以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る車速制御装置(以下、「本制御装置」とも称呼される。)について説明する。図1には、車両10、シャシーダイナモメータ30、車速制御装置50及びペダルアクチュエータ71が示されている。本制御装置は、車速制御装置50に適用される。
車両10は、アクセルペダル21、アクセルペダル操作量センサ22、ブレーキペダル23、駆動輪24及び操舵輪25を含んでいる。
アクセルペダル操作量センサ22は、アクセルペダル21の操作量(踏み込み量)であるアクセル操作量Apを取得し、アクセル操作量Apを表す電圧信号であるアクセル操作量信号Sapを車両10の制御装置(不図示)へ送信する。アクセルペダル21が操作されていないとき、アクセル操作量Apは「0」となる。アクセルペダル21の操作量が大きくなるほどアクセル操作量Apは大きな値となる。
アクセル操作量信号Sapの電圧は、アクセル操作量Apに比例する。換言すれば、アクセル操作量Apが一定であるとき、アクセル操作量信号Sapは、電圧が変化しない直流信号である。
車両10の制御装置は、アクセル操作量Ap及び車両10の走行速度である車速Vs等に基づいて駆動輪24に発生させるトルク(駆動力)を決定する。
ブレーキペダル23に踏力が加えられると、即ち、ブレーキペダル23の操作量であるブレーキ操作量Bpが大きくなると、車両10の摩擦ブレーキ装置(不図示)が作動し、以て、駆動輪24及び操舵輪25に制動力が発生する。ブレーキペダル23が操作されていないとき、ブレーキ操作量Bpは「0」となる。ブレーキペダル23の操作量が大きくなるほどブレーキ操作量Bpは大きな値となる。
車両10は、シャシーダイナモメータ30上に設置されている。シャシーダイナモメータ30は、ロードローラ41及び制御盤42を含んでいる。ロードローラ41は、駆動輪24の回転に従って回転する。ロードローラ41は、車両10が実際に路上を走行する場合の走行抵抗に相当する回転抵抗を制御盤42からの指示に応じて発生させる。
制御盤42は、ロードローラ41の回転速度に基づいて車速Vsを取得し、車速Vsを表す電圧信号である車速信号Svsを車速制御装置50へ送信する。車速信号Svsの電圧は、車速Vsに比例する。
車速制御装置50は、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)61、ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)62及びDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)63を含んでいる。車速制御装置50のDSP61は、プログラム・メモリ及びデータ・メモリを含んでいる(何れも不図示)。
車速制御装置50は、ペダルアクチュエータ71へブレーキ操作量Bpを表す電圧信号であるブレーキ操作量信号Sbpを送信する。ペダルアクチュエータ71は、ブレーキ操作量信号Sbpに応じてブレーキペダル23を押し込み、以て、ブレーキ操作量Bpを制御する。ブレーキ操作量信号Sbpの電圧が高くなるほど、ブレーキ操作量Bpが大きくなる。
加えて、車速制御装置50は、アクセルペダル操作量センサ22と接続されている。車速制御装置50は、アクセルペダル操作量センサ22を介して車両10の制御装置へアクセル操作量信号Sapを送信することができる。
従って、アクセルペダル21及びブレーキペダル23を操作する運転者がいなくても、車速制御装置50は、アクセル操作量信号Sap及びブレーキ操作量信号Sbpを送信することによって車両10の駆動力及び制動力を制御することができる。
車速制御装置50は、DSP61のプログラム・メモリに記憶されたプログラムに従って車速制御処理を実行する。車速制御処理は、車速Vsが、時間の経過と共に変化する指示速度Vdと一致するようにペダルアクチュエータ71及び車両10に送信されるアクセル操作量信号Sapを制御する処理である。
車速制御処理の実行時、車速制御装置50は、所定の時間間隔にて目標アクセル操作量Atg及び目標ブレーキ操作量Btgを設定する。DAC63は、目標アクセル操作量Atg及び目標ブレーキ操作量Btgに応じてアクセル操作量信号Sap及びブレーキ操作量信号Sbpを生成(出力)する。
指示速度Vdは、例えば、JC08モード燃費試験、及び、WLTP燃費試験に基づいて定められている。車速制御処理が開始してから経過した時間である経過時間Teのそれぞれに対応する指示速度Vdが車速制御装置50のデータ・メモリに記憶されている。指示速度Vdの単位時間あたりの変化量は、以下、指示加速度Adとも称呼される。
以下、経過時間Teに対応する指示速度Vdは、指示速度Vd(Te)とも表記される。加えて、経過時間Teにおける指示加速度Adは、指示加速度Ad(Te)とも表記される。即ち、指示速度Vd及び指示加速度Adに対して車速制御処理を開始してからの経過時間が括弧内に付される場合がある。
図2は、車速制御処理の実行時に車速制御装置50のDSP61によって実現される機能ブロックを表した構成図である。車速制御処理の実行時における機能ブロックは、フィルタ部81、先出し部82、アクセル操作認知部83、ブレーキ操作認知部84、アクセル操作量演算部85、ブレーキ操作量演算部86、操作選択部87及び操作量出力部88を含んでいる。
フィルタ部81は、ローパスフィルタとして作動する。フィルタ部81は、シャシーダイナモメータ30から受信する車速信号Svsに含まれるノイズ成分を除去する。フィルタ部81は、車速信号Svsからノイズ成分を除去することによって取得された車速Vsをアクセル操作認知部83、ブレーキ操作認知部84、アクセル操作量演算部85及びブレーキ操作量演算部86へ出力する。
先出し部82は、アクセル操作認知部83、ブレーキ操作認知部84、アクセル操作量演算部85及びブレーキ操作量演算部86のそれぞれに対応する先出し時間を取得する。先出し時間は、アクセル操作認知部83、ブレーキ操作認知部84、アクセル操作量演算部85及びブレーキ操作量演算部86のそれぞれの制御遅れ時間を補正するために設定される。
アクセル操作認知部83に対応する先出し時間は、アクセル認知先出時間Tafである。ブレーキ操作認知部84に対応する先出し時間は、ブレーキ認知先出時間Tbfである。アクセル操作量演算部85に対応する先出し時間は、アクセル操作先出時間Tabである。ブレーキ操作量演算部86に対応する先出し時間は、ブレーキ操作先出時間Tbbである。
アクセル操作認知部83は、経過時間Teとアクセル認知先出時間Tafとの和をアクセル認知経過時間Tafeとして取得する(即ち、Tafe=Te+Taf)。アクセル操作認知部83は、指示速度Vd(Tafe)及び指示加速度Ad(Tafe)の組合せに基づいて参照アクセル操作量Affを取得する。
アクセル操作認知部83は、この参照アクセル操作量Affを認知アクセル操作量Adeとして操作選択部87へ出力する。参照アクセル操作量Affの取得方法は、後述される。
ブレーキ操作認知部84は、経過時間Teとブレーキ認知先出時間Tbfとの和をブレーキ認知経過時間Tbfeとして取得する(即ち、Tbfe=Te+Tbf)。ブレーキ操作認知部84は、指示速度Vd(Tbfe)及び指示加速度Ad(Tbfe)の組合せに基づいて参照ブレーキ操作量Bffを取得する。
ブレーキ操作認知部84は、この参照ブレーキ操作量Bffを認知ブレーキ操作量Bdeとして操作選択部87へ出力する。参照ブレーキ操作量Bffの取得方法は、後述される。
アクセル操作量演算部85は、経過時間Teとアクセル操作先出時間Tabとの和をアクセル操作経過時間Tabeとして取得する(即ち、Tabe=Te+Tab)。アクセル操作量演算部85は、指示速度Vd(Tabe)及び指示加速度Ad(Tabe)の組合せに基づいて参照アクセル操作量Affを取得する。
加えて、アクセル操作量演算部85は、指示速度Vd(Tabe)と車速Vsとの差分であるアクセル速度差分ΔVa(即ち、ΔVa=Vd(Tabe)−Vs)に基づいて差分アクセル操作量Afbを取得する。具体的には、アクセル速度差分ΔVaが正の値であるとき(即ち、ΔVa>0)、アクセル操作量演算部85は、アクセル速度差分ΔVaが大きいほど差分アクセル操作量Afbを大きな値に設定する。一方、アクセル速度差分ΔVaが「0」以下であるとき(即ち、ΔVa≦0)、アクセル操作量演算部85は、差分アクセル操作量Afbを「アクセル操作量演算部85によって前回設定された差分アクセル操作量Afb」よりも小さい値に設定する。ただし、アクセル操作量演算部85によって前回設定された差分アクセル操作量Afbが「0」であれば、新たに設定される差分アクセル操作量Afbは「0」となる。
アクセル操作量演算部85は、アクセル操作量演算部85が取得した参照アクセル操作量Aff及び差分アクセル操作量Afbの和を必要アクセル操作量Anaとして操作選択部87へ出力する(即ち、Ana←Aff+Afb)。
ブレーキ操作量演算部86は、経過時間Teとブレーキ操作先出時間Tbbとの和をブレーキ操作経過時間Tbbeとして取得する(即ち、Tbbe=Te+Tbb)。ブレーキ操作量演算部86は、指示速度Vd(Tbbe)及び指示加速度Ad(Tbbe)の組合せに基づいて参照ブレーキ操作量Bffを取得する。
加えて、ブレーキ操作量演算部86は、指示速度Vd(Tbbe)と車速Vsとの差分であるブレーキ速度差分ΔVb(即ち、ΔVb=Vd(Tbbe)−Vs)に基づいて差分ブレーキ操作量Bfbを取得する。具体的には、ブレーキ速度差分ΔVbが負の値であるとき(即ち、ΔVb<0)、ブレーキ操作量演算部86は、ブレーキ速度差分ΔVbが小さいほど差分ブレーキ操作量Bfbを大きな値に設定する。一方、ブレーキ速度差分ΔVbが「0」以上であるとき(即ち、ΔVb≧0)、ブレーキ操作量演算部86は、差分ブレーキ操作量Bfbを「ブレーキ操作量演算部86によって前回設定された差分ブレーキ操作量Bfb」よりも小さい値に設定する。ただし、ブレーキ操作量演算部86によって前回設定された差分ブレーキ操作量Bfbが「0」であれば、新たに設定される差分ブレーキ操作量Bfbは「0」となる。
ブレーキ操作量演算部86は、ブレーキ操作量演算部86が取得した参照ブレーキ操作量Bff及び差分ブレーキ操作量Bfbの和を必要ブレーキ操作量Bnaとして操作選択部87へ出力する(即ち、Bna←Bff+Bfb)。
操作選択部87は、アクセルペダル21に対する操作(アクセル操作)及びブレーキペダル23に対する操作(ブレーキ操作)の何れかを実行されるべき操作として選択する。具体的には、認知アクセル操作量Adeが正の値であれば、操作選択部87は、アクセル操作を選択する。一方、認知ブレーキ操作量Bdeが正の値であれば、操作選択部87は、ブレーキ操作を選択する。
操作選択部87は、アクセル操作を選択したとき、アクセル操作量演算部85から入力された必要アクセル操作量Anaを操作量出力部88へ出力する。一方、操作選択部87は、ブレーキ操作を選択したとき、ブレーキ操作量演算部86から入力された必要ブレーキ操作量Bnaを操作量出力部88へ出力する。
操作量出力部88は、操作選択部87からの入力値(即ち、必要アクセル操作量Ana及び必要ブレーキ操作量Bnaの何れか一方)に基づいて、目標アクセル操作量Atg及び目標ブレーキ操作量Btgを設定する。操作量出力部88は、設定された目標アクセル操作量Atg及び目標ブレーキ操作量BtgをDAC63へ出力する。
操作量出力部88は、操作選択部87からの入力値が必要アクセル操作量Anaであるとき、目標ブレーキ操作量Btgを「0」に設定する。一方、操作量出力部88は、操作選択部87からの入力値が必要ブレーキ操作量Bnaであるとき、目標アクセル操作量Atgを「0」に設定する。
加えて、操作量出力部88は、操作選択部87からの入力値に対して同時操作禁止処理及びレートリミッタ処理を行う。同時操作禁止処理及びレートリミッタ処理について、操作選択部87からの入力値が必要アクセル操作量Anaである場合を例に説明する。操作選択部87からの入力値が必要ブレーキ操作量Bnaである場合におけるこれらの処理は、入力値が必要アクセル操作量Anaである場合と同様であるので説明が割愛される。
同時操作禁止処理は、アクセル操作とブレーキ操作とが短時間の間に切り替わることを回避するために実行される。一般に、運転者が車両を運転するとき、アクセル操作及びブレーキ操作の一方を実行している状態からアクセル操作及びブレーキ操作の他方を実行している状態へ遷移する「踏み替え」が発生する。運転者が踏み替えを行うとき、ある程度の時間を要する。
そこで、操作量出力部88は、操作選択部87からの入力値が必要ブレーキ操作量Bnaから必要アクセル操作量Anaへ切り替わってから所定の切替時間Tiが経過するまで、目標アクセル操作量Atgを「0」に設定する。切替時間Tiは、車両10の一般的な運転者がアクセルペダル21及びブレーキペダル23の間の踏み替えに要する時間に設定されている。
レートリミッタ処理は、アクセル操作量Ap及びブレーキ操作量Bpの急激な変化を回避するために実行される。一般に、車両の運転者は、急加速及び急減速(即ち、車速Vsの急激な変化)を避けるため、アクセル操作量Ap及びブレーキ操作量Bpを急激に変化させない。
そこで、操作量出力部88は、操作選択部87から新たに入力された必要アクセル操作量Anaと、操作量出力部88が前回出力した目標アクセル操作量Atgである前回目標アクセル操作量Atgpと、の差分の大きさを所定のアクセル操作変化量限度Apth以下とする。操作選択部87から新たに入力された必要アクセル操作量Anaと、前回目標アクセル操作量Atgと、の差分は、アクセル操作量差分ΔApとも称呼される(即ち、ΔAp=Ana−Atgp)。
アクセル操作量差分ΔApがアクセル操作変化量限度Apthよりも大きければ(即ち、ΔAp>Apth)、操作選択部87は、目標アクセル操作量Atgを「前回目標アクセル操作量Atgpにアクセル操作変化量限度Apthを加えた値」に設定する(即ち、Atg←Atgp+Apth)。
一方、アクセル操作量差分ΔApが「アクセル操作変化量限度Apthに『−1』を乗じて得られる値」よりも小さければ(即ち、ΔAp<−Apth)、操作選択部87は、目標アクセル操作量Atgを「前回目標アクセル操作量Atgpからアクセル操作変化量限度Apthを減じた値」に設定する(即ち、Atg←Atgp−Apth)。
なお、同時操作禁止処理及びレートリミッタ処理による上述した目標アクセル操作量Atgの設定が行われないとき、操作量出力部88は、目標アクセル操作量Atgを必要アクセル操作量Anaに等しい値に設定する。
(ペダル操作量マップ)
次に、参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffの取得方法について説明する。参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffは、図3に表されたペダル操作量マップに指示速度Vd及び指示加速度Adを適用することによって取得される。
指示速度Vd及び指示加速度Adの組合せは、以下、「指示運転状態」とも称呼される。例えば、アクセル操作認知部83は、指示速度Vd(Tafe)及び指示加速度Ad(Tafe)の組合せを指示運転状態としてペダル操作量マップに適用する。
指示運転状態が図3の一点鎖線Laa1又は破線Lad1に該当するとき、参照アクセル操作量Affは第1アクセル操作量Ap1となる。指示運転状態が一点鎖線Laa2又は破線Lad2に該当するとき、参照アクセル操作量Affは第2アクセル操作量Ap2となる。指示運転状態が一点鎖線Laa3又は破線Lad3に該当するとき、参照アクセル操作量Affは第3アクセル操作量Ap3となる。
指示運転状態が一点鎖線Laa4又は破線Lad4に該当するとき、参照アクセル操作量Affは第4アクセル操作量Ap4となる。指示運転状態が一点鎖線Laa5に該当するとき、参照アクセル操作量Affは第5アクセル操作量Ap5となる。指示運転状態が一点鎖線Laa6に該当するとき、参照アクセル操作量Affは第6アクセル操作量Ap6となる。
第1アクセル操作量Ap1は「0」である。加えて、第1アクセル操作量Ap1、第2アクセル操作量Ap2、第3アクセル操作量Ap3、第4アクセル操作量Ap4、第5アクセル操作量Ap5及び第6アクセル操作量Ap6は、この順に大きくなる(即ち、0=Ap1<Ap2<Ap3<Ap4<Ap5<Ap6)。
指示運転状態が実線Lba1又は二点鎖線Lbd1に該当するとき、参照ブレーキ操作量Bffは第1ブレーキ操作量Bp1となる。指示運転状態が実線Lba2又は二点鎖線Lbd2に該当するとき、参照ブレーキ操作量Bffは第2ブレーキ操作量Bp2となる。
指示運転状態が二点鎖線Lbd3に該当するとき、参照ブレーキ操作量Bffは第3ブレーキ操作量Bp3となる。指示運転状態が二点鎖線Lbd4に該当するとき、参照ブレーキ操作量Bffは第4ブレーキ操作量Bp4となる。指示運転状態が二点鎖線Lbd5に該当するとき、参照ブレーキ操作量Bffは第5ブレーキ操作量Bp5となる。
第1ブレーキ操作量Bp1は正の値である。加えて、第1ブレーキ操作量Bp1、第2ブレーキ操作量Bp2、第3ブレーキ操作量Bp3、第4ブレーキ操作量Bp4及び第5ブレーキ操作量Bp5は、この順に大きくなる(即ち、0<Bp1<Bp2<Bp3<Bp4<Bp5)。
指示運転状態をペダル操作量マップに適用することによって取得される参照アクセル操作量Affが正の値であるとき、参照ブレーキ操作量Bffは「0」となる。一方、指示運転状態をペダル操作量マップに適用することによって取得される参照ブレーキ操作量Bffが正の値であるとき、参照アクセル操作量Affは「0」となる。
指示加速度Adが正の値であり且つ参照アクセル操作量Affが正の値であるとき、その指示運転状態は、アクセル操作によって実現される。即ち、車速Vsがその指示速度Vdに等しく且つアクセル操作量Apがその参照アクセル操作量Affに等しいとき、車速Vsの単位時間あたりの変化量である加速度Ac(この場合、加速度Acは正の値)は指示加速度Adと等しくなる。アクセル操作によって車速Vsを増加させる(即ち、加速度Acを正の値にする)運転操作は、以下、「アクセル加速」とも称呼される。
一方、指示加速度Adが負の値であっても参照アクセル操作量Affが正の値であれば、その指示運転状態は、アクセル操作によって実現される。アクセル操作によって車速Vsを減少させる運転操作は、以下、「アクセル減速」とも称呼される。アクセル減速の実行時、所謂エンジンブレーキが利用される。
指示加速度Adが正の値であり且つ参照ブレーキ操作量Bffが正の値であるとき、その指示運転状態は、上述したブレーキ加速によって実現される。一方、指示加速度Adが負の値であり且つ参照ブレーキ操作量Bffが正の値であるとき、その指示運転状態は、ブレーキ操作によって実現される。ブレーキ操作によって車速Vsを減少させる運転操作は、以下、「ブレーキ減速」とも称呼される。
次に、ペダル操作量マップの生成方法について説明する。図3のペダル操作量マップは、車両10の車両特性(具体的には、車速Vs及びアクセル操作量Apの組合せのそれぞれに対応する加速度Ac、及び、車速Vs及びブレーキ操作量Bpの組合せのそれぞれに対応する加速度Ac)を表している。車両10の車両特性は、実験により取得(学習)される。
(1)アクセル加速
車両10のアクセル加速に係る車両特性(アクセル加速特性)を取得するために行われるアクセル加速試験について説明する。
アクセル加速試験の実行時におけるアクセル操作量Ap、ブレーキ操作量Bp及び車速Vsのそれぞれの時刻tに対する変化の例が図4のタイムチャートに示される。この例において、アクセル操作量Apが第3アクセル操作量Ap3である場合の車両10におけるアクセル加速特性が取得される。
図4の曲線Lv1は、車速Vsの変化を表している。折れ線Lb1は、ブレーキ操作量Bpの変化を表している。折れ線La1は、アクセル操作量Apの変化を表している。
曲線Lv1から理解されるように、時刻t0までの期間、車速Vsは「0」である(即ち、車両10は停止している。)。このとき、アクセル操作量Apは「0」であり、ブレーキ操作量Bpは所定の停止ブレーキ操作量Bppに等しい。停止ブレーキ操作量Bppは、車両10を停止状態に維持するのに十分なブレーキ操作量Bpに設定されている。
時刻t0にて、ブレーキ操作量Bpが停止ブレーキ操作量Bppから「0」に変化すると、車速Vsが上昇を開始する。即ち、車両10が、クリープ現象により走行を開始する。その後、時刻t0から切替時間Tiだけ経過した時刻t1になると(即ち、t1=t0+Ti)、アクセル操作量Apが「0」から第3アクセル操作量Ap3に変化する。
アクセル操作量Apが上昇した結果、アクセル操作量Apが「0」である状態と比較して加速度Acが上昇する。その後、加速度Acが徐々に低下する。時刻t2aになると、車速Vsが速度Vs1に達し、加速度Acは略「0」となる。
このアクセル加速試験の結果として、アクセル操作量Apが第3アクセル操作量Ap3である場合のアクセル加速における車速Vsと加速度Acとの関係が、曲線Lv1に基づいて取得される。即ち、曲線Lv1上の「ある点」によって表される車速Vsと、「その点」における曲線Lv1の傾きによって表される加速度Acと、の種々の組合せが取得される。
図5は、図3に示されたペダル操作量マップの左半分の拡大図である。アクセル操作量Apが第3アクセル操作量Ap3である場合のアクセル加速試験の結果として取得された車速Vsと加速度Acとの組合せが図5の実線Laa3a及び破線Laa3bによって表される。アクセル加速試験によって取得されたアクセル加速特性を表す曲線(この場合、実線Laa3a及び破線Laa3bによって表される曲線)は、以下、「アクセル加速特性曲線」とも称呼される。
一方、図3の一点鎖線Laa3は、図5の実線Laa3a及び破線Laa3cを連結して得られる曲線と同一である。アクセル加速特性曲線の一部を補正することによって(この場合、破線Laa3bの代わりとして破線Laa3cを取得することによって)、ペダル操作量マップに適用される曲線(この場合、一点鎖線Laa3)を取得する処理は、以下、「アクセル加速特性補正処理」とも称呼される。
アクセル加速特性補正処理について説明する。実線Laa3a及び破線Laa3bから理解されるように、アクセル操作量Apが一定であれば、車速Vsが小さくなるほど加速度Acが上昇し、その後、下降する。破線Laa3cは、車速Vsが小さくなっても加速度Acが下降することなく上昇を継続するように取得される。
第3アクセル操作量Ap3とは異なるアクセル操作量Apに対しても、同様のアクセル加速試験によってアクセル加速特性がそれぞれ取得される。
アクセル操作量Apが第3アクセル操作量Ap3であった場合と同様に、第1アクセル操作量Ap1に対応するアクセル加速特性曲線は、実線Laa1a及び破線Laa1bによって表される。このアクセル加速特性曲線に対するアクセル加速特性補正処理によって破線Laa1cが得られる。一点鎖線Laa1は、実線Laa1a及び破線Laa1cを連結して得られる曲線に等しい。
第2アクセル操作量Ap2に対応するアクセル加速特性曲線は、実線Laa2a及び破線Laa2bによって表される。このアクセル加速特性曲線に対するアクセル加速特性補正処理によって破線Laa2cが得られる。一点鎖線Laa2は、実線Laa2a及び破線Laa2cを連結して得られる曲線に等しい。
第4アクセル操作量Ap4に対応するアクセル加速特性曲線は、実線Laa4a及び破線Laa4bによって表される。このアクセル加速特性曲線に対するアクセル加速特性補正処理によって破線Laa4cが得られる。一点鎖線Laa4は、実線Laa4a及び破線Laa4cを連結して得られる曲線に等しい。
第5アクセル操作量Ap5に対応するアクセル加速特性曲線は、実線Laa5a及び破線Laa5bによって表される。このアクセル加速特性曲線に対するアクセル加速特性補正処理によって破線Laa5cが得られる。一点鎖線Laa5は、実線Laa5a及び破線Laa5cを連結して得られる曲線に等しい。
第6アクセル操作量Ap6に対応するアクセル加速特性曲線は、実線Laa6a及び破線Laa6bによって表される。このアクセル加速特性曲線に対するアクセル加速特性補正処理によって破線Laa6cが得られる。一点鎖線Laa6は、実線Laa6a及び破線Laa6cを連結して得られる曲線に等しい。
アクセル加速特性補正処理が実行される理由について説明する。一般に、車両の運転者は、車速Vsが比較的低いとき(例えば、車両を発進させるとき)、急激な加速を行わない。そのため、指示速度Vdが比較的小さいとき、参照アクセル操作量Affは、指示加速度Adに対応するアクセル操作量Apよりも小さい値に設定される。
例えば、破線Laa3cから理解されるように、車速Vsが速度Vs2であるとき、アクセル操作量Apが第4アクセル操作量Ap4であれば、破線Laa4bから理解されるように、加速度Acは加速度Ac1となる。一方、指示速度Vdが速度Vs2であり且つ指示加速度Adが加速度Ac1であるとき、破線Laa3cから理解されるように、参照アクセル操作量Affは第3アクセル操作量Ap3に設定される。その結果、車両10の急加速が回避される。
(2)アクセル減速
次に、車両10のアクセル減速に係る車両特性(アクセル減速特性)を取得するために行われるアクセル減速試験について説明する。
アクセル減速試験の実行時におけるアクセル操作量Ap、ブレーキ操作量Bp及び車速Vsのそれぞれの時刻tに対する変化の例が図6のタイムチャートに示される。この例において、アクセル操作量Apが第3アクセル操作量Ap3である場合の車両10におけるアクセル減速特性が取得される。
図6の曲線Lv2は、車速Vsの変化を表している。折れ線Lb2は、ブレーキ操作量Bpの変化を表している。折れ線La2は、アクセル操作量Apの変化を表している。
時刻t0までの期間、車速Vsは「0」である。このとき、アクセル操作量Apは「0」であり、ブレーキ操作量Bpは停止ブレーキ操作量Bppである。時刻t0にてブレーキ操作量Bpが停止ブレーキ操作量Bppから「0」に変化し、車速Vsが上昇を開始する。
その後、時刻t1になるとアクセル操作量Apが「0」から所定の基準アクセル操作量Aprに変化し、その結果、加速度Acが上昇する。基準アクセル操作量Aprは、比較的短時間にて車速Vsが「0」から所定の基準速度Vsrまで上昇させることができるアクセル操作量Apに設定されている。
基準アクセル操作量Aprは、第3アクセル操作量Ap3よりも大きい(即ち、Apr>Ap3)。一方、基準速度Vsrは、指示速度Vdの最大値よりも大きな値に設定されている。
その後、時刻t2bにて車速Vsが基準速度Vsrに達すると、アクセル操作量Apは基準アクセル操作量Aprから第3アクセル操作量Ap3に減少する。その結果、車速Vsが減少する。即ち、アクセル減速が実行される。その後、時刻t3bになると車速Vsが速度Vs1に達し、加速度Acは略「0」となる。
このアクセル減速試験の結果として、アクセル加速試験の場合と同様に、アクセル操作量Apが第3アクセル操作量Ap3である場合のアクセル減速における車速Vsと加速度Acとの関係が、曲線Lv2に基づいて取得される。取得された車速Vsと加速度Acとの組合せが図3の破線Lad3によって表される。第3アクセル操作量Ap3とは異なるアクセル操作量Apに対しても、同様のアクセル減速試験によってアクセル減速特性がそれぞれ取得される。
(3)ブレーキ加速
車両10のブレーキ加速に係る車両特性(ブレーキ加速特性)を取得するために行われるブレーキ加速試験について説明する。
ブレーキ加速試験の実行時におけるブレーキ操作量Bp、アクセル操作量Ap及び車速Vsのそれぞれの時刻tに対する変化の例が図7に示される。この例において、ブレーキ操作量Bpが第2ブレーキ操作量Bp2である場合の車両10におけるブレーキ加速特性が取得される。
図7の曲線Lv3は、車速Vsの変化を表している。折れ線Lb3は、ブレーキ操作量Bpの変化を表している。折れ線La3は、アクセル操作量Apの変化を表している。この例において、アクセル操作量Apは、「0」に維持される。
時刻t0までに期間、ブレーキ操作量Bpは停止ブレーキ操作量Bppであり、車速Vsは「0」である。時刻t0にてブレーキ操作量Bpが停止ブレーキ操作量Bppから第2ブレーキ操作量Bp2に変化し、その結果、クリープ現象によって車速Vsが上昇を開始する。その後、時刻t2cになると車速Vsが速度Vs3に達し、加速度Acは略「0」となる。
このブレーキ加速実験の結果として、ブレーキ操作量Bpが第2ブレーキ操作量Bp2である場合のブレーキ加速における車速Vsと加速度Acとの関係が、曲線Lv3に基づいて取得される。取得された車速Vsと加速度Acとの組合せが図3の実線Lba2によって表される。第2ブレーキ操作量Bp2に加え、第1ブレーキ操作量Bp1に対しても、同様のブレーキ加速試験が行われる。
(4)ブレーキ減速
車両10のブレーキ減速に係る車両特性(ブレーキ減速特性)を取得するために行われるブレーキ減速試験について説明する。
ブレーキ減速試験の実行時におけるブレーキ操作量Bp、アクセル操作量Ap及び車速Vsのそれぞれの時刻tに対する変化の例が図8に示される。この例において、ブレーキ操作量Bpが第3ブレーキ操作量Bp3である場合の車両10におけるブレーキ減速特性が取得される。
図8の曲線Lv4は、車速Vsの変化を表している。折れ線Lb4は、ブレーキ操作量Bpの変化を表している。折れ線La4は、アクセル操作量Apの変化を表している。
時刻t0までに期間、ブレーキ操作量Bpは停止ブレーキ操作量Bppであり、車速Vsは「0」である。時刻t0にてブレーキ操作量Bpが停止ブレーキ操作量Bppから「0」に変化する。次いで、時刻t1にてアクセル操作量Apが「0」から基準アクセル操作量Aprに変化する。
その後、時刻t2dにて車速Vsが基準速度Vsrに達すると、アクセル操作量Apは基準アクセル操作量Aprから「0」に変化する。その結果、車速Vsが減少を開始する。次いで、時刻t2dから切替時間Tiだけ経過した時刻t3dになると(即ち、t3d=t2d+Ti)、ブレーキ操作量Bpが「0」から第3ブレーキ操作量Bp3に変化する。その結果、加速度Acの大きさ(この場合、加速度Acは負の値である。)が増加する。即ち、ブレーキ減速が実行される。
ブレーキ減速によって加速度Acの大きさが上昇した後、車速Vsが減少するに従って加速度Acの大きさが減少する。即ち、加速度Acが増加する。ブレーキ減速によって車両10が停止する前に加速度Acが所定の負の減衰加速度Acwに達すると(この例において、時刻t4dにて車速Vsが速度Vs4となったとき)、ブレーキ操作量Bpが第3ブレーキ操作量Bp3から所定の減衰ブレーキ操作量Bpwに変化する。減衰ブレーキ操作量Bpwは第3ブレーキ操作量Bp3よりも小さいので(即ち、Bpw<Bp3)、時刻t4d以降、加速度Acの大きさが減少する。次いで、時刻t6dにて車速Vsが「0」となる。即ち、車両10が停止する。
仮に、図8の破線Lb4qによって表されるように、車両10が停止するまでブレーキ操作量Bpが第3ブレーキ操作量Bp3である状態が継続すると、車両10が停止するまで加速度Acの大きさが比較的大きい状態が継続する。この場合の車速Vsの変化が破線Lv4qによって表される。この場合、車両10は、時刻t6dよりも早い時刻t5dにて停止する。即ち、車両10が急停止する。
車両10が急停止した結果として車両10及びシャシーダイナモメータ30に衝撃が加わることは好ましくない。そのため、ブレーキ減速試験の実行時、加速度Acが減衰加速度Acwよりも大きくなると(即ち、Acw<Ac<0となると)、ブレーキ操作量Bpは減衰ブレーキ操作量Bpwまで減少させられる。減衰ブレーキ操作量Bpwは、車両10が急停止しないブレーキ操作量Bpに設定されている。
車両10が停止する前にブレーキ操作量Bpを減衰ブレーキ操作量Bpwまで減少させる処理は、以下、「制動力減衰処理」とも称呼される。ブレーキ減速試験におけるブレーキ操作量Bpが小さいために車両10が停止しない場合(具体的には、ブレーキ操作量Bpが第1ブレーキ操作量Bp1及び第2ブレーキ操作量Bp2である場合)、制動力減衰処理は実行されない。
このブレーキ減速実験の結果として、ブレーキ操作量Bpが第3ブレーキ操作量Bp3である場合のブレーキ減速における車速Vsと加速度Acとの関係が、曲線Lv4に基づいて取得される。ブレーキ操作量Bpが第3ブレーキ操作量Bp3である場合のブレーキ減速試験の結果として取得された車速Vsと加速度Acとの関係が、図5の実線Lbd3a及び破線Lbd3bによって表される。
一方、図3の二点鎖線Lbd3は、図5の実線Lbd3a及び破線Lbd3cを連結して得られる曲線と同一である。破線Lbd3bは、制動力減衰処理が実行されたときの車速Vsと加速度Acとの関係を表している。これに対し、破線Lbd3cは、制動力減衰処理が実行されなかった場合の車速Vsと加速度Acとの関係を推定して取得される。制動力減衰処理が実行されなかった場合の車速Vsと加速度Acとの関係を推定する処理は、以下、「ブレーキ減速特性補正処理」とも称呼される。
第3ブレーキ操作量Bp3とは異なるブレーキ操作量Bpに対しても、同様のブレーキ減速試験によってブレーキ減速特性がそれぞれ取得される。
ブレーキ操作量Bpが第4ブレーキ操作量Bp4である場合のブレーキ減速試験によって取得された車速Vsと加速度Acとの関係は、実線Lbd4a及び破線Lbd4bによって表される。破線Lbd4bに対してブレーキ減速特性補正処理を行うことによって、破線Lbd4cが取得される。図3の二点鎖線Lbd4は、図5の実線Lbd4a及び破線Lbd4cを連結して得られる曲線と同一である。
ブレーキ操作量Bpが第5ブレーキ操作量Bp5である場合のブレーキ減速試験によって取得された車速Vsと加速度Acとの関係は、実線Lbd5a及び破線Lbd5bによって表される。破線Lbd5bに対してブレーキ減速特性補正処理を行うことによって、破線Lbd5cが取得される。二点鎖線Lbd5は、実線Lbd5a及び破線Lbd5cを連結して得られる曲線と同一である。
(ペダル操作量マップの意義)
ここで、ペダル操作量マップに基づいて参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffを決定すること、及び、ペダル操作量マップにはブレーキ加速特性が反映されていること、の意義について説明する。
上述したように、アクセル操作が実行されるとき、同時操作禁止処理及びレートリミッタ処理による目標アクセル操作量Atgの設定が行われなければ、アクセル操作量Apは、参照アクセル操作量Aff及び差分アクセル操作量Afbの和と等しくなる。同様に、ブレーキ操作が実行されるとき、同時操作禁止処理及びレートリミッタ処理による目標ブレーキ操作量Btgの設定が行われなければ、ブレーキ操作量Bpは、参照ブレーキ操作量Bff及び差分ブレーキ操作量Bfbの和と等しくなる。
参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffは、所謂フィードフォワード処理によって決定される値である。一方、差分アクセル操作量Afb及び差分アクセル操作量Afbは、所謂フィードバック処理によって決定される値である。
例えば、車両10が発進するとき(即ち、指示速度Vdが「0」から上昇を開始するとき)、指示加速度Adが小さな値であれば、参照アクセル操作量Affが正の値に設定され、その結果、ブレーキ加速が実行される。具体的には、指示運転状態が図3の領域Fc(即ち、ブレーキ加速運転領域)に含まれており且つ差分ブレーキ操作量Bfbが大きくなければ(具体的には、ブレーキ加速の代わりにブレーキ減速が実行される程度に差分ブレーキ操作量Bfbが大きくなければ)、ブレーキ加速が実行される。
車両10が発進した後、指示運転状態が領域Fcから外れると、参照ブレーキ操作量Bffが「0」に設定され且つ参照アクセル操作量Affが正の値に設定され、以て、アクセル加速が実行される。従って、車両10の車両特性に従って参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffが設定され、以て、車速Vsと指示速度Vdとの差分が大きくなる可能性が小さくなる。
車両10の発進時における指示速度Vd及び車速Vsの変化の例が図9に示される。図9の実線Ld1は、指示速度Vdの変化を表している。実線Ld1から理解されるように、指示速度Vdは時刻t0にて上昇を開始する。指示速度Vdは、時刻t1eにて速度Vs5に達し、時刻t1e以降、一定の値となる。
この場合における車速Vsの変化が、破線Lv5によって表される。破線Lv5から理解されるように、車速Vsは指示速度Vdと略同一となっている。即ち、車両10の車両特性に従って参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffが設定され(ひいては、目標アクセル操作量Atg及び目標ブレーキ操作量Btgが設定され)、車速追従性が高くなっている。
ここで、ブレーキ加速特性がペダル操作量マップに反映されていない場合を想定する。この場合、指示運転状態が領域Fcにあるとき、参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffが共に「0」に設定される。
そのため、車両10の発進時、アクセル操作量Ap及びブレーキ操作量Bpが共に「0」となり、クリープトルクによって車速Vsが上昇する。この場合、クリープトルクが比較的大きければ、車速Vsが指示速度Vdよりも大きくなり且つ車速Vsと指示速度Vdとの差分が大きくなる。その結果、差分ブレーキ操作量Bfbが増加し、以て、ブレーキ操作が実行される。即ち、フィードバック処理により車速Vsが指示速度Vdに近づくように是正される。
しかし、フィードバック処理は、車速Vsと指示速度Vdとの差分が増加したときに実行されるので(具体的には、差分アクセル操作量Afb又は差分ブレーキ操作量Bfbの値が大きくなるので)、フィードフォワード処理と比較して応答遅れが大きい。
そのため、車速Vsが指示速度Vdよりも大きくなったとき、差分ブレーキ操作量Bfbが大きくなると、車速Vsが指示速度Vdよりも小さくなる可能性がある。一方、車速Vsが指示速度Vdよりも小さくなったとき、差分アクセル操作量Afbが大きくなると、車速Vsが指示速度Vdよりも大きくなる可能性がある。
その結果、車速Vsと指示速度Vdとの差分が一旦増加すると、車速Vsが指示速度Vdと略同一となるまでに、車速Vsが指示速度Vdよりも大きい状態と、車速Vsが指示速度Vdよりも小さい状態と、が交互に繰り返される可能性がある。
換言すれば、指示速度Vdが一定であるにも拘わらず、車速Vsの増加と低下とが交互に繰り返される現象(車速振動現象)が発生する可能性がある。クリープトルクが比較的大きいために車速Vsが指示速度Vdよりも大くなった後に車速振動現象が発生したときの車速Vsの変化の例が図9の破線Lv6によって表される。破線Lv6から理解されるように、破線Lv5の場合と比較して車速追従性が悪化している。
一方、クリープトルクが比較的小さい場合、車両10の発進時、車速Vsが指示速度Vdよりも小さい状態が発生する。即ち、車速Vsが指示速度Vdよりも小さくなり且つ車速Vsと指示速度Vdとの差分が大きくなる。その結果、差分アクセル操作量Afbが大きくなり、アクセル操作が実行される。
即ち、フィードバック処理により車速Vsが指示速度Vdに近づくように是正される。この場合も、車速振動現象が発生する可能性がある。クリープトルクが比較的小さいために車速Vsが指示速度Vdよりも小さくなった後に車速振動現象が発生したときの車速Vsの変化の例が図9の一点鎖線Lv7によって表される。一点鎖線Lv7から理解されるように、破線Lv5の場合と比較して車速追従性が悪化している。
以上より、ペダル操作量マップに基づいて参照アクセル操作量Aff及び参照ブレーキ操作量Bffが決定され、且つ、ペダル操作量マップにブレーキ加速特性が反映されていることが、車速追従性の向上に寄与することが理解される。
(車速制御処理の実行手順)
次に、車両制御処理を実行するために必要となる手順について説明する。
(1)車両10及び車速制御装置50の設置
先ず、車両10が、シャシーダイナモメータ30上に設置される。次いで、車速制御装置50が車両10内に設置される。具体的には、車速制御装置50とアクセルペダル操作量センサ22とが接続される。加えて、車速制御装置50に接続されたペダルアクチュエータ71がブレーキペダル23を押し込めるように、ペダルアクチュエータ71が車両10の車室内に配設される。更に、制御盤42と車速制御装置50とが接続される。
(2)条件設定
車両10の走行時にロードローラ41が発生させる回転抵抗が、車両10の走行時における走行抵抗に一致するように、制御盤42に対する設定が行われる。
(3)チャンネル設定
車速信号Svsの電圧と、車速信号Svsが表す車速Vsと、の関係について、制御盤42と車速制御装置50との設定を互いに一致させる。
(4)キャリブレーション
アクセル操作量信号Sapの電圧と、アクセル操作量信号Sapが表すアクセル操作量Apと、の関係について、車速制御装置50の設定を車両10が備える制御装置の設定に一致させる。加えて、ブレーキ操作量信号Sbpの電圧と、ブレーキ操作量信号Sbpに対応するペダルアクチュエータ71の作動量(ブレーキペダル23に対する押し込み量、即ち、ブレーキ操作量Bp)と、の関係について、車速制御装置50とペダルアクチュエータ71との設定を互いに一致させる。
(5)車両特性の学習
上述したアクセル加速試験、アクセル減速試験、ブレーキ加速試験及びブレーキ減速試験を実行することによって車両10の走行特性が取得(学習)され、以て、ペダル操作量マップが取得される。
(6)運転パターンの登録
経過時間Teのそれぞれに対応する指示速度Vdが車速制御装置50に登録される。
(7)車速制御処理の実行
車速制御処理が実行される。
以上、説明したように、本制御装置によれば、指示運転状態がブレーキ加速運転領域(即ち、領域Fc)に含まれていても、車速追従性の悪化が発生することを回避できる。そのため、本制御装置によれば、車速振動現象の発生を回避することができる。
以上、本発明に係る車速制御装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態に係る車速制御装置50は、アクセルペダル操作量センサ22に対してアクセル操作量信号Sapを送信していた。しかし、車速制御装置50は、アクセルペダル21を操作する(押し込む)ペダルアクチュエータに接続され、アクセル操作量Apが目標アクセル操作量Atgと等しくなるようにそのペダルアクチュエータを制御しても良い。
加えて、本実施形態に係る車速制御装置50は、ペダルアクチュエータ71に接続されていた。しかし、車両10がブレーキ操作量Bpを検出するブレーキペダル操作量センサを備え且つ車両10の制御装置が検出されたブレーキ操作量Bpに応じて制動力を制御している場合、車速制御装置50はブレーキペダル操作量センサと接続され且つブレーキペダル操作量センサを介して車両10の制御装置に対してブレーキ操作量信号Sbpを送信しても良い。
加えて、本実施形態に係る車速制御装置50は、車両10及びシャシーダイナモメータ30と共に用いられていた。しかし、車速制御装置50は、車両の駆動用エンジンと、エンジン以外の車両の構成機器として振る舞うシミュレータと、を備えるVRS(ヴァーチャル・リアル・シミュレータ)と共に用いられても良い。