ断層撮影装置の別の実施形態について、図22を用いて説明する。図22は、X線コンピュータ断層撮影装置の別の実施形態を示す図である。なお、別の実施形態では、上述した実施形態と異なる点を主に説明し、上述した実施形態で説明した構成と同様の機能については、同一の参照符号を付して、説明を適宜省略する。図22に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、ガントリ100と、前処理回路106aと、高電圧発生装置109と、スキャン制御回路110aと、記憶回路112aと、ディスプレイ116aと、入力回路115aと、処理回路200とを有する。そして、図22に示すように、各回路は相互に接続されており、各回路間で種々の電気信号を送受信する。なお、前処理回路106aは、図1に示した前処理装置106に対応する。また、スキャン制御回路110aは、図1に示したスキャン制御部110に対応する。また、記憶回路112aは、図1に示した記憶装置112に対応する。また、ディスプレイ116aは、図1に示した表示装置116に対応する。入力回路115aは、図1に示した入力装置115に対応する。
ガントリ100は、X線管101と、回転フレーム102と、X線検出器103と、データ収集回路104と非接触データ伝送回路105aと、架台駆動部107と、スリップリング108と、ボウタイフィルタ131と、コリメータ132とを有する。図22における実施形態では、図1で示した非接触データ伝送装置105、前処理装置106、スキャン制御部110、逐次近似応用画像再構成部117、画像再構成部118、スキャンエキスパートシステム120、3次元画像処理部121、投影像発生処理部122及び部位抽出処理部123にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路112a又は図示しない記憶回路へ記憶されている。なお、非接触データ転送回路105aは、図1に示した非接触データ伝送装置105に対応する。
データ収集回路104、非接触データ伝送回路105a、前処理回路106a、スキャン制御回路110a、及び、処理回路200は、記憶回路112a又は図示しない記憶回路からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SimpleProgrammable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex ProgrammableLogic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable GateArray:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
例えば、記憶回路112aは、逐次近似応用画像再構成機能117a、画像再構成機能118a、スキャンエキスパート機能120a、3次元画像処理機能121a、投影像発生処理機能122a、及び、部位抽出処理機能123aに対応するプログラムを記憶する。処理回路200は、逐次近似応用画像再構成機能117aに対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、逐次近似応用画像再構成部117と同様の処理を実行する。また、処理回路200は、画像再構成機能118aに対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、画像再構成処理部118と同様の処理を実行する。また、処理回路200は、スキャンエキスパート機能120aに対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、スキャンエキスパートシステム120と同様の処理を実行する。また、処理回路200は、3次元画像処理機能121aに対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、3次元画像処理部121と同様の処理を実行する。また、処理回路200は、投影像発生処理機能122aに対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、投影像発生処理部122と同様の処理を実行する。また、処理回路200は、部位抽出処理機能123aに対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、部位抽出処理部123と同様の処理を実行する。
また、例えば、記憶回路112aは、X線コンピュータ断層撮影装置1を全体制御するスキャン制御機能に対応するプログラムを記憶する。スキャン制御回路110aは、スキャン制御機能に対応するプログラムを記憶回路112aから読み出し実行することで、スキャン制御部110と同様の処理を実行する。また、例えば、記憶回路112a又は図示しない記憶回路がデータ収集機能、非接触データ伝送機能及び前処理機能に対応するプログラムを記憶し、データ収集回路104、非接触データ伝送回路105a及び前処理回路106aが記憶回路112a又は図示しない記憶回路からそれぞれデータ収集機能、非接触データ伝送機能及び前処理機能に対応するプログラムを読み出し実行することで、データ収集回路104、非接触データ伝送装置105及び前処理装置106と同様の処理を実行する。
なお、図22に示す例では、1つの処理回路200が各プログラムを実行することによって、逐次近似応用画像再構成機能117a、画像再構成機能118a、スキャンエキスパート機能120a、3次元画像処理機能121a、投影像発生処理機能122a、及び、部位抽出処理機能123aを実現する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、複数の処理回路によって、逐次近似応用画像再構成機能117a、画像再構成機能118a、スキャンエキスパート機能120a、3次元画像処理機能121a、投影像発生処理機能122a、及び、部位抽出処理機能123aが実現される場合であってもよい。例えば、逐次近似応用画像再構成機能117a、画像再構成機能118a、スキャンエキスパート機能120a、3次元画像処理機能121a、投影像発生処理機能122a、及び、部位抽出処理機能123aのうち、1つ又は複数の機能が専用の独立したプログラム実行回路に別々に実装されてもよい。
また、図22に示す複数の回路を1つの処理回路として実装する場合であってもよい。例えば、スキャン制御回路110aによって実現されるスキャン制御機能と、処理回路200によって実現される逐次近似応用画像再構成機能117a、画像再構成機能118a、スキャンエキスパート機能120a、3次元画像処理機能121a、投影像発生処理機能122a、及び、部位抽出処理機能123aとが、1つのプログラム実行回路によって実現されてもよい。
入力回路115aは、スキャン位置やスキャン範囲の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力回路115aは、スキャン制御回路110aに接続されており、オペレータから受け取った入力操作を電気信号へ変換しスキャン制御回路110a又は処理回路200へと出力する。
次に、本実施形態における処理の流れについて図2を用いて説明する。図2におけるステップS11は、スキャン制御回路110aが記憶回路112aからスキャン制御機能に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS11では、スキャン制御回路110aが架台駆動部107、高電圧発生装置109等を制御することで、ヘリカルスキャン又はノンヘリカルスキャンでデータ収集を実行する。ステップS12は、処理回路200が記憶回路112aから逐次近似応用画像再構成機能117aに対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS22では、処理回路200が、逐次近似応用再構成処理により、記憶回路112aに記憶された投影データからボリュームデータを再構成する。
ステップS13は、処理回路200が記憶回路112aから投影像発生処理機能122aに対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS13では、処理回路200が、記憶回路112aに記憶された投影データから投影画像発生処理を実行する。ステップS16は、処理回路200が記憶回路112aから3次元画像処理機能121aに対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS16では、処理回路200が、ボリュームデータに対してMPR処理を実行する。ステップS14及びS17は、ディスプレイ116aが処理回路200の処理によって生成された投影画像及びMPR画像をそれぞれ表示する。
ステップS15及びS18は、入力回路115aによって実現されるステップである。ステップS15及びS18では、入力回路115aが、オペレータから画像の方向の変更又は位置の変更、或いは、スキャン範囲補助枠線の変更に関する操作を受け取った場合に、受け取った操作を電気信号へ変換して処理回路200へ出力する。ここで、処理回路200は、入力回路115aから電気信号を受け取ると、変更に応じた投影画像及びMPR画像をそれぞれ生成する。そして、ディスプレイ116aが、生成された投影画像及びMPR画像をそれぞれ表示する。このように、オペレータが画像の方向又は位置の変更、或いは、スキャン範囲補助枠線の変更を行うことで、スキャン位置・範囲及び再構成位置・範囲が決定され(ステップS19)、変調方向・最適mAが決定される(ステップS20)。
ステップS21は、スキャン制御回路110aが記憶回路112aからスキャン制御機能に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS21では、スキャン制御回路110aが、架台駆動部107、高電圧発生装置109等を制御することで、本スキャンを実行する。ステップS22は、処理回路200が記憶回路112aから画像再構成機能118a及び3次元画像処理機能121aに対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS22では、処理回路200が、コーンビーム再構成法により、本スキャンによって収集された投影データからボリュームデータを再構成する。さらに、処理回路200が、再構成したボリュームデータからMPR画像などの表示画像を生成する。そして、ディスプレイ116aが、生成された表示画像を表示する。なお、上述した実施形態における処理回路200は、特許請求の範囲におけるProcessing circuitryの一例である。
以上、説明したとおり、実施形態によれば、スキャン範囲等の計画の精度、利便性を向上することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。